説明

サーマルプリンタ装置及びプログラム

【課題】サーマルプリンタにおいて、ある1ライン印字にかかる総印字時間が、ステッピングモータが1ライン分のフィードを行うのに必要な総励磁時間(必要加速時間)よりも長い場合でも、次の1ライン印字の加速につながる最適な減速制御を実現できるようにする。
【解決手段】印字対象となる1ライン分の印字データに基づいて算出した総印字時間Tstb(1)が、1ライン分の印刷データに想定される所定数ステップの各励磁時間を加算した総励磁時間Tdotline(1)よりも長い場合に、その総印字時間Tstb(1)と総励磁時間Tdotline(1)との差分時間ΔTを減速時間として、所定数ステップの最終ステップを除く他のステップの励磁時間に加算することにより総励磁時間Tdotline(1)を制御すると共に、その最終ステップの励磁時間に基づいて、次の1ライン分の印刷データに想定される総励磁時間Tdotline(2)を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱紙を送るステッピングモータと印字用の発熱体を備えたサーマルプリンタ装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ラインドットサーマルプリンタ装置(以下サーマルプリンタ装置と呼ぶ)は、サーマルヘッドの発熱体に通電(以下ストローブと呼ぶ)を行って感熱用紙に熱を与えて印字するようにしているが、1ライン印字が終了すると、プラテンを回転駆動させるステッピングモータを更に駆動させて、1ライン印字のフィードを実行するようにしている。この場合、ステッピングモータは、1ライン印字のフィードを行うのに必要な励磁時間を4つのステップに分けており、この4つのステップの各励磁時間を徐々に短くすることにより最高速度まで加速することができるようになっている。
【0003】
ところで、このようなサーマルプリンタ装置を搭載した携帯端末装置(例えば、ハンディターミナル)にあっては、バッテリー駆動のために、一度に通電(ストローブ)することができる発熱体の数が限られてしまうために、その対処法として、印字データを分割することにより発熱体の消費電流を減らす方法が多く採用されている。しかしながら、印字データを分割すると、1ラインにおける黒ドットの割り合いが多いほど分割数が増えて、ストローブ回数も増えてしまう。その結果、1ライン印字にかかる総印字時間が分割しない場合の印字時間に対して長くなってしまう。
【0004】
このような場合に、ステッピングモータが1ライン分のフィードを行うのに必要な総励磁時間(必要加速時間)よりも総印字時間が短ければ、最高速度まで加速するようにしているが、その総励磁時間(必要加速時間)よりも総印字時間が長くなってしまうと、印字が終了するまでモータを減速させなければならず、結果として印字速度が低下してしまうという問題が発生する。そこで、従来においては、印刷データの印刷黒率に基づいてステッピングモータの駆動周波数を制御するようにした技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−211195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1の技術は、印刷データの印刷黒率に基づいてブロック通電シーケンス(分割数)を決定し、このブロック通電シーケンス(分割数)に基づいてステッピングモータの駆動周波数を制御するようにしているが、モータの駆動周波数を制御するだけでは、決め細かな制御を行うことができなかった。
【0007】
本発明の課題は、ある1ライン印字にかかる総印字時間が、ステッピングモータが1ライン分のフィードを行うのに必要な総励磁時間(必要加速時間)よりも長い場合でも、次の1ライン印字の加速につながる最適な減速制御を実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために本発明の一つの態様は、
感熱紙を送るステッピングモータと印字用の発熱体を備えたサーマルプリンタ装置であって、
印字対象となる1ライン分の印字データに基づいてその総印字時間を算出する第1の算出手段と、
前記1ライン分の印刷データに想定される所定数ステップの各励磁時間を加算した総励磁時間と前記第1の算出手段により算出された総印字時間とを比較した結果、前記総印字時間が前記総励磁時間よりも長い場合に、その総印字時間と総励磁時間との差分時間を減速時間として、前記所定数ステップの最終ステップを除く他のステップの励磁時間に加算することにより前記総励磁時間を制御する減速制御手段と、
前記減速制御手段により制御された前記総励磁時間のうち、前記所定数ステップの最終ステップの励磁時間に基づいて、次の1ライン分の印刷データに想定される総励磁時間を算出する第2の算出手段と、
