説明

サイディング材割付基準位置測定方法、サイディング材切断方法およびサイディング材取付け方法

【課題】この発明は建築現場でサイディング材を切断する必要がなく、建築現場で騒音や粉じんを発生させることなく短い工期でサイディング材の取り付け施工が行えるサイディング材割付基準位置測定方法、サイディング材切断方法およびサイディング材取付け方法の提供を目的とする。
【解決手段】上記の目的を解決するために、この発明のサイディング材割付基準位置測定方法は、建築物の棟上後で側面に外部シートを貼る前において外部建具の位置を測定する第1基準点位置測定と、外部シート貼付け後でサイディング材取付け前において、外部シート貼付け後に設けられた外部建具の位置を測定する第2基準点位置測定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工場でサイディング材を予め所定の形状に切断してから、建築物の外壁として取り付ける方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の外壁材としてサイディング材とよばれる窯業系の部材が使用されている。建築物の外部建具が全て取り付けられた後に、側面の最終仕上げとして、サイディング材が取り付けられる。サイディング材は、その種類ごとに幅、長さおよび厚さの定まったものが供給されていて、必要に応じて切断しながら、取り付け面の形状に合わせて取り付けていく。サイディング材の切断は、建築物への取り付け時において、建築現場で行われる。
【0003】
また、特許文献1には、CADを使用してサイディング材の割付を決定し、予めプレカットすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−283390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建築現場において、建築物の取り付け面形状に合わせながらサイディング材を切り出して張り付ける方法は、現在実施されている。しかし、このような切断しながらの取り付けには、時間がかかる。特に、天気の不安定な時期においては、この施工のために適した日を待つ必要がある。また、建築現場の多くは住宅地、あるいはその近隣であるが、サイディング材の切断によって粉じんや騒音が発生することは好ましくない。さらに、窯業系サイディング材は産業廃棄物に指定されており、切断によって生じる残材は現場から回収し、産業廃棄物として処分しなければならず、これに要する費用も大きい。
【0006】
一方、特許文献1に記載されたサイディングプレカット割付装置およびプログラム並びにサイディングプレカット割付方法によれば、建築現場においてサイディング板をカットする必要がなくなり、カット時の騒音および粉塵の問題がなくなり、現場で発生するゴミの量を減らすことも可能であるとさせている。そして、この特許文献1に記載されたサイディングプレカット割付プログラムは、その出願人自身によって販売されている。しかし、サイディング材のプレカットは現実には実施されていない。実際に建てられた建築物と設計図には差異があり、特許文献1に記載されたサイディングプレカット割付プログラムに従ってプレカットしたサイディング材は、建築物の取り付け面に合わない。無理に取り付けようとすれば、目地(隣接するサイディング材の間に設ける所定の隙間)が不揃いになり、さらにこの目地によっても調整できないような差異があれば、切断をやり直すしかない。特許文献1には、現場において採寸された実寸法を入力し、設計値データを実寸法に基づいて修正し、自動割付手段によりサイディング板の自動割り付けすると記載されているが、同文献の記載を参照しても、建築物の取り付け面に合うようなプレカットは実現できない。
【0007】
結局、特許文献1に記載されたサイディングプレカット方法を含め、サイディング材のプレカットは実現されておらず、建築現場における切断がなされている。したがって、上述の問題点は解決されていない。この発明は建築現場でサイディング材を切断する必要がなく、建築現場で騒音や粉じんを発生させることなく短い工期でサイディング材の取り付け施工が行えるサイディング材割付基準位置測定方法、サイディング材切断方法およびサイディング材取付け方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を解決するために、この発明のサイディング材割付基準位置測定方法は、建築物の棟上後で側面に外部シートを貼る前において外部建具の位置を測定する第1基準点位置測定と、外部シート貼付け後でサイディング材取付け前において、外部シート貼付け後に設けられた外部建具の位置を測定する第2基準点位置測定を行う。
