説明

サンドイッチイムノアッセイ法

【課題】高感度で抗原を検出及び定量できるサンドイッチイムノアッセイ法を提供することを目的とする。
【解決手段】(a)抗原と、前記抗原を認識し検出可能な標識物質で標識された第1抗体とを接触させて、抗原−第1抗体からなる複合体を形成する工程と、
(b)前記抗原を認識し固相に結合可能な第2抗体を用いて、前記工程(a)で形成した複合体を固相に固定化する工程と
を含むことを特徴とするサンドイッチイムノアッセイ法により、上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体試料中に少量しか存在しない抗原であっても、高感度に検出及び定量できるサンドイッチイムノアッセイ法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料中の物質(抗原)を検出及び定量する方法として、抗原上の重複していないエピトープに対する2つの異なる抗体で抗原を挟み込むようにして抗原を検出する、サンドイッチ法が知られている。サンドイッチ法では、通常、固相に結合した一次抗体に抗原を結合させて、抗原と一次抗体との複合体を固相上に形成した後に、検出可能な標識物質で標識された二次抗体を固相上の抗原に結合させて、抗原を検出することが行われる。
【0003】
例えば、特開昭63−63859号(特許文献1)は、抗体が結合した固相にTSHを含む検体を作用させ、さらに酵素標識抗体を作用させることによるサンドイッチエンザイムイムノアッセイ法を用いた、TSHの測定法を開示している。
すなわち、特許文献1では、固相に結合した抗体を用いて抗原を固相に固定化した後に、酵素標識抗体を作用させて該抗原を検出する、従来のサンドイッチ法が開示されている。
【特許文献1】特開昭63−63859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のサンドイッチ法では、測定に使用する抗体の抗原に対する親和性があまり高くない場合や、検体中に抗原が少量しか存在しない場合、高感度の測定を行うことが難しいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明者らは、抗原に対する親和性があまり高くない抗体を用いる場合であっても、また、検体中に少量しか存在しない抗原を測定する場合であっても、高感度で抗原を検出及び定量できるサンドイッチイムノアッセイ法を開発するために鋭意研究を重ねた。その結果、固相に結合したか又は固相に結合可能な抗体と抗原とを先に反応させて、抗原を固相に固定化してから検出可能な物質で標識された抗体を抗原と結合させていた従来のサンドイッチ法の反応順序とは逆に、抗原と検出可能な標識物質で標識された抗体とを先に反応させて抗原−標識抗体複合体を形成したあとに、該複合体を固相に固定化することにより、上記の問題を解決して、抗原を高感度に検出及び定量できるサンドイッチイムノアッセイ法を得ることができることを見出して、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
よって、本発明は、
(a)抗原と、前記抗原を認識し、検出可能な標識物質で標識された第1抗体とを接触させて、抗原−第1抗体からなる複合体を形成する工程と、
(b)前記抗原を認識し固相に結合可能な第2抗体を用いて、前記工程(a)で形成した複合体を固相に固定化する工程と
を含むことを特徴とするサンドイッチイムノアッセイ法を提供する。
【0007】
本明細書において、「サンドイッチイムノアッセイ法」とは、固相上の抗体と標識物質で標識した抗体との2種類の抗体により、抗原を検出及び定量する方法を意味する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のサンドイッチイムノアッセイ法を用いることにより、抗原に対する親和性があまり高くない抗体を用いる場合や、検体中の存在量が少ない抗原を測定する場合でも、高感度で抗原を検出及び定量できる。さらに、短い測定時間であっても、高感度で測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のサンドイッチイムノアッセイ法は、(a)抗原と、該抗原を認識し、検出可能な標識物質で標識された第1抗体とを接触させて、抗原−第1抗体からなる複合体を形成する工程を含む。
【0010】
上記の抗原は、検出及び/又は定量することを目的とする物質であれば特に限定されないが、甲状腺刺激ホルモン(TSH)であることが好ましい。
