説明

サイフォン式パイプ魚道

【課題】河川の水位変動によって、魚の遡上経路の流速が変わるのを防止すると共に、メンテナンス性に優れるサイフォン式パイプ魚道を提供する。
【解決手段】魚の遡上経路を確保するサイフォン式パイプ魚道10であって、河川に設けられた段差の上流側の水中に浸漬する入水口11と、段差の下流側の水中に浸漬する出水口12を備える屈曲可能なパイプ13と、パイプ13の端部又は中間位置に設けられ、魚路を形成する直径がパイプ13の内径の1/5〜4/5の開口部14を有する流速調整手段15、16、17、18と、パイプ13を少なくとも河川の段差の上流側又は河川の段差に固定する支持部材19とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川の堰等に設けるサイフォン式パイプ魚道に関する。
【背景技術】
【0002】
河川に生息する魚には、成長に伴って河川の上流と下流を行き来し、生活領域を移すものが多く存在する。そして、これらの魚は、河川の途中に堰があると、堰によって設けられた高低差により、上流への移動ができなくなり、繁殖等に影響を受ける場合があり、堰が配置された場所には、魚が遡行できるように、人工的に魚道を設けることがある。
人工的な魚道には、例えば、開口部を有する仕切り板で仕切って、流れの緩やかなプール領域を階段状に連ねて設けたプールタイプや、傾斜水路の底部にいくつもの突起等を設けて流れの速い領域及び遅い領域をモザイク状に分布させ、魚の遡上可能な経路を設けるストリームタイプがある。
【0003】
しかし、プールタイプ及びストリームタイプは、魚道の上流側出口(入水口)と下流側入口(出水口)の位置を決定する際に、河川水位の変動を考慮する必要があり、特に、上流側出口については、水位の低下によって、魚道に水が流れなくなり、魚道が機能しなくなるのを回避しなければならないため、上流側出口の形状及び設置位置の決定には、入念な検討を要する。
また、上流側出口の形状及び設置位置が適切であったとしても、河川の水位変動により、魚道を流れる水の速度変化を避けることはできず、渇水時と増水時の両方で、魚が遡行可能な安定した経路を確保する魚道の設計は困難である。
そこで、上流側出口と下流側入口とを堰の上流側及び下流側の水中にそれぞれ浸漬し、河川の水位変動によって、流速に影響を受けないサイフォンの原理を用いた魚道が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3131954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の魚道は、魚の遡上経路となるパイプ(導管)内に、複数の隔壁板と隔壁管がロープで交互に連結して形成される魚の休息室を備えており、各隔壁板はパイプの内周部と密接配置されているので、隔壁板に木の葉等のごみが詰まりやすい。また、ごみ詰まりを取り除くため、ロープを引張って隔離板をパイプから外に取り出そうとすると、隔離板とパイプの内周部との間に詰まったごみが、摩擦を発生させ、隔離板が取り出せなくなったり、隔離板が破損したりすることがあり、メンテナンス性の観点において、問題があった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされるもので、河川の水位変動により流速に影響を受けるのを防止すると共に、メンテナンス性に優れるサイフォン式パイプ魚道を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係るサイフォン式パイプ魚道は、河川に設けられた段差の上流側の水中に浸漬する入水口と、前記段差の下流側の水中に浸漬する出水口を備える屈曲可能なパイプと、前記パイプの端部又は中間位置に設けられ、魚路を形成する直径が前記パイプの内径の1/5〜4/5の開口部を有する流速調整手段と、前記パイプを少なくとも前記河川の段差の上流側又は前記河川の段差に固定する支持部材とを有する。
【0007】
本発明に係るサイフォン式パイプ魚道において、前記流速調整手段の開口部は、拡径端がストレート部の内側に固定された円錐台状のテーパー部の縮径端に形成されているのが好ましい。
【0008】
本発明に係るサイフォン式パイプ魚道において、前記テーパー部の縮径端が上流側を向いているのが好ましい。
【0009】
本発明に係るサイフォン式パイプ魚道において、前記ストレート部の少なくとも一端部には雄ねじ又は雌ねじが形成されて、分割された前記パイプの端部に設けられているストレートパイプとねじ結合可能となっているのが好ましい。
【0010】
本発明に係るサイフォン式パイプ魚道において、前記パイプの内径は90〜300mmの範囲にあって、前記開口部を含む前記テーパー部の全長は50〜300mmの範囲にあるのが好ましい。
【0011】
本発明に係るサイフォン式パイプ魚道において、前記入水口には魚が通過可能なごみ除けが設けられているのが好ましい。
【0012】
