説明

サーマルプリンタ及びフィルム巻取ガイドローラ

【課題】インクフィルムのシワ発生を防止する。
【解決手段】巻取ガイドローラ27は、太鼓状の第1軸部27aと、第1軸部27aの両側に設けられた小さ目の太鼓状の第2及び第3軸部27b,27cとを備える。第1軸部27aは、インクフィルム11の中央部に接触し、第2及び第3軸部27b,27cは、インクフィルム11の両側に接触する。インクフィルム11がサーマルヘッド21で加熱されると、インクフィルム11のインクが昇華して転写フィルム17に画像を形成する。使用済みのインクフィルム11は、巻取ガイドローラ27で案内される。巻取ガイドローラ27は、第1軸部27aでインクフィルム11の中央部を引っ張り、第2及び第3軸部27b,27cでインクフィルム11の側部を引っ張る。インクフィルム11は、中央部の弛みや側部のシワがない状態で搬送され、巻取コア13に巻き取られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクフィルムを加熱して画像を形成するサーマルプリンタ及びフィルム巻取ガイドローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリンタには、溶融型のインクリボン(インクフィルムセット)を使用する溶融型と、昇華型のインクリボンを使用する昇華型とがあり、そのいずれもインクフィルムの背後をサーマルヘッドで加熱して、溶融または昇華したインクを記録媒体に転写して、画像や文字等を形成する。この画像形成には、インクフィルムを記録媒体に押し当て、画像を記録媒体に直接に形成するものと、インクフィルムを転写フィルムに重ねて画像をいったん転写フィルムに形成してから、転写フィルムを記録媒体に重ねて、画像を記録媒体に転写するものとがある。
【0003】
画像を記録媒体に直接に形成するものと、画像を転写フィルムに形成するものとのいずれも、インクフィルムを搬送ローラ等により画像形成位置に搬送した後、画像形成を行う。画像形成時には、インクフィルムよりも幅狭で記録媒体(例えば、CDやメモリカード)と同じ形状の加熱領域を加熱する。インクフィルムは、サーマルヘッドで加熱される加熱領域は、画像が記録媒体または転写フィルムに転写されて残存インク層が薄くなるため、フィルム搬送方向に伸びるが、サーマルヘッドで加熱されない両側は伸びないため、中央部に弛みが発生する。中央部に弛みが発生すると、画像形成位置の下流に配置されたフィルム巻取ガイドローラでインクフィルムに重なりができる。この重なりは、シワとなって画像形成位置に延びるため、スジ状の印刷されない部分となる印画シワが発生する。
【0004】
特許文献1記載の熱転写プリンタでは、サーマルヘッドと、サーマルヘッドで加熱された後のインクフィルムを巻き取る巻取コアとの間に、インクフィルムを案内するフィルム巻取ガイドローラを配するとともに、このフィルム巻取ガイドローラを、幅方向の中央部が両端よりも太径となる太鼓状に形成している。この太鼓状のフィルム巻取ガイドローラでインクフィルムの中央部を引っ張ることにより、インクフィルムの中央部の弛みを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−178993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
画像形成後の使用済みのインクフィルムでは、その中央部の弛みは、形成する画像の濃淡によって変化する。昇華型では、濃い色の画像、例えばブラック画像を形成したときには、これよりも薄い色の画像、例えばグレイ画像を形成したときに比べて加熱時間が長くなるため、インクフィルムの中央部の伸びが大きい。特許文献1では、太鼓状のフィルム巻取ガイドローラでインクフィルムの中央部を引っ張ることにより、中央部の弛みを防止しているため、ブラック画像を形成したときのインクフィルムの中央部の弛みは防止される。しかし、グレイ画像を形成したときには、ブラック画像を形成したときに比べて中央部の弛みが小さいため、フィルム巻取ガイドローラでインクフィルムの中央部を引っ張り過ぎて、逆にインクフィルムの両側部にシワが発生することがある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、インクフィルム両側部のシワ発生を防止することができるサーマルプリンタ及びフィルム巻取ガイドローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のフィルム巻取ガイドローラは、巻取コアに向けて使用済みのインクフィルムを案内するフィルム巻取ガイドローラであって、中央が最大軸径で、両側が最小軸径となるように、両側から中央部分に向かって徐々に膨出した太鼓状の第1軸部と、前記第1軸部の両側に位置し、前記最大軸径と前記最小軸径との間の軸径を有する第2及び第3軸部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記第2及び第3軸部は、その中央が太鼓状に膨出していること、または、逆向きの螺旋突起が形成されていることが好ましい。