バセドウ病のような甲状腺疾患の診断は、血液試料中のTSH量が低下しているかを調べることにより行われる。しかし、TSHは、健康な人の血液中であってもその存在量が少ないうえに、これらの疾患の診断においてはその量が低下したことを検出する必要がある。そのため、本発明のサンドイッチイムノアッセイ法を用いることにより、高感度にTSHを測定することができる。
【0011】
上記の抗原は、検体試料に含まれているものであってもよい。該検体試料は、サンドイッチイムノアッセイ法を阻害しないものであれば特に限定されない。例えば、抗原としてTSHを含む検体試料としては、血液(全血、血漿、血清を含む)が考えられる。
【0012】
上記の抗原を認識する第1抗体は、モノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよいが、モノクローナル抗体が好ましい。抗体のクラスは、IgG、IgMなど当該技術において通常用いられるクラスの抗体を用いることができる。また、該抗体は、抗原を認識できるのであれば抗体のフラグメント及びその誘導体も含む。抗体のフラグメントとしては、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント、sFvフラグメントなどが挙げられる。
【0013】
例えば、抗原がTSHの場合、第1抗体としては、抗TSHモノクローナル抗体であるAnti-TSH 5409(Medix Biochemica社製)が挙げられる。Anti-TSH 5409は、特異性や保存安定性に優れるが、TSHに対する親和性があまり高くない。従って、Anti-TSH 5409を用いて、従来のサンドイッチイムノアッセイ法を行った場合、高感度にTSHを検出及び/又は定量することが難しい。しかし、本発明のサンドイッチイムノアッセイ法を用いれば、高感度にTSHを検出及び/又は定量することができる。
【0014】
上記の第1抗体は、当該技術において公知の方法により得ることができる。すなわち、検出及び/又は定量される抗原でウマ、ウシ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、ラット、マウスなどの哺乳動物を免疫し、免疫された動物から血清を採取して抗体を精製する方法が知られている。また、免疫されたマウスから採取した抗体産生細胞を、例えばマウスの腫瘍細胞と融合させて得られたハイブリドーマから抗体を得る方法も知られている。
【0015】
上記の第1抗体は、検出可能な標識物質で標識されている。該標識物質は、通常の免疫測定法において用い得る標識物質であれば特に限定されず、酵素、蛍光物質、放射性同位元素などが挙げられる。酵素としては、例えばアルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、チロシナーゼ、酸性ホスファターゼなどが挙げられる。蛍光物質としては、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、グリーン蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェリンなどが挙げられる。放射性同位元素としては、125I、14C、32Pなどが挙げられる。
【0016】
上記の抗体を上記の標識物質で標識する方法としては、当該分野で通常用いられている方法であれば特に限定されない。例えば、抗体中のチオール(−SH基)を用いて上記の標識物質を抗体と結合させる方法が知られている。具体的には、チオール基と反応できる官能基、例えばマレイミド基を導入した上記の標識物質を、上記の抗体と反応させることにより、上記の抗体を標識物質で標識できる。
【0017】
本発明のサンドイッチイムノアッセイ法は、上記の工程(a)に加えて、(b)上記の抗原を認識し固相に結合可能な第2抗体を用いて、工程(a)で形成した複合体を固相に固定化する工程を含む。すなわち、抗原は、該第2抗体よりも上記の第1抗体と先に反応して、抗原−第1抗体からなる複合体を形成する。
このような順序で反応を行うことにより、検体中に微量でしか存在しない抗原であっても、高感度で検出を行うことができる。また、第1抗体と抗原との親和性が低い場合であっても、第1抗体と抗原との反応時間を長くすることができるので、第1抗体と抗原との結合を充分なものとすることができる。
【0018】
上記の抗原を認識し固相に結合可能な第2抗体は、第1抗体とは違う部位(エピトープ)で抗原を認識できる抗体である。
