説明

サンプルレート差を測定するためのデバイスおよび方法

実施形態において、第1の情報信号の複数のセグメントの各々に関して、第2の情報信号に対して複数のセグメントを時間的に位置合わせする関連したオフセット値を測定するためのオフセット測定手段、および、オフセット値に基づいてサンプルレート差を計算するための手段を含んでいる、第1の情報信号と第2の情報信号との間のサンプルレート差を測定するためのデバイスが示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、干渉を受けた情報信号と干渉を受けていない情報信号間のような、2つの情報信号間のサンプルレート差を測定するためのデバイスおよび方法に関する。サンプルレート差を測定するためのデバイスおよび方法は、例えば、信号の品質評価のためのいわゆる客観的測定の改善のために使用されうる。
【背景技術】
【0002】
例えば音声、オーディオおよびビデオの品質測定のようなアプリケーションにおいては、干渉を受けていない基準信号と干渉を受けたテスト信号を部分ごとに正確に時間的に位置合わせする必要がしばしばある。高い精度でこの時間的位置合わせを達成する方法は可能である。計測技術によって符号化されたオーディオおよびビデオ信号の品質を評価するために、今日、標準化された知覚的測定が使用される。この種の周知の標準化された方法は、例えば、聴覚的に正確な方法で音声または通話品質の正しい評価のためのいわゆるPESQ方法(PESQ=Perceptional Evaluation of Speech Quality,PESQ(ITU―T Rec.P862))である。しかしながら、使用された信号のサンプルレート/フレームレートが、それらがおそらく使用された伝送方式によって、一部分は故意に、一部分は許容差で、実質的に変えられたので、正確に合わないことが、しばしば問題となっている。この場合、時間的に位置合わせされた信号の短いセクションだけしか、実際には合わない。
【0003】
その部分またはセクションの長さが増すとともに、信号間の差は、サンプルレート/フレームレートに関して増加する。人はその差をほとんど知覚しないが、周知の品質測定方法は、強い干渉として、これらの差を評価する。干渉を正しく評価して、客観的で良い品質測定を実行できるように、信号の時間的位置合わせの前にサンプルレートを補正することが必要である場合がある。しかし、ここで問題なのは、2つの信号のサンプルレートの比率を測定することである。
【0004】
周知の方法において、これは、信号のスペクトル成分のずれを検出することによって達成される。この種の方法は、例えば、欧州特許出願公開第1918909(A1)号明細書(EP1918909A1)において開示される。しかし、この方法は、充分な精度を得るために、例えば数秒の範囲でありうる調べられる信号の非常に大きな窓長さを必要とする。更に、今日の伝達システムが通常付加的な時間の及びスペクトルの干渉を信号に挿入するので、スペクトル成分のずれを検出することに基づくこの種の方法は、非常に制限して適用されるだけでありえる。この種の干渉が分析窓における方法の間に生じる場合、その結果はしばしば使用不可能である。例えば10秒の継続時間の典型的測定シーケンスについては、それらは、例えば音声品質測定方法のために使用されるので、このように、充分なデータはサンプルレートまたはサンプルレート差の信頼性が高い評価に利用できない。サンプルレート差を計算するために、一般に行なわれている方法は、フーリエ変換を使用しうる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】欧州特許出願公開第1918909(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、サンプルレート差を測定するための改良されたデバイスおよび第1の情報信号と第2の情報信号間のサンプルレート差を測定するための改良された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に記載の第1の情報信号と第2の情報信号との間のサンプルレート差を測定するためのデバイスによって、請求項13に記載の第1の情報信号と第2の情報信号との間のサンプルレート差を測定するための方法によって、および、請求項14に記載のコンピュータ・プログラムによって達成される。
【0008】
本発明は、2つの情報信号のサンプルレート差を測定するための提供されうるデバイスが、2つの情報信号間のオフセット値に基づいてサンプルレート差を測定することによって、小さいサンプルレート差を有する非常に短い信号でもサンプルレート差を確実に測定することが可能であるという発見に基づく。
【0009】
本発明の一つの効果は、サンプルレート差を測定するためのデバイスおよび方法が、例えば、スペクトル干渉に対して非常にロバストであり、非常に短い信号または短い分析窓やサンプル/フレームレートの小さい偏差に関してさえ、確実に機能することである。関連したセグメントのオフセット値の使用およびこれらのオフセット値の分布の統計評価によって、例えば、分布の異常値は、容易に取り除かれうる。スペクトル分割又は分解およびスペクトル分解に基づいた情報信号の比較は、絶対に必要というわけではない。本発明のデバイスは、このように比較的多数の測定点が利用可能であるので、スペクトル分析と比較して短い複数のフレームを使用しうる。
【0010】
以下において、本発明の好ましい実施形態が添付図面を参照に更に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1a】図1aは、本発明の一実施形態による第1の情報信号と第2の情報信号との間のサンプルレート差を測定するためのデバイスの概略図を示す。
【図1b】図1bは、本発明の更なる実施形態による第1の情報信号と第2の情報信号との間のサンプルレート差を測定するためのデバイスの概略図を示す。
【図2】図2は、本発明の更なる実施形態によるヒストグラム解析を用いてサンプルレート差を測定するためのダイアグラムを示す。
【図3】図3は、ヒストグラム解析を用いてオフセット値に基づいてサンプルレート差を測定するための概略図を示す。
【図4】図4は、回帰分析を用いてオフセット値に基づいてサンプルレート差を測定するための概略図を示す。
【図5a】図5aは、本発明の更なる実施形態による、サンプルレート変更手段と任意選択で第1および第2の情報信号を時間的に位置合わせするための手段を用いて、サンプルレート差を測定するためのデバイスの概略図を示す。
【図5b】図5bは、本発明の更なる実施形態による品質測定手段を用いてサンプルレート差を測定するためのデバイスの概略図を示す。
