説明

サトウキビ積込装置

【課題】根部を切断しただけの長い状態のサトウキビを、裁断せずに積み込む装置であって、積み込みの過程で、夾雑物及び梢頭部を効率良く除去・切断して、品質、糖度をできる限り維持した状態で収穫することができるサトウキビ積込装置を提供する。
【解決手段】サトウキビを刈り取るための刈り取り手段を備えた走行車体に設置され、刈り倒されたサトウキビを荷台に積み込むために搬送するサトウキビ積込装置において、複数の搬送ローラーが所定の間隔で並設された搬送部からなり、前記の搬送ローラーは、外周部分に掻き手段が設けられたことを特徴とするサトウキビ積込装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、根部を切断して刈り倒されたサトウキビを、裁断せずに積み込む装置であって、積み込みの過程で、夾雑物及び梢頭部を効率良く除去・切断して、高品質、高糖度のサトウキビを収穫するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、サトウキビを収穫する装置として、種々の装置が発明されている。
これら従来からの収穫装置には、作業性・効率性の観点から、収穫時にチョッパー等の切断機構で裁断する装置がある。
サトウキビは、収穫時には2m以上にも生育するので、根部を切断しただけの状態で収穫することは、作業性を著しく損なう。
【0003】
この作業性の問題は、高齢化と労働力不足が顕著なサトウキビ業界においては、最も改善が望まれる問題であった。
そこで、このような問題を解決する方法として考え出されたのが、上述の方法によるチョッパー等によって裁断してサトウキビを収穫する方法である。
【0004】
しかしながら、サトウキビを裁断して収穫する方法は、本来の収穫目的である原料茎以外にも、梢頭部、枯葉、根株、土砂等の夾雑物が混入してしまう。
これらの夾雑物は、トラッシュと呼ばれ、原料茎に混入して製糖工場に持ち込まれると、製糖歩留りを低下させる原因となるため、収穫作業中に除去することが望ましい。
そこで、裁断したサトウキビの中から、夾雑物を効率よく除去する種々の発明がなされている。
【0005】
例えば、下記特許文献1には、刈り取って切断したサトウキビ片を、搬送部から放出して収容部へ収容する際に、放出されるサトウキビ片の落下軌跡と交差する方向に送風して、トラッシュをサトウキビ片から分離するトラッシュ分離手段と、同トラッシュ分離手段により分離されたトラッシュを、吸引すると共に収容部の外部に排出するトラッシュ排出手段とを備えたサトウキビ収穫機が開示されている。
【特許文献1】特開平10−215633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に係る発明によれば、サトウキビを細かく裁断して収穫するので、効率よく搬送・収穫できるだけでなく、搬送の過程で、トラッシュを効率よく除去できるので、トラッシュの混入率を下げ、収容効率の向上を図ることができる。
そして、作業負担の軽減、積込量の向上が図られ、収穫作業における利便性を向上させることができる。
【0007】
しかしながら、サトウキビは、裁断することによって、その時点から急激に糖度が低下し、その結果、製糖した商品の品質低下を招く。
特に、上記特許文献1に係る発明のように、刈り取り時に裁断する場合、作業性・効率性を向上させることはできるが、製糖工場へ搬送されるまでに長い時間を要するため、品質の低下は免れない。
高品質、高糖度のサトウキビを収穫するには、サトウキビを裁断せず、根部を切断しただけの長い状態のまま製糖工場へ搬送することが望ましい。
【0008】
そこで、本発明は、上述の問題に鑑みて、高品質、高糖度のサトウキビを収穫することを目的としてなされたものであり、根部を切断しただけの長い状態のサトウキビを、裁断せずに積み込む装置であって、積み込みの過程で、夾雑物及び梢頭部を効率良く除去・切断して、品質、糖度をできる限り維持した状態で収穫することができるサトウキビ積込装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題を、以下の手段によって解決することができる。
【0010】
本発明の請求項1は、
サトウキビを刈り取るための刈り取り手段を備えた走行車体に設置され、
刈り倒されたサトウキビを荷台に積み込むために搬送するサトウキビ積込装置において、
複数の搬送ローラーが所定の間隔で並設された搬送部からなり、
