説明

サイドスタンドの位置検出装置

【課題】磁石の磁力のばらつきに起因して検出結果にばらつきが発生するのを抑制することが可能なサイドスタンドの位置検出装置を提供する。
【解決手段】サイドスタンドの位置検出装置5は、磁石51と、磁石51と対向する位置に配置されるホールIC52と、サイドスタンド1の回動動作に伴って回動する遮磁板53とを備える。遮磁板53は、突出部53cを有する。そして、遮磁板53の突出部53cは、サイドスタンド1が起立位置にある場合に、磁石51とホールIC52との間の所定領域Rに位置し、サイドスタンド1が収納位置にある場合に、所定領域Rから退避した領域に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車に回動可能に設けられたサイドスタンドの位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、二輪車のサイドスタンドは、起立位置と収納位置との間において回動可能に、二輪車のブラケットに取り付けられている。そして、従来では、サイドスタンドが起立位置のときに、二輪車が走行しないようにするために、サイドスタンドの位置を検出し、その検出結果に応じて走行の許可・禁止の制御を行う装置が提案されている(たとえば、特許文献1および2参照)。
【0003】
上記特許文献1には、磁石板と、磁石板と対向する位置に配置されるホールICとを備えたサイドスタンドの位置検出装置が開示されている。このサイドスタンドの位置検出装置では、磁石板がサイドスタンドとともに回動することにより、ホールICと対向する磁石板の極性が切り替えられる。これによって、ホールICの出力信号のオン/オフ状態が切り替えられる。そして、二輪車では、ホールICの出力信号のオン/オフ状態に基づいて、サイドスタンドの位置が判断される。
【0004】
また、上記特許文献2には、磁石面を有する回転部材と、磁石面と対向する位置に配置されるリードスイッチとを備えたサイドスタンドの位置検出装置が開示されている。このサイドスタンドの位置検出装置では、回転部材がサイドスタンドとともに回動することにより、リードスイッチと対向する磁石面の極性が切り替えられる。これによって、リードスイッチのオン/オフ状態が切り替えられる。そして、二輪車では、リードスイッチのオン/オフ状態に基づいて、サイドスタンドの位置が判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−130314号公報
【特許文献2】特開2004−355903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたサイドスタンドの位置検出装置では、磁石板がホールICに対して相対的に回動することにより、ホールICと対向する磁石板の極性が切り替えられる。そのため、磁石板の磁力のばらつきに起因して、ホールICの出力信号の切替タイミングにばらつきが発生しやすいという問題点がある。すなわち、磁石板の磁力のばらつきに起因して、サイドスタンドの位置の検出結果にばらつきが発生しやすいという問題点がある。なお、上記した磁力のばらつきには、磁石板の作製時に発生するばらつきや、温度に起因して発生するばらつきが含まれる。
【0007】
なお、上記特許文献2のサイドスタンドの位置検出装置についても、同様の問題点がある。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するものであって、その目的とするところは、磁石の磁力のばらつきに起因して検出結果にばらつきが発生するのを抑制することが可能なサイドスタンドの位置検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のサイドスタンドの位置検出装置は、起立位置と収納位置との間において回動可能に、二輪車に設けられたサイドスタンドの位置検出装置において、磁石と、磁石と対向する位置に配置される磁気センサと、サイドスタンドの回動動作に伴って移動する可動部材とを備える。可動部材は、サイドスタンドが起立位置および収納位置のいずれか一方にある場合に、磁石と磁気センサとの間の所定領域に位置することにより、磁石による磁界から磁気センサを遮蔽し、サイドスタンドが起立位置および収納位置の他方にある場合に、所定領域から退避した領域に位置する。
【0010】
