説明

サーマルスリーブをサージノズルに機械的に固着した加圧器

サーマルスリーブは加圧水型原子炉蒸気発生システムの一次回路の加圧器のサージノズルの穴に機械的に固着される。サーマルスリーブの固着は、熱膨張を許容し且つスリーブとノズルの内壁の間の流れを制限しながらサーマルスリーブをノズルとの同心関係に維持する一連のキー及びスロットにより行なう。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、一般的に、加圧水型原子炉発電システムの加圧器に係り、さらに詳細には、かかる加圧器のサージノズルの内部に固着されたサーマルライナーに係る。
【背景技術】
【0002】
加圧された水で冷却される原子炉発電システムの一次側は、二次側から隔離されているが有用なエネルギーを発生させるために該二次側と熱伝達関係にある閉回路を構成する。一次側は、核分裂性物質を含む複数の燃料集合体を支持する炉心内部構造を格納した原子炉容器、熱交換蒸気発生器内の一次回路、加圧水を循環させるための加圧器、ポンプ及び配管類の内部空間、蒸気発生器及びポンプをそれぞれ独立に原子炉容器と接続する配管類より成る。蒸気発生器、ポンプ及び容器に接続された配管類より成る一次側の各部品は一次側ループを形成する。
【0003】
説明の目的で、図1は蓋ヘッド12が原子炉炉心14を閉じ込めるほぼ円筒形の原子炉圧力容器10を備えた原子炉の一次系を単純化して示す。水のような原子炉の液体冷却材はポンプ16により容器10内に送入され、炉心14を通過する際、熱エネルギーを吸収して通称「蒸気発生器」と呼ぶ熱交換器18へ送られ、熱が蒸気駆動タービン発電機のような利用回路(図示せず)へ伝達される。原子炉冷却材はその後、ポンプ16へ戻されて一次ループが完成する。通常、複数個の上述したループが原子炉冷却材配管20により単一の原子炉容器10に接続されている。一次側はそのループの1つに接続された加圧器22により155バーのオーダーの高圧に維持される。
【0004】
加圧器は、圧力が許容可能な上限を超える傾向がある時は一次冷却材の流体をスプレーすることにより、あるいは圧力が許容可能な下限以下に低下する傾向がある時は一次流体を電気的に加熱することにより、一次回路の圧力を所定の限界間に維持するのを可能にする。これらの操作は、軸が垂直方向に延び、下部及び上部がドーム状の端部で閉じられたほぼ円筒形のケーシングより成る加圧器の内部で行なわれる。下方のドーム状端部にはスリーブが貫通しているが、それらのスリーブを介して電気ヒーターが加圧器内部に導入される。下方のドーム状端部には、一次回路内の圧力を設計限界内に維持するために一次ループ配管20と直接連通する入口/出口兼用サージノズルが存在する。
【0005】
図2、3及び5からわかるように、加圧器22のサージノズル24は熱過渡状態のノズルの疲労に対する影響を減少させるためのサーマルスリーブまたはライナー26が設けられている。これらのサーマルスリーブはノズル24に溶接するかまたは爆発管拡するのが一般的である。図2はノズルの内壁に沿う1つの軸方向位置28で溶接されたサーマルスリーブを示す。内端部に近い所のサーマルスリーブ26とノズルの間にスペーサ29を設けることにより、スリーブの振動を最小限に抑え、溶接時にスリーブをノズルと同心関係に維持し、ノズルとスリーブの間に熱障壁としての半径方向ギャップを維持する。図3はサージノズル24の内側表面の拡管領域30において爆発拡管されたサーマルスリーブ26を示す。これらの装着方法には共に問題がある。ノズルへのサーマルスリーブの溶接は円周の一部についてのみ行なうが、その理由は円周全体にわたって溶接するとある特定の過渡状態発生時にサーマルスリーブに受け入れ不可の応力が生じるからである。この方法によるとサーマルスリーブの背後に不均一なバイパスが生じ、ノズル内で曲がる。詳述すると、ノズルの内壁上で通常は45°のアーク長にわたって溶接を行なうと、低温の水が急に流入する過渡状態発生時に、サーマルスリーブがノズルと比べて収縮し、非対称的な溶接パターンのせいでサーマルスリーブとノズルの間の溶接部とは反対側にギャップが生じる。爆発拡管も不均一な拡管やスリーブ材料中に残留応力を発生させることがある。サ
