サリューシン−βのアンタゴニストを含む心筋虚血再灌流傷害抑制剤
【課題】心筋虚血再灌流傷害を改善するための医薬組成物の提供。
【解決手段】サリューシン-βのアンタゴニストを有効成分として含む心筋虚血再灌流傷害治療剤。
【解決手段】サリューシン-βのアンタゴニストを有効成分として含む心筋虚血再灌流傷害治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗サリューシン-β抗体等サリューシン-βのアンタゴニストを含む、心筋虚血再灌流傷害抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
虚血再灌流(I/R)があると、患者はうっ血性心不全に罹患しやすくなる。I/Rに続く心臓機能の低下は筋細胞死と間質の線維化に関連して発生する。そして、それは心室リモデリングと呼ばれる。最近の研究により、炎症反応が心筋傷害と線維化を引き起こし、心臓機能の進行的な低下に発展する可能性が示された。血管形成の損傷を含む微小血管の異常が心筋梗塞や梗塞後リモデリングなどの心臓病の病気の発生に関与していることはよく知られている。慢性の虚血性疾患における側副循環を構築するために血管形成を促進することが非常に重要である。
【0003】
七里他は、サリューシン-α及びサリューシン-βと呼ばれる、28及び20アミノ酸からなる2つの関連ペプチドを同定した(非特許文献1を参照)。サリューシン-βは強力な血行動態制御作用による心筋収縮能の低下を惹起する(非特許文献1及び2を参照)。さらに、サリューシン-α及びサリューシン-βは血管平滑筋細胞(VSMCs)と線維芽細胞の増殖を刺激し(非特許文献1を参照)、心筋細胞の肥大を促進し、細胞死を抑制する(非特許文献3を参照)ことが示された。また、サリューシン-βは、冠状動脈のアテローム性動脈硬化症におけるマクロファージ泡沫化細胞の形成を促進する(非特許文献4を参照)。
【0004】
しかしながら、サリューシンが心筋再灌流傷害に関与するかどうかは知られていなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Shichiri M et al, Nat Med. 2003; 9: 1166-1172.
【非特許文献2】Izumiyama H et al., Hypertension. 2005; 45: 419-425.
【非特許文献3】Yu F et al., Regul. Pept. 2004; 122: 191-7.
【非特許文献4】Watanabe T et al., Circulation. 2008; 117: 638-48.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、心筋虚血再灌流傷害を改善するための医薬組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、サリューシン-βについての研究の過程において、サリューシン-βが虚血再灌流(I/R)傷害後の心室リモデリングに関与していることを見出した。本発明者は、ラット心筋梗塞モデル、虚血再灌流モデルに抗サリューシン-β抗体を投与し、サリューシン-βの作用を抑制することにより、心筋梗塞の後の心臓機能が改善され、心筋虚血再灌流傷害が抑制されることを見出した。さらに、本発明者は、抗サリューシン-β抗体が、心筋梗塞又は虚血再灌流後の心室リモデリングを抑制することを見出し本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] サリューシン-βのアンタゴニストを有効成分として含む心筋虚血再灌流傷害治療剤。
[2] サリューシン-βのアンタゴニストが抗サリューシン-β抗体である、[1]の心筋虚血再灌流傷害治療剤。
[3] 心筋虚血再灌流中又は心筋虚血再灌流に投与するための、[1]又は[2]の心筋虚血再灌流傷害治療剤。
[4] サリューシン-βのアンタゴニストを有効成分として含む心筋梗塞又は虚血再灌流後の心室リモデリング抑制剤。
[5] サリューシン-βのアンタゴニストが抗サリューシン-β抗体である、[4]の心筋梗塞又は虚血再灌流後の心室リモデリング抑制剤。
【発明の効果】
【0009】
実施例に記載のように、本発明の医薬組成物は、心筋虚血再灌流による心筋の傷害を抑制し、さらに、心筋梗塞又は虚血再灌流後の心室リモデリングを抑制する。本発明の医薬組成物により、心筋の虚血再灌流傷害を有効に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】MIモデルラット心臓の心エコー図を示す図である。
【図2】MIモデルラット心臓の血圧を示す図である。
【図3A】I/Rモデルラット心臓における虚血域(area at risk)を示す図である(1日目)。
【図3B】I/Rモデルラット心臓における虚血域(area at risk)を示す図である(7日目)。
【図4】I/Rモデルラット心筋のサリューシン-βの免疫化学染色の結果を示す図である。図4Aは、抗サリューシン-β抗体処理した場合の結果を示し、図4Bは媒体処理した場合の結果を示す。
【図5】I/Rモデルラット心筋のCD31の免疫化学染色の結果を示す図である。
【図6】二重蛍光免疫組織染色の結果を示す図である。
【図7】I/Rモデル群の心臓におけるプレプロサリューシンとVEGFの転写レベルを示す図である。
【図8A】線維芽細胞中のMMP-9の発現レベルを示す図である。
【図8B】線維芽細胞中のMMP-2の発現レベルを示す図である。
【図8C】マクロファージ中のIL-8の発現レベルを示す図である。
【図8D】マクロファージ中のCCL2の発現レベルを示す図である。
【図8E】マクロファージ中のサリューシン-βの発現レベルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
サリューシン-βは、20残基のアミノ酸からなるペプチドである(配列番号1)。242アミノ酸からなるプレプロサリューシン(配列番号2)からプロセシングによりサリューシン-α及びサリューシン-βが生じる。該プレプロサリューシンのN末端の26アミノ酸からなるシグナル配列が削除されて216アミノ酸からなるプロサリューシンが生じ、さらにプロサリューシンのC末端側からサリューシン-α及びサリューシン-βが生じる。
【0012】
本発明において、サリューシン-βのアンタゴニストとは中和抗体や受容体拮抗剤の如くサリューシン-β又はサリューシン-βの受容体に結合し、生体においてサリューシン-βの作用を抑制するあらゆる化合物を含む。
【0013】
サリューシン-βのアンタゴニストとしては、サリューシン-βの作用を抑制するあらゆる化合物が含まれるが、例えば、アンタゴニスティックな活性を有する抗サリューシン-β抗体、サリューシン-βの中和活性を有する抗サリューシン-β抗体が挙げられる。
【0014】
