説明

サーマルプリンタおよびその制御方法

【課題】プリント中にサーマル用紙の用紙切れが生じた場合でも、新たなサーマル用紙の補充を待つことなく、残りのデータをサーマル用紙に最後まで確実にプリントすることができるサーマルプリンタおよびその制御方法を提供する。
【解決手段】第1サーマルヘッド2との間の距離Z1および第2サーマルヘッド3との間の距離Z2の合計が少なくとも一単位分のデータのプリント領域を満たす位置に、用紙センサ7を設ける。この用紙センサ7は、サーマル用紙1の終端を検知する。一単位分のデータのプリントの途中で用紙センサ7がサーマル用紙1の終端1eを検知したとき、その一単位分のデータの全てを残りのサーマル用紙1にプリントするべく、第1および第2サーマルヘッド2,3によるプリントを継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、両面に感熱層を有するサーマル用紙を使用するサーマルプリンタおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
感熱層が形成されたサーマル用紙の搬送路に沿ってサーマルヘッドを設け、そのサーマルヘッドによりサーマル用紙にデータをプリントするサーマルプリンタが知られている(例えば特許文献1)。サーマル用紙は、ロール状に巻回された状態でサーマルプリンタの本体に収容され、プリントの進行に伴い繰り出されていく。
【0003】
このようなサーマルプリンタでは、サーマル用紙の搬送方向におけるサーマルヘッドより上流側の位置に、サーマル用紙を検知するための用紙センサを設けている。サーマル用紙が使い切られてその終端が用紙センサを通過すると、そこでプリントを停止し、ユーザによる新しいサーマル用紙の補充を待つことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば現金自動預払機の取引データを1取引の単位ごとにサーマル用紙にプリントして1枚のレシートを発行するサーマルプリンタの場合、プリントの途中で用紙切れが生じると、新しいサーマル用紙が補充されるのを待って、初めからプリントをやり直すことになる。このため、レシートが利用者に供給されるまでに時間がかかり、利用者に迷惑がかかる。
【0005】
途中までプリントしたレシートをそのまま発行し、残りのデータを新たなサーマル用紙にプリントしてもう1枚のレシートを発行する場合もある。この場合、2枚のレシートが利用者に渡ることになり、利用者にとっては不便である。
【0006】
この発明は、上記の事情を考慮したもので、プリント中にサーマル用紙の用紙切れが生じた場合でも、新たなサーマル用紙の補充を待つことなく、残りのデータをサーマル用紙に最後まで確実にプリントすることができるサーマルプリンタおよびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明のサーマルプリンタは、搬送されるサーマル用紙の一方の面にデータをプリントする第1サーマルヘッドと、前記サーマル用紙の他方の面にデータをプリントする第2サーマルヘッドと、前記サーマル用紙の搬送方向において前記第1サーマルヘッドより下流側の位置に設けられ、前記各サーマルヘッドによるプリントが終了した後の前記サーマル用紙をそのプリント位置より後側でカットするカッタと、前記サーマル用紙の搬送方向における前記各サーマルヘッドより上流側に、かつ前記第1サーマルヘッドとの間の距離および前記第2サーマルヘッドとの間の距離の合計が少なくとも一単位分のデータのプリント領域を満たす位置に設けられ、前記サーマル用紙の終端を検知する用紙センサと、前記一単位分のデータのプリントの途中で前記用紙センサが前記サーマル用紙の終端を検知したとき、その一単位分のデータの全てを残りのサーマル用紙にプリントし終わるまで、前記第1および第2サーマルヘッドによるプリントを継続するプリント制御手段と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
この発明のサーマルプリンタおよびその制御方法によれば、プリント中にサーマル用紙の用紙切れが生じた場合でも、新たなサーマル用紙の補充を待つことなく、残りのデータをサーマル用紙に最後まで確実にプリントすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の一実施形態の要部の構成およびサーマル用紙を示す図。