このように構成することによって、サイドスタンドの回動動作に伴って移動する可動部材が所定領域に位置するか否かにより、磁石による磁界から磁気センサを遮蔽するか否かが切り替えられる。したがって、磁石が磁気センサに対して回動する場合に比べて、磁石の磁力にばらつきがある場合にも、磁気センサの出力信号が切り替わる際のサイドスタンドの検出位置にばらつきが発生するのを抑制し、検出誤差を小さくすることができる。
【0011】
上記サイドスタンドの位置検出装置において、磁気センサの出力信号に基づいてサイドスタンドの位置を判定するとともに、その判定結果を出力する判定回路をさらに備えるようにしてもよい。
【0012】
上記サイドスタンドの位置検出装置において、可動部材は、サイドスタンドの回動軸部に取り付けられており、サイドスタンドの回動動作に伴って回動するようにしてもよい。
【0013】
上記可動部材が回動軸部に取り付けられたサイドスタンドの位置検出装置において、可動部材は、サイドスタンドの回動軸部に取り付けられる円板部と、円板部の外周に、円板部の径方向に突出するように形成された第1突出部とを有し、可動部材の第1突出部は、サイドスタンドが起立位置または収納位置にある場合に、磁石と磁気センサとの間の所定領域に位置するようにしてもよい。
【0014】
上記可動部材が回動軸部に取り付けられたサイドスタンドの位置検出装置において、可動部材は、サイドスタンドの回動軸部に取り付けられる円板部と、円板部の外周に、円板部に対して垂直な方向に突出するように形成された第2突出部とを有し、可動部材の第2突出部は、サイドスタンドが起立位置または収納位置にある場合に、磁石と磁気センサとの間の所定領域に位置するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、磁石の磁力のばらつきに起因して検出結果にばらつきが発生するのを抑制することが可能なサイドスタンドの位置検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態によるサイドスタンドの位置検出装置が設けられたサイドスタンド装置を示した斜視図である。
【図2】図1のサイドスタンド装置の概略を示した平面図である。
【図3】図1のサイドスタンド装置の分解斜視図である。
【図4】図3の回動軸に遮磁板を取り付けた状態を示した斜視図である。
【図5】図1のサイドスタンド装置のサイドスタンドが収納位置に位置する状態を示した斜視図である。
【図6】図5のサイドスタンド装置の概略を示した平面図である。
【図7】図1のサイドスタンドの位置検出装置の動作を説明するための図である。
【図8】図1のサイドスタンドの位置検出装置の動作を説明するための図である。
【図9】図1のサイドスタンドの位置検出装置の動作を説明するための図である。
【図10】図1のサイドスタンドの位置検出装置の動作を説明するための図である。
【図11】磁石およびホールICに対して遮磁板が移動する場合の磁束密度の変化を示したグラフである。
【図12】ホールICに対して磁石が移動する場合の磁束密度の変化を示したグラフである。
【図13】本実施形態の変形例によるサイドスタンドの位置検出装置の概略を示した側面図である。
【図14】図13のサイドスタンドの位置検出装置の動作を説明するための図である。
【図15】図13のサイドスタンドの位置検出装置の動作を説明するための図である。
【図16】図13のサイドスタンドの位置検出装置の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
まず、図1〜図6を参照して、本発明の一実施形態によるサイドスタンドの位置検出装置5およびサイドスタンド装置100の構成について説明する。
【0019】
サイドスタンド装置100は、図1および図2に示すように、自動二輪車のブラケット150に取り付けられている。このサイドスタンド装置100は、サイドスタンド1と、保持部材2と、固定部材3と、回動軸4と、サイドスタンドの位置検出装置5(図2参照)とを備えている。なお、回動軸4は、本発明の「回動軸部」の一例である。
【0020】
サイドスタンド1は、保持部材2に保持されている。保持部材2には、図3に示すように、回動軸4が挿入される貫通孔2aが形成されている。この貫通孔2aには、段差部が形成されており、貫通孔2aは、第1の孔径を有する部分2bと、第1の孔径よりも長い第2の孔径を有する部分2cとを有する。貫通孔2aの部分2cは、D字状に形成されている。
【0021】
