説明

サーボ書込み方法

【課題】ハードディスクドライブ中のトラックスクイーズを防ぐシステム及び方法を提供すること。
【解決手段】実施形態によれば、プリアンブルフィールドはトラックスクイーズを減少する方法でハードディスクドライブに書かれる。そ理想位置からのプリアンブルステッチラインの低周波数の変動を除去するために、特定のデータトラックのプリアンブルフィールドは、ディスクの多数の回転の間に書かれる。多数の回転の間に1つのデータトラックのプリアンブルフィールドを書くことによって、および各回転の間に不連続なサーボウェッジにプリアンブルフィールドを書くことによって、その理想位置からのプリアンブルステッチラインの低周波数の変動は、低周波数トラックスクイーズを生じないプリアンブルステッチラインの高周波数の変動に変換される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、一般に、ディスクドライブに関し、特にトラックスクイーズを減少するためにディスクドライブ上にプリアンブルフィールドを書く方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスクドライブは、データ記録ディスクの表面上の同心のトラックにデジタルデータを格納するデータストレージ装置である。
【0003】
データ記録ディスクはその上に磁性材料の層を備えた回転可能なハードディスクである。データはリード/ライトヘッドを使用してデータ記録ディスクの所望のトラックから読み出され、あるいは所望のトラックへ書き込まれる。リード/ライトヘッドはディスクが一定の角速度でその中心の周囲を回転する間、トラックの近傍に維持される。
【0004】
リードあるいはライト時にリード/ライトヘッドを所望のトラックに適切に位置させるために、ディスクドライブは、一般的に、閉ループサーボシステムを用いる。閉ループサーボシステムは、ディスクドライブが製造される時にディスク表面に書かれたサーボセクタに格納されたサーボ情報に依存する。サーボセクタは対象のトラック上のユーザデータフィールド間に書かれる。これらのサーボセクタはディスクの外径から内径にかけて「サーボウェッジ」あるいは「サーボスポーク」を形成し、サーボトラックライタのような外部の装置により、あるいはセルフサーボ書込み手順を使用してドライブ自身により、ディスク表面上に書かれる。リード/ライトヘッドは、リード/ライトヘッドのリード素子を用いてサーボウェッジから読まれたサーボ情報に基づいて、フィードバック制御を使用して、データ記録ディスクに関して位置決めされることができる。サーボセクタは、サーボパターンあるいは「サーボバースト」の形で、ディスク表面に関するリード/ライトヘッドの放射状の場所に関する位置情報を提供する。
【0005】
ディスク上にサーボウェッジを書く処理中に、サーボセクタは、一度にディスク上の1データトラックに典型的に書かれる。あるデータトラックに対してサーボパターンを書いている間のリード/ライトヘッド位置の変動により、データトラックに関するサーボパターンはディスク上で完全な円を形成しない。代わりに、各サーボパターンは、理想的なトラック位置から、ある変位あるいは「ランナウト」がある場所で一般に書かれる。理想的なトラック位置からのサーボパターンのこの変位は「書き込まれた」反復可能なランナウト(RRO)と呼ばれる。
【0006】
従来技術で知られているように、リード/ライトヘッドの位置における高周波外乱を引き起こす書き込まれたRROは、記録ディスクのデータトラックに沿ったリード/ライトヘッドの滑らかで制御可能な移動を促進するために各サーボセクタについての訂正要素を提供することにより、通常動作の間に容易に補償することができる。しかしながら、サーボパターンが特定のデータトラックに書かれるので、ヘッド位置の低周波数の変動が一般に生じ、したがって、通常動作の間のリード/ライトヘッドの位置の低周波外乱を引き起こす。ヘッド位置の低周波外乱、例えば500Hz未満の周波数の変動は補償するのが難しく、トラックスクイーズを引き起こすことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記に照らして、ハードディスクドライブ中のトラックスクイーズを防ぐシステム及び方法に対して技術において需要がある。
【0008】
1つ以上の実施形態が、トラックスクイーズを減少するためにディスクドライブ上にプリアンブルフィールドを書くためのシステムと方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態によれば、プリアンブルステッチラインの理想位置からのプリアンブルステッチラインの低周波数の変動を除去するために、特定のデータトラックのプリアンブルフィールドは、記憶ディスクの多数の回転の間書かれる。多数の回転の間に1つのデータトラックのプリアンブルフィールドを書くことによって、および不連続なサーボウェッジに各回転の間にプリアンブルフィールドを書くことによって、その理想位置からのプリアンブルステッチラインの低周波数の変動は、低周波数トラックスクイーズを生じないプリアンブルステッチラインの高周波数の変動に変換することができる。
