説明

サトウキビ梢頭部家畜飼料及びその製造方法

【課題】 特に牛の飼料として胃の中に滞留することなく消化率が向上し食滞の発生を軽減する事ができ、噛み心地がよくなるので嗜好性が高まり飼料の食べ残しが少なくなるようにしたサトウキビ梢頭部家畜飼料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 平均切断長さが5〜150mmのサトウキビ梢頭部が70%以上であり、サトウキビ梢頭部の茎部分がほくほくに破砕された繊維状飼料を含むようにした。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【発明考案の属する技術分野】
【0001】
本発明は、飼料が胃の中に滞留することなく消化率が向上し食滞の発生を防止する事ができ、ほくほく感があり噛み心地がよく嗜好性が高まり飼料の食べ残しがなくなるサトウキビ梢頭部家畜飼料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、特願2008−190296号(特開2010−004864号)において、所定長さに裁断されたサトウキビ茎を受け入れるホッパーと、このホッパーからサトウキビ茎を受け入れサトウキビのトラッシュを除去するトロンメルと、トラッシュを除去したサトウキビ茎を受け入れ梢頭部を除去する梢頭部選別区間と、この梢頭部選別区間から選別された梢頭部を裁断して家畜飼料とする家畜飼料製造部と、前記梢頭部選別区間で梢頭部を除去したサトウキビ茎を袋詰めする袋詰部とからなるサトウキビ精脱システム及びトラッシュ除去用トロンメルを提供した。これにより、風力による軽重差で選別することなくサトウキビ茎周囲からハカマを確実に剥離でき、風力選別機等の複雑な選別装置を別途設けることなくサトウキビ梢頭部を選別して飼料化が図れ、かつサトウキビ精脱システム全体として安価に提供できるようにした。
【0003】
しかしながら、前記梢頭部選別区間から選別された梢頭部を裁断して家畜飼料とする家畜飼料製造部において前記梢頭部を裁断する場合、梢頭部を一定の長さに裁断しないと、牛の場合第四胃食滞を引き起こしやすい。第四胃食滞とは、第四胃からの食餌の移送の停止による蓄積が生じる病態である。寒冷期において低品質の粗飼料を給与されている牛(特に妊娠末期の初産牛)での発生が多い。粗飼料の過食により慢性的に第一胃が拡張して粗飼料の消化が不十分となり、その消化物が第四胃に移行することによって生じる。第四胃食滞を呈する牛では食欲廃絶、排便量減少、腹部膨満、低クロール性代謝性アルカローシスによる症状などが認められる。第四胃破裂を引き起こすと腹膜炎やショックにより死亡する。
【背景技術】
【0004】
例えば、特許文献1には、基端側を支点にして左右旋回と上下回動が可能に車体に支持されたアームに、その先端側から基端側に梢頭部を搬送する搬送手段を配置し、前記アームの先端側に、梢頭部の下端を切断するカッターを設けると共に、該カッターより前方に逆八の字状に開いたかき集め手段を配置し、車体には前記基端側に移送されてきた梢頭部を、細断装置側に取り込む取り込み手段を設けたサトウキビ梢頭部の収穫装置及び収穫方法が記載されている。
【0005】
そして、分蜜糖や黒砂糖の原料となるサトウキビの梢頭部を収穫する装置及び方法であって、サトウキビの梢頭部のみを収穫可能とすることで、牛馬などの飼料を大量に確保可能とする旨説明されている(要約の課題)。
【0006】
さらに、梢頭部は、その下端側から上下の回転ドラム間に送られ、処理室中に取り込まれて、内部の回転カッターで細かくカットされ、かつダクトに向けて、回転カッターの発する風力で送られ、カゴ中に溜められる旨説明されている(段落0040)。
【0007】
しかしながら、この発明のサトウキビ梢頭部の収穫装置及び収穫方法においては、この装置の回転カッターの速度コントロールによるサトウキビ梢頭部の平均裁断長さ及び破砕状態が記載されていない。
【0008】