【0010】
本発明のサーマルプリンタは、供給コアから引き出したインクフィルムを、画像形成位置を経て巻取コアに搬送するインクフィルム搬送手段と、前記画像形成位置において前記インクフィルムの背後を加熱し、記録媒体または前記記録媒体に画像を転写するための転写フィルムに、画像を形成するサーマルヘッドと、中央が最大軸径で、両側が最小軸径となるように、両側から中央部分に向かって徐々に膨出した太鼓状の第1軸部と、前記第1軸部の両側に位置し、前記最大軸径と前記最小軸径との間の軸径を有する第2及び第3軸部とを有し、使用済みのインクフィルムを前記巻取コアに向けて案内するフィルム巻取ガイドローラと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、太鼓状の第1軸部によりフィルム中央部を引っ張ることで、フィルム中央部の弛みを防止し、第2及び第3軸部でフィルム両側部を引っ張ることで、第1軸部の引っ張りに過ぎによるフィルム側部のシワ発生を防止するから、画像の濃度に関わらず、フィルム幅方向の全体においてシワに起因したミスプリントを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】レーベルプリンタを示す斜視図である。
【図2】転写フィルムに画像を形成している状態を示すレーベルプリンタの断面図である。
【図3】1色の画像の形成後に転写フィルムを巻き戻している状態を示すレーベルプリンタの断面図である。
【図4】ディスクに画像の転写を開始している状態を示すレーベルプリンタの断面図である。
【図5】ディスクに画像を転写している途中を示すレーベルプリンタの断面図である。
【図6】インクフィルムの搬送経路を示す説明図である。
【図7】巻取ガイドローラへのインクフィルムの巻付け状態を示す図である。
【図8】レーベルプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【図9】インクリボンを示す説明図である。
【図10】本実施形態と従来例とのプリント結果を示す表である。
【図11】巻取ガイドローラにコイルを取り付けた実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すように、レーベルプリンタ2は、ディスクDが装填されるディスクトレイ3と、ディスクトレイ3を出し入れ可能にするトレイ開口4aが形成された本体ケース4とを備える。本体ケース4の前面には、開閉蓋5が回転自在に取り付けられている。この開閉蓋5は、軸5a(図2参照)を中心にして、トレイ開口4aを開放する開放位置と、トレイ開口4aを閉じる閉じ位置(図2参照)との間で回転する。開閉蓋5は、バネ(図示せず)により閉じ位置に向けて付勢され、このバネによりディスクトレイ3の移動に連動して回転する。
【0014】
ディスクトレイ3は、本体ケース4内に格納される格納位置(図2参照)と、トレイ開口4aを介して本体ケース4の外部に送り出された送出し位置との間で移動する。ディスクトレイ3には、ディスクDの形状に合わせた凹部3aが形成され、この凹部3aにディスクDが装填される。
【0015】
図2〜図5に示すように、本体ケース4の内部には、インクフィルムセットが着脱自在に装填されている。このインクフィルムセットは、カートリッジと、このカートリッジに収納されたインクリボン7と転写リボン8とから構成されている。図2〜図5では、カートリッジを省略して、インクリボン7と転写リボン8のみを図示している。
【0016】
インクリボン7は、例えば熱昇華型のインクフィルム11と、供給コア12と、巻取コア13とを備える。インクフィルム11は、一端が供給コア12に取り付けられて、供給コア12にロール状に巻き付けられている。インクフィルム11の他端は、巻取コア13に取り付けられている。
【0017】
