説明

サンプル液供給方法及び容器

【課題】洗浄作業が不要で、かつサンプル液のコンタミネーションの心配もなく、更に脈流や送液途中での沈殿も生じないサンプル液供給方法及び容器を提供する。
【解決手段】バイアル本体1aに設けられた液体排出口12と、マイクロチップ2に設けられたサンプル液供給孔21とを密着させる。そして、バイアル1の蓋1bに設けられた気体導入孔11にチューブ7を差し込み、このチューブ7からバイアル1内に圧縮空気などの圧送用気体を導入することにより、バイアル1内の圧力を高め、バイアル1内に充填されたサンプル液5を、供給孔21に連通する流路23に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル液供給方法及びこの方法で使用されるサンプル液供給用容器に関する。より詳しくは、マイクロチップ内に設けられた流路に、試料を含むサンプル液を供給するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体分野における微細加工技術を応用し、シリコン及びガラスなどの無機材料又はプラスチックなどの高分子材料からなる基板内に、微細な流路や化学的及び/又は生物学的分析を行うための領域を形成したマイクロチップが開発されている。このようなマイクロチップは、少量の試料で測定可能であり、かつ低コストで作製することができ、使い捨ても可能であるため、フローサイトメトリーや医療現場における小型の電気化学センサーなど、様々な分野で利用され始めている。
【0003】
一般に、マイクロチップを用いて分析などを行う場合は、チップ表面に設けられた開口部(供給口)にコネクタ及びチューブなどを連結し、これらを介してチップ内にサンプル液を導入する(例えば、特許文献1参照)。また、その際、チューブの途中や供給孔にフィルターを配設することにより、サンプル液中にごみなどが混入することを防止している。更に、従来、流路の一部にフィルターを埋め込んだマイクロチップも提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−271717号公報
【特許文献2】特開2008−8880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来の技術には、以下に示す問題点がある。即ち、従来のサンプル液供給方法では、マイクロチップは使い捨てても、サンプル液を供給するためのコネクタ、チューブ及びバイアルなどは繰り返し使用するため、サンプル液を変更する度に洗浄作業が必要となるという問題点がある。また、この従来の供給方法では、洗浄が不十分であると、サンプル液にコンタミネーションが生じるという問題点もある。
【0006】
更に、チューブを経由してマイクロチップ内にサンプル液を供給する場合は、通常、送液にポンプが使用されるが、このポンプによる振動が伝わり、チップ内で脈流が生じるという問題点もある。更にまた、サンプル液が充填されたバイアルとマイクロチップとをつなぐチューブの長さが長いと、バイアルに沈殿防止用の撹拌機構が設けられていても、チューブ内で沈殿が生じるという問題点もある。
【0007】
そこで、本発明は、洗浄作業が不要で、かつサンプル液のコンタミネーションの心配もなく、更に脈流や送液途中での沈殿も生じないサンプル液供給方法及び容器を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るサンプル液供給方法は、容器に設けられた液体排出孔を、マイクロチップに設けられたサンプル液供給孔に直結し、前記容器内の圧力を高めることにより、前記容器内に充填されたサンプル液を、前記マイクロチップに設けられ前記供給孔に連通する流路内に供給する。
本発明においては、容器の液体排出孔とマイクロチップの供給孔とを直結しているため、チューブやコネクタなどが不要になる。また、従来の方法よりも送液経路が短縮されるため、サンプル液に沈殿が発生しにくい。更に、加圧により送液するため、脈流が生じない。
この供給方法では、前記容器は気体導入孔を備えていてもよく、その場合、該気体導入孔から気体を導入することにより、前記容器内の圧力を高めることができる。
また、前記液体排出孔の直径は、例えば0.5mm以下とすることができる。
更に、前記容器には、直径が50〜500μmである複数の液体排出孔が設けられていてもよい。
一方、前記マイクロチップには、直径が50〜500μmである複数の供給孔が設けられていてもよい。
また、前記容器と前記マイクロチップとの間にシール材を配設することもできる。
更に、前記容器内において前記サンプル液を撹拌してもよい。
【0009】