また、特許文献2には、あらかじめ略一定長さに切断されたサトウキビ切断片を略整列させて搬送する搬送手段と、同搬送手段により搬送されてくるサトウキビ切断片の内、梢頭部だけを他のサトウキビ切断片である健全茎部から選別する選別手段とを装備し、選別手段は一対の挟持体を具備し、両挟持体は梢頭部を挟持可能であるが健全茎部は挟持不可能な挟み角を形成する挟み角形成開始位置と、梢頭部の挟持が解除される開放角形成開始位置とを有して、開放角形成開始位置にて開放される梢頭部の放出落下位置と、開放角形成開始位置に至る前に放出される健全茎部の放出落下位置とを離隔させることができるようにしたサトウキビの梢頭部選別装置が記載されている。
【0009】
しかしながら、この発明は単にサトウキビの健全茎部と梢頭部との選別装置であって、サトウキビ梢頭部を裁断する旨の記載がなく、またサトウキビ梢頭部の平均裁断長さ及び破砕状態が記載されていない。
【0010】
特許文献1 特開平11−220927号公報
特許文献2 特開2001−300428号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、特に牛の飼料として胃の中に飼料が滞留することなく消化率が向上し、食滞の発生を防止する事ができ、ほくほく感があり噛み心地がよくなるので嗜好性が高まり飼料の食べ残しがないサトウキビ梢頭部家畜飼料及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決する手段】
【0012】
請求項1の発明は、平均切断長さが5〜150mmのサトウキビ梢頭部が70%以上であることを特徴とするサトウキビ梢頭部家畜飼料を提供するものである。
【0013】
この発明においては、平均切断長さが5〜150mmに裁断されたサトウキビ梢頭部が70%以上であり適切な長さの梢頭部がほとんどであるので、特に牛の飼料として胃の中に滞留することなく食滞の発生を軽減する事ができる。また、梢頭部の長さが適切であり嗜好性が高まり飼料の食べ残しが少なくなる。好ましくは平均切断長さが10〜100mmに裁断されたサトウキビ梢頭部が80%以上である。
【0014】
請求項2の発明は、サトウキビ梢頭部の茎部分がほくほくに破砕された繊維状飼料を含むことを特徴とするサトウキビ梢頭部家畜飼料を提供するものである。
【0015】
この発明においては、特に牛の飼料としてほくほくに破砕された繊維状飼料であるので胃の中での消化率が向上し食滞の発生を防止する事ができる。また、ほくほく感があり噛み心地がよくなるので嗜好性が高まり飼料の食べ残しがなくなる。さらに、飼料の軽量化が図れる。
【0016】
請求項3の発明は、選別されたサトウキビ梢頭部を梢頭部裁断装置により裁断するものであって、裁断装置により5〜150mmが70%以上となるようにサトウキビ梢頭部を裁断する手段と、上下ネジ状の凹凸がかみ合った喰い込みローラによりサトウキビ梢頭部の茎部分を捻るように食い込ませて茎部分を繊維状態にする手段と、前記裁断装置の丸く潰されたカッターによりサトウキビ梢頭部の茎部分を叩き潰すように裁断してほくほくの繊維状とする手段とを有するサトウキビ梢頭部家畜飼料の製造方法を提供するものである。
【0017】
この発明においては、平均切断長さが5〜150mmに裁断されたサトウキビ梢頭部が70%以上であり適切な長さの梢頭部がほとんどであるので、特に牛の飼料として胃の中に滞留することなく食滞の発生を防止する事ができる。また、梢頭部の長さが適切である。また、特に牛の飼料としてほくほくに破砕された繊維状飼料であるので胃の中での消化率が向上し食滞の発生を防止する事ができる。また、ほくほく感があり噛み心地がよくなるので嗜好性が高まり飼料の食べ残しがなくなる。さらに、飼料の軽量化が図れる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の一実施例を図面に基づき説明する。図1はサトウキビ精脱システムの概略全体平面図であり、図2は図1のI−I線視図、図3は図1のII−II線視図、図4は図1のIII−III線視図である。
【0019】
ハーベスターにより所定長さに裁断されたサトウキビ茎A1(図5)はホッパー1に貯留される。このサトウキビ茎A1はホッパー1より送り装置2を介してサトウキビのトラッシュを除去するトロンメル3に間欠的に順次供給される。このトロンメル3において、サトウキビの健全茎A2とサトウキビ茎A1の周囲に付着するハカマB(図6)等のトラッシュを除去する。