本発明に係るサイフォン式パイプ魚道において、前記パイプの一部又は全部は蛇腹ホースからなるのが好ましい。
【0013】
本発明に係るサイフォン式パイプ魚道において、前記流速調整手段は、前記パイプの途中に1又は複数設けられ、通過する水の流速が前記パイプで1〜2m/秒の範囲に調整されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜8記載のサイフォン式パイプ魚道は、河川に設けられた段差の上流側の水中に浸漬する入水口と、段差の下流側の水中に浸漬する出水口を備えるパイプを有するので、サイフォンの原理を利用して、入水口から流入した水を出水口から送り出すことができ、河川の水位変動が生じてもパイプに安定した流量(流速)の魚路を確保可能である。
また、パイプは屈曲可能であるので、河川の段差の形状に合わせてパイプを屈曲して、様々な形状の段差(例えば、堰)に対応できる。
更に、流速調整手段の開口部の直径がパイプの内径の1/5〜4/5であるので、開口部で水の流量を制限して、パイプを流れる水の速度を調整することができる。
【0015】
特に、請求項2記載のサイフォン式パイプ魚道は、流速調整手段の開口部が、拡径端がストレート部の内側に固定された円錐台状のテーパー部の縮径端に形成されているので、入水口から流入した水は全て、水の通過量を制限する開口部を通過して出水口に向かうことになり、流速調整手段によって確実に水の減速を行うことができる。
【0016】
請求項3記載のサイフォン式パイプ魚道は、テーパー部の縮径端が上流側を向いているので、遡上する魚を、テーパー部の縮径する傾斜に沿って、確実に開口部に誘導することが可能である。
【0017】
請求項4記載のサイフォン式パイプ魚道は、ストレート部の少なくとも一端部には雄ねじ又は雌ねじが形成されて、分割されたパイプの端部に設けられているストレートパイプとねじ結合可能となっているので、サイフォン式パイプ魚道の設置後、開口部にごみが詰まった場合には、ストレートパイプとストレート部のねじ結合を解除して、容易かつ短時間の作業により、ごみ詰まりを取り除くことができ、メンテナンスコストを抑制可能である。
【0018】
請求項5記載のサイフォン式パイプ魚道は、パイプの内径が90〜300mmの範囲にあるので、パイプの移動や設置の際、パイプを容易に扱うことができる。
【0019】
請求項6記載のサイフォン式パイプ魚道は、入水口にごみ除けが設けられているので、入水口からのごみの浸入を防止でき、開口部等へのごみ詰まりを抑制可能である。
【0020】
請求項7記載のサイフォン式パイプ魚道は、パイプの一部又は全部が蛇腹ホースからなるので、屈曲角度を微調整して、パイプを段差の形状に沿って設置することが可能である。
【0021】
請求項8記載のサイフォン式パイプ魚道は、流速調整手段が、パイプの途中に1又は複数設けられ、通過する水の流速がパイプで1〜2m/秒の範囲に調整されているので、一般的に魚の遡上に適する1〜2m/秒の流速をパイプ内に確保可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るサイフォン式パイプ魚道の説明図である。
【図2】同サイフォン式パイプ魚道の流速調整手段の断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係るサイフォン式パイプ魚道の説明図である。
【図4】同サイフォン式パイプ魚道の流速調整手段の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1、図2に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るサイフォン式パイプ魚道10は、河川に設けられた堰(段差の一例)の上流側の水中に浸漬する入水口11と、堰の下流側の水中に浸漬する出水口12を備える屈曲可能なパイプ13と、パイプ13の中間位置に設けられ、魚の遡上する魚路を形成する直径がパイプ13の内径の1/5〜4/5の開口部14を有する流速調整手段15、16、17、18と、パイプ13を堰に固定する支持部材19とを有する。以下、これらについて詳細に説明する。
【0024】
パイプ13は、上流側から下流側に順に配置された第1、第2、第3のパイプ21、22、23によって構成されている。第1、第2、第3のパイプ21、22、23は、それぞれプラスチック製の屈曲性を有する蛇腹ホースからなり、その内径Lは、90〜300mmの範囲、例えば、200mmである。
第1のパイプ21の基部(上流側端部)は、堰の上流側の水中に浸漬され、水が流入する入水口11が設けられ、第3のパイプ23の先部(下流側端部)は、堰の下流側の水中に浸漬され、入水口11から流入した水を堰の下流側に流出する出水口12が設けられている。
【0025】
入水口11は、出水口12より高い位置(例えば1.5m)に配置されており、入水口11から流入した水は、サイフォンの原理によって、第1、第2、第3のパイプ21、22、23を通り、出水口12から出水される。
