サクションロール及びサクションロールを用いた搬送シートの搬送装置
【課題】搬送シートの吸着解放を所望の位置で確実に行うことにより、サクションロール全体の吸着力の低下を抑えながら、搬送シートのしわや撓みを防止して搬送シートの寸法誤差をなくし、吸着痕を解消できるサクションロールを提供する。
【解決手段】ロール本体3の外周面に複数個穿設され、搬送シートを吸着可能な吸着孔5と、ロール本体3の軸心方向に沿って形成され、吸着孔に連通し負圧の供給用通路となる負圧供給用通路9と、負圧供給用通路の負圧を解除する負圧解放手段と、を備えるサクションロール1であって、吸着孔5が、搬送シート101を吸着可能に形成されるとともに、負圧解放手段により搬送シート101を解放可能に形成されるサクションロール1。
【解決手段】ロール本体3の外周面に複数個穿設され、搬送シートを吸着可能な吸着孔5と、ロール本体3の軸心方向に沿って形成され、吸着孔に連通し負圧の供給用通路となる負圧供給用通路9と、負圧供給用通路の負圧を解除する負圧解放手段と、を備えるサクションロール1であって、吸着孔5が、搬送シート101を吸着可能に形成されるとともに、負圧解放手段により搬送シート101を解放可能に形成されるサクションロール1。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の紙、樹脂性フィルム、金属性薄、薄膜、布、及び長尺シート、気泡シートや発泡シート等の搬送シートを一方向に搬送するために用いられるサクションロール及びサクションロールを用いたシートの搬送装置、とりわけ、気泡シートや発泡シートを搬送するために用いられるサクションロール及びサクションロールを用いたシートの搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチックのシート状物等を裁断或いは製造する加工機には、シート状物を送る(搬送する)手段としてピンチロールがある。ピンチロールは、搬送シートの下側方向から一定の圧力で押え、正しい方向(所望の方向)に送られるように規制したり送り込んだりするものである。このピンチロールは製造が容易であり、しかも、安価に製造できるため、一般に使用されてきた。
【0003】
しかし、気泡シートや発泡シート等の伸縮性の高い素材からなる搬送シートをピンチロールを用いて搬送すると、強い力でピンチするため、そのグリップ強さからシート自体が伸縮し、寸法精度が低下するという問題が生じてしまう。他方、ピンチする力を弱めて搬送シートを搬送しようとすると、ピンチロール上で搬送シートが滑り、所望寸法の搬送を困難にしていた。
【0004】
とりわけ、気泡シートや発泡シート等の搬送シートは、平滑なシートとは異なり、気泡や発泡等による厚み、形状等様々なものがあり、それらの気泡の形状(例えば、丸型、ハート星型等)、凹凸等により、シートがニップロールの上でスリップし、ニップロールの回転量=所望寸法の送り量とならず、求められる製品(いわゆるカット品、袋等)に誤差が生じてしまうといった深刻な問題があった。
【0005】
ところで、このようなピンチロールに代わるものとしてサクションロールがある。このサクションロールは、回転可能なロールの外周面に無数のスリットや孔等を穿設し、そのスリットや孔等に搬送シートを吸引或いは吸着(サクション)させて、搬送するものである(特許文献1参照)。
【0006】
しかし、このサクションロールでは、サクション(吸引)する領域が限定されておらず、必要がない領域でもサクションされるため、サクションする必要がある領域での吸引力(吸着力)をも低下させるおそれがあった。すなわち、サクション領域がロール全体で行われると、本来吸着(吸引)すべき領域で十分な吸着が行われず、その結果、搬送シートがスリップしやすくなるといった問題があった。このような問題に対して吸引力(吸引量)を強くして問題の解決を図ることも考えられるが、吸引力を強くするには、それなりの設備等が必要となり、コスト負担が増大するため十分な解決策とはいえない。
【0007】
そこで、次の特許文献2に記載されるサクションロールがある。特許文献2のサクションロールでは、搬送シートと接していない(サクションされていない)ロール本体の周面部分から、(エアを)吸引して、全体の吸引力の低下を防止する観点から吸引角度の範囲で開口する排気孔が設けられている。
【0008】
確かに、この特許文献2に記載のサクションロールでは、吸引力(吸着力)の低下を防ぐという点で、吸引角度の範囲で開口する排気孔を設けることにより、一定の成果は見られる。しかし、吸引角度等についての開示は何らなされておらず、具体性に欠けるものであった。さらに、寸法誤差の解消という点でも何ら提示されていない。
【0009】
このように、いずれの特許文献もサクションロールとしては依然として十分なものではなく、更なる改良が望まれる。
【0010】
【特許文献1】特許第2899226号公報
【特許文献2】特開2006−36451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、搬送シートの吸着解放を所望の位置で確実に行うことにより、サクションロール全体の吸着力の低下を抑えながら、搬送シートのしわや撓みを防止して搬送シートの寸法誤差をなくし、吸着痕を解消できるサクションロール及びサクションロールを用いた搬送シートの搬送装置を提供する。とりわけ、気泡シート、発泡シートに好適に用いることができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、ロール本体の外周面に複数個穿設され、搬送シートを吸着可能な吸着孔と、ロール本体の軸心方向に沿って形成され、吸着孔に連通し負圧の供給用通路となる負圧供給用通路と、負圧供給用通路の負圧を解除する負圧開放手段と、を備え、吸着孔が、搬送シートを吸着可能に形成されるとともに、負圧開放手段により搬送シートを解放可能に形成されることによって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明によれば、以下に示す、サクションロール及びサクションロールを用いた搬送シートの搬送装置が提供される。
【0014】
[1] ロール本体の外周面に複数個穿設され、搬送シートを吸着可能な吸着孔と、前記ロール本体の軸心方向に沿って形成され、前記吸着孔に連通し負圧の供給用通路となる負圧供給用通路と、前記負圧供給用通路の負圧を解除する負圧解放手段と、を備えるサクションロールであって、前記吸着孔が、前記搬送シートを吸着可能に形成されるとともに、前記負圧解放手段により前記搬送シートを解放可能に形成されるサクションロール。
【0015】
[2] 前記吸着孔が、前記ロール本体の回転により前記ロール本体の軸心に対して0〜180度の範囲に位置する際に、前記搬送シートを吸着可能に形成され、かつ、前記ロール本体の回転により前記ロール本体の軸心に対して180〜270の角度の範囲に位置する際に、前記負圧解放手段により前記搬送シートを解放可能に形成される[1]に記載のサクションロール。
【0016】
[3] 前記負圧解放手段の負圧解放量を調整可能に形成される[1]又は[2]に記載のサクションロール。
【0017】
[4] 前記負圧解放手段の負圧解放が、前記負圧供給用通路を介して前記吸着孔へ外気を送り込むことにより行われる[1]〜[3]のいずれかに記載のサクションロール。
【0018】
[5] 前記搬送シートが気泡シート又は発泡シートである[1]〜[4]のいずれかに記載のサクションロール。
【0019】
[6] 前記[1]〜[5]のいずれかに記載するサクションロールと、前記サクションロールに前記搬送シートを供給する搬送シート供給手段と、前記サクションロールから搬送された搬送シートを裁断する裁断装置と、を備える搬送装置であって、前記サクションロールは、前記搬送シート供給手段と連動可能、かつ、前記ロール本体の回転を制御可能に構成されるとともに、ロール本体の回転により所望寸法の搬送シートを裁断手段に送り出し可能に構成され、前記裁断装置が、前記サクションロールから送り出された搬送シートを裁断可能に構成される搬送シートの搬送装置。
【0020】
[7] 前記裁断手段は、搬送シートを溶断と同時に融着させるヒートシールバーと、前記サクションロールから搬送された搬送シートを受けるシール受け台と、搬送シートを前記シール受け台に押さえる押さえ手段と、前記押さえ手段と対向して配置される押さえ受け台とを備える[6]の搬送装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明のサクションロールは、搬送シートの吸着解放を所望の位置で確実に行うことにより、サクションロール全体の吸着力の低下を抑えながら、搬送シートのしわや撓みを防止して搬送シートの寸法誤差をなくし、吸着痕を解消できるという効果を奏するものである。とりわけ、気泡シート、発泡シートに好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0023】
[1]サクションロール:
本発明のサクションロール1は、図1〜3に示されるように、ロール本体3の外周面に複数個穿設され、搬送シート101を吸着可能な吸着孔5と、ロール本体3の軸心7方向に沿って形成され、吸着孔5に連通される負圧供給用通路9と、負圧供給用通路9の負圧を解除する負圧解放手段(図6Aの符号18参照)と、を備える。吸着孔5が、搬送シート101を吸着可能に形成されるとともに、負圧解放手段18により搬送シート101を解放可能に形成される。
【0024】
[1―1]ロール本体:
ロール本体は、サクションロールの一部を構成し、サクションロールの軸心(回転軸)の回転に連動して、回転可能に形成される。このロール本体は、一個の駆動ロール表面に長尺シート等の搬送シートを吸着させながら、次の工程である裁断手段に搬送案内するものである。とりわけ、気泡シート、発泡シート等の搬送シートの搬送に適したものである。なお、図2に示される符号Yは、ロールの回転方向を示すものである。
【0025】
ロール本体3は、図1〜3に示されるように、その外周面に吸着孔5が複数個穿設され、ロール本体3の幅方向(軸心方向)に沿って負圧供給通路9が内設されている。ここで、サクションロールは、回転軸、ロール本体の両端等を、ロール本体と一体的に構成する場合と、図1〜3に示されるように、ロール本体を別体として形成する場合がある。ただし、図1〜3に示されるように、ロール本体の両端等は別体として形成される方が成形し易く、また、ロールの回転制御等の点で調整し易いため、別体として形成される方がより好ましい。
【0026】
図1〜3に示されるように、別体としてロール本体3を構成する場合には、ロール本体3は、一端4aと他端4bとからなる端部4を有し、ロール本体3の長さ方向にロール本体3の回転軸7が設けられる。この回転軸7(軸心)の回転により、ロール本体が、回転軸(軸心)を中心に回転可能に構成される。なお、ロール本体の両端には、サイドプレート17が設けられ、軸心の回転及びロール本体の回動に応じて回動(回転)しないように形成されている。このサイドプレートについては、後段で説明する。
【0027】
ロール本体3の形状は、円柱状、円筒状に形成されることが好ましい。搬送シートを搬送させ易いことに加え、ロール本体の外周面の所望位置に均一の力で搬送シートを吸着させやすいからである。均一な吸着力を供給できないと、搬送シートを搬送する際に、ロール本体の外周面の一部でスリップ等が発生しやすいから好ましくない。なお、負圧供給用通路の配置スペースを取り易く、軽量にできるという点では円筒状に利点があるが、円筒状では、回転軸、回転軸の回転に応じてロール本体が回転可能な取り付け部材等が必要となり、その分部品点数が多くなる。したがって、搬送シートの寸法や形状に応じて、それぞれ使い分けることが好ましい。
【0028】
ロール本体の大きさ(寸法)としては、直径90〜500mm、長さが1m〜6m程度のものが一般適に使用されているが、このような寸法に限らず、多様な用途の搬送シートの製造に好適な大きさ(寸法)であれば、本実施形態のロール本体の寸法に含まれる。
【0029】
ロール本体の材料としては、たとえば、アルミニウム、亜鉛のような金属またはこれらの合金、フェノール重合体、塩化ビニール重合体、エチレン重合体、イミド重合体、アミド重合体およびカーボネート重合体等が挙げられ、抽出成形により成形される。特に、アルミニウム製のものは軽量であるから慣性モーメントが少ないため、回動を停止または回動させるときの応答性が早いので利点がある。
【0030】
[1−1−1]搬送シートの寸法調整について:
サクションロールには、ロール本体の回転を制御可能に構成されている。ロール本体を回転制御可能にするのは、搬送シートを吸着し所望位置まで搬送シートを移動させるサクションの工程を経た後に、所望寸法の裁断が行われるようにするためである。すなわち、ロール本体を所望回転可能に制御することで、ロール本体は、所望回転分だけ回転する。而して、ロール本体に吸着した搬送シートは、ロール本体の外周面が移動した距離分(寸法分)ロール本体上を移動し、或いは、回転ロールから離れ、裁断工程に向かって流れる(移動する)ため、ロール本体の回転を制御することにより、搬送シートの所望寸法を制御(調製)できることになる。
【0031】
また、サクションロールは、搬送シートが所望寸法分移動した後、ロール本体の回転を一時的に中断可能(停止可能)に構成される。ロール本体が絶えず回転し続けると搬送シートが流れ(移動し)続けることになり、裁断工程での裁断が間に合わなかったり、煩雑化したりするため、それらの起こり得る弊害を解消させている。すなわち、ロール本体の回転を間断的に調整(制御)可能にすることによって、裁断手段が搬送シートを裁断している際には、ロール本体の回転が停止され、裁断が適切に行われる上、サクションロールと裁断手段の間で搬送シートがだぶついたりすることを防ぐことができる。
【0032】
このようにサクションロールに搬送シートの寸法調整を行わせるのは、換言すれば、搬送シートの始点となる原反ロールで寸法調整を行わないのは、搬送シート、とりわけ、気泡シート等は伸縮し易く、正確な寸法精度が保ちづらいという状況があり、また原反ロールからサクションロールまでの搬送シートの移動行程(距離)が長いと伸縮のばらつきも大きくなって寸法誤差が生じやすいから、サクションロールで寸法調整することによって、そのような弊害を防止するためである。また、裁断手段で寸法調整をさせないのは、裁断行程で複雑化しやすく、裁断の精度が落ちやすいからである。搬送シートのカット等裁断が上手くいかないことは、商品の品質を低下させる大きな要因となるため、裁断手段では、できるかぎり裁断以外の加工処理をさせないこととした。したがって、裁断手段の直前である、サクションロールの搬送工程で寸法調整させている。
【0033】
なお、後述するように、ロール本体と搬送シート供給手段とを連動させるのは、搬送および、裁断をスムーズの行えるようにするため、また、望まない伸縮を可能な限り防ぐことにより搬送シートにダメージを与えないようにするためである。たとえば、前述のように連動させることで、ロール本体の回転が一時的に停まっている間は、原反ロールから新たな搬送シートがサクションロールに供給されず、供給手段とサクションロールの間で搬送シートがだぶつくことを防ぐことができる。
【0034】
図9、10は、原反ロール103から裁断手段の間にサクションロールを配置した場合の、搬送シートの流れを模式的に示した図である。たとえば、この図9に示されるように、原反ロールとサクションロール間では、ロール本体に吸着された搬送シートがロール本体の回転により移動すると、その移動に応じて(合わせて)、原反ロールに巻かれた搬送シートが引っ張られて回転し、新たな搬送シートの送り出しが行われるように、連動させてもよい。すなわち、原反ロールとサクションロール間では、搬送シートに程度なテンションがかけられ、サクションロールが回転すると、搬送シートが送り出される。なお、符号Rは、搬送シートの流れ方向を示すものである。
【0035】
[1−2]軸心(回転軸):
ロール本体は、軸心(回転軸)の回転に応じて、回転可能に構成されている。この軸心は、たとえば、図2に示されるように、ロール本体3、さらには、サイドプレート17を貫通するように設けられ、ベアリング(図示せず)等の軸受(図示せず)によって回転可能に設置される。軸心は、ロール本体と一体的に形成してもよいし、別体として形成した後ロール本体と連結させ、かつ、軸心の回転に応じてロール本体が回転可能になるよう連結させてもよい。また、この軸心は、ロール本体と同じ素材から形成してもよいが、それらの素材に限られず、公知の素材から形成してもよい。さらに、軸心の形状はロール本体連結しやすく、回転可能であれば特に限定されない。
