説明

サーマルプリント装置

【課題】 感熱記録用紙の記録面に付着する異物による問題を解消して、所望の高品位な画像を記録できるようにしたサーマルプリント装置を構成する。
【解決手段】 用紙搬送路上を搬送されてくる感熱記録用紙の記録面に対してヒートローラ3を圧接させて用紙上の画像を消去する画像消去部、および用紙の記録面に対してサーマルヘッド1を圧接させるとともにサーマルヘッド1の加熱によって画像を記録する画像記録部より上流側に、表面に粘着性を有するクリーニングローラ4を備えたクリーニング部を設け、このクリーニングローラ4と、それに対向するプラテンローラ12との間に用紙を通過させる。これにより、用紙の記録面上の塵埃などの異物をクリーニングローラ4により除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、感熱記録材料を用いた用紙に対して画像記録制御を行うサーマルプリント装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感熱記録材料に対しサーマルヘッドを接触させて画像記録を行うサーマルプリンタについては多数の提案がなされている。また、ある種のタイプのサーマルプリンタ、たとえば、ロイコ染料と可逆顕色剤を用いた発色型可逆感熱記録材料(例えば、特許文献1参照)を使用して画像記録を行う、所謂リライタブルのプリント装置は、サーマルヘッドにより画像記録を行うとともに、ヒートローラを使用して画像を消去できるようにしている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−106308公報
【特許文献2】特開2002−331697公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、このような熱作用により画像を記録する感熱記録用紙を用いてサーマルヘッドにより画像の記録を行うようにしたサーマルプリント装置においては、サーマルヘッドが用紙に当接してサーマルヘッドの熱を用紙の感熱記録面に直接熱伝導させるものであるので、用紙の記録面に塵埃などの異物が付着していると、その部分だけ用紙の記録面に対する熱伝達が正常になされず、正常な画像が記録されない(印字不良になる)という問題があった。
【0004】
特に前記所謂リライタブルのプリント装置においては可逆性感熱記録用紙を繰返し数百回程度使用するので、その使用に伴って記録面が塵埃や油分によって汚染されることになり、上述の問題が顕著となる。また、このようなリライタブルのプリント装置においては可逆性感熱記録用紙を加熱およびその後の徐冷によって用紙上の画像を消去する画像消去工程が必要である。この画像消去工程では用紙の記録面に対して所定温度まで加熱したヒートローラを圧接して、用紙の記録面に熱を直接伝達するが、その際、用紙の記録面に上記塵埃などの異物が付着していると、その部分だけ正常な熱伝達がなされず画像消去不良(画像の消え残り)が生じてしまう。その結果、高品位な形成画像が得られないという問題があった。
【0005】
そこで、この発明の目的は、上述の問題を解消して所望の高品位な画像を記録できるようにしたサーマルプリント装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)この発明のサーマルプリント装置は、熱作用により画像を記録する感熱記録用紙を搬送する用紙搬送路と、前記用紙搬送路上を搬送されてきた前記感熱記録用紙の記録面に対してサーマルヘッドを圧接させるとともにサーマルヘッドの加熱により画像を記録する画像記録部とを備え、前記用紙の搬送中に該感熱記録用紙の記録面に接するとともに回転する、表面に粘着性を有するクリーニングローラを備えたクリーニング部を、前記画像記録部より上流側に配置したことを特徴としている。
【0007】
(2)前記感熱記録用紙は熱作用により画像の記録と消去を可能にする可逆性の感熱記録用紙であり、前記用紙搬送路上を搬送されてきた前記感熱記録用紙の記録面に対してヒートローラを圧接させて加熱し、その加熱後の徐冷によって用紙上の画像を消去させる画像消去部を前記画像記録部より上流側に備え、且つ前記クリーニング部を、前記用紙搬送路上の前記画像消去部より上流側に配置したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
(1)用紙搬送路での用紙搬送中に、その記録面にクリーニングローラが接するとともに回転することにより、感熱記録用紙の記録面に付着していた塵埃や油分などの異物がクリーニングローラ表面の粘着作用によって吸着され、取り除かれる。そのため、記録面が清浄な状態で画像記録部に搬送され、高品位な画像形成が可能となる。