上記の第1抗体について述べたことと同様に、第2抗体も、モノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよいが、モノクローナル抗体が好ましい。抗体のクラスは、IgG、IgMなど当該技術において通常用いられるクラスの抗体を用いることができる。また、該抗体は、抗原を認識できるのであれば抗体のフラグメント及びその誘導体も含む。抗体のフラグメントとしては、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント、sFvフラグメントなどが挙げられる。
第2抗体を得る方法も、上記の第1抗体について述べたことと同様である。
【0019】
ここで、抗原がTSHの場合、第2抗体としては、NITE AP−399で寄託されているハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体が好ましい。該ハイブリドーマは、受領番号NITE AP−399で、2007年8月21日に、独立行政法人産業技術総合研究所製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに受領され、TSHで免疫したBALB/Cマウスの脾臓細胞と、マウスミエローマ細胞(P3-X63-Ag8-653)とを融合させて得られたものである。
【0020】
上記の第2抗体は、固相に結合可能である。該第2抗体と固相との間の結合は、該第2抗体に付加された固相結合部位と、固相に結合された結合物質との間の結合によるものである。
上記の固相結合部位と結合物質とは、上記のサンドイッチイムノアッセイ法が行われる条件下で特異的に結合できる物質の組み合わせであれば特に限定されない。これらの組み合わせとしては、例えばビオチンとアビジン又はストレプトアビジン、ハプテンと抗ハプテン抗体、ニッケルとヒスチジンタグ、グルタチオンとグルタチオン−S−トランスフェラーゼなどが挙げられる。ハプテンと抗ハプテン抗体としては、例えばジニトロフェノール(DNP)と抗DNP抗体が挙げられる。
【0021】
上記の第2抗体と固相との結合は、ビオチン−アビジン結合又はビオチン−ストレプトアビジン結合によるものが好ましい。よって、固相結合部位と結合物質の組み合わせは、ビオチンとアビジン又はストレプトアビジンとの組み合わせが好ましい。
上記の固相結合部位と結合物質との組み合わせの物質の各々は、どちらが第2抗体に付加されてもよく、特に限定されないことが当業者に理解される。好ましくは、固相結合部位がビオチンを含み、結合物質がアビジン又はストレプトアビジンである。
【0022】
上記の固相結合部位を付加して固相に結合可能な第2抗体を得る方法は、当該分野において公知である。例えば、抗体中の一級アミノ基(−NH2基)やチオール基などと反応性を有する基を介して固相結合物質を抗体に付加することができる。一級アミノ基と反応性を有する基としては、スクシンイミド基(NHS基)などが挙げられる。チオール基と反応性を有する基としては、マレイミド基などが挙げられる。
【0023】
上記の固相の材料は、免疫測定に用いられる通常の固相の材料であれば特に限定されない。例えば、ラテックス、ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、ポリメタクリレート、スチレン−メタクリレート共重合体、ポリグリシジルメタクリレート、アクロレイン−エチレングリコールジメタクリレート共重合体、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、シリコーンなどのポリマー材料;アガロース;ゼラチン;赤血球;シリカゲル、ガラス、不活性アルミナ、磁性体などの無機材料などが挙げられる。これらの1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0024】
また、固相の形状としては、免疫測定に用いられる通常の固相の形状であれば特に限定されず、マイクロタイタープレート、試験管、ビーズ、粒子、ナノ粒子などが挙げられる。粒子としては、磁性粒子、ポリスチレンラテックスのような疎水性粒子、粒子表面にアミノ基、カルボキシル基などの親水基を有する共重合ラテックス粒子、赤血球、ゼラチン粒子などが挙げられる。
【0025】
より好ましくは、上記の固相は、磁性粒子である。該磁性粒子は、磁性を有する材料を基材として含む粒子である。このような磁性粒子は当該技術において公知であり、基材として例えばFe23及び/又はFe34、コバルト、ニッケル、フェライト、マグネタイトなどを用いたものが知られている。磁性粒子の表面へのタンパク質などの結合を目的として、基材の表面をポリマーなどで被覆したものなどがより好ましい。
【0026】