【0036】
[1―3]吸着孔:
吸着孔は、図2、3に示されるように、ロール本体の外周面に沿って複数個形成される。ロール本体の外周面に形成される吸着孔の個数は、吸着孔の形状、開口形状、開口寸法等、或いは、その吸着力、さらには、ロール本体の大きさ(寸法)等によって、様々であるが、少なくとも、搬送シートを吸着しやすいように、ロール本体の外周面に偏りなく均等(均等の間隔)に形成されることが好ましい。ロール本体の外周面に形成される吸着孔に偏りがある場合には、所望領域で搬送シートを吸着しやすい箇所と、吸着しづらい箇所ができるため、搬送性の点で好ましくないからである。この吸着孔の形成は、ドリルやレーザー光等を用いて穿設してもよい。
【0037】
なお、一般的に吸着孔の個数は、ロール本体が直径90〜500mm、長さが1m〜6m程度の場合には、外周面上に約6000〜200,000個程度形成されることが多いが、この個数に限定されるものではない。
【0038】
また、吸着孔の形状は、その字句に限定されることなく、搬送シートを吸着しやく、或いは、吸着後所望位置で搬送シートを解放し易い形状であればよく、例えば、スリット状、V字状溝、U字状溝、コ字状溝等、孔形状のもの等含まれる。
【0039】
たとえば、図4では、吸着孔5を、断面視略台形状をなす有低のものとして形成しているが、このような有底の形状に限られず、有底を形成せずに負圧供給用通路9まで貫通形成してもよい。このように吸着孔5をロール本体の軸心方向に沿って形成される負圧供給用通路9と連通させると、負圧供給用通路9を介して、吸着孔5内にエアが減圧され真空状態となり、搬送シートを吸着できる。
【0040】
ここで、吸着孔と負圧供給用通路とが一体形成される場合の連通方法として、円柱状のロール本体からなる場合には、たとえば、ロール本体の長さ方向(軸方向)に負圧供給用通路を貫通させるとよい。さらに、ロール本体の軸心に直交し、負圧供給路に直交するように、スリット等の吸着孔をロール本体に一体的に形成する。また、円筒状であっても、例えば、ロール本体の外周面を肉厚に形成すれば、円柱状のロール本体と同様に形成できる。
【0041】
また、肉厚がない(或いは肉厚の薄い)円筒状からなるロール本体として構成される場合には、スリット等の吸着孔を形成し、円筒状のロール本体に、その長さ方向に管状の負圧供給用通路を配置し、さらに吸着孔と負圧供給用通路とを繋ぐ(連通させる)小貫通孔を設けてもよい。例えば、図4に示されるように、吸着孔5の底壁5aに小貫通孔11(11a、11b、11c、11d)を設け、吸着孔5の底壁5aからロール本体3の軸心7に向かって延伸させ、かつ、負圧供給用通路9に連通させて形成してもよい。ただし、肉厚がない(或いは肉厚の薄い)円筒状からなるロール本体を用いる場合には、成形工程が複雑になる上、真空状態にするための密封性(シールド)の調整等が必要となり、前述のロール本体よりも不利な点も多い。したがって、より好ましいのは円柱状からなるロール本体、肉厚の円筒状からなるロール本体である。
【0042】
また、吸着孔に搬送シートをサクションする領域(以下、適宜「バキュームゾーン」といい、符号Vで示す)は、ロール本体の回転方向や搬送シートの流れ方向(流れ工程)等に応じて形成されることが好ましい。たとえば、搬送シートの流れ工程として、図1、9に示されるように、サクションロール1から搬送シート101をいわば水平方向にスライド(移動)させて搬送させる場合がある。このような流れ工程を採用する場合には、厳密なものではないが、いわば平面として流れ工程が構成されているため、設置スペースを確保する必要がある。ただし、メンテナンス等し易いという利点があるため好ましい。また、たとえば、図10に示されるようにサクションロール1から搬送シート101を、いわば垂直方向に移動させて搬送する場合、或いは、サクションロールから搬送シートを、図1に示される水平方向へスライドさせるのではなく、サクションロールをいわば折り返しの基点として、U字状に搬送シートをターンさせて移動させる場合(図示せず)等様々なものがある。これらの流れ工程を採用する場合には、厳密なものではないが、いわば立体的に流れ工程が構成されているため、広いスペースを確保しなくてもよいという利点がある。これらのように、サクションロールの設置状況、ロール本体の回転方向や搬送シートの流れ方向等に応じて、サクションロールの所望範囲にバキュームゾーンが形成されることが好ましい。
【0043】
ただし、より好ましいのは、バキュームゾーンが、搬送シートの吸着を確実に行え、寸法誤差を生じさせない、以下のような所望範囲に形成されることである。
【0044】
たとえば、水平方向にスライド(移動)させて搬送シートを搬送させる場合には、吸着孔が、ロール本体の回転により、ロール本体の軸心に対して0〜180度の範囲に位置する際に、搬送シートを吸着可能に形成されることが好ましい。この場合には、吸着孔はロール本体の外周面上全域に亘って形成されるが、搬送シートが吸引(吸着)されるのは、ロール本体の軸心に対して0〜180度の位置である。他方、0〜180度の位置よりも吸着範囲(バキュームゾーン)が大きいと、搬送シートの寸法誤差が生じやすい。すなわち、搬送シートがサクションロールから離れて、裁断工程に移動すべき位置になっても、サクションロールに吸着された状態となり、その結果、搬送シートのたわみやよれが生じ、その後のシートの送り出しに寸法誤差が生じてしまうのである。
【0045】
また、たとえば、垂直方向に移動させて搬送シートを搬送させる場合には、好ましいのは、ロール本体の軸心に対して0〜180度の範囲である。前述と同様に、シートの送り出寸法に誤差を生じさせないように制御できるから好ましい。
【0046】
また、たとえば、水平方向へ搬送シートをスライドさせずに、サクションロールをいわば折り返しの基点として、搬送シートをU字状にターンさせて移動させる場合には、ロール本体の軸心に対して0〜180度の範囲である。前述と同様に、シートの送り出し寸法に誤差を生じさせないように制御できるから好ましい。
【0047】
なお、前述のようにバキュームゾーンにある程度の幅を持たせているのは、搬送シートを確実にロール本体に吸着させるためである。負圧を供給して吸着孔に搬送シートを吸着させると、その吸着孔と搬送シートの接地面は真空状態、若しくは、真空状態に近い減圧状態となり、搬送シートによっては、負圧を供給する範囲を持たせなくとも、ある程度の間吸着され得るが、誤ってロール本体の外周面から搬送シートが離れたり、吸着状態が不安定となったりすると、よれやたわみ等寸法誤差の原因となるから、確実に搬送できるように、ある程度の範囲で負圧を供給することとした。
【0048】
また、搬送シートを吸引する(吸着する)必要がない箇所においても、吸着孔に負圧供給用通路を介して負圧が供給されると、搬送シートといういわば蓋がないため、吸着孔の開口部から外気を絶えず取り込むことになる。而して、負圧供給されるべき吸着孔に、負圧が十分に供給されない事態が生じ、その結果、吸着孔の吸着力を弱め(低下させ)、搬送シートを確実に吸着できないおそれが生じる。その低下した吸着力を補う方法として、負圧供給量を大きくすることも考えられるが、更なる動力源等過大な設備が必要となり、悪循環(弊害)を引き起こすことにもなりかねない。したがって、吸着箇所を前述のような所望の角度に制御することが好ましい。
【0049】
ここで、前述の所望の吸着箇所(バキュームゾーン)を設ける代わりに、バキュームゾーン以外に位置する吸着孔に遮蔽物を設けて搬送シートを吸着させない(解放させる)方法も考えられる。しかし、そのような方法を採用すると、吸引(吸着)された搬送シートは、吸着孔と真空状態で吸着しているため、吸引(吸着)がすぐに解除(解放)しづらい状態となる。また、しわやよれ等が生じにくい搬送シートであればよいが、気泡シートや発泡シート等の搬送シートでは、しわやよれ等が生じやすい素材からなることが多い。したがって、前述の遮蔽物を設けても、その遮蔽物に引っかかり、撓み、よじれが発生したり、搬送シートを傷めたりする。そのため、寸法誤差の解消には程遠いため、遮蔽物等で吸着を欲しない箇所を遮蔽することは望ましくない。
【0050】
また、搬送シートを吸着した吸着孔が、搬送シートを解放可能にする領域は(以下、適宜「負圧解放ゾーン」といい、符号Zで示す)、前述のバキュームゾーンVの終端或いは、バキュームゾーンの後(バキュームゾーン後)の領域に設けられることが好ましい。バキュームされた後の搬送シートを解放可能にする役割を果たすためである。
【0051】
搬送シートを解放可能にする領域(負圧解放ゾーンZ)としては、ロール本体の回転方向や搬送シートの流れ方向等サクションロールの設置状況、さらには、バキュームゾーンの形成位置に応じて形成されることが好ましい。たとえば、図1、9に示されるように、厳密なものではないがいわば水平方向にスライド(移動)させて搬送シートを搬送させる場合、図10に示されるように、いわば垂直方向へ搬送シートを搬送させる場合、或いは、図1に示されるような水平方向へ搬送シートをスライドさせて搬送せずに、サクションロールをいわば折り返しの基点として、搬送シートをU字状にターンさせて移動させるもの(図示せず)等があり、状況に応じて搬送シートの解放を容易にするためである。
【0052】
より好ましいのは、水平方向にスライド(移動)させて搬送シートを搬送する場合に、吸着孔が、ロール本体の回転によりロール本体の軸心に対して180±270度の範囲に位置する際に、搬送シートを解放可能に負圧解放ゾーンが形成されることである。吸着孔に吸着された搬送シートが、バキュームゾーンを過ぎても、搬送シートと吸着孔との接触している接地面(吸着面)は、いわゆる真空状態か、少なくとも減圧状態となっており、ロール本体(吸着孔)と搬送シートとの「離れ」が悪くなっている。そのような離れの悪さは、よれ等を生じさせ、その結果、サクションロールからの裁断工程への搬送シートの送り出し寸法に誤差を生じさせる。したがって、前述の所望位置(所望角度)で、吸着した搬送シートを確実に解放できるようにし、寸法誤差の原因となる搬送シートのよれやたわみ等が生じるのを防止した。
【0053】
搬送シートを解放可能にする方法としては、たとえば、図5に示されるように、吸着孔5が前述の所望位置に移動した際に、外気(エア)を取り込み可能なスリットを形成した負圧解放手段19と、負圧用供給通路9とを接続(連通)することによりおこなわれるとよい。このように連通させることにより、負圧供給用通路9を介してその供給用通路に連通する吸着孔5に、外気が(スリットから)取り込まれる。すなわち、負圧供給用通路9を経由して吸着孔5に供給され、搬送シート101を解放(解除)できる。したがって、吸着孔の真空状態または減圧状態が緩和あるいは解除(解放)され、吸着孔から搬送シートが離れ、あるいは離れやすくなる。ただし、このような具体例に限定されるものではない。
【0054】
さらに、搬送シートを解放可能にする方法として、吸着孔が前述の負圧解放ゾーンに移動した際に、吸着孔から搬送シート側へエア(取り込まれた外気)が当たるように形成されることも好ましい形態の一つである。負圧解放手段から負圧供給用通路を介して吸着孔へエア(外気)を送り込み、さらに、そのエアが搬送シートに当たると、搬送シートと吸着孔との吸着を容易に解除でき、搬送シートがロール本体から離れやすくなるため、好ましい。
【0055】
ただし、このエアの当たる量(噴出量)が大きいと、搬送シートが必要以上にロール上から浮き上がってしまい、新たなよれやたわみの原因となるため、エアの噴出量が調整可能であることが好ましい。
【0056】
また、吸着孔上、すなわち、ロール本体の外周面上に線材等を巻装する(螺旋状に巻く)ことも好ましい形態の一つである。このように吸着孔の表面(ロール本体の外周面)を線材で覆うと、搬送シートに吸着痕がつきにくくなり、さらには、搬送シートの表面を傷つける(ダメージを与える)ことを防止できるからである。
【0057】
なお、線材等で吸着孔の表面を覆っても、線材と線材との間(隙間)には、無数の微細な孔が形成されるため、その隙間を介して、搬送シートが吸着されるように、線材と線材との間(間隔)を調整して巻装することが好ましい。
【0058】
線材としては、たとえば、ゴム、ナイロン、ウレタン等からなる網状物、ワイヤ等が挙げられる。
【0059】
また、このように線材を巻装することにより、負圧発生手段(吸気装置)を作動させ、駆動源に連結した回動軸を回動させると、吸着孔を覆うようにロール本体の外周面に巻装された線材等の隙間から吸気され、線材の表面に長尺シート等の搬送シートが吸着される。
【0060】
[1―4]負圧供給用通路:
本実施形態における負圧供給用通路は、図2、3に示されるように、ロール本体3の軸心7方向に沿って形成され、吸着孔5に連通するように形成される。ロール本体3の幅方向(軸心方向)に沿って、負圧供給用通路9を内設するのは、ロール本体3の外周面に設けられた吸着孔5に、連通して負圧を供給できるようにするためである。この負圧供給用通路は、例えば、ロール本体の軸心方向に貫通形成してもよく、また、負圧の供給路となり得る管状部材(図4の11a〜11d参照)を配置して形成してもよい。
【0061】
ただし、より好ましいのは、ロール本体の外周面をある程度肉厚に形成して、負圧供給用通路を形成することである。吸着孔と連通させる場合に、部品点数が少なくなり安価に形成できるからである。
【0062】
なお、このような形成方法に限られるものではなく、負圧を吸着孔に供給できるものであり、また、ロール本体の軸心方向に沿って形成され、かつ、吸着孔に連通するように形成される供給通路である場合には、本実施形態における負圧供給用通路として用いることができる。
【0063】
また、バキュームゾーンに負圧供給用通路から負圧が送り込まれる位置、すなわち、バキュームゾーンが形成される位置は、負圧供給用通路と連通する吸着孔がロール本体の軸心に対して0〜180度に位置する際に形成されることが好ましい。より好ましいのは、負圧供給用通路と連通する吸着孔がロール本体の軸心に対して90〜180度の角度の範囲の位置する際に形成されることである。負圧供給用通路は、図1に示されるように、吸着孔が所望の位置(バキュームゾーンV)に移動する際に、吸着孔に対して負圧を供給する。ここで、ロール本体の外周面では、必ずその一部に搬送シートが吸着されない吸着孔がある。換言すれば、本実施形態のサクションロールは、搬送シートを一巻きするのではなく、そのロール本体の外周上の一部に吸着させて、所望の領域に搬送移動させるものであるから、必ずロール本体に形成される貫通孔には、搬送シートが吸着されないものが生じるのである(図1参照)。したがって、そのような吸着孔に負圧を供給しないようにするとともに、吸着孔が前述の所望角度に位置する際に、その吸着孔に連通する負圧供給用通路から負圧が供給されることで、搬送シートの搬送を確実にできるように形成されることが好ましい。
【0064】
仮に、搬送シートを吸着しない箇所にある吸着孔を含めた全ての吸着孔に絶えず負圧を供給し続ける場合には、搬送シートが吸着されない箇所(吸着孔)は、外気に対して開放状態となり、真空状態(若しくは、減圧状態)となり得ず開放状態となっている。そのような開放状態となっている吸着孔からは、いわば蓋がないため外気が取り込まれ続け、負圧が必要な箇所に十分に供給できなくなる。さらに、負圧が不十分な箇所に十分な負圧を供給するために、負圧発生手段の負圧発生量を大きくする必要が生じたり、負圧を大きくしたために負圧調整がしづらくなって、搬送シートに吸着痕が残ったり、寸法誤差を生じたりする。したがって、負圧発生手段に所望位置で接続可能に構成されることが好ましい。
【0065】
なお、このようなバキュームゾーンを可能とする方法としては、たとえば、図3に示されるような後述のサイドプレートの内面であって外周の近傍に設けられる領域に、接続ポート13を設けることが挙げられる。このように構成されることにより、負圧発生手段が接続ポートに接続し、さらに、バキュームゾーンに位置する吸着孔に連通しながら負圧供給用通路が、接続ポートに接続(連通)する際に、負圧を供給できる。
