説明

サポーター

【課題】 運動時に生じる、膝関節の外側、内側の筋、腱、靱帯の痛みを予防しあるいは緩和することを目的とする。
【解決手段】 膝関節付近に巻き付けるように装着可能な伸縮性を有する帯状部材(2)と、前記帯状部材の一方の面には、一方の端に設けられる第1の結合手段(4a)と、前記第1の結合手段の内側領域に設けられる第2の結合手段(5a)と、他方の端付近に設けられるパッド(3)が配置され、前記帯状部材の他方の面には、他方の端に設けられる第3の結合手段(4b)と、前記第3の結合手段の内側領域に設けられる第4の結合手段(5b)が配置されることを特徴とする、膝用のサポーター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行などの運動時に、膝関節の内側または外側側面の痛みを防ぎあるいは緩和するために使用する膝用サポーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の膝用サポーターは、膝関節の一部または全部を外方から押圧し、膝の過度の屈曲や変形を防ごうとするものが一般的であった。また少数ではあるが膝関節の特定の骨の安定を目的としたサポーターが提供されている。
【0003】
例えば特許文献1には、膝蓋骨が下方に動くのを防ぐために、膝蓋骨下部のサポーター本体に弾性テープを取り付けたサポーターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−278014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
運動時には、膝関節の外側、内側の筋、腱、靱帯の痛みが生じることがある。外側の痛みは膝関節に負荷がかかった状態で、膝の屈曲伸展運動を行う際に、腸脛靱帯と大腿骨外側上顆が擦れて生じるものである。また内側の痛みは、縫工筋に遠心性の収縮が生じるため、骨との付着部付近ないし、膝内側に痛みが生じるものである。外側の痛みは膝が外側に開いたときに生じやすく、内側の痛みや膝が内側に入ったときに生じやすい。
【0006】
一般的なサポーターは膝部分を外方から押圧するものであるから、膝が外側や内側にずれにくくすると同時に腸脛靱帯や縫工筋を骨に押さえつけるので、膝関節の内外側面の痛みを緩和することができなかった。また、特許文献1のサポーターは膝蓋骨が下方に下がらないようにすることはできるが、側面の筋と骨の接触を防ぐような考慮はされていないから、膝関節の内外側面の痛みを予防や緩和することができなかった。
【0007】
本発明は、このような膝関節内外側面の痛みの予防や緩和をするためのサポーターを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明にかかるサポーターは、膝関節付近に巻き付けるように装着可能な伸縮性を有する帯状部材と、前記帯状部材の一方の面に、一方の端に設けられる第1の結合手段と、前記第1の結合手段の内側領域に設けられる第2の結合手段と、他方の端付近に設けられるパッドが配置され、前記帯状部材の他方の面には、他方の端に設けられる第3の結合手段と、前記第3の結合手段の内側領域に設けられる第4の結合手段が配置されることを特徴とする膝用のサポーターである。
【0009】
この構成により、パッドで腓骨頭や脛骨内側顆の後方(人体背面側)を前方(人体正面側)に引っ張ることができ、下腿が内旋することで腸脛靱帯と大腿骨外側上顆の接触圧力を軽減し、かつ腸脛靱帯の引き伸ばされた状態を緩和することができる。また、下腿が外旋することで縫工筋の引き延ばされた状態を緩和することができる。
【0010】
また、本発明にかかるサポーターは、前記パッドの少なくとも内側領域側が、他方の端(外側領域)に向けて凸となるアーチ状にしたことを特徴とする膝用のサポーターである。
【0011】
この構成により、腓骨頭や脛骨内側顆を前方(人体正面側)に引っ張るときに、パッドの内側領域側の側面すべてが該骨に接触するので、腓骨頭や脛骨内側顆を効果的に前方へ引っ張ることができるとともに、装着時の違和感を軽減することができる。
【0012】
また、本発明にかかわるサポーターは、パッドの内側領域に、貫通孔をさらに有することを特徴とする膝用のサポーターである。
【0013】
この構成により、本発明のサポーターを取り付けるときに、効果を得られやすい位置に正確に取り付けることができる。すなわちこの貫通孔を、膝の下腿側の外側面でもっとも外方に飛び出している腓骨頭、あるいは膝の下腿側の内側面でもっとも外方に飛び出している脛骨内側顆の位置に合わせてサポーターを装着すれば、パッドは各々腓骨頭や脛骨内側顆の後方に合致するように取り付けることができる。
【0014】
