説明

シアリルルイスc、シアリルTn、及びN−グリコリルノイラミン酸のエピトープに関連づけられるヒトモノクローナル抗体、ならびに前記エピトープを含む幹細胞の分析方法

本発明は抗体工学の技術に関する。特に、本発明はヒトIgM抗体及びその誘導体に関し、それはいくつかのオリゴ糖配列及び/又は異種抗原性のシアリン酸残基に対する新規の結合特異性を有している。本発明は更にこのような新規の糖類及び/又はNeuGc結合型モノクローナル抗体を生成及び操作するプロセスと、免疫診断の分野でこれらの抗体及びその誘導体を用い、生物学的かつ未加工の物質サンプルにおける異種抗原性NeuGcの定性的及び定量的決定を可能にし、ならびに免疫療法においては、患者中の異種抗原性NeuGcの遮断を可能にするための方法とに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗体工学の技術に関する。特に、本発明は、ヒトのグリカン結合型抗体及びその誘導体に関し、それはヒト以外の抗原性グリカンを含む特異的なオリゴ糖配列を結合する。本発明は更にこのようなグリカン結合型モノクローナル抗体を生成及び操作するプロセスと、免疫診断の分野でこれらの抗体及びその誘導体を用い、生物学的かつ未加工の物質サンプルにおけるヒト以外の抗原性グリカンを含む特異的なオリゴ糖配列の定性的及び定量的決定を可能にし、ならびに免疫療法においては、例えば移植の状況下で、患者中の抗原性グリカンの遮断を可能にするための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト自然抗体の結合特異性は既知である。自然抗体は、癌若しくは平均的な自己免疫疾患のような悪性疾患、又は異種抗原性グリカンのような病原性物質に対する保護に関与しうることが分かる。自然抗体の特異性は、その生成を生じさせる病原性症状の性質決定に有用であることが分かる。更に、新規の抗体及び特異性は新規試薬の生成及び最適化に有用である。
【0003】
表2は、糖鎖認識に関与しうる、1.4.30型の重鎖のペプチド配列の一部と関連付けできる特定の抗体型タンパク質配列を列記するが、本発明による最も好適な標的のオリゴ糖配列は示されていなかった。刊行物は重鎖1.4.30型の配列全体も、新規の軽鎖配列も示していないことは理解されよう。糖鎖配列は1.4.24型又は1.4.11型のような他の新規の抗体又はこれらと相同の抗体について示していないことは更に理解されよう。
【0004】
様々な細胞ベースの治療法が開発下にある。治療用細胞の抗原性グリカン及び/又は異種抗原性物質との混入は、新規の細胞治療法の開発における主要な問題であると認識されてきた。NeuGcは異種抗原、及び、例えばブタからヒトへの器官の異種移植を防ぐ障壁として知られ(国際公開第02088351号、Zhu,Alex)、異種移植は更に複数のバイオ企業によって開発下にある。
【0005】
NeuGcに対する抗体は公表されてきた。最も公表されている抗体はニワトリで生成され、更にヒトと同様にNeuGcグリカンがない。シアリン酸の特徴的なグリセロール基側鎖のない酸化したNeuGcを含むカラムにおけるニワトリ抗体の親和性精製による、NeuGc認識型の抗体の生成のための方法が公表された(Varki Aら、国際公開第2005010485号)。この方法は特定のニワトリ抗体の精製に有用であると思われる。本発明はNeuGcのグリセロール部分への結合活性を含むヒトの天然型モノクローナル抗体の生成に関する。モノクローナル抗体が通常のバイオ技術の方法によって特徴づけられ、かつ再現性良く生成されうる試薬としての利点を有することは理解されよう。
【0006】
特異的な特定のオリゴ糖の糖脂質を結合する、黒色腫の患者から生成されるヒトIgM抗体の2のクローンが更に報告された(Furukawa,K.ら、1988)。これらの抗体は、通常のヒト細胞又は組織も、癌のサンプルも認識しなかった。他の抗体32−27Mは糖脂質中の内部NeuGcに対し特異的であり、Neu5xα8Neu5Gcα3(GalNAcβ4)Galβ4Glc型の配列中の非還元性末端の末端NeuGcに対しては特異的ではない。ウシ胎仔血清中で成長する黒色腫細胞で糖脂質を結合し、糖脂質の混入の可能性を有する。他の抗体は特定の糖脂質状の末端NeuGcを認識したが、いずれの条件下でもヒト細胞ではない(Furukawa,K.ら、1988)。本発明による抗体は、特異的な酸性の糖エピトープ及びNeuGc含有型の単糖及びオリゴ糖構造を認識することを明らかにし、ヒト細胞上のこのような構造はタンパク質である。癌の状況においては、オリゴ糖の糖脂質構造NeuGcα3LacβCer(GM3)に対し特異的な、特定のわずかに特徴づけられた同様のポリクローナルNeuGc抗体(いわゆる、Deicher−Hanganutziu抗体)が報告された。これらの研究は分析又は治療用途に対して有用な純粋なヒト抗体を表わしてないように思われる。
【0007】
NeuGc含有型のGM3ガングリオシドNeuGcα3Galβ4GlcβCer、又はシアリル2型のN−アセチルラクトサミンの糖脂質NeuGcα3Galβ4GlcNAcβGalβ4GlcβCerに特異的に結合するNeu5Gc認識型のP3抗体は、天然のマウスIgM抗体として、かつヒト化抗体として知られている(国際公開第9920656号、Vasquezら)。抗体は糖脂質特異性であると示された。この特異性はNeuGcα3Galβ4Glc(NAc)の型を排除し、シアリン酸含有配列のためのα3結合とともに、N−アセチルラクトサミン中にβ4結合があり、更に、P3抗体がNeuGc特異性を排他的に伝えるが、一方、この抗体はシアリン酸に対する配列特異性の優先度を有する。
【0008】
本発明は、Neu5Gc及びNeu5Acの双方を有し、異なる特異性がα3でシアリル化された1型のN−アセチルラクトサミンSAα3Galβ3GlcNAcと、α6でシアリル化された2型のN−アセチルラクトサミンSAα6Galβ4GlcNAcとが認識し、重鎖及び軽鎖上に異なるペプチド配列を有する新規のヒト抗体を明らかにする。特有の結合特異性は更に、好適な実施形態においてシアリルTn構造としてのα結合形態で、末端配列Neu5Acα6GalNAcを含む。この抗体がタンパク質上に、及び/又は、タンパク質及び糖脂質上に好適なグリカン構造を認識し、特異性は標的分子中の脂質構造を要求しないことは理解されよう。α3でシアリル化された2型のN−アセチルラクトサミン及びラクトースSAα3Galβ4Glc(NAc)はこの抗体に対し非常に低い結合親和性を有するか、あるいは全く認識せず、このことはP3型又はGM3特異的な抗体との相違を示す。
【0009】
新規のオリゴ糖配列の結合特異性は、バックグラウンドにおける大部分のガングリオシド特異性と大いに異なり、1.4.30型に関連づけた配列、特に重鎖のCDR1及びCDR2領域、より特異的にはFTFSSYAMS型の配列と関連するものを含む。重鎖のCDR1領域は全体的に異なるオリゴ糖結合特異性を有するP3及び14F7抗体に対する特定の相同性を有する。本発明で提供される軽鎖及び重鎖配列によって、本発明による1又はそれ以上のオリゴ糖結合活性を有するヒト抗体の設計及び最適化を可能にすることが更に理解されよう。ヒト抗体は抗原性ではないため、生体内及び生体外での免疫診断及び分析又は治療に有用である。
【0010】
特に、α3結合された1型のN−アセチルラクトサミンSAα3Galβ3GlcNAcβと、O−グリカン配列SAα6GalNAcα、及び、更には2型のN−アセチルラクトサミンSAα6Galβ4GlcNAcβを含むが他のシアリル三糖配列を事実上排除するα6でシアリル化された構造との、この組合せは非常に特有であり、抗体中の特異的な2の別個のシアリン酸結合部位を暗示していることは理解されよう。