【0066】
また、負圧発生手段に接続するための接続ポートと、負圧供給通路に連通する開口部を除いては、外気(またはエア)が前述の領域に侵入しづらい構成であることが好ましい。外気等の侵入がしやすいと負圧の供給が十分とならず、搬送シートの吸着に影響がでるためである。具体的には、サイドプレートの内側に溝を設け、サイドプレートの正面に接続ポートを設けるとよい。このように形成すると、サイドプレートの溝に対して、負圧供給用通路がいわば、その溝の蓋となるため、サイドプレートの中から(ロール本体の中部から)、エアがバキュームゾーンに侵入しづらくなる。すなわち、サクションを制御しやすくなる。さらに、サイドプレートに設けられる接続ポートには負圧発生手段が接続されるため、やはり外気を取り込めない。したがって、バキュームゾーンの内部は、負圧発生手段からの負圧により、減圧状態、更には真空状態となるため、負圧供給用通路と連通(接続)した場合には、負圧を負圧供給用通路内に供給できるようになる。
【0067】
また、吸着孔がロール本体の軸心に対して、0〜180度の位置へ移動すると、負圧供給通路もロール本体の軸心に対して、0〜180度の位置へ移動することが好ましい。負圧供給通路は、吸着孔に貫通形成され、ロール本体の軸心方向に向かって内設(或いは、形成)されているため、負圧供給用通路も軸心から吸着孔までの直線上に配置されること好ましいからである。
【0068】
なお、前述のバキュームゾーンは一例であって、このようなバキュームゾーンの構成に応じた負圧供給通路に限定されるものではなく、外部に設けた負圧発生手段からの負圧を負圧供給用通路に供給し、負圧供給用通路内、ひいては、吸着孔に負圧を送り込み可能に形成されるものであれば、本願の効果を奏し得るので、本実施形態におけるバキュームゾーンに含まれる。
【0069】
図3に示されるように、負圧発生手段と負圧供給用通路との接続方法としては、ロール本体の少なくとも一端(図3ではロール本体の両端)に、負圧発生手段15と接続可能な接続ポート13を設けることが好ましい。さらに、ロール本体3の回転に応じて負圧供給用通路9が接続ポート13に接続できるようにし、また、ロール本体が回転することで、接続ポート13から、負圧供給用通路9の接続が外れるように形成されることが好ましい。
【0070】
また、バキュームゾーンに位置する吸着孔に均等に負圧を供給しやすいように、ロール本体の両端に、接続ポート13a、13bを設け、それぞれを負圧発生手段15a、15bに接続できるように形成されることがより好ましい(図3参照)。一端のみの接続では、他端側に位置する吸着孔に負圧が供給されづらいから、確実に負圧を供給できるように両端に設けられることが好ましい。
【0071】
このように、負圧発生手段と負圧供給用通路との接続方法を構成すると、ロール本体が回転して、接続ポート13から外れた(移動した)負圧供給用通路9は、ロール本体3がさらに回転して、再び接続ポート13が設けられた位置に戻る(移動する)ことにより、1回転し再び接続ポート13と接続できる。したがって、接続ポート13を介して負圧が吸着孔に供給される。
【0072】
また、負圧供給用通路が接続ポートに接続する位置は、サクションをそのバキュームゾーン内で適性に行えるものであればよい。たとえば、図7Aに示されるようなバキュームゾーンの終端にあるもの、或いは図7Bに示されるようなバキュームゾーンの始端にあるものが挙げられる。このように、接続ポートの位置を所望位置に形成できることで部品の配置スペース等の問題に柔軟に対応可能となる。
【0073】
ただし、バキュームゾーンの終端或いは始端に接続ポートを設ける場合には、バキュームゾーン内の密封性を高めること好ましい。密封性がないと、接続ポートがバキュームゾーンの終端にある場合には、バキュームゾーンの始端近傍でのサクションが十分でなく、接続ポートがバキュームゾーンの始端にある場合には、バキュームゾーンの終端近傍でのサクションが十分でなく、結局のところ、搬送シートの誤差を生じさせかねないからである。
【0074】
より好ましいのは、吸着孔がロール本体の軸心に対して180〜270度の位置が望ましく、さらに好ましくは、吸着孔がロール本体の軸心に対して90〜180の角度の範囲の位置である。搬送シートを少ない負圧で効率よく、かつ確実にサクションでき、寸法誤差も制御しやすくなるからである。
【0075】
[1―5]負圧解放手段:
負圧解放手段は吸着孔により吸引された搬送シートの負圧を解放するために設けられるものであって、具体的には、ロール本体の一端(あるいは両端)にスリット等の負圧解放手段が一例として挙げられる。また、吸着孔が回転移動して負圧解放ゾーンに位置(移動)した際に、スリットに当接等させ、負圧供給用通路の入り口を外気に晒して、負圧解放が行われてもよいし、負圧供給用通路に外気を送り込んで負圧を解除してもよい。
【0076】
このように、負圧解放手段を形成することにより、例えば、所望位置に吸着孔が回転移動すると、負圧供給用通路が負圧解放手段に連通(接続)することになる。外気と負圧供給用通路内とは気圧差が生じているから、この連通により、あたかも通風孔が宛がわれたように、負圧解放手段からエアが負圧供給用通路に取り込まれる。すなわち、負圧が解除され、搬送シートはロール本体上(吸着孔)から離れやすくなる。したがって、所定位置でのシートのたるみやより等がなくなるため、寸法誤差が出づらくなり本発明の効果を奏することができる。
【0077】
また、負圧解放手段から、負圧供給用通路を介して負圧を解除する位置は、バキュームゾーンよりも後の位置になるように形成されることが好ましい。すなわち、バキュームゾーンよりも手前に、負圧供給通路を介して負圧を解除しても、搬送シートは吸着されていないからである。また、搬送シートが十分に吸着されていないバキュームゾーン内にて、負圧供給通路を介して負圧を解除しても、搬送シートの吸着を阻害し、さらには、搬送シートを適切な位置に搬送することを阻害するおそれがあるからである。
【0078】
負圧解放手段としては、たとえば、図5で示されるように、ロール本体の一端(サイドプレート17の一端)にスリット19を設けて、それを負圧解放手段18として構成してもよい。負圧供給用通路がロール本体の回転に伴ってスリット位置まで移動した際に、スリットが外気に開放されているから、外気がスリットから負圧供給用通路に取り込まれ、さらに、負圧供給用通路を介して吸着孔の負圧が解放されることになる。したがって、搬送シートが吸着孔から離れやすくなる。
【0079】
負圧解放手段は、負圧解放量が調整可能に形成されることが好ましい。搬送シートの形状によっては、シート離れは一律ではない。あるシート形状には適切な負圧解放量であっても、別のシートには適切な負圧解放量とならない場合もある。とりわけ、気泡シート、発泡シートでは、その気泡や発泡を内包させるシート状の構造により撓みやよれが生じ易く、寸法誤差を生じさせやすい。したがって、負圧解放を適量にして、吸着孔への吸着解放の制御が求められる。この解放量の調整としては、図5で示されるようなスリットの場合には、例えば、外気方向からスリットを覆う蓋(栓)等が挙げられ、蓋がロール本体の端面に対してスライド可能に形成するとよい。さらに、スライド調整可能とすることにより、解放量の調整が容易にできる。
【0080】
さらに、負圧解放手段は、エア送り込み手段(図示せず)と接続可能に形成されることが好ましい。スリット等外気に開放されているだけでは、或いは、外気との気圧差を利用して負圧を解除するだけでは、負圧供給用通路内、さらには吸着孔内の負圧をすぐに減じづらい(解放しづらい)場合もある。したがって、エア(外気)を、負圧供給用通路へ、さらには、吸着孔へ送り込み可能なエア送り込み手段に接続可能にすることで、搬送シートを解放しやすくなる。
【0081】
なお、エア(外気)の送り込み量が過度に強いと、搬送シートが送り込まれたエアによって必要以上に浮き上がり、たわみやよれが生じて寸法誤差の原因となるから、適度な慮のエアを送り込みできるように調節可能であることが好ましい。
【0082】
[1―6]負圧発生手段:
負圧発生手段は、負圧供給用通路を介して吸着孔に負圧を供給するための、いわば発生源となる。負圧発生手段としては、例えば、真空ポンプ、排気ブロア等があり、負圧供給装置として負圧を供給することが可能であれば、本発明における負圧発生手段に含まれる。このような負圧発生手段は、ロール本体の少なくとも一端に接続可能に構成されることが好ましい。ただし、このような構成に限らず、ロール本体に内設されてもよい。成形(配設)の容易さ、加工費用等の点からは、外部の負圧発生手段に接続されて構成されることがより好ましい。
【0083】
負圧発生手段が外部に設置される場合としては、例えば、図2に示されるように、接続ポート13に、負圧発生手段15を接続して負圧供給をすると利便性が向上する。
【0084】
なお、図2で示されるように、ロール本体の両端に接続ポート13a、13bを設けて、負圧発生手段15と接続することが好ましい。一方側の吸気のみでは全外周面の吸気力、とりわけ端縁部と中央部分とでは一定せず、不均一になる場合があり、長尺シート等の搬送シートの搬送が不均一になる。すなわち、寸法誤差が生じやすくなる。そのためロール本体の両側に接続ポート13a、13bを配置し、負圧発生手段15に接続可能構成することが好ましい。
【0085】
[1―7]サイドプレート:
サイドプレートは、ロール本体の両端に付勢手段を介して一定の圧力でそれぞれ添接される。このようにサイドプレートが添接されることにより、ロール本体を貫通するように設けた回転軸(軸、或いは軸心)が回転することに応じて、サイドプレートが回転しないよう配設することができる。したがって、負圧発生装置を外設する場合に設けられる接続箇所(接続ポート)、負圧解放をするためのスリット等の負圧解放手段等を、ロール本体又はロールの軸心に応じて一緒に回転させる、いわゆる連れ回しを回避することができる。
【0086】
具体的には、図3に示されるように、ロール本体3と、ロール本体3を貫通するように設けた回転軸7(軸、軸心)と、ばね等の付勢手段21によってロール本体に向かって付勢され、且つ、一定の圧力でロール本体の両端にそれぞれ添接する一対のサイドプレート17とが備えられる。なお、回転軸7は図示しない軸受けに支持されている。
【0087】
また、このサイドプレート17の少なくとも一方には、負圧発生手段15に通じる接続ポート13と、負圧解放手段18とが設けられている。さらに、外気を、負圧供給用通路9を介して吸着孔5に送り込む手段として、エア送り込み手段を用いる場合には、エア送り込み手段との接続ポートが設けられることが好ましい。
【0088】
前述のように、サイドプレートの接続ポートは、外部の負圧発生手段に接続可能に構成され、負圧供給用通路に接続(連通)可能に形成されている。負圧供給用通路に接続(連通)可能としたのは、負圧供給用通路に絶えず接続され続けると、負圧供給用通路を介して、吸着孔に負圧を与え続けることになり、所望の範囲で搬送シートを吸着し、さらに所望範囲で搬送シートを解放できないからである。すなわち、搬送シートが吸着孔に吸着し続けて、よれ、撓み、だぶつき等の原因となり、その結果寸法誤差を引き起こすことになるからである。したがって、負圧供給用通路に接続(連通)可能とすることにより、所望の範囲内で、負圧を、負圧供給用通路を介して、吸着孔に供給できるようにした。
【0089】
具体的には、図3に示されるように、吸着孔5が、ロール本体3の回転により、軸心7に対して、180〜270の角度に位置した際に、負圧発生手段15に通じる接続ポート13と負圧供給用通路9とが連通し、負圧発生手段15から、接続ポート13、負圧供給用通路9を経由して、吸着孔5内のエアを吸引する。ここで、吸着孔5に搬送シートが吸着していない場合には、吸着孔5には遮るものが何もないが、吸着孔5の表面を搬送シートが覆った(塞いだ)場合、あたかも搬送シートが吸着孔の蓋となって、吸着孔内のエアが減圧され、真空状態となる。すなわち、搬送シートが吸着される。
【0090】
なお、サイドプレートの接続ポートは、負圧供給用通路と異なり、外部の負圧発生手段から外気を供給され続けてもよい。負圧発生手段から継続して負圧を供給されても、負圧供給用通路が接続(連通)調整されて、バキュームゾーンに供給する負圧をコントロールできるからである。換言すれば、負圧を供給したい吸着孔と連通する負圧供給用通路だけが、接続ポートに接続され、バキュームゾーンに位置しない吸着孔と連通する負圧供給用通路には接続されないからである。
【0091】
ここで、図6A、6B及び図8を用いてサイドプレートについて具体的に説明する。なお、図6Aは、サイドプレートの正面図を模式的に示したものであり、図6Bは、サイドプレートの内側(サクションロールへの取り付け時に軸心方向)を模式的に示した図である。さらに、図8は、サイドプレートの断面を模式的に示した図である。なお、説明の便宜を図るために、サイドプレートの内部に設けられる溝等は省略して図示してある。
【0092】
図6A,6B、図8に示されるように、サイドプレート17には、回転軸挿入口33が形成され、この回転軸挿入口33に、サクションロールの回転軸(軸心)を貫通させて、ロール本体を回転可能に形成してある。さらに、サイドプレート17には、バキュームゾーンVに位置する吸着孔に連通する負圧供給通路に、負圧を供給するバキュームゾーンVと接続ポート13が設けられている。このバキュームゾーンVと負圧解放手段15とは、バキュームゾーンの密封性を確保するため離間して形成されることが好ましい。近傍に形成される場合にも、シール部材等によりシール性を持たせると、負圧の供給をスムーズに行えるため好ましい形態の一つである。なお、図8では、負圧解放手段15が、溝状に形成されているが、この形状に限られるものではなく、スリット、丸孔形状、星型等、外気を取り込み、負圧解放可能なものであれば、本実施形態における負圧解放手段に含まれる。
【0093】
なお、サイドプレートに設けられる、負圧供給装置と接続可能な接続ポートは、図6Aに示されるように、バキュームゾーンの末端(バキュームゾーンであって、回転方向から一番遠い箇所)に設けられとよい。
【0094】
さらに、ロール本体に添設されるサイドプレートの両方に接続ポートを設け、2つの接続ポートから負圧供給通路内に負圧を供給できるように形成されることが好ましい。所望域の吸着孔全てに、負圧を均等に供給することができ、搬送シートの部分的な吸着を回避できるからである。
【0095】
また、外気を送り込むエア送り込み手段を用いて、負圧解放手段に外気を送り込む場合には、負圧解放手段に接続可能な接続ポートを設けることが好ましい。エア送り込み手段としては、前述の真空ポンプ、排気ブロア等の負圧発生装置を、逆に接続して使用できる。負圧発生手段により排気されるエア等を送り込むことで、負圧を解除できるからである。
【0096】
なお、サイドプレートの形状は、ロール本体の径に合わせたもの、例えば、図2、3に示される円形等の形状が好ましいが、付勢手段を介して一定の圧力を与得やすい形状、さらには、ロール本体の回転を阻害しない形状であればよい。
【0097】
[2]搬送シート:
本実施形態におけるサクションロールにより搬送される搬送シートはシート状のもの、たとえば、気泡シート、発泡シート等である。ここで、気泡シート又は発泡シートとは、包装等に使用される緩衝材の一つであり、たとえば、2枚のシートの一方のシートを円柱の突起状に成型し、その中に空気を閉じ込めて、その空気圧で緩衝材の機能を実現しているもの等がある。
【0098】
[3]搬送シート供給手段:
搬送シート供給手段とは、搬送シートをサクションロールに送り出すための手段であって、搬送シートの原反をロール巻きした原反ロールから概ね構成される。この原反ロールはサクションロールの回転に連動して回転可能に形成される。ここで、サクションロールに「連動」とは、サクションロールの回転に応じて、原反ロールが回転し、搬送シートがサクションロールに供給されるものをいう。このようにサクションロールに連動させるのは、サクションロールが間断的に回転するからである。すなわち、サクションロールの回転が一時的にストップした場合でも、原反ロールの回転が引き続き行われると、原反ロールとサクションロールとの間で、搬送シートがだぶついたり、よれたりしてしまい、本願の効果を奏することができないからである。
【0099】