【0009】
(2)前記クリーニング部を前記画像消去部より上流側に備えたことにより、可逆性感熱記録用紙の記録面に付着していた塵埃や油分などの異物が除去されるので、画像消去部のヒートローラの熱が用紙の記録面に対して適正に熱伝達されて画像消去が行われるので、画像消去不良が防止でき、画像記録部で高品位な画像形成が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図2はこの発明の実施形態であるプリント装置100の内部の構成を示す上面図である。図1は図2におけるA−A部分の断面図である。プリント装置100の図1・図2における右側には大量の用紙を載置する昇降テーブル14と、それとは別の給紙トレイ16を設けている。昇降テーブル14に載置された用紙は、昇降テーブル14が上昇することによって、最も上部の用紙の図における左端部がピックアップローラ9に当接する。このピックアップローラ9の駆動軸にはクラッチ19を設けていて、そのクラッチ19のオン状態でこのピックアップローラ9が図1における右方向に回転する。このことによって、用紙は、図における左方向に搬送される。給紙ローラ6は図における右方向に回転しているので、給紙された用紙は左方向にそのまま搬送される。
【0011】
レジストローラ21の駆動軸にはクラッチを設けていて、このクラッチのオフ状態で、給紙されてきた用紙の先端(図1における左端)がレジストローラ21に当接する。その後、上記クラッチのオンによりレジストローラ21が左方向に回転して用紙は図における左方向に搬送されていく。
【0012】
同様に、給紙トレイ16に載置された用紙の最上面の用紙の先端(図における左端)はピックアップローラ8に当接する。ピックアップローラ8の駆動軸にはクラッチ18を設けていて、そのクラッチ18のオン状態でピックアップローラ8が図1における右方向に回転し、用紙は図における左方向に搬送される。給紙ローラ7は図における右方向に回転しているので、給紙された用紙は左方向に搬送される。レジストローラ20の駆動軸にはクラッチを設けていて、このクラッチのオフ状態で、給紙されてきた用紙の先端がレジストローラ20に当接する。その後、上記クラッチのオンによりレジストローラ20が左方向に回転して用紙は図における左方向に搬送されていく。
【0013】
用紙搬送路上で、搬送ローラ13と搬送ローラ22との間には非接触ICタグの読み書き等を行うR/W部5を配置している。搬送ローラ13の駆動軸にはクラッチ15を設けていて、搬送途中の用紙に内装されている非接触ICタグに対してR/W部5が読み書きできる位置に達したとき、搬送ローラ13のクラッチ15をオフすることによって、その状態で用紙を停止させる。この用紙の停止状態でR/W部5がその非接触ICタグに対するデータの読み書きを行う。その後、搬送ローラ13のクラッチ15をオンすることによって用紙を搬送させる。搬送ローラ22は、その用紙を前方(図における左方向)へ搬送する。
【0014】
この搬送ローラ22の前方にはクリーニングローラ4と、それに対向する駆動ローラであるプラテンローラ12とを配置してクリーニング部を構成している。このクリーニングローラ4とプラテンローラ12との間を用紙が通過する際、クリーニングローラ4は用紙の上面(記録面)に付着している塵埃を取り除く。
【0015】
上記クリーニングローラ4よりさらに前方にはヒートローラ3と、それに対向する駆動ローラであるプラテンローラ11を配置して画像消去部を構成している。このヒートローラ3とプラテンローラ11との間を用紙が通過する際に、用紙を所定温度にまで上昇させる。
【0016】
ヒートローラ3よりさらに前方には、用紙搬送路の上下に、用紙の表裏面に対して空気を吹き付ける冷却ファン2,2を配置して冷却部を構成している。この上下の冷却ファン2,2によってその間を搬送される用紙の温度を徐々に下げる。これによって用紙に記録されていた画像を消去する。
【0017】
冷却ファン2,2による冷却部よりさらに下流には、サーマルヘッド1とこのサーマルヘッド1との間で用紙を挟むプラテンローラ10を配置して画像記録部を構成している。用紙の先端がサーマルヘッド1の下部に到達した時、サーマルヘッド1は下降し、用紙の記録面に当接し、用紙の搬送と共にサーマルヘッドの駆動によって画像を記録する。
【0018】
上記サーマルヘッド1の位置よりさらに下流には搬送ローラ24,25および通常用紙排出部40を設けていて、画像記録済みの用紙を通常用紙排出部40にまで搬送・排出する。
【0019】
