説明

サーマルプリンターのヘッド圧調節装置

【課題】印字用紙6の幅に応じてヘッド圧およびヘッド押圧部位を調節可能なサーマルプリンターのヘッド圧調節装置を提供すること。
【解決手段】用紙幅セット機構22に連結して印字用紙6の幅を検知可能とした幅検知機構23、および検知された印字用紙6の幅に応じて揺動する揺動機構24を設けて、印字用紙6の幅調節とヘッド圧およびヘッド押圧部位の調節とを連動可能とすることに着目したもので、印字用紙6の幅に合せてセットする用紙幅セット機構22と、印字用紙6の幅を検知可能とした幅検知機構23と、幅検知機構23により検知された幅に応じて揺動する揺動機構24と、揺動機構24の揺動に応じてサーマルヘッドとプラテンローラーとの間の印字用紙6の幅方向における中心押圧部位を調節可能なヘッド押圧部位調節機構25と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサーマルプリンターのヘッド圧調節装置にかかるもので、とくにサーマルヘッドやプラテンローラーなどを有するサーマルプリンターのヘッド圧調節装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のサーマルプリンター1について図3および図4にもとづき概説する。
図3は、サーマルプリンター1の概略側面図、図4は、同、概略平面図であって、サーマルプリンター1は、用紙供給部2と、移送路3と、幅調節部4と、印字部5と、を有する。
【0003】
用紙供給部2は、ラベルやタグなどの帯状の印字用紙6をロール状に保持するとともに、移送路3に沿って、幅調節部4および印字部5方向に印字用紙6を繰り出し可能としている。
【0004】
幅調節部4は、印字用紙6の幅に応じて任意の構成の案内部材7を幅方向に操作して、印字用紙6の案内幅をセットする。
【0005】
印字部5は、サーマルヘッド8およびプラテンローラー9を有し、サーマルヘッド8およびプラテンローラー9の間に所定幅の印字用紙6を挟持してこの印字用紙6をその移送路3上に移送するとともにこの印字用紙6に印字する。なお、印字用紙としては、感熱紙を用いるもの、あるいは熱転写リボンとともに用いるもの、など任意のものを採用することができる。
サーマルプリンター1に装填される印字用紙6には各種の幅があり、その幅に応じて、印字部5におけるサーマルヘッド8とプラテンローラー9との間のヘッド圧を調節するための任意の構成のヘッド圧調節機構10を設けている。
一般的には、幅の大きな印字用紙6のヘッド圧は比較的大きくし、幅が小さな印字用紙6のヘッド圧は比較的小さくする必要がある。
【0006】
さらにサーマルヘッド8は、印字用紙6の幅方向に直線状に並ぶ多数の発熱素子11を有するもので、サーマルヘッド8とプラテンローラー9との間のヘッド圧は、その幅方向において均一な押圧が必要であり、この押圧状態が不適正である場合には、印字の濃淡のバランスが乱れたり、印字のために薄いフィルム状の熱転写リボン(図示せず)を用いるタイプのサーマルプリンター1では、熱転写リボンにシワが発生してしまうという問題がある。
サーマルヘッド8とプラテンローラー9との間の均一な押圧(ヘッド圧)を得るために通常は、サーマルヘッド8の幅方向中央部をプラテンローラー9方向に向かって押圧する機構が一般的であるが、印字用紙6の幅が異なる場合に、とくにサーマルヘッド8ないしプラテンローラー9が片持ち式の場合には、サーマルヘッド8の一方の側に印字用紙6をガイドすることになるために、印字用紙6の幅が異なるたびにサーマルヘッド8の幅方向中央部を押圧することが困難になるという問題があり、押圧部位の調節も必要になる。
しかしながら、幅調節部4における案内部材7などを操作して幅調節を行うとともに、印字部5においてヘッド圧調節機構10などを操作してヘッド圧および押圧部位を調節しているために、幅調節部4および印字部5それぞれにおいて調節操作が必要であり、作業性が劣るという問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開2004−58553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上のような諸問題にかんがみなされたもので、ラベルやタグなどの印字用紙の幅に応じてヘッド圧を調節可能なサーマルプリンターのヘッド圧調節装置を提供することを課題とする。
【0009】
また本発明は、印字用紙の幅に応じてヘッド圧およびヘッド押圧部位を調節可能なサーマルプリンターのヘッド圧調節装置を提供することを課題とする。