本発明に係るサンプル液供給用容器は、マイクロチップのサンプル液供給孔に直結される液体排出孔を有し、サンプル液が充填され、内部を加圧することにより、前記液体排出孔から前記サンプル液が排出されるものである。
本発明においては、液体排出孔とマイクロチップの供給孔とが直結可能であるため、チューブやコネクタなどが不要になる。また、従来の容器を使用するよりも、送液経路が短い。更に、加圧によりサンプル液を排出可能であるため、送液ポンプが不要となる。
この容器では、更に、加圧用の気体を導入するための気体導入孔を備えていてもよい。
また、直径が50〜500μmであり、フィルターとしても機能する複数の液体排出孔を有することもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、容器とマイクロチップとを直結するため、脈流や送液途中での沈殿が発生せず、更に、容器及びマイクロチップは使い捨て可能であるため、洗浄作業が不要となり、サンプル液のコンタミネーションも防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す各実施形態に限定されるものではない。また、説明は、以下の順序で行う。

1.第1の実施の形態
(容器とマイクロチップとを直結してサンプル液を供給する例)
2.第1の実施形態の変形例
(撹拌しながら供給する例)
3.第2の実施の形態
(容器にフィルター機能を付加した例)
4.第3の実施の形態
(マイクロチップにフィルター機能を付加した例)
5.第4の実施の形態
(気体導入以外の方法で容器内を加圧する例)

【0012】
<1.第1の実施の形態>
先ず、本発明の第1の実施形態に係るサンプル液供給方法(以下、単に供給方法ともいう。)について説明する。図1は本実施形態のサンプル液供給方法の構成を模式的に示す斜視図である。また、図2は図1に示すバイアル1の構造を示す断面図であり、図3はマイクロチップ2の構造を示す平面図である。図1に示すように、本実施形態の供給方法では、マイクロチップ2にバイアル1などの容器を連結し、このバイアル1に充填されているサンプル液5を、チューブなどを介さずに直接、マイクロチップ2に設けられた流路に供給する。
【0013】
[バイアル1の構成]
図2に示すように、本実施形態の供給方法で使用するバイアル1は、その内部に圧送用の気体を導入するための気体導入孔11と、充填されているサンプル液5を外部に排出するための液体排出孔12とを備えている。例えば、バイアル1が、バイアル本体1aと蓋1bとで構成されている場合は、蓋1bに気体導入孔11を設け、バイアル本体1aの底部に液体排出孔12を設けることができる。
【0014】
このバイアル1の気体導入孔11は、圧縮空気などの気体を導入可能であれば、その形状及び大きさなどは特に限定されるものではない。また、液体排出孔12は、内部が大気圧の状態ではサンプル液5が漏れ出さず、加圧することによりサンプル液5が排出される大きさであればよい。具体的には、液体排出孔12の直径を0.5mm未満とすることで、サンプル液5の漏出を防止することができる。また、液体排出孔12及びその周囲を表面処理することによっても、サンプル液5の漏出を防止することが可能である。
【0015】
なお、図2では、バイアル1の上面に気体導入孔11を設け、底面に液体排出孔12を設けたものを示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、気体導入孔11及び液体排出孔12は、バイアル本体1aの側面に設けられていてもよい。
【0016】
[マイクロチップ2の構成]
一方、図3に示すように、マイクロチップ2には、少なくとも、試料を含むサンプル液5が通流する流路23が形成されている。この流路23の始端は、サンプル液5を導入するための供給孔21に連通しており、流路23の終端は、分析後の液を排出するための排液孔22に連通している。そして、このマイクロチップ2の供給孔21に、バイアル1の液体排出孔12が直結される。
【0017】
その方法としては、例えば、バイアル1を、その液体排出孔12が供給孔21に整合するように、マイクロチップ2上に配置し、バイアル1を上方から押圧することでこれらを密着させる方法などがある。また、バイアル1の液体排出孔12を凸状とし、これをマイクロチップ2の供給孔21に嵌合させる構成にしてもよい。更に、バイアル1とマイクロチップ2との間に、Oリングなどのシール材を配設してもよい。これにより、バイアル1とマイクロチップ2との密着性を向上させて、サンプル液5の漏れを確実に防止することができる。
【0018】