を備えることを特徴とするサーマルプリンタ装置である。
【0009】
上述した課題を解決するために本発明の他の態様は、
コンピュータに対して、
印字対象となる1ライン分の印字データに基づいてその総印字時間を算出する機能と、
前記1ライン分の印刷データに想定される所定数ステップの各励磁時間を加算した総励磁時間と前記算出された総印字時間とを比較した結果、前記総印字時間が前記総励磁時間よりも長い場合に、その総印字時間と総励磁時間との差分時間を減速時間として、前記所定数ステップの最終ステップを除く他のステップの励磁時間に加算することにより前記総励磁時間を制御する機能と、
前記制御された前記総励磁時間のうち、前記所定数ステップの最終ステップの励磁時間に基づいて、次の1ライン分の印刷データに想定される総励磁時間を算出する機能と、
を実現させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ある1ライン印字にかかる総印字時間が、ステッピングモータが1ライン分のフィードを行うのに必要な総励磁時間(必要加速時間)よりも長い場合でも、次の1ライン印字の加速につながる最適な減速制御を実現することができ、印字全体として印字速度の高速化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】店舗において在庫管理などに使用されている携帯端末装置(ハンディターミナル)1の基本的な構成要素を示したブロック図。
【図2】(1)〜(3)は、本実施形態の印字部8(サーマルプリンタ装置)における印字速度の制御としてステッピングモータ83の減速制御を説明するための図。
【図3】印字開始が指示された際に実行開始される印字処理を示したフローチャート。
【図4】図3の印字処理に続くフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1〜図4を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、店舗において在庫管理などに使用されている携帯端末装置(ハンディターミナル)の基本的な構成要素を示したブロック図である。
携帯端末装置は、薄型直方体の筐体で、CPU(中央演算処理装置)1を中核として、電源部2、記憶部3、メモリ4、タッチ表示部5、操作部6、イメージスキャナ7、印字8を有する構成となっている。CPU1は、電源部(二次電池)2からの電力供給によって動作し、記憶部3内の各種のプログラムに応じてこの携帯端末装置(ハンディターミナル)の全体動作を制御する。
【0013】
記憶部3は、例えば、ROM、フラッシュメモリなどを有する構成で、オペレーションシステム(OS)のほか、後述する図3及び図4に示した動作手順に応じて本実施形態を実現するためのプログラムや各種のアプリケーションなどが格納されている。なお、記憶部3は、例えば、SDカード、ICカードなど、着脱自在な可搬型メモリ(記録メディア)を含む構成であってもよく、図示しないが、通信機能を介してネットワークに接続された状態においては所定の外部サーバ側の記憶領域を含むものであってもよい。メモリ4は、計時情報、フラグ情報など、携帯端末装置が動作するために必要な各種の情報を一時的に記憶するワーク領域である。
【0014】
タッチ表示部5は、薄型直方体の筐体の表面略全体に配置された大型のタッチ表示部である。このタッチ表示部5は、指やペンなどでタッチ操作された位置を検知してその座標データを入力するタッチ入力手段(タッチスクリーン)を構成するもので、表示パネルとして、例えば、高精細液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイを使用している。操作部6は、図示省略したが、電源をオン/オフする電源ボタン、印刷開始を指示する印字ボタンなどの押しボタン式の各種のキーを備えたもので、CPU1は、タッチ表示部5や操作部6からの入力操作信号に応じた処理を行う。イメージスキャナ7は、CCDやCMOSなどの画像センサ(イメージセンサ)によりコード情報を撮影するもので、CPU1は、イメージスキャナ7により撮影された画像データを解析することによってコード情報の読み取りを行う。
【0015】
印字部8は、サーマルプリンタ装置を構成するもので、コントローラ81を中核として、印字用の発熱体を備えたサーマルプリンタ82、感熱紙を送るステッピングモータ(パルスモータ)83、このステッピングモータ83を回転駆動させるモータドライバ84を有する構成となっている。コントローラ81は、印字速度を制御したり、紙送りを制御したり、サーマルプリンタ装置の全体動作を制御するもので、図示しないCPUやメモリなどを有している。ここで、ステッピングモータ(パルスモータ)83は、モータドライバ84からのパルス信号に応じてステップ単位毎に回転駆動されるもので、例えば、1周期を8つのステップで回転駆動するようにしている。
