説明

サーファクチンを含有する農作物のそうか病防除用組成物

【課題】農作物のそうか病防除用組成物を用いた農作物のそうか病の防除方法。
【解決手段】式Iの化合物又はその塩。


(Rは、C11〜C14アルキルであり、Xは、Leu,Val又はIleから選択される)

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の属する技術分野
本発明は、式Iの化合物またはその塩を含む農作物のそうか病防除用組成物に関する。発明はさらに、式Iの化合物またはその塩を含む農作物のそうか病防除用組成物を用いたそうか病の防除方法に関する。
【0002】
従来の技術
馬鈴薯そうか病は、ストレプトマイセス属放線菌によって引き起こされる難防除土壌病害の一つで、世界各地で古くから発生が確認されている。発病した馬鈴薯の塊茎部表面には、赤褐色のかさぶた状の病斑が生じ、その組織はコルク化して小突起や小亀裂を生じる。その結果、生食・加工用としての商品価値を著しく損ない、重度に発病した場合には澱粉価が大幅に低下する。北海道では、1980年代以降に発生地域の拡大に伴う被害の増加により、馬鈴薯の安定供給を維持する上で大きな障害となっていることから、ジャガイモそうか病に関する研究が進められてきた。
【0003】
従来より、馬鈴薯そうか病に対する防除対策としては、種芋をストレプトマイシン等の抗生物質で消毒処理する方法や、クロルピクリンやペンタクロロニトロベンゼン等の合成薬剤を用いて土壌を殺菌消毒する方法がとられてきた。
【0004】
しかしながら、馬鈴薯そうか病の感染源は主に土壌であるので、前者のように単に種芋を消毒するだけでは顕著な効果が得られない。一方、後者のように合成薬剤による土壌殺菌は、土壌伝染性の病原菌に拮抗性を有し発病抑止能力示す土壌微生物までも殺菌してしまい、かえって発病が助長される場合もある。また、土壌中に有害な化学物質が蓄積されたり、更には薬剤散布作業者の健康を損なう危険性がある等、薬害による労働災害や環境破壊の原因になるという大きな問題がある。
【0005】
他の防除策としては、そうか病病原菌であるストレプトマイセス属菌の生育適性pH領域を外すために、土壌のpHを低下させる方法があるが、収量が大きく低下したり、馬鈴薯の後に栽培する作物にも悪影響を及ぼす等の問題があり、適用が極めて制限される。
【0006】
そこで、上記のような問題を生じない植物病害の防止策として、微生物を利用する生物学的防除の方法があり、これまでに多くの事例が報告されているが、馬鈴薯そうか病に対する生物学的防除の例は数少ない。その例としては、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)に属するMD−4f株、シュードモナス(Pseudomonas)に属するF13−1株、エンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)に属する2−3B株、アシネトバクター(Acinetobacter)に属するM24−1株の少なくとも1種類を含む懸濁液に種芋を浸漬したり、細菌を乾燥粉末又はスラリーとして種芋に塗布或いは散布したり、馬鈴薯栽培土壌に散布する方法(特開平1−193203)、バチラスKF−44(Bacillus sp.KF−44)菌株の懸濁液に馬鈴薯等の植物体を浸漬処理する方法(特開平2−48509)、バチラス・ポリミキサNT−107(Bacillus polymyxa NT−107)および/またはバチラス・サブチリスNT−107(Bacillus subtilis NT−107)を含む資材を馬鈴薯に直接散布したり、栽培土壌に散布する方法(特開2001−327281)、バチラスMK−1−1株を含む資材を馬鈴薯栽培土壌に散布する方法(特開2004−2390)が報告されている。
【0007】
しかしながら、上記のいずれの微生物による方法も、実際にいかなる物質が病原菌であるストレプトマイセス属菌に対する抗菌性を有するのかについては何ら開示されていない。
【0008】
