説明

サイドウォール用ゴム組成物

【課題】石油外資源の含有比率を高めることで、地球に優しく、将来の石油の供給量の減少に備え、さらに優れた耐屈曲亀裂性能および引き裂き強度を示すサイドウォール用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】天然ゴム30〜90重量%およびエポキシ化天然ゴム70〜10重量%からなるゴム成分100重量部に対して、シリカを15〜60重量部含有するサイドウォール用ゴム組成物、または天然ゴム60〜100重量%からなるゴム成分、および白色充填剤80重量%以上からなる充填剤を含有するサイドウォール用ゴム組成物であって、該ゴム組成物のトルエン膨潤度が320以上であるサイドウォール用ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油枯渇時を想定したサイドウォール用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、タイヤのサイドウォールに用いられるゴム組成物としては、優れた引き裂き強さを示す天然ゴムに加えて、耐屈曲亀裂性能を改善するためにブタジエンゴムをブレンドし、さらに耐候性、補強性を改善するためにカーボンブラックが使用されてきた。
【0003】
しかし、近年、環境問題が重視されるようになり、CO2排出抑制の規制が強化され、また、石油原料は有限であって供給量が年々減少していることから、将来的に石油価格の高騰が予測され、ブタジエンゴムやカーボンブラックなどの石油資源からなる原材料の使用には限界がみられる。そのため、将来石油が枯渇した場合を想定すると、天然ゴムやシリカ、炭酸カルシウム等の白色充填剤のような石油外資源を使用していくことが必要となる。しかし、その場合、従来用いていた石油資源の使用により得られる耐屈曲亀裂性能、補強性などと同様、あるいはそれ以上の性能が必要となってくる。
【0004】
特許文献1には、石油が枯渇した場合を想定したタイヤ用原材料を示す技術が開示されているが、充分な耐屈曲亀裂性能および引き裂き強さを示すサイドウォール用ゴム組成物については開示されていない。
【0005】
【特許文献1】特開2003−63206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、石油外資源の含有比率を高めることで、地球に優しく、将来の石油の供給量の減少に備え、さらに優れた耐屈曲亀裂性能および引き裂き強度を示すサイドウォール用ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、天然ゴム30〜90重量%およびエポキシ化天然ゴム70〜10重量%からなるゴム成分100重量部に対して、シリカを15〜60重量部含有するサイドウォール用ゴム組成物に関する。
【0008】
前記ゴム組成物は、さらに、炭酸カルシウムを10〜40重量部含有することが好ましい。
【0009】
前記ゴム組成物は、(1)天然ゴムおよびシリカを混練りする工程、ならびに(2)エポキシ化天然ゴムを混練りする工程からなる製造方法により得られることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、天然ゴム60〜100重量%からなるゴム成分、および白色充填剤80重量%以上からなる充填剤を含有するサイドウォール用ゴム組成物であって、該ゴム組成物のトルエン膨潤度が320以上であるサイドウォール用ゴム組成物に関する。
【0011】
前記ゴム組成物は、さらに、ブタジエンゴムおよび/またはシンジオタクチックブタジエンゴムを含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、石油外資源の含有比率を高めることで地球に優しく、将来の石油の供給量の減少に備えたタイヤに用いるサイドウォール用ゴム組成物を提供することができ、さらに該ゴム組成物は、優れた耐屈曲亀裂性能および引き裂き強度を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
まず、天然ゴム30〜90重量%およびエポキシ化天然ゴム70〜10重量%からなるゴム成分100重量部に対して、シリカを15〜60重量部含有するサイドウォール用ゴム組成物について、以下に説明する。
【0014】
本発明のサイドウォール用ゴム組成物におけるゴム成分は、天然ゴム(NR)およびエポキシ化天然ゴム(ENR)からなる。
【0015】