固定部材3は、自動二輪車のブラケット150(図1参照)に取り付けられている。この固定部材3には、回動軸4が挿入される貫通孔3aと、カバー部材31により覆われる開口部3bとが形成されている。貫通孔3aは、Oリング6aおよび6b(図2参照)により封止されている。
【0022】
回動軸4は、円筒状に形成されており、外径の長さが異なる円筒部41、42、および43を有する。この回動軸4は、図2に示すように、保持部材2の貫通孔2aおよび固定部材3の貫通孔3aに挿入されている。
【0023】
円筒部41は、円筒部42の外径よりも短い外径を有する。この円筒部41の端部には、Eリング7が取り付けられる溝部41aが形成されている。なお、Eリング7とOリング6bとの間には、座金8が取り付けられている。
【0024】
円筒部42は、第1の孔径(部分2b)よりも若干短い外径を有する。この円筒部42には、後述する遮磁板53を取り付けるための切欠部42a(図3参照)が形成されている。
【0025】
円筒部43は、第1の孔径よりも長く、かつ、第2の孔径(部分2c)よりも若干短い外径を有する。この円筒部43には切欠部43a(図3参照)が形成されており、円筒部43が貫通孔2aの部分2cに嵌め込まれている。これにより、保持部材2は、固定部材3に対して回動軸4とともに回動可能な状態で、固定部材3に取り付けられている。
【0026】
本実施形態によるサイドスタンドの位置検出装置5(図2参照)は、固定部材3の内部に設けられており、磁石51と、ホールIC52と、遮磁板53と、判定回路54(図3参照)とを含んでいる。なお、ホールIC52は、本発明の「磁気センサ」の一例であり、遮磁板53は、本発明の「可動部材」の一例である。
【0027】
磁石51は、カバー部材31に取り付けられている。ホールIC52は、磁石51と対向する位置に配置されるように、プリント基板9に取り付けられている。ホールIC52は、検出される磁界の強度に応じてL(Low)レベルまたはH(High)レベルの信号を判定回路54に出力する。
【0028】
遮磁板53は、鉄などの強磁性体からなる。この遮磁板53は、図3および図4に示すように、取付孔53aが形成された円板部53bと、円板部53bの外周に、円板部53bの径方向に突出するように形成された突出部53cとを有する。なお、突出部53cは、本発明の「第1突出部」の一例である。
【0029】
取付孔53aは、円筒部42の外径よりも若干長い孔径を有するとともに、D字状に形成されている。そして、図4に示すように、円筒部42に取付孔53aが嵌め込まれることにより、遮磁板53は、回動軸4とともに回動可能な状態で、回動軸4に取り付けられている。
【0030】
判定回路54(図3参照)は、プリント基板9に形成されている。この判定回路54は、ホールIC52の出力信号に基づいてサイドスタンド1の位置を判定するとともに、その判定結果を自動二輪車の制御部(図示省略)に出力する。なお、判定結果は、プリント基板9に接続されるワイヤハーネス10を介して、自動二輪車の制御部に出力される。
【0031】
サイドスタンド装置100では、サイドスタンド1が起立位置(図1および図2参照)と収納位置(図5および図6参照)との間において回動可能に設けられている。ここで、起立位置とは、サイドスタンド1が自動二輪車に対して下方を向くような位置であり、自動二輪車の駐車時に、サイドスタンド1が地面と接触することにより、自動二輪車が倒れないように支持する位置である。また、収納位置とは、サイドスタンド1が自動二輪車に対して後方を向くような位置であり、自動二輪車の走行時に、サイドスタンド1が地面と接触しないように、起立位置から退避した位置である。なお、サイドスタンド1は、付勢部材(図示省略)により起立位置側または収納位置側に付勢されており、起立位置または収納位置に位置する。
【0032】
次に、図1〜図3および図5〜図10を参照して、本実施形態によるサイドスタンドの位置検出装置5およびサイドスタンド装置100の動作について説明する。
【0033】
(起立位置)
まず、図1および図7に示すように、サイドスタンド1が起立位置にある場合には、図2に示すように、遮磁板53の突出部53cが磁石51とホールIC52との間の所定領域Rに位置している。このため、遮磁板53の突出部53cにより、磁石51による磁界からホールIC52が遮蔽されている。これにより、ホールIC52は、判定回路54(図3参照)にLレベルの信号を出力している。
【0034】