【0016】
図2は、本実施形態の印字部8(サーマルプリンタ装置)における印字速度の制御としてステッピングモータ83の減速制御を説明するための図である。
図2(1)は、印字対象となる1ライン分の印字データの総印字時間Tstb(1)と、1ライン分のフィードを行うのに必要な総励磁時間Tdotline(1)とを比較した結果、総励磁時間Tdotline(1)よりも総印字時間Tstb(1)の方が短い場合を例示した図である。ここで、総印字時間Tstb(1)は、印字対象となる1ライン分の印字データに基づいて算出されたものである。
【0017】
すなわち、総印字時間Tstb(1)は、1ライン分の印字データの黒ドット数、同時発色ドット数、ストローブ時間、ストローブ回数に基づいて算出されたものである。なお、同時発色ドット数、ストローブ時間は、印字中の電池電圧、温度より常に変更される変数である。また、ステッピングモータ83は、上述したように1ラインをフィードするのに必要な励磁時間を4つのステップに分けており、この4つのステップの各励磁時間を徐々に短くしていくことにより最高速度まで加速するようにしている。また、1ライン分のフィードを行うのに必要な総励磁時間Tdotline(1)は、この4つのステップの各励磁時間を加算した値である。なお、最高速度に達するまでのステップ数や各ステップの励磁時間は、周知の計算式に基づいて算出されたものであるため、その説明については省略するものとする。
【0018】
このように総励磁時間Tdotline(1)よりも総印字時間Tstb(1)が短い場合には、最高速度まで加速することが可能となるが、総印字時間Tstb(1)が長く、総励磁時間Tdotline(1)以上であれば、印字に時間がかかるために、印字が終了するまでにステッピングモータ83の回転駆動を停止させて感熱紙のフィードをストップさせる減速制御を行う必要がある。
【0019】
図2(2)は、1ライン分の印字データの総印字時間Tstb(1)と、1ライン印字のフィードを行うのに必要な総励磁時間Tdotline(1)とを比較した結果、総励磁時間Tdotline(1)よりも総印字時間Tstb(1)の方が長い場合を例示した図である。この場合、総印字時間Tstb(1)と総励磁時間Tdotline(1)との差分時間ΔTを、四つのステップ(第1ステップ〜第4ステップ)のうち、その最後のステップ(第4ステップ)の励磁時間に加算することにより減速制御を行った場合を示し、第4ステップの励磁時間は、差分時間ΔT分だけ長くなる。
【0020】
図2(3)は、上述の図2(2)の場合と同様に、総励磁時間Tdotline(1)よりも総印字時間Tstb(1)の方が長い場合を例示した図である。この場合、総印字時間Tstb(1)と総励磁時間Tdotline(1)との差分時間ΔTを、一つ目のステップ(第1ステップ)の励磁時間に加算することにより減速制御を行うようにしている。この場合、最終のステップ(第4ステップ)の励磁時間により次の1ライン分のフィードを行うのに必要な総励磁時間Tdotline(2)が決定されるので、図2(2)に示すように第4ステップで減算制御を行う場合に比べて、図2(3)に示すように第1ステップで減算制御を行う方が、次の1ライン印字の加速につながる最適な減速制御を実現することができるようになる。
【0021】
すなわち、図2(2)に示すように総印字時間Tstb(1)と総励磁時間Tdotline(1)との差分時間ΔTを最終のステップ(第4ステップ)の励磁時間に加算した場合に、第5ステップの励磁時間は、第4ステップ+ΔTよりもやや短くなるように決定され、以下、徐々に短くなるように第6ステップ、第7ステップ、第8ステップの励磁時間が決定されるため、次の1ライン印字の総励磁時間は、Tdotline(1)となる。
【0022】
なお、図中、Tstb(2)は、次の1ライン印字のデータにおける総印字時間を示している。これに対して図2(3)に示すように総印字時間Tstb(1)と総励磁時間Tdotline(1)との差分時間ΔTを先頭ステップ(第1ステップ)の励磁時間に加算した場合に、総励磁時間Tdotline(1)は、図2(2)の場合と同様で変わりはないが、最終のステップ(第4ステップ)の励磁時間は、図2(2)の場合に比べて略1/3程度となる。また、図2(3)に示すように次の1ライン印字の総励磁時間Tdotline(2)は、図2(2)の場合での総励磁時間Tdotline(2)に比べて大幅に短くなる。