前記の搬送ローラーは、外周部分に掻き手段が設けられた
ことを特徴とするサトウキビ積込装置である。
【0011】
本願発明は、サトウキビを刈り取るための刈り取り手段を備えた走行車体に設置される。
【0012】
刈り取り手段とは、サトウキビを刈り取るための手段で、例えば、円盤状または螺旋状、スクリュー状からなる回転刃やカッター、チェーンソーなどが挙げられる。
刈り取り手段は、サトウキビを刈り取ることができ、走行車体に設置できるものであれば、いずれでも良い。
【0013】
走行車体とは、駆動源を有する自走式の車体であって、トラクター、耕運機等が挙げられる。
走行車体は、車体の本来的機能として切り取り手段を備えているものであっても良いし、別途刈り取り手段を備えたものであっても良い。
【0014】
サトウキビの収穫には、本来の目的である原料茎以外にも、梢頭部、枯葉、根株、土砂等の夾雑物が混入してしまう。
これらの夾雑物は、トラッシュと呼ばれ、原料茎に混入して製糖工場に持ち込まれると、製糖歩留りを低下させる原因となるため、刈り取り作業中に除去することが望ましい。
【0015】
そこで、本請求項に係る発明は、これらの夾雑物を、刈り倒したサトウキビを搬送する過程で除去できるようにした。
具体的には、複数の搬送ローラーを所定の間隔で並設し、搬送ローラー間に生じる隙間から夾雑物を搬送中に落脱させるようにした。
【0016】
刈り倒されたサトウキビは、並設された複数の搬送ローラーからなる搬送部に載せられ、搬送ローラーが回転することによって搬送ローラー上のサトウキビを搬送し、搬送している間に、搬送ローラー間の隙間から夾雑物を落脱させる。
これにより、収穫した原料茎に夾雑物が混入する割合を大幅に低減できる。
【0017】
また、刈り倒したサトウキビは、搬送ローラーの上に載せられて搬送されるが、搬送ローラーの外周部分の表面が平坦である場合、サトウキビが滑ってしまい、搬送効率が極めて悪い。
そこで、本請求項に係る発明は、搬送ローラーの外周部分に、サトウキビが滑ることなく効率よく荷台へ搬送するための掻き手段を設けた。
【0018】
掻き手段は、サトウキビがローラーの上で滑らないようにできれば、いずれの手段でも良く、例えば、凸状の突起や櫛状の針などを搬送ローラーの外周部分に設けても良いし、搬送ローラー自体をその断面が波型、歯型、楔型などの形状にしても良い。
【0019】
この他、摩擦力が増えるように、搬送ローラーの外周面に、ゴムやスポンジなどの樹脂材を設けても良いし、粘着性のある部材を設けても良い。
特に、粘着性部材を設けた場合は、サトウキビに付着した夾雑物を粘着性部材に粘着させて除去することもできる。
【0020】
掻き手段は、1個のローラーの、外周部分の1箇所だけでなく、複数箇所に設けても良いし、その複数個所のそれぞれに異種の掻き手段を組み合わせても良く、さらにはローラー毎に異種の掻き手段を設けても良い。
【0021】
搬送ローラーの駆動は、本願発明に係る装置自体に駆動源を設けても良いし、走行車体の駆動源を利用しても良い。
走行車体の駆動源を利用する場合は、例えば、プーリを介して駆動力を得るようにしても良いし、フレキシブルシャフトによる動力伝達で駆動力を得るように構成しても良い。
【0022】
また、搬送部には、外柵を設けても良い。
外柵によって、さとうきびが搬送部から落脱するのを防止することができる。
【0023】
搬送ローラーによって搬送されたサトウキビは、荷台に積み込まれる。
荷台は、走行車体に備えられているものでも良いし、走行車体に後付けした別の機構でも良い。
また、トラックなどの荷積み用の荷台を備えた走行車体に積み込んでも良い。
【0024】
本発明の請求項2は、
前記の搬送部は、
搬送方向に軸長の、少なくとも2本の棒状の矯正ローラーからなる矯正部が設けられ、
前記の矯正ローラーは、
周方向に回転自在で、外周部分に掻き手段が設けられ、
矯正ローラーの間にサトウキビを挿通し、
矯正ローラーの回転によってサトウキビを搬送方向に方向付けしながら搬送する
ことを特徴とする請求項1に記載のサトウキビ積込装置である。
【0025】
近年では、サトウキビを収穫する際に、チョッパー等の切断機構で、サトウキビを裁断しながら収穫する方法もある。
2m以上にも生育するサトウキビを、根部を切断しただけの状態で収穫することは、作業性を著しく損ない、この作業性の問題は、高齢化と労働力不足が顕著なサトウキビ業界においては、最も改善が望まれる問題である。