【0010】
また本発明は、印字用紙の幅調節とヘッド圧およびヘッド押圧部位の調節とを連動可能としたサーマルプリンターのヘッド圧調節装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明は、用紙幅セット機構に連結して印字用紙の幅を検知可能とした幅検知機構、およびこの幅検知機構により検知された印字用紙の幅に応じて揺動する揺動機構を設けて、印字用紙の幅調節とヘッド圧およびヘッド押圧部位の調節とを連動可能とすることに着目したもので、サーマルヘッドおよびプラテンローラーを有し、このサーマルヘッドおよびプラテンローラーの間に所定幅の印字用紙を挟持してこの印字用紙をその移送路上に移送するとともにこの印字用紙に印字するためのサーマルプリンターのヘッド圧調節装置であって、上記印字用紙を上記移送路上に案内するとともに、その幅に合せてセットする用紙幅セット機構と、この用紙幅セット機構に連結しているとともに、上記印字用紙の幅を検知可能とした幅検知機構と、この幅検知機構に連結しているとともに、この幅検知機構により検知された上記幅に応じて揺動する揺動機構と、上記サーマルヘッドに所定押圧力で接触しているとともに、この揺動機構の揺動に応じて上記サーマルヘッドと上記プラテンローラーとの間の上記印字用紙の幅方向における中心押圧部位を調節可能なヘッド押圧部位調節機構と、を有することを特徴とするサーマルプリンターのヘッド圧調節装置である。
【0012】
上記用紙幅セット機構と上記幅検知機構とは、フレキシブルワイヤーによりこれを連結することができる。
【0013】
上記幅検知機構は、幅検知傾斜面を有する幅検知板と、この幅検知傾斜面を滑動する斜面滑動部材と、を有することができる。
【0014】
上記揺動機構は、上記幅検知機構に連結した揺動レバーを有することができる。
【0015】
上記ヘッド押圧部位調節機構は、上記揺動機構に連結しているとともに、上記サーマルヘッドを上記プラテンローラーの方向に押圧可能なヘッド押圧スプリングを有することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によるサーマルプリンターのヘッド圧調節装置においては、用紙幅セット機構による幅のセットを幅検知機構で検知し、検知した幅に応じて揺動する揺動機構によりヘッド押圧部位調節機構を駆動するようにしたので、用紙幅セット機構による用紙幅の調節操作のみで、ヘッド圧の調節およびヘッド押圧部位の中央セットをともに行うことができ、調節作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、用紙幅セット機構と、幅検知機構と、揺動機構と、ヘッド押圧部位調節機構と、を順次互いに連動するように設けたので、用紙幅セット機構による用紙幅の調節操作のみで、ヘッド押圧部位調節機構により、ヘッド圧の調節およびヘッド押圧部位の中央セットなど、適正な印字のための機械的条件をともに設定することができるサーマルプリンターのヘッド圧調節装置を実現した。
【実施例】
【0018】
つぎに本発明の実施例によるサーマルプリンターのヘッド圧調節装置20を図1および図2にもとづき説明する。ただし、図3および図4と同様の部分には同一符号を付し、その詳述はこれを省略する。
図1は、サーマルプリンターのヘッド圧調節機構20の要部破断斜視図であって、ヘッド圧調節機構20は、前記移送路3に沿ってその片側に起立して設けた本体ブラケット21を有するとともに、用紙幅セット機構22と、幅検知機構23と、揺動機構24と、ヘッド押圧部位調節機構25と、を有する。
【0019】
用紙幅セット機構22は、印字用紙6を移送路3上に案内するとともに、その幅に合せてこれをセットするもので、移送路3にまたがって設けるとともに本体ブラケット21にその一方の端部を固定したセット機構ブラケット26と、幅セットつまみ27と、一対の用紙ガイド片(セット機構ブラケット26の端部に起立固定した固定ガイド片28、およびセット機構ブラケット26に対して移動可能な可動ガイド片29)と、を有する。
【0020】
幅セットつまみ27は、セット機構ブラケット26に時計方向および反時計方向に回転可能なように印字用紙6の幅方向に設けたネジロッド30を回転操作する。
ネジロッド30の一方の端部には、可動ガイド片29をそのネジ部に係合してあり、セット機構ブラケット26に開口形成した直線状のガイド窓31に沿って、幅セットつまみ27の回転操作に応じて可動ガイド片29を固定ガイド片28方向に接離するように移動可能とし、印字用紙6の幅に合せて可動ガイド片29をセットすることができる。