エポキシ化天然ゴムは、市販のエポキシ化天然ゴムを用いてもよいし、天然ゴムをエポキシ化して用いてもよい。天然ゴムをエポキシ化する方法としては、とくに限定されるものではなく、クロルヒドリン法、直接酸化法、過酸化水素法、アルキルヒドロペルオキシド法、過酸法などの方法を用いて行なうことができる。たとえば、天然ゴムに過酢酸や過ギ酸などの有機過酸を反応させる方法などがあげられる。
【0016】
エポキシ化天然ゴムのエポキシ化率は12〜50モル%であることが好ましい。エポキシ化率が12モル%未満では、エポキシ化天然ゴムが天然ゴムと相溶化するため効果が少なくなる傾向があり、50モル%をこえると、得られたゴム組成物のゴム強度が充分ではない傾向がある。
【0017】
ゴム成分中の天然ゴムの含有率は30重量%以上、好ましくは40重量%以上であり、エポキシ化天然ゴムの含有率は70重量%以下、好ましくは50重量%以下である。天然ゴムの含有率が30重量%未満であり、エポキシ化天然ゴムの含有率が70重量%をこえると、得られたゴム組成物のゴム強度が充分ではない。また、天然ゴムの含有率は90重量%以下、好ましくは80重量%以下であり、エポキシ化天然ゴムの含有率は10重量%以上、好ましくは20重量%以上である。天然ゴムの含有率が90重量%より大きく、エポキシ化天然ゴムの含有率が10重量%より小さいと、耐屈曲亀裂性能が悪化する。
【0018】
ゴム成分としては、天然ゴムおよびエポキシ化天然ゴム以外にもポリブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、イソブチレンとp−メチルスチレンとの共重合体のハロゲン化物などのゴムを用いることができるが、石油外資源から得られることから、天然ゴムおよびエポキシ化天然ゴムのみからなることが好ましい。
【0019】
本発明のサイドウォール用ゴム組成物におけるシリカとしては、とくに制限はなく、タイヤ工業において一般的に使用されているものを用いることができる。
【0020】
シリカの含有量は、ゴム成分100重量部に対して15重量部以上であり、好ましくは20重量部以上である。シリカの含有量が15重量部未満では、引き裂き強さが低く、走行中に突起物と接触したときに、切れが発生する可能性がある。また、シリカの含有量は60重量部以下、好ましくは50重量部以下である。シリカの含有量が60重量部をこえると、耐屈曲亀裂性能が劣る。
【0021】
本発明において、シリカとともにシランカップリング剤を併用することができる。シランカップリング剤としては特に制限はなく、Si69のようにタイヤ工業において一般的に用いられているものを用いることができる。
【0022】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100重量部に対して4〜20重量部であることが好ましい。含有量が4重量部未満では、耐屈曲亀裂性能が劣る傾向があり、20重量部をこえても、耐屈曲亀裂性能が劣る傾向がある。
【0023】
本発明のサイドウォール用ゴム組成物は、さらに炭酸カルシウムを含有してもよい。
【0024】
炭酸カルシウムの含有量は、ゴム成分100重量部に対して10重量部以上であることが好ましく、20重量部以上であることがより好ましい。含有量が10重量部未満では、得られたゴム組成物における熱老化後の亀裂成長に対する耐性が小さい。また、炭酸カルシウムの含有量は40重量部以下であることが好ましい。含有量が40重量部をこえると、引き裂き強さが不充分となる。
【0025】
本発明のサイドウォール用ゴム組成物は、石油外の資源を利用することを目的としており、アロマオイルを用いないことが好ましい。
【0026】
また、本発明のサイドウォール用ゴム組成物は、石油外の資源を利用することを目的としており、石油系レジンを用いないことが好ましい。
【0027】
本発明のサイドウォール用ゴム組成物は、混練工程(1)および(2)からなる製造方法により得られる。
【0028】
混練工程(1)では、天然ゴムおよびシリカを混練することが好ましい。
【0029】
混練工程(1)における天然ゴムの配合量は、全混練工程において用いられる全天然ゴムの配合量の40〜100重量%であることが好ましい。配合量が40重量%未満では、天然ゴムに対するシリカ量の比率が高くなるため、混練り物の粘度が非常に高くなり、加工しにくい傾向がある。配合量は100重量%であることが最も好ましい。
【0030】
混練工程(1)におけるシリカの配合量は、全混練工程において用いられる全シリカの配合量の80〜100重量%であることが好ましい。配合量が80重量%未満では、工程2においてENR中にシリカが多く配合されて硬い層ができるため、耐屈曲亀裂性能が劣る傾向がある。配合量は100重量%であることが最も好ましい。