【0026】
そこで、このような問題を解決する方法として考え出されたのが、上述の方法によるチョッパー等によって裁断してサトウキビを収穫する方法である。
サトウキビを細かく裁断することで、効率よく収穫することができるだけでなく、積み込みスペースを有効に利用することができるので、作業負担の軽減、積込量の向上が図られ、収穫作業における利便性を向上させることができる。
【0027】
しかしながら、サトウキビは、裁断することによって、その時点から急激に糖度が低下し、その結果、製糖した商品の品質低下を招く。
そのため、できるだけ高品質、高糖度のサトウキビを収穫するには、サトウキビを裁断せず、根部を切断しただけの長い状態のまま製糖工場へ搬送することが望ましい。
【0028】
本請求項に係る発明は、上述の問題に鑑みて、高品質、高糖度のサトウキビを収穫することを目的としてなされたものであり、根部を切断しただけの長い状態のサトウキビを、品質、糖度をできる限り維持した状態で、サトウキビを裁断せずに収穫することを目的としてなされたものである。
【0029】
サトウキビは、収穫時には2m以上の長さにまで成長するものもある。
そして、収穫時の根部を切断した状態のサトウキビでも、2m以上の長さのものもある。
その中には、垂直方向に真っ直ぐ成長したものだけでなく、曲がって成長したものもある。
このように、長さが2m余りもあるだけでなく、形状も一定でないため、荷台へ搬送している間に、サトウキビが搬送ローラーから落脱してしまうことがある。
【0030】
そのため、サトウキビが搬送ローラー上から落脱しないようにする必要がある。
また、曲がったサトウキビは、荷台の積み込みスペースを余分に使用し、収容率を下げる。
そこで、本請求項に係る発明は、長さが特に長いものや曲がった状態のものでも、サトウキビが搬送ローラー上から落脱しないように、搬送方向に方向付けし、さらには曲がったサトウキビを矯正して収容率を上げるための矯正部を搬送部に設けた。
【0031】
具体的には、搬送方向に軸長の、少なくとも2本の棒状の矯正ローラーからなる矯正部を、搬送部上に重ねて設ける。
矯正ローラーは、軸方向の両端を矯正部の外枠と当接する部分で周方向に回転自在に固定し、外周部分に掻き手段を設ける。
矯正部は、サトウキビを搬送方向に方向付けし、搬送ローラー上から外れて搬送されないようにし、曲がったサトウキビを矯正して収容率を上げるためのものであり、少なくとも2本の矯正ローラーから構成され、矯正ローラーの間にサトウキビを挿通する。
【0032】
各矯正ローラーの間は、サトウキビが挿通する程度の隙間を設けておく。
矯正ローラーの隙間に挿通されたサトウキビは、矯正ローラーの回転によって矯正される。
このようにして、サトウキビは、矯正ローラーによって矯正されながら搬送ローラーへ押し込まれ、搬送ローラーによって搬送されながら搬送方向へ方向付けされ、また曲がったサトウキビは矯正される。
【0033】
矯正ローラーは、外周部分に掻き手段を設けた。
掻き手段は、サトウキビが矯正ローラーと滑って挿通されないことがないようにできれば、いずれの手段でも良く、例えば、凸状の突起や櫛状の針などを矯正ローラーの外周部分に設けても良いし、矯正ローラー自体をその断面が波型、歯型、楔型などの形状にしても良い。
【0034】
この他、摩擦力が増えるように、矯正ローラーの外周面に、ゴムやスポンジなどの樹脂材を設けても良いし、粘着性のある部材を設けても良い。
特に、粘着性部材を設けた場合は、サトウキビに付着した夾雑物を粘着性部材に粘着させて除去することもできる。
【0035】
掻き手段は、1個のローラーの、外周部分の1箇所だけでなく、複数箇所に設けても良いし、その複数個所のそれぞれに異種の掻き手段を組み合わせても良く、さらにはローラー毎に異種の掻き手段を設けても良い。
【0036】
矯正ローラーは、駆動力を与えて周方向に強制的に回転させても良い。
駆動力は、搬送ローラーと同様に、走行車体から駆動力を得るように構成しても良い。
【0037】
また、矯正部には、外柵を設けても良い。
外柵によって、さとうきびが矯正部の外へ落脱するのを防止することができる。
【0038】
本発明の請求項3は、
前記の搬送部は、
搬送されたサトウキビを荷台に押し込むドラム型ローラーが設けられ、
前記のドラム型ローラーは、
円筒体のローラーからなり、
外周面に補助部材が取り付けられた