【図2】同実施形態における制御回路のブロック図。
【図3】同実施形態におけるサーマルヘッドの具体的な構成を示すブロック図。
【図4】同実施形態におけるプリント用データD0のフォーマットを示す図。
【図5】同実施形態におけるプリント結果を示す図。
【図6】同実施形態における用紙切れを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態のサーマルヘッドについて、図面を参照して説明する。まず、要部の構成を図1に示す。
1はロール状に巻かれたサーマル用紙いわゆる両面サーマル用紙で、一方の面(表面という)1aおよび他方の面(裏面という)1bにそれぞれ感熱層を有し、プリントの進行に伴い、先端側が後述の給紙機構16により図示矢印の方向に繰り出される。上記感熱層は、所定の温度以上に加熱されたときに、例えば黒色あるいは赤色に発色する材料によって形成されている。
このサーマル用紙1の搬送方向に沿って、サーマル用紙1の表面1aに接する第1サーマルヘッド2、裏面1bに接する第2サーマルヘッド3を設ける。これら第1および第2サーマルヘッド2,3は、サーマル用紙1の搬送方向と直交する方向に延びる形状を有し、サーマル用紙1の搬送方向に沿って互いに離れた位置に存する。第2サーマルヘッド3の方が、第1サーマルヘッド2よりも搬送方向の上流側である。そして、サーマル用紙1を挟んで第1サーマルヘッド2と対向する位置に、サーマル用紙1を第1サーマルヘッド2に押さえつけるための第1プラテンローラ4を設ける。サーマル用紙1を挟んで第2サーマルヘッド3と対向する位置に、サーマル用紙1を第2サーマルヘッド3に押さえつけるための第2プラテンローラ5を設ける。さらに、サーマル用紙1の搬送方向における第1サーマルヘッド2よりも下流側に、サーマル用紙1をカットするためのカッタ6を設ける。
【0011】
上流側の第2サーマルヘッド3と下流側の第1サーマルヘッド2との間の距離はX、第1サーマルヘッド2とカッタ6との間の距離はYである。
【0012】
そして、サーマル用紙1の収容部から第2サーマルヘッド3にかけての用紙搬送路に、サーマル用紙1の終端1eを検知する用紙センサ7を設ける。用紙センサ7と第1サーマルヘッド2との間の距離はZ1である。用紙センサ7と第2サーマルヘッド3との間の距離はZ2である。この距離Z1,Z2の合計は、後述する少なくとも一単位分のプリント用データD0のプリント領域を満たす距離である。
【0013】
図2に、図1の構成を含むサーマルプリンタ本体10の制御回路を示す。
主制御部であるCPU11に、制御プログラム記憶用のROM12、データ記憶用のRAM13、ホスト装置30とのデータ送受信を行う通信インタフェース14、サーマル用紙1の給紙機構16を駆動する給紙駆動回路21、カッタ6を駆動するカッタ駆動回路22、第1サーマルヘッド2を駆動するヘッド駆動回路23、第2サーマルヘッド3を駆動するヘッド駆動回路24、および用紙センサ7を接続している。ヘッド駆動回路23は、後述の第1プリント用データD1に応じて第1サーマルヘッド2を駆動する。ヘッド駆動回路24は、後述の第2プリント用データD2に応じて第2サーマルヘッド3を駆動する。
【0014】
一方、CPU11は、主要な機能として次の(1)〜(3)の手段を備える。
(1)外部のホスト装置30から入力されるプリント用データD0を、サーマル用紙1の表面1aに対する第1プリント用データD1と、裏面1bに対する第2プリント用データD2とに振り分けるデータ振分制御手段。プリント用データD0、第1プリント用データD1、第2プリント用データD2は、共に、RAM13に格納する。
(2)第1プリント用データD1に応じて第1サーマルヘッド2を駆動し、第2プリント用データD2に応じて第2サーマルヘッド3を駆動する駆動制御手段。
【0015】
(3)一単位分のデータのプリントの途中で用紙センサ7がサーマル用紙1の終端1eを検知したとき、その一単位分のデータの全てを残りのサーマル用紙1にプリントし終わるまで、第1および第2サーマルヘッド2,3によるプリントを継続するプリント制御手段。
【0016】