【0009】
この発明のサイディング材切断方法は、建築物の棟上後で側面に外部シートを貼る前において外部建具の位置を測定して第1基準点位置情報を取得し、外部シート貼付け後でサイディング材取付け前において、外部シート貼付け後に設けられた外部建具の位置を測定して第2基準点位置情報を取得し、土台、柱、梁の位置情報を含む基本基準点位置情報と、第1基準点位置情報と、第2基準点位置情報に基いてサイディング材の割付を決定し、その割付に基いて各サイディング材の形状を決定し、その形状に基いてサイディング材を建築現場以外の場所で切断する。
【0010】
さらに、この発明のサイディング材取付け方法は、建築物の棟上後で側面に外部シートを貼る前において外部建具の位置を測定して第1基準点位置情報を取得し、外部シート貼付け後でサイディング材取付け前において、外部シート貼付け後に設けられた外部建具の位置を測定して第2基準点位置情報を取得し、土台、柱、梁の位置情報を含む基本基準点位置情報と、第1基準点位置情報と、第2基準点位置情報に基いてサイディング材の割付を決定し、その割付に基いて各サイディング材の形状を決定し、その形状に基いてサイディング材を建築現場以外の場所で予め切断し、切断されたサイディング材を建築現場に運んで建築物の側面に取り付ける。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、サイディング材を建築現場で切断する必要がなくなるので、現場で粉じんや騒音を発生させないという効果を有する。サイディング材取り付けに必要な工期を短縮できる。予め切断されたサイディング材は、建築物の外壁材として正確に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】サイディング材取付け方法を示すフローチャートである。
【図2】サイディング材割付装置を示すブロック図である。
【図3】建築物の平面図である。
【図4】完成状態の建築物の立面図である。
【図5】外部シート取り付け前の建築物の立面図である。
【図6】第1基準点を示す拡大立面図である。
【図7】サイディング材取り付け前の建築物の立面図である。
【図8】第2基準点を示す拡大立面図である。
【図9】サイディング材の割付図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明を実施するための形態について説明する。図1はサイディング材取付け方法を示すフローチャートである。
【0014】
この発明は、さまざまな建築工法に対して適用できる。たとえば、柱や梁などを所要な構造材とする伝統的な工法に対しても適用でき、面状の壁材の組合せにより荷重を受ける構造の工法に対しても適用できる。図1は、さまざまな建築工法に共通な主要な流れを示している。図1において左側には、建築現場での作業を中心とする流れが記載されており、右側では設計事務所や工場(工作場)など建築現場以外での作業の流れを中心に記載されている。
【0015】
まず、建築物の間取り、材料、工法などの仕様決定および基本設計が行われる。これに合わせて外壁材の仕様決定もなされる。ここでは、外壁材として、サイディング材が選択される。
【0016】
建築作業が開始され、棟上が行われ、さらに、外部建具の取り付けも行われる。たとえば窓枠や玄関などで、外部シート貼付け前に設置されるこれらの外部建具をこの発明では第1の外部建具と呼ぶことにする。このように第1の外部建具が取り付けられたら、外部シートを貼る前に第1基準点位置測定を行う。柱や土台、梁などの位置から窓枠や玄関など第1の外部建具までの位置や、第1の外部建具の高さ・幅などに関する寸法取りを行う。こうして得られた情報を第1基準点位置情報とする。
【0017】
ついで、建築物の側面に外部シートを貼り、工事を継続する。軒下下地施工やベランダ周囲の仕上げなどが完了したら、第2基準点位置測定を行う。軒下下地やベランダ周囲に取り付けられる外部建具は、第1基準点位置測定のときにはなかったものである。このように、第1基準点位置測定の後に、あるいは、外部シート貼り付け後に設置される外部建具を、第2の外部建具と呼ぶことにする。これらの第2の外部建具の位置を、第1の外部建具の位置を基準に測定する。こうして得られた情報を第2基準点位置情報とする。
【0018】
柱や梁、土台など基本構造物の位置や形状についての寸法は、設計によって確定している。これに、第1基準点位置情報と第2基準点位置情報を加えることによって、サイディング材の取り付け面の形状が確定できる。これに基いて、サイディング材の割付を決定し、カット用図面を作成する。このカット用図面に基づいてサイディング材の切断を行う。サイディング材の切断は、建築現場以外の場所、たとえば専用の工場などで行う。こうして、予め切り出されたサイディング材のパネルを建築現場に運び、建築物の外部側面に取り付ける。