前述したマイクロチップ2を形成する材料としては、例えば、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリプロピレン、PDMS(polydimethylsiloxane)、ガラス及びシリコンなどが挙げられる。特に、加工性に優れ、成形装置を使用して安価に複製することができることから、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリプロピレンなどの高分子材料で形成することが好ましい。なお、マイクロチップ2における上記以外の構成は、特に限定されるものではなく、流路の形態についても対象物などに応じて適宜選択することができる。
【0019】
なお、図3に示すマイクロチップ2では、流路23が1本しか設けられていないが、本発明はこれに限定するものではなく、チップ内に複数の流路が形成されていてもよい。具体的には、供給孔21が複数の流路に連通していたり、供給孔21に連通する流路が複数本に分岐していたりしてもよい。また、サンプル液5以外の液が通流するための流路が設けられており、その流路が、サンプル液が導入される流路23に合流するようになっていてもよい。
【0020】
[サンプル液の供給方法]
次に、バイアル1を使用して、マイクロチップ2に設けられた流路23内に、サンプル液5を供給する方法について説明する。本実施形態の供給方法では、先ず、バイアル1に試料を含むサンプル液5を充填する。例えば、バイアル1が、図2に示すようなバイアル本体1aと蓋1bで構成されるものである場合は、バイアル本体1aにサンプル液5を注入した後、蓋1bを閉める。このとき、バイアル1に設けられた液体排出孔12は、加圧しないとサンプル液5が排出されないようになっているため、この状態でサンプル液5が漏れ出すことはない。
【0021】
次に、マイクロチップ2の供給孔21に、バイアル1の液体排出孔12を直結する。具体的には、台座3の所定位置にマイクロチップ2を載置すると共に、ガイド4にバイアル1を取付け、マイクロチップ2の供給孔21と、バイアル1の液体排出孔12との位置を整合させる。その後、押止部6により蓋1bを押圧して、バイアル1の液体排出孔12をマイクロチップ2の供給孔21に密着させる。また、併せて、バイアル1の蓋1bに設けられた気体導入孔11に、バイアル1内に圧送用気体を導入するためのチューブ7を差し込む。
【0022】
なお、ガイド4は、取り付けられたバイアル1の液体排出孔12が、マイクロチップ2の供給孔21に整合する位置に、予め固定されていることが望ましい。これにより、バイアル1の位置合わせが容易になる。
【0023】
次に、チューブ7を介して、バイアル1内に圧縮空気などの圧送用気体を導入する。これにより、バイアル1内の圧力が上昇するため、液体排出孔12からサンプル液5が排出され、マイクロチップ2内に供給される。このとき、バイアル1への圧送用気体の導入量などを変更することにより、マイクロチップ2内に形成された流路23を通流するサンプル液5の流量を調節することができる。なお、マイクロチップ2内に供給されたサンプル液5は、流路23において分析などが行われた後、排液孔22からチップ外に排出される。
【0024】
[効果]
本実施形態のサンプル液供給方法では、バイアル1をマイクロチップ2に直結しているため、コネクタやチューブなどを使用せずに、バイアル1に充填されたサンプル液5を、マイクロチップ2に設けられた流路23内に供給することができる。これにより、送液中にサンプル液5が沈殿することを防止できる。また、バイアル1及びマイクロチップ2を使い捨てにすることにより、洗浄作業が不要となるため、サンプル液5のコンタミネーションを防止することができる。更に、この供給方法では、バイアル1内を加圧することで、サンプル液5を送液するため、送液ポンプを使用する従来の方法のような脈流は発生しない。
【0025】
なお、本実施形態のサンプル液供給方法は、細胞、微生物及び生体高分子物質などの生体関連微小粒子、並びに各種合成微小粒子などの分析及び/又は分取に好適であり、例えばフローサイトメトリー装置及びビーズアッセイ装置などへの適用が可能である。
【0026】
<2.第1の実施の形態の変形例>
次に、本発明の第1の実施形態の変形例に係るサンプル液供給方法について説明する。図4は本変形例の供給方法の構成を模式的に示す斜視図であり、図5は図4に示すバイアル1の内部を模式的に示す断面図である。なお、図4及び図5においては、図1〜3に示す第1の実施形態のサンプル液供給方法の構成要素と同じものには、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0027】
[装置構成及びサンプル液の供給方法]