【0011】
抗体の構造は、二級ヒドロキシル上にあるが、2型ラクトサミンと関連づけられないα3結合されたシアリン酸、及び、よりフレキシブルな一級ヒドロキシル構造上にあるα6結合されたシアリン酸のいずれかで2の配列型を認識できる。特異性は二分岐型のN−グリカンコア構造[SAα6Galβ4GlcNAcβ2Manα3(SAα6Galβ4GlcNAcβ2Manα6)Manβ4GlcNAcβ4GlcNAc]上にある配列SAα6Galβ4GlcNAcβのうちの少なくとも1つの強い認識を含まないことは更に明らかにされ、シアリルTn構造はN−グリカン上に存在できないことが更に知られる。この特異性は明らかに、出願人の先の発明における、好適な幹細胞混入N−グリカン構造と異なっている。
【0012】
いくつかのオリゴ糖配列は、ヒト幹細胞の性質決定用で知られている。本発明は無傷細胞の表面からいくつかの異なる配列を認識する特異的な結合試薬に関する。その認識は大きな細胞集団を含んでもよく、例えばほぼ80%の幹細胞の標識化を示す。図9参照。並列実験において、細胞が脱離後二時間となった時に80%を超える標識化が得られた。本発明は間葉系幹細胞、特に好適なヒト血液関連の幹細胞の性質決定のために、及び、特定形態の外因性試薬及び細胞培養条件、又はその欠如の状況における、特に有用な方法を明らかにした。
【0013】
ヒト自然抗体は、有害な抗抗体免疫反応の可能性を有する動物からのいくつかの既知の抗体よりもヒト用途に好ましく、ヒトのグリカンと関連する構造をより認識できる。
【0014】
NeuGc結合型抗体は異種抗原性エピトープを特徴的に認識し、このような物質に対する免疫反応を検出及び決定するために臨床又は免疫診断で有用である。ハイブリドーマ技術といった従来の方法論によるNeuGcエピトープを特異的に結合できるモノクローナル抗体の生成は、マウス及びほとんどの他の動物中の通常のグリコシレーションとしての構造の存在によって妨害されてきた。ファージディスプレイ技術はヒトの特定の複合型オリゴ糖構造に対する抗体の生成において適用され、有効な抗原性の決定基はいくつかの単糖残基をおおっている。しかしながら、NeuGcグリカンと結合するが、NeuAcグリカンと結合しない抗体中にあるような、ヒドロキシル基によって置換される1の水素イオンの軽微な変化のみで、単一の末端単糖を有効に認識することが可能なファージディスプレイ又は他のヒト抗体についてデータが存在しない。この抗体は、NeuGc−単糖及び他の糖類の多価性高密度複合体を有効に認識する。抗体は更に、タンパク質及びヒト細胞を含む細胞の認識用に有用であることを示した。この方法は、臨床及び診断用途のために一定の質で生成されうる、酸性オリゴ糖及び/又はNeuGcに特異的な組換え型抗体を生成するための新規の手段を与えている。
【発明の概要】
【0015】
我々は本出願において、抗体が、生物学的サンプルにおける糖類及びNeuGc糖類の定性的及び定量的測定のために設計されるイムノアッセイにおいて、及び、例えば移植と関連するような免疫療法において、試薬として利用するのに十分に高い親和性及び特異性を有する場合の、α3でシアリル化された1型ラクトサミン、SAα6Gal/GalNAc構造、SAα6Galβ4GlcNAc、及びシアリルTnのSAα6GalNAcを含む、特定の新規の酸性オリゴ糖と、異種抗原性のNeuGc糖類又は対応するNeuGcグリカンを含む、特定の単糖エピトープとを特異的に結合するヒト免疫グロブリン、好ましくはIgMの抗体フラグメントの開発及び性質決定について述べる。特に、本発明はファージディスプレイ技術といった抗体ライブラリ法による糖類及び/又はNeuGcに特異的なヒト抗体の選択と、大腸菌中で生成される、操作した抗体フラグメントの結合特性の性質決定について述べる。
【0016】
従って、本発明は異なる種類のイムノアッセイプロトコルならびにヒト免疫療法に用いるべき新規の試薬を提供する。本発明は更に、これらの特異的な均一品質の試薬の連続供給の保証を可能にし、本来の処理単位ごとのポリクローナル抗血清の変化を除去する。これらの有利な効果は、新規、特異的、かつ経済的な、均一品質の免疫診断アッセイ及び治療用分子の製造を可能にする。
【0017】
従って、ある本発明の特異的な目的は、本発明による糖類、そのフラグメント、その化学的又は非共有結合的な複合物、又はこのような抗体の他の誘導体を結合するヒトモノクローナル抗体を提供することであり、酸性糖類、及び/又は、好適な実施形態においては生物学的サンプルにおける糖類及び/又はNeuGcの定性的及び/又は定量的測定、ならびに免疫療法におけるその使用を可能にする親和性及び特異性を有するNeuGcグリカンを結合する。本発明の一価及び、特に少数価数の抗体は、異種抗原性のNeuGc糖類を含む糖類に対する特異的な結合を示す。
【0018】
本発明の別の目的は、特異的なオリゴ糖及び/又はNeuGc糖類に特異的な抗体鎖をコード化するcDNAクローン、ならびに、特異的なオリゴ糖及び/又はNeuGc糖類に結合する抗体、そのフラグメント、又はこのような抗体の他の誘導体を生成するよう、このようなクローンを発現するための構造及び方法を提供することである。本発明は更に、a)核酸配列の発現分析用に、b)核酸配列の発現を有効にするために、核酸配列及び相補的核酸配列、ならびに核酸配列と結合及びハイブリッド形成する類似の能力を有するその相同体の使用に関する。
【0019】
本発明の更なる目的は、生物学的サンプル中の特異的な糖類及び/又はNeuGc糖類の定性的及び定量的測定のために、特異的な糖類及び、好適な実施形態においては特にNeuGc含有糖類に結合する抗体、そのフラグメント、若しくはこのような抗体の他の誘導体、又はその組合せを用いる方法を提供することである。更に、本発明は患者における免疫療法のために、特異的な糖類及び/又はNeuGc結合型の抗体、そのフラグメント、若しくはこのような抗体の他の誘導体、又はその組合せを提供する。
【0020】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の図面及び詳細な説明で明らかとなるであろう。しかしながら、詳細な説明及び特異的な実施例は本発明の好適な実施形態を示すが、本発明の精神及び範囲内の様々な変更及び変形は、この詳細な説明から当該技術分野の当業者に明らかとなるため、例示のみのために与えられると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図の構成はスケールどおりではない。
【0022】
【図1】図1は、無傷のヒト免疫グロブリン抗体、Fabフラグメント、及び単鎖抗体(scFv)の概略的な表現を示す。抗体のドメイン構造及び結合価は抗体クラスの選択に依存し、例えば、IgMは二価抗体構造のペンタマを含む。抗原結合部位は三角形で示される。
【図2】図2は、パニング手順を概略的に示す。
【図3】図3は、VL領域の推定アミノ酸配列の配列比較である。相補性決定領域(CDR)が四角形で囲まれる。番号付けはKabat(Kabatら、1991)による。
【図4】図4は、VH領域の推定アミノ酸配列の配列比較である。相補性決定領域(CDR)が四角形で囲まれる。番号付けはKabat(Kabatら、1991)による。
【図5】図5は、異なるVL領域のcDNAである。VL領域のcDNAはファージディスプレイ技術によって分離された。