このとき、判定回路54は、ホールIC52からLレベルの信号が入力されることにより、サイドスタンド1が起立位置にあると判定するとともに、その判定結果を自動二輪車の制御部(図示省略)に出力する。そして、自動二輪車では、サイドスタンド1が起立位置にあるとの判定結果が入力されることにより、エンジン(図示省略)の起動が禁止され、走行不可能な状態になる。なお、起立位置は、たとえば、回動軸4を中心にして鉛直方向に対して約15度前方(図7の矢印C方向)に傾斜した位置である。
【0035】
(起立位置→収納位置)
次に、図7に示した起立位置から、サイドスタンド1がA方向に回動した場合には、保持部材2、回動軸4、および遮磁板53もサイドスタンド1の回動動作に伴ってA方向に回動する。そして、サイドスタンド1が収納位置まで回動する過程において、図8に示すように、遮磁板53の突出部53cが磁石51とホールIC52との間の所定領域Rから退避する。このため、遮磁板53の突出部53cが所定領域R以外の領域に位置することにより、遮磁板53の突出部53cによる遮蔽状態が解除され、ホールIC52により検出される磁界の強度が大きくなる。
【0036】
そして、ホールIC52により検出される磁界の強度が所定の値よりも大きくなった場合には、ホールIC52から出力される信号がLレベルからHレベルに切り替えられる。このとき、判定回路54(図3参照)は、ホールIC52からHレベルの信号が入力されることにより、サイドスタンド1が収納位置にあると判定するとともに、その判定結果を自動二輪車の制御部(図示省略)に出力する。なお、この出力信号がLレベルからHレベルに切り替えられる位置は、たとえば、回動軸4を中心にして鉛直方向に対して約60度後方(図8の矢印D方向)に傾斜した位置である。
【0037】
その後、図5および図9に示すように、サイドスタンド1が収納位置まで回動する。このとき、自動二輪車では、サイドスタンド1が収納位置にあるとの判定結果が入力されることにより、エンジン(図示省略)の起動が可能となり、走行可能な状態になる。なお、収納位置は、たとえば、回動軸4を中心にして鉛直方向に対して約90度後方(図9の矢印D方向)に傾斜した位置である。
【0038】
(収納位置→起立位置)
次に、図5および図9に示した収納位置から、サイドスタンド1がB方向に回動した場合には、保持部材2、回動軸4、および遮磁板53もサイドスタンド1の回動動作に伴ってB方向に回動する。そして、サイドスタンド1が起立位置まで回動する過程において、図10に示すように、遮磁板53の突出部53cが磁石51とホールIC52との間の所定領域Rに進入する。このため、遮磁板53の突出部53cにより、磁石51による磁界からホールIC52が遮蔽され、ホールIC52により検出される磁界の強度が小さくなる。
【0039】
そして、ホールIC52により検出される磁界の強度が所定の値よりも小さくなった場合には、ホールIC52から出力される信号がHレベルからLレベルに切り替えられる。なお、この所定の値は、ホールIC52の特性のヒステリシスに起因して、信号がLレベルからHレベルに切り替えられる際の所定の値とは異なる。したがって、この出力信号がHレベルからLレベルに切り替えられる位置は、たとえば、回動軸4を中心にして鉛直方向に対して約30度後方(図10の矢印D方向)に傾斜した位置である。
【0040】
このとき、判定回路54(図3参照)は、ホールIC52からLレベルの信号が入力されることにより、サイドスタンド1が起立位置にあると判定するとともに、その判定結果を自動二輪車の制御部(図示省略)に出力する。その後、図1および図7に示すように、サイドスタンド1が起立位置まで回動する。このとき、自動二輪車では、サイドスタンド1が起立位置にあるとの判定結果が入力されることにより、エンジン(図示省略)の起動が禁止され、走行不可能な状態になる。
【0041】
本実施形態では、上記のように、サイドスタンド1の回動動作に伴って回動する遮磁板53の突出部53cが、磁石51とホールIC52との間の所定領域Rに位置するか否かにより、磁石51による磁界からホールIC52を遮蔽するか否かを切り替えるようにしている。このため、磁石が磁気センサに対して回動する場合に比べて、磁石51の磁力にばらつきがある場合にも、ホールIC52の出力信号が切り替わる際のサイドスタンド1の検出位置(検出角度)にばらつきが発生するのを抑制することができる。すなわち、サイドスタンド1の位置の検出誤差を小さくすることができる。
【0042】