【0031】
また、混練工程(1)においては、軟化剤、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛などのゴム組成物に配合される他の薬品も配合することができる。
【0032】
混練工程(2)では、エポキシ化天然ゴムを混練することが好ましい。
【0033】
混練工程(2)におけるエポキシ化天然ゴムの配合量は、全混練工程において用いられる全エポキシ化天然ゴムの配合量の50〜100重量%であることが好ましい。配合量が50重量%未満では、ENR中にシリカが多く配合されて硬い層ができるため、耐屈曲亀裂性能が劣る傾向がある。また、エポキシ化天然ゴムの配合量は100重量%であることが最も好ましい。
【0034】
混練工程(2)において、炭酸カルシウムを混練することで、得られたゴム組成物の耐屈曲亀裂性能および引き裂き強さは良好である。
【0035】
本発明のサイドウォール用ゴム組成物を通常の方法により、本発明のゴム組成物からなるサイドウォールを含有するタイヤを製造することができる。すなわち、必要に応じて前記添加剤を配合した本発明のサイドウォール用ゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤのサイドウォールの形状にあわせて押出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【0036】
次に、天然ゴム60〜100重量%からなるゴム成分、および白色充填剤80重量%以上からなる充填剤を含有し、さらに該ゴム組成物のトルエン膨潤度が320以上であるサイドウォール用ゴム組成物について、以下に説明する。
【0037】
サイドウォール用ゴム組成物におけるゴム成分は、天然ゴムからなる。
【0038】
ゴム成分中における天然ゴムの含有量は、60重量%以上であり、好ましくは70重量%以上である。天然ゴムの含有量が60重量%未満では、石油外資源の比率が小さくなる。また、天然ゴムの含有量は100重量%以下、好ましくは70重量%以下とすることができる。天然ゴムの含有量は、石油資源を使用を抑制する効果が得られるため100重量%であることが最も好ましい。
【0039】
サイドウォール用ゴム組成物のゴム成分としては、天然ゴム以外にもブタジエンゴム、またはシンジオタクチック構造を有するブタジエンゴム(シンジオタクチックブタジエンゴム)、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、イソブチレンとp−メチルスチレンとの共重合体のハロゲン化物などのゴムを含有してもよく、耐屈曲亀裂性能が向上することから、とくにブタジエンゴムおよび/またはシンジオタクチックブタジエンゴムを含有することが好ましい。
【0040】
ゴム成分中におけるブタジエンゴムおよび/またはシンジオタクチックブタジエンゴムの含有率は40重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましい。含有量が40重量%をこえると、ゴム成分における石油資源の含有比率が大きくなるため、環境的観点から好ましくない。環境的観点から、ブタジエンゴムおよび/またはシンジオタクチックブタジエンゴムは含有しないことが好ましい。
【0041】
本発明のサイドウォール用ゴム組成物に使用される充填剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、セリサイト、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、クレーなどが挙げられる。本発明のサイドウォール用ゴム組成物としては、シリカ、炭酸カルシウム、セリサイト、水酸化アルミニウム、クレーなどの白色充填剤を用いることが好ましい。これらの白色充填剤を用いることで、カーボンブラックなどの充填剤の場合と異なり、石油資源の使用を抑制するという利点がある。
【0042】
充填剤中の白色充填剤の含有率は80重量%以上、好ましくは95重量%以上である。含有率が80重量%未満では、石油資源の比率が高くなるため、環境的観点から好ましくない。
【0043】
白色充填剤として、シリカを使用する場合、シランカップリング剤を併用することが好ましい。
【0044】
シランカップリング剤の配合量は、シリカ100重量部に対して4〜20重量部とすることが好ましい。配合量が4重量部未満では、耐屈曲亀裂性能が劣る傾向がある。