【図6】図6は、異なるVH領域のcDNAである。VH領域のcDNAはファージディスプレイ技術によって分離された。
【図7】図7は、タンパク質レベルでのVH及びVL領域の相同性である。図3及び4中のアミノ酸配列の配列比較はタンパク質配列ツリーを描くために用いられた。
【図8】図8は、実験的手順で述べたようなイムノアッセイによって決定される1.4.24型及び1.4.30型の抗体の特異性である。1.4.24型及び1.4.30型の双方の抗体は天然生成型のNeuAc−単糖(GF308)以上にNeuGc−単糖(GF309)に対して、更に本発明による特定の他の末端糖エピトープに対して特異性が高い。
【図9】図9は、FACS中の1.4.24型抗体によるヒト臍帯血の間葉系幹細胞であるヒトCB−MSC細胞のラベリングである(「suora leimaus」は直接ラベリングのことである)。データは抗体によってラベリングされた多数の無傷細胞集団を示し、ラベリングは細胞培養条件に依存する。
【図10】図10は、実験的手順で述べられるようなイムノアッセイによって決定される1.4.19−3(F3)型抗体の特異性である。糖類の還元性末端での文字A、及び例えば(a2,6)のような結合構造中のaは(α2,6)といったα結合を示し、糖類の還元性末端での文字B、及び結合構造中のbはβアノマ構造を示す。多価のポリアクリルアミド糖類複合体は、ロシアのLectinity Holdings社から入手するか、あるいはグリカンのドナー及び構造がNMR分光法によって検証される場合、CMP−Neu5Ac又はCMP−Neu5Gcを用いたものからシアル酸転移酵素反応によって合成された(酵素はCalbiochem社から入手)。
【図11a】図11aは、scFv1.4.19−3(F3)のcDNA及びタンパク質配列である。
【図11b】図11bは、1.4.24型に対応する重鎖構造及び1.4.30型に対応する軽鎖構造を有する、scFv1.4.19−3(F3)クローンの重鎖及び軽鎖のCDR領域である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[略語]
cDNA 相補的デオキシリボ核酸
CDR 相補性決定領域
DNA デオキシリボ核酸
E.coli 大腸菌
ELISA 酵素結合免疫吸着検定法
Fab 特異的な抗原結合を有するフラグメント
Fd 重鎖の可変及び第1定常ドメイン
Fv 特異的な抗原結合を有する抗体の可変領域
GFP 緑色蛍光タンパク質
IgM 免疫グロブリンM
mRNA 伝令リボ核酸
NeuAc Neu5Ac、N−アセチルノイラミン酸
NeuGc Neu5Gc、N−グリコリルノイラミン酸
NMR 核磁気共鳴
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
RNA リボ核酸
scFv 単鎖抗体
SA シアリン酸、NeuGc及びNeuAcを含むノイラミン酸
supE グルタミン挿入型のアンバ抑圧tRNAを運ぶ菌種の遺伝子型
重鎖の可変領域
軽鎖の可変領域
【0024】
出願人は例えば国際公開第2007/006864号、国際公開第2008/107522号、国際公開第2008/087259号、国際公開第2008/087258号、国際公開第2008/087257号、国際公開第2007/006870号などの、幹細胞のグリカンマーカ構造についての他の同時係属中の発明を有し、引用として全体が含まれている。
【0025】
結合剤分子/試薬はグリカンを結合し、好ましくは、結合剤に結合されるラベルのような結合の観察を可能にする特性を含む。強固なグリカン構造に対する新規のグリカン特異性は、グリカンに結合する試薬の高次構造を構造的に規定し、例えばインターネットページwww.glycosciences.de/sweetdb/index.phpのsweetdbから入手可能である。好適な結合剤は、a)抗体、レクチン、及び酵素のようなタンパク質と、b)タンパク質の結合ドメイン及び部位のようなペプチド、及びファージディスプレイペプチドのような合成ライブラリ由来のアナログと、c)アプタマ等を含むペプチド物質を模倣する他のポリマ又は有機主鎖分子を含む。
【0026】
タンパク質がモノクローナル抗体、グリコシダーゼ、グリコシル転移酵素、植物レクチン、動物レクチン、又はそのペプチド模倣薬の群から選択される場合、ペプチド及びタンパク質は好ましくは、組換えタンパク質又はその得られた、対応する糖鎖認識ドメインであり、結合剤は検出可能なラベル構造を含む。配列データ及び分子モデリングに基づいて、この抗体のような結合剤分子を設計することが可能なことは理解されよう。抗体及びそのフラグメントが最も好適な結合試薬である。
【0027】
以下の定義は本明細書中で用いられるいくつかの用語のために提供される。用語「免疫グロブリン(immunoglobulin)」、「重鎖(heavy chain)」、「軽鎖(light chain)」及び「Fab」は欧州特許出願第0125023号で用いられるのと同様に用いられる。
【0028】
多様な文法的形態にある「抗体(antibody)」は、免疫グロブリン分子の集団及び/又は免疫グロブリン分子の免疫学的な活性部分、すなわち抗原結合部位又はパラトープを含む分子を称する集合名詞として本明細書中で用いられる。本明細書中の用語「抗体」によって述べられた分子の例は限定しないが、単鎖Fv(scFv)と、Fabフラグメントと、Fab’フラグメントと、F(ab’)フラグメントと、ジスルフィド結合されたFv(sdFv)と、Fvと、VL又はVHのいずれかのドメインを含むか、あるいは交互になるフラグメントとを含む。本発明の免疫グロブリン分子は任意の型(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)であってもよく、あるいは免疫グロブリン分子のサブクラスであってもよい。好ましくは本発明の抗体は、VHドメイン、VH CDR、VLドメイン、又はVL CDRを含むか、あるいは交互に含んでもよい。
【0029】
「抗原結合部位(antigen−binding site)」、「パラトープ(paratope)」は、抗原を特異的に結合する抗体分子の構造上の一部分である。
【0030】
例示的な抗体はパラトープを含む、それらの免疫グロブリン分子の一部分であり、Fab及びFvとして知られるそれらの一部分を含む。
【0031】
抗体の一部である「Fab(fragment with specific antigen binding)」は、既知の方法による実質的に無傷の抗体上のパパインのタンパク質分解反応によって調製できる。例えば、米国特許第4,342,566号参照。Fabフラグメントは更に、当該技術分野の当業者に既知の組換え方法によって生成してもよい。例えば、米国特許第4,949,778号参照。
【0032】
「ドメイン(domain)」はタンパク質の独立した折り畳み部分について述べるために用いられる。天然タンパク質におけるドメイン境界部に対する一般的な構造上の定義は、Argos、1988で与えられる。
【0033】
「可変ドメイン(variable domain)」又は「Fv」は、免疫グロブリン分子のそれらの領域について述べるのに用いられ、抗原又はハプテン結合を担っている。通常、これらは免疫グロブリン分子の軽鎖及び重鎖のN末端の最初の約100のアミノ酸からなる。
【0034】
「単鎖抗体(single−chain antibody:scFv)」は、抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメインがリンカペプチドを介して相互に結合されて、単一のmRNA分子から合成(転写)された、連続的なアミノ酸鎖を形成する分子を規定するために用いられる。