【0023】
次に、実施形態における携帯端末装置の動作概念を図3及び図4に示すフローチャートを参照して説明する。ここで、これらのフローチャートに記述されている各機能は、読み取り可能なプログラムコードの形態で格納されており、このプログラムコードにしたがった動作が逐次実行される。また、ネットワークなどの伝送媒体を介して伝送されてきた上述のプログラムコードに従った動作を逐次実行することもできる。すなわち、記録媒体のほかに、伝送媒体を介して外部供給されたプログラム/データを利用して本実施形態特有の動作を実行することもできる。
なお、図3及び図4は、携帯端末装置の全体動作のうち、本実施形態の特徴部分(印字部8:サーマルプリンタ装置)の動作概要を示したフローチャートであり、この図3及び図4のフローから抜けた際には、全体動作のメインフロー(図示省略)に戻る。
【0024】
図3及び図4は、印字開始が指示された際に実行開始される印字処理を示したフローチャートである。
先ず、図示省略したが、印字データを1ライン毎に指定するラインカウンタnに初期値“1”をセットした後(図3のステップS1)、このラインカウンタnの値で指定される1ライン分の印字データ、最初は、先頭の1ライン分の印字データを解析して、その解析結果に基づいてその総印字時間Tstb(n)を算出すると共に(ステップS2)、その1ライン分に想定される第1ステップ〜第4ステップの各励磁時間を加算した総励磁時間Tdotline(n)を算出する(ステップS3)。この場合、ラインカウンタnの値は、“1”、つまり、n=1であるので、総印字時間Tstb(1)、総励磁時間Tdotline(1)を算出する。
【0025】
これによって算出した総印字時間Tstb(n)と総励磁時間Tdotline(n)とを比較することにより、総励磁時間Tdotline(n)よりも総印字時間Tstb(n)が短いかを調べる(ステップS4)。いま、総励磁時間Tdotline(n)>Tstb(n)の関係にあり、総励磁時間Tdotline(n)よりも総印字時間Tstb(n)が短い場合には(ステップS4でYES)、最高速度まで加速することか可能となるためにステップS8に移り、第1ステップ〜第4ステップの励磁時間を求めて設定する処理を行う。
【0026】
一方、総印字時間Tstb(n)が長く、総励磁時間Tdotline(n)以上の場合には(ステップS4でNO)、総印字時間Tstb(n)と総励磁時間Tdotline(n)との差分時間ΔTを一つ目のステップ(第1ステップ)の励磁時間に加算してその値を補正した後(ステップS5)、この加算補正後の第1ステップに基づいて第2ステップ〜第4ステップまでの励磁時間を求めて設定する処理を行う(ステップS6)。そして、サーマルプリンタ82及びステッピングモータ83を駆動させて印字動作を開始させた後(ステップS7)、図4のフローに移る。
【0027】
図4のステップS9では、ラインカウンタnに“1”を加算してその値を更新する処理を行うが、この場合、ラインカウンタnの値は“2”となる。そして、このラインカウンタnの値で指定される次の1ライン分の印字データ(2ライン目の印字データ)を解析して、その解析結果に基づいてその総印字時間Tstb(n)を算出すると共に(ステップS10)、その1ライン分に想定される第1ステップ〜第4ステップの各励磁時間を加算した総励磁時間Tdotline(n)を算出する(ステップS11)。
【0028】
このようにして算出した総印字時間Tstb(n)と総励磁時間Tdotline(n)とを比較することにより、総励磁時間Tdotline(n)よりも総印字時間Tstb(n)が短いかを調べる(ステップS12)。いま、総励磁時間Tdotline(n)>Tstb(n)の関係にあり、総励磁時間Tdotline(n)よりも総印字時間Tstb(n)が短い場合には(ステップS12でYES)、最高速度まで加速することか可能となるためにステップS17に移り、第5ステップ〜第8ステップの励磁時間を求めて設定する処理を行う。
【0029】
一方、総印字時間Tstb(n)が長く、総励磁時間Tdotline(n)以上の場合には(ステップS12でNO)、総印字時間Tstb(n)と総励磁時間Tdotline(n)との差分時間ΔTを最初のステップ(第5ステップ)の励磁時間に加算してその値を補正する(ステップS13)。そして、この加算補正後の第5ステップに基づいて第6ステップ〜第8ステップまでの励磁時間を求めて設定する処理を行った後(ステップS14)、1ライン分の印字を行っている印字中であるかを調べ(ステップS15)、1ライン分の印字が終わるまでサーマルプリンタ82及びステッピングモータ83を駆動させながら待機する。そして、1ライン分の印字が終わると(ステップS16でNO)、次の印字データが有るかを調べ(ステップS16)、印字していない未印字データが残っていれば(ステップS16でYES)、上述のステップS9に戻り、ラインカウンタnの値を更新して“3”とした後、上述の動作を繰り返す。