【0045】
本発明のサイドウォール用ゴム組成物は、前記ゴム成分、充填剤、シランカップリング剤および以外にもワックス、石油系レジン、老化防止剤、ステアリン酸、亜鉛華、加硫剤および加硫促進剤を配合することができる。
【0046】
本発明のサイドウォール用ゴム組成物のトルエン膨潤度は320以上、好ましくは340以上である。トルエン膨潤度が320未満では、耐屈曲亀裂性能が悪化する。また、トルエン膨潤度は500以下であることが好ましく、480以下であることがより好ましい。トルエン膨潤度が500をこえると、オゾンにより生じる微小なクラックが発生し、好ましくない傾向がある。ここで、トルエン膨潤度とは、ゴムの架橋密度の指標となるものであり、以下の式で表される。
トルエン膨潤度(%)
=(トルエン浸漬後重量(g))/(トルエン浸漬前重量(g))×100
【0047】
トルエン膨潤度が大きいほど、架橋密度が低く、好ましくはない。本発明のゴム組成物における高い架橋密度は、硫黄の量に起因しており、硫黄量、加硫促進剤を減らすことにより、トルエン膨潤度を大きくすることが可能である。
【0048】
本発明のサイドウォール用ゴム組成物を通常の方法により、本発明のゴム組成物からなるサイドウォールを含有するタイヤを製造することができる。すなわち、必要に応じて前記添加剤を配合した本発明のサイドウォール用ゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤのサイドウォールの形状にあわせて押出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【実施例】
【0049】
以下に実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0050】
実施例1〜11および比較例1〜14
以下に、実施例1〜11および比較例1〜14にて使用した各種薬品について詳細に説明する。
【0051】
(試薬の説明)
NR:TSR20
BR:宇部興産(株)製のBR150B
ENR25:クンプーランガスリー社(Kumpulan Guthrie Berhad)(マレーシア)製の(エポキシ化率25モル%)
ENR50:クンプーランガスリー社(Kumpulan Guthrie Berhad)(マレーシア)製の(エポキシ化率50モル%)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のFEF
シリカ:デグサ社製のVN3
炭酸カルシウム:白石工業(株)製の白艶化CC
シランカップリング剤:デグサ社製のSi69
アロマオイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX−140
石油系レジン:(株)日本触媒製のSP1068レジン
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
老化防止剤:住友化学工業(株)製のアンチゲン6c
ステアリン酸:日本油脂(株)製のステアリン酸「つばき」
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤NS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルファンアミド)
【0052】
(ゴム組成物の製造)
表1および表2の工程(1)に記載するゴム成分、充填剤、軟化剤、石油系レジン、ワックス、老化防止剤、ステアリン酸および酸化亜鉛を、充填率が58%になるように(株)神戸製鋼製の1.7Lバンバリーに充填し、80rpmで140℃に到達するまで混練した。
【0053】
実施例3〜6および実施例9、ならびに比較例6〜7および比較例14に関しては、次に、工程(1)で得られた混練物に、表1および2の工程(2)に示す薬品を配合してバンバリーミキサーを用いて70rpmで3分間混練した。その他の実施例および比較例で得られた混練物については、工程(2)を行なわなかった。
【0054】
工程(1)または工程(2)で得られた混練物に対して、工程(3)に記載する硫黄および加硫促進剤を表1および2に示す量配合し、得られた未加硫ゴム組成物を160℃で20分間加硫することにより、ゴム組成物を製造した。得られたゴム組成物を使用して、以下の試験をおこなった。
【0055】
<試験>
(硬度)
JIS−K6253の「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」の試験方法に準じて、スプリング式タイプAにて硬度を測定した。