【0035】
「リンカ(linker)」又は「リンカペプチド(linker peptide)」は、天然型又は操作型のタンパク質中の隣接するドメイン間で延在するアミノ酸配列について述べるのに用いられる。
【0036】
「NeuGc結合型抗体(NeuGc−binding antibody)」は、その可変ドメインによって媒介される相互作用によって、NeuGcを特異的に認識し、それに結合する抗体である。特異的な認識は、対応するコントロールの糖類と比較した、特異的な糖類に対する結合活性の高さを表わす。
【0037】
「糖類(saccharide)」は単糖又はオリゴ糖のエピトープを表わす。糖エピトープは非還元性末端の末端糖類であることが好ましく、その還元性末端からのみ伸長できることが好ましい。伸長部は、ポリアクリルアミド、ポリペプチド、デンドリマ、又は多糖類を含むポリマ、又は疎水性のアグリコンを含む脂質といったタンパク質のような担体への結合によって、より大きな糖質構造及び/又は伸長部にできる。好適なポリマ構造は更に、例えば合成のネオ糖タンパク質又はネオ糖脂質における天然及び/又は非天然の糖質構造か、あるいは1価のアグリコン構造への結合、又はポリマのような担体構造に対するスペーサを含む糖類ポリマ複合体とを含む。
【0038】
本発明による抗体あるいはこれらを含む血清又はライブラリといった、生物学的物質の分析の状況においては、好適なオリゴ糖エピトープは非還元性末端の末端オリゴ糖配列、より好ましくは伸長型のオリゴ糖配列を含み、天然担体構造は、還元性末端でセラミドを含むスフィンゴ糖脂質といった、タンパク質及び/又は脂質構造に結合するO−グリカン及び/又はN−グリカンの構造を含む、1又はそれ以上のタンパク質といった天然の複合糖質であることが好ましい。エピトープは好適な実施形態においては、従来技術の既知かつ変更可能な分岐型細菌性多糖類といった一部の多糖類、例えば発明者の述べた部分であってもよい。より好ましくは、糖類は還元性末端から単独で伸長され、更には、オリゴ糖配列は、任意の更なる群によって、還元性末端ではない任意のヒドロキシル基構造に変更又は分割されないことが好ましい。伸長構造はO−グリカン、N−グリカン、又は糖脂質(好ましくは、スフィンゴ糖脂質)の構造として認識される天然型グリカンの天然型配列であってもよい。
【0039】
単一の単糖残基はα又はβグリコシド結合によって、スペーサ構造、好ましくはグリコシド結合したアルキルスペーサといった非単糖物質に結合され、グリカンをポリマに、好適な実施形態においてはポリペプチド、デンドリマ、又はポリアクリルアミドに、より好ましくはポリアクリルアミドに結合する。本発明はα及びβ結合されたシアリン酸の双方、好ましくはNeu5Gc及びグルクロン酸、好ましくはα又はβ結合を有するGlcAへの結合を明らかにした。本発明は更に、GlcAを含む天然型グリカン、特にグリコサミノグリカン及び/又は糖脂質におけるGlcAへの結合の分析に関する。本発明は更に、グリコサミノグリカンといった平均的な多糖類配列における、オリゴ糖配列中のウロン酸含有型単糖残基へ結合する抗体の分析に関する。
【0040】
糖脂質及び糖質の命名法は実質的に、IUPAC−IUBの生化学命名委員会による推奨によるものである(例えば、Carbohydrate Res.1998,312,167、Carbohydrate Res.1997,297,1、Eur.J.Biochem.1998,257,29)。
【0041】
Gal(ガラクトース)、Glc(グルコース)、GlcNAc(N−アセチルグルコサミン)、GalNAc(N−アセチルガラクトサミン)、及びNeu5AcはD体であり、FucはL体であり、総ての単糖ユニットはピラノース型であると想定する。アミン基は規定されるように、GalNAc又はGlcNAcの2位上に天然型ガラクトサミン及びグルコサミン用に存在する。グリコシド結合は部分的には短く、部分的には長い命名法で示され、シアリン酸SA/Neu5X残基のα3及びα6の結合はα2又は3、及びα2ないし6と同一の物をそれぞれ意味し、他の単糖残基があれば、α1ないし3、β1ないし3、β1ないし4、及びβ1ないし6はそれぞれα3、β3、β4、及びβ6として短縮できる。ラクトサミンは2型のN−アセチルラクトサミンGalβ4GlcNAc及び/又は1型のN−アセチルラクトサミンGalβ3GlcNAcのことであり、シアリン酸(SA)はN−アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)若しくはN−グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)、又はNeu5Xの誘導体を含むその他の天然型シアリン酸である。シアリン酸はともにNeuNX又はNeu5Xのことであり、好ましくはXはAc又はGcである。場合によっては、Neu5Ac/Gc/XはNeuNAc/NeuAc/NeuNGc/NeuGc/NeuNXとしてもよい。本明細書でのグリカンという用語は広範に、ヒト又は動物の複合糖質中にある、特に糖脂質又は糖タンパク質上のオリゴ糖又は多糖類の鎖を意味する。1又は複数のグリカンエピトープはオリゴ糖配列を意味し、伸長型エピトープは還元性末端で伸長される、好適なオリゴ糖配列の変異体を意味する。
【0042】
「オリゴ糖配列(oligosaccharide sequence)」はグリコシド結合した単糖残基の特異的な配列を意味し、好ましくは末端及び「コア(core)」の配列を含む。オリゴ糖のコア配列は1又はそれ以上の非還元性末端の単糖によって修飾されうる。「末端オリゴ糖配列(terminal oligosaccharide sequence)」の発現は、オリゴ糖が別の単糖残基又は複数の残基によって非還元性末端の末端残基と置換されないことを示す。好ましくは、オリゴ糖配列の非還元性末端はオリゴ糖配列からなり、オリゴ糖配列の還元性末端からのみ修飾され、好ましくは還元性末端からグリコシド複合体化(glycosidically conjugated)される。
【0043】
本発明の範囲内にあるこのような抗体のフラグメントの例として、我々は本明細書で図3及び4に示したようなscFvのフラグメントを開示する。従って、ある好適な実施形態においては本発明は、NeuGc及び/又は糖類結合型抗体の誘導体、例えば、Fabフラグメント又はscFvのフラグメントを提供する。結合能力に実質的に影響を与えない1又はそれ以上の保存的置換を有するCDR配列又は完全なV及びV配列の変異体型が代替的に用いられうることは理解すべきである。
【0044】
新規の抗体配列は約50のヒトのIgM遺伝子上の大きなプールから再現性良く生成された。本発明は実施例及び図面において4の抗体について示したように、抗体配列が実質的な相同性を共有することを明らかにした。各抗体配列が、重要な抗原を認識する天然型のヒト抗体配列などとして有用であることは理解されよう。本発明は軽鎖(VL)及び/又は重鎖(VH)の配列と実質的な相同性又は類似性を有する抗体に関する。配列相同性は、cDNAレベルのような、タンパク質及び核酸の双方で重要であることは理解されよう。好適な実施形態においては、抗体ドメインのペプチド(タンパク質)配列が比較される。本発明は図7に示されるように、図3中の軽鎖(VL)配列の配列(又は対応する図5中のDNA、完全相同性の割合(%)はタンパク質に対し規定されたものから変化することが理解されよう)と実質的な相同性を有する抗体に関し、総ての抗体は約50%、より特異的には少なくとも約49%のタンパク質レベルの相同性を共有し、1.4群と称される1.4.11、1.4.24、及び1.4.30型の3のタンパク質配列は特異的な配列に対し少なくとも約90%、より正確には少なくとも93%の更に高い相同性を共有する。分析は更に、1.4.11及び1.4.30型の抗体の好適な下位群が互いに約95%、より正確には約97%の相同性を共有し、相同性は配列の同一性に近いことを明らかにした。