このような連動としては、(1)サクションロールの回転に対して受動的に連動するもの、(2)サクションロールの回転に対して自動的に連動するものがある。
【0100】
サクションロールの回転に対して受動的に連動するもの(1)としては、サクションロールの回転に搬送シートが引っ張られるようにして、原反ロールが回転する場合が挙げられる。たとえば、原反ロールを始点として、搬送シートにある程度のテンションをかけてサクションロールに吸着させ、サクションロールの回転に引っ張られるように、原反ロールが回転し搬送シートが送り出される。さらに、サクションロールの回転が止まると、原反ロールは、搬送シートを介して引っ張られなくなるため、原反シートの回転も停まる。したがって、原反ロールとサクションロール間で、搬送シートがだぶつくことを防ぐことができる。なお、上述のテンションのかけ方は、搬送シートによれやだぶつきが生じない程度に引っ張られる状態をいう。あまりにも過度にテンションをかけると、搬送シートにダメージを与えることにもなり、また、サクションロールの吸着痕が残ったりするため、好ましくない。したがって、このように形成されることにより、サクションロールにのみ回転させる動力(モータ等)を取り付ければよく、さらに、搬送シートの寸法調整も、サクションロールのみで行えるため制御し易く利便性の点でも好ましい。
【0101】
サクションロールの回転に対して自動的に連動するもの(2)としては、サクションロールのみならず、原反ロールも、自発的に回転できるように形成される場合が挙げられる。原反ロールが、自発的に搬送シートの送り出し調整、寸法調整を早い段階で行えるため好ましい。ただし、原反ロールとサクションロールとの搬送シートの送り出し量を、後工程で更に調整することが必要となるため、加えて、原反ロールにモータ等の動力を取り付けて回転させる必要があるため、部品点数が増加し、利便性の点で(1)よりも劣る。
【0102】
[4]裁断手段:
裁断手段は、搬送シートを裁断(切断)できるように、主としてシャー刃等の切断装置により構成される。ただし、搬送シート、とりわけ、気泡シート等は、2枚のシートを張り合わせて形成されるため、その内部に無数の気泡を内包させたものであるから、その切断面が気泡上にあると、切断工程を経て出来た切断端面が見劣りしやすく、品質の低下にもつながる。したがって、溶断溶接される裁断手段を用いることがより好ましい。
【0103】
具体的には、図9に示されるように、裁断手段が、ヒートシールバー24と、一対の押さえバー25、26を備え、ヒートシールバー24が、一対の押さえバー25、26の間に配置される。また、ヒートシールバー24は板状に構成され、その板面が搬送シート方向に平行になるように配置され、その板面が搬送シートの幅方向に平行になるように配置される。さらに、ヒートシールバー24は、搬送シート101に近い側の先端が断面V字状のくさび形状に形成され、通電により過熱するヒータが埋め込まれている。また、ヒートシールバー24には、移動機構が設けられており、搬送シートに近づく方向(下降)と、搬送シートから遠ざかる方向(上昇)にそれぞれ移動できるように構成されている。
【0104】
押さえバーは、ヒートシールバーの搬送シート流れ方向上流側と下流側とに配置され、押さえバー25、26の下方には、それぞれの押さえバー25、26に対応する一対の押さえ受け台27、28が設けられている。この押さえバー25、26は、板状であって、その板面が搬送シートの長さ方向(流れ方向)に配置されている。また、押さえ受け台27、28は板状に構成され、その板面が搬送シート101の流れ方向に平行に配置されている。
【0105】
押さえバーにはヒートシールバーと同様の移動機構が設けられており、図9における上下方向、すなわち、搬送シートに近づく方向(下降)と、搬送シートから遠ざかる方向(上昇)に移動可能に構成されている。また、押さえバーの搬送シートに対向する面が、搬送シートを押さえつける押さえ面25a、26aとして構成されている。
【0106】
押さえバーには、ヒートシールバーに対向する面にヒートシールバーのくさび形状に対応する傾斜面25b、26bが形成されている。このため、押さえバーは、押さえ面に向かって、その断面が広がり、押さえ面の端部がヒートシールバーの先端に近接するように形成される。
【0107】
さらに、搬送シート101は押さえ受け台27、28上を通過できるようにしてある。この一対の押さえ受け台27,28は、搬送シート101の流れ方向に(いわゆる下流側に)隙間を設けて配置されている。
【0108】
また、一対の押さえ受け台の下方には、シール受けロール29が設けられている。シール受けロールはヒートシールバーにより搬送シートを切断、およびシールを行う際に、ヒートシール受け台として構成される。
【0109】
このように構成されることにより、搬送シート101は一対の押さえバー25、26で押さえつけられた状態で、ヒートシールバーにより切断可能となる。なお、切断と同時にシールされるように構成されることも好ましい形態の一つである。
【0110】
本実施形態のシール受けロールは、円柱形に構成され、シート流れ方向に平行して、配置されている。シール受けロールの上端は、一対の押さえ受け台の隙間に位置する。シール受けロールは回転機構を備えており、搬送シートがシート流れ方向下流側に移動させる方向に常時回転するように構成されている。シール受けロールは、耐熱性を有しかつ弾力性を有する材質で構成され、たとえば、シリコン等の素材から構成される。また、シール受けロールの表面には、ヒートシールバーによるシール時にカス等の不純物が付着しにくくするために、フッ素樹脂シートが貼付されている。
【0111】
シール受けロールの近傍には、シール受けロールの表面から不純物を除去するための、除去部材30が設けられている。除去部材は、先端がシール受けロールのシール時にシール受けロールが回転することで、シール受けロールの表面に付着した不純物を除去するように構成されている。除去部材は、スクレーパ(へら)やブラシ等から構成される。
【0112】
さらに、ヒートシールバー、押さえバー等のシート流れ方向下流側には、ヒートシールバーにてシールされた搬送シートを下流側に引き取る引取りコンベア31、32を設けてもよい。
【0113】
なお、裁断手段は前述のような、ヒートシールバー等からなるものに限らず、たとえば、溶断に向かない材質から構成される場合には、金属性のカッター等で裁断を行ってもよい。
【0114】
[5]サクションロールの使用方法:
所望の原反ロールを始点となる所定位置にセットする。サクションロールには、所望寸法回転できるように、予め回転を調整する。なお、この回転調整はコンピュータを介して制御機構が受け持ち、制御機構によって、動力源であるモータ等の回転数を調整して行う。次に、原反ロールから搬送シートをサクションロールまで手など人為的手段、或いは機械的手段で伸ばし(引っ張り)、サクションロールと裁断手段の動力源のスイッチを入れる。搬送シートが吸着し、裁断手段に搬送シートが流れ、裁断が行われる。さらに、裁断された所望寸法の搬送シートは、引き取りコンベア等により、所定の位置に集積される。その後、搬送シートを結束等する工程へと進む。
【0115】
[6]搬送装置:
以下、本発明の搬送装置における実施の最良の形態について説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基いて、以下の実施の形態に適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の
範囲に入ることが理解されるべきである。
【0116】
本発明の搬送装置は、サクションロールと、サクションロールに搬送シートを供給する搬送シート供給手段と、サクションロールから搬送された搬送シートを裁断する裁断手段と、を備える搬送装置であって、サクションロールは、搬送シート供給手段と連動可能、かつ、ロール本体の回転を制御可能に構成されるとともに、ロール本体の回転により所望寸法の搬送シートを裁断手段に送り出し可能に構成され、裁断手段が、サクションロールから送り出された搬送シートを裁断可能に構成されることが好ましい。より好ましいのは、裁断手段は、搬送シートを溶断と同時に融着させるヒートシールバーと、サクションロールから搬送された搬送シートを受けるシール受け台と、搬送シートを前記シール受け台に押さえる押さえ手段と、押さえ手段と対向して配置される押さえ受け台とを備えることである。本願の効果をあまねく奏することができるからである。以下、図面を参照しながら、具体的に説明する。
【0117】
本発明の搬送装置は、図9に示されるように、これまで前述したサクションロール1と、サクションロール1に搬送シート101を供給する搬送シート供給手段103と、サクションロール1から搬送された搬送シート101を裁断する裁断手段23と、を備える搬送装置である。サクションロール1は、搬送シート供給手段103と連動可能、かつ、ロール本体3の回転を制御可能に構成されるとともに、ロール本体3の回転により、所望寸法の搬送シート101を裁断手段23に送り出し可能に構成されることが好ましい。
【0118】
このように搬送装置を構成することにより、たとえば、原反ロールとサクションロール間では、ロール本体に吸着された搬送シートがロール本体の回転により移動すると、その移動に応じて(合わせて)、原反ロールに巻かれた搬送シートが引っ張られて回転し、さらに搬送シートが送り出される。すなわち、連動させることができ、搬送シートのだぶつき等を解消できる。なお、この連動は、前述したとおり、原反ロールとサクションロール間の搬送シートに、適度なテンションをかけて連動させるもののほか、原反ロールとサクションロールのそれぞれに、動力源を取り付けて自発的に回転可能、かつ連動可能に構成してもよい。
【0119】
また、本実施形態の搬送装置は、サクションロールと裁断手段の間で搬送シートが流れやすい(搬送されやすい)ように、その間に、ベルトコンベア等の搬送手段を設置して構成されてもよい。たとえば、図9に示されるような、引取りコンベアをサクションロールと裁断手段の間に配置させることも、搬送シートの流れをスムーズにできるため好ましい。
【0120】
なお、本実施形態の搬送装置は、原反ロールからサクションロールへ、サクションロールから裁断手段へ搬送シートが搬送され(流れる)ように構成されていれば、適宜、小ロールを複数個、原反ロールとサクションロールの間、又は、サクションロールと裁断手段との間に配置させてもよい。さらに、搬送させるためのベルトコンベアを配置してもよい。また、図9で示される小ロールを、原反ロールとサクションロールの間に配置せず、直接原反ロールからサクションロールに搬送シートを搬送してもよい。
【0121】
さらに、本実施形態の搬送装置は、図9に示されるように、水平方向の流れ(移動)方向に限られるものではなく、様々なフローをとり得る。たとえば、図9に示されるサクションロールは、図9の紙面上、左側方向から右方向へ、搬送シートが搬送されるように示されているが、このような構成に限られない。また、左側方向から右方向についても、厳密な水平上の流れ方向に限られるものではない。
【0122】
たとえば、図10は、搬送シートが上から下に流れる状態を模式的に示した図である。このように、搬送装置を構成することにより、搬送シートが自重によって自然とし下側方向に流れる(落ちる)ため、よれやだぶつきが生じにくくなり、さらに、サクションロールと裁断手段との間に、コンベア等を設けなくても済み、利便性を向上できる。なお、符号35が示す受け台を図示するように設けて配置すると、裁断された搬送シートが受け台に当たって、滑り込むように引き取りコンベア31、32に移動するため、搬送シートの集積という点で利便性がある。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明のサクションロール及びサクションロールを用いた搬送シートの搬送装置は各種印刷装置、塗工装置、カレンダー装置、スリッタ装置、ラミネータ装置、繊維加工装置、包装装置等の各種の搬送ロールとして使用することができる。とりわけ、気泡シートや発泡シートを搬送するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明のサクションロールの一実施形態を模式的に示す図である。
【図2】本発明のサクションロールの全体斜視図であって、模式的に示した図である。
【図3】本発明のサクションロールの正面図を一部断面にして模式的に示した図である。
【図4】本発明のサクションロールの吸着孔周辺部材を一部拡大した図であって、模式的に示した図である。
【図5】本発明のサクションロールの正面図を一部断面にして模式的に示した図であって、負圧解放手段と負圧供給用通路が接続している状態を模式的に示した図である。
【図6A】本発明のサクションロールに好適に使用できるサイドプレートを示した正面図であって、サイドプレートを模式的に示した図である。
【図6B】図6Aの内側を模式的に示した図である。
【図7A】本発明のサクションロールに使用できるサイドプレートを示した正面図であって、接続ポートの一例を模式的に示した図である。
【図7B】本発明のサクションロールに使用できるサイドプレートを示した正面図であって、接続ポートの一例を模式的に示した図である。
【図8】本発明のサクションロールに好適に使用できるサイドプレートを示した側面図であって模式的に示した図である。
【図9】本発明のサクションロールおよび搬送シートの搬送装置の一実施形態を模式的に示した図である。
【図10】本発明のサクションロールおよび、搬送シートの搬送装置の一実施形態を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0125】
1:サクションロール、3:ロール本体、4、4a、4b:ロール本体の端部、5:吸着孔、5a:底壁、7:軸(軸心、回転軸)、9:負圧供給用通路、11、11a、11b、11c、11d:小貫通孔、13,13a:接続ポート、15:負圧発生手段、17:サイドプレート、18:負圧解放手段、19:スリット、21:付勢手段、24:ヒートシールバー、25:押さえバー、25a:押さえ面、25b:傾斜面、26:押さえバー、26a:押さえ面、26b:傾斜面、27:押さえ受け台、28:押さえ受け台、29:シール受けロール、30:除去部材、31:引き取りコンベア、32:引き取りコンベア、35:シール受け台、101:搬送シート、103:原反ロール、V:バキュームゾーン、Z:負圧解放ゾーン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の紙、樹脂性フィルム、金属性薄、薄膜、布、及び長尺シート、気泡シートや発泡シート等の搬送シートを一方向に搬送するために用いられるサクションロール及びサクションロールを用いたシートの搬送装置、とりわけ、気泡シートや発泡シートを搬送するために用いられるサクションロール及びサクションロールを用いたシートの搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチックのシート状物等を裁断或いは製造する加工機には、シート状物を送る(搬送する)手段としてピンチロールがある。ピンチロールは、搬送シートの下側方向から一定の圧力で押え、正しい方向(所望の方向)に送られるように規制したり送り込んだりするものである。このピンチロールは製造が容易であり、しかも、安価に製造できるため、一般に使用されてきた。
【0003】
しかし、気泡シートや発泡シート等の伸縮性の高い素材からなる搬送シートをピンチロールを用いて搬送すると、強い力でピンチするため、そのグリップ強さからシート自体が伸縮し、寸法精度が低下するという問題が生じてしまう。他方、ピンチする力を弱めて搬送シートを搬送しようとすると、ピンチロール上で搬送シートが滑り、所望寸法の搬送を困難にしていた。
【0004】
とりわけ、気泡シートや発泡シート等の搬送シートは、平滑なシートとは異なり、気泡や発泡等による厚み、形状等様々なものがあり、それらの気泡の形状(例えば、丸型、ハート星型等)、凹凸等により、シートがニップロールの上でスリップし、ニップロールの回転量=所望寸法の送り量とならず、求められる製品(いわゆるカット品、袋等)に誤差が生じてしまうといった深刻な問題があった。
【0005】
ところで、このようなピンチロールに代わるものとしてサクションロールがある。このサクションロールは、回転可能なロールの外周面に無数のスリットや孔等を穿設し、そのスリットや孔等に搬送シートを吸引或いは吸着(サクション)させて、搬送するものである(特許文献1参照)。
