説明

サンプラー装置

【解決手段】
サンプラー装置が、血液サンプルを抽出し、収集し、分配するため開示される。本装置は、シリンダー(30)内で移動可能であるピストン(40)により支持されたランセット(50)と、シリンダーから末端方向に前記ランセットを追い出し、次にピストン及びランセットを該末端方向とは反対方向の基端方向に引き抜くようにピストンを駆動するため配置された機構(60、70)と、を備え、シリンダーが血液サンプルを収集するように構成され、ピストンがシリンダーから所定体積のサンプルを供給するため末端方向に移動するように前記機構により制御可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液サンプルを抽出し、収集し、分配するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療及び健康検査において、一般に少量の血液が検査される。幾つかの場合には、少量であるが一定量の血液が要求され、患者の皮膚を突き刺すランセット又は針により作られた傷から収集される。一般に、血液は、指先端に集まっている多数の血管の故に先端で採取される。
【0003】
臨床テストでは、所定量の液液サンプルが、化学試薬、生物化学試薬又は免疫試薬を含む分析要素へと分配される。ポイントオブケアの臨床試験状況において、血液サンプルの収集及び分配のための装置を、分析手段を含むテストキットに備え付けることができる。幾つかの用途では、免疫学的検定を実施するためのキット等において、約400μl以内又はそれ以上でさえある体積のサンプルが要求され、幾つかの免疫学的試薬へと分配される。これらの試薬は、該試薬を含んだ一つの一般的な分析要素に含まれている。ポイントオブケアの臨床試験状況において毛細血管の全血液に対して実施される血液テストが、患者に可能な限り苦痛や不快感を引き起こさないようにしつつ血液を採取するという要求を伴って、持続的に開発されている。当該箇所で実施されるべきテスト処置のアクセス容易性は、複雑でなく且つ信頼性の高い操作を提供する、例えば血液サンプルの抽出、収集及び分析手段への供給等の機能を組み込んだオペレータにフレンドリーな設備手段に向けた要求を惹起している。
【0004】
少量の血液を収集し、所定量の血液を分析手段上に注ぐための装置が、米国特許番号5,569,287号(テヅカら)から以前に知られている。この装置は、シリンダーと、該シリンダー内に気密に収容されたピストンと、穿刺先端部と、を備えている。穿刺先端部は、血液導管内に収容される針を備え、該針は、使い捨て可能であり、摺動手段の作用を通して針を追い出すためのシリンダー/ピストンユニットに気密に接続されるように構成されている。この摺動手段は、ピストンを下げることにより作動され、圧縮可能なスプリングにより駆動される。血液は、ピストンを上げることにより引き起こされた、シリンダー内の減少した圧力に応答して血液導管内に牽引される。分配時には、収集された体積の血液は、ピストンを下げてシリンダー内の圧力を上げることにより、血液導管から吐出される。一般に、所定量の血液は、血液導管の体積、典型的には、注がれた体積は、血液導管内に吸引された体積に対応しており、一般に、100μlより小さく、好ましくは、5乃至50μlの範囲にある。しかし、注ぎを制御し、総サンプル体積の予めセットされた一部分を供給するための手段は、米国特許番号5,569,287号には提供されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一目的は、毛細血管の血液サンプルを抽出し収集するための、引き続く分析目的のため装置からの所定体積のサンプルの供給が制御可能であるサンプラー装置を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、予めセットされた体積の血液サンプルを分析要素に供給するように制御可能であるサンプラー装置を提供することである。
本発明のなお更なる目的は、予めセットされた血液サンプルの一部分を分配するため調整可能であるサンプラー装置を提供することである。
【0007】
本発明の更に別の目的は、抽出及び収集のため排気作動モードと、所定体積のサンプルをシリンダーから供給するための非排気作動モードとを組み合わせたピストン/シリンダー機能を組み込んだ、複雑でない構造のサンプラー装置を提供することである。