本変形例の供給方法では、バイアル1に充填されているサンプル液5を、撹拌しながらマイクロチップ2に供給する。具体的には、図4及び図5に示すように、マイクロチップ2外にスターラー8を配設すると共に、バイアル1内にスターラーチップ9を配置する。そして、スターラー8でスターラーチップ9を回転させることによりサンプル液5を撹拌しつつ、バイアル1からマイクロチップ2にサンプル液5を供給する。なお、サンプル液5を撹拌する方法は、前述したスターラー8による方法に限定されるものではなく、その他の撹拌装置を適宜使用することができる。
【0028】
[効果]
本変形例の供給方法では、バイアル1をマイクロチップ2に直結すると共に、このバイアル1内でサンプル液5を撹拌しているため、送液中だけでなく、バイアル1内での沈殿発生も防止できる。これにより、沈殿を生じさせずにサンプル液5をマイクロチップ内に供給することができるため、効率よく分析・分取などを行うことができる。なお、本変形例の供給方法における上記以外の構成及び効果は、前述した第1の実施形態の供給方法と同様である。
【0029】
<3.第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係るサンプル液供給方法について説明する。本実施形態の供給方法では、フィルター機能を備えるバイアルを使用して、図3に示すマイクロチップ2にサンプル液を供給する。図6は本実施形態の供給方法で使用するバイアルの構造を模式的に示す断面図であり、図7は図5に示すバイアル本体10aの底面を示す平面図である。なお、図6及び図7においては、図2に示すバイアル1の構成要素と同じものには、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0030】
[バイアル10の構成]
図6に示すように、本実施形態の供給方法で使用するバイアル10は、充填されたサンプル液5を外部に排出するための微細な液体排出孔13が、複数個設けられており、これらがフィルター部14を構成している。これら液体排出孔13は、内部が大気圧の状態ではサンプル液5は漏れ出さず、加圧することによりサンプル液5が排出され、かつ、バイアル10内に混入したごみやサンプル中に含まれるごみなどは通過しない大きさであればよい。具体的には、各液体排出孔13の直径を50〜500μmとすることが好ましく、80〜200μmとすることがより好ましい。これにより、サンプル液5の送液機能を低下させずに、フィルター機能を付与することができる。
【0031】
なお、図6及び図7では、バイアル10の上面に気体導入孔11を設け、底面に液体排出孔13を設けたものを示しているが、気体導入孔11及び液体排出孔13は、バイアル本体10aの側面に設けてもよい。
【0032】
[サンプル液の供給方法]
次に、バイアル10を使用して、マイクロチップ2にサンプル液5を供給する方法について説明する。本実施形態の供給方法においては、サンプル液5が充填されたバイアル10のフィルター部14と、マイクロチップ2の供給孔21とを密着させる。なお、バイアル10に設けられた各液体排出孔13は、加圧しないとサンプル液5が排出されないようになっているため、この状態でサンプル液5が漏れ出すことはない。
【0033】
次に、バイアル10の蓋10bに設けられた気体導入孔11に、バイアル10内に圧送用気体を導入するためのチューブを差し込み、このチューブを介して、バイアル10内に圧縮空気などの圧送用気体を導入する。これにより、バイアル10内の圧力が上昇し、各液体排出孔13からサンプル液5が排出される。その際、各液体排出孔13がフィルターとして機能するため、ごみなどの混入物が除去されたサンプル液5がマイクロチップ2内に供給される。
【0034】
[効果]
本実施形態のサンプル液の供給方法では、バイアル10をマイクロチップ2に直結すると共に、このバイアル10にフィルター機能を付加しているため、バイアル10やサンプル液5内にごみなどが混入した場合でも、マイクロチップ2内に供給する前に、これらを除去することができる。なお、本実施形態のサンプル液供給方法における上記以外の構成及び効果は、前述した第1の実施形態と同様である。
【0035】
なお、前述した第2の実施形態では、バイアル本体10aの底面に複数の液体排出孔13を設けた例を示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、図2に示すバイアル1の液体排出孔12を覆うように、フィルターを配設してもよい。その場合でも、同様の効果が得られる。
【0036】