また、搬送ローラ22とプラテンローラ12との間には、フラッパにより異常用紙を下方へ落下させて排出する異常用紙排出部50を設けている。
【0020】
図3は上記クリーニングローラ4を備えたクリーニング部付近の構成を示す図である。また図4はその一部の分解斜視図である。
クリーニングローラ4はニトリル(NBR)系などの合成ゴム系のローラまたはシリコーンゴム系のローラであり、その表面の粘着性を高めたものである。たとえば上記合成ゴム系のローラとしては、硬さが15°〜30°(JIS−K−6253のゴム硬さ試験による)で、粘着力が30〜180hpaのものを用いる。またはシリコーンゴム系のローラとしては、硬さが3°〜7°で、粘着力が上記合成ゴム系のものより小さなものを用いる。
【0021】
このクリーニングローラ4は、図4に示すようにクリーニングローラユニット29に軸支している。押さえユニット36はクリーニングローラユニット29を下方へ押圧する圧縮コイルバネ28を備えていて、この押さえユニット36をプリント装置本体に係合部材35を係合させることによって固定する。これにより、押さえユニット36はクリーニングローラユニット29を下部のプラテンローラ12に対して一定圧力で押圧する。
【0022】
クリーニングローラ4は、その使用に伴い、表面に塵埃や油分が付着して粘着力が低下する。この粘着力が所定値より低下した時点や所定時間使用した時点で、上記クリーニングローラユニット29をプリント装置本体から取り外し、水またはアルコールで洗浄する。前記ニトリル(NBR)系などの合成ゴム系やシリコーンゴム系のクリーニングローラは、この洗浄によって粘着力が回復するので、反復使用が可能である。
【0023】
上記クリーニングローラ4より搬送路上で下流側(図3における左側)にはヒートローラ3とプラテンローラ11とを配置している。ヒートローラ3の取り付け位置の近傍にはクリーニングフェルト取付具30を着脱自在に配置している。このクリーニングフェルト取付具30にはクリーニングフェルト27を接着している。このクリーニングフェルト取付具30を装着した状態で、クリーニングフェルト27はヒートローラ3に対してその全幅方向に所定圧力で当接する。これにより、駆動ローラであるプラテンローラ11とともにヒートローラ3が回転した際、ヒートローラ3の表面がクリーニングフェルト27によってクリーニングされる。
【0024】
したがってクリーニングローラ4とプラテンローラ12との間を通過して記録面上の塵埃や油分が除去された用紙がヒートローラ3とプラテンローラ11との間を通過する際に、用紙の記録面に対してヒートローラ3の熱が均等に伝達されて、用紙の記録面は所定温度まで均等に上昇する。また、ヒートローラ3の表面もクリーニングフェルト27の作用によって清浄な状態に保たれるので、用紙がヒートローラ3を通過した後も、その用紙の記録面の清浄さは保たれる。
【0025】
図5はこのプリント装置100の制御部のブロック図である。制御回路70は次の各制御を行う。
・昇降テーブル14のモータ17に対して駆動部75を介して駆動信号を出力する。
・ピックアップローラのクラッチ18,19に対して駆動部77,78を介してそれぞれ駆動信号を出力する。
・異常用紙を異常用紙排出部50方向へ落下させて排出するフラッパ52に対して駆動部76を介して駆動信号を出力する。
・R/W部のクラッチ15に対して駆動部74を介して駆動信号を出力する。
・R/W部5によって、用紙に内装されている非接触ICタグに対するデータの読み書きを行う。
・ヒートローラ3のヒータの制御を、駆動部73を介して行う。
・サーマルヘッド昇降モータ26に対し駆動部72を介して駆動信号を出力する。
・サーマルヘッド1に対して駆動部71を介して駆動信号を出力する。
・キースイッチなどの操作部79の操作内容を読み取る。
・用紙搬送路上の複数の位置で用紙の有無を検出するセンサやヒートローラ3の温度を検出するセンサなど、各種センサ80の検出信号を読み取る。
・インターフェース90を介してホストコンピュータ101との間でデータの入出力を行う。
次に、図5に示した制御回路70の処理手順を、図6を参照して説明する。
図6は、用紙を給紙してから排出するまでの、制御回路70の制御による一連の流れを示すフローチャートである。まずピックアップローラ8または9のクラッチ18または19の一方をオンして用紙を給紙するとともに搬送を開始する(S1)。用紙搬送路上の用紙の位置を検出するセンサの読み取り結果に応じて、用紙がR/W部5に到達したことを検出すれば、R/W部5の搬送ローラ13のクラッチ15をオフする(S2→S3)。
【0026】
この状態で、用紙内の非接触ICタグはR/W部5に近接し、R/W部5は非接触ICタグからデータを読み取る(S4)。