【図6】図6は、本発明の一実施形態による第1の情報信号と第2の情報信号間のサンプルレート差を測定するための方法に関してのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の記載に関して、異なる実施形態において、類似の又は見かけ上類似の機能的要素は、同一参照番号を有し、それらの機能的要素の説明は、以下に示された異なる実施形態において相互に交換可能である点に留意されたい。
【0013】
更に、以下で、第1の情報信号IS1および第2の情報信号IS2の意味が相互に交換可能である点に更に留意されたい。
【0014】
図1aは、本発明の一実施形態による第1の情報信号IS1と第2の情報信号IS2との間のサンプルレート差を測定するためのデバイス10を示す。サンプルレート差を測定するためのデバイス10は、第1の情報信号IS1のセグメントの複数のセグメントS1(i)の各々に関して、第2の情報信IS2に対して複数のセグメントS1(i)を時間的に位置合わせする関連したオフセット値VW(i)を測定するオフセット測定手段20を含む。更に、デバイス10は、オフセット値VW(i)に基づいてサンプルレート差を計算するための手段40を含む。
【0015】
第1の情報信号IS1および第2の情報信号IS2は、例えば、オーディオ信号またはビデオ信号、そして、デジタルまたはアナログ情報信号でありえる。両方の情報信号は同じ内容を示す。しかし、例えば、空間分解能に関して、ビデオの色に関して、ビット深さに関して、そして、少なからずサンプルレートに関してのように、異なる理由のために、その情報信号は異なりうる。
【0016】
情報信号IS1およびIS2は、特定のサンプルレートを用いてそれぞれサンプリングされた、あるいは、少なくともそれぞれのサンプルレートを有する。オーディオ信号の場合には、それは、例えば、サンプリング時間ごとに1つのオーディオサンプル値を有する。ビデオ信号の場合には、それは、例えば、サンプリング時間ごとに1フレームまたは1画像を有する。
【0017】
伝送方式または伝送ネットワークの誤差のため、トランスコーディングまたはコード変換等のため、情報信号は、サンプルレート差を有しうる。例えば、第1の情報信号IS1および第2の情報信号IS2における一致している内容は、サンプルレート差のため異なる長さを有する。短いセクションについては、このサンプルレート差は、わずかな偏差を生じるだけである。しかし、より長いセクションについては、信号間の差は、増加して、強い干渉として生じうる。
【0018】
第1の情報信号IS1および第2の情報信号IS2は、オフセット測定手段20に供給されうる。オフセット測定手段は、ここで、第1の情報信号IS1を複数のセグメントS1(i)に分けるために実施される。
【0019】
各セグメントS1(i)は、いくつかの後に続くサンプリング数を有する。例えば、第1の情報信号IS1のセグメントは、それがオーディオ信号である場合、256以下のいくつかのA1個のサンプリング点、そして、それがビデオ信号である場合、50以下のいくつかのA2の、例えば10の後に続くサンプリング数を有する。
【0020】
情報信号IS1およびIS2は、それぞれ関連したサンプリング時間軸(Abtw(サンプル)、Abtw2(サンプル2))に関して、図1に概略的に配置される。ここで、各セグメントS1(i)は、第1の情報信号IS1の特定の特徴または情報部分を含みうる。更に、これらのセグメントの各々は、異なる数の後に続くサンプリング時間、または、異なる数のフレームを含みうる。セグメントS1(i)は、例えば、セグメントS1(1)およびS1(2)で、図1aにおいて概略的に示されたように、同じ時間的長さ、同じ数のサンプリング数、又は、同じ数のフレームを含みうる。セグメントはまた、第1の情報信号IS1の他のセグメントとは、例えばS1(3)のように、異なる時間長さ、あるいは、異なる数のサンプリング時間又はフレームを含みうる。
【0021】
例えば、オーディオ信号のセグメントは、1,024サンプル値またはサンプルを含みうる。ここで、これらの1,024のサンプルは、256の平均エネルギー密度値に結合され、それを用いて、第1のオーディオ信号IS1と第2のオーディオ信号IS2の時間的位置合わせのための相互相関は、後に実行されうる。このように、いわゆるサブサンプリングは、実行されうる。
【0022】
図1aにおいて概略的に示されたように、例えばセグメントS1(2)およびセグメントS1(3)のように、個々のセグメントはまた、重複することもできる。複数のセグメントS1(i)はまた、例えばセグメントS1(3)とS1(4)の間の場合のように、「ギャップ」を含むこともありえる。すなわち、第1の情報信号IS1は、オフセット測定手段20によって、複数のセグメントに完全に分離される場合もあり、または、一部分にあるいは連続した部分にだけ、複数のセグメントに分けられる場合もある。これらのセグメントS1(i)は、ギャップまたはオーバラップを含むことがありえ、そして、オフセットを測定するための異なる時間または異なる数のサンプルまたは他の値を含むことがありえる。
【0023】
複数のセグメントS1(i)は、例えば、オフセット測定手段20を用いて、例えば情報単位の同一の又は相当する特徴に基づいて、第2の情報信号IS2と関連付けられうる。オフセット測定手段20は、ここで、第2の情報信号IS2に関して複数のセグメントを時間的に位置合わせするオフセット値VW(i)を測定するために実施される。目下の、かなり簡略化された場合(図1a)において、例えば第2の情報信号へのセグメントの割り当ては、同一又は類似の信号形状に基づいて、実行される。第2の情報信号へのセグメントS1(i)のこの割り当ては、例えば相互相関を用いて、オフセット測定手段によって実行されうる。割り当ては、ここで、例えば、ビデオ信号に関して同一又は類似のフレーム又は画像に基づいて、あるいは、例えば信号の平均エネルギー値、輝度値、カラー値などの他の特徴に基づいて、実行されうる。
【0024】
第2の情報信号IS2は、ここで、第1の情報信号IS1に対して異なるサンプルレートを含むことがありえ、このように異なる相対的サンプリング時間軸(Abzp2)を含むこともありえる。すなわち、第1の情報信号IS1およびIS2に関する対応する基準軸は、異なって基準化された軸でありえる。
【0025】
このように、例えば、オフセット値VW(1)は、オフセット測定手段20によって、セグメントS1(1)に関連付けられうるし、セグメントS1(2)にはオフセット値VW(2)、セグメントS1(3)にはオフセット値VW(3)、セグメントS1(4)にはオフセット値S4などのように関連付けられうる。オフセット値VW(i)は、例えば、特定の時間又は範囲、特定の数のサンプリング数、又は、特定の数のフレームと対応しうる。一連のセグメントS1(1〜i)に、対応する一連のオフセット値VW(1〜i)は関連付けられ、それに基づいて、手段40は、第1の情報信号IS1と第2の情報信号IS2との間のサンプルレート差を測定しうる。オフセット値VW(i)は、この目的のために、サンプルレート差を計算するための手段(40)に供給される。