現在までに報告されているバチラス・サブチリス由来の抗菌化合物としては、一般的によく知られるイツリン(非特許文献1)、サーファクチン(非特許文献2)などの環状ペプチド化合物が知られているが、そうか病病原菌であるストレプトマイセス属放線菌に対する抗菌作用については知られていない。
【0009】
また、特開平6−135811では、サーファクチンを併用することにより、イツリンの植物病原菌に対する抗菌作用が高まること、並びにサーファクチン単独では抗菌作用を示さないことが報告されているが、そうか病病原菌であるストレプトマイセス属放線菌に対する抗菌作用については何ら述べられていない。
【0010】
【特許文献1】特開平1−193203
【特許文献2】特開平2−48509
【特許文献3】特開2001−327281
【特許文献4】特開2004−2390
【特許文献5】特開平6−135811
【非特許文献1】Peypoux et al. Biochemistry, 17, 3992-3996 (1978)
【非特許文献2】Vollenbroich et al. Appl. Environ. Microbiol., 63(1):44-9 (1997)
【0011】
発明が解決しようとする課題
本発明は、上記の現状に鑑み、効率よくかつ安全に、さらに畑地での実際の栽培においても用いうる馬鈴薯を含む農作物のそうか病防除用組成物を提供すること、およびそのような組成物を用いた農作物のそうか病の防除方法を提供することを目的とする。
【0012】
課題を解決するための手段
本発明者はかかる課題を解決するために、バチラス・サブチリス(Bacillus subtilis)の培養液由来の成分について鋭意検討した結果、式Iの化合物またはその塩が農作物のそうか病病原菌であるストレプトマイセス属放線菌に対して抗菌活性を有することを見出し、本発明を完成した。
【0013】
したがって、本発明は、式Iの化合物またはその塩を含む農作物のそうか病防除用組成物、特に馬鈴薯のそうか病防除用組成物である。
【0014】
【化1】

【0015】
本発明は、好ましくはサーファクチン(式II)またはその塩を含む農作物のそうか病防除用組成物である。
【0016】
【化2】

【0017】
本発明は、式Iの化合物またはその塩の濃度がフリー体換算で1〜10mg/kgであるそうか病防除用組成物である。
【0018】
さらに本発明は、式Iの化合物またはその塩を含む、ストレプトマイセス属放線菌を病原菌とするそうか病の防除用組成物である。例えば、前記ストレプトマイセス属放線菌はストレプトマイセス・タージディスカビースである。
【0019】
また、本発明は、式Iの化合物またはその塩を含む農作物のそうか病防除用組成物であって、さらにバチラス・サブチリス(Bacillus subtilis)の菌体、好ましくはバチラス・サブチリスSAM2267株(FERM P−17761)の菌体を含む防除用組成物である。
【0020】
本発明は、式Iの化合物またはその塩を含む農作物のそうか病防除用組成物であって、ゼオライト、またはコーヒー抽出残滓、茶類抽出残滓などの食品産業廃棄物を含む防除用組成物である。
【0021】
また、本発明は、式Iの化合物またはその塩を含む農作物のそうか病防除用組成物を用いる農作物のそうか病防除方法である。例示的には、上記組成物と種芋を接触させることによる防除、上記防除組成物を植物体に散布することによる防除、または上記防除組成物を土壌中に混和または散布することによる防除方法である。
【0022】
上記防除組成物を土壌中に混和または散布することによる農作物のそうか病の防除方法では、土壌の単位面積当たりフリー体換算で0.01〜5mg/mの量の式Iの化合物またはその塩を土壌中に混和または散布する。
【0023】
さらに本発明は、馬鈴薯を含む農作物のそうか病病原菌であるストレプトマイセス属放線菌の増殖を阻害するための、式Iの化合物またはその塩の使用である。
また、本発明は、農作物の栽培において、式Iの化合物またはその塩を含む防除組成物を用いる、農作物の栽培方法である。
【0024】
発明の実施の形態
農作物のそうか病防除用組成物
本発明でいう「農作物」には、テンサイ、ニンジン、大根および馬鈴薯など、そうか病にかかりうるすべての農作物が含まれる。
