説明

サーミスタの取付け構造

【課題】地絡に至る前にサーミスタを配管表面から離間させることができるサーミスタの取付け構造を提供する。
【解決手段】測温部が金属製ケース4内に合成樹脂で封止されており、当該測温部にリード線が接続されたサーミスタ1を、誘導加熱の対象である金属製配管2に接触するように付勢する付勢手段11、21と、通常運転時には前記付勢手段を付勢状態に保持し、異常昇温時に、前記合成樹脂の溶融温度及びリード線の被覆層の溶融温度のうち低いほうの温度よりも低い所定温度で前記付勢手段の保持を解除して前記サーミスタを金属製配管から離間させる付勢解除手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサーミスタの取付け構造に関する。さらに詳しくは、空気調和機の配管を誘導加熱ないしは電磁誘導加熱(Inductiou Heating:IH)で昇温する際に用いられる制御用サーミスタを当該配管に取り付ける構造に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の冷媒回路の配管などを補助加熱するに際し、ニクロム線の電気抵抗によってニクロム線自体を発熱させる抵抗加熱方式に代えて、IHを利用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
加熱温度の制御には、通常、サーミスタが用いられているが、IHは加熱速度が抵抗加熱方式などに比べて速いため、制御用のサーミスタにも速い応答性が要求される。このため、サーミスタの測温部は熱伝導率の大きい金属製ケース内に収容されている。そして、この金属製ケースが配管などの被加熱物の表面に当接される。
【0004】
一方、空気調和機の配管をIHで加熱する場合、配管はアースに接続されているため、サーミスタの測温部は金属製ケースに対してエポキシ樹脂などで絶縁をとっている。すなわち、サーミスタの測温部は金属製ケース内にエポキシ樹脂などの合成樹脂で封止されている。この樹脂封止は、サーミスタの測温部へ外部から水分が浸入するのを防ぐ防水機能も兼ねている。
【0005】
そして、図6に示されるように、サーミスタの測温部が樹脂封止された金属製ケース51は、例えば板バネ52により配管53の外周面に押し付けられ、当該配管53との熱接触を確保している。なお、図6において、55はヒューズ54を配管53に押し付けるための板バネであり、57は、当該配管53を誘導加熱するためのIH用コイル56が巻回されたボビンである。また、58は、筒状のボビン57の一端の開口部と嵌合するボビン蓋であり、59は、前記ボビン57などを含む加熱装置と、配管53との固定状態を安定させるための六角ナットである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−109141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
圧縮機による液圧縮を防ぐために当該圧縮機の吸入側配管をIHで補助加熱する場合、吸入側配管内を液相の冷媒が流れているときにIHを動作させるように制御されているが、異常時、例えば、冷媒が配管内を流れていなかったり、圧縮機が作動していなかったり、又は流れる冷媒が気相であったりする場合、IHで加熱された配管の熱は冷媒に伝達されないので、当該配管の温度が急激に上昇してしまう。例えば、IH加熱では、30秒で180℃程度にまで配管温度が上昇してしまうことがある。
【0008】
このような場合のために、サーミスタの温度が所定の高温に達したときにIHを停止するように制御されているが、サーミスタの熱時定数は0秒ではなく時間遅れが生じるため、その間に配管温度が更に上昇してしまい、サーミスタの測温部を封止している合成樹脂やリード線の被覆層が溶融する温度(例えば、250℃以上)まで達する惧れがある。配管の温度が、かかる合成樹脂などの溶融温度を超えると、被覆層が溶けてしまったリード線の芯線が、アースされた配管や、当該配管と密接している金属製ケースに触れてしまい地絡に至る。
【0009】
この場合、復旧させようとしても、溶けた合成樹脂や被覆層が配管表面に付着しているので、サーミスタだけを交換しても付着した合成樹脂などの影響により正確な温度制御を行うことができない。したがって、ヒータ部分を含む配管ごと交換せざるを得ない。