【0026】
いくつかの実施形態において、第1の情報信号および第2の情報信号は、類似の又は同一の信号でありえる。ここにおいて、その情報信号のうちの少なくとも1つが、通信チャネルを介して伝送された。2つの情報信号IS1、IS2のうちの1つは、干渉を受けていない基準信号でありえ、そして、その他方の情報信号は、(遠隔)通信接続を介した又は伝送ネットワークを介した伝送で干渉を受けた、あるいは、その伝送後低下させられた各情報信号でありえる。情報信号IS1、IS2のうちの1つは、例えば調べられる信号でありえる。それは、例えば、(遠隔)通信システムまたはネットワークの出力信号または一般的には調べられる要素である。情報信号IS1、IS2のうちのその他方の1つは、通常、伝送要素又は調べられる通信チャネル又は送信テストシステムなどへの入力信号として、それぞれ供給され、そして、伝送後に出力信号と比較されることになる原信号又は基準信号でありえる。本発明のデバイス10を用いて、サンプルレート差の測定による情報信号の時間的位置合わせおよびその特徴または信号形状の対応する割り当てとは別に、改善された、より客観的な比較は、情報信号の伝送路に基づいて変化しうるサンプルレートの適合によって与えられうる。情報信号IS1、IS2間のサンプルレート差は、例えば、入力側と出力側の異なるクロックのために、または、使用された送信方法および対応するソフトウェアのために、一部分は故意に、一部分は許容差のために、生じうる。
【0027】
図1bにおいて概略的に示されるように、干渉を受けた第2の情報信号IS2は、伝送品質に関して第1の情報信号IS1、すなわち入力信号と比較されることになる干渉テストシステム又は遠隔通信システムの出力信号でありえる。図1bにおいて、情報信号IS2は、例えば、第1の情報信号IS1に関する2つのエラーE1、E2を含む。これらのエラーE1、E2は、例えば、干渉を受ける伝送から生じえたものでありえる。
【0028】
実施形態によれば、第1の情報信号IS1と第2の干渉を受けた情報信号IS2間のサンプルレート差を測定するためのデバイス10は、オフセット測定手段20を含みうる。このオフセット測定手段20は、第2の干渉を受けた情報信号IS2に第1の情報信号IS1の複数のセグメントS1(i)を時間的に位置合わせするオフセット値VW(i)を測定しうる。このようにして測定されたオフセット値は、それから、オフセット値VW(i)に基づいてサンプルレート差を計算するための手段40に供給されうる。同上は、それからサンプルレート差を測定しうる。手段40により測定されたサンプルレート差は、平均で出されたサンプルレート差でありえる。サンプルレート差からは、さらに第1および第2の情報信号間のサンプルレート比率が測定されうる。
【0029】
本発明の実施形態において、サンプルレート差を計算するための手段40は、差分オフセット値DVW(i)を得るために、第1の情報信号IS1の異なるセグメントS1(i)と関連したオフセット値VW(i)間の差を測定するために実施されうる。サンプルレート差を計算するための手段40は、ここで、サンプルレート差の計算が差分オフセット値DVW(i)に基づいて実行されるように、更に実施されうる。差分オフセット値は、このように例えばその後のオフセット値間の差又は絶対差でありえる。換言すれば、例えば、差分又は差オフセット値DVW(i)は、VW(i+1)−VW(i)、または、絶対値|VW(i+1)―VW(i)|と等しいこともありえる。
【0030】
本発明の実施形態において、サンプルレート差を計算するための手段40は、オフセット値VW(i)に依存する分布の統計評価によって第1の情報信号IS1と第2の情報信号IS2間のサンプルレート差を測定する又は計算するために実施されうる。例えばいくつかのサンプリング数またはサンプルに対応しうるオフセット値は、サンプルレート差を計算するための手段を用いて、統計学的に評価される異なる値を有することができ、こうして、サンプルレート差は測定されうる。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、この統計評価は、ヒストグラム解析を用いて実行されうる。これに関して、例えばオフセット値VW(i)又は差分オフセット値DVW(i)は、ヒストグラムにおいて、又は、ヒストグラム型の方法、すなわち、間隔又は階級で、分けられ、順序付けられ、および、プロットされうる。統計評価は、サンプルレート差を測定するための方法を実行するプログラムコードを有するコンピュータ・プログラムを用いて実行されうる。特に、本発明は、このように、後に更に詳細に説明されるサンプルレート差を測定するための方法を実行しているコンピュータ・プログラムまたはコンピュータ・プログラム製品にも基づく。オフセット値VW(i)又は差分オフセット値DVW(i)は、図2に示されたように、ヒストグラムにおいてプロットされうる。ヒストグラムのX軸に、オフセット値VW(i)はプロットされる。オフセット値VW(i)は、ここで、例えばフレームでありえる。他の実施形態において、x軸に関して、例えば差分オフセット値、サンプリング数又はサンプルレート差測定のための他の情報単位は、プロットされうる。
【0032】
ヒストグラムに関して一般的にある場合のように、各値の範囲は、所定の間隔幅を有する異なる階級または間隔に分けられうる。同上は、同じ幅を必ずしも有さなくてもよい。各階級または各間隔全体にわたって、その領域が測定値の階級特有の度数に比例している長方形が、設定される。この場合、これは、ヒストグラムのy軸に関して、各オフセット値の度数がプロットされることを意味する。
【0033】
サンプルレート差を計算するための手段40は、このように、オフセット測定手段により測定されたオフセット値に基づいて、分布の統計評価を実行しうる。このように、例えば、オフセット値VW(i)の度数分布、又は、オフセット測定手段20により測定された差分オフセット値DVW(i)は、第1の情報信号IS1およびIS2間のサンプルレート差を計算するために使用されうる。図2に示されたように、そこのヒストグラムに関して、統計傾向、例えば3.77の標準偏差(StdDev)および94.444%の信頼性を有するおよそ160フレームという平均値(中心)が結果として生じる。
【0034】
オフセット値VW(i)に依存する分布の統計評価によってサンプルレート差を計算するための手段40はまた、例えば、異常値または非常に粗い偏差または分布の値のエラーが分布から取り除かれるように、あるいは、別の評価において考慮されないように、実施されうる。
【0035】
ここで、ヒストグラムから、例えば確率密度関数(probability density function)(PDF)を用いて、中心傾向、例えばヒストグラムの中央値又は平均(mean)又は平均(average)値は、測定されうる。この中央値又は平均値は、測定されたサンプルレート差に対応しうる。ヒストグラムは、更に正規化されたヒストグラムでありえる。