【0025】
本発明でいう「そうか病」とは、土壌伝染病害で放線菌よって引き起こされる病気である。病斑はかさぶた状で、病原菌の種に関係なく環境条件の違いにより陥没型と隆起型になる。
【0026】
本明細書でいう「そうか病防除」とは、そうか病の病原菌であるストレプトマイセス属放線菌の生育を阻害する作用に基づいてそうか病を予防すること、そうか病の発生を軽度および/または低頻度に抑えること、並びにそうか病の進行を抑制することを含む。
【0027】
本発明の農作物のそうか病防除用組成物は、式Iの化合物またはその塩を含む。好ましくは、サーファクチン(式II)またはその塩を含む。
尚、式I中のRはC11〜C14アルキルであるが、アルキルとは、直鎖の飽和炭化水素または枝分かれ鎖の飽和炭化水素を表わしている。すなわち、C11〜C14アルキル部分は、直鎖構造のものと分岐位置の異なるものが存在するが、好ましくは環構造側のC部分は直鎖構造であり、さらに好ましくは環構造側のC部分は直鎖構造である。
【0028】
【化3】

【0029】
【化4】

【0030】
サーファクチンは、バチラス・サブチリスの培養液から抽出・分離により見出されたものであり、上式に示すようにその分子は7分子のアミノ酸からなる環状ペプチドの親水性部位と、長い脂肪酸残基による疎水性部位とで構成される。アミノ酸は1分子のL−グルタミン酸、1分子のL−アスパラギン酸、2分子のD−ロイシン、2分子のL−ロイシンを含む。脂肪酸部分は、鎖長と分岐位置が異なる数種のものが存在する。皮膚一次刺激性が極めて低く、生分解性も良好である。洗顔料、シャンプー等の材料として広く使用されていることからもわかるように、安全性の高い物質である。
【0031】
本発明の作物のそうか病防除用組成物の成分である式Iの化合物またはその塩は、これらの化合物のいずれでもよく、またそれらの複数の物質の混合物であってもよい。また、式Iの化合物の塩は、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムのようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、リジンなどのアミノ酸塩あるいはアンモニウム塩、塩酸や硝酸といった無機酸塩、酢酸やクエン酸といった有機酸塩のいずれでも良く、また水和物などの溶媒和物であってもよい。なかでも、ナトリウム塩およびフリー体を好適に用いることができる。
【0032】
また、式Iの化合物またはその塩は、微生物由来品や合成品など由来は特に限定されず、市販品を用いても良い。また微生物由来品を用いる場合、精製したものを用いてもよいが、式Iの化合物またはその塩を含有する微生物由来の画分、例えば、菌体やその抽出物などを用いることができる。
【0033】
式Iの化合物またはその塩を微生物を用いた方法により得るには、培養、抽出、必要により分離・精製の工程を実施する。用いる菌株は、原菌のストレプトマイセス属菌の増殖を阻害する活性を有するバチルス・サブチリスであれば、いずれであってもよい。バチルス・サブチリスの培養は当業者に周知な方法で実施することができる。式Iの化合物またはその塩のバチラス・サブチリス培養液からの抽出は、例えば溶媒抽出により行うことができる。例示すれば、酢酸エチルもしくは酢酸エチルより若干極性が高い溶媒を使用し、混合液を十分に混合できる装置を用いて実施することができる。分離・精製は、当業者によく知られた方法により、またはそれらの組合せにより行うことができる。例えば、薄層クロマトグラフィー(TLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などにより、分離精製することができる。分離された成分の構造は、NMR、GC−MS、IRなどの一般的な分析手段の組合せにより確認することができる。
【0034】
馬鈴薯そうか病病原菌であるストレプトマイセス属放線菌に対する式Iの化合物またはその塩の抗菌活性は、当業者に周知の試験法により確認することができる。例えば、あらかじめ滅菌したペーパーディスクにサーファクチン系ペプチドをしみ込ませた後に乾燥させ、これをストレプトマイセス属菌の胞子プレートの中央に置き、一定期間培養後の阻止円の半径を測定することにより評価することができる。