転写リボン8は、インクフィルム11とほぼ同じ幅の透明な転写フィルム17と、供給コア18と、巻取コア19とを備える。転写フィルム17は、一端が供給コア18に取り付けられて、供給コア18にロール状に巻き付けられている。転写フィルム17の他端は、巻取コア19に取り付けられている。
【0018】
本体ケース4には、画像形成位置に配置されたサーマルヘッド21及びプラテンローラ22と、画像転写位置に配置した転写ローラ23とが収納されている。サーマルヘッド21の表面には、複数の発熱素子(図示せず)がライン状に配列されている。このサーマルヘッド21は、インクフィルム11を押圧して発熱素子により加熱してインクを昇華し、転写フィルム17に画像を形成する押圧位置(図2参照)と、インクフィルム11から離れた退避位置(図3参照)との間で移動自在に設けられている。プラテンローラ22は、サーマルヘッド21により転写フィルム17に画像を形成するときに、ピンチローラ29とともに転写フィルム17を支持し、転写フィルム17の送り出しまたは巻き戻しを行う。
【0019】
転写ローラ23は、転写フィルム17をディスクDに押し当てて画像を転写する押圧位置(図5参照)と、転写フィルム17から離れた退避位置(図2参照)との間で移動自在に設けられている。
【0020】
本体ケース4には、供給コア12から供給されたインクフィルム11を案内する複数の供給ガイドローラ26と、インク昇華後の使用済みのインクフィルム11を巻取コア13に案内する巻取ガイドローラ27とが配されている。また、本体ケース4には、転写フィルム17を案内する複数のガイドローラ28が配されている。
【0021】
図6及び図7に示すように、巻取ガイドローラ27は、中央が軸径D1で、両側が軸径D2(D2<D1)の寸法となった太鼓状の第1軸部27aと、この第1軸部27aの両側に設けられ、幅方向の中央部の軸径がD3である太鼓状の第2及び第3軸部27b,27cとを備える。第1軸部27aの軸幅W1と、第2及び第3軸部27b,27cの軸幅W2とがW2<W1という条件の下で、軸径D3は、D2<D3≦D1である。第1軸部27aは、インクフィルム11の中央部に接触し、第2及び第3軸部27b,27cは、インクフィルム11の両側に接触する。
【0022】
第2及び第3軸部27b,27cの両側には第4軸部27dがそれぞれ設けられている。この第4軸部27dの軸径D4は、例えばD2と同じである。第4軸部27dの両側には取付軸27eが設けられ、カートリッジに回転可能に取り付けられている。なお、図6及び図7では、第1軸部27a、第2及び第3軸部27b,27cの中央部を誇張して突出させており、図7では、インクフィルム11の厚みを誇張して描いている。
【0023】
図8に示すように、レーベルプリンタ2は、制御部31と、インクフィルム巻取機構32と、転写フィルム巻取機構33と、トレイ移動機構34とを備える。
【0024】
インクフィルム巻取機構32は、供給コア12及び巻取コア13を回転して、インクフィルム11の搬送及び巻取を行う。転写フィルム巻取機構33は、プラテンローラ22、供給コア18及び巻取コア19を回転して、転写フィルム17の搬送及び巻取を行う。
【0025】
制御部31は、パソコン(図示せず)からの画像データに基づいて、サーマルヘッド21及び転写ローラ23を駆動するとともに、インクフィルム巻取機構32及び転写フィルム巻取機構33を駆動する。
【0026】
トレイ移動機構34は、制御部31により駆動が制御され、ディスクトレイ3を移動する。本体ケース4の前面には、ディスクトレイ3を出し入れ(ロード/イジェクト)させるためのトレイロード/イジェクトボタン38、プリントを開始するためのプリントボタン39が設けられている。なお、ディスクトレイ3のロード/イジェクト制御やプリント開始制御は、レーベルプリンタ2にパソコン(図示せず)を接続し、このパソコンからの命令によって行うようにしてもよい。
【0027】
図9に示すように、供給コア12は、巻付部12aと、軸部12bと、フランジ部12cとを備える。巻付部12aには、インクフィルム11が巻き付けられる。軸部12bは、カートリッジに回転自在に取り付けられる。
【0028】
巻取コア13は、巻取部13aと、軸部13bとを備える。巻取部13aは、供給コア12から送出されたインクフィルム11を巻き取る。軸部13bは、カートリッジに回転自在に取り付けられる。転写リボン8の供給コア18及び巻取コア19は、供給コア12及び巻取コア13とほぼ同一の形状をしており、カートリッジに回転自在に取り付けられている。