【0006】
しかし、このサクションロールでは、サクション(吸引)する領域が限定されておらず、必要がない領域でもサクションされるため、サクションする必要がある領域での吸引力(吸着力)をも低下させるおそれがあった。すなわち、サクション領域がロール全体で行われると、本来吸着(吸引)すべき領域で十分な吸着が行われず、その結果、搬送シートがスリップしやすくなるといった問題があった。このような問題に対して吸引力(吸引量)を強くして問題の解決を図ることも考えられるが、吸引力を強くするには、それなりの設備等が必要となり、コスト負担が増大するため十分な解決策とはいえない。
【0007】
そこで、次の特許文献2に記載されるサクションロールがある。特許文献2のサクションロールでは、搬送シートと接していない(サクションされていない)ロール本体の周面部分から、(エアを)吸引して、全体の吸引力の低下を防止する観点から吸引角度の範囲で開口する排気孔が設けられている。
【0008】
確かに、この特許文献2に記載のサクションロールでは、吸引力(吸着力)の低下を防ぐという点で、吸引角度の範囲で開口する排気孔を設けることにより、一定の成果は見られる。しかし、吸引角度等についての開示は何らなされておらず、具体性に欠けるものであった。さらに、寸法誤差の解消という点でも何ら提示されていない。
【0009】
このように、いずれの特許文献もサクションロールとしては依然として十分なものではなく、更なる改良が望まれる。
【0010】
【特許文献1】特許第2899226号公報
【特許文献2】特開2006−36451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、搬送シートの吸着解放を所望の位置で確実に行うことにより、サクションロール全体の吸着力の低下を抑えながら、搬送シートのしわや撓みを防止して搬送シートの寸法誤差をなくし、吸着痕を解消できるサクションロール及びサクションロールを用いた搬送シートの搬送装置を提供する。とりわけ、気泡シート、発泡シートに好適に用いることができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、ロール本体の外周面に複数個穿設され、搬送シートを吸着可能な吸着孔と、ロール本体の軸心方向に沿って形成され、吸着孔に連通し負圧の供給用通路となる負圧供給用通路と、負圧供給用通路の負圧を解除する負圧開放手段と、を備え、吸着孔が、搬送シートを吸着可能に形成されるとともに、負圧開放手段により搬送シートを解放可能に形成されることによって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明によれば、以下に示す、サクションロール及びサクションロールを用いた搬送シートの搬送装置が提供される。
【0014】
[1] ロール本体の外周面に複数個穿設され、搬送シートを吸着可能な吸着孔と、前記ロール本体の軸心方向に沿って形成され、前記吸着孔に連通し負圧の供給用通路となる負圧供給用通路と、前記負圧供給用通路の負圧を解除する負圧解放手段と、を備えるサクションロールであって、前記吸着孔が、前記搬送シートを吸着可能に形成されるとともに、前記負圧解放手段により前記搬送シートを解放可能に形成されるサクションロール。
【0015】
[2] 前記吸着孔が、前記ロール本体の回転により前記ロール本体の軸心に対して0〜180度の範囲に位置する際に、前記搬送シートを吸着可能に形成され、かつ、前記ロール本体の回転により前記ロール本体の軸心に対して180〜270の角度の範囲に位置する際に、前記負圧解放手段により前記搬送シートを解放可能に形成される[1]に記載のサクションロール。
【0016】
[3] 前記負圧解放手段の負圧解放量を調整可能に形成される[1]又は[2]に記載のサクションロール。
【0017】
[4] 前記負圧解放手段の負圧解放が、前記負圧供給用通路を介して前記吸着孔へ外気を送り込むことにより行われる[1]〜[3]のいずれかに記載のサクションロール。
【0018】
[5] 前記搬送シートが気泡シート又は発泡シートである[1]〜[4]のいずれかに記載のサクションロール。
【0019】
[6] 前記[1]〜[5]のいずれかに記載するサクションロールと、前記サクションロールに前記搬送シートを供給する搬送シート供給手段と、前記サクションロールから搬送された搬送シートを裁断する裁断装置と、を備える搬送装置であって、前記サクションロールは、前記搬送シート供給手段と連動可能、かつ、前記ロール本体の回転を制御可能に構成されるとともに、ロール本体の回転により所望寸法の搬送シートを裁断手段に送り出し可能に構成され、前記裁断装置が、前記サクションロールから送り出された搬送シートを裁断可能に構成される搬送シートの搬送装置。
【0020】
[7] 前記裁断手段は、搬送シートを溶断と同時に融着させるヒートシールバーと、前記サクションロールから搬送された搬送シートを受けるシール受け台と、搬送シートを前記シール受け台に押さえる押さえ手段と、前記押さえ手段と対向して配置される押さえ受け台とを備える[6]の搬送装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明のサクションロールは、搬送シートの吸着解放を所望の位置で確実に行うことにより、サクションロール全体の吸着力の低下を抑えながら、搬送シートのしわや撓みを防止して搬送シートの寸法誤差をなくし、吸着痕を解消できるという効果を奏するものである。とりわけ、気泡シート、発泡シートに好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0023】
[1]サクションロール:
本発明のサクションロール1は、図1〜3に示されるように、ロール本体3の外周面に複数個穿設され、搬送シート101を吸着可能な吸着孔5と、ロール本体3の軸心7方向に沿って形成され、吸着孔5に連通される負圧供給用通路9と、負圧供給用通路9の負圧を解除する負圧解放手段(図6Aの符号18参照)と、を備える。吸着孔5が、搬送シート101を吸着可能に形成されるとともに、負圧解放手段18により搬送シート101を解放可能に形成される。
【0024】
[1―1]ロール本体:
ロール本体は、サクションロールの一部を構成し、サクションロールの軸心(回転軸)の回転に連動して、回転可能に形成される。このロール本体は、一個の駆動ロール表面に長尺シート等の搬送シートを吸着させながら、次の工程である裁断手段に搬送案内するものである。とりわけ、気泡シート、発泡シート等の搬送シートの搬送に適したものである。なお、図2に示される符号Yは、ロールの回転方向を示すものである。
【0025】
ロール本体3は、図1〜3に示されるように、その外周面に吸着孔5が複数個穿設され、ロール本体3の幅方向(軸心方向)に沿って負圧供給通路9が内設されている。ここで、サクションロールは、回転軸、ロール本体の両端等を、ロール本体と一体的に構成する場合と、図1〜3に示されるように、ロール本体を別体として形成する場合がある。ただし、図1〜3に示されるように、ロール本体の両端等は別体として形成される方が成形し易く、また、ロールの回転制御等の点で調整し易いため、別体として形成される方がより好ましい。
【0026】
図1〜3に示されるように、別体としてロール本体3を構成する場合には、ロール本体3は、一端4aと他端4bとからなる端部4を有し、ロール本体3の長さ方向にロール本体3の回転軸7が設けられる。この回転軸7(軸心)の回転により、ロール本体が、回転軸(軸心)を中心に回転可能に構成される。なお、ロール本体の両端には、サイドプレート17が設けられ、軸心の回転及びロール本体の回動に応じて回動(回転)しないように形成されている。このサイドプレートについては、後段で説明する。
【0027】
ロール本体3の形状は、円柱状、円筒状に形成されることが好ましい。搬送シートを搬送させ易いことに加え、ロール本体の外周面の所望位置に均一の力で搬送シートを吸着させやすいからである。均一な吸着力を供給できないと、搬送シートを搬送する際に、ロール本体の外周面の一部でスリップ等が発生しやすいから好ましくない。なお、負圧供給用通路の配置スペースを取り易く、軽量にできるという点では円筒状に利点があるが、円筒状では、回転軸、回転軸の回転に応じてロール本体が回転可能な取り付け部材等が必要となり、その分部品点数が多くなる。したがって、搬送シートの寸法や形状に応じて、それぞれ使い分けることが好ましい。
【0028】
ロール本体の大きさ(寸法)としては、直径90〜500mm、長さが1m〜6m程度のものが一般適に使用されているが、このような寸法に限らず、多様な用途の搬送シートの製造に好適な大きさ(寸法)であれば、本実施形態のロール本体の寸法に含まれる。
【0029】
ロール本体の材料としては、たとえば、アルミニウム、亜鉛のような金属またはこれらの合金、フェノール重合体、塩化ビニール重合体、エチレン重合体、イミド重合体、アミド重合体およびカーボネート重合体等が挙げられ、抽出成形により成形される。特に、アルミニウム製のものは軽量であるから慣性モーメントが少ないため、回動を停止または回動させるときの応答性が早いので利点がある。
【0030】
[1−1−1]搬送シートの寸法調整について:
サクションロールには、ロール本体の回転を制御可能に構成されている。ロール本体を回転制御可能にするのは、搬送シートを吸着し所望位置まで搬送シートを移動させるサクションの工程を経た後に、所望寸法の裁断が行われるようにするためである。すなわち、ロール本体を所望回転可能に制御することで、ロール本体は、所望回転分だけ回転する。而して、ロール本体に吸着した搬送シートは、ロール本体の外周面が移動した距離分(寸法分)ロール本体上を移動し、或いは、回転ロールから離れ、裁断工程に向かって流れる(移動する)ため、ロール本体の回転を制御することにより、搬送シートの所望寸法を制御(調製)できることになる。
【0031】
また、サクションロールは、搬送シートが所望寸法分移動した後、ロール本体の回転を一時的に中断可能(停止可能)に構成される。ロール本体が絶えず回転し続けると搬送シートが流れ(移動し)続けることになり、裁断工程での裁断が間に合わなかったり、煩雑化したりするため、それらの起こり得る弊害を解消させている。すなわち、ロール本体の回転を間断的に調整(制御)可能にすることによって、裁断手段が搬送シートを裁断している際には、ロール本体の回転が停止され、裁断が適切に行われる上、サクションロールと裁断手段の間で搬送シートがだぶついたりすることを防ぐことができる。
【0032】
このようにサクションロールに搬送シートの寸法調整を行わせるのは、換言すれば、搬送シートの始点となる原反ロールで寸法調整を行わないのは、搬送シート、とりわけ、気泡シート等は伸縮し易く、正確な寸法精度が保ちづらいという状況があり、また原反ロールからサクションロールまでの搬送シートの移動行程(距離)が長いと伸縮のばらつきも大きくなって寸法誤差が生じやすいから、サクションロールで寸法調整することによって、そのような弊害を防止するためである。また、裁断手段で寸法調整をさせないのは、裁断行程で複雑化しやすく、裁断の精度が落ちやすいからである。搬送シートのカット等裁断が上手くいかないことは、商品の品質を低下させる大きな要因となるため、裁断手段では、できるかぎり裁断以外の加工処理をさせないこととした。したがって、裁断手段の直前である、サクションロールの搬送工程で寸法調整させている。
【0033】
なお、後述するように、ロール本体と搬送シート供給手段とを連動させるのは、搬送および、裁断をスムーズの行えるようにするため、また、望まない伸縮を可能な限り防ぐことにより搬送シートにダメージを与えないようにするためである。たとえば、前述のように連動させることで、ロール本体の回転が一時的に停まっている間は、原反ロールから新たな搬送シートがサクションロールに供給されず、供給手段とサクションロールの間で搬送シートがだぶつくことを防ぐことができる。
【0034】
図9、10は、原反ロール103から裁断手段の間にサクションロールを配置した場合の、搬送シートの流れを模式的に示した図である。たとえば、この図9に示されるように、原反ロールとサクションロール間では、ロール本体に吸着された搬送シートがロール本体の回転により移動すると、その移動に応じて(合わせて)、原反ロールに巻かれた搬送シートが引っ張られて回転し、新たな搬送シートの送り出しが行われるように、連動させてもよい。すなわち、原反ロールとサクションロール間では、搬送シートに程度なテンションがかけられ、サクションロールが回転すると、搬送シートが送り出される。なお、符号Rは、搬送シートの流れ方向を示すものである。
【0035】
[1−2]軸心(回転軸):
ロール本体は、軸心(回転軸)の回転に応じて、回転可能に構成されている。この軸心は、たとえば、図2に示されるように、ロール本体3、さらには、サイドプレート17を貫通するように設けられ、ベアリング(図示せず)等の軸受(図示せず)によって回転可能に設置される。軸心は、ロール本体と一体的に形成してもよいし、別体として形成した後ロール本体と連結させ、かつ、軸心の回転に応じてロール本体が回転可能になるよう連結させてもよい。また、この軸心は、ロール本体と同じ素材から形成してもよいが、それらの素材に限られず、公知の素材から形成してもよい。さらに、軸心の形状はロール本体連結しやすく、回転可能であれば特に限定されない。
【0036】
[1―3]吸着孔:
吸着孔は、図2、3に示されるように、ロール本体の外周面に沿って複数個形成される。ロール本体の外周面に形成される吸着孔の個数は、吸着孔の形状、開口形状、開口寸法等、或いは、その吸着力、さらには、ロール本体の大きさ(寸法)等によって、様々であるが、少なくとも、搬送シートを吸着しやすいように、ロール本体の外周面に偏りなく均等(均等の間隔)に形成されることが好ましい。ロール本体の外周面に形成される吸着孔に偏りがある場合には、所望領域で搬送シートを吸着しやすい箇所と、吸着しづらい箇所ができるため、搬送性の点で好ましくないからである。この吸着孔の形成は、ドリルやレーザー光等を用いて穿設してもよい。
【0037】
なお、一般的に吸着孔の個数は、ロール本体が直径90〜500mm、長さが1m〜6m程度の場合には、外周面上に約6000〜200,000個程度形成されることが多いが、この個数に限定されるものではない。
【0038】
また、吸着孔の形状は、その字句に限定されることなく、搬送シートを吸着しやく、或いは、吸着後所望位置で搬送シートを解放し易い形状であればよく、例えば、スリット状、V字状溝、U字状溝、コ字状溝等、孔形状のもの等含まれる。
【0039】
たとえば、図4では、吸着孔5を、断面視略台形状をなす有低のものとして形成しているが、このような有底の形状に限られず、有底を形成せずに負圧供給用通路9まで貫通形成してもよい。このように吸着孔5をロール本体の軸心方向に沿って形成される負圧供給用通路9と連通させると、負圧供給用通路9を介して、吸着孔5内にエアが減圧され真空状態となり、搬送シートを吸着できる。
【0040】
ここで、吸着孔と負圧供給用通路とが一体形成される場合の連通方法として、円柱状のロール本体からなる場合には、たとえば、ロール本体の長さ方向(軸方向)に負圧供給用通路を貫通させるとよい。さらに、ロール本体の軸心に直交し、負圧供給路に直交するように、スリット等の吸着孔をロール本体に一体的に形成する。また、円筒状であっても、例えば、ロール本体の外周面を肉厚に形成すれば、円柱状のロール本体と同様に形成できる。
【0041】
また、肉厚がない(或いは肉厚の薄い)円筒状からなるロール本体として構成される場合には、スリット等の吸着孔を形成し、円筒状のロール本体に、その長さ方向に管状の負圧供給用通路を配置し、さらに吸着孔と負圧供給用通路とを繋ぐ(連通させる)小貫通孔を設けてもよい。例えば、図4に示されるように、吸着孔5の底壁5aに小貫通孔11(11a、11b、11c、11d)を設け、吸着孔5の底壁5aからロール本体3の軸心7に向かって延伸させ、かつ、負圧供給用通路9に連通させて形成してもよい。ただし、肉厚がない(或いは肉厚の薄い)円筒状からなるロール本体を用いる場合には、成形工程が複雑になる上、真空状態にするための密封性(シールド)の調整等が必要となり、前述のロール本体よりも不利な点も多い。したがって、より好ましいのは円柱状からなるロール本体、肉厚の円筒状からなるロール本体である。