【0045】
本発明は図7に示されるように、図4中の重鎖(VH)配列の配列(又は対応する図6中のDNA、完全相同性の割合(%)はタンパク質に対し規定されたものから変化することが理解されよう)と実質的な配列相同性を有する抗体に関し、総ての抗体は約50%のタンパク質レベルの相同性を共有し、1.4群と称される1.4.11、1.4.24、及び1.4.30型の3のタンパク質配列は特異的な配列に対し少なくとも約80%、より正確には少なくとも81%の更に高い相同性を共有する。分析は更に、1.4.11及び1.4.24型の抗体の好適な下位群が互いに約85%の相同性を共有することを明らかにした。
【0046】
[特異的な糖類及び/又はNeuGc抗体用の共通配列の規定]
本発明は、本発明による抗体配列と選択的な他の抗体とを比較することによる特異的な糖類認識及び/又はNeuGc抗体のための共通配列を規定する方法に関する。本発明は更に、本発明による抗体配列と選択的な他の抗体とを比較することによる特異的な糖類及び/又はNeuGc抗体、あるいは抗体群のための特有で特徴的な配列を規定する方法に関する。CDRが抗体の結合特性に必須であることについて既知なため、例えば、軽鎖と重鎖との双方に対して図3及び4中の四角形中に示されるように、本発明は実質的にCDR配列の比較に関する。
【0047】
[軽鎖共通配列]
本発明は好適な実施形態においては、1.4群の抗体の軽鎖のための共通配列である、
TLRSGINVGXRIYであって、Xは好ましくはA又はTであり、XはY又はSであるCDR1、
KSXSDKQQGSであって、Xは好ましくはN又はDであるCDR2、
MIWHXAXWVであって、Xは好ましくはS又はNであり、XはG又はRであり、XはW又はVであるCDR3、
に関する。
【0048】
相同性がCDR配列内で高いことは認識されよう。1.4群の抗体は、好ましくはCDR1ないし3配列に類似する又は実質的に類似するCDRを有する特徴的な軽鎖を総て含む。
【0049】
本発明は好適な実施形態においては、1.2.20型の抗体の軽鎖のための共通配列である、
CDR1:GGDNLGGKSVH、
CDR2:DDRDRPS、
CDR3:QVWDSGSESVV、
に関する。
【0050】
1.2.20型の抗体は、好ましくはCDR1ないし3配列に類似する又は実質的に類似するCDRを有する特徴的な軽鎖を総て含む。
【0051】
軽鎖CDRの長さのように1.4群及び1.2.20型の抗体間には特徴的な差異があり、最初の2のCDRは1.2.20型抗体で短いが、CDR3は1.2.20型で長い。しかしながら、共通のモチーフである、
GXNZGXであって、Xは好ましくはD又はIであり、XはG、A、又はTであり、XはK、Y、又はSであり、XはS又はRであり、Z及びZは、疎水性アミノ酸残基を含む脂肪族鎖であり、好ましくはZはL又はVであり、ZはV又はIである、残基27ないし45のCDR1、
DZSであって、Xは好ましくはD又はQであり、XはR又はQであり、XはP又はGであり、Zは極性アミノ酸残基を含む塩基鎖であり、好ましくはZはR又はKである、残基57ないし62のCDR2、
WXであって、Xは好ましくはD又はHであり、XはS又はNであり、XはG又はRであり、Zは疎水性アミノ酸残基を含む脂肪族鎖であり、好ましくはZはV又はIである、98ないし102のCDR3、
が双方の型の抗体で見られうる。
【0052】
好適なCDR3配列は更にZWXSGを含み、Xは好ましくはD又はHであり、ZはV又はIである。この配列は1.2.20、1.4.11、及び1.4.30型用の好適な共通配列である。
【0053】
[重鎖共通配列]
本発明は好適な実施形態においては、1.4群の抗体の重鎖に対する共通配列、
TFXYXMXであって、Xは好ましくはI又はFであり、XはR又はSであり、XはK、又はS、又はRであり、XはA又はSであり、XはN又はSであるCDR1、
ISXSXYYADSVKGであって、Xは好ましくはA又はSであり、XはN、G、又はSであり、XはG又はSであり、XはS又はGであり、XはD、S、又はYであり、XはT又はIであるCDR2、
DXであって、Xは好ましくはR又はMであり、XはP、K、又はNであり、XはK又はなしであり、XはG又はなしであり、XはG、A、又はなしであり、XはG又はAであり、XはM又はFであり、XはV、又はP、又はIであるCDR3、
に関する。
【0054】
相同性がCDR配列内で高いことが理解されよう。1.4群の抗体は好ましくはCDR1及びCDR2、及び最も好ましくは総てのCDR1ないし3の配列と類似又は実質的に類似するCDRを好ましくは有する総ての特徴的な重鎖を含む。
【0055】
本発明は好適な実施形態においては、1.2.20型の抗体の重鎖の共通配列である、
CDR1:GTVNSYYWS、
CDR2:RVYSSGTTNLNPS、
CDR3:DYGTDY、
に関する。
【0056】
1.2.20型の抗体は特徴的な重鎖を含み、好ましくはCDR1及びCDR2、及び最も好ましくは総てのCDR1ないし3の配列と類似又は実質的に類似するCDRを好ましくは有する。
【0057】
重鎖CDRの長さのように、1.4群及び1.2.20型の抗体間には特徴的な差異があり、1.2.20型抗体の第2のCDRは他のものよりも短く、CDR3は更に、1.2.20型について、及び1.4.30型についてもより短い。しかしながら、共通のモチーフである、
TZYXであって、Xは好ましくはG、I、又はFであり、XはN、R、又はSであり、XはK、S、又はRであり、XはY、A、又はSであり、XはN又はSであり、好ましくはZはV、又はFであり、ZはW又はMである、残基27ないし35のCDR1、
SXSZKZであって、Xは好ましくはR、A、又はSであり、XはN、G、又はSであり、XはG又はSであり、XはT、S、又はGであり、Xはなし、D、S、又はYであり、XはT又はIであり、ZはV又はIであり、ZはY又はSであり、ZはN又はYであり、ZはL又はYであり、ZはN又はAであり、ZはP又はAであり、ZはL又はVであり、ZはS又はGであるCDR2、
DXであって、Xは好ましくはD、R、又はMであり、XはY、P、K、又はNであり、XはK又はなしであり、XはG又はなしであり、XはG、A、又はなしであり、XはG又はAであり、XはT、M、又はFであり、XはY、V、又はP若しくはIであるCDR3、
が双方の型の抗体で見られうる。
【0058】
好適な重鎖CDR3配列は第2の最終位置でD型の保存残基を含む。
【0059】
保存型のCDRタンパク質又はDNA配列のような核酸は、特異的な糖類抗原又は抗体がタンパク質配列を認識することによる、及び/又は、PCR分析のような、対応する核酸発現の認識用のRNA/DNA分析によるアッセイのように、アッセイ中の抗体又は対応する核酸発現の認識に対し有用であることは理解されよう。
【0060】
[糖類及びNeuGc認識型の抗体の比較分析]
データは、特に1.4群の3のタンパク質配列が各抗体の特異的な特徴とともに、抗体の相同群を形成する大きな配列相同性を共有することを表わす。類似性によって1.4群の抗体の保存構造の分析が可能になる。特定の実施形態においては、本発明は、好適な型の糖類及びNeuGc認識型の抗体としての1.4群の抗体と、他の可能性のある糖類及びNeuGc認識型の抗体の比較分析のための抗体タンパク質又は1又はそれ以上の核酸配列の使用とに関する。