【0008】
本発明の更に別の目的は、血液の観点から患者を事実上ふるいに掛けている間に、オペレータの目に見え、且つ、サンプラーの完全な充填の確認を提供するように配置されたインジケータ手段を有するサンプラー装置を提供することである。
【0009】
本発明の更なる目的は、使い捨て使用のために適した複雑でない構造のサンプラー装置を提供することである。
上記及び他の目的は、添付した請求の範囲により画定されたサンプラー装置において充足されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
要約すると、本発明に係るサンプラー装置は、シリンダー内で移動可能であるピストンにより支持されたランセットを備える。シリンダーから第1の末端方向にランセットを追い出し、次にピストン及びランセットを該末端方向とは反対方向の第2の基端方向に引き抜くようにピストンを駆動する機構が配置されている。シリンダーは血液サンプルを収集するように構成され、所定体積のサンプルの供給時にピストンを末端方向に移動するため前記ピストンは前記機構により制御可能である。
【0011】
サンプラー装置は、前記ピストンを前記末端方向に押すように作用する押しボタンと、前記ピストン及び該押しボタンとを前記基端方向に押し出すように作用する戻りスプリングと、前記押しボタン、該戻りスプリング、前記シリンダー及び前記ピストンを同軸関係で覆うハウジングと、を更に備える。連結機構がハウジングと押しボタンとの間のインターフェースに配置されて、それらの間の相対運動を制御し、前記連結機構は、前記末端方向に前記押しボタンに加えられた圧力に応答して解放可能であり、好ましくは、末端方向に加えられた圧力により引き起こされた、ハウジングと押しボタンとの間の相対運動に応答して解放可能である。
【0012】
ピストン及びシリンダーは、ランセットを追い出すとき前記末端方向に非摩擦状態の長さだけ前記ピストンを移動させ、所定体積のサンプルの供給時に前記末端方向に摩擦密封状態の長さだけ前記ピストンを移動させるように組み合わせて配置されている。
【0013】
ピストン及びシリンダーは、所定体積のサンプルの供給時に前記末端方向に摩擦密封状態の長さだけ前記ピストンを移動させるように組み合わせて配置され、該移動距離は、好ましくは、予めセットされた体積の血液サンプルを供給するように制御可能である。
【0014】
有利には、前記機構は、血液サンプルの予めセットされた一部分を供給するためピストンの移動長さを制御するように調整可能である。
本発明の一実施態様では、前記ピストンは、反射プリズムであり、該反射プリズムは、液体サンプルにより湿らされたときその反射率を変化させることによりシリンダーの完全な充填の表示を提供する。
【0015】
本発明の一態様によれば、複雑でない構成を持つ鋳造可能な構成部品を有する使い捨て使用のためのサンプラー装置は、ハウジングと、前記ハウジングと一体形成されたシリンダーであって、該シリンダーの末端部の開口部を介して血液サンプルを収集するように構成された前記シリンダーと、前記シリンダー内を移動可能なピストンと、前記ピストンにより支持されたランセットと、前記シリンダーから前記ランセットを追い出すため前記ピストンに作用して該ピストンを末端方向に駆動させる押しボタンと、前記ピストンに作用して該ピストン及び前記ランセットを前記末端方向とは反対方向の基端方向に引っ込めさせる、戻りスプリングであって、前記ハウジング、前記押しボタン、前記戻りスプリング、前記シリンダー及び前記ピストンは同軸関係で配列されている、前記戻りスプリングと、
前記ハウジングと前記押しボタンとの間のインターフェースに配置されてそれらの間の相対運動を制御する連結機構であって、該連結機構は、前記ハウジングと前記押しボタンとの間の相対運動に応答して解放可能である、前記連結機構と、を備える。
【0016】
以下、本発明のサンプラー装置を、図面及び本明細書で開示された新たな教えの図示の例を参照して更に説明する。
【実施例】
【0017】
次の説明では、「末端部」は、サンプラー装置のオペレータから離れて面する第1の位置又は第1の方向を画定するため使用され、「基端部」は、オペレータに向かって面した第2の反対側の位置若しくは方向に言及している。図1では、配置が矢印により示されている。
