説明

サーマルヘッド駆動装置。

【課題】熱履歴部をサーマルヘッド駆動装置内に構成しても、発熱抵抗体部の間隔を小さくすることにより、発熱抵抗体部の発熱によって印刷される印刷物の解像度を向上させることができるサーマルヘッド駆動装置を提供する。
【解決手段】サーマルヘッドを駆動して感熱紙にライン毎に印字を行う際に、発生する余熱を外部に放出する複数の熱履歴部を有するサーマルヘッドを備えたサーマルヘッド駆動装置において、複数の熱履歴部は、千鳥状に配置され、かつ余熱を放出するためのCu、Al、Ag或いはAuのいずれかの金属で構成することにより、熱履歴部をサーマルヘッド駆動装置内に構成するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサーマルヘッド駆動装置に係り、特にサーマルヘッドを発熱させて記録媒体へライン毎に印字を行わせる際に、発生する熱を外部に放出するサーマルヘッド駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の感熱紙や熱転写用インク等の記録媒体を加熱して印刷を行う感熱型印刷システムに用いられるサーマルヘッドは、複数の発熱抵抗体部とサーマルヘッド駆動装置により構成される。発熱抵抗体部は両端に電圧を加えられると電流が流れ発熱する。この発熱により印刷を行う。発熱した発熱抵抗体部は加えられる電圧を中断して発熱を停止しても、短時間には元の温度に戻らないため、次に発熱抵抗体部を加熱するときには残っている温度を加味した熱履歴補償を行って次の発熱による印刷を行っていた。
【0003】
図3(A)は、従来の複数の発熱抵抗体部とサーマルヘッド駆動装置を有するサーマルヘッドを示す図であり、図3(B)はサーマルヘッド駆動装置における熱履歴部の温度上昇範囲を示す図である。
図3(A)に示すように、従来のサーマルヘッド100は、両端に電圧を加えられると電流が流れ発熱する発熱抵抗体部101と、発熱した発熱抵抗体部101は加えられる電圧を中断して発熱を停止しても、短時間には元の温度に戻らないため、次に発熱抵抗体部101を加熱するときには残っている温度を加味した熱履歴補償を行う熱履歴部102と、複数の発熱抵抗体部101を同時に駆動するLatch103と、シリアルに転送されてくる発熱情報を順次シフトしてパラレル情報に変換するShift104とを有するサーマルヘッド駆動装置と、から構成される。
【0004】
次に、動作について説明する。
まずシリアルに転送されてくる発熱情報とクロックからなるD02をShift104に入力しクロックにより発熱情報を順次転送しパラレル情報に変換した後Latch103に加えラッチパルスD01によりパラレル情報を記憶する。次に記憶されたパラレル情報を熱履歴補償データ係数D00により熱履歴部102で熱履歴補償を行った後、発熱抵抗体部101に加えて発熱抵抗体部101を発熱させ印刷を行う。
【0005】
この時、熱履歴部102では、熱履歴補償を行うために高速演算を複数回行い消費電力も多く図3(B)に示すようにLSIで構成された熱履歴部102が発熱し、このため熱履歴部102の周囲に高温部分105が発生する。このため、図3(B)に示すように、熱履歴部102の発熱によって発生する高温部分105が隣接の高温部分と重ならないよう直線的に配置される。
【0006】
このようにして、熱履歴部102をサーマルヘッド100の内部に構成することにより、シリアルに転送されてくる発熱情報に熱履歴補償を含める必要は無く、サーマルヘッドに合った熱履歴補償を行うことにより、印字品位の優れた印刷を行うことが出来る。
【0007】
特許文献1には、高速印字を行うために、熱履歴部をサーマルヘッド駆動装置の内部に構成することが記載されている。
【特許文献1】特開平10−305608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、サーマルヘッド駆動装置に熱履歴部102を構成することは、サーマルヘッド100に合った熱履歴補償を行うことが可能となる反面、演算用機能を有するLSI部分の面積が大きく、しかも熱履歴部102の周囲には高温部分105が発生するので、更に見かけ上の占有面積が大きくなり、図3(B)に示すように、熱履歴部102の発熱によって発生する高温部分105が隣接の高温部分と重ならないよう直線的に配置しなければならず、このため、熱履歴部102の隣接間隔が大