個人差により、腓骨頭や脛骨内側顆の凹部の位置がわかり難い場合があるが、前述のように貫通孔を位置あわせに利用することで、サポーター、特にパッドを確実に所望の位置に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のサポーターによれば、膝の外側に痛みを持つ場合は、下腿を内旋させつようにサポーターを装着することで、長脛靱帯と大腿骨外側上顆の接触圧を軽減し、かつ膝関節が外側に開くことを防ぐので、長脛靱帯の緊張が軽減され、膝関節の外側側面の痛みを予防または緩和することができる。また、膝の内側に痛みを持つ場合は、下腿を凱旋させるようにサポーターを装着することで、膝関節が内側に入ることを防ぐので、縫工筋の緊張が軽減され、膝関節の内外側面の痛みを予防または緩和ができる。また、外方から押圧するのは膝関節の下部のみであるから膝の屈曲運動を大きく阻害することがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の膝サポーターである。
【図2】本発明の膝サポーターの取り付け例である。
【図3】膝関節と筋位置の説明図である。
【図4】膝関節と筋位置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
本発明の実施の形態は、膝関節付近に巻き付けるように装着可能な伸縮性を有する帯状部材2と、前記帯状部材2の一方の面には、一方の端に設けられる第1の結合手段4aと、前記第1の結合手段4aの内側領域に設けられる第2の結合手段5aと、他方の端付近に設けられるパッド3が配置され、前記帯状部材2の他方の面には、他方の端に設けられる第3の結合手段4bと、前記第3の結合手段4bの内側領域に設けられる第4の結合手段5bが配置されることを特徴とする、膝用のサポーター1である。
【0018】
図1aは、本実施形態によるサポーター1の一方の面(裏面)を示す図であり、図1bはる。本実施形態によるサポーター1の他方の面(表面)を示す図である。
【0019】
本実施形態のサポーター1は、帯状部材2を主要な部品として構成される。図1aに示すように、帯状部材の一方の面には、一方の短部に第一の結合手段4aが、その内側領域に第2の結合手段5aが、他方の端部付近にはパッド3がそれぞれ帯状本体と一体的に配置されている。また、図1bに示すように、帯状部材の他方の面には、他方の端部に第3の結合手段4bが、その内側領域に第4の結合手段5bが設けられている。
【0020】
本発明のサポーター1を使用者に装着するときには、パッド3が腓骨頭または脛骨内側顆の凹部に合致する位置で押さえ、一方の面(裏面)が人体に接触するように膝部に巻きつけ、帯状部材に軽く張力がかかる状態で第2の結合手段5aと第3の結合手段4bを接続する。次に、第3の結合手段を帯状本体2の上から押さえ、帯状部材2に強く張力がかかる状態で第1の結合手段4aと第4の結合手段5bを接続する。
【0021】
このように、本発明のサポーター1は、帯状本体2のうち、他方の端部から第2の結合手段5aと第3の結合手段4bが接続される位置までは着用位置がずれない程度の軽い張力かかかり、第2の結合手段5aと第3の結合手段4bが結合される位置から第1の結合手段4aと第4の結合手段5bが接続される位置までは、腓骨頭または脛骨内側顆を前方に引っ張るための強い張力がかかる状態で使用される。
【0022】
また、帯状本体2に異なる張力がかかる状態を作るために、第1の結合手段4aと第4の結合手段5b、および第2の結合手段5aと第3の結合手段4bは着脱可能な状態で接続可能であるように、さらに少なくとも第2の結合手段と第4の結合手段は接合力を持たないように構成される。
【0023】
具体的には、結合手段としては、第1の結合手段と第3の結合手段にはオスの面ファスナーを使用し、第2の結合手段と第4の結合手段にはメスの面ファスナーを使用した。また、第2の結合手段は、第3の結合手段と接続したときに着用者の取り付け位置の脚部の周囲よりも短くなる位置まで連続して設けられる。さらに第4の接続手段は帯状部材2の他方の端から第2の結合手段の内側の端まで連続して設けられる。このように配置することで、結合手段を帯状本体に縫着する場合は、縫着線を減らして製造工程を簡素化できる。なお、結合手段を帯状本体2に一体的に配置する方法としては、このほかに接着などが採用可能である。
【0024】
成人男子用のサポーター1を例に説明すると、伸縮性を有する帯状部材2はクロロプレンゴムからなり、また、帯状部材の全長は395mm、全幅は30mm、厚みは2mmとした。また、帯状部材2の材料は一例であり、同等の伸縮性を有する材料であれば幅広く使用可能である。また着用者の寸法に合わせて帯状部材2の長さは適宜変更される。