【0018】
図1を参照すると、本発明の実施例に係るサンプラー装置は、その主要な構成要素として、ハウジング20内に支持されたシリンダー30を組み込んだ該ハウジング20と、シリンダー内を移動可能で且つその末端部でランセット50を支持しているピストン40と、プッシュボタン60と、ハウジングに支持されたピストン駆動機構の一部を形成する圧縮可能なスプリング70と、を備えている。取り外し可能なシール部80は、好ましくは、サンプラー装置の末端部でシリンダーへの入力部を覆うように取り付けられている。これらの構成部品を組み立てたアッセンブリは、図2に示されている。
【0019】
手短に説明すると、サンプラー装置は、次のように作動する。ハウジングの末端部は、皮膚と接触した状態で配置されている。圧力が押しボタンに印加され、ピストン駆動力を蓄積させ、最終的にピストンを解放させる。ピストンは、末端方向に加速され、スプリングを圧縮させ、ハウジングの末端部からランセットを延ばし、この末端部の位置から、ピストン及びランセットは、スプリング力により基端方向に引っ込められ、このようにして、ランセットの先端部により作られた傷口から一定体積の血液を収集するため、シリンダーを開放する。シリンダーが充填されたとき、サンプラー装置は、押しボタンを押下することにより血液サンプルの分配のため取り外され、シリンダーの開放末端部を介して、ピストンに所定体積のサンプル又はその一部を放出させる。
【0020】
本発明のサンプラー装置は、押しボタンに直接印加された手動圧力により操作されるものとして以下で説明される。それにも関わらず、この提供された弁別的な特徴は、サンプラー装置に接続可能な追加の駆動手段を通して作動されるように構成されたサンプラー装置に組み込まれていてもよい。
【0021】
図示の実施例のサンプラー構成部品の詳細な構成及び作用は、以下でより完全に図3乃至図6を参照して説明される。基本的には、ハウジング20と、シリンダー30と、ピストン40と、押しボタン60とは、共通の中心軸の回りに同軸関係に配列されたシリンダーである。
【0022】
ハウジング20は、内側壁22から径方向に距離を隔てた外側壁21を有し、内側壁22はシリンダー30を形成する。末端部では、外側壁21及び内側壁22は、ベース23から持ち上がり、該ベースは、シリンダー30内へと開放する中央貫通孔24を有する。外側壁21及び内側壁22の基端部は、ベース23に向かって軸方向に延び且つシリンダーの回りに同軸に配置された押しボタン60及び圧縮可能スプリング70を受け入れるように形成されている環状空間の入力部を形成する。ラグ25は、外側壁21から径方向に突出し、オペレータの指で使用するための支持を提供する。有利には、ベース23は、その外側表面において僅かに凹んでおり、それにより、ハウジングベースの周囲部は、サンプリングモードにおいて患者の皮膚との周囲に沿った接触を提供する。例えばリング形状の両面接着テープ25等の接着剤は、好ましくは、血液の収集の間に皮膚への漏れ耐性接着を提供するためハウジングの末端部に塗布される。
【0023】
シリンダー30は、組み立て時にピストン40が挿入されるところの開放基端部を有する。シリンダー30の末端部は、ハウジングのベース23に形成された貫通孔24にシリンダーの内側周囲部を接続する狭窄部31で終わっている。狭窄部31は、切頭円錐部として示され、他の可能な設計には、例えばシリンダーに横断する平坦表面、又は、部分球表面が含まれる。狭窄部31は、後述されるように、ピストン及びランセットの末端方向の運動に対する端部係止部として機能する。免疫学的検定法と関連して、例えば、シリンダーは、約400μl以内又はそれ以上もの体積、典型的には5乃至250μlの範囲内にある体積のサンプルを収集するように寸法が定められ、好ましくは、少なくとも約100μlの体積のサンプルを保持する。
【0024】