可動ガイド片29には、フレキシブルワイヤー32の一端部を取り付け、フレキシブルワイヤー32の他端部は、幅検知機構23における起立片41(後述)にこれを取り付けている。フレキシブルワイヤー32にはフレキシブルカバー33を被覆してある。
フレキシブルワイヤー32は、セット機構ブラケット26に取り付けた一方のワイヤーガイド片34と、検知機構ブラケット37(後述)に形成した他方のワイヤーガイド片35とを介してフレキシブルカバー33内を往復動可能であって、用紙幅セット機構22と幅検知機構23とを連結し、用紙幅セット機構22における幅セットつまみ27の操作力を幅検知機構23に伝達可能としてある。
【0021】
幅検知機構23は、上述の用紙幅セット機構22に連結しているとともに、印字用紙6の幅を検知可能としているもので、本体ブラケット21に片持ち式に取り付けたヘッド軸36に回動可能とした検知機構ブラケット37と、幅検知板38と、斜面滑動部材39と、を有する。
検知機構ブラケット37は、その内壁面下流側に前記サーマルヘッド8を固定してあり、ヘッド軸36のまわりに回動することによりサーマルヘッド8を前記プラテンローラー9に対して開閉可能としている。
【0022】
図2は、幅検知板38部分を印字用紙6の移送方向上流側から見たその側面図であって、幅検知板38は、その頂面に幅検知傾斜面40を有し、斜面滑動部材39は、この幅検知傾斜面40上を滑動する。
斜面滑動部材39は、その一方の起立片41にフレキシブルワイヤー32を固定し、その他方の起立片42に引っ張りスプリング43を取り付けている。
【0023】
揺動機構24は、幅検知機構23に連結しているとともに、幅検知機構23により検知された幅に応じて揺動するもので、幅検知機構23に連結した揺動レバー44を有する。
すなわち揺動レバー44は、斜面滑動部材39と一体的な部材であって、検知機構ブラケット37に設けた自動調芯ベアリング45のまわりに水平面内かつ垂直面内に揺動可能である。
【0024】
押圧部位調節機構25は、前記サーマルヘッド8に所定押圧力で接触しているとともに、揺動機構24の揺動に応じてサーマルヘッド8とプラテンローラー9との間のヘッド圧、および印字用紙6の幅方向における中心押圧部位を一度に調節可能なものであって、ヘッド押圧部位調節機構25は、揺動機構24(揺動レバー44)に連結しているとともに、サーマルヘッド8をプラテンローラー9の方向に所定押圧力で押圧可能なヘッド押圧スプリング46を有する。なお、プラテンローラー9は、本体ブラケット21に片持ち式にこれを回転可能に取り付けている。
ヘッド押圧スプリング46は、検知機構ブラケット37のサーマルヘッド8の上方部に開口させた円弧状の揺動窓47内を図中左右に移動可能であって、印字用紙6の幅に応じてサーマルヘッド8のプラテンローラー9への押圧力および中心押圧部位を調節可能である。
【0025】
こうした構成のサーマルプリンターのヘッド圧調節機構20において、用紙幅セット機構22の幅セットつまみ27を印字用紙6の幅に応じて、たとえば図1中時計方向に回転操作することにより、可動ガイド片29をガイド窓31内で固定ガイド片28側に接近させ(図中実線の矢印を参照)、固定ガイド片28と可動ガイド片29との間で印字用紙6をセットする。
【0026】
このセット操作により、フレキシブルワイヤー32が、引っ張りスプリング43を押し込むように作用し、幅検知機構23の一方の起立片41とともに斜面滑動部材39を図2中左方に移動させるように幅検知板38の幅検知傾斜面40上で滑動させる。
この斜面滑動部材39の滑動にともない、揺動レバー44が自動調芯ベアリング45のまわりに図1中時計方向に揺動し、ヘッド押圧スプリング46をサーマルヘッド8の奥側(印字用紙6の幅狭方向)に移動させるので、印字用紙6の幅方向中央部分を押圧することができる。
この中央押圧部位の調節とともに、揺動レバー44が自動調芯ベアリング45のまわりに垂直方向上方に揺動し、この上方揺動距離に応じてヘッド押圧スプリング46をわずかに伸張させて、その押圧力自体を少ない方に調節し、幅の狭い印字用紙6に適応した押圧力(ヘッド圧)とすることができる。
【0027】
上述の操作とは反対に、幅セットつまみ27を図1中反時計方向に回転操作することにより、可動ガイド片29を固定ガイド片28から遠ざけるように印字用紙6の幅を大きい方向に調節する。
