説明

サイドローラ付きコンベヤチェーン

【課題】サイドローラ付きコンベヤチェーンのベアリング及びシール部材の取替を容易にするとともにサイドローラの組立性の向上を実現し、しかも、シール性能を向上させてシール部材の長寿命化を実現するサイドローラ付きコンベヤを提供する。
【解決手段】サイドローラ軸188とベアリング172、174の内輪との間にスリーブ180が挿入されているとともに、ベアリングに接してチェーン側に配設されたインナーシール部材176と該インナーシール部材に離間させて配設されたアウターシール部材182との間にグリース溜まりが設けられていることにより、上記の課題を解決するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品搬送用のコンベヤチェーンに関し、特に好ましくは、チェーンに掛かる荷重を搬送路に沿って敷設したガイドレールによって支持するサイドローラを有するサイドローラ付きコンベヤチェーンに関する。
【背景技術】
【0002】
石炭や鉄鉱石などを搬送する搬送装置として、駆動スプロケットと従動スプロケットとの間にチェーンを掛架し、このチェーンを構成するプレートに設けられたアタッチメントにスクレーパを固設し、搬送装置の床面に沿って搬送物を掻きあげるリクレーマと呼ばれる搬送装置が知られている。このような搬送装置に使用されるチェーンとしては、チェーンやスクレーパの自重や、搬送物の荷重により、スクレーパと搬送装置の床面とが擦れ合って、スクレーパや床面が摩耗したり、駆動源に過負荷が掛からないようにするため、チェーンに係る荷重を搬送路に沿って敷設したガイドレールによって支持するサイドローラを有するサイドローラ付きコンベヤチェーンが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このようなサイドローラ付きコンベヤチェーンは、一般に円筒状のブシュの両端がそれぞれ一対の内プレートのブシュ孔に圧入され、前記ブシュ内に遊貫された連結ピンの両端が前記一対の内プレートの両外側に配置された一対の外プレートのピン孔に圧入されているとともに、前記連結ピンの両端又は片側が、前記外プレートから外側に延設されてサイドローラ軸を構成し、該サイドローラ軸にベアリングを介してサイドローラ外輪が枢設された構成を有している。
【特許文献1】実公昭61−32896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来のサイドローラ付きコンベヤチェーンは、ベアリングやシール部材をサイドローラ軸に直接装着していたため、ベアリングやシール部材の取替が困難であるというメンテナンス上の問題があった。
【0005】
また、ベアリングを直接サイドローラ軸に装着するため、ベアリングの内周面とサイドローラ軸の外周面との隙間を小さくする必要があり、組立性が悪いという組立作業上の問題があった。
【0006】
さらに、ベアリング内に異物が侵入することを防止するシール部材が1重構造であるためシール性が悪くシール部材の耐久性が低いという問題があった。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、サイドローラ付きコンベヤチェーンのベアリング及びシール部材の取替を容易にするとともにサイドローラの組立性の向上を実現し、しかも、シール性能を向上させてシール部材の長寿命化を実現するサイドローラ付きコンベヤチェーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
まず、本請求項1に係る発明は、円筒状のブシュの両端がそれぞれ一対の内プレートのブシュ孔に圧入され、前記ブシュ内に遊貫された連結ピンの両端が前記一対の内プレートの両外側に配置された一対の外プレートのピン孔に圧入されているとともに、前記連結ピンの両端又は片側が、前記外プレートから外側に延設されてサイドローラ軸を構成し、該サイドローラ軸にベアリングを介してサイドローラ外輪が枢設されているサイドローラ付きコンベヤチェーンにおいて、前記サイドローラ軸と前記ベアリングの内輪との間にスリーブが挿入されているとともに、前記ベアリングに接してチェーン側に配設されたインナーシール部材と該インナーシール部材に離間して配設されたアウターシール部材との間にグリース溜まりが設けられていることにより、前記課題を解決したものである。
【0009】
そして、本請求項2に係る発明は、請求項1に係るサイドローラ付きコンベヤチェーンにおいて、前記スリーブの端面と前記外プレートとの間に間隔保持リングが配設されているとともに、該間隔保持リングと前記スリーブの端面の内周段部との間にOリングが装着されていることにより、前記課題をさらに解決したものである。