ピストン40は、シリンダー内に収容され、末端方向及び基端方向に移動可能である。ピストンの末端部41は、ピストンの末端位置でシリンダー狭窄部31と当接した状態で停止させられるように形成されている。この位置では、ランセット50の先端部51は、毛細血管を開放するのに必要な切り口を作るべく決定された距離でハウジングベース23から突出する。ピストンは、ピストンの末端位置でシリンダーから基端方向に到達するように寸法が定められた軸方向長さを有する。基端部では、ピストンは、肩部42を載せており、該肩部は、内側壁21及び外側壁22により形成された環状空間の上方で、内側壁22を径方向に超えて到達する。肩部42は、スプリング70のための基端支持を提供しており、該スプリングは、肩部とハウジングベース23との間で作用し、且つ、シリンダーが開放して一定体積の血液を収集するために効果的である位置へとピストンを基端方向に戻すように作用する。
【0025】
ピストン40及びシリンダー30は、ピストンの末端運動を通して実行される血液サンプルの供給時には、密封接触するため相対的に変位するように構成されている。一方、ランセットの追い出しは、切り込みの間に、空気の排気を可能にしているピストン及びランセットの非密封状態での加速又は摩擦の無い加速を通して作用するのが好ましい。そうでなければ、空気は、シリンダーを通してピストンが移動することにより圧縮されることになる。
【0026】
上記のことを達成するためには、図6に最も良く示されているように、ピストン40は、シリンダーの直径よりも僅かに小さい直径を持ち、密封は、ピストンの末端部に径方向に突出しているフランジ43から提供される。フランジ43は、ピストンと一体に形成されてもよく、或いは、ピストンに取り付けられた別個の要素であってもよい。運動中には、フランジ43は、主要長さRに対してシリンダー周囲部を密封しているが、密封作用は末端運動の終了時に中断される。非密封状態での移動は、シリンダー30の末端部に形成された増大した半径の軸方向長さRiを通して達成される。よって、シリンダー30及びピストン40は、第1の摩擦密封状態の移動長さRと、第2の摩擦が無い非密封移動長さRiとからなる移動を、協働してピストンに提供するように構成されている。更に後述されるように、非密封状態の長さは、ランセット50の追い出しのため適用されたピストン駆動力の解放に関連している。
【0027】
かくして、ピストン及びランセットの加速の間に、シリンダーは、シリンダーの幅広くされた末端部32から排気される空気により排気される。このとき、空気は、ピストンフランジ43を通過して、ピストンボディと、シリンダー周囲部との間に形成された隙間を介して逃げ、シリンダーの基端部から吐出される。
【0028】
ランセット50の追い出しは、押しボタン60に印加された圧力によりもたらされる。押しボタン60は、開放した末端部から、親指掛かり部61を載せた基端部へと軸方向に延びているシリンダーである。親指掛かり部61を通した窓62は、後述されるように、表示目的のための用をなしている。押しボタン60のシリンダー部は、スプリング70、シリンダー30及びピストン40の回りに同軸に、ピストンの肩部42を閉鎖関係で覆っている。押しボタン60の外側シリンダー表面は、ハウジング20の外側壁21と摺動接触した状態で収容されている。図3では、サンプラー装置は、使用状態の準備状態で示されている。この初期位置では、ランセット50は、ベース23とピストン40の基端部における肩部42の下側との間で作用する圧縮性スプリング70の作用により末端部無いに完全に引っ込められている。肩部42の周囲部は、押しボタンの内側シリンダー表面上に形成されたヒール部63により、その基端側で係合されており、よって押しボタン60及びピストン40は、スプリング70の作用により基端方向に偏倚されている。
【0029】
ハウジングと押しボタンとの間のインターフェースでは、ハウジングと押しボタンとの間の解放可能な連結を解除するため必要となる手動圧力を印加することによりランセットの追い出しをもたらすように構成されている。より正確には、押しボタンは、基端方向及び末端方向における運動のためハウジング内に案内されている。この目的のため、ハウジングに形成された突起部は、押しボタン上に形成された凹部内を移動するように収容されている。なお、これとは逆の凹凸関係も使用可能である。末端方向の相対運動時に、前記凹部における狭窄部は、突起部に狭窄部を通過させるように十分な圧力が押しボタンに末端方向にかかるまで、一時的に前記突起部の移動を遮断する。図示の実施例では、ハウジングと押しボタンとの間の連結を解除し、よって、ピストンの加速とランセットの追い出しとをもたらすため相対回転が要求される。物の詰まりを防止するため、有利には、2つ以上の連結機構が配列され、これらの連結機構は、ハウジングと押しボタンとの間の円形インターフェースにおいて周囲方向に間隔を隔てている。