ーマルスリーブは被覆内に切削加工で形成した溝に緊密に嵌合する。サーマルスリーブをノズル内に同心的に取付けるために利用できる特徴部分が存在しないため、低温水流入による過渡状態発生時に熱スリーブが収縮して不均一な半径方向ギャップが生じ、ノズルにはさらに熱応力及び曲げ応力が発生する。加えて、爆発拡管はいつも十分に制御できる方法ではなく、特殊な取扱いが必要で製造者にとって厄介な仕事である。
【0006】
従って、サーマルスリーブをノズル内に同心関係に維持し、スリーブとノズルの内壁の間に不均一なギャップを発生させない、サーマルスリーブをノズルに固着する改良型手段が望まれる。
【発明の概要】
【0007】
上記及び他の目的は、圧力容器、さらに特定すると、サージノズルの内壁にサーマルスリーブを機械的に固着した加圧器の圧力容器を提供する本発明により達成される。サージノズルは、軸方向寸法と、軸方向寸法の一方の端部において圧力容器の内壁に隣接する第1の開口と、軸方向寸法の第2の端部において圧力容器の外壁に隣接する第2の開口とを有する。サーマルスリーブは軸方向寸法に沿ってサージノズルの内壁の少なくとも一部を内張りするが、サーマルスリーブの第1の端部は第1の開口に近く、サーマルスリーブの第2の端部は第2の開口に近い。複数の機械式結合手段がサージノズルの内壁を第1の端部及び第1の開口に近い所でサーマルスリーブと連結し、サーマルスリーブを軸方向に支持するが、第1の複数の機械式結合手段はサージノズルの内壁の周りを周方向に離隔している。第2の複数の機械式結合手段がサージノズルの内壁をサーマルスリーブと第2の端部及び第2の開口の近くで連結し、サーマルスリーブを回転しないように固定するが、第2の複数の機械的結合手段の少なくとも一部はサージノズルの内壁の周りを周方向に離隔している。第1の複数の機械式結合手段及び第2の複数の機械式結合手段はそれぞれサーマルスリーブの周りを周方向に等間隔であるのが好ましい。
【0008】
一実施例において、第1の複数の機械的結合手段はそれぞれほぼ第1の軸方向位置にあり、第2の複数の機械式結合手段はそれぞれほぼ第2の軸方向位置にある。その一実施例では、第1の複数の機械式結合手段はキーとスロットの結合手段であり、キーがサーマルスリーブのスロット開口を貫通してサージノズルの内壁に形成した溝内に延びる。キーとスロットは細長く、周方向に延びるのが好ましい。望ましくは、キーのヘッドをキーが貫通するサーマルスリーブのスロットよりも大きくし、キーのヘッドをサーマルスリーブの内側表面に係合させてそれと溶接し、サージノズルの内壁のスロットに嵌合するキー部分をサーマルスリーブに溶接する。
【0009】
別の実施例において、第2の複数の機械式結合手段はキーとスロットの結合手段であり、スロットをサーマルスリーブの第2の端部に形成し、キーがサージノズルの内壁から半径方向内方に突出するようにする。望ましくは、第2の複数の機械式結合手段のスロットは端部が開いた形で細長く、軸方向に延びる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明は、好ましい実施例についての以下の説明を添付図面を参照しながら読むと理解がさらに深まるであろう。
【図1】図1は、本発明を利用可能な原子炉システムの単純化した概略図である。
【図2】図2は、サーマルスリーブを溶接したサージノズルの一部を示す断面図である。
【図3】図3はサーマルスリーブを爆発拡管したサージノズルの断面図である。
【図4】図4は加圧器の部分断面図である。
【図5】図5は、本発明に従ってサーマルスリーブを機械的に固着したサージノズルを示す断面図である。
【好ましい実施例の説明】
【0011】
図4を参照して、該図は加圧水型原子力発電システムの加圧器22を示す。加圧器22は垂直方向に向いた円筒状シェル32、第1のまたは上方の半球状ヘッド34、第2のまたは下方の半球状ヘッド36を有する圧力容器より成る。円筒状スカート部38は下方ヘッド36から下方に延び、容器の支持構造を形成するために溶接または他の手段で固定したフランジ40を有する。上方ヘッド34は、容器内部を保守するためのマンホールまたはマンウェイ42、それぞれ安全弁(図示せず)と流体連通関係にある1またはそれ以上のノズル44、内部に位置するスプレーノズル46を有する。スプレーノズル46は比較的低温の一次流体源と流体連通関係にあり、加圧器への比較的低温の流体の流量を制御するための手段(図示せず)が付属する。