【0042】
また、吸着孔に搬送シートをサクションする領域(以下、適宜「バキュームゾーン」といい、符号Vで示す)は、ロール本体の回転方向や搬送シートの流れ方向(流れ工程)等に応じて形成されることが好ましい。たとえば、搬送シートの流れ工程として、図1、9に示されるように、サクションロール1から搬送シート101をいわば水平方向にスライド(移動)させて搬送させる場合がある。このような流れ工程を採用する場合には、厳密なものではないが、いわば平面として流れ工程が構成されているため、設置スペースを確保する必要がある。ただし、メンテナンス等し易いという利点があるため好ましい。また、たとえば、図10に示されるようにサクションロール1から搬送シート101を、いわば垂直方向に移動させて搬送する場合、或いは、サクションロールから搬送シートを、図1に示される水平方向へスライドさせるのではなく、サクションロールをいわば折り返しの基点として、U字状に搬送シートをターンさせて移動させる場合(図示せず)等様々なものがある。これらの流れ工程を採用する場合には、厳密なものではないが、いわば立体的に流れ工程が構成されているため、広いスペースを確保しなくてもよいという利点がある。これらのように、サクションロールの設置状況、ロール本体の回転方向や搬送シートの流れ方向等に応じて、サクションロールの所望範囲にバキュームゾーンが形成されることが好ましい。
【0043】
ただし、より好ましいのは、バキュームゾーンが、搬送シートの吸着を確実に行え、寸法誤差を生じさせない、以下のような所望範囲に形成されることである。
【0044】
たとえば、水平方向にスライド(移動)させて搬送シートを搬送させる場合には、吸着孔が、ロール本体の回転により、ロール本体の軸心に対して0〜180度の範囲に位置する際に、搬送シートを吸着可能に形成されることが好ましい。この場合には、吸着孔はロール本体の外周面上全域に亘って形成されるが、搬送シートが吸引(吸着)されるのは、ロール本体の軸心に対して0〜180度の位置である。他方、0〜180度の位置よりも吸着範囲(バキュームゾーン)が大きいと、搬送シートの寸法誤差が生じやすい。すなわち、搬送シートがサクションロールから離れて、裁断工程に移動すべき位置になっても、サクションロールに吸着された状態となり、その結果、搬送シートのたわみやよれが生じ、その後のシートの送り出しに寸法誤差が生じてしまうのである。
【0045】
また、たとえば、垂直方向に移動させて搬送シートを搬送させる場合には、好ましいのは、ロール本体の軸心に対して0〜180度の範囲である。前述と同様に、シートの送り出寸法に誤差を生じさせないように制御できるから好ましい。
【0046】
また、たとえば、水平方向へ搬送シートをスライドさせずに、サクションロールをいわば折り返しの基点として、搬送シートをU字状にターンさせて移動させる場合には、ロール本体の軸心に対して0〜180度の範囲である。前述と同様に、シートの送り出し寸法に誤差を生じさせないように制御できるから好ましい。
【0047】
なお、前述のようにバキュームゾーンにある程度の幅を持たせているのは、搬送シートを確実にロール本体に吸着させるためである。負圧を供給して吸着孔に搬送シートを吸着させると、その吸着孔と搬送シートの接地面は真空状態、若しくは、真空状態に近い減圧状態となり、搬送シートによっては、負圧を供給する範囲を持たせなくとも、ある程度の間吸着され得るが、誤ってロール本体の外周面から搬送シートが離れたり、吸着状態が不安定となったりすると、よれやたわみ等寸法誤差の原因となるから、確実に搬送できるように、ある程度の範囲で負圧を供給することとした。
【0048】
また、搬送シートを吸引する(吸着する)必要がない箇所においても、吸着孔に負圧供給用通路を介して負圧が供給されると、搬送シートといういわば蓋がないため、吸着孔の開口部から外気を絶えず取り込むことになる。而して、負圧供給されるべき吸着孔に、負圧が十分に供給されない事態が生じ、その結果、吸着孔の吸着力を弱め(低下させ)、搬送シートを確実に吸着できないおそれが生じる。その低下した吸着力を補う方法として、負圧供給量を大きくすることも考えられるが、更なる動力源等過大な設備が必要となり、悪循環(弊害)を引き起こすことにもなりかねない。したがって、吸着箇所を前述のような所望の角度に制御することが好ましい。
【0049】
ここで、前述の所望の吸着箇所(バキュームゾーン)を設ける代わりに、バキュームゾーン以外に位置する吸着孔に遮蔽物を設けて搬送シートを吸着させない(解放させる)方法も考えられる。しかし、そのような方法を採用すると、吸引(吸着)された搬送シートは、吸着孔と真空状態で吸着しているため、吸引(吸着)がすぐに解除(解放)しづらい状態となる。また、しわやよれ等が生じにくい搬送シートであればよいが、気泡シートや発泡シート等の搬送シートでは、しわやよれ等が生じやすい素材からなることが多い。したがって、前述の遮蔽物を設けても、その遮蔽物に引っかかり、撓み、よじれが発生したり、搬送シートを傷めたりする。そのため、寸法誤差の解消には程遠いため、遮蔽物等で吸着を欲しない箇所を遮蔽することは望ましくない。
【0050】
また、搬送シートを吸着した吸着孔が、搬送シートを解放可能にする領域は(以下、適宜「負圧解放ゾーン」といい、符号Zで示す)、前述のバキュームゾーンVの終端或いは、バキュームゾーンの後(バキュームゾーン後)の領域に設けられることが好ましい。バキュームされた後の搬送シートを解放可能にする役割を果たすためである。
【0051】
搬送シートを解放可能にする領域(負圧解放ゾーンZ)としては、ロール本体の回転方向や搬送シートの流れ方向等サクションロールの設置状況、さらには、バキュームゾーンの形成位置に応じて形成されることが好ましい。たとえば、図1、9に示されるように、厳密なものではないがいわば水平方向にスライド(移動)させて搬送シートを搬送させる場合、図10に示されるように、いわば垂直方向へ搬送シートを搬送させる場合、或いは、図1に示されるような水平方向へ搬送シートをスライドさせて搬送せずに、サクションロールをいわば折り返しの基点として、搬送シートをU字状にターンさせて移動させるもの(図示せず)等があり、状況に応じて搬送シートの解放を容易にするためである。
【0052】
より好ましいのは、水平方向にスライド(移動)させて搬送シートを搬送する場合に、吸着孔が、ロール本体の回転によりロール本体の軸心に対して180±270度の範囲に位置する際に、搬送シートを解放可能に負圧解放ゾーンが形成されることである。吸着孔に吸着された搬送シートが、バキュームゾーンを過ぎても、搬送シートと吸着孔との接触している接地面(吸着面)は、いわゆる真空状態か、少なくとも減圧状態となっており、ロール本体(吸着孔)と搬送シートとの「離れ」が悪くなっている。そのような離れの悪さは、よれ等を生じさせ、その結果、サクションロールからの裁断工程への搬送シートの送り出し寸法に誤差を生じさせる。したがって、前述の所望位置(所望角度)で、吸着した搬送シートを確実に解放できるようにし、寸法誤差の原因となる搬送シートのよれやたわみ等が生じるのを防止した。
【0053】
搬送シートを解放可能にする方法としては、たとえば、図5に示されるように、吸着孔5が前述の所望位置に移動した際に、外気(エア)を取り込み可能なスリットを形成した負圧解放手段19と、負圧用供給通路9とを接続(連通)することによりおこなわれるとよい。このように連通させることにより、負圧供給用通路9を介してその供給用通路に連通する吸着孔5に、外気が(スリットから)取り込まれる。すなわち、負圧供給用通路9を経由して吸着孔5に供給され、搬送シート101を解放(解除)できる。したがって、吸着孔の真空状態または減圧状態が緩和あるいは解除(解放)され、吸着孔から搬送シートが離れ、あるいは離れやすくなる。ただし、このような具体例に限定されるものではない。
【0054】
さらに、搬送シートを解放可能にする方法として、吸着孔が前述の負圧解放ゾーンに移動した際に、吸着孔から搬送シート側へエア(取り込まれた外気)が当たるように形成されることも好ましい形態の一つである。負圧解放手段から負圧供給用通路を介して吸着孔へエア(外気)を送り込み、さらに、そのエアが搬送シートに当たると、搬送シートと吸着孔との吸着を容易に解除でき、搬送シートがロール本体から離れやすくなるため、好ましい。
【0055】
ただし、このエアの当たる量(噴出量)が大きいと、搬送シートが必要以上にロール上から浮き上がってしまい、新たなよれやたわみの原因となるため、エアの噴出量が調整可能であることが好ましい。
【0056】
また、吸着孔上、すなわち、ロール本体の外周面上に線材等を巻装する(螺旋状に巻く)ことも好ましい形態の一つである。このように吸着孔の表面(ロール本体の外周面)を線材で覆うと、搬送シートに吸着痕がつきにくくなり、さらには、搬送シートの表面を傷つける(ダメージを与える)ことを防止できるからである。
【0057】
なお、線材等で吸着孔の表面を覆っても、線材と線材との間(隙間)には、無数の微細な孔が形成されるため、その隙間を介して、搬送シートが吸着されるように、線材と線材との間(間隔)を調整して巻装することが好ましい。
【0058】
線材としては、たとえば、ゴム、ナイロン、ウレタン等からなる網状物、ワイヤ等が挙げられる。
【0059】
また、このように線材を巻装することにより、負圧発生手段(吸気装置)を作動させ、駆動源に連結した回動軸を回動させると、吸着孔を覆うようにロール本体の外周面に巻装された線材等の隙間から吸気され、線材の表面に長尺シート等の搬送シートが吸着される。
【0060】
[1―4]負圧供給用通路:
本実施形態における負圧供給用通路は、図2、3に示されるように、ロール本体3の軸心7方向に沿って形成され、吸着孔5に連通するように形成される。ロール本体3の幅方向(軸心方向)に沿って、負圧供給用通路9を内設するのは、ロール本体3の外周面に設けられた吸着孔5に、連通して負圧を供給できるようにするためである。この負圧供給用通路は、例えば、ロール本体の軸心方向に貫通形成してもよく、また、負圧の供給路となり得る管状部材(図4の11a〜11d参照)を配置して形成してもよい。
【0061】
ただし、より好ましいのは、ロール本体の外周面をある程度肉厚に形成して、負圧供給用通路を形成することである。吸着孔と連通させる場合に、部品点数が少なくなり安価に形成できるからである。
【0062】
なお、このような形成方法に限られるものではなく、負圧を吸着孔に供給できるものであり、また、ロール本体の軸心方向に沿って形成され、かつ、吸着孔に連通するように形成される供給通路である場合には、本実施形態における負圧供給用通路として用いることができる。
【0063】
また、バキュームゾーンに負圧供給用通路から負圧が送り込まれる位置、すなわち、バキュームゾーンが形成される位置は、負圧供給用通路と連通する吸着孔がロール本体の軸心に対して0〜180度に位置する際に形成されることが好ましい。より好ましいのは、負圧供給用通路と連通する吸着孔がロール本体の軸心に対して90〜180度の角度の範囲の位置する際に形成されることである。負圧供給用通路は、図1に示されるように、吸着孔が所望の位置(バキュームゾーンV)に移動する際に、吸着孔に対して負圧を供給する。ここで、ロール本体の外周面では、必ずその一部に搬送シートが吸着されない吸着孔がある。換言すれば、本実施形態のサクションロールは、搬送シートを一巻きするのではなく、そのロール本体の外周上の一部に吸着させて、所望の領域に搬送移動させるものであるから、必ずロール本体に形成される貫通孔には、搬送シートが吸着されないものが生じるのである(図1参照)。したがって、そのような吸着孔に負圧を供給しないようにするとともに、吸着孔が前述の所望角度に位置する際に、その吸着孔に連通する負圧供給用通路から負圧が供給されることで、搬送シートの搬送を確実にできるように形成されることが好ましい。
【0064】
仮に、搬送シートを吸着しない箇所にある吸着孔を含めた全ての吸着孔に絶えず負圧を供給し続ける場合には、搬送シートが吸着されない箇所(吸着孔)は、外気に対して開放状態となり、真空状態(若しくは、減圧状態)となり得ず開放状態となっている。そのような開放状態となっている吸着孔からは、いわば蓋がないため外気が取り込まれ続け、負圧が必要な箇所に十分に供給できなくなる。さらに、負圧が不十分な箇所に十分な負圧を供給するために、負圧発生手段の負圧発生量を大きくする必要が生じたり、負圧を大きくしたために負圧調整がしづらくなって、搬送シートに吸着痕が残ったり、寸法誤差を生じたりする。したがって、負圧発生手段に所望位置で接続可能に構成されることが好ましい。
【0065】
なお、このようなバキュームゾーンを可能とする方法としては、たとえば、図3に示されるような後述のサイドプレートの内面であって外周の近傍に設けられる領域に、接続ポート13を設けることが挙げられる。このように構成されることにより、負圧発生手段が接続ポートに接続し、さらに、バキュームゾーンに位置する吸着孔に連通しながら負圧供給用通路が、接続ポートに接続(連通)する際に、負圧を供給できる。
【0066】
また、負圧発生手段に接続するための接続ポートと、負圧供給通路に連通する開口部を除いては、外気(またはエア)が前述の領域に侵入しづらい構成であることが好ましい。外気等の侵入がしやすいと負圧の供給が十分とならず、搬送シートの吸着に影響がでるためである。具体的には、サイドプレートの内側に溝を設け、サイドプレートの正面に接続ポートを設けるとよい。このように形成すると、サイドプレートの溝に対して、負圧供給用通路がいわば、その溝の蓋となるため、サイドプレートの中から(ロール本体の中部から)、エアがバキュームゾーンに侵入しづらくなる。すなわち、サクションを制御しやすくなる。さらに、サイドプレートに設けられる接続ポートには負圧発生手段が接続されるため、やはり外気を取り込めない。したがって、バキュームゾーンの内部は、負圧発生手段からの負圧により、減圧状態、更には真空状態となるため、負圧供給用通路と連通(接続)した場合には、負圧を負圧供給用通路内に供給できるようになる。
【0067】
また、吸着孔がロール本体の軸心に対して、0〜180度の位置へ移動すると、負圧供給通路もロール本体の軸心に対して、0〜180度の位置へ移動することが好ましい。負圧供給通路は、吸着孔に貫通形成され、ロール本体の軸心方向に向かって内設(或いは、形成)されているため、負圧供給用通路も軸心から吸着孔までの直線上に配置されること好ましいからである。
【0068】
なお、前述のバキュームゾーンは一例であって、このようなバキュームゾーンの構成に応じた負圧供給通路に限定されるものではなく、外部に設けた負圧発生手段からの負圧を負圧供給用通路に供給し、負圧供給用通路内、ひいては、吸着孔に負圧を送り込み可能に形成されるものであれば、本願の効果を奏し得るので、本実施形態におけるバキュームゾーンに含まれる。
【0069】
図3に示されるように、負圧発生手段と負圧供給用通路との接続方法としては、ロール本体の少なくとも一端(図3ではロール本体の両端)に、負圧発生手段15と接続可能な接続ポート13を設けることが好ましい。さらに、ロール本体3の回転に応じて負圧供給用通路9が接続ポート13に接続できるようにし、また、ロール本体が回転することで、接続ポート13から、負圧供給用通路9の接続が外れるように形成されることが好ましい。
【0070】
また、バキュームゾーンに位置する吸着孔に均等に負圧を供給しやすいように、ロール本体の両端に、接続ポート13a、13bを設け、それぞれを負圧発生手段15a、15bに接続できるように形成されることがより好ましい(図3参照)。一端のみの接続では、他端側に位置する吸着孔に負圧が供給されづらいから、確実に負圧を供給できるように両端に設けられることが好ましい。
【0071】
このように、負圧発生手段と負圧供給用通路との接続方法を構成すると、ロール本体が回転して、接続ポート13から外れた(移動した)負圧供給用通路9は、ロール本体3がさらに回転して、再び接続ポート13が設けられた位置に戻る(移動する)ことにより、1回転し再び接続ポート13と接続できる。したがって、接続ポート13を介して負圧が吸着孔に供給される。
【0072】