【0029】
熱昇華型のインクフィルム11は、ディスクDよりも幅広のベースフィルム41に、それぞれ異なる色のインクが塗布されている。この実施形態では、ブラックインク領域41a、シアンインク領域41b、マゼンタインク領域41c、イエローインク領域41dが順に形成されている。転写フィルム17への画像形成時には、各インク領域41a〜41d内で、ディスクDと同じ形状の加熱領域41eが記録濃度に応じて加熱される。
【0030】
次に、上記実施形態の作用について説明する。ディスクDに画像を記録するときには、先ず、レーベルプリンタ2の電源をオンにした後、トレイロード/イジェクトボタン38を操作する。トレイロード/イジェクトボタン38を操作すると、図1に示すように、ディスクトレイ3は送出し位置まで移動し、開閉蓋5はディスクトレイ3に押されて開放位置まで回転する。
【0031】
ディスクトレイ3にディスクDを装填した後、トレイロード/イジェクトボタン38を操作すると、図2に示すように、ディスクトレイ3が格納位置まで移動するとともに、開閉蓋5がバネにより閉じ位置まで回転する。次に、プリントボタン39を操作すると、制御部31は、サーマルヘッド21を押圧位置へ移動して、インクフィルム11を転写フィルム17に押し付ける。この状態で、制御部31は、インクフィルム巻取機構32を駆動し、供給コア12を時計方向に回転してインクフィルム11を送り出す。これと同時に、転写フィルム巻取機構33を駆動し、供給コア18を反時計方向に回転して転写フィルム17をインクフィルム11に重ねた状態で送り出す。
【0032】
インクフィルム11の各インク領域41a〜41d間には、インクフィルム11の位置を検出するためのマーカー(図示せず)が形成されている。この各インク領域41a〜41d間のマーカー検出により、ブラックインク領域41aが、サーマルヘッド21に対向する画像形成位置に到達したことを検出すると、制御部31は、ブラック画像の画像データに応じて、サーマルヘッド21のライン状に配列された複数の発熱素子を画素の濃度に応じて通電する。この発熱素子によって、ブラックインク領域41a内の加熱領域41eが加熱され、ブラックインクが昇華して、中間調のブラック画像が転写フィルム17に形成される。こうして、転写フィルム17には、ブラック画像が1ラインずつ形成される。また、サーマルヘッド21は、ブラックインク領域41aの加熱領域41eの外側の一部を加熱して、転写フィルム17に帯状のマーカーを形成する。このとき、巻取ガイドローラ27は、第1軸部27aでインクフィルム11の中央部を引っ張り、第2及び第3軸部27b,27cでインクフィルム11の両側を引っ張るため、サーマルヘッド21と巻取ガイドローラ27との間において、インクフィルム11の中央部の弛みや側部のシワの発生を抑制することができる。
【0033】
ブラック画像を形成したインクフィルム11は、巻取ガイドローラ27により巻取位置に案内されて巻取コア13に巻き取られる。
【0034】
転写フィルム17にブラック画像が形成されると、図3に示すように、制御部31は、サーマルヘッド21を退避位置に移動した後、転写フィルム巻取機構33を駆動して、プラテンローラ22によって転写フィルム17を巻き戻すとともに、供給コア18を時計方向に回転して転写フィルム17を巻き取る。次に、制御部31は、転写フィルム17のブラック画像が形成された部分を、インクフィルム11のシアンインク領域41bに重ねた状態で、インクフィルム11及び転写フィルム17を送り出す。そして、ブラック画像の形成と同様にして、シアンインク領域41bにより、転写フィルム17に中間調のシアン画像をブラック画像に重ねて形成する。同様にして、マゼンタインク領域41c、イエローインク領域41dに対してもインク転写を行うことにより、転写フィルム17には、ブラック画像、シアン画像、マゼンタ画像、イエロー画像が順次形成され、フルカラー画像が形成される。使用済みのインクフィルム11は、前述したように、巻取ガイドローラ27により案内されて巻取コア13に巻き取られる。
【0035】
フルカラー画像が転写フィルム17に形成されると、制御部31は、サーマルヘッド21を退避位置に移動するとともに、インクフィルム巻取機構32を停止する。
【0036】
なお、転写フィルム17に形成されたマーカーは、第2マーカー検出センサ(図示せず)により検出される。この検出結果に基づいて、制御部31は、インクフィルム巻取機構32及び転写フィルム巻取機構33を駆動して、各インク領域41a〜41dと転写フィルム17との位置合わせを行う。