【0030】
解放可能な連結機構を、図面のうち図3、図4及び図5を参照して更に説明する。ハウジングの外側壁21の内側表面では、ヒール部26が、押しボタン60の外側表面上に軸方向に延びる第1の溝64内に収容されるように径方向内側に突出している。溝64は、使用準備状態でヒール部26により係合された末端係止部で終わっており(図3参照)、押しボタン(及びピストン40)は、スプリング70により基端方向に偏倚されている。第2の溝65は、押しボタン60の外側表面上の溝64と平行に延び、溝64及び65は、仕切り壁66により隔てられている(図4参照)。仕切り壁66及びヒール部26は、それらの径方向外側端部及び径方向内側端部で重なり合うように径方向に延在し、該端部の少なくとも1つは、断面図では丸みを形成されるか又は斜めに角度を付けられるのが好ましい。押しボタンの回転時には、ヒール部26は、周囲方向に仕切り壁66を通過させられてもよく、ヒール部は、溝64から出て溝65に入る。押しボタンの回転は、押しボタン上に形成されたカム67と係合するためハウジング上に配列されているカム表面27を含むカム配列を通して達成される(図5参照)。かくして、押しボタンが末端方向に押下されたとき、カム及びカム表面は、押しボタンを回転させるように相互作用する。ヒール部26に仕切り壁66を通過させ、第2の溝65内に入らせるように十分な圧力が印加されたとき、ヒール部は、溝65の基端部に向かって自在に移動するようになり、又は、換言すれば、押しボタンが解放され、圧力により末端方向に移動させられる。親指掛かり部に印加された圧力における明瞭なリリーフは除いて、押しボタンの解放は、オペレータにより聞き取り可能に観察される。
【0031】
押しボタンは、ピストンの肩部42の周囲部と係合するヒール部63により、末端運動に沿ってピストン40を押し出す。押しボタンとハウジングとの間の連結を解放するとき、ピストンは、ランセット50を押し出すためシリンダーの末端部の非密封状態の長さ分を移動する。ピストンの末端運動は、ピストンの末端部41がシリンダーの狭窄端部31に当たったとき、突然終了される。この段階では、押しボタンが、押しボタンの末端部がハウジングのベース23に当たるまで、なおも末端方向に自在に移動される。押しボタンの連続手kな末端運動では、親指掛かり部に印加された手動圧力は、ヒール部63を肩部の周囲部を通過させる。ここで肩部又はヒール部の少なくとも1つは、断面図で丸みが形成されるか斜めに角度が付けられている。瞬間的に、ピストンは、スプリング70により負荷がかけられ、該スプリングは、肩部42が親指掛かり部の下側と係合し、よって窓62を覆うまで、ピストンを末端方向に戻す。押しボタンの内側にあるヘッド部の空間は、親指掛かり部の下側からヒール部63までの軸方向長さにより決定されており、ピストンが基端方向にスプリング70により引っ込められるとき、患者の皮膚からランセットを完全に引き抜くように構成されている。
【0032】
次に、オペレータが親指掛かり部61から圧力を取り除いたとき、スプリング70は、ピストン及び押しボタンの両方の引き抜きを実現させ、ピストンは押しボタンを基端方向に沿って更に動かす。この基端運動は、押しボタンの外側表面上の溝65の末端部における端部停止部と係合したハウジング上のヒール部26により、(又は、例えば、押しボタンとハウジングとの間の接触を提供する他の構造的要素により)構造的に終了させられる。この運動では、ピストンは、ピストン43のフランジ43はシリンダーの基端部に位置するまで、シリンダーの密封状態の長さを移動する。かくして、シリンダー30は、開放し、ランセットにより形成された切り口から流れる血液を収集する準備を整え、その末端部からシリンダーを充填する。血液の収集の間、シリンダーは、シリンダーの基端部から逃げることを可能にされた空気により排気される。この目的のため、通路32がシリンダーの周囲部の基端部内に形成され、該通路は、シリンダー空間を例えばハウジングの外側壁を通して形成された開口部を介して大気に接続する。通路32は、シリンダー壁の基端部内に口を開け、ピストンの基端部位置でピストンのフランジ43を末端方向に超えて延在する。一つ又は幾つかの通路32は、図6で破線により示された、シリンダー周囲部内に軸方向に延在する溝として形成されてもよい。