また、本実施形態では、サイドスタンド1が起立位置にあるときに、磁石51とホールIC52との間に遮磁板53の突出部53cが介在しており、ホールIC52が「Lレベル」の信号を出力する。このため、サイドスタンド1が振動することに起因して、磁石51とホールIC52との距離が離れた場合にも、ホールIC52が引き続き「Lレベル」の信号を出力する。したがって、振動に起因してサイドスタンド1の位置が収納位置であると誤判定されることがない。これによって、サイドスタンド1が起立した状態で自動二輪車が走行可能になるのを防止し、安全を確保することができる。なお、本実施形態では、サイドスタンド1が収納位置にあるときに、振動に起因して、ホールIC52により検出される磁界の強度が低下することにより、ホールIC52がLレベルの信号を出力した場合には、判定回路54がノイズとして除去すればよい。
【0043】
また、本実施形態では、遮磁板53の突出部53cの位置および円周方向における長さを調整することにより、容易に、ホールIC52の出力信号が切り替わる際のサイドスタンド1の位置(検出角度)を調整することができる。したがって、検出角度の異なる種々の二輪車に本実施形態によるサイドスタンドの位置検出装置5を容易に適用することができる。
【0044】
次に、上記した本実施形態の効果を確認するために行った比較実験について説明する。この実験では、磁石およびホールICに対して遮磁板が移動する場合の磁束密度の変化と、ホールICに対して磁石が移動する場合の磁束密度の変化とを測定した。これらの測定は、それぞれ、磁力の異なる3つの磁石を用いて、3つの磁石毎に測定した。そして、それらの測定結果を図11および図12に示した。なお、このホールICの出力信号がHレベルからLレベルに切り替わる磁束密度Brpは4mTである。
【0045】
磁石およびホールICに対して遮磁板が移動する場合(本発明)には、図11に示すように、磁束密度が4mTのときの磁石の磁力に起因する移動量の誤差E1が約1mmであった。一方、ホールICに対して磁石が移動する場合(比較例)には、図12に示すように、磁束密度が4mTのときの磁石の磁力に起因する移動量の誤差E2が約2mmであった。
【0046】
したがって、磁石の磁力にばらつきがある場合において、磁石およびホールICに対して遮磁板が移動する場合には、ホールICに対して磁石が移動する場合に比べて、ホールICの出力信号が切り替わる際の移動量にばらつきが発生するのを抑制できることが判明した。
【0047】
次に、図13を参照して、本実施形態の変形例によるサイドスタンドの位置検出装置200の構成について説明する。
【0048】
変形例によるサイドスタンドの位置検出装置200は、図13に示すように、磁石201と、ホールIC202と、遮磁板203とを備えている。なお、サイドスタンドの位置検出装置200のその他の構成は、前述のサイドスタンドの位置検出装置5と同様であるので説明を省略する。また、ホールIC202は、本発明の「磁気センサ」の一例であり、遮磁板203は、本発明の「可動部材」の一例である。
【0049】
磁石201およびホールIC202は、回動軸4の軸方向と直交する方向において対向するように配置されている。
【0050】
遮磁板203は、円板部203aと、円板部203aの外周に、円板部203aに対して垂直な方向に突出するように形成された突出部203bとを有する。なお、突出部203bは、本発明の「第2突出部」の一例である。
【0051】
次に、図13〜図16を参照して、変形例によるサイドスタンドの位置検出装置200の動作について説明する。
【0052】
(起立位置)
まず、図13に示すように、サイドスタンド1が起立位置にある場合には、図14に示すように、遮磁板203の突出部203bが磁石201とホールIC202との間の所定領域Rに位置している。このため、遮磁板203の突出部203bにより、磁石201による磁界からホールIC202が遮蔽されている。これにより、ホールIC202は、判定回路(図示省略)にLレベルの信号を出力している。
【0053】
このとき、判定回路は、ホールIC202からLレベルの信号が入力されることにより、サイドスタンド1が起立位置にあると判定するとともに、その判定結果を自動二輪車の制御部(図示省略)に出力する。そして、自動二輪車では、サイドスタンド1が起立位置にあるとの判定結果が入力されることにより、エンジン(図示省略)の起動が禁止され、走行不可能な状態になる。
【0054】
(起立位置→収納位置)