なお、上記第1サーマルヘッド2は、図3に示すように、ラッチ回路41、通電制御回路42、およびエッジヘッド43を有する。エッジヘッド43は、直線状に配列した熱転写用の多数の発熱体43a,43b,…43nを有する。ラッチ回路41は、ヘッド駆動回路23から供給される第1プリント用データD1を、同ヘッド駆動回路23からストローブ信号STBに応じて1ライン毎にラッチする。通電制御回路42は、エッジヘッド43の発熱体43a,43b,…43nに対する通電を、ラッチ回路41内のデータに応じて、かつヘッド駆動回路23から供給されるイネーブル信号ENBがアクティブとなるタイミングで、制御する。第2サーマルヘッド3の構成も、第1サーマルヘッド2と同じある。よって、その説明は省略する。
【0017】
つぎに、作用について説明する。
CPU11は、例えば現金自動預払機の1取引に関わる1単位分のプリント用データD0が外部のホスト装置30から入力されると、そのプリント用データD0をRAM13に記憶する。この記憶に伴い、プリント用データD0を、第1プリント用データD1と第2プリント用データD2とに振り分ける。この振り分けの一例を図4に示す。
すなわち、第1行目から第100行目の印字データからなる1単位分のプリント用データD0を、境界位置Cを境に、第1行目から第55行目の印字データからなる第1プリント用データD1と、第56行目から第100行目の印字データからなる第2プリント用データD2とに、振り分けている。振り分けた第1プリント用データD1および第2プリント用データD2は、RAM13に記憶する。
【0018】
このデータの振り分け量については、用紙センサ7と第1サーマルヘッド2との間の距離Z1および用紙センサ7と第2サーマルヘッド3との間の距離Z2を考慮している。
【0019】
この振り分け後、CPU11は、サーマル用紙1の給紙を開始し、第1プリント用データD1に応じた第1サーマルヘッド2の駆動により、サーマル用紙1の表面1aに第1行目から第55行目までのデータをプリントする。また、第2プリント用データD2に応じた第2サーマルヘッド3の駆動により、サーマル用紙1の裏面1bに第56行目から第100行目までのデータをプリントする。
【0020】
こうして、図5に示すように、第1プリント用データD1である第1行目から第55行目までのデータがサーマル用紙1の表面1aにプリントされ、第2プリント用データD2である第56行目から第100行目までのデータがサーマル用紙1の裏面1bにプリントされる。表面1aの先端側には、カッタ6と第1サーマルヘッド2との間の距離Yに対応する空白領域Lyが生じる。裏面1bの先端側には、第1サーマルヘッド2と第2サーマルヘッド3との間の距離Xに対応する空白領域Lxが生じる。
【0021】
プリントが済んだサーマル用紙1は、カッタ6でカットされ、例えば現金自動預払機の取引データが記載された1枚のレシートとして利用者に提供される。
【0022】
サーマル用紙1の使用が進むと、サーマル用紙1が減少していき、やがて図6に示すように、サーマル用紙1の終端1eが用紙センサ7で検知される。
【0023】
CPU11は、一単位分のプリント用データD0(=D1+D2)のプリントの途中で用紙センサ7がサーマル用紙1の終端1eを検知した場合、その一単位分のプリント用データD0の全てを残りのサーマル用紙1にプリントし終わるままで、第1および第2サーマルヘッド2,3によるプリントを継続する。
【0024】
用紙センサ7と第1サーマルヘッド2との間の距離Z1および用紙センサ7と第2サーマルヘッド3との間の距離Z2の合計が、少なくとも一単位分のプリント用データD0のプリント領域を満たす距離であるから、たとえ用紙センサ7が用紙切れを検知した場合でも、新たなサーマル用紙1の補充を要することなく、プリント用データD0の残りをサーマル用紙1に最後まで確実にプリントすることができる。
【0025】
したがって、新しいサーマル用紙1が補充されるのを待ってプリントをやり直すといった再プリント動作が不要となる。よって、レシートが利用者に供給されるまでに時間がかかるといった不具合を解消できる。2枚のレシートが利用者に渡る不便さも解消できる。
【0026】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を変えない範囲で種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0027】
1…サーマル用紙、2…第1サーマルヘッド、3…第2サーマル用紙、4…第1プラテンローラ、5…第2プラテンローラ、6…カッタ、7…用紙センサ、11…CPU、