【0010】
また、本請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係るサイドローラ付きコンベヤチェーンにおいて、前記サイドローラ外輪の前記外プレートに対向する側と反対側の開口部にキャップが装着されているとともに、前記サイドローラ外輪と前記キャップとの隙間が、コーキング材でシールされていること又は前記サイドローラ外輪と前記キャップとがタイトに圧入されていることにより、前記課題をさらに解決したものである。
なお、本発明において「タイトに圧入されている」とは、サイドローラ外輪とキャップとの間に隙間が生じないように、すなわち両者が摺動しない程度に緊合されていることを意味している。
【発明の効果】
【0011】
本請求項1に係るサイドローラ付きコンベヤチェーンによれば、円筒状のブシュの両端がそれぞれ一対の内プレートのブシュ孔に圧入され、前記ブシュ内に遊貫された連結ピンの両端が前記一対の内プレートの両外側に配置された一対の外プレートのピン孔に圧入されているとともに、前記連結ピンの両端又は片側が、前記外プレートから外側に延設されてサイドローラ軸を構成し、該サイドローラ軸にベアリングを介してサイドローラ外輪が枢設されているサイドローラ付きコンベヤチェーンにおいて、前記サイドローラ軸と前記ベアリングの内輪との間にスリーブが挿入されているとともに、前記ベアリングに接してチェーン側に配設されたインナーシール部材と該インナーシール部材に離間して配設されたアウターシール部材との間にグリース溜まりが設けられていることにより、サイドローラ軸とベアリングとが直接嵌め合っていないため、ベアリングの取替が容易であるとともに、2枚のシール部材の間に設けられたグリース溜まりが外側のシール部材から侵入した異物をトラップするため、内側のシール部材が保護されシールの長寿命化が実現できる。
【0012】
そして、本請求項2に係るサイドローラ付きコンベヤチェーンによれば、請求項1に係るサイドローラ付きコンベヤチェーンにおいて、スリーブの端面と外プレートとの間に間隔保持リングが配設されているとともに、この間隔保持リングとスリーブの端面の内周段部との間にOリングが装着されていることにより、スリーブ内周面とサイドローラ軸外周面との間の隙間が封鎖されるため、この隙間への異物の侵入が防止される。
【0013】
また、本請求項3に係るサイドローラ付きコンベヤチェーンによれば、請求項1又は請求項2に係るサイドローラ付きコンベヤチェーンにおいて、サイドローラ外輪の外プレートに対向する側と反対側の開口部にキャップが装着されているとともに、サイドローラ外輪とキャップとの隙間が、コーキング材でシールされていること又は前記サイドローラ外輪と前記キャップとがタイトに圧入されていることにより、前記開口部からの異物の侵入が防止されるため、前述した2枚のシール部材、Oリングが奏するシール効果と相俟って、高い防塵性が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のサイドローラ付きコンベヤチェーンは、円筒状のブシュの両端がそれぞれ一対の内プレートのブシュ孔に圧入され、前記ブシュ内に遊貫された連結ピンの両端が前記一対の内プレートの両外側に配置された一対の外プレートのピン孔に圧入されているとともに、前記連結ピンの両端又は片側が、前記外プレートから外側に延設されてサイドローラ軸を構成し、該サイドローラ軸にベアリングを介してサイドローラ外輪が枢設されており、前記サイドローラ軸と前記ベアリングの内輪との間にスリーブが挿入されているとともに、前記ベアリングに接してチェーン側に配設されたインナーシール部材と該インナーシール部材に離間して配設されたアウターシール部材との間にグリース溜まりが設けられていることによって、サイドローラ付きコンベヤチェーンのベアリング及びシール部材の取替を容易にするとともにサイドローラの組立性の向上を実現し、しかも、シール性能を向上させてシール部材の長寿命化を実現するものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0015】
本発明の一実施例について図1乃至図3に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の実施例であるサイドローラ付きコンベヤチェーンを一つの連結ピンの中心を通る位置でチェーンの長手方向と垂直な面で切断した断面図であり、図2は、サイドローラ部の分解立体図であり、図3は、サイドローラ部の組立手順を示す断面図である。なお、図1は、チェーンの片側にのみサイドローラを有するサイドローラ付きコンベヤチェーンを示している。