【0033】
これまでのところ、本発明の一実施例に係るサンプラー装置は、ピストン/シリンダー機能の排気作動モードに関して説明された。次に、図面のうち図6を参照して、非排気作動モードを説明する。
【0034】
所定体積のサンプルの供給時に、ピストン40は、末端方向に押しボタン60を押すことにより前進される。ピストン及び押しボタンのこの末端運動では、ハウジングのヒール部26が押しボタンに形成された溝65の基端部に向かって移動する。供給モードでは、ピストンは、フランジ43の作用によりシリンダー周囲部に対して密封し、フランジは、その密封状態の長さRに亘ってシリンダーの周囲部と摩擦係合する。溝65により案内されるとき、ピストンは、シリンダーにより収集された実質的に総体積の血液を吐出するため制御される。
【0035】
本発明の好ましい実施例に係るサンプラー装置では、ピストンは、シリンダーにより収集された総体積の血液の予めセットされた一部分を供給するように制御可能である。この目的のため、シリンダー周囲部の密封状態の長さRの予めセットされた一部分を分配時にカバーするようにピストンの移動を制限する手段が採用される。詳しくは、図面のうち図4に示されるように、一つ又は幾つかの追加の溝68、68’等が、溝64及び65と平行に形成され、仕切り壁66に対応する仕切り壁により分離されている。追加の一つの溝/複数の溝は、押しボタンの末端部の近傍から基端部へと個々の長さで延在し、各溝の長さは、分配時にピストンの対応する末端移動を可能にしている(案内溝の配列についてのより良い理解のため図1も参照)。所望の移動の長さを設定することは、押しボタンを回し、収集される血液サンプルの所望の部分体積に対応する対象となる溝へとヒール部26をスナップ係合させる仕方で達成される。ハウジング及び押しボタン上に配置された表示マークは、分配されるべき予めセットされる体積の視覚的確認を提供する。代替例として、案内溝がハウジングに形成され、ヒール部が押しボタンに配置されてもよいことは明らかである。従って、ピストンは、押しボタンとハウジングとの間のインターフェースに配列され且つ予めセットされた収集された血液サンプルを供給するためそれらの間の相対運動を制御する連結機構により制御される。
【0036】
案内溝の長さを適切に設計することによって、対応する長さの溝内で案内するため押しボタンを連続的に設定することにより血液サンプルの一部分の分配が可能となる。
本発明の別の好ましい実施例に係るサンプラー装置では、シリンダーの完全な充填の確認をオペレータに提供するため表示手段が組み込まれる。図示の実施例では、表示手段は、親指掛かり部に形成された窓62と、ピストン40とに関連している。ピストン40は、プラスチック若しくはガラス、又は、入射光線に対し透明な他の材料から作られたボディを有する。光は、オペレータの親指がランセットの押し出し後に親指掛かり部から取り除かれたとき窓を介してピストンの基端部を通って入射される。ピストンの末端部は、プリズムであり、入射光を反射するように形成されていおり、その端部壁は、ピストンの長さ方向軸に対して一定角度で傾斜している。典型的には、傾斜角度は45°である。よって、傾斜端部壁に当たる入射光線は、2回、偏向させられ、窓を通って戻され、ピストン端部が湿った状態でなく空気にさらされている限り、窓を明るくする。充填が完了したとき、ピストン端部壁は、液体により湿らされ覆われ、かくして、プリズムを取り囲む媒体の屈折率の変化に起因して反射率を変化させる。この変化は、窓が暗くなったことにより観察される。窓62は、親指掛かり部を通した開放孔であってもよく、或いは、透明材料により覆われた孔であってもよい。
【0037】
ハウジングベース23の貫通孔24の直径より僅かに小さい断面寸法を有するランセット50は、ピストンの末端部において、ランセットの基端部により固定される。ランセットは、円柱区分を持っていてもよく、その先端部は、クリーンで痛みの無い傷口のための一つ又は幾つかの鋭くエッジが形成された切り子面51が形成されている。
【0038】