次に、図13に示した起立位置から、サイドスタンド1がA方向に回動した場合には、回動軸4および遮磁板203もサイドスタンド1の回動動作に伴ってA方向に回動する。そして、サイドスタンド1が収納位置まで回動する過程において、図15に示すように、遮磁板203の突出部203bが磁石201とホールIC202との間の所定領域Rから退避する。このため、遮磁板203の突出部203bによる遮蔽状態が解除され、ホールIC202により検出される磁界の強度が大きくなる。
【0055】
そして、ホールIC202により検出される磁界の強度が所定の値よりも大きくなった場合には、ホールIC202から出力される信号がLレベルからHレベルに切り替えられる。このとき、判定回路は、ホールIC202からHレベルの信号が入力されることにより、サイドスタンド1が収納位置にあると判定するとともに、その判定結果を自動二輪車の制御部(図示省略)に出力する。
【0056】
その後、図16に示すように、サイドスタンド1が収納位置まで回動する。このとき、自動二輪車では、サイドスタンド1が収納位置にあるとの判定結果が入力されることにより、エンジン(図示省略)の起動が可能となり、走行可能な状態になる。
【0057】
(収納位置→起立位置)
次に、図16に示した収納位置から、サイドスタンド1がB方向に回動した場合には、回動軸4および遮磁板203もサイドスタンド1の回動動作に伴ってB方向に回動する。そして、サイドスタンド1が起立位置まで回動する過程において、図14に示すように、遮磁板203の突出部203bが磁石201とホールIC202との間の所定領域Rに進入する。このため、遮磁板203の突出部203bにより、磁石201による磁界からホールIC202が遮蔽され、ホールIC202により検出される磁界の強度が小さくなる。
【0058】
そして、ホールIC202により検出される磁界の強度が所定の値よりも小さくなった場合には、ホールIC202から出力される信号がHレベルからLレベルに切り替えられる。なお、この所定の値は、ホールIC202の特性のヒステリシスに起因して、信号がLレベルからHレベルに切り替えられる際の所定の値とは異なる。
【0059】
このとき、判定回路は、ホールIC202からLレベルの信号が入力されることにより、サイドスタンド1が起立位置にあると判定するとともに、その判定結果を自動二輪車の制御部(図示省略)に出力する。その後、図13に示すように、サイドスタンド1が起立位置まで回動する。このとき、自動二輪車では、サイドスタンド1が起立位置にあるとの判定結果が入力されることにより、エンジン(図示省略)の起動が禁止され、走行不可能な状態になる。
【0060】
上述した変形例では、前記のように、磁石201およびホールIC202を回動軸4の軸方向と直交する方向において対向するように配置している。これによって、図2のように、磁石51とホールIC52とを回動軸4の軸方向と平行な方向において対向配置する場合に比べて、回動軸4の軸方向における位置検出装置200の幅が小さくなり、小型化を図ることができる。
【0061】
本発明は、上述した以外にも種々の実施形態を採用することができる。たとえば、上記実施形態では、回動軸4の回動動作に伴って、遮磁板53が回動することにより、遮磁板53の突出部53cが所定領域Rに対して進入および退避する例を示したが、これに限らず、回動軸4の回動動作に伴って、直線方向に移動する可動部材が設けられ、その可動部材が所定領域Rに対して進入および退避するようにしてもよい。この一例としては、回動軸4の回動動作をチェーンまたは歯車で別の回動軸に伝達し、前記別の回動軸の上に可動部材を設ける。この可動部材は、前記別の回動軸の回動運動に応じて、直線方向に移動するように構成される。この直線方向に移動する可動部材が、所定領域Rに対して進入すると、磁気センサは可動部材によって遮断され、Lレベルの信号を発する。また可動部材が所定領域Rから退避すると、磁気センサはHレベルの信号を発する。以上のようにすることで、直線方向に移動する可動部材によって、磁石51とホールIC52との間を遮磁することができる。
【0062】
また、上記実施形態では、サイドスタンド1が起立位置にある場合に、遮磁板53の突出部53cが磁石51とホールIC52との間の所定領域Rに位置し、サイドスタンド1が収納位置にある場合に、遮磁板53の突出部53cが所定領域Rから退避した領域に位置する例を示したが、これに限らず、サイドスタンド1が収納位置にある場合に、遮磁板53の突出部53cが所定領域Rに位置し、サイドスタンド1が起立位置にある場合に、遮磁板53の突出部53cが所定領域Rから退避した領域に位置するようにしてもよい。すなわち、サイドスタンド1が起立位置にある場合に、磁石51による磁界からホールIC52が遮蔽され、サイドスタンド1が収納位置にある場合に、遮蔽状態が解除されるようにしてもよいし、サイドスタンド1が収納位置にある場合に、ホールIC52が遮蔽され、サイドスタンド1が起立位置にある場合に、遮蔽状態が解除されるようにしてもよい。図13〜図16の変形例についても同様である。