【0010】
実施形態によれば、磁気記憶媒体が回転する間に磁気記憶媒体にサーボ情報を書く方法は、磁気記憶媒体の第1の回転中に、共通の半径方向位置で磁気記憶媒体上に第1、第2のタイミング基準を書くステップと、磁気記憶媒体の第2の回転中に、第1、第2のタイミング基準の間の共通の半径方向位置で磁気記憶媒体上に第3のタイミング基準を書くステップと、を具備する。
【0011】
他の実施形態によれば、磁気記憶媒体が回転する間に磁気記憶媒体にサーボ情報を書く方法は、磁気記憶媒体の第1の回転中に、磁気記憶媒体の第1の部分の上と、第1の部分の上にタイミング基準を書くステップと、磁気記憶媒体の第2の回転中に、磁気記憶媒体の第2の部分の上と、第2の部分の上にタイミング基準を書くステップと、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】サーボウェッジが第1のデータトラックおよび第2のデータトラックに書かれる際にライトヘッドが追跡するパスと記憶ディスクの一部を概略的に示す図である。
【図2】発明の実施形態に従った典型的なディスクドライブについての概略図である。
【図3】サーボウェッジ300が記憶ディスクに書かれた後に組織されたデータをとともに記憶ディスクを例証する図である。
【図4】記憶ディスクに配置され、3つの隣接したデータトラックのサーボ情報を含むサーボウェッジの一部の部分的な概要図である。
【図5】その業界において知られているようにサーボウェッジ位置のそれぞれに書かれたプリアンブルフィールドを有し、サーボウェッジの場所によって測られた記憶ディスク上のデータトラックの一部を概略的に示す図である。
【図6】発明の実施形態にしたがって、サーボウェッジ位置のある部分に書かれたプリアンブルフィールドを有し、サーボウェッジの場所によって測られた記憶ディスク上のデータトラックの一部を概略的に示す図である。
【図7】発明の実施形態にしたがって、図6に示すサーボウェッジ位置の残りの部分に書かれたプリアンブルフィールドを有するデータ格納のために書かれたプリアンブルフィールドを概略的に例証する図である。
【図8】1つの実施形態にしたがって、磁気記憶媒体が回転する間に磁気記憶媒体にサーボ情報を書くための方法ステップのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、サーボウェッジが第1のデータトラック101および第2のデータトラック102に書かれる時にヘッド107が追跡するパスと記憶ディスク100の一部を概略的に示す。
【0015】
サーボウェッジ111−115を書き込む処理の間のヘッド107の位置の低周波数の変動は、ヘッド107を理想的なトラック位置101A、102Aと異ならせ、従って第1のデータトラック101と第2のデータトラック102の間のトラックスクイーズを引き起こす。
【0016】
トラック間隔が、隣接するデータトラックのデータの完全性を保証するのに不適当な場合、トラックスクイーズが生じる。
【0017】
第1のデータトラック101のサーボウェッジを書く場合、ヘッド107は低周波数で理想的なトラック位置101Aから変化するライトヘッドパス110を追跡する。
【0018】
その結果、第1のデータトラック101のサーボウェッジ111−115のサーボ情報140は、理想的なトラック位置101Aに沿ってではなく、ライトヘッドパス110に沿って位置する。
【0019】
同様に、第2のデータトラック102のサーボウェッジを書く場合、ヘッド107は低周波数で理想的なトラック位置102Aから変化するライトヘッドパス120を追跡する。第2のデータトラック102のサーボウェッジ111−115のサーボ情報150は、理想的なトラック位置102Aに沿ってではなくライトヘッドパス120に沿って位置する。
【0020】
したがって、第1のデータトラック101および第2のデータトラック102が部分的にあるいは完全にオーバーラップするように第1のデータトラック101は理想的なトラック位置101Aから変化し得、第2のデータトラック102は理想的なトラック位置102Aから変化し得る。
【0021】
その結果、1つのトラックに格納されたデータは、隣接トラックに格納されたデータを上書きすることができ、それは非常に好ましくない。
【0022】
更に、図1に例証された低周波数トラックスクイーズはプリアンブル位相シフトによって生じた位置誤差によって悪化されたものであると知られている。
【0023】
ヌルパターン復調を使用するハードディスクドライブでは、各サーボウェッジのプリアンブルフィールドはサーボウェッジのためのタイミング基準を提供する。また、プリアンブル位相シフトが、サーボウェッジ111−115に書かれたサーボパターンのプリアンブルフィールドを構成する磁束変化の非理想的な形により生じる場合がある。