<4.第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施形態に係るサンプル液供給方法について説明する。本実施形態の供給方法では、フィルター機能を備えるマイクロチップに、図2に示すバイアル1を直結してサンプル液を供給する。図8(a)は本発明の第3の実施形態に係るサンプル液供給方法で使用するマイクロチップ20の構造を模式的に示す断面図であり、図8(b)は図8(a)に示す供給孔25を示す拡大平面図である。
【0037】
[マイクロチップの構成]
図8(a)及び(b)に示すように、本実施形態の供給方法で使用するマイクロチップ20は、流路23の始端に、サンプル液5を導入するための微細な供給孔25が複数設けられており、これら供給孔25がフィルター部24を構成している。なお、流路23の終端は、図3に示すマイクロチップ2と同様に、分析後の液を排出するための排液孔(図示せず)に連通している。
【0038】
このマイクロチップ20のフィルター部24には、バイアル1の液体排出孔12が直結される。その方法としては、例えば、バイアル1を、その液体排出孔12がフィルター部24に整合するように、マイクロチップ20上に配置し、バイアル1を上方から押圧することでこれらを密着させる方法などがある。その際、バイアル1とマイクロチップ20との間に、Oリングなどのシール材を配設してもよい。
【0039】
[サンプル液の供給方法]
次に、図2に示すバイアル1から、マイクロチップ20に、サンプル液5を供給する方法について説明する。本実施形態の供給方法においては、サンプル液5が充填されたバイアル1の液体排出口12と、マイクロチップ20のフィルター部24とを密着させる。このとき、バイアル1に設けられた液体排出孔12は、加圧しないとサンプル液5が排出されないようになっているため、この状態でサンプル液5が漏れ出すことはない。
【0040】
次に、バイアル1の蓋1bに設けられた気体導入孔11に、バイアル1内に圧送用気体を導入するためのチューブを差し込み、このチューブを介して、バイアル1内に圧縮空気などの圧送用気体を導入する。これにより、バイアル1内の圧力が上昇し、液体排出孔12からサンプル液5が排出される。その際、マイクロチップ20の各供給孔25がフィルターとして機能するため、ごみなどの混入物が除去されたサンプル液5がマイクロチップ20内に供給される。
【0041】
なお、本実施形態においては、図2に示すバイアル1を使用する場合を例にして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、図6に示すバイアル10を使用してマイクロチップ20にサンプル液を供給してもよい。また、図4及び図5に示すように、スターラーなどにより撹拌しながら、サンプル液をマイクロチップ20に供給することもできる。
【0042】
[効果]
本実施形態のサンプル液の供給方法では、バイアル1をマイクロチップ20に直結すると共に、マイクロチップ20の供給孔25にフィルター機能をもたせているため、バイアル10やサンプル液5内にごみなどが混入した場合でも、マイクロチップ2内に供給する前に、これらを除去することができる。なお、本実施形態の供給方法における上記以外の構成及び効果は、前述した第1及び第2の実施形態と同様である。
【0043】
<5.第4の実施の形態>
次に、本発明の第4の実施形態に係るサンプル液供給方法について説明する。前述した第1〜第3の実施形態においては、気体を導入することにより、バイアル内を加圧する方法を例にして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、気体導入孔を設けず、気体導入以外の方法で、バイアル内を加圧してもよい。
【0044】
図9は本実施形態のサンプル液供給方法の構成を模式的に示す斜視図であり、図10は図9に示す方法で、バイアル31内を加圧しているときの状態を示す拡大断面図である。なお、図9及び図10においては、図1に示す供給方法の構成要素と同じものには、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0045】
[バイアル31の構成]
図9及び図10に示すように、本実施形態の供給方法で使用するバイアル31は、バイアル本体31aと栓31bとで構成されており、これらにより内部が密封されるようになっている。また、バイアル31の栓31bは、バイアル本体31aの内面に沿って移動可能となっており、この栓31bを押し込むことで、バイアル31内を加圧することができる。
【0046】
[サンプル液の供給方法]
次に、バイアル31を使用して、マイクロチップ2にサンプル液5を供給する方法について説明する。本実施形態の供給方法では、例えばプランジャー32などを使用して、バイアル31の栓31bを押圧する。これにより、バイアル31内の圧力が上昇するため、液体排出孔12からサンプル液5が排出され、マイクロチップ2内に供給される。このとき、栓31bの押圧量を変えることにより、マイクロチップ2内に形成された流路を通流するサンプル液5の流量を調節することができる。