パイプ13の一部は堰の頂部に配置され、入水口11より高い位置にあるが、サイフォンの原理により入水口11から流入した水は、パイプ13内を隙間なく出水口12に向かって流動するので、堰の頂部を越える流路を形成でき、越流のない堰であっても、堰を加工することなく、魚の遡上経路を確保可能である。
【0026】
第1のパイプ21は、堰に取り付けられたワイヤ等からなる支持部材19によって、堰に固定され、入水口11を所定位置に固定している。また、入水口11には、魚が通過可能な粗い目の網状のごみ除け24を取り付けている。
なお、本実施の形態では、入水口11及び出水口12を、通常(増水時又は渇水時でない)の河川水位で、水深600mm及び水深500mmの位置にそれぞれ配置しているが、入水口11及び出水口12の水面からの深さは、サイフォン式パイプ魚道10を設置する河川の水深や水位の変動差等によって異なる。また、ごみ除け24は、河川を流れるごみの種類や量等によって入水口11に設けるか否かを決めることができる。
【0027】
流速調整手段15、16、17、18は、プラスチックにより形成され、それぞれストレート管状のストレート部25と、拡径端がストレート部25の内側に固定され、縮径端に管状の開口部14が形成された円錐台状のテーパー部26とを備えている。
また、テーパー部26の縮径端は、上流側を向いて配置されているので、堰の下流側から上流側に向かう魚を、テーパー部26の縮径する傾斜に沿って、開口部14に誘導することができる。
【0028】
第1のパイプ21の先部(下流側端部)には、固定バンド27によって、上流側ストレートパイプ28の基部(上流側端部)が取り付けられ、上流側ストレートパイプ28の先部(下流側端部)は、流速調整手段15のストレート部25の基側に嵌入し、第1のパイプ21と流速調整手段15を直列に連結している。
また、流速調整手段15、16の間には、両端部を流速調整手段15、16のストレート部25に嵌入して、流速調整手段15、16を直列に連結する中間ストレートパイプ29が設けられている。
そして、流速調整手段16のストレート部25の先側に基部が嵌入され、先部が、固定バンド27によって第2のパイプ22に固定された下流側ストレートパイプ30が設けられている。
【0029】
上流側ストレートパイプ28、中間ストレートパイプ29、及び下流側ストレートパイプ30は、プラスチックからなり、内径が85〜295mmの範囲、例えば、190mmで形成されている。流速調整手段15、16のストレート部25は、内径が、90〜300mmの範囲(例えば、200mm)で形成され、流速調整手段15、16の開口部14は、直径Bがパイプ13(第1、第2、第3のパイプ21、22、23)の内径Lの1/5〜4/5倍となっている。また、開口部14を含むテーパー部26の全長A(開口部14とテーパー部26を合わせた長さ)は50〜300mmの範囲、例えば、100mmである。
【0030】
第2、第3のパイプ22、23の間には、上流側から順に、上流側ストレートパイプ33、流速調整手段17、中間ストレートパイプ34、流速調整手段18、及び下流側ストレートパイプ35が直列接続されて配置され、上流側ストレートパイプ33及び下流側ストレートパイプ35はそれぞれ、固定バンド27によって第2、第3のパイプ22、23に固定されている。
なお、上流側ストレートパイプ33、中間ストレートパイプ34、及び下流側ストレートパイプ35はそれぞれ、上流側ストレートパイプ28、中間ストレートパイプ29、及び下流側ストレートパイプ30と同じ形状、大きさ及び材質で形成されている。
【0031】
ここで、第1、第2のパイプ21、22の間、及び第2、第3のパイプ22、23の間には、それぞれ同数(本実施の形態では2つ)の流速調整手段が設けられているが、必ずしも同数である必要はなく、例えば、第1、第2のパイプ21、22の間に流速調整手段を3つ以上設ける場合には、中間ストレートパイプを増やして、各流速調整手段を直列に連結でき、流速調整手段を一つ設ける場合には、中間ストレートパイプは不要となる。
パイプに設ける流速調整手段の数は、パイプを通過する水の流速が、一般的に魚の遡上に適する1〜2m/秒の範囲(例えば1.5m/秒)になるように、例えば、サイフォン式パイプ魚道の設置計画の作成時に仮決めされ、設定現場での流速の実測により最終決定される。
【0032】
サイフォン式パイプ魚道10には、プラスチック製の第1、第2、第3のパイプ21、22、23、流速調整手段15、16、17、18、上流側ストレートパイプ28、33、中間ストレートパイプ29、34、及び下流側ストレートパイプ30、35が使用されており、ステンレス等により形成されるのと比較して軽量なため、サイフォン式パイプ魚道10は、クレーン車等の重機を要することなく、容易に、かつ短時間で設置可能である。
【0033】