【0020】
トロンメル3は、図7に示すように筒状態の回転体であり、内面平滑な樹脂材料、例えば、塩化ビニールであり、前記トロンメル3にトラッシュの排出方向(矢印X)へ送風する送風機4を設け、該トロンメルをサトウキビ茎の排出方向へ約4.5度の角度Yで低くなるよう傾斜状に設けている。この角度Yは3.2〜8.0度の範囲で低くなるよう傾斜状に設けることができる。好ましくは4.0〜6.0度の範囲である。上記内面平滑な樹脂材料、例えば、塩化ビニールとした理由は、サトウキビ茎の両端切断部A4、A4(図6)がつぶれないようにしたもので、サトウキビ茎の両端切断部A4、A4が金属面等との接触(トロンメルの回転によりサトウキビ茎A1が上方から下方に落下したときに生ずる)によりつぶれてその部分からの腐敗の進行が極めて速くなるからである。
【0021】
図8に示す如く、このトロンメル3の内周面にはサトウキビ茎A1の排出配列方向に平行なブレード5・・・を設け、このブレード5・・・のサトウキビ接触辺にサトウキビハカマBを剥取する波型刃Mを形成している。
【0022】
前記ブレード5・・・の立上幅Lは5〜80mmで、波型刃M先端が湾曲形状Nをなし、波型刃MのピッチOが5〜50mmで、波型刃Mの深さPが3〜15mmである。好ましくは、前記立上幅Lは15〜50mmで、波型刃M先端はサトウキビ茎の節の湾曲A3(図6)に近いか、それより小さい湾曲形状Nとなしており、波型刃MのピッチOは10〜20mmで、波型刃Mの深さPが5〜10mmである。また、ブレード5・・・は、トロンメルの回転によりサトウキビ茎A1が上方から下方に落下したときに生ずる金属面(ブレード)との接触を防止するため回転方向に4列以上形成しない方が好ましい。
【0023】
トロンメル3で除去されたハカマB等のトラッシュは第1送風機4及び第2送風機7(図2)の風力によりトラッシュ排出場6へ排出される。一方トラッシュが除去されたサトウキビの健全茎A2・・・と梢頭部C(図9)は送り装置8を介して梢頭部選別区間9(コンベア)に送られる。
【0024】
梢頭部選別区間9では、サトウキビの健全茎A2・・・を最終送り装置10へ送る一方、梢頭部Cを人手により選別して梢頭部送り装置11へ供給する。この梢頭部選別区間から選別された梢頭部Cは梢頭部送り装置11を介して家畜飼料製造部12へ送られ、そこで梢頭部Cの裁断等を行い家畜の飼料を製造する。これにより、このシステムと一体的に梢頭部Cの飼料化、食品化が可能となる。製造された家畜飼料はトラック13の荷台に積まれ搬送される。
【0025】
一方、サトウキビの健全茎A2・・・は最終送り装置10を介して袋詰部14へ送られ、そこで袋詰されてクレーン(図示せず)によりトラックの荷台に積み込まれる。2つの袋詰枠体14、14は内部に袋16、16設け、例えば、図1に示すように、底部にレール15、15を設けて移動可能に形成し、交互に袋詰めできるようにしている。
【0026】
図10は前記家畜飼料製造部12の梢頭部裁断装置17であり、梢頭部送り装置11から送られた梢頭部C・・・は受け台18から喰込ローラ19、20間で喰込み、フライホールカッター21により裁断され、サトウキビ梢頭部家畜飼料C1を得る。
【0027】
この際、喰込ローラ19、20の送り速度及びフライホイールカッター21の回転速度はサトウキビ梢頭部家畜飼料C1の平均切断長さが5〜150mmのものが70%以上となるように裁断するよう設定されている。好ましくは10〜100mmのものが80%以上、より好ましくは10〜80mmのものが80%以上である。また、図11に示すように、前記喰込ローラ19、20は上下ネジ状の凹凸が噛合った状態であり、サトウキビ梢頭部C・・・の茎部分を捻るように喰い込ませるので硬い茎部分が繊維状態となるように潰される。
【0028】
更に、前記フライホイールカッター21は、図12に示すように2枚の回転刃22、23を有していて、喰込ローラ19、20から排出される梢頭部C・・・をフライホイールカッター21の開口部24、25において順次裁断する。この際、図13に示すように、前記回転刃22、23は夫々、刃の先端22a、23aを丸く潰してあり、前記喰込ローラ19、20によって茎部分が繊維状に潰されたサトウキビ梢頭部C・・・の茎部分は、さらに丸く潰した回転刃22、23の刃の先端22a、23aにより叩き潰すように裁断されるので、これら茎部分はさらにほくほくの繊維状のサトウキビ梢頭部家畜飼料C1となる。