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のサトウキビ積込装置である。
【0039】
搬送されたサトウキビは、走行車体に備えられた荷台に積み込まれる。
荷台は、走行車体に備えられているものでも良いし、走行車体に後付けした別の機構でも良い。
また、トラックなどの荷積み用の荷台を備えた走行車体に積み込んでも良い。
しかし、収穫されるサトウキビは2m以上にも生育するため、搬送ローラーによって搬送されたサトウキビは、搬送の勢いで荷台を乗り越えてしまうおそれもある。
【0040】
そこで、本請求項に係る発明は、サトウキビがドラム型ローラーの補助部材にひっかかり、ドラム型ローラーが回転することによって、搬送されたサトウキビを荷台に押し込み、搬送されたサトウキビが荷台を乗り越えてしまわないように積み込めるようにした。
【0041】
ドラム型ローラーは、円筒体からなるローラーであるが、外周面が平坦な場合、サトウキビがドラム型ローラーの外周面で滑ってしまい、サトウキビをひっかけて荷台に押し込むことはできない。
そこで、ドラム型ローラーの外周面に補助部材を設けた。
【0042】
補助部材は、サトウキビがドラム型ローラーの外周面で滑ってしまわないようにひっかけることができれば、いずれの部材でも良く、例えばドラム型ローラーの外周面に放射状に複数の横板を設けても良いし、棒状の鋼材を並べて配置しても良い。
また、前記の掻き手段同様、凸状の突起や櫛状の針などを外周面に放射状に設けても良い。
【0043】
また、ローラー自体をその断面が波型、歯型、楔型などの形状にして、補助部材と一体形成されたものでも良い。
これにより、荷台付近まで搬送されたサトウキビは、先端がドラム型ローラーの補助部材にひっかかり、ドラム型ローラーが回転することによって荷台に押し込まれ、荷台を乗り越えてしまわないように積み込まれる。
【0044】
ドラム型ローラーは、周方向のいずれにも回転自在に動く。
ドラム型ローラーに駆動力を与えて周方向に強制的に回転させても良い。
駆動力は、搬送ローラーと同様に、走行車体から駆動力を得るように構成しても良い。
【0045】
本発明の請求項4は、
前記の搬送部は、
搬送方向側の端部にサトウキビを積み込む積込部を連結して備え、
前記の積込部は、
搬送部側の側面と上面とが開口した箱状の形状からなり、
積み込まれたサトウキビを降ろすための開閉扉と、
積み込まれたサトウキビの梢頭部を切り落とす切断手段と
が設けられた
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載のサトウキビ積込装置である。
【0046】
前記の夾雑物の中には、サトウキビの先端の梢頭部も含まれるが、この梢頭部は、糖汁が少ないため、原料茎に混入すると糖度を低下させる。
そのため、品質の良いサトウキビを得るには、梢頭部を除去する工程が必要となる。
また、梢頭部は、苗や家畜飼料としても利用できることから、廃棄せずに原料茎とは別に収穫することが望ましい。
【0047】
梢頭部の除去は、例えば、収穫前に圃場で人力によって梢頭部を除去する方法や、収穫時に他の夾雑物と共に除去する方法、収穫後の製糖前に梢頭部を除去する方法などが挙げられる。
このうち、収穫時に他の夾雑物と共に除去する方法は、例えば、送風等の手段によって行い、重量の軽い夾雑物を除去する方法が挙げられる。
しかし、この送風等による除去方法は、枯葉、雑草、土砂等の重量の軽いものであれば別として、梢頭部まで除去できるようなものでは決してない。
そのため、製糖前に再度、梢頭部を除去する方法が行われ、二度手間になってしまう。
【0048】
近年では、製糖前に梢頭部を除去する方法として、梢頭部を除去せずに収穫し、その後まとめて梢頭部を選別除去する精脱葉施設の整備が進んでいる地域もある。
しかし、このような施設の導入は、極めて高価であるので小規模農家には到底導入することができない。
また、上記施設は、梢頭部を含む夾雑物が原料茎に混入した状態で持ち込まれたものを、まとめて梢頭部を含む夾雑物を選別除去するので、そのための作業員を要する。
【0049】
さらに、除去の方法は、コンベアなどで原料茎と共に運ばれてくる夾雑物を素早く見分けて選別するというものであって、選別の精度は作業員によって異なり、また不慣れな作業員にはとても難しい作業である。
結局、梢頭部を完全に除去するためには、収穫前に圃場で人力によって1本1本梢頭部を除去する方法が確実であるが、極めて作業効率が悪く、高齢化と労働力不足の問題から、梢頭部を除去する人手の確保は容易ではない。