【0061】
1.2.20型の配列は異なる配列を有するが、1.4群と類似する特異的な配列の特徴を共有する。特定の実施形態においては、本発明は、好適な型の糖類及びNeuGc認識型の抗体としての1.2.20型の抗体と、他の可能性のある糖類及びNeuGc認識型の抗体の比較分析のための抗体タンパク質又は核酸配列の使用とに関する。4の配列間の類似性によって、1.4群の抗体及び1.2.20型と同様の抗体の保存構造の分析が可能になる。
【0062】
[既知の抗体及び抗体配列と抗体群の比較]
本発明は更に、本発明による抗体の、構造的及び/又は機能的のいずれかで既知の抗体、好ましくは類似の構造及び/又は機能を有すると思われる抗体と比較する方法に関する。本発明は特にその抗体の、ニワトリで生成される既知のポリクローナル抗体のような既知のNeuGc認識型抗体、又は別個及び異なる特異性を有する、Furukawaら、1988によって述べられたヒトからクローンされた抗体といった既知のNeuGc認識型モノクローナル抗体、及び、キューバ共和国のハバナで生成されたP3型抗体といった、免疫化によってマウスで生成され、NeuGc含有型糖脂質を認識すると知られるモノクローナル抗体(Morenoら、1998、Vasquezら、国際公開第9920656号)との比較に関する。
【0063】
抗体の機能的結合は、本発明で用いられる多価複合体、及び/又はタンパク質、及び/又は脂質結合糖質、又は細胞物質上にあるNeuGc含有型構造での結合について好ましくは比較される。この抗体及び可能性のある比較抗体のタンパク質結合は、好適なタンパク質相互作用法によって行うことができ、ウェスタンブロット法といった固相アッセイ法によって行われることが好ましい。
【0064】
本発明は更に、好ましくは類似の構造及び/又は機能を有すると思われる抗体からの他の抗体配列と、この抗体の配列、好ましくはタンパク質配列の比較に関する。類似した機能を有する好適な抗体は、酸性糖質認識型抗体、好ましくはGlcA又はシアリン酸といったカルボン酸含有型糖質、より好ましくはシアリル化された糖質、及び好適な実施形態においてはNeuGc−糖質認識型抗体を含む。
【0065】
この抗体配列を自己免疫性疾患及び/又は癌の患者で知られる抗体配列と比較することが、NeuGc型構造の認識可能性を有する特定の型のヒト免疫応答がこれらの病気と関連するため、有用であることは更に理解されよう。本発明は、これらの病気と関連する抗体配列、好ましくは癌及び/又は自己免疫性疾患でのヒト抗体配列を比較し、好ましくは、本発明による好適な抗体/抗体群の範囲で、重鎖及び/又は軽鎖に対する相同性の割合(%)で抗体配列を選択し、好ましくはNeuGc含有型糖質への結合に対しこのような1又は複数の抗体を試験する方法に関する。このような実験が病気の原因を明らかにし、治療の可能性を計画するのに非常に有用であることは理解されよう。
【0066】
好適な実施形態においては、比較用の抗体配列は、NeuGcを含む生物学的試薬又は物質を用いて移植/注入するといった、血液をNeuGc物質と接触させたヒトからクローンされ、好適な移植はNeuGcを含む物質を用いた器官/組織の移植であり、好適な器官移植は更に、NeuGcでの混入の可能性を有する幹細胞移植を含む。
【0067】
[有用なグリカン結合特異性を有する新規の抗体]
本発明は新規かつ有用な単糖及びオリゴ糖の結合特異性を有するモノクローナル抗体のライブラリを明らかにした。この抗体は結合特異性の特性を有し、複数の細胞型、特にヒト細胞の分析について有用である。
【0068】
結合特異性はいくつかの有用なグリカン型を含み、その一部はサブタイプの細胞に好適である。本発明は好適な実施形態においては、特異的なサブタイプのヒト細胞の結合のために、これらの抗体からある抗体を選択することに関する。その抗体が細胞の識別に有用であることは更に理解されよう。
【0069】
[疾患関連型の抗体]
本発明は更に、この抗体(又は複数の抗体)の重鎖部分において実質的な相同性があり、抗体が癌及び/又は自己免疫性疾患の状況において重要な抗原性構造を認識することを明らかにする。抗体の特異性は、特に3次元構造が知られない場合、配列から直接的に生成できない。
【0070】
しかしながら、本発明による重鎖CDR、特に本発明による、特に1.4.24型に相同な抗体においてCDR1及びCDR2を含む抗体の間で、新規の糖質結合特異性があることを明らかにする。
【0071】
これらの抗体の開発及び分析の主要な問題は、それらの糖質結合特異性の可能性及び/又は正確さが知られてこなかったことである。本発明は、シアリン酸(Neu5Gc及びNeu5Ac)及びグルクロン酸含有構造のような、酸性単糖残基含有構造を特に認識する抗体の糖質特異性を明らかにする方法を提供する。
【0072】
[抗体の開発又は分析用のアッセイ]
本発明は疾患関連型又は細胞結合型の抗体、好ましくはヒト抗体の分析方法に関し、本方法は本発明による単糖及びオリゴ糖配列を含む糖類で、抗体の特異性を測定するステップを含む。
【0073】
好ましくは、抗体の結合は少なくともオリゴ糖配列について、より好ましくはキーとなる少なくとも2のオリゴ糖配列について、更に及び最も好ましくは本発明によるキーとなる3のオリゴ糖配列について測定される。更に好適な実施形態においては、本発明による、好ましくは少なくとも1の、より好ましくは少なくとも2の、最も好ましくは少なくとも3のコントロールのオリゴ糖配列を含む、コントロールの糖類に結合する抗体が測定される。
【0074】
好適な分析方法は、本発明による好適な1又はそれ以上の糖類配列と抗体を接触させるステップを含む。
【0075】
更に好適なステップは糖類と抗体との間に形成される複合体を測定するステップを含む。複合体を観察する好適な方法は、FRETを含む、蛍光法といった分子の距離を測定する方法と、抗体のような非結合試薬を洗浄するといった、アッセイから非結合試薬を除去し、酵素、蛍光又は放射標識による方法といった検出方法を含む標準的な方法によって、抗体のような結合試薬を測定する方法とを含み、好適な酵素結合アッセイはELISAアッセイを含む。アッセイは固相アッセイにできることは理解されよう。
【0076】
[単糖結合特異性]
分析は、フレキシブルなスペーサ構造であるNeu5Gcα、GlcAα、GlcAβ、GalNAcα、GalNAcβを含むポリアクリルアミド複合体として分析される場合、新規の抗体が単糖残基で高親和性を有することを明らかにした。オリゴ糖鎖の末端部分としてこれらの単糖残基を認識するために、特にNeu5Gcに対し、同様のフレキシブルな構造の呈示が要求されることは理解されよう。特にα及びβ結合のGlc、Man、GlcNAcβ−、Galβ−、及びFucα−のいくつかの中性の非還元性末端単糖残基は結合実験で事実上陰性であった。図8。
【0077】
最良の結合は酸性単糖残基のグルクロン酸及びNeu5Gcのシアリン酸であった。更には、オリゴ糖結合特異性が、いくつかのNeu5Ac含有型オリゴ糖配列への結合を明らかにした。
【0078】
本発明は好適な実施形態においては、シアリン酸含有型グリカンの認識用の抗体、より好ましくはNeu5Ac又はNeu5Gc含有型グリカンに特異的な抗体の開発に関する。
【0079】
[Neu5Gc含有型グリカン]