抗サリューシン-β抗体は、公知の方法により、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体として得ることができ、モノクローナル抗体が好ましい。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマに産生されるもの、及び遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生されるものを含む。モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、公知の手法により、以下のようにして作製できる。すなわち、サリューシン-β又はその断片ペプチドを感作抗原として用いて、公知の免疫方法により免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、公知のスクリーニング法により、モノクローナル抗体を産生する細胞をスクリーニングすることによって作製することができる。サリューシン-βを免疫する際、ウシ血清アルブミン(BSA)、キーホールリンペットヘモシアニン等のキャリアタンパク質と結合させて用いてもよい。モノクローナル抗体としては、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型のものを用いることができる(例えば、Vandamme, A. M. et al., Eur. J. Biochem. 1990;192:767-775.参照)。この際、抗体重鎖(H鎖)又は軽鎖(L鎖)をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を同時形質転換させてもよいし、あるいはH鎖及びL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換させてもよい(WO 94/11523 号公報参照)。また、トランスジェニック動物を使用することにより、組換え型抗体を産生することもできる。例えば、抗体遺伝子を、乳汁中に固有に産生されるタンパク質(ヤギβカゼインなど)をコードする遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギ又はその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得ることができる(Ebert, K.M. et al., Bio/Technology 1994;12:699-702)。
【0015】
本発明の抗サリューシン-β抗体は、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ抗体、ヒト型化(Humanized)抗体をも含む。このような抗体としてはキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体が挙げられ、いずれも公知の方法を用いて製造することができる。キメラ抗体は、得られた抗体V領域をコードするDNAを得て、ヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる。ヒト型化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体ともいう。ヒト型化抗体は、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR; complementarity determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、公知の方法により作製することができる(欧州特許出願公開番号EP 125023号公報、WO 96/02576 号公報参照)。キメラ抗体及びヒト型化抗体のC領域には、ヒト抗体のものが使用され、例えばH鎖では、Cγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4を、L鎖ではCκ、Cλを使用することができる。また、抗体又はその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体C領域を修飾してもよい。
【0016】
ヒト抗体は、例えばヒト抗体遺伝子座を導入し、ヒト由来抗体を産生する能力を有するトランスジェニック動物に抗原を投与することにより得ることができる。該トランスジェニック動物としてマウスが挙げられ、ヒト抗体を産生し得るマウスの作出方法は、例えば、国際公開第WO02/43478号パンフレットに記載されている。
【0017】
本発明の抗サリューシン-β抗体は、完全抗体だけでなく、その機能的断片も含む。抗体の機能的断片とは、抗体の一部分(部分断片)であって、抗体の抗原への作用を1つ以上保持するものを意味し、具体的にはF(ab')2、Fab'、Fab、Fv、ジスルフィド結合Fv、一本鎖Fv(scFv)、及びこれらの重合体等が挙げられる[D.J.King., Applications and Engineering of Monoclonal Antibodies., 1998 T.J.International Ltd]。
【0018】
得られた抗体が、サリューシン-βに対してアンタゴニスト活性を有するか否かは、例えば、抗体をサリューシン-βに結合させ、サリューシン-βの活性が抑制されるか否かを検定することにより、決定することができる。
【0019】
サリューシン-βに対するアンタゴニスティック活性を有する化合物は、心筋梗塞、狭心症等の虚血性心疾患の虚血部位における血管新生作用を有しており、医薬組成物として用いることができる。例えば、心筋梗塞、狭心症等の虚血性心疾患の予防又は治療剤として用いることができる。また、前記化合物は心筋梗塞又は虚血再灌流後の心室リモデリング(例えば、左心室リモデリング)を制御して治療することができる。すなわち、前記化合物は虚血再灌流傷害の治療又は予防剤として用いることができる。例えば、心筋梗塞、狭心症等の虚血性心疾患の処置において、虚血再灌流傷害後の心機能の回復に必要とされる新生血管を促して、心機能の回復を促進することができる。
【0020】
ここで、心室リモデリングとは、心筋梗塞によって引き起こされた心室形態の変化が梗塞を起こした領域だけではなく、梗塞を起こしていない領域にも波及することをいう。また、虚血再灌流傷害といは、例えば、心臓の手術において、心臓及びその周辺の血流を停止し、再度血液を流した際(再灌流時)に血管内皮細胞及び心筋に生じる傷害をいう。
【0021】
投与量は、症状、年齢、体重などによって異なるが、通常、経口投与では、成人に対して、1日約0.01mg〜1000mgであり、これらを1回、又は数回に分けて投与することができる。また、非経口投与では、1回約0.01mg〜1000mgを皮下注射、筋肉注射又は静脈注射によって投与することができる。また、投与時期としては、虚血再灌流中又は虚血再灌流後が挙げられる。すなわち、サリューシン-βに対するアンタゴニスティック活性を有する化合物は、虚血再灌流時の虚血心に対して用いることができる。さらに、急性心筋梗塞の患者に、または急性心筋梗塞の危険がある患者に投与することができ、心筋梗塞の臨床症状が生ずる前後に投与すればよい。
【0022】
本発明の医薬組成物は、種々の形態で投与することができ、それらの投与形態としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等による経口投与、又は、注射剤、点滴剤、坐薬等による非経口投与を挙げることができる。
【0023】