また、地絡してしまうと、異常個所を示すエラーコードを表示することができないので、復旧に時間と手間が掛かる。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、地絡に至る前にサーミスタを配管表面から離間させることができるサーミスタの取付け構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点に係るサーミスタの取付け構造(以下、単に「取付け構造」ともいう)は、測温部が金属製ケース内に合成樹脂で封止されており当該測温部にリード線が接続されたサーミスタを、誘導加熱の対象である金属製配管に接触するように付勢する付勢手段と、
通常運転時には前記付勢手段を付勢状態に保持し、異常昇温時に、前記合成樹脂の溶融温度及びリード線の被覆層の溶融温度のうち低いほうの温度よりも低い所定温度で前記付勢手段の保持を解除して前記サーミスタを金属製配管から離間させる付勢解除手段と
を備えたことを特徴としている。
【0012】
本発明の第1の観点に係る取付け構造では、通常運転時には付勢手段によって配管の表面と接触させられているサーミスタが、異常昇温時には、封止樹脂の溶融温度及びリード線の被覆層の溶融温度のうち低いほうの温度よりも低い所定温度で付勢解除手段によって配管の表面から離間される。したがって、封止樹脂やリード線の被覆層が溶融して当該リード線の芯線が配管や金属製ケースに触れて地絡に至るのを防止することができる。その結果、従来のように溶けた封止樹脂及びリード線の被覆層が配管に付着することがないので、復旧時には、例えばサーミスタだけを交換すればよい。
【0013】
また、異常昇温が生じた場合でも、ヒューズが作動することで機器の作動が停止するため、異常個所を示すエラーコードを表示することができる。このため、容易に復旧をすることができる。
【0014】
前記付勢手段がコイルバネであり、且つ、前記付勢解除手段が前記合成樹脂の溶融温度及びリード線の被覆層の溶融温度のうち低いほうの温度よりも低い所定温度で昇華する感温ペレットであり、
前記コイルバネの一部は引っ張られた状態で前記感温ペレット中に埋設されており、当該コイルバネの残りの部分の端部は前記サーミスタに固定されており、且つ、前記コイルバネの残りの部分は圧縮された状態で前記サーミスタを金属製配管の外周面に当接させるように構成することができる。この場合、異常昇温時には、金属製ケース内の封止樹脂及びリード線の被覆層よりも先に感温ペレットが昇華するので、引っ張られた状態にあったコイルバネの一部が元に戻る。その結果、コイルバネの残りの部分の付勢力によって配管表面に当接していたサーミスタは、当該付勢力が解除されるので、配管の表面から離間する。したがって、封止樹脂やリード線の被覆層が溶融して当該リード線の芯線が金属製ケースに触れて地絡に至るのを防止することができる。
【0015】
前記サーミスタが通過可能な開口を有するとともに、前記コイルバネを収容するスペースを有する筒状の保持部と、
この保持部の軸方向一端側外周に形成され、前記金属製配管の外周面に密接し得る当接面を有する当接部と
を備え、前記筒状の保持部の軸方向は、前記当接部の当接面を配管外周面に密接させたときに、前記金属製配管の径方向と実質的に一致するように構成することができる。この場合、例えば、一端にサーミスタが固定されたコイルバネの他端側を引っ張った状態で感温ペレットにより保持部内に固定し、ついで前記当接部の当接面が配管の表面に密接するように当該当接部を配管に固定することで、サーミスタを配管表面に当接させることができる。
【0016】
前記付勢手段が板バネであり、且つ、前記付勢解除手段が前記合成樹脂の溶融温度及びリード線の被覆層の溶融温度のうち低いほうの温度よりも低い所定温度で溶融する低融点合金であり、
前記板バネの一端は前記サーミスタに固定されており、
前記低融点合金は、前記板バネが引っ張られて前記サーミスタを金属製配管の外周面に当接させる状態で当該板バネを保持するものとすることができる。この場合、異常昇温時には、金属製ケース内の封止樹脂及びリード線の被覆層よりも先に低融点合金が溶融するので、引っ張られた状態にあった板バネが元に戻る。その結果、配管表面に当接していたサーミスタは、板バネの復元力によって配管の表面から離間する。したがって、封止樹脂やリード線の被覆層が溶融して当該リード線の芯線が金属製ケースに触れて地絡に至るのを防止することができる。
【0017】
前記サーミスタが通過可能な開口を有するとともに、前記板バネを収容するスペースを有する筒状の保持部と、