【0036】
ここで、非常に簡略化した形の図3において、第1の情報信号IS1と第2の情報信号IS2間のサンプルレート差を測定するための方法に関する一実施形態が、概略的に示される。図3のセクションAにおいて、第1の情報信号IS1は、サンプル値の軸に、記号的に配置される。情報信号IS1は、さらにまたオフセット測定手段によって、一連のセグメントS1(1)〜S1(7)に分けられうる。第2の情報信号IS2もまた、サンプル値の第二軸に記号的に配置される。そこにおいて、その2つの軸の軸スケーリングは異なりうる。すなわち、第1の情報信号IS1は、第2の情報信号のサンプル値軸から独立したサンプル値軸を有する。個々のセグメントS1(1)〜S1(7)は、次に、オフセット測定手段によって、第2の情報信号IS2、および、第2のサンプリング値軸上の対応する信号点またはセグメントS2(1)〜S2(7)と関連付けられる。オフセット測定手段20は、ここで、第1の情報信号IS1の複数のセグメントS1(1)〜S1(7)の各々に関して、複数のセグメントS1(1)〜S1(7)を、第2の情報信号および対応する情報点又はセグメントS2(1)〜S2(7)と、時間的に、または、サンプル値に関して位置合わせする関連したオフセット値VW(1)〜VW(7)を測定する。
【0037】
本実施形態において、ここで、例えば第1の情報信号IS1のセグメントS1(1)は、101サンプル値の相対的オフセット値VW(1)を有する。第2のセグメントS1(2)は、情報信号IS2および対応する情報セグメントS2(2)に対して103サンプル値の相対的オフセット値VW(2)を有する。第3のセグメントS1(3)に関して、S2(3)に対して103の値VW(3)という結果を生じ、セグメントS1(4)の第4のオフセット値VW(4)に関しても、103という値が、第2の情報信号セグメントS2(4)に対する結果として生じる。セグメントS1(5)は、対応するセグメントS2(5)に対して103サンプル値のオフセット値VW(5)を有し、セグメントS1(6)は、S2(6)に対して102サンプル値のオフセット値VW(6)を有し、そして、セグメントS1(7)は、例えば、第2の情報信号IS2の対応する情報信号セグメントS2(7)に対して102サンプル値のオフセット値VW(7)を有する。いくつかの実施形態によれば、オフセット測定手段は、セグメントS1(i)と対応する情報信号点又はセグメントS2(i)との間の相対的なオフセット値を測定するために実施されうる。
【0038】
図3のセクションBにおいて概略的に示されるように、これらのオフセット値は、表に入れられうる。オフセット値に基づいたサンプルレート差を計算するための手段40は、表またはリストにオフセット値および対応する測定された数値を入れるために実施されうる。第1の列において、例えば、オフセット値が、対応して測定された数値、すなわち、例えば、VW(1)=101およびVW(2)=103などでプロットされる。サンプルレート差を計算するための手段40は、対応するオフセット値VW(i)からすでに上述された差分オフセット値DVW(i)を計算するために、任意で更に実施される。
【0039】
例えば、第2のオフセット値VW(2)と第1のオフセット値VW(1)の差からの第1の差分オフセット値DVW(1)として、値2は生じる。すなわち、第2の情報信号に対する第1の情報信号のずれは、一定部分を有するだけでなく、セグメント間の異なるオフセット値がサンプルレート差によって存在しうる。例えば103オフセット値という一定のオフセット値を有し、そして、対応する差分オフセット値DVW(2)〜DVW(4)=0を有するオフセット値VW(2)〜VW(5)に関する場合のように、情報信号IS1およびIS2の特定のセクションが一定の時間的オフセットだけを有する場合、一定のオフセット値が結果的に生じる。
【0040】
サンプルレート差を計算するための手段40は、いくつかの実施形態によれば、一連のN個(Nは2以上)の後に続く同一のオフセット値VW(i)に、オフセット値と関連した一連のN個の後に続く同一の正規化差分オフセット値NDVM(i)を割り当てるために実施されうる。これらの正規化差分オフセット値NDVM(i)は、N+1番目のオフセット値VW(N+1)とN番目のオフセット値VW(N)に関する差分オフセット値と数字Nの商に相当する。このように、一連のN個の関連した正規化されたオフセット値のために、次のことが適用される。NDVW=((VW(N+1)―VW(N))/N)。
【0041】
図3の簡略化された例において、このようにN=4個の後に続く同一のオフセット値VW(2)〜VW(5)に関して、オフセット値と関連したN=4個の対応して後に続く正規化差分オフセット値NDVW(2)〜NDVW(5)に関して、1/4という値が結果として生じる。上述のように、この値は、N+1番目のオフセット値、すなわちここではVW(6)とN番目のオフセット値、ここではVW(5)に関する差分オフセット値の商から生じる。この値は、差分オフセット値DVW(5)=1に対応し、それから、後に続く同一のオフセット値の個数N=4によって割り算される。これから、一連のN=4個の後に続く同一の正規化差分オフセット値NDVW(2)〜NDVW(5)に関して、それぞれ、1/4という値が生じる。すなわち、差分オフセット値のリープは、先行する一定の差分オフセット値全体に、等しく分配される。
【0042】
他の実施形態において、サンプルレート差を計算するための手段40は、先行する一定のオフセット値全体にわたって等しくオフセット値リープを分配するために実施される。このように、例えば、オフセット値VW(6)=102は、先行する一定のオフセット値VW(2)〜VW(5)=103に分配される。その結果、これらのオフセット値の各々に、102.8という値が割り当てられる。
【0043】
図3のセクションCにおいて示されるように、ここで、例えば正規化差分オフセット値NDVW(i)は、ヒストグラムの形でプロットされうる。ヒストグラムのx軸に、本実施形態において、正規化差分オフセット値は、プロットされる。差分オフセット値は、ここで、1/4の間隔幅を有する間隔で又は階級でプロットされる。y軸には、対応する値の度数がプロットされる。本実施例において、このように正規化差分オフセット値1/4に関して、バーは4の高さまでプロットされ、そして、正規化差分オフセット値NDVW(1)およびNDVW(6)がそれに合うように入れられる。すでに上述されたように、サンプルレート差を計算するための手段40は、分布値の中の、例えば値NDVW(1)=2のような異常値を取り除いて、ヒストグラムの評価においてそれを考慮しないように実施されうる。
【0044】