【0050】
上述のようにサトウキビの収穫作業には、多くの問題点を有するため、簡易に梢頭部を除去する方法が望まれている。
そこで、本請求項に係る発明は、搬送部に積込部を連結して備え、積込部には積み込まれたサトウキビの梢頭部をまとめて切り落とす切断手段を設けた。
【0051】
積込部は、搬送されたサトウキビを積み込むところで、箱状の形状からなり、搬送部と連結する側の側面部分と、上面部分とが開口した形状を成している。
サトウキビは、搬送部と連結する側の開口部分から積み込まれる。
【0052】
積み込まれたサトウキビは、最終的には積込部から荷降ろしされる。
しかし、サトウキビを積込部から人の手によって降ろすのは容易ではない。
そこで、本請求項に係る発明は、積込部から容易にサトウキビを取り出せるように、積込部の搬送部と連結する側の側面とは反対の側の側面に開閉扉を設け、この開閉扉を開いて、サトウキビを荷降ろしできるようにした。
【0053】
開閉扉は、開口面の左端、右端、又は下端のいずれかが蝶番で留められた片開きの扉でも良いし、左右の両端が蝶番で留められ、真ん中から開口する両開きの扉でも良い。
積込部は、積み込まれたサトウキビを簡単に荷降ろしできるように、片側の端部が浮き上がるように傾斜するようにしても良い。
例えば、開閉扉がある側面とは反対側の側面部分を油圧装置等で上昇させ、開閉扉がある側からサトウキビが流れ出るように荷降ろしする。
【0054】
また、積込部を走行車体に固定して設置した場合、搬送されたサトウキビは、常に積込部の一定の位置にしか積み込まれないため、積み込まれたサトウキビが積込部の中で偏在してしまう。
そこで、積込部の積み込みスペースを有効に利用するためには、積み込まれたサトウキビを均す作業が必要になる。
しかし、労働力不足に悩む収穫作業において、このための人手を確保するのは難しい。
【0055】
そこで、積込部を、本願発明に係る装置に対して可動するように設置しても良い。
例えば、積込部が水平方向、垂直方向に位置調整できるように設置して、積込部の任意の場所にサトウキビを積み込むことができるようにする。
また、積込部自体が傾斜して、積み込まれたサトウキビを均しても良い。
積込部は油圧装置により、位置調整等を行う。
【0056】
また、積込部は、本願発明に係る装置から着脱可能とすることもできる。
これにより、積込部だけを別の走行車体に載せて、加工所や製糖工場へ搬送することができる。
【0057】
刈り取られたサトウキビは、根部の刈り取られた部分を先にして搬送された場合、積込部の搬送部と連結する側に梢頭部が揃うように積み込まれる。
また、刈り取られたサトウキビが、梢頭部を先にして搬送された場合には、積込部の開閉扉側に梢頭部が揃うように積み込まれる。
いずれにしても、搬送する際に、根部の刈り取られた部分を先にするか、梢頭部を先にするか統一することで、梢頭部を揃えて積み込むことができる。
【0058】
積込部には、梢頭部が揃った状態で積み込まれたサトウキビを、梢頭部のみを容易にまとめて切断できるように切断手段を設けた。
切断手段は、円盤状の回転刃やカッター、押し切り刃、鋸、チェーンソーなど、梢頭部をまとめて切断できる切断部材を設けることによって行う。
切断方法は、切断部材を電動で稼動しても良いし、人力で切断部材を動かして切断するようにしても良い。
【0059】
切断部材は、搬送部と連結する側の端部か、開閉扉側の端部かのいずれかに設ける。
サトウキビを搬送する際に、根部の刈り取られた部分を先にするか、梢頭部を先にするかによって、梢頭部が揃う位置が異なるため、梢頭部が揃う側の端部に切断部材を設ける。
梢頭部の切断に際して、積込部を搬送部から離れるようにスライドさせ、梢頭部が突出するように構成しても良い。
積込部のスライド構成は、油圧装置などで調整する。
これにより、簡易、且つ極めて効率良く梢頭部のみを除去できる。
【0060】
また、切断手段は、梢頭部を切断するのみでなく、原料茎を所望の長さに裁断するのに用いても良い。
すぐに製糖される場合には、サトウキビを細かく裁断して収穫・搬送した方が効率が良い場合もあるためである。
【発明の効果】
【0061】
1)根部を切断しただけの長い状態のサトウキビを、裁断せずに積み込み、積み込みの過程で、夾雑物及び梢頭部を効率良く除去・切断して、できる限り品質、糖度を維持した状態でサトウキビを収穫することができる。
【0062】