【0012】
複数のノズル48は下方ヘッド36に垂直に取付けられ、複数の真直ぐな管状電気式投込み加熱素子50がノズル48を貫通して加圧器20内に延びる。加熱素子50は外側表面を覆う金属製シースを有し、金属製のシースとノズル48との間に漏止め溶接が形成されている。加圧器の内部において加熱素子を支持するために、単一または複数の支持板52が加圧器の下部を横断するように設けられている。支持板52は加熱素子50を受容する複数の穴54を有する。
【0013】
通称サージノズルである入口/出口兼用ノズル24は下部ヘッド36の中心に位置し、加圧器を加圧水型原子力発電所の一次流体系と流体連通関係にする。
【0014】
前述したように、加圧器のサージノズルは図2及び3に関連して述べたサーマルスリーブまたはライナーを有し、これらはノズルの疲労に対する熱過渡状態の影響を減少するために使用される。本発明によると、サーマルスリーブはノズルの穴に機械式固着手段により固着される。本発明の固着手段はスリーブが半径方向だけでなく縦方向にも完全に膨張するのを許容するが、これはサージノズルが経験する熱過渡状態に対処するための必要条件である。スリーブの固着はノズルの穴に環状溝を形成することにより行なうが、この溝はスリーブを軸方向に支持するための支持キーを受容する。回転運動を阻止するために、スリーブの下端部に、ノズル24の穴に切削により形成したキーと嵌合させるスロットを設ける。
【0015】
図5はサージノズルの内側表面を内張りするサーマルスリーブ26を本発明に従ってノズルに固着したサージノズル24を示す断面図である。サーマルスリーブ26は半径方向キー58によりノズル24の上端部で支持される。半径方向キーはサーマルスリーブ26の開口60に嵌合し、サーマルスリーブ26の穴上において周方向に(62)溶接される。半径方向キー58をそのヘッドが一方の側で大きく、開口60の周りのサーマルスリーブの内側表面により捕捉されるようにし、もう一方の端部がノズル24の表面を内張りする被覆64に切削加工により形成された環状溝66内に受容されるようにするのが好ましい。
【0016】
サーマルスリーブの下端部は軸方向に延びるスロット68を有する。ノズル24の穴に切削加工により形成した小さなキー70がこれらのスロット68と嵌合して過渡状態発生時にサーマルスリーブの下端部の同心関係を維持する。
【0017】
サーマルスリーブ26の背後の隙間領域72における流れは、上端部の盛り上がった被覆表面と下端部の両方におけるスリーブとノズルの穴の間の小さな間隙により制限される。従って、ノズルにかかる応力を実質的に増加させずに熱膨張を吸収できる、ノズルの内側表面へサーマルスリーブを固着する改良型方法が提供される。
【0018】
本発明を特定の実施例につき詳細に説明したが、当業者はこれら詳細事項に対する種々の変形例及び設計変更を本願の開示全体に照らして想到できることがわかるであろう。従って、図示説明した特定の実施例は例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものでなく、その範囲は特許請求の範囲及びその任意且つ全ての均等物の全幅を与えられるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧水型原子炉の加圧器(22)であって、加圧容器(32)が、サージノズル(24)、サーマルスリーブ(26)、第1の複数の機械式結合手段(58、60)、第2の複数の機械式結合手段(68、70)より成り、
サージノズル(24)が、軸方向寸法と、軸方向寸法の一方の端部において圧力容器の内壁に隣接する第1の開口と、軸方向寸法の第2の端部において圧力容器の外壁に隣接する第2の開口とを有し、
サーマルスリーブ(26)が前記軸方向寸法に沿ってサージノズルの内壁の少なくとも一部を内張りし、第1の開口に近い所に第1の端部を、また、第2の開口に近い所に第2の端部を有し、