【0035】
本発明の農作物のそうか病防除用組成物には、式Iの化合物またはその塩が、当該組成物中にフリー体換算で、0.1〜100mg/kg程度、より好ましくは1〜10mg/kg含まれるのが望ましい。
【0036】
本発明の農作物のそうか病防除用組成物は、バチラス・サブチリス(Bacillus subtilis)の菌体、好ましくはバチラス・サブチリスSAM2267株(FERM P−17761)の菌体を含んでいてもよい。当該菌体は、バチラス・サブチリスをその生育に適した条件で培養し、菌体を回収することにより得ることができる。当該菌体は、乾燥菌体またはウェット状態の菌体であってもよい。尚、当該菌体は、本発明の農作物のそうか病防除用組成物の成分としてではなく、別に土壌に散布してもよい。
【0037】
本発明の農作物のそうか病防除用組成物は、農業用資材を含んでいてもよい。農業用資材には、農作物の栽培のために用いることのできる、土壌、バーミキュライト、などの土壌代替物、ゼオライトなどの土壌改良資材、肥料、食品産業廃棄物などの有機質資材、およびこれらを発酵(好ましくは好気発酵)させた発酵物、並びにこれらの組み合わせが含まれる。中でも食品産業廃棄物、ゼオライトが好ましい。
【0038】
食品産業廃棄物は、原料由来、製品中身由来、製造工程由来または排水由来のもの等で、直接または醗酵などの処理を行った後に、土壌に還元できるものであれば、特に限定されない。例えば、ビール工場等から排出される糖化残滓や酵母廃棄物、麦芽根(麦芽製造工程で発生する麦芽由来の副産物)、ブドウの絞りかす、活性炭および汚泥、並びにこれらの組み合わせなどが挙げられる。中でも、コーヒー抽出残滓および/または茶類抽出残滓は好適な例である。コーヒー抽出残滓または茶類抽出残滓は、例えば、飲料製造工場、あるいは喫茶店、ファーストフード店等の外食産業において発生する、コーヒーまたは茶類の抽出済みの残滓をいう。コーヒー抽出残滓または茶抽出残滓は、単独で、あるいは組み合わせて用いることができる。
【0039】
本発明組成物は、特にテンサイ、ニンジン、大根および馬鈴薯のそうか病の防除に有用であり、馬鈴薯のそうか病の防除にとりわけ有用である。
【0040】
農作物のそうか病の防除方法
本発明の農作物のそうか病の防除方法では、式Iの化合物またはその塩を含む農作物のそうか病防除組成物を用いて、そうか病を防除する。当該方法では、例えば、1)式Iの化合物またはその塩を含む農作物のそうか病防除組成物と種芋を接触させる工程、2)式Iの化合物またはその塩を含む農作物のそうか病防除組成物を植物体に散布する工程、3)式Iの化合物またはその塩を含む農作物のそうか病防除組成物を土壌中に混和または散布する工程が含まれる。
【0041】
式Iの化合物またはその塩を含む農作物のそうか病防除組成物を土壌中に混和または散布する方法では、土壌の単位面積当たり、フリー体換算で0.001〜50mg/m、より好ましくは0.01〜5mg/mの量の式Iの化合物またはその塩を土壌中に混和または散布するのが好ましい。本発明の方法では、農作物の栽培開始前に土壌中に単回添加することで、農作物の栽培期間中の継続的な抗菌効果を発揮しうる。
【0042】
農作物の栽培方法
本発明の農作物の栽培方法では、式Iの化合物またはその塩を含む防除組成物を用いて、そうか病を防除しつつ農作物を栽培する。そうか病の防除は、1)式Iの化合物またはその塩を含む農作物のそうか病防除組成物と種芋を接触させる、2)式Iの化合物またはその塩を含む農作物のそうか病防除組成物を植物体に散布する、3)式Iの化合物またはその塩を含む農作物のそうか病防除組成物を土壌中に混和または散布することにより実施される。
【0043】
本発明を実験例及び実施例によってさらに詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらのみに限定されるものではない。
【0044】
実施例
実施例1.馬鈴薯そうか病病原菌に対する抗菌活性の評価:培地中のサーファクチンナトリウム濃度の影響