サイフォン式パイプ魚道10を河川の堰に設置する場合、まず、出水口12をビニールシート等で密閉し、第1、第2、第3のパイプ21、22、23を屈曲して、他の部材、部品に比べて最も高い位置にした入水口11から水を流入することによって、サイフォンの原理を利用可能な状態、即ち、出水口12から入水口11までを水が一杯に満たされた状態を作る。そして、出水口12から入水口11まで水が一杯に満たされた状態で、入水口11及び出水口12を、入水口11が出水口12より高くなるように水中に浸漬させ、出水口12からビニールシートを取り外して、支持部材19を第1のパイプ21に巻きつけて堰に固定することにより、堰の頂部を越える流路(魚路)が設けられる。
【0034】
サイフォンの原理を利用した流路が設けられた後は、河川の水位が変動しても、入水口11又は出水口12が水面から出ること等がない限り、安定した流量をパイプ13に保持することができ、増水時と渇水時の両方において、魚の遡上可能な経路を確保可能である。
また、流速調整手段15、16(流速調整手段17、18についても同じ)の開口部14に木の葉等のごみが詰まった場合には、上流側ストレートパイプ28、中間ストレートパイプ29、及び下流側ストレートパイプ30との接続の一部を外して、ごみ詰まりを取り除くことができるので、設置後のごみ詰まりの除去作業を短時間で行うことが可能である。更に、ごみの取り出しだけに用いられる機構、例えば開閉扉等を流速調整手段に設ける必要がなく、流速調整手段を構成する部材、部品の点数を抑制することができる。
【0035】
次に、本発明の第2の実施の形態に係るサイフォン式パイプ魚道40について説明する。
なお、サイフォン式パイプ魚道10と同一の構成要素については同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
図3、図4に示すように、サイフォン式パイプ魚道40には、両端部に雌ねじが形成されたストレート部41と、水の流れを制限する管状の開口部42が形成され、ストレート部41に固定されたテーパー部43をそれぞれ備えるプラスチック製の流速調整手段44、45、46、47が設けられている。
流速調整手段44、45、46、47のテーパー部43は円錐台状であり、ストレート部41の内側に拡径端が固定され、開口部42は、テーパー部43の縮径端に形成されている。
【0036】
また、第1のパイプ21には、一端部(上流側端部)が固定バンド27によって第1のパイプ21に固定され、他端部(下流側端部)に雄ねじが形成された上流側ストレートパイプ(ストレートパイプの一例)48が設けられ、流速調整手段44(ストレート部41)は、上流側ストレートパイプ48にねじ結合され、第1のパイプ21に直列に連結されている。
流速調整手段44、45の間には、両端部に雄ねじが形成され、流速調整手段44、45にねじ結合された中間ストレートパイプ49が配置されている。
また、第2のパイプ22には、一端部(下流側端部)が固定バンド27によって第2のパイプ22に固定され、他端部(上流側端部)に雄ねじが形成された下流側ストレートパイプ(ストレートパイプの一例)50が設けられ、流速調整手段45は、下流側ストレートパイプ50にねじ結合され、第2のパイプ22に直列に連結されている。
なお、流速調整手段44、45のねじ結合された各部は、シール材により水漏れが防止されている。
【0037】
上流側ストレートパイプ48、中間ストレートパイプ49、及び下流側ストレートパイプ50は、プラスチックからなり、内径が85〜295mmの範囲、例えば、190mmで形成されている。流速調整手段44、45のストレート部41は、内径が、90〜300mmの範囲(例えば、200mm)で形成され、流速調整手段44、45の開口部42は、直径B’がパイプ13(第1、第2、第3のパイプ21、22、23)の内径Lの1/5〜4/5倍となっている。また、開口部42を含むテーパー部43の全長A’(開口部42とテーパー部43を合わせた長さ)は50〜300mmの範囲、例えば、100mmである。
【0038】
第2、第3のパイプ22、23の間には、上流側から順に、上流側ストレートパイプ51、流速調整手段46、中間ストレートパイプ52、流速調整手段47、及び下流側ストレートパイプ53がねじ結合によって直列接続されて配置され、上流側ストレートパイプ51及び下流側ストレートパイプ53はそれぞれ、固定バンド27によって第2、第3のパイプ22、23に固定されている。
なお、上流側ストレートパイプ51、中間ストレートパイプ52、及び下流側ストレートパイプ53はそれぞれ、上流側ストレートパイプ48、中間ストレートパイプ49、及び下流側ストレートパイプ50と同じ形状、大きさ及び材質で形成されている。
【0039】
流速調整手段44、45、46、47は、テーパー部43の縮径端が、上流側を向いて配置されているので、堰の下流側から上流側に向かう魚を、テーパー部43の縮径する傾斜に沿って、開口部42に誘導することができる。