サリューシン-βに対するアンタゴニスティック活性を有する化合物を含む医薬組成物は、常法にしたがって製剤化することができ(Remington's Pharmaceutical Science, latest edition, Mark Publishing Company, Easton,米国)、医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。このような担体及び医薬添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤等が挙げられる。実際の添加物は、本発明の医薬組成物の剤型に応じて上記の中から単独で又は適宜組み合わせて選ばれるが、もちろんこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0024】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
方法
1.ラット心筋梗塞(MI)モデルと虚血再灌流傷害(I/R)モデルの作成
8〜10週齢の雄Sprague-Dawleyラット(7週齢時に300〜400g)はCLEA Japanより入手した。該ラットを40mg/kgのペントバルビタールナトリウムで麻酔し、ポリエチレンチューブを用いて口から人工呼吸を行った。左冠状動脈前下行枝を顕微観察し、6-0シルク縫合糸で結紮した。心筋虚血は心外膜のチアノーゼおよび心室壁の収縮低下で確認した。心筋梗塞(MI)モデルは胸壁及び皮膚を3-0シルク縫合糸で閉じた。虚血再灌流傷害(I/R)モデルは、冠状動脈閉鎖の30分後に縫合糸を緩めることにより再灌流を行った。その後、胸壁及び皮膚は3-0シルク縫合糸で閉じた。
【0025】
2.モデルラットの処理方法
抗サリューシン-β抗体は合成ペプチド[Cys0]-サリューシン-β(1-18)を抗原として用いて家兎に免疫して得られた非特許文献1に記載したポリクローナル抗体を用いた。
【0026】
上記のラットを3つの群に分けた。
(1)MI群
手術の1日前及び28日後まで抗サリューシン-β抗体を毎日投与する群(10μl/日、腹腔内注射)
(2)I/R(7日)群
手術の1日前及び再灌流の7日後まで抗サリューシン-β抗体を毎日投与する群(10μl/日、腹腔内注射)
(3)I/R(24時間)群
手術の1日前及び再灌流の1日後まで抗サリューシン-β抗体を毎日投与する群(10μl/日、腹腔内注射)
【0027】
3.心エコー図の取得
超音波診断装置Nemio(東芝)を用いて、MIモデル群では手術の1及び4週後に、I/Rモデル群では再灌流の1、3及び7日後に心エコー図をとった。7MHzの経胸壁トランスデューサを用いた。乳頭筋レベルで短軸像における二次元モードで心臓をイメージングした。Mモード法によりAmerican Society for Echocardiography leading edge方法(Litwin SE et al., Circulation. 1994; 89: 345-354.)により、LV径(左室径)を測定した。LV end-diastolic dimension (LVDd)及び end-systolic dimension (LVDs)、及びfractional shortening(%FS= [(LVDd−LVDs) /LVDd]×100)はMモードによる記録から算出した。
【0028】
4.血圧および心拍数の計測
ラットの血圧と心拍数は、MIモデル群においては1週目及び4週目に、I/Rモデル群においては1、3及び7日目に測定した。血圧(収縮期、弛緩期、平均血圧)は、tail-cuffシステム(BP-98A、Softron社)を用いて測定した。
【0029】
5.虚血領域(area at risk:AAR)及び心筋梗塞域(infarct size)の測定
再灌流後1及び7日目に、麻酔をかけたラットに気管内挿管して開胸し心臓を露出した。左冠動脈前下行枝を再度きつく結紮し、エバンスブルー色素(2.0%溶液を1ml)を下大静脈を通して注入し、非虚血領域(area not at risk:ANAR)を決定した。次いで、心臓をスライスし、4つの切片とし、2.0%トリフェニル塩化テトラゾリウム(TTC)(シグマ社)により染色し、虚血心筋中の生存領域及び壊死領域を決定した(Vivaldi MT et al., Am J Pathol. 1985; 121: 522-530)。各切片の重量を測定し、写真をとった。さらに、梗塞領域(areas of infarction)、AAR及び全体の心室を、コンピュータ支援プラニメーター(Scion Image β4.02)を用いて評価した。各領域の面積(AREA)は以下の式で決定した。
AREA=(A1×Wt1)+(A2×Wt2)+(A3×Wt3)+(A4×Wt4)
ここで、Aはプラニメーターで測定した面積を示し、Wtは重量を示す。1〜4は、各セクションを示す(Onai Y et al., Cardiovasc Res. 2004; 63: 51-59)。
【0030】
6.免疫組織化学
サリューシン-β及び血管形成のためのCD31の局在を特定するために免疫組織化学を行った。再灌流した心筋の免疫組織化学を行うために、乳頭筋レベルでラット心臓をカットしOCTコンパウンド(Sakura Finetek)中で凍結した。カットした各セクション(5μm)は室温で2時間第1抗体とインキュベートし、次いでhistofine simple stain kit(ニチレイ)とインキュベートした。最後に、各セクションを、DABマトリックス溶液とともに5〜20分反応させた。この際、コントロールとしてPBSを用いた。さらに、同じラット心臓を用いて、免疫蛍光二重染色を行った(Kosuge H et al., Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2004; 24: 1409-1415)。
【0031】
7.ラットのI/Rモデル心臓中のプレプロサリューシン及びVEGF mRNAのリアルタイムRT-PCR
TRIzol試薬(Invitrogen)を用いて、各群のI/Rモデルラット心臓からトータルRNAを単離した。プレプロサリューシンのmRNA発現をリアルタイムPCRにより測定した。mRNA発現はGAPDHによって標準化した。
【0032】
8.線維芽細胞の中のMMP(Matrix metalloproteinase)、ケモカイン及びサリューシンのリアルタイムRT-PCR
ラット心臓から採取した心臓線維芽細胞を、10%ウシ胎児血清含有DMEM(GIBCO)中で増殖させた。心臓線維芽細胞は、以下の5群に分けた。
(i) 未処理群
(ii) 10μl/ウェルの抗サリューシン-β抗体処理(低用量)群
(iii) 40μl/ウェルの抗サリューシン-β抗体処理(高用量)群
(iv) 10μl/ウェルのノーマルウサギ血清処理(低用量)群
(v) 40μl/ウェルのノーマルウサギ血清処理(高用量)群
【0033】
細胞は、100ng/ml IL-1βを用いて刺激した。陰性コントロールとして、IL-1β非刺激群を設けた。
【0034】
また、ヒトTHP1細胞を、10%ウシ胎児血清含有RPMI-1640(GIBCO)中で増殖させた。TNFαによる刺激の72時間前にPMA(Phorbol myristic acid)を添加し、マクロファージへと分化させた。マクロファージは心臓線維芽細胞と同様に5群に分けた。細胞は、100ng/mlヒトTNFαを用いて刺激した。陰性コントロールとして、TNFα非刺激群を設けた。
【0035】