度数分布から、サンプルレート差を計算するための手段40によって、例えば中心傾向は、測定されうるし、そして、対応する平均の差分オフセット値または遅延リープは、各サンプル値に関して測定されうる(サンプルあたりの遅延差)。この点で、例えば確率密度関数(probability density function)(PDF)を用いて、ヒストグラムまたは度数分布から、1サンプル値につき最も頻繁に生じる平均(mean)又は平均(average)遅延リープが読み出されうる。この値が充分な頻度を有する場合、この値は、サンプルレート又はフレームレートの偏差のために信頼性が高い尺度として役立つことができる。比較的多数のオフセット値または測定点を得るために、第1の情報信号IS1は、非常に短い時間的部分またはセグメントまたはフレームに分けられうる。それらのセグメントの時間的継続時間は、例えば、5秒より小さくてもよい。すなわち、例えば1秒又はさらに小さい0.1秒でもよい。
【0045】
図4において、サンプルレート差を測定するための方法の更なる実施形態は、概略的に示される。セクションAにおいて、第1の情報信号IS1および第2の情報信号IS2は、ここでも各サンプル値軸に示される。第1の情報信号IS1は、オフセット測定手段20によって、セグメントS1(1)〜S1(7)に分けられる。それに類似して、図3と関連して説明されたように、それらのセグメントは、ここでも第2の情報信号(IS2)の対応する位置またはセグメントS2(1)〜S2(7)に関して対応するオフセット値VW(1)〜VW(7)を有する。これらのオフセット値VW(i)は、オフセット測定手段20により測定される。オフセット値VW(1)〜VW(7)は、第2の情報信号IS2に関して時間的にセグメントS1(1)〜S1(7)を位置合わせする。図4の実施形態において、オフセット値は、図3の実施形態とは対照的に、絶対的なオフセット値である。このように、セグメントS1(1)は、情報信号IS2に関する100のサンプルの絶対的オフセット値VW(1)を有する。それに類似して、対応するセグメントS1(i)に関して、以下の絶対的オフセット値となる。VW(2)=180、VW(3)=310、VW(4)=345、VW(5)=500、VW(6)=560およびVW(7)=630。オフセット値に基づいてサンプルレート差を計算するための手段40は、今この実施形態によれば、回帰分析を用いて、この分布の統計評価を実行するために実施される。図4のセクションBにおいて概略的に示されるように、これに関して、絶対的オフセット値VW(1)〜VW(7)は、第1の情報信号のセグメントS1(i)の関連したサンプル値に関するダイアグラムにおいてプロットされうる。結果として生じている回帰直線77から、それからその直線傾斜度(line pitch)mから、サンプルレート差が、そして、Y軸との交差tから、平均の絶対的オフセット値が、サンプルレート差を計算するための手段40によって計算されうる。
【0046】
図5aにおいて、第1の情報信号IS1と第2の情報信号IS2との間のサンプルレート差を測定するためのデバイス10のための更なる実施形態の概略図が示される。本実施形態において、サンプルレート差を測定するためのデバイス10は、サンプルレート差が所定の閾値より大きい場合、第1のIS1および第2のIS2情報信号のサンプルレートの偏差の低減を実行するために実施されるサンプルレート変更手段80を更に含む。サンプルレート変更手段80は、このように、第1の情報信号と第2の情報信号間のサンプルレート差を計算するための手段40によって測定されたサンプルレート差に基づいて、サンプルレート差のこの偏差の低減、すなわち、第1の情報信号および第2の情報信号とのサンプルレートの近似または位置合わせを実行しうる。これに関して、サンプルレート変更手段18は、例えば、第1の情報信号または第2の情報信号の、または、両方の情報信号IS1、IS2のサンプルレートを変えるために実施されうる。その結果、2つの情報信号のサンプルレート差は、減少する。これに関して、サンプルレート変更手段は、サンプルレート変換を実行しうる。サンプルレート変更手段80は、第1の情報信号および第2の情報信号のサンプルレートが完全に近似されるように実施されうる。サンプルレート変更手段は、第1の情報信号と第2の情報信号間のサンプルレート差に関して所定の閾値に依存する低減を実行しうる。例えば、この閾値は、サンプルレート差がない、すなわちゼロのサンプルレート差だけが、第1の情報信号と第2の情報信号との間で許容されるように定義されうる。しかしながら、所定の閾値は、例えば、フレームあたり1サンプルとフレームまたはセグメントあたり10サンプルとの間に存在しうる。本発明の他の実施形態において、この所定の閾値はまた、異なって定義されうる。
【0047】
図5aにおいて概略的に示されるように、サンプルレート差を測定するためのデバイス10は、互いに対する第1の情報信号IS1および第2の情報信号IS2の時間的位置合わせのための手段100を更に含みうる。第1の情報信号IS1および第2の情報信号IS2の時間的位置合わせのための手段100は、時間的位置合わせによって、情報信号IS1およびIS2の第2のそれぞれ配置された状態を生み出すために実施されうる。この第2のそれぞれ配置された状態は、第2のそれぞれ時間的に位置合わせされた又は配置された状態に対応しうる。これに関して、手段100は、第1の情報信号IS1を第2の信号IS2に、あるいはまた、第2の情報信号IS2を第1の情報信号IS1に位置合わせするために実施されうる。第1の情報信号IS1および第2の情報信号IS2は、互いに対して相互に時間的に位置合わせされることもまた、当然可能である。図5aにおいて概略的に示されるように、理想とされた場合におけるセグメントS1(1)〜S1(4)は、対応する情報セグメントまたは情報点S2(1)〜S2(4)に正確に位置合わせされる。第1の情報信号と第2の情報信号の時間的位置合わせのための手段100は、この時間的位置合わせが、第1の情報信号IS1と第2の情報信号間で第2の時間的に位置合わせされた状態を生み出すために、第1の情報信号IS1と第2の情報信号との間のサンプルレート差の偏差の低減後に実行されるように更に実施されうる。理想的な場合において、サンプルレート差は、完全に相殺されうる。すなわち、サンプルレート差がもはや存在せず、そのため、オフセット値VW(1)〜VW(4)はゼロの値を有する。すなわち、第1の情報信号S1(i)のセグメントと第2の情報信号のセグメントS2(i)間のオフセットおよびサンプルレート差はない。
【0048】
いくつかの実施形態によれば、サンプルレート変更手段80は、終了判定基準が満たされるまで、サンプルレートの偏差の低減を繰り返し実行するために実施されうる。これに関して、例えば、サンプルレート差を測定するための手段40はまた、オフセット値に基づいてサンプルレート差の計算または測定を繰り返し実行して、サンプルレート変更手段80にこれらの繰り返し計算されたサンプルレート差値を供給するために、挿入されうる。ここで、同上は、終了判定基準が満たされるまで、サンプルレートの偏差の繰り返しの低減を実行することができる。終了判定基準は、例えば、上述の閾値、時間的値、本発明の方法が実行されるコンピュータの処理能力によって与えられた値、または、本発明のデバイスの操作者によって与えられた設定でありえる。