この調節操作にともない、フレキシブルワイヤー32が、引っ張りスプリング43の付勢力に抗して幅検知機構23の斜面滑動部材39を幅検知板38の幅検知傾斜面40上を上方側に移動させるので(図1中点線の矢印を参照)、揺動レバー44が自動調芯ベアリング45のまわりに反時計方向に揺動するとともに、垂直方向下方に揺動し、上述の作用とは反対に、幅の大きな印字用紙6に適応した押圧中心部位および押圧力(ヘッド圧)を得ることができる。
【0028】
かくして、用紙幅セット機構22における幅セットつまみ27の操作のみによって、幅検知機構23および揺動機構24を介して、押圧部位調節機構25において印字用紙6の幅に応じたヘッド圧およびヘッド押圧中心部位を得るように調節することができるので、構成が簡単であるとともに、操作性を良好とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例によるサーマルプリンターのヘッド圧調節装置20の要部破断斜視図である。
【図2】同、幅検知板38部分を印字用紙6の移送方向上流側から見たその側面図である。
【図3】従来のサーマルプリンター1の概略側面図である。
【図4】同、概略平面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 サーマルプリンター(従来、図3、図4)
2 用紙供給部
3 移送路
4 幅調節部
5 印字部
6 印字用紙
7 案内部材
8 サーマルヘッド
9 プラテンローラー
10 ヘッド圧調節機構
11 サーマルヘッド8の発熱素子
20 サーマルプリンターのヘッド圧調節機構(実施例、図1)
21 本体ブラケット
22 用紙幅セット機構
23 幅検知機構
24 揺動機構
25 押圧部位調節機構
26 セット機構ブラケット
27 幅セットつまみ
28 固定ガイド片
29 可動ガイド片
30 ネジロッド
31 直線状のガイド窓
32 フレキシブルワイヤー
33 フレキシブルカバー
34 一方のワイヤーガイド片
35 他方のワイヤーガイド片
36 ヘッド軸
37 検知機構ブラケット
38 幅検知板
39 斜面滑動部材
40 幅検知板38の幅検知傾斜面
41 斜面滑動部材39の一方の起立片
42 斜面滑動部材39の他方の起立片
43 引っ張りスプリング
44 揺動レバー
45 自動調芯ベアリング
46 ヘッド押圧スプリング
47 円弧状の揺動窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルヘッドおよびプラテンローラーを有し、
このサーマルヘッドおよびプラテンローラーの間に所定幅の印字用紙を挟持してこの印字用紙をその移送路上に移送するとともにこの印字用紙に印字するためのサーマルプリンターのヘッド圧調節装置であって、
前記印字用紙を前記移送路上に案内するとともに、その幅に合せてセットする用紙幅セット機構と、
この用紙幅セット機構に連結しているとともに、前記印字用紙の幅を検知可能とした幅検知機構と、
この幅検知機構に連結しているとともに、この幅検知機構により検知された前記幅に応じて揺動する揺動機構と、
前記サーマルヘッドに所定押圧力で接触しているとともに、この揺動機構の揺動に応じて前記サーマルヘッドと前記プラテンローラーとの間の前記印字用紙の幅方向における中心押圧部位を調節可能なヘッド押圧部位調節機構と、
を有することを特徴とするサーマルプリンターのヘッド圧調節装置。
【請求項2】
前記用紙幅セット機構と前記幅検知機構とは、
フレキシブルワイヤーによりこれを連結したことを特徴とする請求項1記載のサーマルプリンターのヘッド圧調節装置。
【請求項3】
前記幅検知機構は、
幅検知傾斜面を有する幅検知板と、
この幅検知傾斜面を滑動する斜面滑動部材と、を有することを特徴とする請求項1記載のサーマルプリンターのヘッド圧調節装置。
【請求項4】
前記揺動機構は、
前記幅検知機構に連結した揺動レバーを有することを特徴とする請求項1記載のサーマルプリンターのヘッド圧調節装置。
【請求項5】
前記ヘッド押圧部位調節機構は、
前記揺動機構に連結しているとともに、前記サーマルヘッドを前記プラテンローラーの方向に押圧可能なヘッド押圧スプリングを有することを特徴とする請求項1記載のサーマルプリンターのヘッド圧調節装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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