刺激の18時間後にトータルRNAを回収し、培養心臓線維芽細胞の各群からRNeasy Micro Kit(QIAGEN)を用いて単離した。トータルRNA濃度は、ND-1000(Nanodrop Technologies)を用いて測定した。その後、等量のトータルRNAを、High-capacity cDNA Reverse Transcription Kits(Applied Biosystems)を用いてcDNAに逆転写した。mRNA発現は、GAPDHを用いて標準化した。
【0036】
結果
1.抗サリューシン-β抗体処理による心筋梗塞(MI)後の心臓機能の改善
正常ラット心臓のMモード法による心エコーにより、壁の動きに異常のない良好な心室の収縮が認められた。MIモデルの媒体(vehicle)処理ラットの心臓においては、手術7及び28日後に、前側部のLV壁運動が著しく損なわれていた。しかしながら、図1に示すように、抗サリューシン-β抗体処理ラットのEF(Ejection Fraction:左室駆出率)の低下が抑制されており、このことは、抗サリューシン-β抗体処理ラットにおいて、媒体処理ラットに比べ、手術7及び28日後の心臓壁の運動が顕著に改善されたことを示す。I/Rモデル群では、抗サリューシン-β処理ラットと媒体処理ラットで統計的有意差は認められなかった。
【0037】
2.血圧と心拍数
MIモデル群において、手術7及び14日後において、抗サリューシン-β抗体処理群で媒体群より、平均血圧が改善された(図2)。I/Rモデル群においては、抗サリューシン-β抗体処理群と媒体群との間で心拍数及び平均血圧に顕著な差は認められなかった。
【0038】
3.虚血域(area at risk)
AAR/心臓全体、梗塞/AAR、梗塞/心臓全体の面積比は、1日目(図3A)及び7日目(図3B)において、抗サリューシン-β処理群と媒体処理群で差は認められなかった(図3)。
【0039】
4.心筋の免疫組織化学
免疫染色により、媒体処理群のラットの浸潤細胞中でサリューシン-βが認められた(図4A及び図4B)。図4は7日目のI/Rモデルラット群の心筋におけるサリューシン-βをターゲットとした染色結果を示し、図4Aは抗サリューシン-β処理ラットの結果を示す、図4Bは、媒体処理ラットの結果を示す。CD31の染色では、抗サリューシン-β抗体処理群でI/Rモデルラット群の心臓において、血管形成が認められた。血管の数、特に小血管の数は、抗サリューシン-β抗体処理群で顕著に増加していた(図5)。
【0040】
5.二重蛍光免疫組織化学
二重免疫蛍光実験において、サリューシン-β及びED1に対する抗血清をI/Rモデル群に対して用いた。サリューシン-βとED1の共存は、浸潤領域で観察された(図6)。図6AはDAPIを用いた核染色の結果、図6BはED1(マクロファージ)染色の結果、図6Cはサリューシン-β染色の結果を示す。図6Dはサリューシン-βとED1の二重染色の結果を示す。
【0041】
6.I/Rモデル群の心臓におけるプレプロサリューシンとVEGFの転写レベル
ラット心臓のプレプロサリューシンの量は検出限界以下であった。VEGFの量と血管形成との間には相関は認められなかった(図7)。
【0042】
7.線維芽細胞におけるMMP、ケモカイン及びサリューシンの転写レベル
リアルタイムのRT-PCRにより、インターロイキン(IL)-1βで刺激をしたが、抗サリューシン-β抗体で処理をしていない細胞において、MMP-9及びMMP-2 mRNAレベルは、未刺激、未処理群に比べ著しく促進された。一方、抗サリューシン-β処理と媒体処理群では、有意の差は認められなかった(図8A及び8B)。また、マクロファージにおいて、IL-8及びCCL2 mRNAレベルは著しい差が認められた(図8C及び8D)。サリューシン-βのmRNAレベルは引き続くtumor necrosis factor(TNF)αによる炎症性刺激により1.3倍増加した(図8E)。
【0043】
本実施例に示すように、抗サリューシン-β抗体処理により心筋梗塞の後の心臓機能が改善された。また、抗サリューシン-β抗体処理によりラットにおける心筋虚血再灌流傷害の進行中に血管形成が促進された。さらに、免疫組織化学により、サリューシン-βが血管形成を介して炎症の過程に関連していることが判明した。
【0044】
本実施例は、サリューシン-βが慢性期において血管形成を引き起こすことを示した。また、血管内皮に特異的なCD31の免疫組織化学を用いて血管の数を測定したところ、抗サリューシン-β抗体処理ラット心臓の血管の総数は、媒体処理ラットに比べ有意に増加した。さらに、直径が20μm未満及び20〜40μmの小血管の数は抗サリューシン-β抗体処理群で有意に増加した。一方、より大きな血管の数は、コントロール群と差は認められなかった。この結果は、抗サリューシン-β抗体処理はVEGFに関連しない経路を介して血管形成を促進したことを示唆し、サリューシン-βが虚血性ラット心臓の血管形成を抑制することを示す。抗サリューシン-β抗体が虚血イベントの間存在している場合、血管形成過程が刺激され、虚血再灌流傷害及び心筋梗塞の両方で保護効果を持ち得ることが示唆された。
【0045】
サリューシン-βは血管形成において重要な役割を有しているので、サリューシン-βの検出は、虚血性疾患の指標として利用することができる。
【0046】
以上のように、サリューシン-βは心筋梗塞の後及び血管形成の誘導を介しての虚血再灌流傷害の後の心臓リモデリングの抑制に関与する。過剰な心臓リモデリング及び虚血性ストレスは、通常、心筋梗塞又は虚血再灌流傷害を被った患者の生死を左右する。従って、心臓リモデリングを抑制し、血管形成を引き起こす、抗サリューシン-β抗体による治療は、心臓血管や他の炎症性の疾患の治療に適用できる可能性がある。
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗サリューシン-β抗体等サリューシン-βのアンタゴニストを含む、心筋虚血再灌流傷害抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
虚血再灌流(I/R)があると、患者はうっ血性心不全に罹患しやすくなる。I/Rに続く心臓機能の低下は筋細胞死と間質の線維化に関連して発生する。そして、それは心室リモデリングと呼ばれる。最近の研究により、炎症反応が心筋傷害と線維化を引き起こし、心臓機能の進行的な低下に発展する可能性が示された。血管形成の損傷を含む微小血管の異常が心筋梗塞や梗塞後リモデリングなどの心臓病の病気の発生に関与していることはよく知られている。慢性の虚血性疾患における側副循環を構築するために血管形成を促進することが非常に重要である。
【0003】
七里他は、サリューシン-α及びサリューシン-βと呼ばれる、28及び20アミノ酸からなる2つの関連ペプチドを同定した(非特許文献1を参照)。サリューシン-βは強力な血行動態制御作用による心筋収縮能の低下を惹起する(非特許文献1及び2を参照)。さらに、サリューシン-α及びサリューシン-βは血管平滑筋細胞(VSMCs)と線維芽細胞の増殖を刺激し(非特許文献1を参照)、心筋細胞の肥大を促進し、細胞死を抑制する(非特許文献3を参照)ことが示された。また、サリューシン-βは、冠状動脈のアテローム性動脈硬化症におけるマクロファージ泡沫化細胞の形成を促進する(非特許文献4を参照)。
【0004】
しかしながら、サリューシンが心筋再灌流傷害に関与するかどうかは知られていなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Shichiri M et al, Nat Med. 2003; 9: 1166-1172.