また、負圧供給用通路が接続ポートに接続する位置は、サクションをそのバキュームゾーン内で適性に行えるものであればよい。たとえば、図7Aに示されるようなバキュームゾーンの終端にあるもの、或いは図7Bに示されるようなバキュームゾーンの始端にあるものが挙げられる。このように、接続ポートの位置を所望位置に形成できることで部品の配置スペース等の問題に柔軟に対応可能となる。
【0073】
ただし、バキュームゾーンの終端或いは始端に接続ポートを設ける場合には、バキュームゾーン内の密封性を高めること好ましい。密封性がないと、接続ポートがバキュームゾーンの終端にある場合には、バキュームゾーンの始端近傍でのサクションが十分でなく、接続ポートがバキュームゾーンの始端にある場合には、バキュームゾーンの終端近傍でのサクションが十分でなく、結局のところ、搬送シートの誤差を生じさせかねないからである。
【0074】
より好ましいのは、吸着孔がロール本体の軸心に対して180〜270度の位置が望ましく、さらに好ましくは、吸着孔がロール本体の軸心に対して90〜180の角度の範囲の位置である。搬送シートを少ない負圧で効率よく、かつ確実にサクションでき、寸法誤差も制御しやすくなるからである。
【0075】
[1―5]負圧解放手段:
負圧解放手段は吸着孔により吸引された搬送シートの負圧を解放するために設けられるものであって、具体的には、ロール本体の一端(あるいは両端)にスリット等の負圧解放手段が一例として挙げられる。また、吸着孔が回転移動して負圧解放ゾーンに位置(移動)した際に、スリットに当接等させ、負圧供給用通路の入り口を外気に晒して、負圧解放が行われてもよいし、負圧供給用通路に外気を送り込んで負圧を解除してもよい。
【0076】
このように、負圧解放手段を形成することにより、例えば、所望位置に吸着孔が回転移動すると、負圧供給用通路が負圧解放手段に連通(接続)することになる。外気と負圧供給用通路内とは気圧差が生じているから、この連通により、あたかも通風孔が宛がわれたように、負圧解放手段からエアが負圧供給用通路に取り込まれる。すなわち、負圧が解除され、搬送シートはロール本体上(吸着孔)から離れやすくなる。したがって、所定位置でのシートのたるみやより等がなくなるため、寸法誤差が出づらくなり本発明の効果を奏することができる。
【0077】
また、負圧解放手段から、負圧供給用通路を介して負圧を解除する位置は、バキュームゾーンよりも後の位置になるように形成されることが好ましい。すなわち、バキュームゾーンよりも手前に、負圧供給通路を介して負圧を解除しても、搬送シートは吸着されていないからである。また、搬送シートが十分に吸着されていないバキュームゾーン内にて、負圧供給通路を介して負圧を解除しても、搬送シートの吸着を阻害し、さらには、搬送シートを適切な位置に搬送することを阻害するおそれがあるからである。
【0078】
負圧解放手段としては、たとえば、図5で示されるように、ロール本体の一端(サイドプレート17の一端)にスリット19を設けて、それを負圧解放手段18として構成してもよい。負圧供給用通路がロール本体の回転に伴ってスリット位置まで移動した際に、スリットが外気に開放されているから、外気がスリットから負圧供給用通路に取り込まれ、さらに、負圧供給用通路を介して吸着孔の負圧が解放されることになる。したがって、搬送シートが吸着孔から離れやすくなる。
【0079】
負圧解放手段は、負圧解放量が調整可能に形成されることが好ましい。搬送シートの形状によっては、シート離れは一律ではない。あるシート形状には適切な負圧解放量であっても、別のシートには適切な負圧解放量とならない場合もある。とりわけ、気泡シート、発泡シートでは、その気泡や発泡を内包させるシート状の構造により撓みやよれが生じ易く、寸法誤差を生じさせやすい。したがって、負圧解放を適量にして、吸着孔への吸着解放の制御が求められる。この解放量の調整としては、図5で示されるようなスリットの場合には、例えば、外気方向からスリットを覆う蓋(栓)等が挙げられ、蓋がロール本体の端面に対してスライド可能に形成するとよい。さらに、スライド調整可能とすることにより、解放量の調整が容易にできる。
【0080】
さらに、負圧解放手段は、エア送り込み手段(図示せず)と接続可能に形成されることが好ましい。スリット等外気に開放されているだけでは、或いは、外気との気圧差を利用して負圧を解除するだけでは、負圧供給用通路内、さらには吸着孔内の負圧をすぐに減じづらい(解放しづらい)場合もある。したがって、エア(外気)を、負圧供給用通路へ、さらには、吸着孔へ送り込み可能なエア送り込み手段に接続可能にすることで、搬送シートを解放しやすくなる。
【0081】
なお、エア(外気)の送り込み量が過度に強いと、搬送シートが送り込まれたエアによって必要以上に浮き上がり、たわみやよれが生じて寸法誤差の原因となるから、適度な慮のエアを送り込みできるように調節可能であることが好ましい。
【0082】
[1―6]負圧発生手段:
負圧発生手段は、負圧供給用通路を介して吸着孔に負圧を供給するための、いわば発生源となる。負圧発生手段としては、例えば、真空ポンプ、排気ブロア等があり、負圧供給装置として負圧を供給することが可能であれば、本発明における負圧発生手段に含まれる。このような負圧発生手段は、ロール本体の少なくとも一端に接続可能に構成されることが好ましい。ただし、このような構成に限らず、ロール本体に内設されてもよい。成形(配設)の容易さ、加工費用等の点からは、外部の負圧発生手段に接続されて構成されることがより好ましい。
【0083】
負圧発生手段が外部に設置される場合としては、例えば、図2に示されるように、接続ポート13に、負圧発生手段15を接続して負圧供給をすると利便性が向上する。
【0084】
なお、図2で示されるように、ロール本体の両端に接続ポート13a、13bを設けて、負圧発生手段15と接続することが好ましい。一方側の吸気のみでは全外周面の吸気力、とりわけ端縁部と中央部分とでは一定せず、不均一になる場合があり、長尺シート等の搬送シートの搬送が不均一になる。すなわち、寸法誤差が生じやすくなる。そのためロール本体の両側に接続ポート13a、13bを配置し、負圧発生手段15に接続可能構成することが好ましい。
【0085】
[1―7]サイドプレート:
サイドプレートは、ロール本体の両端に付勢手段を介して一定の圧力でそれぞれ添接される。このようにサイドプレートが添接されることにより、ロール本体を貫通するように設けた回転軸(軸、或いは軸心)が回転することに応じて、サイドプレートが回転しないよう配設することができる。したがって、負圧発生装置を外設する場合に設けられる接続箇所(接続ポート)、負圧解放をするためのスリット等の負圧解放手段等を、ロール本体又はロールの軸心に応じて一緒に回転させる、いわゆる連れ回しを回避することができる。
【0086】
具体的には、図3に示されるように、ロール本体3と、ロール本体3を貫通するように設けた回転軸7(軸、軸心)と、ばね等の付勢手段21によってロール本体に向かって付勢され、且つ、一定の圧力でロール本体の両端にそれぞれ添接する一対のサイドプレート17とが備えられる。なお、回転軸7は図示しない軸受けに支持されている。
【0087】
また、このサイドプレート17の少なくとも一方には、負圧発生手段15に通じる接続ポート13と、負圧解放手段18とが設けられている。さらに、外気を、負圧供給用通路9を介して吸着孔5に送り込む手段として、エア送り込み手段を用いる場合には、エア送り込み手段との接続ポートが設けられることが好ましい。
【0088】
前述のように、サイドプレートの接続ポートは、外部の負圧発生手段に接続可能に構成され、負圧供給用通路に接続(連通)可能に形成されている。負圧供給用通路に接続(連通)可能としたのは、負圧供給用通路に絶えず接続され続けると、負圧供給用通路を介して、吸着孔に負圧を与え続けることになり、所望の範囲で搬送シートを吸着し、さらに所望範囲で搬送シートを解放できないからである。すなわち、搬送シートが吸着孔に吸着し続けて、よれ、撓み、だぶつき等の原因となり、その結果寸法誤差を引き起こすことになるからである。したがって、負圧供給用通路に接続(連通)可能とすることにより、所望の範囲内で、負圧を、負圧供給用通路を介して、吸着孔に供給できるようにした。
【0089】
具体的には、図3に示されるように、吸着孔5が、ロール本体3の回転により、軸心7に対して、180〜270の角度に位置した際に、負圧発生手段15に通じる接続ポート13と負圧供給用通路9とが連通し、負圧発生手段15から、接続ポート13、負圧供給用通路9を経由して、吸着孔5内のエアを吸引する。ここで、吸着孔5に搬送シートが吸着していない場合には、吸着孔5には遮るものが何もないが、吸着孔5の表面を搬送シートが覆った(塞いだ)場合、あたかも搬送シートが吸着孔の蓋となって、吸着孔内のエアが減圧され、真空状態となる。すなわち、搬送シートが吸着される。
【0090】
なお、サイドプレートの接続ポートは、負圧供給用通路と異なり、外部の負圧発生手段から外気を供給され続けてもよい。負圧発生手段から継続して負圧を供給されても、負圧供給用通路が接続(連通)調整されて、バキュームゾーンに供給する負圧をコントロールできるからである。換言すれば、負圧を供給したい吸着孔と連通する負圧供給用通路だけが、接続ポートに接続され、バキュームゾーンに位置しない吸着孔と連通する負圧供給用通路には接続されないからである。
【0091】
ここで、図6A、6B及び図8を用いてサイドプレートについて具体的に説明する。なお、図6Aは、サイドプレートの正面図を模式的に示したものであり、図6Bは、サイドプレートの内側(サクションロールへの取り付け時に軸心方向)を模式的に示した図である。さらに、図8は、サイドプレートの断面を模式的に示した図である。なお、説明の便宜を図るために、サイドプレートの内部に設けられる溝等は省略して図示してある。
【0092】
図6A,6B、図8に示されるように、サイドプレート17には、回転軸挿入口33が形成され、この回転軸挿入口33に、サクションロールの回転軸(軸心)を貫通させて、ロール本体を回転可能に形成してある。さらに、サイドプレート17には、バキュームゾーンVに位置する吸着孔に連通する負圧供給通路に、負圧を供給するバキュームゾーンVと接続ポート13が設けられている。このバキュームゾーンVと負圧解放手段15とは、バキュームゾーンの密封性を確保するため離間して形成されることが好ましい。近傍に形成される場合にも、シール部材等によりシール性を持たせると、負圧の供給をスムーズに行えるため好ましい形態の一つである。なお、図8では、負圧解放手段15が、溝状に形成されているが、この形状に限られるものではなく、スリット、丸孔形状、星型等、外気を取り込み、負圧解放可能なものであれば、本実施形態における負圧解放手段に含まれる。
【0093】
なお、サイドプレートに設けられる、負圧供給装置と接続可能な接続ポートは、図6Aに示されるように、バキュームゾーンの末端(バキュームゾーンであって、回転方向から一番遠い箇所)に設けられとよい。
【0094】
さらに、ロール本体に添設されるサイドプレートの両方に接続ポートを設け、2つの接続ポートから負圧供給通路内に負圧を供給できるように形成されることが好ましい。所望域の吸着孔全てに、負圧を均等に供給することができ、搬送シートの部分的な吸着を回避できるからである。
【0095】
また、外気を送り込むエア送り込み手段を用いて、負圧解放手段に外気を送り込む場合には、負圧解放手段に接続可能な接続ポートを設けることが好ましい。エア送り込み手段としては、前述の真空ポンプ、排気ブロア等の負圧発生装置を、逆に接続して使用できる。負圧発生手段により排気されるエア等を送り込むことで、負圧を解除できるからである。
【0096】
なお、サイドプレートの形状は、ロール本体の径に合わせたもの、例えば、図2、3に示される円形等の形状が好ましいが、付勢手段を介して一定の圧力を与得やすい形状、さらには、ロール本体の回転を阻害しない形状であればよい。
【0097】
[2]搬送シート:
本実施形態におけるサクションロールにより搬送される搬送シートはシート状のもの、たとえば、気泡シート、発泡シート等である。ここで、気泡シート又は発泡シートとは、包装等に使用される緩衝材の一つであり、たとえば、2枚のシートの一方のシートを円柱の突起状に成型し、その中に空気を閉じ込めて、その空気圧で緩衝材の機能を実現しているもの等がある。
【0098】
[3]搬送シート供給手段:
搬送シート供給手段とは、搬送シートをサクションロールに送り出すための手段であって、搬送シートの原反をロール巻きした原反ロールから概ね構成される。この原反ロールはサクションロールの回転に連動して回転可能に形成される。ここで、サクションロールに「連動」とは、サクションロールの回転に応じて、原反ロールが回転し、搬送シートがサクションロールに供給されるものをいう。このようにサクションロールに連動させるのは、サクションロールが間断的に回転するからである。すなわち、サクションロールの回転が一時的にストップした場合でも、原反ロールの回転が引き続き行われると、原反ロールとサクションロールとの間で、搬送シートがだぶついたり、よれたりしてしまい、本願の効果を奏することができないからである。
【0099】
このような連動としては、(1)サクションロールの回転に対して受動的に連動するもの、(2)サクションロールの回転に対して自動的に連動するものがある。
【0100】
サクションロールの回転に対して受動的に連動するもの(1)としては、サクションロールの回転に搬送シートが引っ張られるようにして、原反ロールが回転する場合が挙げられる。たとえば、原反ロールを始点として、搬送シートにある程度のテンションをかけてサクションロールに吸着させ、サクションロールの回転に引っ張られるように、原反ロールが回転し搬送シートが送り出される。さらに、サクションロールの回転が止まると、原反ロールは、搬送シートを介して引っ張られなくなるため、原反シートの回転も停まる。したがって、原反ロールとサクションロール間で、搬送シートがだぶつくことを防ぐことができる。なお、上述のテンションのかけ方は、搬送シートによれやだぶつきが生じない程度に引っ張られる状態をいう。あまりにも過度にテンションをかけると、搬送シートにダメージを与えることにもなり、また、サクションロールの吸着痕が残ったりするため、好ましくない。したがって、このように形成されることにより、サクションロールにのみ回転させる動力(モータ等)を取り付ければよく、さらに、搬送シートの寸法調整も、サクションロールのみで行えるため制御し易く利便性の点でも好ましい。
【0101】
サクションロールの回転に対して自動的に連動するもの(2)としては、サクションロールのみならず、原反ロールも、自発的に回転できるように形成される場合が挙げられる。原反ロールが、自発的に搬送シートの送り出し調整、寸法調整を早い段階で行えるため好ましい。ただし、原反ロールとサクションロールとの搬送シートの送り出し量を、後工程で更に調整することが必要となるため、加えて、原反ロールにモータ等の動力を取り付けて回転させる必要があるため、部品点数が増加し、利便性の点で(1)よりも劣る。
【0102】
[4]裁断手段:
裁断手段は、搬送シートを裁断(切断)できるように、主としてシャー刃等の切断装置により構成される。ただし、搬送シート、とりわけ、気泡シート等は、2枚のシートを張り合わせて形成されるため、その内部に無数の気泡を内包させたものであるから、その切断面が気泡上にあると、切断工程を経て出来た切断端面が見劣りしやすく、品質の低下にもつながる。したがって、溶断溶接される裁断手段を用いることがより好ましい。
【0103】
具体的には、図9に示されるように、裁断手段が、ヒートシールバー24と、一対の押さえバー25、26を備え、ヒートシールバー24が、一対の押さえバー25、26の間に配置される。また、ヒートシールバー24は板状に構成され、その板面が搬送シート方向に平行になるように配置され、その板面が搬送シートの幅方向に平行になるように配置される。さらに、ヒートシールバー24は、搬送シート101に近い側の先端が断面V字状のくさび形状に形成され、通電により過熱するヒータが埋め込まれている。また、ヒートシールバー24には、移動機構が設けられており、搬送シートに近づく方向(下降)と、搬送シートから遠ざかる方向(上昇)にそれぞれ移動できるように構成されている。
【0104】