【0024】
理想的には、隣接データトラックのプリアンブルフィールドは、トラックからトラックへ放射状の連続したラインを形成するために、隣接したデータトラック間のプリアンブルステッチラインで接続されるか、縫われる線形の磁束変化により構成される。
【0025】
実際上、そのような磁束変化は、データトラック間のプリアンブルステッチラインで重大な不連続を生じる不所望の曲率および/またはチルトでしばしば書かれる。
【0026】
そのような不連続は、ライトヘッドがプリアンブルステッチライン上に位置する時、プリアンブルフィールドによって提供されるタイミング基準精度に影響する場合がある。
【0027】
したがって、通常動作の間に2つのデータトラック間のプリアンブルステッチライン上にヘッド107が位置する場合、プリアンブルステッチラインの近くのタイミング基準の不正確は重大な付加的なヘッド位置誤りを生じることがある。
【0028】
そのようなヘッド位置誤りは第1のデータトラック101と第2のデータトラック102の間で既に存在するどんなトラックスクイーズも悪化する可能性がある。
【0029】
図2は、発明の実施形態にしたがって、典型的なディスクドライブ200についての概略図である。明瞭さのために、ディスクドライブ200は上蓋なしで例証される。ディスクドライブ200は、スピンドルモータ214によって回転する少なくとも1枚の記憶ディスク210を含む。スピンドルモータ214は基板216にマウントされる。アクチュエータアームアセンブリ220も基板216にマウントされ、リード/ライトヘッド227を備えた可撓性アーム222にマウントされるスライダ221を有する。可撓性アーム222は、軸受アセンブリ226に関して回転するアクチュエータアーム224に付けられている。ボイスコイルモータ228は、記憶ディスク210に対してスライダ221を相対的に移動させ、したがって、記憶ディスク210の表面212に配置された所望の同心のデータトラックの上にリード/ライトヘッド227を位置する。スピンドルモータ214、リード/ライトヘッド227およびボイスコイルモータ228は、プリント回路基板232にマウントされる電子回路230A、230B、230C、230D、230Eに接続される。電子回路230A、230B、230C、230D、230Eはリードチャネル、マイクロプロセッサによるコントローラ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、および/またはフラッシュメモリデバイスを含む。記述の明瞭さのために、ディスクドライブ200は、単一の記憶ディスク210および単一のアクチュエータアームアセンブリ220を伴って例証される。ディスクドライブ200はさらに多数の記憶ディスクおよび多数のアクチュエータアームアセンブリを含むことができる。さらに、記憶ディスク210の両側は可撓性アームに接続された関連するリード/ライトヘッドを有することができる。
【0030】
データが記憶ディスク210に、あるいは記憶ディスク210から転送される場合、アクチュエータアームアセンブリ220は記憶ディスク210の内径(ID)と外径(OD)の間の弧をスイープする。電流がボイスコイルモータ228のボイスコイルを介して流れる場合、アクチュエータアームアセンブリ220は1つの角度方角に加速し、電流が逆方向に流れる場合、アクチュエータアームアセンブリ220は反対の角度方角に加速し、記憶ディスク210に関するアクチュエータアームアセンブリ220と、付属のリード/ライトヘッド227の位置制御を可能とする。
【0031】
ボイスコイルモータ228は、データトラック上のリード/ライトヘッド227の位置を決定するために、記憶ディスク210の各データトラックに埋め込まれているサーボセクタからリード/ライトヘッド227によって読まれた位置データを使用すると、業界において知られているサーボシステムと接続される。サーボシステムは、ボイスコイルモータ228のボイスコイルを駆動するための適正な電流を決定する。または、ドライブは電流ドライバおよび関連する回路類を使用して、電流を駆動する。
【0032】
図3は、サーボウェッジ300が記憶ディスク210に書かれた後組織されたデータを有する記憶ディスク210を例証する。サーボウェッジ300は、セルフサーボ書き込み(SSW)プロセスによってディスクドライブ200自身により、あるいはメディアライタによって記憶ディスク210に書かれることができる。サーボウェッジ300は実質的に放射状に整列し、データトラック320と交差するように示される。各サーボウェッジ300は多数のサーボセクタ350を含む。各サーボセクタ350はデータ記憶トラック320のトラックピッチ(すなわち間隔)と半径方向位置を定義するサーボ情報を含む。サーボセクタ350は、図4と共に、より非常に詳しく以下に記述される。実際上、サーボウェッジ300は多少曲げられる。例えば、サーボウェッジ300は、記憶ディスク210が回っていない間、リード/ライトヘッドがストロークを横切って移動したら、リード/ライトヘッド227により追跡されるパスを映す螺旋パターンで形成されることができる。そのような曲がったパターンは、リード/ライトヘッド227の半径方向位置に依存しないウェッジ・タイミングに有利に帰着する。単純さのために、サーボウェッジ300は図3では、実質的に直線として描かれる。