【非特許文献2】Izumiyama H et al., Hypertension. 2005; 45: 419-425.
【非特許文献3】Yu F et al., Regul. Pept. 2004; 122: 191-7.
【非特許文献4】Watanabe T et al., Circulation. 2008; 117: 638-48.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、心筋虚血再灌流傷害を改善するための医薬組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、サリューシン-βについての研究の過程において、サリューシン-βが虚血再灌流(I/R)傷害後の心室リモデリングに関与していることを見出した。本発明者は、ラット心筋梗塞モデル、虚血再灌流モデルに抗サリューシン-β抗体を投与し、サリューシン-βの作用を抑制することにより、心筋梗塞の後の心臓機能が改善され、心筋虚血再灌流傷害が抑制されることを見出した。さらに、本発明者は、抗サリューシン-β抗体が、心筋梗塞又は虚血再灌流後の心室リモデリングを抑制することを見出し本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] サリューシン-βのアンタゴニストを有効成分として含む心筋虚血再灌流傷害治療剤。
[2] サリューシン-βのアンタゴニストが抗サリューシン-β抗体である、[1]の心筋虚血再灌流傷害治療剤。
[3] 心筋虚血再灌流中又は心筋虚血再灌流に投与するための、[1]又は[2]の心筋虚血再灌流傷害治療剤。
[4] サリューシン-βのアンタゴニストを有効成分として含む心筋梗塞又は虚血再灌流後の心室リモデリング抑制剤。
[5] サリューシン-βのアンタゴニストが抗サリューシン-β抗体である、[4]の心筋梗塞又は虚血再灌流後の心室リモデリング抑制剤。
【発明の効果】
【0009】
実施例に記載のように、本発明の医薬組成物は、心筋虚血再灌流による心筋の傷害を抑制し、さらに、心筋梗塞又は虚血再灌流後の心室リモデリングを抑制する。本発明の医薬組成物により、心筋の虚血再灌流傷害を有効に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】MIモデルラット心臓の心エコー図を示す図である。
【図2】MIモデルラット心臓の血圧を示す図である。
【図3A】I/Rモデルラット心臓における虚血域(area at risk)を示す図である(1日目)。
【図3B】I/Rモデルラット心臓における虚血域(area at risk)を示す図である(7日目)。
【図4】I/Rモデルラット心筋のサリューシン-βの免疫化学染色の結果を示す図である。図4Aは、抗サリューシン-β抗体処理した場合の結果を示し、図4Bは媒体処理した場合の結果を示す。
【図5】I/Rモデルラット心筋のCD31の免疫化学染色の結果を示す図である。
【図6】二重蛍光免疫組織染色の結果を示す図である。
【図7】I/Rモデル群の心臓におけるプレプロサリューシンとVEGFの転写レベルを示す図である。
【図8A】線維芽細胞中のMMP-9の発現レベルを示す図である。
【図8B】線維芽細胞中のMMP-2の発現レベルを示す図である。
【図8C】マクロファージ中のIL-8の発現レベルを示す図である。
【図8D】マクロファージ中のCCL2の発現レベルを示す図である。
【図8E】マクロファージ中のサリューシン-βの発現レベルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
サリューシン-βは、20残基のアミノ酸からなるペプチドである(配列番号1)。242アミノ酸からなるプレプロサリューシン(配列番号2)からプロセシングによりサリューシン-α及びサリューシン-βが生じる。該プレプロサリューシンのN末端の26アミノ酸からなるシグナル配列が削除されて216アミノ酸からなるプロサリューシンが生じ、さらにプロサリューシンのC末端側からサリューシン-α及びサリューシン-βが生じる。
【0012】
本発明において、サリューシン-βのアンタゴニストとは中和抗体や受容体拮抗剤の如くサリューシン-β又はサリューシン-βの受容体に結合し、生体においてサリューシン-βの作用を抑制するあらゆる化合物を含む。
【0013】
サリューシン-βのアンタゴニストとしては、サリューシン-βの作用を抑制するあらゆる化合物が含まれるが、例えば、アンタゴニスティックな活性を有する抗サリューシン-β抗体、サリューシン-βの中和活性を有する抗サリューシン-β抗体が挙げられる。
【0014】
抗サリューシン-β抗体は、公知の方法により、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体として得ることができ、モノクローナル抗体が好ましい。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマに産生されるもの、及び遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生されるものを含む。モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、公知の手法により、以下のようにして作製できる。すなわち、サリューシン-β又はその断片ペプチドを感作抗原として用いて、公知の免疫方法により免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、公知のスクリーニング法により、モノクローナル抗体を産生する細胞をスクリーニングすることによって作製することができる。サリューシン-βを免疫する際、ウシ血清アルブミン(BSA)、キーホールリンペットヘモシアニン等のキャリアタンパク質と結合させて用いてもよい。モノクローナル抗体としては、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型のものを用いることができる(例えば、Vandamme, A. M. et al., Eur. J. Biochem. 1990;192:767-775.参照)。この際、抗体重鎖(H鎖)又は軽鎖(L鎖)をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を同時形質転換させてもよいし、あるいはH鎖及びL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換させてもよい(WO 94/11523 号公報参照)。また、トランスジェニック動物を使用することにより、組換え型抗体を産生することもできる。例えば、抗体遺伝子を、乳汁中に固有に産生されるタンパク質(ヤギβカゼインなど)をコードする遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギ又はその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得ることができる(Ebert, K.M. et al., Bio/Technology 1994;12:699-702)。
【0015】