きくなり、従って、この熱履歴部102に接続される発熱抵抗体部101の間隔も大きくなるため、発熱抵抗体部101の発熱によって印刷される印刷物の印字間隔が大きくなり解像度の低下を生じると言う問題点があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、熱履歴部をサーマルヘッド駆動装置内に構成しても、発熱抵抗体部の間隔を小さくして、発熱抵抗体部の発熱によって印刷される印刷物の解像度を向上させることができるサーマルヘッド駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明における第1の発明は、サーマルヘッドを駆動して感熱紙にライン毎に印字を行う際に、発生する余熱を外部に放出する複数の熱履歴部を有するサーマルヘッドを備えたサーマルヘッド駆動装置において、前記複数の熱履歴部は、千鳥状に配置され、かつ前記余熱を放出するためのCu、Al、Ag或いはAuのいずれかの金属で構成されていることを特徴とするサーマルヘッド駆動装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、サーマルヘッドを駆動して感熱紙にライン毎に印字を行う際に、発生する余熱を外部に放出する複数の熱履歴部を有するサーマルヘッドを備えたサーマルヘッド駆動装置において、 複数の熱履歴部は、千鳥状に配置され、かつ余熱を放出するためのCu、Al、Ag或いはAuのいずれかの金属で構成することにより、熱履歴部をサーマルヘッド駆動装置内に構成しても、発熱抵抗体部の間隔を小さくすることが可能となり、従って、発熱抵抗体部の発熱によって印刷される印刷物の解像度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の実施形態に係るサーマルヘッド駆動装置について図1〜図2を用いて説明する。
図1は、本発明の実施形態におけるサーマルヘッド駆動装置を用いた感熱型印刷システムの構成を示す図であり、(A)は感熱型印刷システムの構成を示す図であり、(B)は感熱型印刷システムの動作を説明するための側面図を示す図である。
図2は、本発明の実施形態に係るサーマルヘッド駆動装置を用いたサーマルヘッドのブロック図を示す図であり、(A)はサーマルヘッド駆動装置の配列を示す図であり、(B)はサーマルヘッド駆動装置の熱履歴部の発熱を説明するための図である。
【0013】
図1(A)に示すように、本発明の実施形態におけるサーマルヘッド駆動装置を用いた感熱型印刷システム1は、画像入力装置2から送られてくる印刷情報を記憶し、印刷速度に合わせて記憶した印刷情報を読み出す記憶装置3と、記憶装置3から読み出された印刷情報を入力しこの印刷情報に応じた発熱を行うサーマルヘッド4と、サーマルヘッド4の発熱により印刷される記録媒体5と、サーマルヘッド4と記録媒体5とを駆動する駆動装置6と、から構成される。
更にサーマルヘッド4は、図1(B)に示すようにサーマルヘッドを構成する基材を保持する基盤7と、入力されるシリアル印刷情報をパラレル印刷情報に変換しかつ熱履歴補償を行い、発熱情報を出力するサーマルヘッド駆動装置8と、サーマルヘッド駆動装置8から供給された発熱情報により発熱しプラテンローラ10により押圧され移動する記録媒体5の印刷を行う発熱抵抗体部9と、から構成される。
【0014】
次に、本発明の実施形態におけるサーマルヘッド駆動装置を用いた感熱型印刷システム1の動作について説明する。
図1(A)に示すように、画像入力装置2から送られてくる印刷情報を記憶装置3に記憶したのち、印刷速度に合わせて記憶した印刷情報を読み出してサーマルヘッド4に入力し、次にサーマルヘッド4を印刷情報に応じて発熱させ、記録媒体5を図1(B)に示すようにプラテンローラ10により押圧し移動させながら印刷する。
【0015】
そして、図2(A)に示すように、サーマルヘッド4は、両端に電圧を加えられると電流が流れ発熱する発熱抵抗体部9と、発熱した発熱抵抗体部9は加えられる電圧を中断して発熱を停止しても、短時間には元の温度に戻らないため、次に発熱抵抗体部9を加熱するときには残っている温度を加味した熱履歴補償を行う熱履歴部8aと、複数の発熱抵抗体部9を同時に駆動するLatch8bと、シリアルに転送されてくる発熱情報を順次シフトしてパラレル情報に変換するShift8cとを有するサーマルヘッド駆動装置8と、から構成される。