この保持部の軸方向一端側に形成され、前記金属製配管の外周面に密接し得る当接面を有する当接部と
を備え、前記低融点合金が、前記保持部の内周面に固着されたものとすることができる。この場合、例えば、筒状の保持部の前記スペース内に板バネを収容し、ついでサーミスタが配管表面に当接するように板バネを引っ張った状態で当該板バネの一部を低融点合金で保持部の内周面に固定し、更に前記当接部の当接面が配管の表面に密接するように当該当接部を配管に固定することで、サーミスタを所定の測温位置に設置することができる。
【0018】
本発明の第2の観点に係る取付け構造は、測温部が金属製ケース内に合成樹脂で封止されており当該測温部にリード線が接続されたサーミスタを、誘導加熱の対象である金属製配管に接触するように付勢する付勢手段を備えており、
この付勢手段は形状記憶合金からなっており、常温時において、前記サーミスタを金属製配管に接触させるように変形されており、異常昇温時に、前記合成樹脂の溶融温度及びリード線の被覆層の溶融温度のうち低いほうの温度よりも低い所定温度で元の形状に復帰して前記サーミスタを金属製配管から離間させるように構成されていることを特徴としている。
【0019】
本発明の第2の観点に係る取付け構造では、変形された状態の形状記憶合金によって配管の表面と接触させられているサーミスタが、異常昇温時には、封止樹脂の溶融温度及びリード線の被覆層の溶融温度のうち低いほうの温度よりも低い所定温度で前記形状記憶合金が記憶している元の形状に戻ることによって配管の表面から離間される。したがって、封止樹脂やリード線の被覆層が溶融して当該リード線の芯線が金属製ケースに触れて地絡に至るのを防止することができる。その結果、従来のように溶けた封止樹脂及びリード線の被覆層が配管に付着することがないので、復旧時には、例えばサーミスタだけを交換すればよい。
【0020】
また、異常昇温が生じた場合でも、ヒューズが作動することで機器の作動が停止するため、異常個所を示すエラーコードを表示することができる。このため、容易に復旧をすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の取付け構造によれば、地絡に至る前にサーミスタを配管表面から離間させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の取付け構造の第1実施形態の断面説明図である。
【図2】異常昇温時における第1実施形態の作動を示す断面説明図である。
【図3】本発明の取付け構造の第2実施形態の断面説明図である。
【図4】異常昇温時における第2実施形態の作動を示す断面説明図である。
【図5】本発明の取付け構造の第3実施形態の断面説明図である。
【図6】従来のサーミスタの固定方法を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の取付け構造の実施形態を詳細に説明する。
【0024】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る取付け構造A1の断面説明図であり、図2は、異常昇温時における第1実施形態の作動を示す断面説明図である。
第1実施形態に係る取付け構造A1、及び後述する第2〜3実施形態に係る取付け構造は、いずれもサーミスタ1を、誘導加熱の対象である空気調和機の金属製配管2に取り付けるための構造である。サーミスタ1は、測温部ないしは感温部3がエポキシ樹脂などの合成樹脂により金属製ケース4内に封止されたものであり、前記測温部3からリード線5が外部に引き出され、図示しない制御部に接続されている(図3〜4参照)。このリード線5は架橋ポリエチレンなどの合成樹脂からなる被覆層5aを有している。
【0025】
ケース4は、熱伝導率の大きい銅などの金属で作製されており、長手方向の一端側が開放された有底の略角筒形状を呈している。ケース4の開放された一端側(図1〜2において、奥側。図3〜4において、左側)から、リード線5が外部に引き出されている。ケース4は、配管2の外周面2aに密接することができる当接面4aを有しており、この当接面4aは、配管2の外周面2aの凸面に対応する凹面からなっている。
【0026】
取付け構造A1は、前記サーミスタ1を、配管2に接触するように付勢する付勢手段であるコイルバネ11と、異常昇温時に、このコイルバネ11の付勢を解除する付勢解除手段である感温ペレット12とを備えている。
【0027】