好適な実施形態においては、本発明はNeu5AcよりもNeu5Gcのオリゴ糖配列により強く結合する(より特異的に認識する)新規の抗体に関する。好適な実施形態においては、結合/認識されたNeu5Gcオリゴ糖配列は1型のN−アセチルラクトサミン配列Neu5Gcα3Galβ3GlcNAcである。好適な実施形態においては、Neu5Gcα3Galβ3GlcNAcは好ましくはELISA型アッセイにおいて、Neu5Acα3Galβ3GlcNAcより有効に認識される。
【0080】
[Neu5Ac含有型グリカン]
好適な実施形態においては、本発明はNeu5GcよりもNeu5Acのオリゴ糖配列により強く結合する(より特異的に認識する)新規の抗体に関し、より好ましくは、抗体はNeu5Acに結合するが、Neu5Gcに非常に弱く結合するか、あるいは事実上全く結合しない。好適な実施形態においては、結合/認識されたNeu5Acオリゴ糖配列は、シアリル化された非還元性末端の末端Neu5Acα6GalNAc構造、より好ましくはシアリルTn配列Neu5Acα6GalNAcαである。Neu5Ac構造の選択的な認識は抗体に対する有用な特性であり、好適な実施形態においてはヒトと動物との間のグリカン構造の分化のために用いられることは理解されよう。
【0081】
[新規の糖類結合特異性]
本発明は、少数の重要なキーとなるオリゴ糖配列である、
a)SAはNeu5Gc又はNeu5Ac、より好ましくはNeu5Gcα3Galβ3GlcNAcであり、更により好ましくはNeu5Gcα3Galβ3GlcNAcはNeu5Acα3Galβ3GlcNAcより高親和性で認識又は結合される、α3でシアリル化された1型のN−アセチルラクトサミン配列SAα3Galβ3GlcNAc、
b)SAはNeu5Gc又はNeu5Acであり、Neu5Acα6Galβ4GlcNAc及びNeu5Gcα6Galβ4GlcNAcを含み、高親和性で認識される好適な標的はNeu5Acα6Galβ4GlcNAcである、α6でシアリル化された2型のN−アセチルラクトサミン配列SAα6Galβ4GlcNAc、
c)シアリル化された非還元性末端の末端Neu5Acα6GalNAc構造、好ましくはシアリルTn配列Neu5Acα6GalNAcα、
の高特異性の認識を明らかにした。
【0082】
本発明は更に、α3でシアリル化された2型のN−アセチルラクトサミンとラクトースSAα3Galβ4Glc(NAc)とを含む抗体にわずかに結合されるか、あるいは全く結合されない有用なコントロールのオリゴ糖配列を明らかにした。ここで、SAはNeu5Gc又はNeu5Acであり、nは0又は1である。これらのグリカンは、抗体がグリカンの認識において特異的であることを示す。
【0083】
これらの結合特異性及びその組合せは、ヒトモノクローナル抗体について、特に天然型ヒトモノクローナル抗体について新規である。ヒトモノクローナル抗体による複数であるが高選択性のグリカン認識の存在がいくらか特有であることは理解されよう。更には、グリコシレーションの種特異性のため、構造の抗原性は免疫化で通常用いられるマウス、ラット、又はウサギといった他の種での実験結果から知ることができないことは理解されよう。ポリクローナル抗血清の場合、実際の結合特異性はポリクローナル抗体及び抗血清での結果から得られなかった。
【0084】
[より大きな構造に対する結合の分析]
本発明による抗体結合型の単糖又はオリゴ糖構造、又はそのエピトープはより大きなオリゴ糖配列の一部であってもよく、このオリゴ糖エピトープよりも高い又は低い親和性で認識されることは理解されよう。
【0085】
本発明は、抗体の他の糖類への結合を、本発明による単糖又はオリゴ糖構造と比較するステップを含み、好ましくは本発明による少なくとも1の新規の結合配列を含む結合アッセイにおいて、特に天然の糖脂質又は糖タンパク質上にある大きなオリゴ糖配列を用いた、他のグリカンのスクリーニングに関する。
【0086】
[変異誘発及び/又は配列の置換による更なる開発]
特異的に異なるα3及びα6結合されたシアリン酸構造及びα6でシアリル化されたGalNAcと、多様な構造におけるNeu5Gc及びNeu5Acへの異なる結合とを有するラクトサミンでの1及び2型の双方の認識は、抗体がグリカンの複数の立体構造を認識し、少なくとも2の異なるシアリン酸結合部位及び立体構造を有することを示す。
【0087】
本発明は、変異誘発法によって可変部位の抗体のペプチド配列を変化させることによる、及び/又は、別の抗体からの対応する配列によって1の抗体から1又はそれ以上の可変CDR配列又はその一部を置換することによる、新規の抗体の開発のために抗体特異性を変更する方法に関する。好適な実施形態においては、変異誘発法は本発明による糖質結合アッセイと組み合わされ、本発明による特異的な酸性グリカン構造に対する抗体の修飾結合は、特異性の変化を明らかにするよう測定される。
【0088】
[新規のタンパク質発現型又はタンパク質/及び脂質発現型の標的グリカン]
好適な実施形態においては、本発明はタンパク質型のグリカン標的配列を認識する抗体の開発及び分析に関する。本発明はシアリルTn配列NeuNAcα6GalNAcαへの結合があり、ムチン型の糖タンパク質上にあることを明らかにした。本発明は構造を認識するヒトモノクローナル抗体、特に、共通配列を含むか、あるいはこの抗体と実質的に相同性を有する抗体に関する。
【0089】
α3でシアリル化された1型のN−アセチルラクトサミン配列SAα3Galβ3GlcNAc及びα6でシアリル化された2型のN−アセチルラクトサミン配列SAα6Galβ4GlcNAcは双方とも、タンパク質及び糖脂質によって提供されうることは更に理解されよう。本発明は、タンパク質及び脂質からの構造分析のための抗体の使用に関する。本発明は更に、構造を認識するヒトモノクローナル抗体、特に共通配列を含むか、あるいはこの抗体と実質的に相同性を有する抗体に関する。
【0090】
本発明は特に、抗体がタンパク質結合されたグリカン上にNeu5Ac又はNeu5Gcを認識する場合の、新規の抗体、好ましくはヒト抗体、及びそれらに関連するその更なる開発及びアッセイに関する。好適な実施形態においては、本発明はタンパク質結合されたNeu5Gcの糖類配列に結合するヒト自然抗体に関する。
【0091】
本発明は、糖類配列がタンパク質に結合する場合の、本発明による糖類配列、好ましくはNeu5Gc含有型のオリゴ糖配列への自然ヒト抗体の結合の分析に関する。
【0092】
本発明は、糖類配列が脂質に結合する場合の、本発明による糖類配列、好ましくはNeu5Gc含有型のオリゴ糖配列への自然ヒト抗体の結合の分析に関する。本発明は特に、本発明による末端エピトープを含むラクト及びネオラクト系の糖脂質に対する結合の分析に関する。
【0093】
[栄養又は治療上のタンパク質の状況における抗体結合の測定]
Neu5Gc結合型オリゴ糖は、治療又は栄養上の状況においてヒトと接触し、免疫反応を引き起こすようにできる糖タンパク質上に存在することは理解されよう。好適な実施形態においては、本発明はオリゴ糖配列が治療用タンパク質、好ましくは治療用組換えタンパク質に結合される場合の、本発明によるオリゴ糖配列に対するヒト抗体の分析に関する。
【0094】
好適な実施形態においては、本発明によるアッセイにおいて測定すべき抗体が、本発明による抗体に対して相同性を有する。このアミノ酸配列に対する相同性は、本発明による糖類結合分析用に抗体を選択する方法ステップで用いられうることは理解されよう。好適な実施形態においては、抗体は、本発明による共通配列によって少なくとも1の可変部位を有するか、あるいは、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、及び最も好ましくは少なくとも90%の相同性の配列を有するか、あるいは2つのみ、又はより好ましくは1つのみの異なるアミノ酸残基を含み、好適な実施形態においては、それぞれのアミノ酸残基はアミノ酸であり、本発明による配列中のアミノ酸と類似する電荷又は疎水性を有している。