【0037】
図4に示すように、転写フィルム17上でフルカラー画像が形成された部分が、転写ローラ23に対向する画像転写位置に到着すると、制御部31は、加熱した転写ローラ23を押圧位置へ移動し、転写フィルム17をディスクDに押し付ける。なお、制御部31は、転写ローラ23の近傍に設けられた第3マーカー検出センサ(図示せず)による検出結果に基づいて、転写フィルム17の画像とディスクDとの位置合わせを行う。
【0038】
図5に示すように、制御部31は、転写フィルム17の巻取り速度と、ディスクDの移動速度(ディスクトレイ3の格納位置から送出し位置に向けての移動速度)とが同じ速度となるように、転写フィルム巻取機構33及びトレイ移動機構34を駆動する。転写ローラ23による加熱・押圧で、転写フィルム17上の画像が移動中のディスクDに転写され、ディスクDにはフルカラー画像が記録される。ディスクトレイ3が送出し位置(図1参照)まで移動すると、ディスクDが取り出し可能となる。
【0039】
本発明の作用効果を確認するために、「本発明」、「比較例1」、「比較例2」の3種類のフィルム巻取ガイドローラをそれぞれ使用し、CDに画像転写をしたときに、各ローラに対するミスプリント(印画シワ)の発生頻度について調べた。インクフィルム11の伸び量は残存インク層の厚みに依存するから、ミスプリントは転写インク量によっても変化する。そこで、シアンインク領域、マゼンタインク領域、イエローインク領域の3種類のインクを用いた幅130mmの昇華型インクフィルムを使用し、3種類のインクの転写量が多いブラック画像(高濃度画像)と、インク転写量がほぼ半分のグレイ画像(中濃度画像)を転写フィルムに形成する場合について調べた。また、レーベルプリンタの器差による影響も考慮して、3台のレーベルプリンタについて実験をした。
【0040】
図10は、上記実験の結果を示す表である。この表において、「本発明」は、図6及び図7に示すフィルム巻取ガイドローラであり、「比較例1」及び「比較例2」は従来例である。「本発明」のフィルム巻取ガイドローラは、D1が10mm、D2が8mm、D3が9mmである。第1軸部27aの長さは101.6mm、第2及び第3軸部27b,27cの長さは6.2mm、第4軸部27dの長さは13.2mmである。「比較例1」は、全長において軸径が8mmの平行ガイドローラである。「比較例2」は、太鼓状のものであり、「本発明」のフィルム巻取ガイドローラにおいて、第2及び第3軸部をなくし、その部分の軸径を8mmとしたものである。
【0041】
比較例1の場合に、グレイ画像形成では、サーマルヘッド21によるフィルム加熱時間が短く、フィルム中央部の弛みが小さいため、3台のレーベルプリンタのいずれもミスプリントはなかった。しかし、ブラック画像形成では、フィルム加熱時間が長く、フィルム中央部の弛みが大きいため、3台のレーベルプリンタで、それぞれミスプリントが32枚、25枚、36枚あった。
【0042】
比較例2の場合に、フィルム中央部の弛みが大きいブラック画像形成では、太鼓状をしているため、インクフィルム11の中央部が引っ張られ、フィルム中央部の弛みがなくなり、3台のレーベルプリンタのいずれもミスプリントはなかった。しかし、フィルム中央部の弛みが小さいグレイ画像形成では、太鼓状に膨出した中央部がインクフィルム11の中央部を引っ張り過ぎることになる。そのため、インクフィルム11の側部にシワが発生し、3台のレーベルプリンタで、それぞれミスプリントが13枚、16枚、11枚あった。
【0043】
本発明の場合に、ブラック画像形成では、第1軸部27aでインクフィルム11の中央部を引っ張ることで、フィルム中央部の弛みが防止される。また、グレイ画像形成では、第2及び第3軸部27b,27cでインクフィルム11の両側を引っ張ることで、第1軸部27aでフィルム中央部を引っ張り過ぎることにより発生するフィルム側部のシワが防止される。これにより、ブラック画像形成、グレイ画像形成のいずれでも、ミスプリントがなかった。
【0044】
なお、上記実施形態では、第2及び第3軸部を太鼓状に形成しているが、例えば、階段状や傾斜状でもよい。なお、いずれの形状の場合にも、角に丸みをつけて、インクフィルムが接する部分は、曲線であることが好ましい。
【0045】