本発明の抗サリューシン-β抗体は、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ抗体、ヒト型化(Humanized)抗体をも含む。このような抗体としてはキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体が挙げられ、いずれも公知の方法を用いて製造することができる。キメラ抗体は、得られた抗体V領域をコードするDNAを得て、ヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる。ヒト型化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体ともいう。ヒト型化抗体は、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR; complementarity determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、公知の方法により作製することができる(欧州特許出願公開番号EP 125023号公報、WO 96/02576 号公報参照)。キメラ抗体及びヒト型化抗体のC領域には、ヒト抗体のものが使用され、例えばH鎖では、Cγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4を、L鎖ではCκ、Cλを使用することができる。また、抗体又はその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体C領域を修飾してもよい。
【0016】
ヒト抗体は、例えばヒト抗体遺伝子座を導入し、ヒト由来抗体を産生する能力を有するトランスジェニック動物に抗原を投与することにより得ることができる。該トランスジェニック動物としてマウスが挙げられ、ヒト抗体を産生し得るマウスの作出方法は、例えば、国際公開第WO02/43478号パンフレットに記載されている。
【0017】
本発明の抗サリューシン-β抗体は、完全抗体だけでなく、その機能的断片も含む。抗体の機能的断片とは、抗体の一部分(部分断片)であって、抗体の抗原への作用を1つ以上保持するものを意味し、具体的にはF(ab')2、Fab'、Fab、Fv、ジスルフィド結合Fv、一本鎖Fv(scFv)、及びこれらの重合体等が挙げられる[D.J.King., Applications and Engineering of Monoclonal Antibodies., 1998 T.J.International Ltd]。
【0018】
得られた抗体が、サリューシン-βに対してアンタゴニスト活性を有するか否かは、例えば、抗体をサリューシン-βに結合させ、サリューシン-βの活性が抑制されるか否かを検定することにより、決定することができる。
【0019】
サリューシン-βに対するアンタゴニスティック活性を有する化合物は、心筋梗塞、狭心症等の虚血性心疾患の虚血部位における血管新生作用を有しており、医薬組成物として用いることができる。例えば、心筋梗塞、狭心症等の虚血性心疾患の予防又は治療剤として用いることができる。また、前記化合物は心筋梗塞又は虚血再灌流後の心室リモデリング(例えば、左心室リモデリング)を制御して治療することができる。すなわち、前記化合物は虚血再灌流傷害の治療又は予防剤として用いることができる。例えば、心筋梗塞、狭心症等の虚血性心疾患の処置において、虚血再灌流傷害後の心機能の回復に必要とされる新生血管を促して、心機能の回復を促進することができる。
【0020】
ここで、心室リモデリングとは、心筋梗塞によって引き起こされた心室形態の変化が梗塞を起こした領域だけではなく、梗塞を起こしていない領域にも波及することをいう。また、虚血再灌流傷害といは、例えば、心臓の手術において、心臓及びその周辺の血流を停止し、再度血液を流した際(再灌流時)に血管内皮細胞及び心筋に生じる傷害をいう。
【0021】
投与量は、症状、年齢、体重などによって異なるが、通常、経口投与では、成人に対して、1日約0.01mg〜1000mgであり、これらを1回、又は数回に分けて投与することができる。また、非経口投与では、1回約0.01mg〜1000mgを皮下注射、筋肉注射又は静脈注射によって投与することができる。また、投与時期としては、虚血再灌流中又は虚血再灌流後が挙げられる。すなわち、サリューシン-βに対するアンタゴニスティック活性を有する化合物は、虚血再灌流時の虚血心に対して用いることができる。さらに、急性心筋梗塞の患者に、または急性心筋梗塞の危険がある患者に投与することができ、心筋梗塞の臨床症状が生ずる前後に投与すればよい。
【0022】
本発明の医薬組成物は、種々の形態で投与することができ、それらの投与形態としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等による経口投与、又は、注射剤、点滴剤、坐薬等による非経口投与を挙げることができる。
【0023】
サリューシン-βに対するアンタゴニスティック活性を有する化合物を含む医薬組成物は、常法にしたがって製剤化することができ(Remington's Pharmaceutical Science, latest edition, Mark Publishing Company, Easton,米国)、医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。このような担体及び医薬添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤等が挙げられる。実際の添加物は、本発明の医薬組成物の剤型に応じて上記の中から単独で又は適宜組み合わせて選ばれるが、もちろんこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0024】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
方法
1.ラット心筋梗塞(MI)モデルと虚血再灌流傷害(I/R)モデルの作成
8〜10週齢の雄Sprague-Dawleyラット(7週齢時に300〜400g)はCLEA Japanより入手した。該ラットを40mg/kgのペントバルビタールナトリウムで麻酔し、ポリエチレンチューブを用いて口から人工呼吸を行った。左冠状動脈前下行枝を顕微観察し、6-0シルク縫合糸で結紮した。心筋虚血は心外膜のチアノーゼおよび心室壁の収縮低下で確認した。心筋梗塞(MI)モデルは胸壁及び皮膚を3-0シルク縫合糸で閉じた。虚血再灌流傷害(I/R)モデルは、冠状動脈閉鎖の30分後に縫合糸を緩めることにより再灌流を行った。その後、胸壁及び皮膚は3-0シルク縫合糸で閉じた。
【0025】
2.モデルラットの処理方法
抗サリューシン-β抗体は合成ペプチド[Cys0]-サリューシン-β(1-18)を抗原として用いて家兎に免疫して得られた非特許文献1に記載したポリクローナル抗体を用いた。
【0026】
上記のラットを3つの群に分けた。
(1)MI群
手術の1日前及び28日後まで抗サリューシン-β抗体を毎日投与する群(10μl/日、腹腔内注射)
(2)I/R(7日)群
手術の1日前及び再灌流の7日後まで抗サリューシン-β抗体を毎日投与する群(10μl/日、腹腔内注射)
(3)I/R(24時間)群
手術の1日前及び再灌流の1日後まで抗サリューシン-β抗体を毎日投与する群(10μl/日、腹腔内注射)
【0027】
3.心エコー図の取得