【0033】
記憶ディスク210は、さらに、データの格納のためのデータセクタ325にある同心のデータトラック320を含む。データトラック320は、サーボセクタ350に書かれたサーボ情報によって位置的に定義される。各サーボセクタ350は、所望のデータトラック320の上でリード/ライトヘッド227の位置を決めるためにリード/ライト動作中にリード/ライトヘッド227によって読まれる参照信号を含む。典型的には、記憶ディスク210に含まれるサーボウェッジ300とデータトラック320の数は図2に例証された数より相当に大きい。例えば、記憶ディスク210は何十万もの同心のデータトラック320および何百ものサーボウェッジ300を含むことができる。
【0034】
図4は、記憶ディスク210に配置され、3つの隣接したデータトラック321−323のサーボ情報を含むサーボウェッジ300の一部の部分的な概要図を示す。データトラック321−323のサーボ情報はサーボセクタ351−353にそれぞれ含まれており、メディアライタによって、あるいは一度に1つのデータトラックのためのセルフサーボ書込みプロセスの間に記憶ディスク210上に書かれる。各サーボセクタ351−353はプリアンブルフィールド410、グレーコードエリア420およびトラック321−323のサーボバーストパターン430をそれぞれ含む。プリアンブルフィールド410は、グレーコードエリア420およびサーボバーストパターン430を読むことの直前にリードチャネルのタイミングを同期させるためのタイミング基準として使用されるとともに、信号振幅の調節のための振幅基準としても使用される。グレーコードエリア420は、現在のトラック番号を示すことによりリード/ライトヘッドの概略の位置を提供する。サーボバーストパターン430はヌルパターンのサーボバーストであり、特定のデータトラックに関するリード/ライトヘッド227の高精度の位置を決定するために使用される。
【0035】
プリアンブルフィールド410、グレーコードエリア420およびサーボバーストパターン430は各々、多くの磁束変化405により形成される。理想的には、磁束変化405は、データトラック321−323に直交するように配置された直線であり、プリアンブルステッチライン415で縫い合わされる、すなわち接続されるあるいは僅かにオーバーラップされる。プリアンブルステッチライン415は隣接したプリアンブルフィールド410間の境界設定を定義する。磁束変化405が縫い合わせられる場合、それらは実質的に連続線を形成する。その結果、プリアンブルフィールド410は放射状に連続的なプリアンブルフィールドを形成する。このように、ディスクドライブ200の通常動作の間にプリアンブルフィールド410によって提供されるタイミング基準は、リード/ライトヘッド227の正確な半径方向位置にかかわらず、サーボウェッジ300に関しては一定である。プリアンブルフィールド410によりそのようなタイミング基準が与えられると、特定のデータトラックに対するリード/ライトヘッド227の正確な場所は、リード/ライトヘッド227がサーボバーストパターン430を後に通過する時に生成されたサーボバースト信号の復調により決定することができる。
【0036】
実際上、記憶ディスク210の表面に書かれた時、磁束変化405は常にデータトラックに必ずしも垂直とは限らない。代わりに、プリアンブルステッチライン415の近くで、磁束変化405は曲げることができ、その結果、格納トラック321−323に垂直な実質的に連続する線を形成するためにプリアンブルステッチライン415で常に縫い合わされるものではない。これは、データトラック320に関するリード/ライトヘッド227のスキュー角度、フリンジフィールド効果、サイドライティングおよび他の要因による。サーボウェッジ300のある領域における磁束変化405の理想的ではない形状のために、リード/ライトヘッド227がプリアンブルステッチライン415のうちの1つの近くに位置する場合、プリアンブルフィールド410によって提供されるタイミング基準の実質的な位相シフトが生じることがある。したがって、プリアンブルフィールド410によって提供されるタイミング基準はリード/ライトヘッド227の半径方向位置に依存して、変わる場合がある。それはプリアンブルの望まない位相変動に帰着する。プリアンブル位相変動はヌルパターンのようなある種のバーストパターンの復調に直接的に影響することが知られている。その結果、リード/ライトヘッド227の測定された位置の重大な誤差および悪化されたトラックスクイーズが発生する。例えば、磁束変化405の理想的ではない形状は、±30°あるいは40°のプリアンブル位相シフトを生じる場合がある。これは、トラック幅458の10%ものリード/ライトヘッド227の位置誤り、所望の理想的なトラック位置に関するリード/ライトヘッド227の位置の重大な外乱、に変換される。そのような外乱は記憶ディスクの表面上の永久に書かれた特徴の積であるので、それは「書き込まれた」反復可能なランナウト(RRO)と考えられる。