2)長さが特に長いものや曲がった状態のものでも、サトウキビが搬送ローラー上から落脱しないように、搬送方向に方向付けして搬送することができる。
【0063】
3)搬送されたサトウキビを確実に積み込むことができる。
【0064】
4)梢頭部のみを、極めて効率よく切断、除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
以下、本願発明の実施の形態について、図を用いて説明する。
【0066】
図1は、本発明に係るサトウキビ積込装置の斜視図である。
【0067】
本発明に係るサトウキビ積込装置は、走行車体に載置して使用する。
走行車体は、トラクターを使用する。
走行車体は、駆動源を有する自走式の車体であれば、トラクターの他にも、耕運機等を使用しても良い。
【0068】
トラクターは、サトウキビ刈り取り手段として、円盤状のカッターを備える。
走行車体は、自らの機構として、サトウキビを刈り取る手段を備えていても良いし、備えていない場合には、別途サトウキビを刈り取る手段を備える必要がある。
サトウキビの刈り取り手段は、サトウキビを刈り取ることができ、走行車体に設置できるものであれば、いずれでも良い。
例えば、円盤状または螺旋状、スクリュー状からなる回転刃やカッター、チェーンソーなどが挙げられる。
【0069】
刈り取られたサトウキビは、刈り取られた根部を先にして搬送部1の搬送ローラー2上に載せられる。
このとき、梢頭部を先にして搬送ローラー2上に載せても良い。
【0070】
搬送部1は、所定の間隔で並設された複数の搬送ローラー2からなる。
搬送ローラー2が回転することによって、搬送ローラー2上のサトウキビを搬送する。
夾雑物は、搬送の過程で、搬送ローラー2間の隙間から落脱する。
これにより、収穫した原料茎に夾雑物が混入する割合を大幅に低減できる。
【0071】
搬送ローラー2の駆動力は、トラクターにフレキシブルシャフトを連結して得る。
搬送ローラー2は、独自の駆動源を備えるように構成しても良い。
搬送ローラー2の外周部分には、掻き手段として、楔型の形状を成した板状の掻き部材3を複数取り付けた。
【0072】
掻き手段は、サトウキビがローラーの上で滑らないようにできれば、いずれの手段でも良く、例えば、凸状の突起や櫛状の針などを搬送ローラー2の外周部分に設けても良いし、搬送ローラー2自体をその断面が波型、歯型、楔型などの形状にしても良い。
【0073】
この他、摩擦力が増えるように、搬送ローラー2の外周面に、ゴムやスポンジなどの樹脂材を設けても良いし、粘着性のある部材を設けても良い。
特に、粘着性部材を設けた場合は、サトウキビに付着した夾雑物を粘着性部材に粘着させて除去することもできる。
【0074】
掻き手段は、外周部分の任意の1箇所だけでなく、複数箇所に設けても良いし、その複数個所のそれぞれに異種の掻き手段を組み合わせても良く、さらにはローラー毎に異種の掻き手段を設けても良い。
【0075】
搬送されたサトウキビは、荷台に積み込まれる。
このようにして、根部を切断しただけの長い状態のサトウキビを、裁断せずに積み込み、積み込みの過程で、夾雑物及び梢頭部を効率良く除去・切断して、できる限り品質、糖度を維持した状態でサトウキビを収穫することができる。
【0076】
図2は、搬送部1に、矯正部4とドラム型ローラー6を取り付け、積込部8を連結した状態の斜視図である。
【0077】
搬送部1の上に、矯正部4を設けてある。
矯正部4は、搬送方向に軸長の、2本の棒状の矯正ローラー5からなる。
矯正ローラー5は、外周部分に螺旋状の凸部を形成してある。
矯正ローラー5の外周部分は、搬送ローラー2同様に上述した掻き手段を設けても良い。
【0078】
矯正ローラー5は、軸方向の両端を矯正部4の外枠と当接する部分で、周方向に回転自在に固定されている。
2本の矯正ローラー5の間は、サトウキビが挿通する程度の隙間を設けておく。
サトウキビを矯正ローラー5の隙間に挿通すると、矯正ローラー5の回転によって、搬送ローラー2へ矯正されながら押し込まれる。
そして、搬送ローラー2によって搬送されながら搬送方向へ方向付けされて矯正される。
【0079】
矯正ローラー5は、2本以上にしても良い。
3本以上の矯正ローラー5を並設して使用した場合、サトウキビはどの矯正ローラー5の隙間に挿通させても良い。
【0080】
矯正ローラー5は、駆動力を与えて周方向に強制的に回転させても良い。
駆動力は、搬送ローラー2と同様に、走行車体から駆動力を得るように構成しても良い。