【0019】
さらに、サイディング材割付基準位置測定方法、サイディング材切断方法およびサイディング材取付け方法の詳細について、図面に基いて説明する。ここで、周知の建築方法と共通する事項については詳述を省略し、この発明に固有な事項を中心に説明する。
【0020】
この発明を実施するためには、特別な装置は必ずしも必要ないが、コンピュータを利用したサイディング材割付装置を使用すれば、便宜である。このようなサイディング材割付装置は特許文献1によって開示されており、しかも、そのプログラムは数年前から販売されている。
【0021】
この例ではサイディング材割付装置1として、パーソナルコンピュータなどの汎用コンピュータ2にサイディング材割付処理機能を有するCADプログラム3をインストールしている。CAD処理部5は、通常の建築用CADの機能であり、決定された間取りや仕様に基いて、キーボード6やマウス7でデータを入力し、設計を行うものである。これによって、図3に示すような平面図や、図4に示すような立面図を作成する。柱や梁、土台などの基本構造を決定する寸法はこれによって入力される。
【0022】
記憶装置8の中には、サイディング材に関する規格情報がサイディング材規格情報部9に保管される。ここに、各種のサイディング材の形状(幅・長さ・厚さ)や素材その他の情報が保管され、必要に応じて呼び出すことができる。
【0023】
サイディング材割付処理部4は、設計によって決定された基本構造の寸法情報(基本基準点位置情報)および第1基準点位置情報と第2基準点位置情報に基いて、サイディング材貼り付け面の形状を算定し、それに基いて割付を決めていく機能を有する。
【0024】
仕様決定・設計が終了し、施工にとりかかるための図面等が得られたら、工事を開始する。棟上・第1外部建具取り付けまでの工事は、これまで行われている周知の工法と同様でよい。
【0025】
図5は、外部シート取り付け前の建築物の立面図である。通常の工法であれば、このまま建築物の側面に外部シートを貼り付ける作業になるが、この発明では、外部シート取り付け前に、第1基準点位置測定を行う。図6は、第1基準点を示す拡大立面図である。窓枠や玄関の枠などはサイディング材の取り付け場所を確定するための重要な要素であり、第1基準点である。これらの外部建具の取り付け位置は、設計に比べて、ある程度の差異がある。したがって、設計値のみに基いてサイディング材の割付を行うと、外部建具の位置に合わせた取り付けが行えない。一方、柱や梁などの基本構造物は、ほぼ設計値通りに設置される。したがって、基本構造物は測定のための基準位置となり、この基本構造物に対する位置関係を採寸することによって、第1基準点位置情報を取得する。
【0026】
外部シートを貼り付けると、柱や梁など、測定のための基準となる構造物が外部シートにかくれ、正確な採寸ができなくなる。しかし、この発明では、外部シートを貼り付ける前に第1基準点位置測定を行うので、柱や梁などが露出しており、採寸は簡単かつ正確に行える。採寸の方法自体には特別な制約はなく、たとえば物差しを当てて測定することにより、正確な情報が取得できる。
【0027】
第1基準点位置測定の後は、外部シートを貼り付け、通常の手順に従って工事を継続することができる。そして軒下下地施工やベランダ周辺の仕上げなどを行う。こうして、第2の外部建具の設置も完了したら、第2基準点位置測定を行う。
【0028】
図7はサイディング材取り付け前の建築物の立面図であり、図8は第2基準点を示す拡大立面図である。第1基準点位置測定の後に取り付けられた外部建具も、サイディング材取り付け面の確定に影響する。そこで、これら第2の外部建具の位置について採寸する。柱や梁などの基本構造物は外部シートによって覆われているが、窓枠などは露出しているので、第1の外部建具を基準とし、それらと第2の外部建具の位置関係を測定することによって第2基準点位置情報を取得する。第1基準点位置測定によって第1の外部建具と基本構造物との位置関係は把握されているので、それを介して、第2の外部建具と基本構造物との位置関係も把握できる。
【0029】