【0049】
図5bにおいて概略的に示されるように、第1の情報信号IS1と第2の情報信号IS2との間のサンプルレート差を測定するためのデバイス10は、第1の情報信号IS1と第2の情報信号IS2との間の情報品質差を測定するために実施される品質測定手段120を更に含む。品質測定手段120は、例えば時間的位置合わせのための手段100によって、第2のそれぞれ配置された状態における第1の情報信号と第2の情報信号間の情報品質差を測定するために実施されうる。更に、品質測定手段120は、第2のそれぞれ配置された状態において、すなわちサンプルレート差の偏差の低減後、第1および第2の情報信号間の情報品質差を測定するために実施されうる。
【0050】
図5bにおいて、第1の情報信号IS1および第2の情報信号IS2は、両方とも時間的に位置合わせされ(時間的位置合わせ)、更に、サンプルレートは、所定の閾値までサンプルレート変更手段80によって位置合わせされる。これらの2つの情報信号IS1、IS2は、ここで、品質測定手段120に供給される。その結果、第1の情報信号および第2の情報信号の客観的な情報品質差は、品質測定手段を用いて測定されうる。品質測定手段は、例えば、ネットワーク、例えば遠隔通信ネットワーク又は一般的には伝送ネットワークに入る第1の入力情報信号を、このネットワークを介した伝送後の出力情報信号IS2と比較しうる。図5bにおいて概略的に示されるように、元の情報信号IS1と比較して、例えば、送信された情報信号IS2がエラーE1、E2を含む場合、この客観的な情報品質差は、品質測定手段によって測定されうる、又は、定量化されうる。この測定において、第1の情報信号IS1および第2の情報信号IS2は、第2のそれぞれ位置合わせされた又は時間的に位置合わせされた状態にありうる。時間的配置に関するこの位置合わせは、情報信号の時間的位置合わせのための上記手段100によって実行されることができ、そして、2つの情報信号IS1とIS2間のサンプルレートの偏差の低減は、サンプルレート変更手段80によって実行されることができる。それから品質測定手段120によって、例えば、それを用いて情報又は情報信号が伝送される異なるネットワークあるいは送信システムあるいは遠隔通信チャネル間の情報品質伝送差は、測定されうる。例えば、同じ元の情報信号IS1が、例えば更なるエラーE3のように、異なるネットワークまたは変更されたネットワークを介した伝送において付加的な干渉を有する場合、干渉E1、E2を有する第2の情報信号とエラーE1、E2およびE3を有する伝送との間の情報品質差の測定から、他方の又は変更されたネットワークの「低下した」伝送品質は測定されうる。これは、もちろん、品質測定を示すための極めて簡略化された説明である。
【0051】
本発明は、第1の情報信号と第2の情報信号間のサンプルレート差を検出する、計算する、または、測定するためのロバストな方法を示す。本発明のデバイスおよび方法は、非常に短い信号に関して、または、非常に短いセグメントに関して、そして、更にサンプル/フレームレートのわずかな偏差に関しても、なお確実に機能することができる。デバイスおよび方法はまた、もちろん、より長い又は長いセグメントに関して、そして、サンプルレートのより大きな偏差に関して使用されることもできる。
【0052】
図6には、本発明の一実施形態による第1の情報信号IS1と第2の情報信号IS2間のサンプルレート差を測定するための方法に関するフローチャートが示される。本方法は、第1の情報信号IS1の複数のセグメントの各々に関して、第2の情報信号IS2に対して複数のセグメントを時間的に位置合わせする関連したオフセット値を測定するステップ200と、更に、これらのオフセット値に基づいてサンプルレート差を計算する又は測定するステップ210を含む。サンプルレート差および対応する終了判定基準の大きさに応じて、本方法はまた、終了判定基準に達するまで、サンプルレート差の低減220およびステップ200、210の繰り返しの実行を含みうる。
【0053】
一実施形態によれば、まず、信号IS1、IS2は、非常に短い時間的セクション(フレームまたはセグメント)に分けられる。これらのフレームは、次に互いに関連付けられる。時間的セクション(セグメントまたはフレーム)は、情報信号のスペクトル成分のずれから、サンプルレート差に判定を下すのに必要とされる分析窓よりもはるかに短くてもよい。非常に短い分析窓のため、遅延測定またはオフセット値測定の信頼性は影響を受けうるが、その代わりに、1フレームの範囲内のより小さい偏差が、あり得るサンプルレート差のために、結果として生じる。加えて、このように、比較的多数の測定点(オフセット値)は、その後の方法ステップのために利用可能である。多数の測定点は、統計的方法のアプリケーションを成功するために重要でありうる。
【0054】
サンプルレート差を測定するための方法に関するいくつかの実施形態によれば、ここで、フレームまたは各セグメントそれぞれに関して、その直前のセグメントまたは直前のフレームに対する遅延差または差分オフセット値が表に入れられる。これは、例えば、対応するプログラムコードを有するコンピュータ・プログラムを用いて、電子的に実行されうる。各遅延リープは、ここで、いくつかの実施形態によれば、一定の遅延またはオフセット値を有する先行するフレームの数によって正規化されうる。この表から、次のステップにおいて、ヒストグラムは、それぞれ生じる正規化された遅延リープの回数に関して配置される。ここで、いくつかの実施形態によれば、(一連の遅延リープの終わりに)ゼロの差を有する遅延リープ又は差分オフセット値、あるいは、極めて高い値(異常値)は、測定された値の複数又は分布から取り除くことができて、別の評価において考慮されなくすることもできる。ヒストグラム解析の方法を使用して、ヒストグラムの非常に粗いエラーは、修正されうる。確率密度関数(probability density function)(PDF)を用いて、1サンプルあたり最も頻繁に生じている平均の遅延リープ、いわゆる1サンプルあたりの遅延差は、ヒストグラムから得られうる。この値が充分な回数を有する場合、この値は、サンプルレートまたはフレームレートの偏差、すなわちサンプルレート差のための信頼性が高い測定として役立つことができる。
【0055】
いくつかの実施形態によれば、サンプルレート差に基づいて、さらに、第1の情報信号IS1および第2の情報信号IS2のサンプルレート比率が測定されうる。サンプルレート比率は、以下の式によって説明されうる。
【0056】
(サンプルレート比率)=1.0/(1.0―(1サンプルあたりの遅延差))。
(Sample Rate Ratio=1.0/(1.0 ― Delay Difference per Sample))
【0057】