上記の結合物質を固相に結合させる方法は、当該技術分野において公知である。該固定化は、例えば物理的吸着法、共有結合法、イオン結合法、これらの組み合わせなどにより行うことができる。
結合物質がアビジン又はストレプトアビジンである場合、例えば、アビジン又はストレプトアビジンと結合可能な物質、例えばビオチンが結合した固相にアビジン又はストレプトアビジンを結合させる方法により、アビジン又はストレプトアビジンを固相に固定化することができる。
【0027】
上記の工程(b)は、以下の4種類のいずれかにより行われることが好ましい。
(b1)工程(a)で形成した複合体と上記の第2抗体と固相とを接触させる;
(b2)工程(a)で形成した複合体と固相とを接触させ、該複合体と固相との存在下に第2抗体を加える;
(b3)工程(a)で形成した複合体と上記の第2抗体とを接触させ、該複合体と第2抗体との存在下に固相を加える;
(b4)上記の第2抗体と固相とを接触させ、該第2抗体と固相との存在下に工程(a)で形成した複合体を加える。
【0028】
上記のそれぞれの場合に考えられる反応は、次のとおりである。
(b1)工程(a)で形成した複合体と上記の第2抗体と固相とを接触させる場合:
工程(a)で形成した抗原−第1抗体複合体を、上記の第2抗体と上記の固相と同時に接触させる。このことにより、第2抗体は、抗原−第1抗体からなる複合体と結合して第1抗体−抗原−第2抗体からなる複合体を形成した後に固相と結合することができるか、及び/又は固相と結合してから抗原−第1抗体からなる複合体と結合して、固相上に第1抗体−抗原−第2抗体からなる複合体を形成することができる。
【0029】
(b2)工程(a)で形成した複合体と固相とを接触させ、該複合体と固相との存在下に第2抗体を加える場合:
工程(a)で形成した抗原−第1抗体からなる複合体を固相と接触させる。この場合、第1抗体及び抗原は、固相との結合部位を有さないので、これらの間で反応は起こらない。次いで、第2抗体を提供する。第2抗体は、抗原−第1抗体からなる複合体と結合して第1抗体−抗原−第2抗体からなる複合体を形成した後に固相と結合することができるか、及び/又は固相と結合してから抗原−第1抗体からなる複合体と結合して、固相上に第1抗体−抗原−第2抗体からなる複合体を形成することができる。
【0030】
(b3)工程(a)で形成した複合体と第2抗体とを接触させ、該複合体と第2抗体との存在下に固相を加える場合:
工程(a)で形成した抗原−第1抗体からなる複合体と第2抗体とを接触させることにより、第1抗体−抗原−第2抗体からなる複合体が形成される。その後、固相を提供することにより、第1抗体−抗原−第2抗体からなる複合体を固相上に固定化することができる。
【0031】
(b4)第2抗体と固相とを接触させ、該第2抗体と固相との存在下に工程(a)で形成した複合体を加える場合:
上記の第2抗体と固相とを接触させることにより、第2抗体の全量又は一部分は、固相に結合する。次いで、工程(a)で形成した複合体を提供することにより、固相に結合した第2抗体が該複合体と結合して、固相上に第1抗体−抗原−第2抗体からなる複合体を形成することができるか、又は固相に結合していない第2抗体が抗原−第1抗体からなる複合体と結合して第1抗体−抗原−第2抗体からなる複合体を形成し、この複合体が第2抗体を介して固相に結合することにより、固相上に第1抗体−抗原−第2抗体からなる複合体を形成することができる。
【0032】
本発明のサンドイッチイムノアッセイ法においては、第1抗体−抗原−第2抗体からなる複合体が固相上に形成された後に、(c)第1抗体の標識物質を測定する工程をさらに含むことが好ましい。
第1抗体の標識物質の測定方法は、標識物質の種類に応じて適宜選択できる。すなわち、標識物質が放射性同位元素である場合、例えばシンチレーションカウンターなどの従来公知の装置を用いて放射能を測定する方法を用いることができる。また、標識物質が蛍光物質である場合、ルミノメータなどの従来公知の装置を用いて蛍光を測定する方法を用いることができる。
【0033】