【0063】
また、上記実施形態では、判定回路54がサイドスタンドの位置検出装置5に設けられる例を示したが、これに限らず、判定回路が自動二輪車の制御部に設けられていてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、磁気センサの一例としてホールIC52(202)を示したが、これに限らず、磁気抵抗素子やリードスイッチなどのその他の磁気センサを用いてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 サイドスタンド
4 回動軸(回動軸部)
5 サイドスタンドの位置検出装置
51 磁石
52 ホールIC(磁気センサ)
53 遮磁板(可動部材)
53b 円板部
53c 突出部(第1突出部)
54 判定回路
200 サイドスタンドの位置検出装置
201 磁石
202 ホールIC(磁気センサ)
203 遮磁板(可動部材)
203a 円板部
203b 突出部(第2突出部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起立位置と収納位置との間において回動可能に、二輪車に設けられたサイドスタンドの位置検出装置において、
磁石と、
前記磁石と対向する位置に配置される磁気センサと、
前記サイドスタンドの回動動作に伴って移動する可動部材と、を備え、
前記可動部材は、
前記サイドスタンドが起立位置および収納位置のいずれか一方にある場合に、前記磁石と前記磁気センサとの間の所定領域に位置することにより、前記磁石による磁界から前記磁気センサを遮蔽し、
前記サイドスタンドが起立位置および収納位置の他方にある場合に、前記所定領域から退避した領域に位置する、ことを特徴とするサイドスタンドの位置検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のサイドスタンドの位置検出装置において、
前記磁気センサの出力信号に基づいて前記サイドスタンドの位置を判定するとともに、その判定結果を出力する判定回路をさらに備える、ことを特徴とするサイドスタンドの位置検出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のサイドスタンドの位置検出装置において、
前記可動部材は、前記サイドスタンドの回動軸部に取り付けられており、前記サイドスタンドの回動動作に伴って回動する、ことを特徴とするサイドスタンドの位置検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載のサイドスタンドの位置検出装置において、
前記可動部材は、前記サイドスタンドの回動軸部に取り付けられる円板部と、前記円板部の外周に、前記円板部の径方向に突出するように形成された第1突出部とを有し、
前記可動部材の第1突出部は、前記サイドスタンドが起立位置または収納位置にある場合に、前記所定領域に位置する、ことを特徴とするサイドスタンドの位置検出装置。
【請求項5】
請求項3に記載のサイドスタンドの位置検出装置において、
前記可動部材は、前記サイドスタンドの回動軸部に取り付けられる円板部と、前記円板部の外周に、前記円板部に対して垂直な方向に突出するように形成された第2突出部とを有し、
前記可動部材の第2突出部は、前記サイドスタンドが起立位置または収納位置にある場合に、前記所定領域に位置する、ことを特徴とするサイドスタンドの位置検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−111011(P2011−111011A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268206(P2009−268206)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(510123839)オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社 (110)