サンプラー装置の全ての部品は、殺菌に適合した、金属又は合成材料から作られてもよい。図示の実施例の特定の利点は、サンプラー装置を使い捨て用途に特に適したものにしている、詳細構成部品の限定された数及び成形可能な構成部品の複雑でない構造である。別の利点は、血液の切り口及び収集が事実上ふるいにかけられ、血液が見えることが患者に引き起こし得る不快感を減少させることである。更に別の利点は、サンプラー装置は、切り口が形成される領域にかなりの圧力を印加すること無く作動し、これにより、血液が収集されるところの毛細血管を通した、妨害を受けない血液の流れを可能にしているということである。さらに、主要な利点は、引き続く分析のため所望の正確な体積の血液を抽出し、収集し、分配する、本発明に係るサンプラー装置の能力である。上記開示内容は本発明の一つの図示の実施例において幾つかの有利な特徴を組み込んでいるが、これらの特徴は、別々に又は組み合わせて適用することができる。本発明は、添付した請求の範囲の特徴化された部分で掲げられた弁別的な特徴によって画定される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、組み立て前のサンプラー装置の構成部品を分解図で示している。
【図2】図2は、図1の構成部品を組み立てたアッセンブリを示している。
【図3】図3は、より大きなスケールにおける上記アッセンブリを通した縦断面図であり、サンプラー装置がランセットを降下する前に使用準備状態であることを示している。
【図4】図4は、図2におけるサンプラー装置の長さ方向軸を横断した断面図である。
【図5】図5は、部分破断斜視図でサンプラー装置を示している。
【図6】図6は、本発明に組み込まれたランセットの降下時におけるピストン運動の固定位置を示す縦断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛細血管の血液サンプルの抽出及び収集のためのサンプラー装置であって、
前記サンプラー装置は、
シリンダー内で移動可能であるピストンにより支持されたランセットと、
前記シリンダーから末端方向に前記ランセットを追い出し、次に前記ピストン及び前記ランセットを該末端方向とは反対方向の基端方向に引き抜くように前記ピストンを駆動するため配置された機構と、を備え、
前記シリンダーが前記血液サンプルを収集するように構成され、前記ピストンが前記シリンダーから所定体積のサンプルを供給するため前記末端方向に移動するように前記機構により制御可能であることを特徴とする、サンプラー装置。
【請求項2】
前記ピストン及び前記シリンダーは、前記ランセットを追い出すとき前記末端方向に非摩擦状態の長さだけ前記ピストンを移動させ、所定体積のサンプルの供給時に前記末端方向に摩擦密封状態の長さだけ前記ピストンを移動させるように組み合わせて配置されている、請求項1に記載のサンプラー装置。
【請求項3】
前記ピストン及びシリンダーは、所定体積のサンプルの供給時に前記末端方向に摩擦密封状態の長さだけ前記ピストンを移動させるように組み合わせて配置され、該移動距離は、予めセットされた体積の前記血液サンプルを供給するため前記機構により制御可能である、請求項1に記載のサンプラー装置。
【請求項4】
前記機構は、前記血液サンプルの予めセットされた一部分を供給するため前記ピストンの移動を制御するように調整可能である、請求項3に記載のサンプラー装置。
【請求項5】
前記ピストンは、反射プリズムであり、該反射プリズムは、前記液体サンプルにより湿らされたときその反射率を変化させることにより前記シリンダーの完全な充填の表示を提供する、請求項1に記載のサンプラー装置。
【請求項6】
前記ピストンを前記末端方向に押すように作用する押しボタンと、前記ピストン及び該押しボタンとを前記基端方向に押し出すように作用する戻りスプリングと、前記押しボタン、該戻りスプリング、前記シリンダー及び前記ピストンを同軸関係で覆うハウジングと、を更に備え、連結機構が前記ハウジングと前記押しボタンとの間のインターフェースに配置されて、それらの間の相対運動を制御し、前記連結機構は、前記末端方向に前記押しボタンに加えられた圧力に応答して解放可能である、上記請求項のうちいずれか1項に記載のサンプラー装置。
【請求項7】
前記連結機構は、前記末端方向に加えられた圧力により引き起こされる、前記押しボタンと前記ハウジングとの間の相対回転に応答して解放可能である、請求項6に記載のサンプラー装置。
【請求項8】