【0016】
本発明の実施例であるサイドローラ付きコンベヤチェーン100は、図1に示すように、円筒状のブシュ110の両端がそれぞれ一対の内プレート120のブシュ孔120aに圧入され、ブシュ110内に遊貫された連結ピン140の両端が一対の内プレート120の両外側に配置された外プレート130のピン孔130aに圧入されている。また、ブシュ110には、ローラ150が、遊嵌されている。そして、連結ピン140が、外プレート130から外側に延設されてサイドローラ軸188を構成し、このサイドローラ軸188に並置された2つのベアリング172、174を介してサイドローラ外輪170が枢設されている。
【0017】
また、図1及び図2に示すように、サイドローラ軸188とベアリング172、174の内輪との間に、肉厚部180bと肉薄部180aを有する金属製の円筒状のスリーブ180が挿入されている。ベアリング172、174は、スリーブ180の肉薄部180aに配設されるとともに、ベアリング172に接してチェーン側にインナーシール部材176が配設されている。このインナーシール部材176は、鋼板製でベアリング172に対応したリング形状でラビリンス構造を有しており、内径はスリーブ180の外周面に外径はサイドローラ外輪170の内周面に圧入されて高いシール性能を発揮する。このインナーシール部材176もベアリング172、174と同様にスリーブ180の肉薄部180aに配設されている。そして、サイドローラ外輪170の内側に設けられた凹部170bに装着されたC型止め輪178によって、インナーシール部材176、ベアリング172、174が軸方向に移動することを規制している。
【0018】
さらに、スリーブ180の肉厚部180bの端部外周面とサイドローラ外輪170のチェーン側開口部の内周段部170cとの間にアウターシール部材182が圧入されている。アウターシール部材182は、構造、材質は、インナーシール部材176と同じであるが、内周径及び外周径がインナーシール部材176よりもスリーブ180の肉厚部180bと肉薄部180aの段差分大きくなっている。そして、インナーシール部材176とアウターシール部材182との間にグリースが封入されグリース溜まりGが形成されている。
【0019】
また、スリーブ180の肉厚部180b側端面と外プレート130との間に間隔保持リング186が配設されているとともに、間隔保持リング186とスリーブ180の内周段部180cとの間にOリング184が装着されている。
【0020】
サイドローラ軸188の先端部は、外周面の一部が直線でカットされたDカット部188aを形成している。そして、スリーブ180をサイドローラ軸188に通してスリーブ180の肉薄部180a側の端部から突出したサイドローラ軸188のDカット部188aに、これと嵌合するD字形状の開口部168aを有する欠孔座金168が被せられている。そして、中心にボルト挿通孔166aを有する金属製のストッパ166を介して、ボルト164によって、図2に示した間隔保持リング186からストッパ166までの一連の部材がサイドローラ軸188に固定されている。そして、サイドローラ外輪170の外プレート130と対向する側と反対側の開口部にキャップ162が被せられており、サイドローラ外輪170の内周面に設けられた凹部170aに嵌められたC型止め輪160によって、キャップ162の抜けを防止している。さらに、C型止め輪160は、全周にコーキング材を塗布することによって、サイドローラ外輪170の内周面とキャップ162との隙間がシールされている。
【0021】
次に、図3に基づき、図1及び図2を参照して、本実施例のサイドローラ部の組立手順を説明する。サイドローラ部を組み立てる際には、ベアリング172、174の外輪に無理な力が加わって、ベアリング172、174が損傷するのを防止するため、サイドローラ外輪170のチェーンと対向するのと反対側の開口部端面と当接するとともに、ベアリングの内輪を受ける凸部200aを有する治具200を用いる。そして、この治具200にサイドローラ外輪170を載置した状態で2つのベアリング172、174とインナーシール部材176を圧入し、C型止め輪178を取り付ける。
【0022】
次にスリーブ180をベアリング172、174及びインナーシール部材176の内周面に沿うように圧入する。そして、スリーブ180の肉厚部180bとインナーシール部材176とサイドローラ外輪170の内壁とにより形成された領域にグリースを注入する。そして、スリーブ180の肉厚部180bの端部外周面とサイドローラ外輪170のチェーン側開口部の内周段部170cとの間にアウターシール部材182を圧入する。