また、本実施の形態において、流速調整手段44、45、46、47は、ストレート部41の両端部に雌ねじが形成されているが、雄ねじが形成された流速調整手段を用いることもでき、その場合、上流側ストレートパイプ、中間ストレートパイプ、下流側ストレートパイプには、流速調整手段の雄ねじに螺合する雌ねじが形成される。
【0040】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、サイフォン式パイプ魚道の設置は、堰等の段差に限らず、河川に自然に形成された段差にも設置可能である。
また、流速調整手段の数は、4つに限定されず、サイフォン式パイプ魚道が設置される段差の高さや形状によって、個数は変更される。そして、流速調整手段は、パイプの中間位置でなく、パイプの端部に設けることもでき、パイプは支持部材によって、段差の上流側に固定されてもよい。また、パイプは全部を蛇腹ホースとしてもよいし、一部を蛇腹ホースとしてもよい。
流速調整手段の開口部は、全てを同じ大きさにする必要はなく、流速調整手段によって異なる大きさにすることができ、直径が小さくなればなるほど水の減速効果は大きくなる。
【符号の説明】
【0041】
10:サイフォン式パイプ魚道、11:入水口、12:出水口、13:パイプ、14:開口部、15、16、17、18:流速調整手段、19:支持部材、21、22、23:第1、第2、第3のパイプ、24:ごみ除け、25:ストレート部、26:テーパー部、27:固定バンド、28:上流側ストレートパイプ、29:中間ストレートパイプ、30:下流側ストレートパイプ、33:上流側ストレートパイプ、34:中間ストレートパイプ、35:下流側ストレートパイプ、40:サイフォン式パイプ魚道、41:ストレート部、42:開口部、43:テーパー部、44、45、46、47:流速調整手段、48:上流側ストレートパイプ、49:中間ストレートパイプ、50:下流側ストレートパイプ、51:上流側ストレートパイプ、52:中間ストレートパイプ、53:下流側ストレートパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川に設けられた段差の上流側の水中に浸漬する入水口と、前記段差の下流側の水中に浸漬する出水口を備える屈曲可能なパイプと、
前記パイプの端部又は中間位置に設けられ、魚路を形成する直径が前記パイプの内径の1/5〜4/5の開口部を有する流速調整手段と、
前記パイプを少なくとも前記河川の段差の上流側又は前記河川の段差に固定する支持部材とを有することを特徴とするサイフォン式パイプ魚道。
【請求項2】
請求項1記載のサイフォン式パイプ魚道において、前記流速調整手段の開口部は、拡径端がストレート部の内側に固定された円錐台状のテーパー部の縮径端に形成されていることを特徴とするサイフォン式パイプ魚道。
【請求項3】
請求項2記載のサイフォン式パイプ魚道において、前記テーパー部の縮径端が上流側を向いていることを特徴とするサイフォン式パイプ魚道。
【請求項4】
請求項2又は3記載のサイフォン式パイプ魚道において、前記ストレート部の少なくとも一端部には雄ねじ又は雌ねじが形成されて、分割された前記パイプの端部に設けられているストレートパイプとねじ結合可能となっていることを特徴とするサイフォン式パイプ魚道。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1記載のサイフォン式パイプ魚道において、前記パイプの内径は90〜300mmの範囲にあって、前記開口部を含む前記テーパー部の全長は50〜300mmの範囲にあることを特徴とするサイフォン式パイプ魚道。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1記載のサイフォン式パイプ魚道において、前記入水口には魚が通過可能なごみ除けが設けられていることを特徴とするサイフォン式パイプ魚道。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1記載のサイフォン式パイプ魚道において、前記パイプの一部又は全部は蛇腹ホースからなることを特徴とするサイフォン式パイプ魚道。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1記載のサイフォン式パイプ魚道において、前記流速調整手段は、前記パイプの途中に1又は複数設けられ、通過する水の流速が前記パイプで1〜2m/秒の範囲に調整されていることを特徴とするサイフォン式パイプ魚道。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−52504(P2011−52504A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204902(P2009−204902)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(802000031)財団法人北九州産業学術推進機構 (187)