【0056】
(引き裂き試験)
JIS−K6252の「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム−引裂強さの求め方」の試験方法に準じて、切り込み無しのアングル形試験片を使うことにより引き裂き強さ(N/mm)を測定した。
【0057】
(De mattia試験)
JIS−K6260の「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴムのデマッチャ屈曲亀裂成長試験方法」の試験方法に準じて、室温25℃の条件でゴム組成物サンプルに1mmの破断が生じるまでの回数を測定し、得られた回数を対数で表したものである。数値が大きいほど耐屈曲亀裂性能が良好である。なお、70%および110%とは、もとのゴム組成物サンプルの長さに対する伸び率を表す。
【0058】
(熱老化試験)
JIS−K6260の「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴムのデマッチャ屈曲亀裂成長試験方法」の試験方法に準じて、室温100℃の条件下で48時間、ゴム組成物サンプルに1mmの破断が生じるまでの屈曲回数を測定し、得られた回数を対数で表したものである。数値が大きいほど、耐屈曲亀裂性能が良好である。
【0059】
結果を表1および2に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
実施例1〜6のように、天然ゴムと別の層分離ができるようなポリマーとして、天然資源から改質したエポキシ化天然ゴムを用いることで、耐屈曲亀裂性能を改善することができ、なかでも混練工程(1)にて天然ゴムおよびシリカを混練し、混練工程(2)においてエポキシ化天然ゴムを混練した実施例3〜6では、引き裂き強さと耐屈曲亀裂性能をバランスよく向上させることができる。
【0063】
また、実施例7〜11のように、ゴム成分にエポキシ化天然ゴム、および炭酸カルシウムを用いることで、耐屈曲亀裂性能を改善することができ、なかでも混練工程(1)にて天然ゴムおよびシリカを混練し、混練工程(2)においてエポキシ化天然ゴムおよび炭酸カルシウムを混練した実施例9では、引き裂き強さと耐屈曲亀裂性能をバランスよく向上させることができ、さらに熱老化後の耐屈曲亀裂性能をも向上させることができる。
【0064】
比較例3のように、天然ゴムのみをゴム成分とした場合、耐屈曲亀裂性能が低い。
【0065】
比較例4および5のように、天然ゴムのみをゴム成分とし、さらに充填剤を減らすと引き裂き強さが低下するため、サイドウォール部としてゴム組成物を用いた場合、サイドウォールに傷がつきやすい。
【0066】
比較例6のように、エポキシ化天然ゴムを使用せず、混練工程(1)にて天然ゴムおよびシリカを混練し、混練工程(2)において残りの天然ゴムを混練した場合、引き裂き強さと耐屈曲亀裂性能の向上効果が低い。
【0067】
比較例8のように、天然ゴムのみをゴム成分とし、シリカの代わりに炭酸カルシウムを配合させた場合、引き裂き強さが大幅に低下する。
【0068】
比較例9のように、天然ゴムのみをゴム成分とし、多量のシリカと炭酸カルシウムを配合した場合、耐屈曲亀裂性能が低下する。
【0069】
比較例10〜14のように、ゴム成分に天然ゴムのみを用い、さらにシリカおよび炭酸カルシウムを用いた場合、熱老化後の耐屈曲亀裂性能を向上させることはできるが、引き裂き強さが充分ではなかった。
【0070】
実施例12〜20および比較例15〜17
以下に実施例12〜20および比較例15〜17において使用した各種薬品について詳細に説明する。
【0071】
(試薬の説明)
NR:TSR20
SBR:住友化学工業(株)製のSBR1502
BR:宇部興産(株)製のBR150B
シンジオタクチックBR:宇部興産(株)製のVCR412
カーボンブラック:三菱化学(株)製のHAF
シリカ:デグサ社製のVN3
炭酸カルシウム:白石工業(株)製の白艶化CC
植物油:日本オイリオ(株)製の大豆油
シランカップリング剤:デグサ社製のSi69
石油系レジン:(株)日本触媒製のSP1068レジン
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
老化防止剤:住友化学工業(株)製のアンチゲン6c
ステアリン酸:日本油脂(株)製のステアリン酸「つばき」