前記ハウジングと前記押しボタンとの間のインターフェースにカム構造部が配置され、該カム構造部は、前記末端方向に加えられた圧力に応答して前記押しボタンを有効に回転させる、請求項7に記載のサンプラー装置。
【請求項9】
前記ピストンは、該ピストンの末端部において径方向に突出したフランジを支持し、前記シリンダーは、該シリンダーの第1の摩擦密封状態の長さに亘って前記フランジと摩擦接触する内側周囲部を有し、前記シリンダーは、前記末端方向で見たとき、その第2の非密封状態の長さに亘って増大した半径の軸部分を有し、前記ランセットを追い出したとき前記基端方向に空気が逃げるための通路を提供する、請求項2に記載のサンプラー装置。
【請求項10】
空気通路が、前記基端方向に面した前記シリンダーの基端部に形成され、該空気通路は、前記血液サンプルの収集時に前記シリンダーの通風を提供する、上記請求項のうちいずれか1項に記載のサンプラー装置。
【請求項11】
前記ピストンを前記末端方向に押すように作用する押しボタンと、前記ピストン及び該押しボタンとを前記基端方向に押し出すように作用する戻りスプリングと、前記押しボタン、該戻りスプリング、前記シリンダー及び前記ピストンを同軸関係で覆うハウジングと、を更に備え、連結機構が前記ハウジングと前記押しボタンとの間のインターフェースに配置されて、それらの間の相対運動を制御し、前記連結機構は、予めセットされた体積のサンプルを供給するとき、前記シリンダーの摩擦密封長さの所望の一部分をカバーするように前記末端方向の前記ピストンの移動を制限するように調整可能である、請求項3に記載のサンプラー装置。
【請求項12】
個々の長さを持つ1組の平行溝が前記押しボタンの周囲部で軸方向に延び、該溝は、前記ハウジングに形成されたヒール部の移動を案内し、該ヒール部は、前記押しボタンと前記ハウジングとの間の相対回転に応答して前記溝の一つに収容される、請求項11に記載のサンプラー装置。
【請求項13】
前記ピストンは、その末端部において、該ピストンの基端部を通って入る入射光を反射するように形成されている、請求項5に記載のサンプラー装置。
【請求項14】
前記ピストンを前記末端方向に押すように作用する押しボタンと、前記ピストン及び該押しボタンとを前記基端方向に押し出すように作用する戻りスプリングと、前記押しボタン、該戻りスプリング、前記シリンダー及び前記ピストンを同軸関係で覆うハウジングと、を更に備え、前記押しボタンは、窓を備え、該窓を通って光が前記ピストンに入る、請求項13に記載のサンプラー装置。
【請求項15】
使い捨て使用のためのサンプラー装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジングと一体形成されたシリンダーであって、該シリンダーの末端部の開口部を介して血液サンプルを収集するように構成された前記シリンダーと、
前記シリンダー内を移動可能なピストンと、
前記ピストンにより支持されたランセットと、
前記シリンダーから前記ランセットを追い出すため前記ピストンに作用して該ピストンを末端方向に駆動させる押しボタンと、
前記ピストンに作用して該ピストン及び前記ランセットを前記末端方向とは反対方向の基端方向に引っ込めさせる、戻りスプリングであって、前記ハウジング、前記押しボタン、前記戻りスプリング、前記シリンダー及び前記ピストンは同軸関係で配列されている、前記戻りスプリングと、
前記ハウジングと前記押しボタンとの間のインターフェースに配置されてそれらの間の相対運動を制御する連結機構であって、該連結機構は、前記ハウジングと前記押しボタンとの間の相対運動に応答して解放可能である、前記連結機構と、
を備える、サンプラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−530211(P2007−530211A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506103(P2007−506103)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【国際出願番号】PCT/SE2005/000335
【国際公開番号】WO2005/094680
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(506329801)ファディア・アクチボラグ (7)
【Fターム(参考)】