図11は、螺旋状の突起を形成した巻取ガイドローラを示すものである。この実施形態では、螺旋状突起としてコイル51が用いられている。巻取ガイドローラ52は、幅方向の中央部が両側よりも太径となる太鼓状の第1軸部52aと、この第1軸部52aの両側に設けられた第2及び第3軸部52b,52cと、第2及び第3軸部52b,52cの両側に設けられた取付軸52dとを備えている。第2軸部52bには、コイル51aが取り付けられ、第3軸部52cには、コイル51bが取り付けられている。コイル51aとコイル51bとは、巻付け方向(傾き)が逆であり、巻取ガイドローラ52が回転したときに、インクフィルム11を外側に広げるような螺旋となっている。なお、中央が膨出した太鼓状に巻かれたコイルを用いてもよい。即ち、コイルのような螺旋形状を有している部材であれば、本発明に適用可能である。さらには、コイルに代えて、巻取ガイドローラにコイル形状(螺旋形状であればよい)の凸部を一体に形成してもよい。
【0046】
さらに、上記実施形態では、カラーインクフィルムを用いたプリンタについて説明しているが、単色(例えば、ブラックのみ)専用のインクフィルムを用いたサーマルプリンタにも、本発明を利用することができる。
【0047】
また、上記実施形態では、昇華型のインクフィルムを用いたサーマルプリンタについて説明しているが、溶融型のインクフィルムを用いたサーマルプリンタにも、本発明を利用することができる。
【0048】
さらに、上記実施形態では、インクフィルムから転写フィルムに画像を形成し、転写フィルムから記録媒体に画像を転写するプリンタについて説明しているが、インクフィルムを記録媒体に押し当て、画像を記録媒体に直接に形成するサーマルプリンタにも、本発明を利用することができる。
【0049】
また、上記実施形態では、ディスクに画像を記録するサーマルプリンタについて説明しているが、媒体としては、カード型媒体、星型やハート型などの異形媒体、平坦な印刷面を有する立体形状媒体、紙等であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
2 レーベルプリンタ
11 インクフィルム
17 転写フィルム
21 サーマルヘッド
22 転写ローラ
27 巻取ガイドローラ
27a 第1軸部
27b 第2軸部
27c 第3軸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取コアに向けて使用済みのインクフィルムを案内するフィルム巻取ガイドローラであって、
中央が最大軸径で、両側が最小軸径となるように、両側から中央部分に向かって徐々に膨出した太鼓状の第1軸部と、
前記第1軸部の両側に位置し、前記最大軸径と前記最小軸径との間の軸径を有する第2及び第3軸部と、
を備えることを特徴とするフィルム巻取ガイドローラ。
【請求項2】
前記第2及び第3軸部は、その中央が太鼓状に膨出していることを特徴とする請求項1記載のフィルム巻取ガイドローラ。
【請求項3】
前記第2及び第3軸部は、逆向きの螺旋突起が形成されていることを特徴とする請求項1記載のフィルム巻取ガイドローラ。
【請求項4】
供給コアから引き出したインクフィルムを、画像形成位置を経て巻取コアに搬送するインクフィルム搬送手段と、
前記画像形成位置において前記インクフィルムの背後を加熱し、記録媒体または前記記録媒体に画像を転写するための転写フィルムに、画像を形成するサーマルヘッドと、
中央が最大軸径で、両側が最小軸径となるように、両側から中央部分に向かって徐々に膨出した太鼓状の第1軸部と、前記第1軸部の両側に位置し、前記最大軸径と前記最小軸径との間の軸径を有する第2及び第3軸部とを有し、使用済みのインクフィルムを前記巻取コアに向けて案内するフィルム巻取ガイドローラと、
を備えることを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項5】
前記第2及び第3軸部は、その中央が太鼓状に膨出していることを特徴とする請求項4記載のサーマルプリンタ。
【請求項6】
前記第2及び第3軸部は、逆向きの螺旋突起が形成されていることを特徴とする請求項4記載のサーマルプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−212994(P2011−212994A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84093(P2010−84093)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000003676)ティアック株式会社 (339)
【Fターム(参考)】