【0047】
[効果]
このように、本実施形態の供給方法では、栓31bを押圧することにより、バイアル31内を加圧しているため、装置構成を簡素化することができる。なお、本実施形態の供給方法における上記以外の構成及び効果は、前述した第1の実施形態の供給方法と同様である。また、前述した第2及び第3の実施形態の供給方法に、本実施形態の供給方法を適用することも可能であり、その場合でも同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るサンプル液供給方法の構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1に示すバイアル1の構造を示す断面図である。
【図3】図1に示すマイクロチップ2の構造を模式的に示す平面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の変形例に係るサンプル液供給方法の構成を模式的に示す斜視図である。
【図5】図4に示すバイアル1の内部を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るサンプル液供給方法で使用するバイアルの構造を模式的に示す断面図である。
【図7】図5に示すバイアル本体10aの底面を示す平面図である。
【図8】(a)は本発明の第3の実施形態に係るサンプル液供給方法で使用するマイクロチップ20の構造を模式的に示す断面図であり、(b)は(a)に示す供給孔25を示す平面図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係るサンプル液供給方法の構成を模式的に示す斜視図である。
【図10】図9に示す方法で、バイアル31内を加圧しているときの状態を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1、10、31 バイアル
1a、10a、31a バイアル本体
1b、10b 蓋
2、20 マイクロチップ
3 台座
4 ガイド
5 サンプル液
6 押止部
7 チューブ
8 スターラー
9 スターラーチップ
11 気体導入孔
12、13 液体排出孔
14、24 フィルター部
21、25 供給孔
22 排液孔
23 流路
31b 栓
32 プランジャー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に設けられた液体排出孔を、マイクロチップに設けられたサンプル液供給孔に直結し、
前記容器内の圧力を高めることにより、前記容器内に充填されたサンプル液を、前記マイクロチップに設けられ前記供給孔に連通する流路内に供給するサンプル液供給方法。
【請求項2】
前記容器は気体導入孔を備え、該気体導入孔から気体を導入することにより、前記容器内の圧力を高める請求項1に記載のサンプル液供給方法。
【請求項3】
前記液体排出孔の直径が0.5mm以下である容器を使用する請求項1又は2に記載のサンプル液供給方法。
【請求項4】
前記液体排出孔を覆うようにフィルターを配設する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のサンプル液供給方法。
【請求項5】
前記容器に、直径が50〜500μmである複数の液体排出孔が設けられている請求項1又は2に記載のサンプル液供給方法。
【請求項6】
前記マイクロチップに、直径が50〜500μmである複数の供給孔が設けられている請求項1乃至5のいずれか1項に記載のサンプル液供給方法。
【請求項7】
前記容器と前記マイクロチップとの間にシール材を配設する請求項1乃至6のいずれか1項に記載のサンプル液供給方法。
【請求項8】
前記容器内において前記サンプル液を撹拌する請求項1乃至7のいずれか1項に記載のサンプル液供給方法。
【請求項9】
マイクロチップのサンプル液供給孔に直結される液体排出孔を有し、
サンプル液が充填され、内部を加圧することにより、前記液体排出孔から前記サンプル液が排出されるサンプル液供給用容器。
【請求項10】
更に、加圧用の気体を導入するための気体導入孔を備える請求項9に記載のサンプル液供給用容器。
【請求項11】
直径が50〜500μmであり、フィルターとしても機能する複数の液体排出孔を有する請求項9又は10に記載のサンプル液供給用容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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