【0037】
書き込まれたRROによって生じた理想的なトラック位置からの高周波数の外乱は、ディスクドライブの初期較正期間およびセットアップ期間中に補正係数を特定のデータトラック上の各サーボセクタに関連付けることにより除去するか最小化することができる。反対に、理想的なトラック位置からの低周波数の外乱はそのような補正係数を使用して補償することが困難であり、望まれないトラックスクイーズを生じる可能性がある。発明の実施形態によれば、記憶ディスク210上のデータトラック320のサーボ情報を書く方法は、データトラックに埋め込まれているサーボ情報の位置のそのような低周波数の外乱を実質的に除去し、したがってトラックスクイーズを減少する。
【0038】
図5は、業界で知られている態様で各サーボウェッジ位置501−515のために書かれたプリアンブルフィールド501A−515Aを有し、サーボウェッジ位置501−515に及ぶ記憶ディスク210上のデータトラック500の一部を概略的に示す。プリアンブルフィールド501A−515Aは図4のプリアンブルフィールド410に実質的に類似しており、記憶ディスク210の単一の回転の間にサーボウェッジ位置501−515にそれぞれ書かれる。プリアンブルフィールド501A−515Aは、同じ回転の間に書かれた他のサーボセクタ情報をさらに含むことができる。そのようなサーボセクタ情報は、グレーコードエリア420および/またはサーボバーストパターン430の部分のようなリード/ライトヘッド227の放射状の場所に関する位置情報を含むことができる。
【0039】
示されたように、多数の磁束変化から構成されるプリアンブルフィールド501A−515A(それは多数の磁束変化から構成される)は各々近くに書かれるが、データトラック500の理想的なトラックライン550から変位520だけ離れている。理想的なトラックライン550からのプリアンブルフィールド501A−515Aの変位は、プリアンブルフィールド501A−515Aが書かれる間のサーボライタの位置の変動に対応する。参考のために、記憶ディスク210の回転の間、プリアンブルフィールド501A−515Aは、記憶ディスク210の回転に書かれるので、サーボライタパス560はサーボライタによって追跡されるパスを示す。サーボライタの位置は、プリアンブルフィールド501A−515Aを書く間の理想的なトラックライン550からの高周波数と低周波数の変動を含む。したがって、プリアンブルフィールド501A−515Aの変位520は各々低周波数成分521および高周波数成分522を含む。これらの高周波数、低周波数の変動は図5の中のサーボライタパス560によって例証される。明瞭さのために、変位520、低周波数成分521および高周波数成分522は、単に図5の中のプリアンブルフィールド503Aのために例証される。プリアンブルフィールド501A−515Aは、記憶ディスク210の単一の回転の間に書かれるので、データトラック500と隣接したデータトラックの間のプリアンブルステッチラインはサーボライタパス560をきっちりと追跡する。
【0040】
業界で知られているように、変位520の高周波数成分522を除去するために、位置補正係数は決定され、データトラック500上の各サーボセクタに適用される。
【0041】
このように、データトラック500は、ディスクドライブ200の通常の動作の間にリード/ライトヘッド227によってより容易く追跡され、そして高周波数のトラックスクイーズの発生を防止する比較的滑らかなパス近似理想トラックライン550を追跡する。そのような補正係数を使用することにより、高周波数成分522は実質的に除去することができる。しかし、低周波数成分521は減少するのが難しい。したがって、低周波数トラックスクイーズが、プリアンブルフィールド501A−515Aが重大な低周波数変位成分を持つデータトラック500の一部分に沿って今までどおり生じることがある。なぜならば、そのような成分はプリアンブルステッチラインの理想的な位置からの低周波数の変動を引き起こすからである。例証のために、プリアンブルステッチライン570は、データトラック500についてプリアンブルステッチラインの近似の場所を示す。示されたように、プリアンブルステッチライン570は、低周波数のトラックスクイーズを生じることができる重大な低周波数の変位572を備えた部分571を有する。