標識物質が酵素である場合、該酵素に対する基質を反応させて、発光又は発色を測定する方法を用いることができる。該酵素に対する基質は、上記の標識物質として例示した酵素に対する従来公知の発光基質、発色基質などを用いることができる。上記の酵素としてアルカリホスファターゼを用いる場合、基質としては、例えばCDP−star(登録商標)(4−クロロ−3−(メトキシスピロ{1,2−ジオキセタン−3,2'−(5'−クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン}−4−イル)フェニルリン酸2ナトリウム)、CSPD(登録商標)(3−(4−メトキシスピロ{1,2−ジオキセタン−3,2−(5'−クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン}−4−イル)フェニルリン酸2ナトリウム)などの化学発光基質;p−ニトロフェニルホスフェート、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−リン酸(BCIP)、4−ニトロブルーテトラゾリウムクロリド(NBT)、ヨードニトロテトラゾリウム(INT)などの発色基質が挙げられる。これらの発光基質又は発色基質は、分光光度計、ルミノメータなどの従来公知の装置を用いて検出及び定量できる。
【0034】
上記の工程(b)の後、洗浄工程を含むことができる。洗浄は、当該技術分野において公知の洗浄液を用いて行うことができる。該洗浄液は、通常、界面活性剤を含有することが好ましい。
【0035】
上記のサンドイッチイムノアッセイ法は、通常の免疫測定を行う条件下で行うことができる。通常の免疫測定の条件下とは、pH6.0〜10.0程度であり、30〜45℃程度の温度である。
上記のpHは、例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、トリエタノールアミン塩酸塩緩衝液(TEA)、トリス塩酸緩衝液(Tris−HCl)などを用いて調節することができる。該緩衝液は、界面活性剤、保存剤、血清タンパク質などの通常の免疫測定に用いられる成分を含んでいてもよい。
【0036】
上記の各工程において各成分を接触させる時間は、測定する抗原、用いる抗体、固相などの種類に応じて適宜設定することができる。
また、用いる第1抗体、第2抗体及び固相の量も、測定する抗原、用いる抗体、固相などの種類に応じて適宜設定することができる。
【実施例】
【0037】
以下に、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例で用いた試薬の作製方法について説明する。
(ビオチン標識抗TSHモノクローナル抗体の作製)
ビオチン標識抗TSHモノクローナル抗体に用いるモノクローナル抗体は、以下の方法により作製した。
基礎免疫用抗原として、10〜100μgのTSHを、0.5mlのPBSに溶解し、アジュバンドとして0.5mlのFCA(DIFCO社)を加えて、油中水滴型としたものを調製した。基礎免疫用抗原を、BALB/Cマウスに腹腔内投与した。腹腔内投与は、2〜4週間毎に、数回行った。また、ブースター用抗原として、100μgのTSHを1mlのPBSに溶解したものを用いた。
免疫BALB/Cマウスの脾細胞と、マウスミエローマ細胞(P3-X63-Ag8-653)を10:1の割合で混合した。次に、1mlの50%ポリエチレングリコール液を滴下し、1分間室温で撹拌した。さらに、撹拌を続けながら、2〜5分間かけて、徐々にMEM培地を5〜10ml加えた。洗浄後、融合した細胞はHAT培地に3.5×106個/mlとなるように浮遊させ、96穴マイクロカルチャープレートに1穴当たり100μlとなるように分注した。ハイブリドーマの増殖を観察し、適宜HAT培地を加え、2週間程度培養した。
培養上清を、TSH−β鎖を感作した抗原感作プレートに加え、ELISA(酵素免疫測定法)により、TSH−β鎖を認識する抗TSHモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択した。選択されたハイブリドーマのクローニングを行い、細胞株T2−194(NITE AP−399)を樹立した。
T2−194を培養し、培養上清をプロテインAを用いて精製することでモノクローナル抗体を得た。得られたモノクローナル抗体を、常法に従ってビオチン−マレイミドと反応させることにより、ビオチン標識抗TSHモノクローナル抗体を得た。
【0038】
実施例1
下記の手順で、本発明のサンドイッチイムノアッセイ法により、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の測定を行った。
なお、以下の手順において、抗体は抗体緩衝液(0.1M MES(2−モルホリノエタンスルホン酸)(pH 6.0)、1%ウシ血清アルブミン、0.15M NaCl、0.1%アジ化ナトリウム)を用いて希釈した。
1) 反応容器に、標識物質で標識された第1抗体として、アルカリホスファターゼ(ALP)標識抗TSHモノクローナル抗体(0.4U/mL、Medix Biochemica社製)30μLと、試料としてのTSH抗原溶液(濃度0又は2μIU/mL、Fitzgerald社製)30μLを分注し、42℃で2分間反応させた。