サーファクチンナトリウム(和光純薬工業株式会社製:以下の実施例においても同じ)を最終濃度で10μg/ml、50μg/ml、100μg/ml含んだ寒天培地(可溶性澱粉10g、シュークロース1g、酵母エキス1g、KH2PO4 0.1g、NaNO3 0.1g、KCl0.1g、MgSO4・7H2O 0.1g、寒天 15gを蒸留水1L に溶解し、pH7.0に調整)とコントロールとしてサーファクチンナトリウム含まない寒天培地(組成は前記と同じ)を作成し、寒天培地上に馬鈴薯そうか病病原菌であるストレプトマイセス・タージディスカビース91SY−12(Streptomyces turgidiscabies91SY−12、以後、91SY−12株)の胞子懸濁液を塗抹し、30℃で3日間培養した。その結果、サーファクチンナトリウム濃度が10μg/ml、50μg/ml、100μg/mlのいずれにおいても胞子の形成が抑制される傾向が認められた(図1)。
【0045】
実施例2.馬鈴薯そうか病病原菌に対する抗菌活性の評価(ペーパーディスク法):サーファクチン濃度の影響
実施例1に示した寒天培地(サーファクチンまたはサーファクチンナトリウムを含まない)上に91SY−12株の胞子懸濁液を塗抹し、4枚のペーパーディスク(直径8ミリ)を置いた。メタノール溶解したサーファクチン溶液をペーパーディスクにしみこませる量は50μlと一定にし、サーファクチンの濃度を0mg/ml、0.01mg/ml、0.1mg/ml、1.0mg/mlと変化させた。30℃で6日間培養した結果、メタノール単独の場合とサーファクチン濃度が0.01mg/mlの場合は、胞子形成の抑制効果が認められなかったが、0.1mg/mlでは、弱いながらも胞子の形成が抑制され、1.0mg/mlで、胞子の形成が強く阻害された(図2)。
【0046】
実施例3.馬鈴薯そうか病病原菌に対する抗菌活性の評価(ペーパーディスク法):サーファクチン添加量の影響
実施例2と同様、寒天培地上に91SY−12株の胞子懸濁液を塗抹し、4枚のペーパーディスク(直径8ミリ)を置いた。メタノールにサーファクチンを濃度が10mg/mlになるように溶解し、その10μl、50μl、100μlをペーパーディスクしみこませた。30℃で11日間培養した結果、いずれのサーファクチン添加量でも、胞子の形成が強く阻害された(図3)。
【0047】
実施例4.馬鈴薯そうか病防除用の組成物の使用
サーファクチンナトリウム0.1gを水20リットルに溶解し、ゼオライト100kgと混合し、そうか病防除用組成物を作成した。前記の組成物を10アールの耕作地に散布した後、馬鈴薯を植え付けた。当該耕作地では層化病を発症することなく、良好な馬鈴薯を得ることができた。
【0048】
実施例5.馬鈴薯そうか病防除用の組成物の使用
ウーロン茶抽出残滓、コーヒー抽出残滓、汚泥を原料としてコンポストを作成した。サーファクチンナトリウム0.1gを水30リットルに溶解し、前記のコンポスト30kg、ゼオライト70kgとともに混合し、そうか病防除用組成物とした。前記の組成物を10アールの耕作地に散布した後、馬鈴薯を植え付けた。当該耕作地ではそうか病を発症することなく、良好な馬鈴薯を得ることができた。
【0049】
発明の効果
バチラス・サブチリスの培養液由来の抗菌性化合物についての報告は多数あるが、式Iの化合物またはその塩が、そうか病病原菌ストレプトマイセス属菌の生育を阻害することは、本発明者によって明らかにされるまでは知られていなかった。中でも、サーファクチンは、洗顔料やシャンプー等に広く使用されていることからもわかるように、その高い安全性が証明されている。本発明は、馬鈴薯を含む農作物のそうか病病原菌の防除のための有力な手段となるだけでなく、そうか病菌に対する拮抗作用メカニズムの解明等にも寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、サーファクチンナトリウムの馬鈴薯そうか病病原菌に対する抗菌作用について、寒天培地中のサーファクチンナトリウム濃度の影響を検討した結果を示す。
【図2】図2は、サーファクチンの馬鈴薯そうか病病原菌に対する抗菌作用について、ペーパーディスク法によりサーファクチン濃度の影響を検討した結果を示す。