【0042】
発明の実施形態によれば、プリアンブルステッチラインの理想位置からのプリアンブルステッチラインの低周波数の変動を除去するために、特定のデータトラックのプリアンブルフィールドは記憶ディスクの多数の回転の間書かれる。1つのデータトラックのためのプリアンブルフィールドを多数の回転の間書くことによって、および不連続なサーボウェッジに各回転の間にプリアンブルフィールドを書くことによって、その理想位置からのプリアンブルステッチラインの低周波数の変動は、低周波数トラックスクイーズを生じないプリアンブルステッチラインの高周波数の変動に変換することができる。
【0043】
図6は、発明の実施形態にしたがって、サーボウェッジ位置601−615の一部のために書かれたプリアンブルフィールドを有し、サーボウェッジ位置601−615に及ぶデータトラック600の一部を概略的に例証する。記憶ディスク210の最初の回転の間にサーボライタがパス620を追跡するので、図6に例証されたプリアンブルフィールドは、データストレージトラック600上の不連続なサーボウェッジ位置に書かれる。具体的には、プリアンブルフィールド601A、603A、605A、607A、609A、611A、613Aおよび615Aは、サーボウェッジ位置601、603、605、607、609、611、613および615のデータトラック600にそれぞれ書かれる。参考のために、もしサーボウェッジ位置601、603、605、605、609、611、613および615でのサーボ情報のみが動作中のリード/ライトヘッド227の半径方向位置をコントロールするために使用されたならば、データトラック600のプリアンブルステッチラインの場所を示す仮想のプリアンブルステッチライン670が図6に描かれる。示されるように、仮説のプリアンブルステッチライン670が、低周波数のトラックスクイーズを生じることができる理想的なトラックライン650からの重大な低周波数の変位672が存在する領域671を含む。
【0044】
図7は、発明の実施形態にしたがって、サーボウェッジ位置601−615の残りの部分に書かれたプリアンブルフィールドを持つデータトラック600を概略的に例証する。記憶ディスク210の第2の回転の間にサーボライタがパス630を追跡するので、サーボウェッジ位置601−615の残りの部分、つまりサーボウェッジ位置602、604、606、608、610、614に書かれたプリアンブルフィールドが書かれる。具体的には、プリアンブルフィールド602A、604A、606A、608A、610A、612Aおよび614Aは、サーボウェッジ位置602、604、606、608、610、614でそれぞれ書かれる。図7で示されるプリアンブルステッチライン690は、プリアンブルフィールド601A−615Aの全てが記憶ディスク210に書かれた後のデータトラック600のプリアンブルステッチラインの位置を示す。示されるように、理想的なトラックライン650からのプリアンブルステッチライン690の変位は、低周波数成分をほとんど、あるいは全く持っておらず、その代り、プライマリ高周波数成分を含む。したがって、理想的なトラックライン650からのプリアンブルステッチライン690の変位が比較的大きいデータトラック600の領域692は、個々のそのようなサーボウェッジ位置で位置補正係数を使用することにより補償することができ、それによって、トラックスクイーズを減少することができる。
【0045】
したがって、記憶ディスク210の2以上の回転にわたってプリアンブルフィールド601A−615Aを書くことによって、プリアンブルステッチライン690と理想的なトラックライン650の間の変位の低周波数成分は、多数の高周波数の変位に分解される。言いかえれば、プリアンブルフィールドは、記憶ディスク210の1回転の間にデータトラック上の不連続なサーボセクタの第1のグループに書かれる。また、プリアンブルフィールドは、記憶ディスク210の後続の回転の間にデータトラック上の不連続なサーボセクタの別のグループに書かれる。第2のグループのプリアンブルフィールドは第1のグループのプリアンブルフィールド間に点在する、つまり、第2のグループのプリアンブルフィールドは第1のグループの2つのプリアンブルフィールドのアジマス位置間のアジマス位置のデータトラックに書かれる。
【0046】
図6、図7で例証された実施形態において、データトラック600のすべてのサーボウェッジのプリアンブルフィールドは記憶ディスク210の2回転にわたって書かれる。他の実施形態では、特定のデータトラックのプリアンブルフィールドの書込みは、記憶ディスク210の3あるいは3以上の回転に割り当てられる。
【0047】
図8は、1つの実施形態によって、磁気記憶媒体が回転される間、磁気記憶媒体にサーボ情報を書くための方法ステップの流れ図である。方法ステップは図2のディスクドライブ200と協力して記述されるが、当業者は方法ステップを任意の順番で行なうように構成されたどんなディスクドライブも発明の範囲内であると理解するだろう。