【0027】
非接触ICタグからデータが正しく読み取れたか否かの状態(リードステータス)をチェックし(S5)、正常であれば、その非接触ICタグに書き込まれているデータに応じて、またはホストコンピュータ101からの指示に応じて用紙に画像記録すべきビットマップデータを生成する(S6)。
【0028】
その後、クラッチ15をオンすることによって用紙を再び搬送させる(S7)。これにより、用紙はクリーニングローラ4とプラテンローラ12との間を通過して、その用紙の記録面がクリーニングされる(S8)。
【0029】
その後、用紙はヒートローラ3を通過することにより、用紙の記録面が所定温度(概ね150℃〜200℃の所定温度)まで加熱され、続く除冷によって、すでに記録されていた画像が消去される(S9)。なお、冷却ファン2を駆動することによって用紙搬送路および用紙の蓄熱を抑え、後のサーマルヘッドによる画像記録の際に用紙の記録面を所定温度範囲に保つ。
【0030】
続いて用紙の先端がサーマルヘッド1のヘッド位置の直前に到達した時、サーマルヘッド昇降モータ26を駆動してサーマルヘッド1のヘッド部を用紙に当接させ、その後サーマルヘッド1を駆動して新たな画像を記録する(S10)。
さらにそのまま用紙を搬送し、通常用紙排出部40へ排出する(S11)。
【0031】
もし、非接触ICタグからデータが読み取れなければ、または読み取ったデータが異常であれば、フラッパ52を立ち上げて、R/W部のクラッチ15をオンすることによって用紙を異常用紙排出部50へ排出する(S5→S12→S13→S14)。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の実施形態に係るプリント装置内部の構成を示す図であり、図2のA−A部分の断面図である。
【図2】同プリント装置内部の構成を示す上面図である。
【図3】同プリント装置のクリーニング部付近の構成を示す図である。
【図4】同クリーニング部の部分分解斜視図である。
【図5】プリント装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【図6】同制御部の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0033】
1−サーマルヘッド
2−冷却ファン
3−ヒートローラ
4−クリーニングローラ
5−R/W部(非接触ICタグ読み書き部)
6,7−給紙ローラ
8,9−ピックアップローラ
10,11,12−プラテンローラ
13−搬送ローラ
14−昇降テーブル
15−クラッチ
16−給紙トレイ
18,19−クラッチ
20,21−レジストローラ
22〜25−搬送ローラ
27−クリーニングフェルト
28−バネ
29−クリーニングローラユニット
30−クリーニングフェルト取り付け具
35−係合部材
36−押さえユニット
40−通常用紙排出部
50−異常用紙排出部
100−プリント装置
101−ホストコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱作用により画像を記録する感熱記録用紙を搬送する用紙搬送路と、
前記用紙搬送路上を搬送されてきた前記感熱記録用紙の記録面に対してサーマルヘッドを圧接させるとともにサーマルヘッドの加熱により画像を記録する画像記録部と、を備えたサーマルプリント装置において、
前記用紙の搬送中に該感熱記録用紙の記録面に接するとともに回転する、表面に粘着性を有するクリーニングローラを備えたクリーニング部を、前記画像記録部より上流側に配置したことを特徴とするサーマルプリント装置。
【請求項2】
前記感熱記録用紙は熱作用により画像の記録と消去を可能にする可逆性の感熱記録用紙であり、
前記用紙搬送路上を搬送されてきた前記感熱記録用紙の記録面に対してヒートローラを圧接させて加熱し、その加熱後の徐冷によって用紙上の画像を消去させる画像消去部を前記画像記録部より上流側に備え、且つ前記クリーニング部を、前記用紙搬送路上の前記画像消去部より上流側に配置した請求項1に記載のサーマルプリント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−150698(P2006−150698A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343166(P2004−343166)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000177346)三和ニューテック株式会社 (35)
【Fターム(参考)】