【0030】
以上のように、実施形態において印字部(サーマルプリンタ装置)8は、印字対象となる1ライン分の印字データに基づいて算出した総印字時間Tstb(n)が、1ライン分の印刷データに想定される所定数ステップの各励磁時間を加算した総励磁時間Tdotline(n)よりも長い場合に、その総印字時間Tstb(n)と総励磁時間Tdotline(n)との差分時間ΔTを減速時間として、所定数ステップの最終ステップを除く他のステップの励磁時間に加算することにより総励磁時間Tdotline(n)を制御すると共に、その最終ステップの励磁時間に基づいて、次の1ライン分の印刷データに想定される総励磁時間Tdotline(n)を算出するようにしたので、ある1ライン印字にかかる総印字時間が、ステッピングモータが1ライン分のフィードを行うのに必要な総励磁時間(必要加速時間)よりも長い場合でも、次の1ライン印字の加速につながる最適な減速制御を実現することができ、印字全体として印字速度の高速化が可能となる。
【0031】
総印字時間Tstb(n)と総励磁時間Tdotline(n)との差分時間を減速時間として、例えば、第1ステップ〜第4ステップ又は第5ステップ〜第8ステップのうち、その先頭のステップ(第1ステップ又は第5ステップ)の励磁時間に加算することにより総励磁時間を制御するようにしたので、早目の効果的な減速が可能となる。
【0032】
1ライン分の印字データの黒ドット数、同時発色ドット数、ストローブ時間、ストローブ回数に基づいて総印字時間Tstb(n)を算出するようにしたので、総印字時間Tstb(n)の適切な算出が可能となる。
【0033】
なお、上述した実施形態においては、第1ステップ〜第4ステップ又は第5ステップ〜第8ステップのうち、その先頭のステップ(第1ステップ又は第5ステップ)の励磁時間に加算することにより総励磁時間を制御するようにしたが、先頭のステップに限らず、例えば、第2ステップ又は第6ステップであってもよい。つまり、最終ステップ(第4ステップ又は第8ステップ)以外であればよい。
【0034】
なお、上述した実施形態においては、1周期を8つのステップで駆動するようにしたが、例えば、200ステップなどで駆動してもよい。
【0035】
また、上述した実施形態においては、携帯端末装置としてハンディターミナルに適用した場合を例示したが、サーマルプリンタ装置が搭載されている機器であれば、ハンディターミナルに限らず、パーソナルコンピュータ、PDAなどであってもよく、勿論、サーマルプリンタ装置自体であってもよい。
【0036】
また、上述した実施形態において示した“装置”や“部”とは、機能別に複数の筐体に分離されていてもよく、単一の筐体に限らない。また、上述したフローチャートに記述した各ステップは、時系列的な処理に限らず、複数のステップを並列的に処理したり、別個独立して処理したりするようにしてもよい。
【0037】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は、これに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下、本願出願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記)
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、
感熱紙を送るステッピングモータと印字用の発熱体を備えたサーマルプリンタ装置であって、
印字対象となる1ライン分の印字データに基づいてその総印字時間を算出する第1の算出手段と、
前記1ライン分の印刷データに想定される所定数ステップの各励磁時間を加算した総励磁時間と前記第1の算出手段により算出された総印字時間とを比較した結果、前記総印字時間が前記総励磁時間よりも長い場合に、その総印字時間と総励磁時間との差分時間を減速時間として、前記所定数ステップの最終ステップを除く他のステップの励磁時間に加算することにより前記総励磁時間を制御する減速制御手段と、
前記減速制御手段により制御された前記総励磁時間のうち、前記所定数ステップの最終ステップの励磁時間に基づいて、次の1ライン分の印刷データに想定される総励磁時間を算出する第2の算出手段と、
を備えることを特徴とするサーマルプリンタ装置である。
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のサーマルプリンタ装置において、