【図3】図3は、サーファクチンの馬鈴薯そうか病病原菌に対する抗菌作用について、ペーパーディスク法によりサーファクチンの添加量の影響を検討した結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物またはその塩を含有する、農作物のそうか病防除用組成物:
【化1】

[ここで、Rは、C11〜C14アルキルであり、Xは、Leu、Val、またはIleから選択される]。
【請求項2】
式Iの化合物がサーファクチンである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
式Iの化合物またはその塩をフリー体換算で1〜10mg/kgの濃度で含む、請求項1記載のそうか病防除用組成物。
【請求項4】
式Iの化合物がサーファクチンである、請求項3記載の防除用組成物。
【請求項5】
農作物のそうか病が馬鈴薯のそうか病である、請求項1ないし4のいずれか一項記載の防除用組成物。
【請求項6】
農作物のそうか病がストレプトマイセス属放線菌を病原菌とするそうか病である、請求項1ないし4のいずれか一項記載の防除用組成物。
【請求項7】
ストレプトマイセス属放線菌がストレプトマイセス・タージディスカビースである、請求項6記載の防除用組成物。
【請求項8】
さらにバチラス・サブチリス(Bacillus subtilis)の菌体を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の防除用組成物。
【請求項9】
更に農業用資材を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の防除用組成物。
【請求項10】
農業用資材がゼオライトである、請求項9記載の防除用組成物。
【請求項11】
農業用資材が食品産業廃棄物である、請求項9記載の防除用組成物。
【請求項12】
食品産業廃棄物がコーヒー抽出残滓および/または茶類抽出残滓である、請求項11記載の防除用組成物。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか一項に記載の防除組成物を用いる、農作物のそうか病防除方法。
【請求項14】
請求項1ないし12のいずれか一項に記載の防除組成物と種芋を接触させることを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
請求項1ないし12のいずれか一項に記載の防除組成物を植物体に散布することを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項16】
請求項1ないし12のいずれか一項に記載の防除組成物を土壌中に混和または散布することを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項17】
土壌の単位面積当たり、フリー体換算で0.01〜5mg/mの式Iの化合物またはその塩を土壌中に混和または散布する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
馬鈴薯を含む農作物のそうか病病原菌であるストレプトマイセス属放線菌の増殖を阻害するための、式Iの化合物またはその塩の使用。
【請求項19】
農作物の栽培において、請求項1ないし12のいずれか一項に記載の防除組成物を用いることを特徴とする、農作物の栽培方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−99626(P2007−99626A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287922(P2005−287922)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【特許番号】特許第3902215号(P3902215)
【特許公報発行日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】