押さえバーは、ヒートシールバーの搬送シート流れ方向上流側と下流側とに配置され、押さえバー25、26の下方には、それぞれの押さえバー25、26に対応する一対の押さえ受け台27、28が設けられている。この押さえバー25、26は、板状であって、その板面が搬送シートの長さ方向(流れ方向)に配置されている。また、押さえ受け台27、28は板状に構成され、その板面が搬送シート101の流れ方向に平行に配置されている。
【0105】
押さえバーにはヒートシールバーと同様の移動機構が設けられており、図9における上下方向、すなわち、搬送シートに近づく方向(下降)と、搬送シートから遠ざかる方向(上昇)に移動可能に構成されている。また、押さえバーの搬送シートに対向する面が、搬送シートを押さえつける押さえ面25a、26aとして構成されている。
【0106】
押さえバーには、ヒートシールバーに対向する面にヒートシールバーのくさび形状に対応する傾斜面25b、26bが形成されている。このため、押さえバーは、押さえ面に向かって、その断面が広がり、押さえ面の端部がヒートシールバーの先端に近接するように形成される。
【0107】
さらに、搬送シート101は押さえ受け台27、28上を通過できるようにしてある。この一対の押さえ受け台27,28は、搬送シート101の流れ方向に(いわゆる下流側に)隙間を設けて配置されている。
【0108】
また、一対の押さえ受け台の下方には、シール受けロール29が設けられている。シール受けロールはヒートシールバーにより搬送シートを切断、およびシールを行う際に、ヒートシール受け台として構成される。
【0109】
このように構成されることにより、搬送シート101は一対の押さえバー25、26で押さえつけられた状態で、ヒートシールバーにより切断可能となる。なお、切断と同時にシールされるように構成されることも好ましい形態の一つである。
【0110】
本実施形態のシール受けロールは、円柱形に構成され、シート流れ方向に平行して、配置されている。シール受けロールの上端は、一対の押さえ受け台の隙間に位置する。シール受けロールは回転機構を備えており、搬送シートがシート流れ方向下流側に移動させる方向に常時回転するように構成されている。シール受けロールは、耐熱性を有しかつ弾力性を有する材質で構成され、たとえば、シリコン等の素材から構成される。また、シール受けロールの表面には、ヒートシールバーによるシール時にカス等の不純物が付着しにくくするために、フッ素樹脂シートが貼付されている。
【0111】
シール受けロールの近傍には、シール受けロールの表面から不純物を除去するための、除去部材30が設けられている。除去部材は、先端がシール受けロールのシール時にシール受けロールが回転することで、シール受けロールの表面に付着した不純物を除去するように構成されている。除去部材は、スクレーパ(へら)やブラシ等から構成される。
【0112】
さらに、ヒートシールバー、押さえバー等のシート流れ方向下流側には、ヒートシールバーにてシールされた搬送シートを下流側に引き取る引取りコンベア31、32を設けてもよい。
【0113】
なお、裁断手段は前述のような、ヒートシールバー等からなるものに限らず、たとえば、溶断に向かない材質から構成される場合には、金属性のカッター等で裁断を行ってもよい。
【0114】
[5]サクションロールの使用方法:
所望の原反ロールを始点となる所定位置にセットする。サクションロールには、所望寸法回転できるように、予め回転を調整する。なお、この回転調整はコンピュータを介して制御機構が受け持ち、制御機構によって、動力源であるモータ等の回転数を調整して行う。次に、原反ロールから搬送シートをサクションロールまで手など人為的手段、或いは機械的手段で伸ばし(引っ張り)、サクションロールと裁断手段の動力源のスイッチを入れる。搬送シートが吸着し、裁断手段に搬送シートが流れ、裁断が行われる。さらに、裁断された所望寸法の搬送シートは、引き取りコンベア等により、所定の位置に集積される。その後、搬送シートを結束等する工程へと進む。
【0115】
[6]搬送装置:
以下、本発明の搬送装置における実施の最良の形態について説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基いて、以下の実施の形態に適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の
範囲に入ることが理解されるべきである。
【0116】
本発明の搬送装置は、サクションロールと、サクションロールに搬送シートを供給する搬送シート供給手段と、サクションロールから搬送された搬送シートを裁断する裁断手段と、を備える搬送装置であって、サクションロールは、搬送シート供給手段と連動可能、かつ、ロール本体の回転を制御可能に構成されるとともに、ロール本体の回転により所望寸法の搬送シートを裁断手段に送り出し可能に構成され、裁断手段が、サクションロールから送り出された搬送シートを裁断可能に構成されることが好ましい。より好ましいのは、裁断手段は、搬送シートを溶断と同時に融着させるヒートシールバーと、サクションロールから搬送された搬送シートを受けるシール受け台と、搬送シートを前記シール受け台に押さえる押さえ手段と、押さえ手段と対向して配置される押さえ受け台とを備えることである。本願の効果をあまねく奏することができるからである。以下、図面を参照しながら、具体的に説明する。
【0117】
本発明の搬送装置は、図9に示されるように、これまで前述したサクションロール1と、サクションロール1に搬送シート101を供給する搬送シート供給手段103と、サクションロール1から搬送された搬送シート101を裁断する裁断手段23と、を備える搬送装置である。サクションロール1は、搬送シート供給手段103と連動可能、かつ、ロール本体3の回転を制御可能に構成されるとともに、ロール本体3の回転により、所望寸法の搬送シート101を裁断手段23に送り出し可能に構成されることが好ましい。
【0118】
このように搬送装置を構成することにより、たとえば、原反ロールとサクションロール間では、ロール本体に吸着された搬送シートがロール本体の回転により移動すると、その移動に応じて(合わせて)、原反ロールに巻かれた搬送シートが引っ張られて回転し、さらに搬送シートが送り出される。すなわち、連動させることができ、搬送シートのだぶつき等を解消できる。なお、この連動は、前述したとおり、原反ロールとサクションロール間の搬送シートに、適度なテンションをかけて連動させるもののほか、原反ロールとサクションロールのそれぞれに、動力源を取り付けて自発的に回転可能、かつ連動可能に構成してもよい。
【0119】
また、本実施形態の搬送装置は、サクションロールと裁断手段の間で搬送シートが流れやすい(搬送されやすい)ように、その間に、ベルトコンベア等の搬送手段を設置して構成されてもよい。たとえば、図9に示されるような、引取りコンベアをサクションロールと裁断手段の間に配置させることも、搬送シートの流れをスムーズにできるため好ましい。
【0120】
なお、本実施形態の搬送装置は、原反ロールからサクションロールへ、サクションロールから裁断手段へ搬送シートが搬送され(流れる)ように構成されていれば、適宜、小ロールを複数個、原反ロールとサクションロールの間、又は、サクションロールと裁断手段との間に配置させてもよい。さらに、搬送させるためのベルトコンベアを配置してもよい。また、図9で示される小ロールを、原反ロールとサクションロールの間に配置せず、直接原反ロールからサクションロールに搬送シートを搬送してもよい。
【0121】
さらに、本実施形態の搬送装置は、図9に示されるように、水平方向の流れ(移動)方向に限られるものではなく、様々なフローをとり得る。たとえば、図9に示されるサクションロールは、図9の紙面上、左側方向から右方向へ、搬送シートが搬送されるように示されているが、このような構成に限られない。また、左側方向から右方向についても、厳密な水平上の流れ方向に限られるものではない。
【0122】
たとえば、図10は、搬送シートが上から下に流れる状態を模式的に示した図である。このように、搬送装置を構成することにより、搬送シートが自重によって自然とし下側方向に流れる(落ちる)ため、よれやだぶつきが生じにくくなり、さらに、サクションロールと裁断手段との間に、コンベア等を設けなくても済み、利便性を向上できる。なお、符号35が示す受け台を図示するように設けて配置すると、裁断された搬送シートが受け台に当たって、滑り込むように引き取りコンベア31、32に移動するため、搬送シートの集積という点で利便性がある。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明のサクションロール及びサクションロールを用いた搬送シートの搬送装置は各種印刷装置、塗工装置、カレンダー装置、スリッタ装置、ラミネータ装置、繊維加工装置、包装装置等の各種の搬送ロールとして使用することができる。とりわけ、気泡シートや発泡シートを搬送するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明のサクションロールの一実施形態を模式的に示す図である。
【図2】本発明のサクションロールの全体斜視図であって、模式的に示した図である。
【図3】本発明のサクションロールの正面図を一部断面にして模式的に示した図である。
【図4】本発明のサクションロールの吸着孔周辺部材を一部拡大した図であって、模式的に示した図である。
【図5】本発明のサクションロールの正面図を一部断面にして模式的に示した図であって、負圧解放手段と負圧供給用通路が接続している状態を模式的に示した図である。
【図6A】本発明のサクションロールに好適に使用できるサイドプレートを示した正面図であって、サイドプレートを模式的に示した図である。
【図6B】図6Aの内側を模式的に示した図である。
【図7A】本発明のサクションロールに使用できるサイドプレートを示した正面図であって、接続ポートの一例を模式的に示した図である。
【図7B】本発明のサクションロールに使用できるサイドプレートを示した正面図であって、接続ポートの一例を模式的に示した図である。
【図8】本発明のサクションロールに好適に使用できるサイドプレートを示した側面図であって模式的に示した図である。
【図9】本発明のサクションロールおよび搬送シートの搬送装置の一実施形態を模式的に示した図である。
【図10】本発明のサクションロールおよび、搬送シートの搬送装置の一実施形態を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0125】
1:サクションロール、3:ロール本体、4、4a、4b:ロール本体の端部、5:吸着孔、5a:底壁、7:軸(軸心、回転軸)、9:負圧供給用通路、11、11a、11b、11c、11d:小貫通孔、13,13a:接続ポート、15:負圧発生手段、17:サイドプレート、18:負圧解放手段、19:スリット、21:付勢手段、24:ヒートシールバー、25:押さえバー、25a:押さえ面、25b:傾斜面、26:押さえバー、26a:押さえ面、26b:傾斜面、27:押さえ受け台、28:押さえ受け台、29:シール受けロール、30:除去部材、31:引き取りコンベア、32:引き取りコンベア、35:シール受け台、101:搬送シート、103:原反ロール、V:バキュームゾーン、Z:負圧解放ゾーン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール本体の外周面に複数個穿設され、搬送シートを吸着可能な吸着孔と、
前記ロール本体の軸心方向に沿って形成され、前記吸着孔に連通し負圧の供給用通路となる負圧供給用通路と、前記負圧供給用通路の負圧を解除する負圧解放手段と、を備えるサクションロールであって、
前記吸着孔が、前記搬送シートを吸着可能に形成されるとともに、前記負圧解放手段により前記搬送シートを解放可能に形成されるサクションロール。
【請求項2】
前記吸着孔が、前記ロール本体の回転により前記ロール本体の軸心に対して0〜180度の範囲に位置する際に、前記搬送シートを吸着可能に形成され、かつ、前記ロール本体の回転により前記ロール本体の軸心に対して180〜270度の範囲に位置する際に、前記負圧解放手段により前記搬送シートを解放可能に形成される請求項1に記載のサクションロール。
【請求項3】
前記負圧解放手段の負圧解放量を調整可能に形成される請求項1又は2に記載のサクションロール。
【請求項4】
前記負圧解放手段の負圧解放が、前記負圧供給用通路を介して前記吸着孔へ外気を送り込むことにより行われる請求項1〜3のいずれか1項に記載のサクションロール。
【請求項5】
前記搬送シートが気泡シート又は発泡シートである請求項1〜4のいずれか1項に記載のサクションロール。
【請求項6】
前記請求項1〜5のいずれか1項に記載するサクションロールと、
前記サクションロールに前記搬送シートを供給する搬送シート供給手段と、
前記サクションロールから搬送された搬送シートを裁断する裁断手段と、を備える搬送装置であって、
前記サクションロールは、前記搬送シート供給手段と連動可能、かつ、前記ロール本体の回転を制御可能に構成されるとともに、ロール本体の回転により所望寸法の搬送シートを裁断手段に送り出し可能に構成され、
前記裁断手段が、前記サクションロールから送り出された搬送シートを裁断可能に構成される搬送シートの搬送装置。
【請求項7】
前記裁断手段は、搬送シートを溶断と同時に融着させるヒートシールバーと、
前記サクションロールから搬送された搬送シートを受けるシール受け台と、
搬送シートを前記シール受け台に押さえる押さえ手段と、
前記押さえ手段と対向して配置される押さえ受け台とを備える請求項6の搬送装置。
【請求項1】
ロール本体の外周面に複数個穿設され、搬送シートを吸着可能な吸着孔と、
前記ロール本体の軸心方向に沿って形成され、前記吸着孔に連通し負圧の供給用通路となる負圧供給用通路と、前記負圧供給用通路の負圧を解除する負圧解放手段と、を備えるサクションロールであって、
前記吸着孔が、前記搬送シートを吸着可能に形成されるとともに、前記負圧解放手段により前記搬送シートを解放可能に形成されるサクションロール。
【請求項2】
前記吸着孔が、前記ロール本体の回転により前記ロール本体の軸心に対して0〜180度の範囲に位置する際に、前記搬送シートを吸着可能に形成され、かつ、前記ロール本体の回転により前記ロール本体の軸心に対して180〜270度の範囲に位置する際に、前記負圧解放手段により前記搬送シートを解放可能に形成される請求項1に記載のサクションロール。
【請求項3】
前記負圧解放手段の負圧解放量を調整可能に形成される請求項1又は2に記載のサクションロール。
【請求項4】
前記負圧解放手段の負圧解放が、前記負圧供給用通路を介して前記吸着孔へ外気を送り込むことにより行われる請求項1〜3のいずれか1項に記載のサクションロール。
【請求項5】
前記搬送シートが気泡シート又は発泡シートである請求項1〜4のいずれか1項に記載のサクションロール。
【請求項6】
前記請求項1〜5のいずれか1項に記載するサクションロールと、
前記サクションロールに前記搬送シートを供給する搬送シート供給手段と、
前記サクションロールから搬送された搬送シートを裁断する裁断手段と、を備える搬送装置であって、
前記サクションロールは、前記搬送シート供給手段と連動可能、かつ、前記ロール本体の回転を制御可能に構成されるとともに、ロール本体の回転により所望寸法の搬送シートを裁断手段に送り出し可能に構成され、
前記裁断手段が、前記サクションロールから送り出された搬送シートを裁断可能に構成される搬送シートの搬送装置。
【請求項7】
前記裁断手段は、搬送シートを溶断と同時に融着させるヒートシールバーと、
前記サクションロールから搬送された搬送シートを受けるシール受け台と、
搬送シートを前記シール受け台に押さえる押さえ手段と、
前記押さえ手段と対向して配置される押さえ受け台とを備える請求項6の搬送装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−234707(P2009−234707A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82060(P2008−82060)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】
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