亜鉛華:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤TBBS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルファンアミド)
【0072】
これら薬品のうち石油外資源は、NR、シリカ、硫黄、炭酸カルシウム、セリサイト、植物油、シランカップリング剤、ステアリン酸、亜鉛華である。
【0073】
(ゴム組成物の製造)
表3に記載する硫黄および加硫促進剤以外の各種薬品を(株)神戸製鋼製の1.7Lバンバリーに充填し、77rpmで145℃に到達するまで混練した。
【0074】
得られた混練物に対して、硫黄および加硫促進剤を表3に示す量配合し、オープンロールで80℃で6分間混練し、得られた未加硫ゴム組成物を150℃で30分間加硫することにより、ゴム組成物を製造した。得られたゴム組成物を使用して、以下の試験をおこなった。
【0075】
<試験>
(トルエン膨潤度)
ゴム組成物から切り出し、あらかじめ重量を測定した厚み0.5cm以下のテストサンプルを1昼夜トルエン溶液に浸した。トルエン溶液からテストサンプルを取り出し、表面についた余分なトルエンをふき取り、トルエン膨潤後の重量を測定した。膨潤前後の重量の変化から、トルエン膨潤度を次式により算出した。数値が大きいほど、架橋密度が高いことを示す。
トルエン膨潤度(%)
=(トルエン浸漬後重量(g))/(トルエン浸漬前重量(g))×100
【0076】
(硬度)
JIS−K6260の「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴムのデマッチャ屈曲亀裂成長試験方法」の試験方法に準じて、ゴム組成物の硬度を測定した。
【0077】
(亀裂成長試験)
JIS−K6260の「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴムのデマッチャ屈曲亀裂成長試験方法」に準じて、熱老化後のゴム組成物を50%伸張させ、亀裂が1mmに成長するまでの屈曲回数を評価した。数値が大きいほど、耐屈曲亀裂性能が良好である。
【0078】
結果を表3に示す。なお、表3の石油外比率とは、ゴム組成物の配合中における石油外資源の含有比率を示す。
【0079】
【表3】

【0080】
実施例12〜14のように、トルエン膨潤度が高く、さらに白色充填剤を含有することで耐屈曲亀裂性能が改善される。
【0081】
実施例15〜20のように、ゴム成分に少量のブタジエンゴムまたはシンジオタクチックブタジエンゴムを配合することで、さらに耐屈曲亀裂性能が改善することができる。
【0082】
比較例16のように、充填剤として白色充填剤を配合しない場合、耐屈曲亀裂性能に劣る。
【0083】
比較例17のように、トルエン膨潤度が低い場合、耐屈曲亀裂性能に劣る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム30〜90重量%およびエポキシ化天然ゴム70〜10重量%からなるゴム成分100重量部に対して、シリカを15〜60重量部含有するサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項2】
さらに、炭酸カルシウムを10〜40重量部含有する請求項1記載のサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項3】
(1)天然ゴムおよびシリカを混練りする工程、ならびに
(2)エポキシ化天然ゴムを混練りする工程からなる製造方法により得られる請求項1または2記載のサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項4】
天然ゴム60〜100重量%からなるゴム成分、および
白色充填剤80重量%以上からなる充填剤を含有するサイドウォール用ゴム組成物であって、
該ゴム組成物のトルエン膨潤度が320以上であるサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項5】
さらに、ブタジエンゴムおよび/またはシンジオタクチックブタジエンゴムを含有する請求項4記載のサイドウォール用ゴム組成物。

【公開番号】特開2006−70093(P2006−70093A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252506(P2004−252506)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】