一般に、本発明の方法および本発明のデバイスは、遅延またはオフセット値が計算されうるすべての信号対に適用できる。
【0058】
図1a〜図5bの一部は、第1の情報信号と第2の情報信号間のサンプルレート差を測定するための本発明の実施形態のためのブロック図として示されるが、これらの図は、同時に、第1の情報信号と第2の情報信号間のサンプルレート差を測定するための方法のいくつかの実施形態を示すためにも役に立つ。図に関して説明されたブロックの機能は、本発明の方法のステップとして、対応して実施されうる。
【0059】
事情に応じて、本方法がソフトウェアとして、または、コンピュータ・プログラムとして実施されることもありえる点に特に留意されたい。本実施態様は、例えば、対応する方法が実行されるように、プログラミング可能な計算機システムと協動することができる電子的に読み込み可能な制御信号を有するデジタル記憶媒体、特にフロッピー(登録商標)、CDまたはDVDでありえる。一般に、本発明はこのようにまた、コンピュータ・プログラムがコンピュータで実行される際に、本方法を実行するための機械読み取り可能なキャリアに格納されたプログラムコードを有するコンピュータ・プログラム製品に存する。換言すれば、本発明は、このように、コンピュータ・プログラム製品がコンピュータで実行される際に、本方法を実行するためのプログラムコードを有するコンピュータ・プログラムとして実現されうる。
【0060】
本発明の代表的アプリケーションは、このように、例えば、新規な種類の音声品質測定方法である。この音声品質測定方法は、上述のPESQに類似して実行されうるが、改善された時間的位置合わせを有しうる。本発明の実施形態によれば、第1の情報信号IS1と第2の情報信号IS2間のサンプルレート差を測定するための方法は、まず、信号IS1、IS2の時間的位置合わせ又は適合を含みうる。その後測定された遅延又はオフセット値から、サンプルレート差は、評価される又は測定される。必要に応じて、すなわち、評価されたサンプルレート差が所定の閾値より大きい場合、サンプルレートは、互いに関して情報信号のサンプルレート変換によって適合されうるし、そして、時間的位置合わせは、さらに実行されうる。サンプルレート変換において、デジタル情報信号のサンプルレートは、1つのサンプルレートから他のサンプルレートへと変換されうるが、その一方で、情報信号に含まれる情報はできるだけ変更されない。この方式は、サンプルレート偏差が十分に小さくなる、すなわち、例えば所定の閾値より小さくなるまで、反復的に繰り返されうる。この第2の時間的に位置合わせされた状態における情報信号が低減されたサンプルレート差を有する場合、品質測定、すなわち、例えば音声品質測定は、実行されうる。ここでは、既に知られた時間的位置合わせとは違い、調べられる信号のサンプルレート差は、低減されうるので、この客観的な音声品質測定方法は、従来の音声品質測定方法と比較して、より正確な又はより客観的な音声品質測定結果を供給しうる。
【0061】
ここで、サンプルレート差を測定するための本発明の方法および本発明のデバイスは、非常に短い信号に関して、および、サンプル/フレームレートの小さい偏差に関して、それらがなお確実に機能を果たすという効果を有する。
【0062】
更なるありうるアプリケーションは、外れているサンプルレートによって、さらに外れうるオーディオ信号のピッチを再び補正することである。このように、いわゆるピッチ補正(pitch correction)は、実行されうる。
【0063】
本発明の一実施形態によれば、品質測定手段120はまた、相互相関を用いて、第2の時間的に位置合わせされた状態にある第1および第2の情報信号の情報品質差を測定しうる。
【0064】
情報信号が、例えば、ビデオ・シーケンスまたはビデオ信号である場合、1つのセグメントは、例えばビデオ信号の1つの又はいくつかの画像に対応しうる。第1および第2の情報信号IS1、IS2がオーディオ信号(例えば音楽または音声信号)である場合、1つのセグメントは、例えば、デジタル化されたオーディオストリームの一定数のサンプルを有する。
【0065】
上述された実施形態は、多かれ少なかれ、サンプルレート差が、例えば第1のおよび/または第2の情報信号にわたって大域的又は一定であるという事実に基づいていた。この仮定は、必ずしも条件が満たされている必要があるというわけではない。情報信号のうちの1つが送信された伝送路に応じて、例えば、基準信号のようなその各々の他の情報信号に対するサンプルレート差が時間的に変動する場合であってもよい。上記の実施形態は、それらが一定の又は大域的なサンプルレート差を検出する場合だけでなく、それらがサンプルレート差の時間的推移を検出する場合にも、容易に拡張されうる。1つの可能性は、例えば、上記の実施形態が、これらの所定の時間的セクションの各々に関して、同範囲内でサンプルレート差が再び一定であると仮定して、サンプルレート差を個々に測定するために、第1の又は第2の情報信号の所定の時間的セクションに局所的に適用されることである。所定の時間的セクションは、一様な時間的分割によって、または、他の基準によって、与えられることができ、そして、それらは、重複しても重複しなくてもよく、互いに隣接していても、または、互いに離れて間隔をあけてもよい。具体例が、次のパラグラフにおいて説明される。例えば回帰直線77の代わりに高次の多項式のような、時間に関する対応するサンプルレート差関数を、第1の情報信号の複数のセグメントのために測定されたオフセット値の時系列に適合させることによって、サンプルレート差の連続的変化を検出することも可能であろう。
【0066】
サンプルレート差を、それが時間的に変化しうることを考慮して、測定するための一つの例は、第1の情報信号における、例えば電話音声信号における途切れ、すなわち一定の時間を上回って、信号レベルが一定の閾値を上回らない参加者が話さない時間的セクションを検出することである。途切れを検出するための多くの異なる可能性がある。検出された途切れによって分離された残りの時間的セクションは、それから、各音声セクションに関してサンプルレート差を測定するために、サンプルレート差を測定するための上述の実施形態に、個々に次々に供給されうる。または、前の解析において、個々のセグメントにおいて測定されたオフセット値が異なる時間的音声セクションにおいて異なって実行したかを決定するだけであるが、後の場合だけ、時間的音声セクションは、別々に処理される。もちろん、上記の方法は、音声信号とは別の他の信号に適用されうる。途切れの定義はまた、前述のものと異なっていてもよい。
【0067】