【0023】
そして、チェーンの連結ピン140から延設されたサイドローラ軸188に間隔保持リング186とOリング184を嵌めて、その上から前述したように組み立てたサイドローラを嵌める。そして、欠孔座金168、ストッパ166を被せ、その上からボルト164を締め付ける。さらに、サイドローラ外輪170の外プレート130と対向する側と反対側の開口部にキャップ162を被せ、サイドローラ外輪170の内周面に設けられた凹部170aに嵌められたC型止め輪160によって、キャップ162の抜けを防止する。また、C型止め輪160の全周にコーキング材を塗布することによって、サイドローラ外輪170の内周面とキャップ162との隙間をシールする。このような手順で、本実施例のサイドローラ部の組立が完了する。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、リクレーマなどに使用されるサイドローラ付きコンベヤチェーンにおいて、ベアリング及びシール部材の取替を容易にするとともに、防塵性を向上させたものであって、その産業上の利用可能性はきわめて高い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のサイドローラ付きコンベヤチェーンの断面図。
【図2】本発明のサイドローラ部の分解立体図。
【図3】本発明のサイドローラ部の組立手順を示す断面図。
【符号の説明】
【0026】
100 ・・・ サイドローラ付きコンベヤチェーン
110 ・・・ ブシュ
120 ・・・ 内プレート
120a・・・ (内プレートの)ブシュ孔
I30 ・・・ 外プレート
130a・・・ (外プレートの)ピン孔
140 ・・・ 連結ピン
150 ・・・ ローラ
160 ・・・ C型止め輪
162 ・・・ キャップ
164 ・・・ ボルト
166 ・・・ ストッパ
166a・・・ ボルト挿通孔
168 ・・・ 欠孔座金
168a・・・ (欠孔座金の)開口部
170 ・・・ サイドローラ外輪
170a、170b ・・・ (サイドローラ外輪の)凹部
170c・・・ (サイドローラ外輪の)内周段部
172、174 ・・・ ベアリング
176 ・・・ インナーシール部材
178 ・・・ C型止め輪
180 ・・・ スリーブ
180a・・・ (スリーブの)肉薄部
180b・・・ (スリーブの)肉厚部
180c・・・ (スリーブの)内周段部
182 ・・・ アウターシール部材
184 ・・・ Oリング
186 ・・・ 間隔保持リング
188 ・・・ サイドローラ軸
188 ・・・ (サイドローラ軸の)Dカット部
G ・・・ グリース溜まり

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のブシュの両端がそれぞれ一対の内プレートのブシュ孔に圧入され、前記ブシュ内に遊貫された連結ピンの両端が前記一対の内プレートの両外側に配置された一対の外プレートのピン孔に圧入されているとともに、前記連結ピンの両端又は片側が、前記外プレートから外側に延設されてサイドローラ軸を構成し、該サイドローラ軸にベアリングを介してサイドローラ外輪が枢設されているサイドローラ付きコンベヤチェーンにおいて、
前記サイドローラ軸と前記ベアリングの内輪との間にスリーブが挿入されているとともに、
前記ベアリングに接してチェーン側に配設されたインナーシール部材と該インナーシール部材に離間して配設されたアウターシール部材との間にグリース溜まりが設けられていることを特徴とするサイドローラ付きコンベヤチェーン。
【請求項2】
前記スリーブの端面と前記外プレートとの間に間隔保持リングが配設されているとともに、該間隔保持リングと前記スリーブの端面の内周段部との間にOリングが装着されていることを特徴とする請求項1記載のサイドローラ付きコンベヤチェーン。
【請求項3】
前記サイドローラ外輪の前記外プレートに対向する側と反対側の開口部にキャップが装着されているとともに、前記サイドローラ外輪と前記キャップとの隙間が、コーキング材でシールされていること又は前記サイドローラ外輪と前記キャップとがタイトに圧入されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のサイドローラ付きコンベヤチェーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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