続いて、サイディング材の割付を行う。基本構造物に基く基本基準点位置情報に加え、2回の測定で取得したと第1基準点位置情報と第2基準点位置情報によりサイディング材取り付け面の形状は確定できる。このサイディング材取り付け面を適切に埋め尽くすように、サイディング材の配置を決めていく。この作業は、手作業によってもできるが、すでに特許文献1に記載されているサイディング材割付プログラムが販売されているので、そのようなプログラムを利用してもよい。このサイディング材割付プログラムでは、第1基準点位置情報と第2基準点位置情報を入力することによって、適切な割付の決定をサポートする。使用するサイディング材の種類を指定するとその情報が呼び出され、指定されたサイディング材によって適切な目地を保った配置を決めていく。予め定められたアルゴリズムによって自動的に割付を行うこともできる。たとえば、貼り付け面の左下端から順に基準サイズのサイディング材パネルを配置していき、端部においては残った面を埋めるのに適切な形状への切断が決定できる。また、このようなアルゴリズムによらず、美観などを考慮しながら設計者が決定してもよい。そして、残材がなるべく少なくなるような効率的な割付を行うこともでき、資材の効率利用および廃棄物の低減を図ることもできる。
【0030】
図9はサイディング材の割付図である。このように割付が決定されると、それぞれのサイディング材パネルの形状も自動的に決定でき、切断のためのカット図を自動的に出力することもできる。このカット図に基いてサイディング材の切断を行えば、建築物の壁面にあったサイディング材パネルを正確に切り出すことができる。また、切断装置がプログラム可能な自動化装置である場合、決定されたサイディング材パネルの形状のデータをその切断装置に送信して、自動的に切断させることも可能である。
【0031】
切断は、専用の工作場などで行われる。したがって、建築現場のようなスペースの制約はなく、高速で仕上げのきれいな大型の専用装置を使用することもできる。工作場には防音や集塵のために十分な措置をとることが可能である。決定されたカット図などに基いて、迅速・正確・安全に切断作業が行われる。
【0032】
切断されたサイディング材は建築現場に運ばれ、外壁面への取り付けが行われる。現場においては切断作業は行われないので、切断のための機材を持ち込む必要はない。切断による騒音や粉じんの発生もなく、周囲環境への影響がない。
【0033】
サイディング材の貼り付け作業自体は、通常の施工方法がそのまま適用できる。この発明によってサイディング材は適切な寸法で切り出されており、取り付け面に正確に取り付けることができる。貼り付けに要する時間は短いので、雨季における短い晴れ間などに施工することも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1.サイディング材割付装置
2.コンピュータ
3.サイディング材割付プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイディング材の割付のための基準点測定方法であって、
建築物の棟上後で側面に外部シートを貼る前において外部建具の位置を測定する第1基準点位置測定と、
外部シート貼付け後でサイディング材取付け前において、外部シート貼付け後に設けられた外部建具の位置を測定する第2基準点位置測定を行う、サイディング材割付基準位置測定方法。
【請求項2】
建築物の側面へ取り付けるサイディング材の切断方法であって、
建築物の棟上後で側面に外部シートを貼る前において外部建具の位置を測定して第1基準点位置情報を取得し、
外部シート貼付け後でサイディング材取付け前において、外部シート貼付け後に設けられた外部建具の位置を測定して第2基準点位置情報を取得し、
土台、柱、梁の位置情報を含む基本基準点位置情報と、第1基準点位置情報と、第2基準点位置情報に基いてサイディング材の割付を決定し、その割付に基いて各サイディング材の形状を決定し、その形状に基いてサイディング材を建築現場以外の場所で切断するサイディング材切断方法。
【請求項3】
建築物の側面へのサイディング材の取付け方法であって、
建築物の棟上後で側面に外部シートを貼る前において外部建具の位置を測定して第1基準点位置情報を取得し、
外部シート貼付け後でサイディング材取付け前において、外部シート貼付け後に設けられた外部建具の位置を測定して第2基準点位置情報を取得し、
土台、柱、梁の位置情報を含む基本基準点位置情報と、第1基準点位置情報と、第2基準点位置情報に基いてサイディング材の割付を決定し、その割付に基いて各サイディング材の形状を決定し、その形状に基いてサイディング材を建築現場以外の場所で予め切断し、
切断されたサイディング材を建築現場に運んで建築物の側面に取り付けるサイディング材取付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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