2) ストレプトアビジン磁性粒子(平均粒子2μm、20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.5)中に10mg/mL)30μLを加え、42℃で2.5分間反応させた。
3) 固相に結合可能な第2抗体として、上記のビオチン標識抗TSHモノクローナル抗体の作製で得られたビオチン標識抗TSHモノクローナル抗体(10μg/mL)30μLを分注し、42℃で2.5分間反応させた後、磁気分離した。
4) 洗浄液(0.01M MES(pH 6.5)、0.1%アジ化ナトリウム)100〜700μLを加えて撹拌し、磁気分離した。この洗浄操作を計4回行った。
5) 分散液(0.01M MES(pH 6.5)、0.1%アジ化ナトリウム)50μLを加えて撹拌し、ストレプトアビジン磁性粒子を分散した。
6) 発光基質液(CDP-Star, Applied Biosystems社)100μLを加えて撹拌し、42℃で5分間反応させ、ルミノメータで発光強度を測定した。
【0039】
比較例1
下記の手順で、従来のサンドイッチ法を用い、TSHを測定した。
1) 反応容器に、上記のビオチン標識抗TSHモノクローナル抗体の作製で得られた固相に結合可能な抗体としてのビオチン標識抗TSHモノクローナル抗体(10μg/mL)30μLと、試料としてのTSH抗原溶液(濃度:0又は2μIU/mL)30μLとを分注し、42℃で2分間反応させた。
2) ストレプトアビジン磁性粒子(平均粒子2μm、20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.5)中に10mg/mL)30μLを加え、42℃で2.5分間反応させた。
3) アルカリホスファターゼ(ALP)標識抗TSHモノクローナル抗体(0.4U/mL、Medix Biochemica社製)を加えて、42℃で2.5分間反応させた後、磁気分離した。
4) 洗浄液100〜700μLを加えて撹拌し、磁気分離した。この洗浄操作を計4回行った。
5) 分散液50μLを加えて撹拌し、ストレプトアビジン磁性粒子を分散した。
6) 発光基質液(CDP-Star, Applied Biosystems社)100μLを加えて撹拌し、42℃で5分間反応させ、ルミノメータで発光強度を測定した。
【0040】
上記の実施例1及び比較例1で得られた結果に基づいて、TSHを含む試料を用いて得られた結果(特異的シグナル)と、TSHが存在しない試料を用いて得られた結果(非特異的シグナル)との比(シグナル/ノイズ比;S/N比)を求めた。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
上記の結果から、本発明のサンドイッチイムノアッセイ法を用いると、測定におけるS/N比が高くなるので、特異的シグナルを高くでき、高感度の測定が可能になったことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)抗原と、前記抗原を認識し、検出可能な標識物質で標識された第1抗体とを接触させて、抗原−第1抗体からなる複合体を形成する工程と、
(b)前記抗原を認識し固相に結合可能な第2抗体を用いて、前記工程(a)で形成した複合体を固相に固定化する工程と
を含むことを特徴とするサンドイッチイムノアッセイ法。
【請求項2】
前記抗原が、甲状腺刺激ホルモンである請求項1に記載のサンドイッチイムノアッセイ法。
【請求項3】
前記工程(b)が、以下の:
(b1)工程(a)で形成した複合体と上記の第2抗体と固相とを接触させる;
(b2)工程(a)で形成した複合体と固相とを接触させ、該複合体と固相との存在下に第2抗体を加える;
(b3)工程(a)で形成した複合体と上記の第2抗体とを接触させ、該複合体と第2抗体との存在下に固相を加える;又は
(b4)上記の第2抗体と固相とを接触させ、該第2抗体と固相との存在下に工程(a)で形成した複合体を加える
ことにより行われる請求項1又は2に記載のサンドイッチイムノアッセイ法。
【請求項4】
前記標識物質が、酵素である請求項1〜3のいずれか1項に記載のサンドイッチイムノアッセイ法。
【請求項5】
前記第2抗体と固相との結合が、アビジン−ビオチン結合又はストレプトアビジン−ビオチン結合によるものである請求項1〜4のいずれか1項に記載のサンドイッチイムノアッセイ法。
【請求項6】
前記固相が磁性粒子である請求項1〜5のいずれか1項に記載のサンドイッチイムノアッセイ法。