【0048】
示されるように、方法700は磁気記憶媒体の第1の回転の間にステップ701で始まる。ディスクドライブ200の記憶ディスク210はそのような磁気記憶媒体の1つの例である。ステップ701で、プリアンブルフィールド410のようなタイミング基準は記憶ディスク210の第1の部分に書かれる。タイミング基準は、メディアライタによって、あるいはセルフサーボ書込みプロセスの間にディスクドライブ200のリード/ライトヘッド227によって書かれることができる。記憶ディスク210の第1の部分は、特定のデータトラック320上の不連続なサーボセクタのグループを含む。また、タイミング基準は不連続なサーボセクタの各々に書かれる。例えば、1つの実施形態では、タイミング基準は、特定のデータトラック320上の3番目毎のサーボセクタに書かれる。
【0049】
ステップ702で、サーボバースト430のようなサーボバーストの第1の部分も、対象のデータトラック320上のサーボセクタのうちのいくつかあるいはすべてに書かれる。例えば、サーボバースト430が5〜10の磁束変化を含む場合、サーボバーストの第1の部分は磁束変化405のうちの1つあるいは2かもしれない。いくつかの実施形態では、サーボバーストの第1の部分は対象のデータトラックに埋め込まれていた各サーボセクタに書かれる。いくつかの実施形態では、ステップ701と同じ回転の間に、つまり磁気記憶媒体の第1の回転中にステップ702が実行されることが注目される。
【0050】
記憶ディスク210の第2の回転の間に、ステップ703で、タイミング基準は記憶ディスク210の第2の部分に書かれる。記憶ディスク210の第2の部分は、特定のデータトラック320上の不連続なサーボセクタの第2のグループをさらに含む。また、タイミング基準は第2のグループの不連続なサーボセクタのそれぞれに書かれる。第2のグループのサーボセクタが第1のグループのサーボセクタ間に点在することが注目される。このように、データトラック320へタイミング基準を書くために使用されたサーボライタの低周波数の変位を分解することによりディスクドライブ200内で低周波数トラックスクイーズが生じることを防ぐことができる。
【0051】
ステップ704で、各サーボバーストの第2の部分も、対象のデータトラック320上のサーボセクタのうちのいくつかあるいはすべてに書かれる。例えば、サーボバースト430が5〜10の磁束変化を含む場合、サーボバーストの第2の部分は磁束変化405のうちの1つあるいは2かもしれない。そのような実施形態では、特定のデータトラック320上のすべてのサーボセクタにプリアンブルフィールドを書くための多数の回転の使用は、データトラックにサーボ情報を書くのに必要な時間に影響しない。これは、プリアンブルフィールドがデータトラックに書かれる同じ回転の間にデータトラックのサーボバーストが書かれるからである。いくつかの実施形態では、ステップ703と同じ回転の間に、つまり磁気記憶媒体の第2の回転の間にステップ704が実行することが注目される。
【0052】
発明の実施形態はセルフサーボ書込みプロセスの間にディスクドライブ200に関してここに記述されているが、実施形態は、サーボライタを含む、記憶ディスクにサーボセクタ情報を書く任意の装置に適用することができる。
【0053】
要するに、発明の実施形態は、トラックスクイーズを減少するために、磁気記憶媒体にサーボ情報を書くためのシステムと方法とを提供する。多数の回転の間に1つのデータトラックのプリアンブルフィールドを書くことによって、および各回転の間に不連続なサーボウェッジにプリアンブルフィールドを書くことによって、理想位置からのプリアンブルステッチラインの低周波数の変動は、有利に低周波数トラックスクイーズを生じない、プリアンブルステッチラインの高周波数の変動に変換することができる。しばしば、サーボバーストも多数のステップで書かれる。したがって、プリアンブルの書き込み数がバースト書き込み数以下である場合、この方法の技術はセルフサーボ書込みに要する時間を増加させない。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0055】
200…ディスクドライブ、210…記憶ディスク、214…スピンドルモータ、216…基板、222…可撓性アーム、224…アクチュエータアーム、227…リード/ライトヘッド、228…ボイスコイルモータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前記磁気記憶媒体の第1の回転の間に共通の半径方向位置で前記磁気記憶媒体に第1と第2のタイミング基準を書くことと、
前記磁気記憶媒体の第2の回転の間に前記共通の半径方向位置で前記第1、第2のタイミング基準の間で前記磁気記憶媒体に第3のタイミング基準を書くことと、