【0029】
尚、上記実施例では、サトウキビ精脱システムにおける家畜飼料製造部12において梢頭部C・・・の裁断等を行ったが、それ以外の選別方法として前記従来例に示したような梢頭部C・・・のみを別途選別した後に裁断することにより得られる本考案と同一の飼料は本考案の権利範囲に含まれる。さらに、上記実施例の方法以外の別途の裁断方法により得られる本考案と同一の飼料も本考案の権利範囲に含まれる。
【発明の効果】
【0030】
この発明においては、平均切断長さが5〜150mmに裁断されたサトウキビ梢頭部が70%以上であり適切な長さの梢頭部がほとんどであるので、特に牛の飼料として胃の中に滞留することなく食滞の発生を防止する事ができる。また、梢頭部の長さが適切であり嗜好性が高まり飼料の食べ残しが少なくなる。
【0031】
また、特に牛の飼料としてほくほくに破砕された繊維状飼料であるので胃の中での消化率が向上し食滞の発生を防止する事ができる。また、ほくほく感があり噛み心地がよくなるので嗜好性が高まり飼料の食べ残しがなくなる。さらに、飼料の軽量化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】 サトウキビ精脱システム全体の概略説明図
【図2】 図1のI−I線視図
【図3】 図1のII−II線視図
【図4】 図1のIII−III線視図
【図5】 ハカマの付着した状態を示すサトウキビ茎の写真
【図6】 ハカマを除去した状態を示すサトウキビ茎の写真
【図7】 トラッシュ除去用トロンメル一部断面説明図
【図8】 ブレード部分拡大図
【図9】 サトウキビ梢頭部の写真
【図10】 家畜飼料製造部の梢頭部裁断装置の概略図
【図11】 喰込ローラを示す図10のA−A線視図
【図12】 フライホイールカッターを示す図10のB−B線視図
【図13】 回転刃の先端の部分説明図
【符号の説明】
1 ホッパー
3 トロンメル
4 送風機
5 ブレード
6 トラッシュ排出場6
9 梢頭部選別区間
10 最終送り装置
11 梢頭部送り装置
12 家畜飼料製造部
A1 サトウキビ茎
A2 サトウキビの健全茎
C・・・ サトウキビ梢頭部
C1 サトウキビ梢頭部家畜飼料
17 梢頭部裁断装置
18 受け台
19、20 喰込ローラ
21 フライホールカッター
22、23 回転刃
24、25 フライホイールカッターの開口部
22a、23a 刃の先端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均切断長さが5〜150mmのサトウキビ梢頭部が70%以上であることを特徴とするサトウキビ梢頭部家畜飼料。
【請求項2】
サトウキビ梢頭部の茎部分がほくほくに破砕された繊維状飼料を含むことを特徴とする請求項1記載のサトウキビ梢頭部家畜飼料。
【請求項3】
選別されたサトウキビ梢頭部を梢頭部裁断装置により裁断するものであって、裁断装置により5〜150mmが70%以上となるようにサトウキビ梢頭部を裁断する手段と、上下ネジ状の凹凸がかみ合った喰い込みローラによりサトウキビ梢頭部の茎部分を捻るように食い込ませて茎部分を繊維状態にする手段と、前記裁断装置の丸く潰されたカッターによりサトウキビ梢頭部の茎部分を叩き潰すように裁断してほくほくの繊維状とする手段とを有するサトウキビ梢頭部家畜飼料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−193869(P2011−193869A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158289(P2010−158289)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願変更の表示】意願2010−2348(D2010−2348)の変更
【原出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(508221992)
【Fターム(参考)】