【0016】
次に、サーマルヘッド4の動作について説明する。
まずシリアルに転送されてくる発熱情報とクロックからなるD2をShift8cに入力しクロックにより発熱情報を順次転送しパラレル情報に変換した後Latch8bに加えラッチパルスD1によりパラレル情報を記憶する。次に記憶されたパラレル情報を熱履歴補償データ係数D0により熱履歴部8aで熱履歴補償を行った後、発熱抵抗体部9に加えて発熱抵抗体部9を発熱させる。この発熱により印刷を行う。
【0017】
この時、熱履歴部8aでは、熱履歴補償を行うために高速演算を複数回行い消費電力も多いため熱履歴部8aが発熱し、熱履歴部8aの周囲に高温部分が広くなるが、熱履歴補償データ係数D0を各熱履歴部に供給するデータ線を熱履歴部8aのLSIを作成する際に発熱する部分の上側を通過させるよう形成する。このデータ線は図2(B)の8a2部分に相当し、材料は放熱がよく抵抗値の低いCu、Al、Ag或いはAu、白金等を用いる。
【0018】
このようにデータ線を熱履歴部8aのLSIを作成する際に発熱する部分の上側を通過させるよう形成することにより、熱はLSIの上部から空気中に放熱され図2(B)に示すように熱履歴部8aの周囲の高温部分は範囲8a1となり、縮小することが出来る。
【0019】
従って、図2(A)に示すように熱履歴部8aは千鳥状に配置することが可能となり、発熱抵抗体部への接続間隔を著しく小さくすることができる。
このため、従来は、熱履歴部を構成したサーマルヘッド駆動装置を用いて、印刷する場合の解像度は300dpi相当が限度であったものが、600dpi以上の高解像度が実現出来るようになった。
【0020】
以上述べてきたように、本発明の実施形態におけるサーマルヘッド駆動装置を用いることにより、複数の熱履歴部は、千鳥状に配置され、かつ上部に熱を放出するためのCu、Al、Ag或いはAuのいずれかの金属を設けることにより、熱履歴部をサーマルヘッド駆動装置内に構成しても、発熱抵抗体部の間隔を小さくすることが可能となり、従って、発熱抵抗体部の発熱によって印刷される印刷物の解像度を著しく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態におけるサーマルヘッド駆動装置を用いた感熱型印刷システムの構成を示す図であり、(A)は感熱型印刷システムの構成を示す図であり、(B)は感熱型印刷システムの動作を説明するための側面図を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るサーマルヘッド駆動装置を用いたサーマルヘッドのブロック図を示す図であり、(A)はサーマルヘッド駆動装置の配列を示す図であり、(B)はサーマルヘッド駆動装置の熱履歴部の発熱を説明するための図である。
【図3】従来のサーマルヘッド駆動装置を用いたサーマルヘッドのブロック図を示す図であり、(A)はサーマルヘッド駆動装置の配列を示す図であり、(B)はサーマルヘッド駆動装置の熱履歴部の発熱を説明するための図である。
【符号の説明】
【0022】
1・・・感熱型印刷システム、2・・・画像入力装置、3・・・記憶装置、4・・・サーマルヘッド、5・・・記録媒体、6・・・駆動装置、7・・・基盤、8・・・サーマルヘッド駆動装置、8a・・・熱履歴部、8a1・・・熱履歴部発熱範囲、8a2・・・LSI上部データ線、8b・・・Latch、8c・・・Shift、9・・・発熱抵抗体部、10・・・プラテンローラ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルヘッドを駆動して感熱紙にライン毎に印字を行う際に、発生する余熱を外部に放出する複数の熱履歴部を有するサーマルヘッドを備えたサーマルヘッド駆動装置において、
前記複数の熱履歴部は、千鳥状に配置され、かつ前記余熱を放出するためのCu、Al、Ag或いはAuのいずれかの金属で構成されていることを特徴とするサーマルヘッド駆動装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−326852(P2006−326852A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−149270(P2005−149270)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】