コイルバネ11は、金属製の筒状の保持部13内に収容されている。この筒状の保持部13の軸方向の一端側外周には、配管2の外周面2aに密接し得る当接面14aを有する当接部14が、当該保持部13と一体に形成されている。この当接部14の当接面14aは、配管2の外周面2aの凸面に対応する凹面からなっている。また、保持部13の軸方向の一端側には、サーミスタ1が通過可能な大きさの開口13aが形成されている。
【0028】
保持部13の軸方向他端側は蓋体15で閉じられており、コイルバネ11の一端は、この蓋体15の下面15aに固定されている。蓋体15には、異常昇温時に昇華した感温ペレット12を逃がすための開口部16が形成されている。
【0029】
保持部13の軸方向(長手方向)は、前記当接部14の当接面14aを配管2の外周面2aに密接させたときに、当該配管2の径方向と実質的に一致するように構成されている。これにより、サーミスタ1のケース4の側面4aを配管2の外周面2aに密接させることが可能になり、サーミスタ1と配管2との熱接触性を向上させることができる。
【0030】
コイルバネ11の一部(蓋体15側の部分)は、引っ張られた状態で前記感温ペレット12中に埋設されており、当該コイルバネ11の残りの部分は圧縮された状態で前記サーミスタ1を配管2の外周面2aに当接させるように構成されている。より詳細には、コイルバネ11の自然長は、感温ペレット12が存在しないときに、サーミスタ1のケース4の側面4aが、配管2の外周面2aから離間する長さに設定されている。前記コイルバネ11の残りの部分の端部は、サーミスタ1のケース4の一側面4bに固定されている。
【0031】
サーミスタ1の配管表面への当接は、例えば、サーミスタ1が固定された端部と反対側の端部付近のコイルバネ11を引っ張った状態で感温ペレット12により保持部13内に固定し、ついで前記当接部14の当接面14aが配管2の表面に密接するように当該当接部14を配管2に固定することにより行うことができる。
【0032】
感温ペレット12は、所定の温度で昇華する有機化合物を成形加工したものであり、感温ペレット式ヒューズの感温部として一般に使用されているものを用いることができる。感温ペレット12は、サーミスタ1の測温部3をケース4内に封止している合成樹脂の溶融温度及びリード線5の被覆層5aの溶融温度のうち低いほうの温度よりも低い所定温度(例えば、150〜180℃)で昇華するものが選定される。
【0033】
第1実施形態に係る取付け構造A1の場合、通常運転時には、サーミスタ1はコイルバネ11の一部の付勢力によって配管2の表面と接触させられている。そして、例えば、冷媒が配管内を流れていなかったり、圧縮機が作動していなかったり、又は流れる冷媒が気相であったりするような場合に配管2の温度が急激に高くなると、ケース4内の封止樹脂及びリード線5の被覆層5aよりも先に感温ペレット12が昇華するので、引っ張られた状態にあったコイルバネ11の一部が元に戻る。その結果、コイルバネ11の残りの部分の付勢力によって配管表面に当接していたサーミスタ1は、当該付勢力が解除されるので、配管2の表面から離間する。したがって、封止樹脂やリード線5の被覆層5aが溶融して当該リード線5の芯線が配管2や金属製のケース4に触れて地絡に至るのを防止することができる。そして、従来のように溶けた封止樹脂及びリード線5の被覆層5aが配管に付着することがないので、復旧時には、例えばサーミスタだけを交換すればよい。
【0034】
また、異常昇温が生じた場合でも、別途設けられたヒューズ(図示せず)が作動することで機器の作動が停止するため、異常個所を示すエラーコードを表示することができる。このため、容易に復旧をすることができる。
【0035】
〔第2実施形態〕
図3は、本発明の第2実施形態に係る取付け構造A2の断面説明図であり、図4は、異常昇温時における第2実施形態の作動を示す断面説明図である。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同一の要素ないしは構成には当該第1実施形態と同一の参照符号を付している。そして、簡潔にするために、それらの共通する要素ないしは構成についての説明は省略する。このことは、以下の第3実施形態についても同様である。
【0036】
取付け構造A2は、前記サーミスタ1を、配管2に接触するように付勢する付勢手段である板バネ21と、異常昇温時に、この板バネ21の付勢を解除する付勢解除手段である低融点合金22とを備えている。
【0037】