前記減速制御手段は、総印字時間と総励磁時間との差分時間を減速時間として、前記所定数ステップの先頭ステップの励磁時間に加算することにより前記総励磁時間を制御する、
ようにしたことを特徴とするサーマルプリンタ装置である。
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、請求項1あるいは請求項2に記載のサーマルプリンタ装置において、
前記第1の算出手段は、1ライン分の印字データの黒ドット数、同時発色ドット数、ストローブ時間、ストローブ回数に基づいて総印字時間を算出する、
ようにしたことを特徴とするサーマルプリンタ装置である。
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、
コンピュータに対して、
印字対象となる1ライン分の印字データに基づいてその総印字時間を算出する機能と、
前記1ライン分の印刷データに想定される所定数ステップの各励磁時間を加算した総励磁時間と前記算出された総印字時間とを比較した結果、前記総印字時間が前記総励磁時間よりも長い場合に、その総印字時間と総励磁時間との差分時間を減速時間として、前記所定数ステップの最終ステップを除く他のステップの励磁時間に加算することにより前記総励磁時間を制御する機能と、
前記制御された前記総励磁時間のうち、前記所定数ステップの最終ステップの励磁時間に基づいて、次の1ライン分の印刷データに想定される総励磁時間を算出する機能と、
を実現させるためのプログラムである。
【符号の説明】
【0038】
1 CPU
3 記憶部
5 タッチ表示部
6 操作部
8 印字部
81 コントローラ
82 サーマルプリンタ
83 ステッピングモータ
84 モータドライバ
Tstb(n) 総印字時間
Tdotline(n) 総励磁時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱紙を送るステッピングモータと印字用の発熱体を備えたサーマルプリンタ装置であって、
印字対象となる1ライン分の印字データに基づいてその総印字時間を算出する第1の算出手段と、
前記1ライン分の印刷データに想定される所定数ステップの各励磁時間を加算した総励磁時間と前記第1の算出手段により算出された総印字時間とを比較した結果、前記総印字時間が前記総励磁時間よりも長い場合に、その総印字時間と総励磁時間との差分時間を減速時間として、前記所定数ステップの最終ステップを除く他のステップの励磁時間に加算することにより前記総励磁時間を制御する減速制御手段と、
前記減速制御手段により制御された前記総励磁時間のうち、前記所定数ステップの最終ステップの励磁時間に基づいて、次の1ライン分の印刷データに想定される総励磁時間を算出する第2の算出手段と、
を備えることを特徴とするサーマルプリンタ装置。
【請求項2】
前記減速制御手段は、総印字時間と総励磁時間との差分時間を減速時間として、前記所定数ステップの先頭ステップの励磁時間に加算することにより前記総励磁時間を制御する、
ようにしたことを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリンタ装置。
【請求項3】
前記第1の算出手段は、1ライン分の印字データの黒ドット数、同時発色ドット数、ストローブ時間、ストローブ回数に基づいて総印字時間を算出する、
ようにしたことを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載のサーマルプリンタ装置。
【請求項4】
コンピュータに対して、
印字対象となる1ライン分の印字データに基づいてその総印字時間を算出する機能と、
前記1ライン分の印刷データに想定される所定数ステップの各励磁時間を加算した総励磁時間と前記算出された総印字時間とを比較した結果、前記総印字時間が前記総励磁時間よりも長い場合に、その総印字時間と総励磁時間との差分時間を減速時間として、前記所定数ステップの最終ステップを除く他のステップの励磁時間に加算することにより前記総励磁時間を制御する機能と、
前記制御された前記総励磁時間のうち、前記所定数ステップの最終ステップの励磁時間に基づいて、次の1ライン分の印刷データに想定される総励磁時間を算出する機能と、
を実現させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−210749(P2012−210749A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77217(P2011−77217)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】