超音波診断装置Nemio(東芝)を用いて、MIモデル群では手術の1及び4週後に、I/Rモデル群では再灌流の1、3及び7日後に心エコー図をとった。7MHzの経胸壁トランスデューサを用いた。乳頭筋レベルで短軸像における二次元モードで心臓をイメージングした。Mモード法によりAmerican Society for Echocardiography leading edge方法(Litwin SE et al., Circulation. 1994; 89: 345-354.)により、LV径(左室径)を測定した。LV end-diastolic dimension (LVDd)及び end-systolic dimension (LVDs)、及びfractional shortening(%FS= [(LVDd−LVDs) /LVDd]×100)はMモードによる記録から算出した。
【0028】
4.血圧および心拍数の計測
ラットの血圧と心拍数は、MIモデル群においては1週目及び4週目に、I/Rモデル群においては1、3及び7日目に測定した。血圧(収縮期、弛緩期、平均血圧)は、tail-cuffシステム(BP-98A、Softron社)を用いて測定した。
【0029】
5.虚血領域(area at risk:AAR)及び心筋梗塞域(infarct size)の測定
再灌流後1及び7日目に、麻酔をかけたラットに気管内挿管して開胸し心臓を露出した。左冠動脈前下行枝を再度きつく結紮し、エバンスブルー色素(2.0%溶液を1ml)を下大静脈を通して注入し、非虚血領域(area not at risk:ANAR)を決定した。次いで、心臓をスライスし、4つの切片とし、2.0%トリフェニル塩化テトラゾリウム(TTC)(シグマ社)により染色し、虚血心筋中の生存領域及び壊死領域を決定した(Vivaldi MT et al., Am J Pathol. 1985; 121: 522-530)。各切片の重量を測定し、写真をとった。さらに、梗塞領域(areas of infarction)、AAR及び全体の心室を、コンピュータ支援プラニメーター(Scion Image β4.02)を用いて評価した。各領域の面積(AREA)は以下の式で決定した。
AREA=(A1×Wt1)+(A2×Wt2)+(A3×Wt3)+(A4×Wt4)
ここで、Aはプラニメーターで測定した面積を示し、Wtは重量を示す。1〜4は、各セクションを示す(Onai Y et al., Cardiovasc Res. 2004; 63: 51-59)。
【0030】
6.免疫組織化学
サリューシン-β及び血管形成のためのCD31の局在を特定するために免疫組織化学を行った。再灌流した心筋の免疫組織化学を行うために、乳頭筋レベルでラット心臓をカットしOCTコンパウンド(Sakura Finetek)中で凍結した。カットした各セクション(5μm)は室温で2時間第1抗体とインキュベートし、次いでhistofine simple stain kit(ニチレイ)とインキュベートした。最後に、各セクションを、DABマトリックス溶液とともに5〜20分反応させた。この際、コントロールとしてPBSを用いた。さらに、同じラット心臓を用いて、免疫蛍光二重染色を行った(Kosuge H et al., Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2004; 24: 1409-1415)。
【0031】
7.ラットのI/Rモデル心臓中のプレプロサリューシン及びVEGF mRNAのリアルタイムRT-PCR
TRIzol試薬(Invitrogen)を用いて、各群のI/Rモデルラット心臓からトータルRNAを単離した。プレプロサリューシンのmRNA発現をリアルタイムPCRにより測定した。mRNA発現はGAPDHによって標準化した。
【0032】
8.線維芽細胞の中のMMP(Matrix metalloproteinase)、ケモカイン及びサリューシンのリアルタイムRT-PCR
ラット心臓から採取した心臓線維芽細胞を、10%ウシ胎児血清含有DMEM(GIBCO)中で増殖させた。心臓線維芽細胞は、以下の5群に分けた。
(i) 未処理群
(ii) 10μl/ウェルの抗サリューシン-β抗体処理(低用量)群
(iii) 40μl/ウェルの抗サリューシン-β抗体処理(高用量)群
(iv) 10μl/ウェルのノーマルウサギ血清処理(低用量)群
(v) 40μl/ウェルのノーマルウサギ血清処理(高用量)群
【0033】
細胞は、100ng/ml IL-1βを用いて刺激した。陰性コントロールとして、IL-1β非刺激群を設けた。
【0034】
また、ヒトTHP1細胞を、10%ウシ胎児血清含有RPMI-1640(GIBCO)中で増殖させた。TNFαによる刺激の72時間前にPMA(Phorbol myristic acid)を添加し、マクロファージへと分化させた。マクロファージは心臓線維芽細胞と同様に5群に分けた。細胞は、100ng/mlヒトTNFαを用いて刺激した。陰性コントロールとして、TNFα非刺激群を設けた。
【0035】
刺激の18時間後にトータルRNAを回収し、培養心臓線維芽細胞の各群からRNeasy Micro Kit(QIAGEN)を用いて単離した。トータルRNA濃度は、ND-1000(Nanodrop Technologies)を用いて測定した。その後、等量のトータルRNAを、High-capacity cDNA Reverse Transcription Kits(Applied Biosystems)を用いてcDNAに逆転写した。mRNA発現は、GAPDHを用いて標準化した。
【0036】
結果
1.抗サリューシン-β抗体処理による心筋梗塞(MI)後の心臓機能の改善
正常ラット心臓のMモード法による心エコーにより、壁の動きに異常のない良好な心室の収縮が認められた。MIモデルの媒体(vehicle)処理ラットの心臓においては、手術7及び28日後に、前側部のLV壁運動が著しく損なわれていた。しかしながら、図1に示すように、抗サリューシン-β抗体処理ラットのEF(Ejection Fraction:左室駆出率)の低下が抑制されており、このことは、抗サリューシン-β抗体処理ラットにおいて、媒体処理ラットに比べ、手術7及び28日後の心臓壁の運動が顕著に改善されたことを示す。I/Rモデル群では、抗サリューシン-β処理ラットと媒体処理ラットで統計的有意差は認められなかった。
【0037】
2.血圧と心拍数
MIモデル群において、手術7及び14日後において、抗サリューシン-β抗体処理群で媒体群より、平均血圧が改善された(図2)。I/Rモデル群においては、抗サリューシン-β抗体処理群と媒体群との間で心拍数及び平均血圧に顕著な差は認められなかった。
【0038】
3.虚血域(area at risk)
AAR/心臓全体、梗塞/AAR、梗塞/心臓全体の面積比は、1日目(図3A)及び7日目(図3B)において、抗サリューシン-β処理群と媒体処理群で差は認められなかった(図3)。
【0039】
4.心筋の免疫組織化学
免疫染色により、媒体処理群のラットの浸潤細胞中でサリューシン-βが認められた(図4A及び図4B)。図4は7日目のI/Rモデルラット群の心筋におけるサリューシン-βをターゲットとした染色結果を示し、図4Aは抗サリューシン-β処理ラットの結果を示す、図4Bは、媒体処理ラットの結果を示す。CD31の染色では、抗サリューシン-β抗体処理群でI/Rモデルラット群の心臓において、血管形成が認められた。血管の数、特に小血管の数は、抗サリューシン-β抗体処理群で顕著に増加していた(図5)。
【0040】
5.二重蛍光免疫組織化学