【0025】
別の実施形態のサポーター1は、前記パッド3の少なくとも内側領域側3aは、他方の端に向けて凸となるアーチ状にしたことを特徴とする請求項1の膝用のサポーター1である。これは、パッドと接触し、前方に引っ張られる腓骨頭または脛骨内側顆の凹部の形状に合わせるためである。この例ではパッド3の外側領域側3bを内側領域側3aよりも曲率の小さいアーチ状とした。これは、帯状本体2に張力を加えたとき、パッド3も長手方向に伸びるので、パッド3の厚みが薄くなり過ぎないようにするためである。
【0026】
なお、パッド3とその周辺の帯状部材は、帯状部材の他の部分の幅よりも広くしておくとよい。これは装着時にパッド3を膝関節の取り付け位置に押圧して帯状部材2を引っ張ると、パッド3も引っ張られて腓骨頭や脛骨内側顆と接触する長さが短くなり、下腿を十分に外旋や内旋できなくなるからである。
ここで、パッド3はクロロプレンゴムからなり、厚みは2.5mm〜7mmが好適である。パッド3は縫製により帯状部材2に固着一体化されるが、これは例示であり、この材料に限定されるものではない。
【0027】
さらに別の実施形態のサポーター1は、前記パッド3の内側領域に貫通孔6を設けたことを特徴とするサポーター1である。この貫通孔6は、膝の下腿側の外側面でもっとも外方に飛び出している腓骨頭、または膝の下腿側の内側面でもっとも外方に飛び出している脛骨内側顆の位置に合わせることで、パッド3を確実に腓骨頭または脛骨内側顆の後方に宛がうことができる位置に設けられている。
【0028】
具体的には、貫通孔6の中心とパッド3の内側領域側3aまでの最も離れた距離が5mm〜20mmとなるように貫通孔6を設けている。
【0029】
図2は、本発明のサポーター1の使用例で、右脚を外側から見た図である。貫通孔6を大腿骨外側上顆の位置にあわせ、パッド3(図示せず)を押さえて帯状部材2を脚周りに一周させ、第3の固定手段4bと第2の固定手段5aを接続して装着する。その後、帯状部材2の一方の端部を強く引っ張りながら第1の固定手段と第4の固定手段5bを接続する。このように取り付けることで、腓骨頭を後方から前方に引っ張り下腿を内旋させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によるサポーターによれば、パッドで腓骨頭や脛骨内側顆の後方(人体背面側)を押圧した後に前方(人体正面側)に引っ張ることができ、下腿が内旋することで腸脛靱帯と大腿骨外側上顆の接触圧力を軽減し、かつ腸脛靱帯の引き伸ばされた状態を緩和することができる。また、下腿が外旋することで縫工筋の引き延ばされた状態を緩和することができる。このように着用者の膝関節の内外側面の痛みを予防または軽減することができるサポーターを提供することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 サポーター、2 帯状部材、3 パッド、4a、4b 結合手段、5a、5b 結合手段 6 貫通孔、101 右脚膝、110 腸脛靱帯、111 大腿骨外側上顆、112 腓骨頭、114 縫工筋、115 脛骨内側顆、200 膝蓋骨

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膝用のサポーターであって、
膝関節付近に巻き付けるように装着可能な伸縮性を有する帯状部材(2)と、
前記帯状部材の一方の面には、一方の端に設けられる第1の結合手段(4a)と、前記第1の結合手段の内側領域に設けられる第2の結合手段(5a)と、他方の端付近に設けられるパッド(3)が配置され、
前記帯状部材の他方の面には、他方の端に設けられる第3の結合手段(4b)と、前記第3の結合手段の内側領域に設けられる第4の結合手段(5b)が配置されることを特徴とする、
膝用のサポーター。
【請求項2】
前記パッド(3)の少なくとも内側領域側(3a)は、他方の端に向けて凸となるアーチ状にしたことを特徴とする請求項1の膝用のサポーター。
【請求項3】
前記パッド(3)の内側領域に、貫通孔(6)をさらに有することを特徴とする、請求項1または請求項2の膝用のサポーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−1831(P2012−1831A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135615(P2010−135615)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
【出願人】(500431759)有限会社足と歩きの研究所 (3)
【出願人】(503396044)株式会社 アクト (2)
【Fターム(参考)】