板バネ21は、金属製の有底筒状の保持部23内に収容されている。この筒状の保持部23の軸方向の一端側(開口側)には、配管2の外周面2aに密接し得る当接面24aを有する当接部24が、当該保持部23と一体に形成されている。この当接部24の当接面24aは、配管2の外周面2aの凸面に対応する凹面からなっている。また、保持部23の軸方向の一端側の開口23aは、サーミスタ1が通過可能な大きさにされている。
【0038】
板バネ21の一端は、前記保持部23の底壁23bの内側面に固定されており、当該板バネ21の他端は、サーミスタ1のケース4の一側面に固定されている。
【0039】
前記低融点合金22としては、サーミスタ1の測温部3をケース4内に封止している合成樹脂の溶融温度及びリード線5の被覆層5aの溶融温度のうち低いほうの温度よりも溶融温度が低いもの、例えば、150〜180℃程度で溶融するSn−3.5Ag−3Bi−6Inなどを用いることができる。
【0040】
低融点合金22は、前記サーミスタ1が配管2の表面に当接するように板バネ21を引っ張った状態で、前記保持部23の内周面23aに固着される。
【0041】
サーミスタ1の所定の測温位置への配置は、例えば、筒状の保持部23内に板バネ21を収容し、ついでサーミスタ1が配管表面に当接するように板バネ21を引っ張った状態で当該板バネ21の一部を低融点合金22で保持部23の内周面23cに固定し、更に前記当接部24の当接面24aが配管2の表面に密接するように当該当接部24を配管2に固定することで行うことができる。
【0042】
第2実施形態に係る取付け構造A2の場合、通常運転時には、サーミスタ1は板バネ21の付勢力によって配管2の表面と接触させられている。そして、異常時に配管2の温度が急激に高くなると、ケース4内の封止樹脂及びリード線5の被覆層5aよりも先に低融点合金22が溶融するので、引っ張られた状態にあった板バネ21が元に戻る。その結果、配管表面に当接していたサーミスタ1は、板バネ21の復元力によって配管2の表面から離間する。したがって、封止樹脂やリード線5の被覆層5aが溶融して当該リード線5の芯線が金属製のケース4に触れて地絡に至るのを防止することができる。そして、従来のように溶けた封止樹脂及びリード線5の被覆層5aが配管2に付着することがないので、復旧時には、例えばサーミスタだけを交換すればよい。
【0043】
また、異常昇温が生じた場合でも、別途設けられたヒューズ(図示せず)が作動することで機器の作動が停止するため、異常個所を示すエラーコードを表示することができる。このため、容易に復旧をすることができる。
【0044】
〔第3実施形態〕
図5は、本発明の第3実施形態に係る取付け構造A3の断面説明図である。この取付け構造A3では、サーミスタ1を、配管2に接触するように付勢する付勢手段として形状記憶合金からなる線材31が用いられている。保持部23及び当接部24の構成は、図3〜4に示される第2実施形態に係る取付け構造A2と同じである。
【0045】
前記線材31は、常温時において、前記サーミスタ1を配管に接触させるように変形されている。また、サーミスタ1の測温部をケース4内に封止している合成樹脂の溶融温度及びリード線5の被覆層5aの溶融温度のうち低いほうの温度よりも、例えば20〜30℃程度低い所定温度で元の形状に戻るように組成が選定されている。すなわち、前記低いほうの温度よりも低い所定の温度に変態点をもつように組成が選定される。したがって、異常昇温時には、封止樹脂の溶融温度及びリード線5の被覆層5aの溶融温度のうち低いほうの温度よりも低い温度で前記形状記憶合金からなる線材31が記憶している元の形状に戻ることによって、サーミスタ1は配管2の表面から離間される。したがって、封止樹脂やリード線5の被覆層5aが溶融して当該リード線5の芯線がケースに触れて地絡に至るのを防止することができる。その結果、従来のように溶けた封止樹脂及びリード線5の被覆層5aが配管2に付着することがないので、復旧時には、例えばサーミスタだけを交換すればよい。
【0046】
また、異常昇温が生じた場合でも、別途設けられたヒューズが作動することで機器の作動が停止するため、異常個所を示すエラーコードを表示することができる。このため、容易に復旧をすることができる。
【0047】
なお、前述した各実施形態では、筒状の保持部及び当接部を用いてサーミスタを配管表面に当接させているが、例えば、第1実施形態の場合、コイルバネの一端を係止させることができれば、図示された形状以外の形状の保持部及び当接部を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 サーミスタ