二重免疫蛍光実験において、サリューシン-β及びED1に対する抗血清をI/Rモデル群に対して用いた。サリューシン-βとED1の共存は、浸潤領域で観察された(図6)。図6AはDAPIを用いた核染色の結果、図6BはED1(マクロファージ)染色の結果、図6Cはサリューシン-β染色の結果を示す。図6Dはサリューシン-βとED1の二重染色の結果を示す。
【0041】
6.I/Rモデル群の心臓におけるプレプロサリューシンとVEGFの転写レベル
ラット心臓のプレプロサリューシンの量は検出限界以下であった。VEGFの量と血管形成との間には相関は認められなかった(図7)。
【0042】
7.線維芽細胞におけるMMP、ケモカイン及びサリューシンの転写レベル
リアルタイムのRT-PCRにより、インターロイキン(IL)-1βで刺激をしたが、抗サリューシン-β抗体で処理をしていない細胞において、MMP-9及びMMP-2 mRNAレベルは、未刺激、未処理群に比べ著しく促進された。一方、抗サリューシン-β処理と媒体処理群では、有意の差は認められなかった(図8A及び8B)。また、マクロファージにおいて、IL-8及びCCL2 mRNAレベルは著しい差が認められた(図8C及び8D)。サリューシン-βのmRNAレベルは引き続くtumor necrosis factor(TNF)αによる炎症性刺激により1.3倍増加した(図8E)。
【0043】
本実施例に示すように、抗サリューシン-β抗体処理により心筋梗塞の後の心臓機能が改善された。また、抗サリューシン-β抗体処理によりラットにおける心筋虚血再灌流傷害の進行中に血管形成が促進された。さらに、免疫組織化学により、サリューシン-βが血管形成を介して炎症の過程に関連していることが判明した。
【0044】
本実施例は、サリューシン-βが慢性期において血管形成を引き起こすことを示した。また、血管内皮に特異的なCD31の免疫組織化学を用いて血管の数を測定したところ、抗サリューシン-β抗体処理ラット心臓の血管の総数は、媒体処理ラットに比べ有意に増加した。さらに、直径が20μm未満及び20〜40μmの小血管の数は抗サリューシン-β抗体処理群で有意に増加した。一方、より大きな血管の数は、コントロール群と差は認められなかった。この結果は、抗サリューシン-β抗体処理はVEGFに関連しない経路を介して血管形成を促進したことを示唆し、サリューシン-βが虚血性ラット心臓の血管形成を抑制することを示す。抗サリューシン-β抗体が虚血イベントの間存在している場合、血管形成過程が刺激され、虚血再灌流傷害及び心筋梗塞の両方で保護効果を持ち得ることが示唆された。
【0045】
サリューシン-βは血管形成において重要な役割を有しているので、サリューシン-βの検出は、虚血性疾患の指標として利用することができる。
【0046】
以上のように、サリューシン-βは心筋梗塞の後及び血管形成の誘導を介しての虚血再灌流傷害の後の心臓リモデリングの抑制に関与する。過剰な心臓リモデリング及び虚血性ストレスは、通常、心筋梗塞又は虚血再灌流傷害を被った患者の生死を左右する。従って、心臓リモデリングを抑制し、血管形成を引き起こす、抗サリューシン-β抗体による治療は、心臓血管や他の炎症性の疾患の治療に適用できる可能性がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サリューシン-βのアンタゴニストを有効成分として含む心筋虚血再灌流傷害治療剤。
【請求項2】
サリューシン-βのアンタゴニストが抗サリューシン-β抗体である、請求項1記載の心筋虚血再灌流傷害治療剤。
【請求項3】
心筋虚血再灌流中又は心筋虚血再灌流に投与するための、請求項1又は2に記載の心筋虚血再灌流傷害治療剤。
【請求項4】
サリューシン-βのアンタゴニストを有効成分として含む心筋梗塞又は虚血再灌流後の心室リモデリング制御剤。
【請求項5】
サリューシン-βのアンタゴニストが抗サリューシン-β抗体である、請求項4記載の心筋梗塞又は虚血再灌流後の心室リモデリング制御剤。
【請求項1】
サリューシン-βのアンタゴニストを有効成分として含む心筋虚血再灌流傷害治療剤。
【請求項2】
サリューシン-βのアンタゴニストが抗サリューシン-β抗体である、請求項1記載の心筋虚血再灌流傷害治療剤。
【請求項3】
心筋虚血再灌流中又は心筋虚血再灌流に投与するための、請求項1又は2に記載の心筋虚血再灌流傷害治療剤。
【請求項4】
サリューシン-βのアンタゴニストを有効成分として含む心筋梗塞又は虚血再灌流後の心室リモデリング制御剤。
【請求項5】
サリューシン-βのアンタゴニストが抗サリューシン-β抗体である、請求項4記載の心筋梗塞又は虚血再灌流後の心室リモデリング制御剤。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【公開番号】特開2010−215565(P2010−215565A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64588(P2009−64588)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 刊行物名:Official Journal of the Japanese Circulation Society Circulation Journal 号数 :Vol.73 Supplement I 発行日 :平成21年3月1日 発行者 :社団法人日本循環器学会 該当ページ:第176ページ 公開者 :Jun−ichi Suzuki,Mayumi masumura,Masahiro Ogawa,Masayoshi Shichiri,Mitsuaki Isobe 発明の内容:講演番号OE−011 Neutralization of Endogenous Salusin−beta Suppresses Myocardial Remodeling after Infarction and Ischemia Reperfusion Injury
【出願人】(500546994)株式会社プロテイン・エクスプレス (5)
【出願人】(504179255)国立大学法人 東京医科歯科大学 (228)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 刊行物名:Official Journal of the Japanese Circulation Society Circulation Journal 号数 :Vol.73 Supplement I 発行日 :平成21年3月1日 発行者 :社団法人日本循環器学会 該当ページ:第176ページ 公開者 :Jun−ichi Suzuki,Mayumi masumura,Masahiro Ogawa,Masayoshi Shichiri,Mitsuaki Isobe 発明の内容:講演番号OE−011 Neutralization of Endogenous Salusin−beta Suppresses Myocardial Remodeling after Infarction and Ischemia Reperfusion Injury
【出願人】(500546994)株式会社プロテイン・エクスプレス (5)
【出願人】(504179255)国立大学法人 東京医科歯科大学 (228)
【Fターム(参考)】
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