【0081】
搬送部1には、搬送されたサトウキビを積込部8へ押し込むためのドラム型ローラー6が取り付けられている。
ドラム型ローラー6は、円筒体のローラーからなり、外周面に補助部材7として、放射状に複数の横板と棒状の鋼材とを交互に位置するように取り付けてある。
補助部材7は、搬送されたサトウキビの先端をひっかけ、ドラム型ローラー6の回転によって、積込部8に押し込んで積み込むためのものである。
【0082】
補助部材7は、サトウキビがドラム型ローラー6の外周面で滑ってしまわないようにひっかけることができれば、いずれの部材でも良い。
ドラム型ローラー6に取り付ける補助部材7は、搬送ローラー2と同様の掻き手段でも良い。
また、ドラム型ローラー6自体をその断面が波型、歯型、楔型などの形状にして、補助部材7と一体形成されたものでも良い。
【0083】
積込部8付近に搬送されたサトウキビは、先端が補助部材7にひっかかり、ドラム型ローラー6が回転することによって強制的に積込部8に押し込まれて、積込部8を乗り越えずに積み込まれる。
【0084】
ドラム型ローラー6は、駆動源は備えていないため、周方向のいずれにも回転自在に構成される。
ドラム型ローラー6は、駆動力を与えて周方向に強制的に回転させても良い。
駆動力は、搬送ローラー2と同様に、走行車体から駆動力を得るように構成しても良い。
【0085】
積込部8は、箱状の形状からなり、搬送部1と連結する側の側面部分と、上面部分とが開口した形状を成している。
サトウキビは、積込部8の搬送部1と連結する側から積み込まれる。
【0086】
積込部8は、油圧装置等によって、水平方向、垂直方向に位置調整できるように構成しても良い。
位置調整を行うことで、積込部8の任意の場所にサトウキビを積み込むことができ、積込部8の積み込みスペースを効率良く使用して積み込むことができる。
【0087】
積込部8のサトウキビは、梢頭部を搬送部1と連結する側に向けた状態で積み込まれているので、梢頭部が揃っており、切断手段によって切断することで梢頭部のみをまとめて効率良く切断することができる。
【0088】
梢頭部は、糖汁が少ないため、原料茎に混入すると糖度を低下させる。
そのため、品質の良いサトウキビを得るには、梢頭部を除去する工程が必要となる。
また、梢頭部は、苗や家畜飼料としても利用できることから、廃棄せずに原料茎とは別に収穫することが望ましい。
【0089】
切断手段は、押し切り刃、円盤状の回転刃やカッター、鋸、チェーンソーなど、梢頭部をまとめて切断できる部材であれば、いずれでも良い。
切断方法は、切断部材を電動で稼動しても良いし、人力で切断部材を動かして切断するようにしても良い。
【0090】
切断部材は、搬送部1側の端部か、開閉扉9側の端部のいずれかに設ける。
サトウキビを搬送する際に、根部の刈り取られた部分を先にするか、梢頭部を先にするかによって、梢頭部が揃う位置が異なるため、梢頭部が揃う側の端部に切断部材を設ける。
【0091】
梢頭部の切断に際して、積込部8を搬送部1から離れるようにスライドさせ、梢頭部が突出するように構成しても良い。
積込部8のスライド構成は、油圧装置などで調整する。
これにより、簡易、且つ極めて効率良く梢頭部のみを除去できる。
【0092】
また、切断手段は、梢頭部を切断するのみでなく、原料茎を所望の長さに裁断するのに用いても良い。
すぐに製糖される場合には、サトウキビを細かく裁断して収穫・搬送した方が効率が良い場合もあるためである。
【0093】
積込部8は、搬送部1と連結する側とは反対の側面に、開閉扉9を設けてある。
この開閉扉9を開いて、サトウキビを荷降ろしできる。
開閉扉9は、真ん中部分で開口する両開きの扉になっている。
【0094】
積込部8は、積み込まれたサトウキビを簡単に荷降ろしできるように、例えば、開閉扉9側の端部を油圧装置等で上下に傾けることができるようにし、開閉扉9側の端部を下げ、積込部8を傾けてサトウキビが流れ出るように荷降ろししても良い。
また、積込部8を傾ける方法は、積み込まれたサトウキビを均すために用いることもできる。
【0095】
積込部8は、搬送部1から着脱可能にしても良い。
この場合、積込部8だけを別の走行車体に載せて製糖工場へ搬送することができ、サトウキビの積込作業に専用的に使用できる。
【0096】
以下、本発明に係るサトウキビ積込装置の使用例を説明する。
【0097】
トラクターを走行させながら、サトウキビを刈り取る。