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特開平11−138953号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されるサーマル用紙の一方の面にデータをプリントする第1サーマルヘッドと、
前記サーマル用紙の他方の面にデータをプリントする第2サーマルヘッドと、
前記サーマル用紙の搬送方向において前記第1サーマルヘッドより下流側の位置に設けられ、前記各サーマルヘッドによるプリントが終了した後の前記サーマル用紙をそのプリント位置より後側でカットするカッタと、
前記サーマル用紙の搬送方向における前記各サーマルヘッドより上流側に、かつ前記第1サーマルヘッドとの間の距離および前記第2サーマルヘッドとの間の距離の合計が少なくとも一単位分のデータのプリント領域を満たす位置に設けられ、前記サーマル用紙の終端を検知する用紙センサと、
前記一単位分のデータのプリントの途中で前記用紙センサが前記サーマル用紙の終端を検知したとき、その一単位分のデータの全てを残りのサーマル用紙にプリントし終わるまで、前記第1および第2サーマルヘッドによるプリントを継続するプリント制御手段と、
を備えることを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記第2サーマルヘッドは、前記サーマル用紙の搬送方向において前記第1サーマルヘッドよりも上流側の位置に存する、
ことを特徴とする請求項1記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記サーマル用紙は、両面に感熱層を有しロール状に巻かれた両面サーマル用紙であり、プリントの進行に伴い繰り出される、
ことを特徴とする請求項1記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
外部から入力される1単位分のプリント用データを、前記サーマル用紙の一方の面に対する第1プリント用データと、前記サーマル用紙の他方の面に対する第2プリント用データとに振り分けるデータ振分制御手段と、
前記第1プリント用データに応じて前記第1サーマルヘッドを駆動し、前記第2プリント用データに応じて前記第2サーマルヘッドを駆動する駆動制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1記載のサーマルプリンタ。
【請求項5】
前記サーマル用紙を前記第1サーマルヘッドに押さえつける第1プラテンローラと、
前記サーマル用紙を前記第2サーマルヘッドに押さえつける第2プラテンローラと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のサーマルプリンタ。
【請求項6】
搬送されるサーマル用紙の一方の面にデータをプリントする第1サーマルヘッドと、
前記サーマル用紙の他方の面にデータをプリントする第2サーマルヘッドと、
前記サーマル用紙の搬送方向において前記第1サーマルヘッドより下流側の位置に設けられ、前記各サーマルヘッドによるプリントが終了した後の前記サーマル用紙をそのプリント位置より後側でカットするカッタと、
前記サーマル用紙の搬送方向における前記各サーマルヘッドより上流側に、かつ前記第1サーマルヘッドとの間の距離および前記第2サーマルヘッドとの間の距離の合計が少なくとも一単位分のデータのプリント領域を満たす位置に設けられ、前記サーマル用紙の終端を検知する用紙センサと、
を備えたサーマルプリンタにおいて、
前記一単位分のデータのプリントの途中で前記用紙センサが前記サーマル用紙の終端を検知したとき、その一単位分のデータの全てを残りのサーマル用紙にプリントし終わるまで、前記第1および第2サーマルヘッドによるプリントを継続するステップ、
を備えることを特徴とするサーマルプリンタの制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−183657(P2011−183657A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51005(P2010−51005)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】