を具備するサーボ書込み方法。
【請求項2】
前記共通の半径方向位置は前記磁気記憶媒体のデータトラックに対応する請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1、第2、第3のタイミング基準は前記磁気記憶媒体の異なるサーボセクタに各々対応する位置に書かれる請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記第1の回転の間に前記磁気記憶媒体にサーボバーストの第1の部分を書くことと、前記第2の回転の間に前記磁気記憶媒体に前記サーボバーストの第2の部分を書くこととをさらに具備する請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記サーボバーストはヌルパターンのサーボバーストを具備する請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記共通の半径方向位置に全てのタイミング基準を書いた後、第2の半径方向位置でタイミング基準を書くことをさらに具備する請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記第1、第2、第3のタイミング基準はセルフサーボ書込みプロセスの間に書かれる請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記第1、第2、第3のタイミング基準はメディアライタによって書かれる請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記第1、第2、第3のタイミング基準は各々多数の磁束変化を含むプリアンブルフィールドを具備する請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記磁気記憶媒体の第1の回転の間に前記磁気記憶媒体の第1の部分と前記磁気記憶媒体のサーボバーストの第1の部分にタイミング基準を書くことと、
前記磁気記憶媒体の第2の回転の間に前記磁気記憶媒体の第2の部分と前記磁気記憶媒体のサーボバーストの第2の部分にタイミング基準を書くことと、
を具備するサーボ書込み方法。
【請求項11】
前記磁気記憶媒体の第1の部分は多数の不連続なサーボセクタを具備し、前記タイミング基準は前記第1の部分の不連続なサーボセクタのそれぞれに書かれる請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記サーボセクタは前記磁気記憶媒体の共通の半径方向位置に配置される請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記半径方向位置は前記磁気記憶媒体のデータトラックに対応する請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記磁気記憶媒体の第2の部分は前記磁気記憶媒体の第1の部分の不連続なサーボセクタ間に点在される多数の不連続なサーボセクタを具備し、前記タイミング基準は前記第2の部分の不連続なサーボセクタのそれぞれに書かれる請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記磁気記憶媒体の前記第1の位置のサーボセクタと、前記磁気記憶媒体の前記第2の位置のサーボセクタは前記磁気記憶媒体の共通の半径方向位置に配置される請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記サーボバーストはヌルパターンのサーボバーストを具備する請求項10記載の方法。
【請求項17】
前記タイミング基準はセルフサーボ書込みプロセスの間に書かれる請求項10記載の方法。
【請求項18】
前記タイミング基準はメディアライタによって書かれる請求項10記載の方法。
【請求項19】
前記タイミング基準の各々は多数の磁束変化を含むプリアンブルフィールドを具備する請求項10記載の方法。
【請求項20】
サーボウェッジの第1のサブセットに共通の半径方向位置で前記磁気記憶媒体にタイミング基準の第1のグループを書くことと、
サーボウェッジの第2のサブセットに共通の半径方向位置で前記磁気記憶媒体にタイミング基準の第2のグループを書くことと、
を具備し、
前記サーボウェッジの第1のサブセットは前記サーボウェッジの第2のサブセット間に点在されるサーボ書込み方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−101736(P2013−101736A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−66395(P2012−66395)
【出願日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】