2 金属製配管
2a (配管)外周面
3 測温部
4 金属製ケース
5 リード線
5a 被覆層
11 コイルバネ
12 感温ペレット
13 保持部
14 当接部
14a 当接面
15 蓋体
16 開口部
21 板バネ
22 低融点合金
23 保持部
24 当接部
24a 当接面
31 線材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測温部(3)が金属製ケース(4)内に合成樹脂で封止されており当該測温部(3)にリード線(5)が接続されたサーミスタ(1)を、誘導加熱の対象である金属製配管(2)に接触するように付勢する付勢手段(11、21)と、
通常運転時には前記付勢手段(11、21)を付勢状態に保持し、異常昇温時に、前記合成樹脂の溶融温度及びリード線(5)の被覆層(5a)の溶融温度のうち低いほうの温度よりも低い所定温度で前記付勢手段の保持を解除して前記サーミスタ(1)を金属製配管(2)から離間させる付勢解除手段(12、22)と
を備えたことを特徴とするサーミスタの取付け構造(A1、A2)。
【請求項2】
前記付勢手段がコイルバネ(11)であり、且つ、前記付勢解除手段が前記合成樹脂の溶融温度及びリード線(5)の被覆層(5a)の溶融温度のうち低いほうの温度よりも低い所定温度で昇華する感温ペレット(12)であり、
前記コイルバネ(11)の一部は引っ張られた状態で前記感温ペレット(12)中に埋設されており、当該コイルバネ(11)の残りの部分の端部は前記サーミスタ(1)に固定されており、且つ、前記コイルバネ(11)の残りの部分は圧縮された状態で前記サーミスタ(1)を金属製配管(2)の外周面に当接させるように構成されている請求項1に記載のサーミスタの取付け構造(A1)。
【請求項3】
前記サーミスタ(1)が通過可能な開口(13a)を有するとともに、前記コイルバネ(11)を収容するスペースを有する筒状の保持部(13)と、
この保持部(13)の軸方向一端側外周に形成され、前記金属製配管(2)の外周面(2a)に密接し得る当接面(14a)を有する当接部(14)と
を備え、前記筒状の保持部(13)の軸方向は、前記当接部(14)の当接面(14a)を配管外周面に密接させたときに、前記金属製配管(2)の径方向と実質的に一致するように構成されている請求項2に記載のサーミスタの取付け構造(A1)。
【請求項4】
前記付勢手段が板バネ(21)であり、且つ、前記付勢解除手段が前記合成樹脂の溶融温度及びリード線(5)の被覆層(5a)の溶融温度のうち低いほうの温度よりも低い所定温度で溶融する低融点合金(22)であり、
前記板バネ(21)の一端は前記サーミスタ(1)に固定されており、
前記低融点合金(22)は、前記板バネ(21)が引っ張られて前記サーミスタ(1)を金属製配管(2)の外周面に当接させる状態で当該板バネ(21)を保持する請求項1に記載のサーミスタの取付け構造(A2)。
【請求項5】
前記サーミスタ(1)が通過可能な開口(23a)を有するとともに、前記板バネ(21)を収容するスペースを有する筒状の保持部(23)と、
この保持部(23)の軸方向一端側に形成され、前記金属製配管(2)の外周面(2a)に密接し得る当接面(24a)を有する当接部(24)と
を備え、前記低融点合金(22)が、前記保持部(23)の内周面(23c)に固着されている請求項4に記載のサーミスタの取付け構造(A2)。
【請求項6】
測温部(3)が金属製ケース(4)内に合成樹脂で封止されており当該測温部(3)にリード線(5)が接続されたサーミスタ(1)を、誘導加熱の対象である金属製配管(2)に接触するように付勢する付勢手段(31)を備えており、
この付勢手段(31)は形状記憶合金からなっており、常温時において、前記サーミスタ(1)を金属製配管(2)に接触させるように変形されており、異常昇温時に、前記合成樹脂の溶融温度及びリード線(5)の被覆層(5a)の溶融温度のうち低いほうの温度よりも低い所定温度で元の形状に復帰して前記サーミスタ(1)を金属製配管(2)から離間させるように構成されていることを特徴とするサーミスタの取付け構造(A3)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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