サトウキビは、トラクターに取り付けた刈り取り手段である円盤状のカッターによって、刈り取られる。
刈り取られたサトウキビは、刈り取られた根部を先にして搬送されるように、搬送ローラー2の上に載せられる。
【0098】
搬送ローラー2上のサトウキビが搬送される過程で、夾雑物が落脱する。
このように、夾雑物を落脱させながら、サトウキビを積込部8に搬送する。
搬送と同時に、特別な手段や工程を経ることなく夾雑物を除去できるので、極めて作業性・効率性・経済性に優れている。
【0099】
曲がったサトウキビを積み込む場合には、搬送ローラー2の上に、矯正ローラー5を取り付けて使用する。
2本の矯正ローラー5の間に曲がったサトウキビを挿通し、矯正ローラー5で矯正しながら搬送する。
【0100】
サトウキビは、積込部8の搬送部1と連結する側に梢頭部が揃うように積み込まれる。
積込部8は、油圧装置で位置調整しながら、サトウキビを積み込むことができる。
サトウキビの丈が長い場合は、搬送部1から積込部8に積み込まれる際に、ドラム型ローラー6にあたる。
【0101】
ドラム型ローラー6にあたったサトウキビは、ドラム型ローラー6の外周面に取り付けられた補助部材7にひっかかり、ドラム型ローラー6の回転によって積込部8に積み込まれる。
積込部8をスライドさせて搬送部1から1m程度離し、梢頭部のみを切断する。
【0102】
積込部8と搬送部1との間に隙間が生じるようにすることで、この隙間から切断された梢頭部を落下させることができる。
これにより、簡易に梢頭部のみを切断することができる。
【0103】
以上のように、本発明にかかるサトウキビ積込装置によれば、極めて作業性・効率性・経済性に優れた方法で夾雑物を除去し、刈り取ったサトウキビを簡易迅速に積み込み、高品質、高糖度のサトウキビを収穫することができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明に係るサトウキビ積込装置の斜視図。
【図2】搬送部に、矯正部とドラム型ローラーを取り付け、積込部を連結した状態の斜視図。
【符号の説明】
【0105】
1 搬送部
2 搬送ローラー
3 掻き部材
4 矯正部
5 矯正ローラー
6 ドラム型ローラー
7 補助部材
8 積込部
9 開閉扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サトウキビを刈り取るための刈り取り手段を備えた走行車体に設置され、
刈り倒されたサトウキビを荷台に積み込むために搬送するサトウキビ積込装置において、
複数の搬送ローラーが所定の間隔で並設された搬送部からなり、
前記の搬送ローラーは、外周部分に掻き手段が設けられた
ことを特徴とするサトウキビ積込装置。
【請求項2】
前記の搬送部は、
搬送方向に軸長の、少なくとも2本の棒状の矯正ローラーからなる矯正部が設けられ、
前記の矯正ローラーは、
周方向に回転自在で、外周部分に掻き手段が設けられ、
矯正ローラーの間にサトウキビを挿通し、
矯正ローラーの回転によってサトウキビを搬送方向に方向付けしながら搬送する
ことを特徴とする請求項1に記載のサトウキビ積込装置。
【請求項3】
前記の搬送部は、
搬送されたサトウキビを荷台に押し込むドラム型ローラーが設けられ、
前記のドラム型ローラーは、
円筒体のローラーからなり、
外周面に補助部材が取り付けられた
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のサトウキビ積込装置。
【請求項4】
前記の搬送部は、
搬送方向側の端部にサトウキビを積み込む積込部を連結して備え、
前記の積込部は、
搬送部側の側面と上面とが開口した箱状の形状からなり、
積み込まれたサトウキビを降ろすための開閉扉と、
積み込まれたサトウキビの梢頭部を切り落とす切断手段と
が設けられた
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のサトウキビ積込装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−148234(P2009−148234A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331235(P2007−331235)
【出願日】平成19年12月23日(2007.12.23)
【出願人】(597007008)
【Fターム(参考)】