さらにまた、換言すれば、上述の実施形態は、時間的に変化するサンプルレート差の検出が可能であるように、種々の方法で拡張されうる。1つのバリエーションによれば、まず、個々のセグメントの個々のオフセット値の解析によって、同上が所定の異なる信号セクションにおいて異なって実行するかどうかが決定される。そこにおいて、それに応じて、セクションは別々に処理される、あるいは、別々に処理されない。更なるバリエーションによれば、時間的セクションは、それらが音声または話し言葉を含むという事実によって測定されるが、途切れが分離していると同上は無視される。途切れは、いかなる形でも検出されうる。途切れにより分離された時間的セクションは、それからサンプルレート差測定のための上述の実施形態に、個々に供給される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の情報信号(IS1)と第2の情報信号(IS2)との間のサンプルレート差を測定するためのデバイス(10)であって、
前記第1の情報信号(IS1)の複数のセグメント(S1(i))の各々に関して、前記第2の情報信号(IS2)に前記複数のセグメント(S1(i))を時間的に位置合わせする関連したオフセット値(VW(i))を測定するためのオフセット測定手段(20)、
前記オフセット値(VW(i))に基づいて前記サンプルレート差を計算するための手段(40)を含むこと、を特徴とする、デバイス。
【請求項2】
前記サンプルレート差を計算するための前記手段(40)は、前記オフセット値(VW(i))に依存する分布の統計評価によって前記サンプルレート差を計算するために実施されること、を特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記サンプルレート差を計算するための前記手段(40)は、前記分布の異常値が取り除かれるように、前記分布の前記統計評価を実行するために実施されること、を特徴とする、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記サンプルレート差を計算するための前記手段(40)は、以下の方法、すなわち、回帰分析、中心傾向の測定、ヒストグラム解析のうちの少なくとも1つを用いて、統計評価を実行するために実施されること、を特徴とする、請求項1〜請求項3のうちの1つに記載のデバイス。
【請求項5】
前記サンプルレート差を計算するための前記手段は、差分オフセット値(DVW(i))を得るために、前記第1の情報信号(IS1)の異なるセグメント(S1(i))と関連したオフセット値(VW(i))間の差を測定するために実施され、前記サンプルレート差を計算するための前記手段(40)は、前記差分オフセット値(DVW(i))に基づいて前記サンプルレート差の前記計算を実行するために実施されること、を特徴とする、請求項1〜請求項4のうちの1つに記載のデバイス。
【請求項6】
前記サンプルレート差を計算するための前記手段(40)は、一連のN個(Nは2以上)の後に続く同一のオフセット値(VW(i))に、前記数Nで割られた、N+1番目のオフセット値(VW(N+1))およびN番目のオフセット値(VW(N))に関する前記差分オフセット値の商、すなわち、((VW(N+1)−VW(N))/N)に対応する一連のN個の後に続く同一の正規化された差分オフセット値(NDVW(i))を割り当てるために実施されること、を特徴とする、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第1および前記第2の情報信号は、オーディオ信号であること、あるいは、前記第1および前記第2の情報信号は、ビデオ信号であること、を特徴とする、請求項1〜請求項6のうちの1つに記載のデバイス。
【請求項8】
前記第1の情報信号(IS1)の1つのセグメントは、前記第1の情報信号がオーディオ信号である場合、前記第1の情報信号(IS1)の256以下であるA1個の後に続くサンプル数を、または、前記第1の情報信号がビデオ信号である場合、前記第1の情報信号(IS1)の50以下であるA2個の後に続くサンプル数を含むこと、を特徴とする、請求項1〜請求項7のうちの1つに記載のデバイス。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のうちの1つに記載の、第1の情報信号(IS1)と第2の情報信号(IS2)間のサンプルレート差を測定するためのデバイス、および、前記サンプルレート差が所定の閾値より大きい場合、前記第1および第2の情報信号の前記サンプルレートの偏差の低減を実行するために実施される、サンプルレート変更手段(80)。
【請求項10】
第2のそれぞれ時間的に位置合わせされた状態を生み出すために、前記第1(IS1)および前記第2(IS2)の情報信号の前記サンプルレート差の前記偏差の低減の後にある、前記第1の情報信号(IS1)と前記第2の情報信号(IS2)の互いに対する時間的位置合わせのための手段(100)を更に含むこと、を特徴とする、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記第2のそれぞれ時間的に位置合わせされた状態における前記第1の情報信号と前記第2の情報信号との間の情報品質差を測定するために実施される品質測定手段(120)を更に含むこと、を特徴とする、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記サンプルレート変更手段(80)は、終了判定基準が満たされるまで、前記サンプルレート差の前記測定および前記偏差の前記低減を繰り返し実行するために実施されること、を特徴とする、請求項9〜請求項11のうちの1つに記載のデバイス。
【請求項13】
第1の情報信号と第2の情報信号との間のサンプルレート差を測定する方法であって、
前記第1の情報信号の複数のセグメントの各々に関して、前記第2の情報信号に対して前記複数のセグメントを時間的に位置合わせする関連したオフセット値を測定するステップ(200)、および、
前記オフセット値に基づいて前記サンプルレート差を計算するステップ(210)を含むこと、を特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法を実行するためのプログラムコードを含んでいるコンピュータ・プログラム。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−531152(P2012−531152A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516599(P2012−516599)
【出願日】平成22年5月5日(2010.5.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056095
【国際公開番号】WO2010/149418
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(511311989)オプティコム ディプローム−インジェニエーア ミヒャエル キール ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】