第1の複数の機械式結合手段(58、60)がサージノズル(24)の内壁をサーマルスリーブ(26)と第1の端部及び第1の開口に近い所で連結し、第1の複数の機械式結合手段の一部がサージノズルの内壁の周りを周方向に離隔し、
第2の複数の機械式結合手段(68、70)がサージノズル(24)の内壁をサーマルスリーブ(26)と第2の端部及び第2の開口の近い所で連結し、第2の複数の機械的結合手段の少なくとも一部がサージノズルの内壁の周りを周方向に離隔している、加圧水型原子炉の加圧器(22)。
【請求項2】
第1の複数の機械式結合手段(58、60)がそれぞれ実質的にサーマルスリーブ(26)の周方向に等間隔である請求項1の加圧器(22)。
【請求項3】
第1の複数の機械式結合手段(58、60)がそれぞれ実質的に同じ軸方向位置にある請求項2の加圧器(22)。
【請求項4】
第2の複数の機械式結合手段(68、70)がそれぞれ実質的にサーマルスリーブ(26)の周方向に等間隔である請求項1の加圧器(22)。
【請求項5】
第2の複数の機械式結合手段(68、70)が実質的に同じ軸方向位置にある請求項4の加圧器(22)。
【請求項6】
第1の複数の機械式結合手段(58、60)がキーとスロットの結合手段である請求項1の加圧器(22)。
【請求項7】
キー(58)がサーマルスリーブ(26)の開口(60)を貫通してサージノズル(24)の内壁に形成したスロット内に延びる請求項6の加圧器(22)。
【請求項8】
キー(58)とスロット(60)が周方向に細長く延びる請求項6の加圧器(22)。
【請求項9】
キー(58)のヘッドが該ヘッドが貫通するサーマルスリーブ(26)の開口(60)より大きく、サーマルスリーブの内側表面上で捕捉され、サージノズルの内壁上のスロットに嵌合するキーの半径方向端部がサーマルスリーブに溶接される請求項7の加圧器(22)。
【請求項10】
第2の複数の機械式結合手段(68、70)がキー(70)とスロット(68)の結合手段であり、スロットがサーマルスリーブ(26)の第2の端部に形成され、キーがサージノズル(24)の内壁から半径方向内方に突出する請求項1の加圧器(22)。
【請求項11】
サーマルスリーブ(26)のスロット(68)の端部が開いている請求項10の加圧器(22)。
【請求項12】
スロット(68)が細長く軸方向に延びる請求項10の加圧器(22)。
【請求項13】
キー(70)がスロット(68)に嵌合するヘッドを有する請求項10の加圧器(22)。
【請求項14】
原子力蒸気供給システムの圧力容器(22)であって、
ノズル(24)が、軸方向寸法と、軸方向寸法の一方の端部において圧力容器の内壁に隣接する第1の開口と、軸方向寸法の第2の端部において圧力容器の外壁に隣接する第2の開口とを有し、
サーマルスリーブ(26)が前記軸方向寸法に沿ってサージノズルの内壁の少なくとも一部を内張りし、第1の開口に近い所に第1の端部を、また、第2の開口に近い所に第2の端部を有し、
第1の複数の機械式結合手段(58、60)がサージノズル(24)の内壁をサーマルスリーブ(26)と第1の端部及び第1の開口に近い所で連結し、第1の複数の機械式結合手段の一部がサージノズルの内壁の周りを周方向に離隔し、
第2の複数の機械式結合手段(68、70)がサージノズル(24)の内壁をサーマルスリーブ(26)と第2の端部及び第2の開口の近い所で連結し、第2の複数の機械的結合手段の少なくとも一部がサージノズルの内壁の周りを周方向に離隔している圧力容器(22)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−517475(P2013−517475A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548949(P2012−548949)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/062180
【国際公開番号】WO2011/087879
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(501010395)ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー (78)