【0095】
[結合特異性の分析]
本発明は更に、シアリン酸、好ましくはNeuGcを含有する糖質への結合に対する、この抗体及び選択的な比較抗体の試験に関し、α3及び/又はα6及び/又はα8結合のような異なるシアリン酸結合構造を有し、好ましくは対応するNeuAc含有型の複合糖質で実験を制御する。試験すべき好適な糖質は、本発明による末端オリゴ糖配列、及び/又は抗体によって認識されない末端オリゴ糖配列のうちのいずれかを含む可能性のあるいずれかの糖類を含む。本発明は特に、総ての型の天然型酸性グリカン、より好ましくはシアリル化されたグリカン、及び/又はグルクロン酸含有型のグリカン及び物質、更により好ましくはこれらを含む天然物質の研究及び分析用の抗体に特に関する。
【0096】
より好ましくは、分析すべき糖質は、例えば、O−グリカン及び/又はN−グリカンといった糖タンパク質上の、あるいはセラミドに結合されたグリカンを含むスフィンゴ糖脂質といった糖脂質上の、天然型複合糖質上のグリカンである。本発明による抗体によって認識される末端の二糖又はオリゴ糖エピトープは、グリカンの一部としての末端オリゴ糖エピトープとして好ましいか、あるいは、対応する配列がTn抗原のように(天然型)グリカン全体に存在する場合、抗体は、実質的にグリカン全体(配列中の少なくとも部分的に総ての単糖残基)と、選択的に担体構造の更なる部分とを認識することが好ましい。オリゴ糖特異性によって天然型の哺乳類複合糖質の分析が可能であり、好適な実施形態においては、複合糖質、好ましくは糖タンパク質及び/又は糖脂質は、細胞及び/又は組織の物質上に、より好ましくは分離細胞及び/培養細胞といった細胞物質上に存在する。
【0097】
[この抗体の変異体の好適な生成物]
類似するヒトモノクローナル抗体はヒト抗体ファージディスプレイライブラリから同様の方法によって生成されうることは理解されよう。類似する抗体は、抗体結合に必須ではない単一のアミノ酸残基を変えることによって生成できるか、あるいは類似する結合を可能にするよう変化させうることは理解されよう。アミノ酸残基の変更は好ましくは、単一の置換変異を生成するか、あるいは変異されたタンパク質配列のライブラリを生成し、NeuGc含有型糖質構造への結合用の配列をスクリーニングする通常の組換え型DNA技術によって行われる。本発明は、この抗体の置換変異及び変異体の設計及び/又は生成のための、親水性/疎水性の構造、大きさ、電荷、又は芳香族構造といった類似する側鎖特性を有する残基のような、既知の類似性の特定のアミノ酸残基の使用に関する。
【0098】
本発明は、分子モデリング及び/又はX線結晶学及び/又はNMR法によって抗体の三次元構造を規定する方法に関し、好ましくはその構造は特異的な糖類又はNeuGc残基含有型の糖質構造と複合して生成される。本発明は更に、複合体を規定し、抗体配列の変異誘発のために実験を更に設計し、抗体のアミノ酸残基の変異誘発によって特異的な糖類及び/又はNeuGc含有型構造に対する抗体の特異性及び/又は親和性を開発するための情報を使用することに関する。
【0099】
ヒト互換性のために、本発明による天然型配列及びヒト抗体ディスプレイライブラリからの類似相同体の推定は、例えばヒト生体内などでの様々なヒトでの用途に対して、あるいは代替的な非ヒト抗体とヒト血清抗体からの交差反応を防ぐ生体外診断に対して好適である。この抗体又は動物抗体フレームを有するキメラ形態中のそのリガンド結合型配列は、抗体の生物学的活性を研究するために動物実験で用いるのに好適であり、抗体配列が試験動物種の自然抗体から認識可能であるという事実のため、開発されることは更に理解されよう。
【0100】
例えば、生物学的サンプル中の糖類及び/又はNeuGcの定性的又は定量的な決定用にイムノアッセイで用いるために、本発明の抗体及び抗体誘導体はラベリングしてもよい。これらの目的のために、分析的又は診断的な抗体ラベリングのために従来用いられる様々な型のラベルは許容できる。
【0101】
例えば患者の悪性組織中の異種抗原性NeuGcを標的にするよう、免疫療法で用いるために、本発明の抗体及び抗体誘導体は治療用分子とともにラベリングしてもよい。これらの目的のために、治療用の抗体ラベリングに従来用いられる薬学的に許容可能なラベルが好適である。
【0102】
有害なNeuGc認識型の抗体の結合を遮断するために、抗体/抗体複合物は細胞毒性ではないことが好ましい。Fabフラグメント又はscFv型フラグメントといった非免疫原性の抗体フラグメントは、自己免疫反応を受ける、又は天然型のNeuGc抗体によって移植される組織の、抗原性NeuGc構造に対する結合を遮断するのに用いてもよい。
【0103】
例えば生体内イメージングで用いるために、本発明の抗体及び抗体誘導体はラベリングされてもよい。これらの目的のために、抗体ラベリングに従来用いられる薬学的に許容可能なイメージング用ラベルが好適である。
【0104】
抗体及び抗体フラグメントを複合する数多くの方法は、当該技術分野で既知である。一般的には抗体は、抗原結合部位から離れた部位で複合する。複合は好適な実施形態においては、グリカン、好ましくはFcドメインのN−グリカンのような、抗体のN結合型グリカンで、又は変異誘発によって生成される新規のグリコシレーション部位に対して生成されるグリカンで行われる。複合の他の好適な部位は可変領域から離れたポリペプチドのN又はC末端であり、好ましくは末端は、N末端のセリン残基のようなタンパク質構造を害しない化学的に修飾可能な構造を具え、ヒドラジン又はアミノオキシ試薬といったアルデヒド反応試薬によって特異的に酸化(グリカンと同様に)及び複合でき、治療上又は診断上の分子構造に結合されている。治療上又は診断上の分子構造は、治療のための、又は分析的な使用のための、例えばELISA試薬、光学分析のための光活性化可能な分子、アビジン/ストレプトアビジンラベリングのためのビオチン、又は生体内イメージングのための放射活性又はNMR/MRI活性分子といった、細胞毒性分子又は放射活性分子、又はプロドラッグ/プロドラッグ放出分子であることが好ましい。
【0105】
別の態様においては、本発明は更に、本発明の抗体又は抗体誘導体をコード化するDNA分子と、このようなDNAのフラグメントとを提供し、これらはV及び/又はV領域のCDRをコード化する。このようなDNAはベクタ、特に、本発明の抗体誘導体、あるいは少なくとも1の抗体鎖又は1の抗体鎖の一部の発現を関連づけることができる発現ベクタなどでクローンされうる。
【0106】
本発明の更なる態様においては、宿主細胞が提供され、細菌性細胞、酵母細胞、真菌細胞、昆虫細胞、植物細胞、及び哺乳類細胞から選択され、本発明のDNA分子を含み、本発明の抗体又は抗体誘導体を発現できる宿主細胞を含む。従って、本発明の抗体誘導体は、1又はそれ以上の要求される抗体鎖を発現し、所望のタンパク質を直接的に回復させるか、又は必要に応じて別個の鎖を初期回復及び結合させる、本発明の宿主細胞を培養することによって調製してもよい。
【0107】
上に示したscFvのフラグメントは、異種抗原性組換え型NeuGcを用いて、ヒトIgMのscFvファージライブラリのバイオパニングによって得られた。ヒトIgMのscFvファージライブラリは50の健常な供血者のリンパ球から単離されたmRNAから構成された。軽鎖及び重鎖cDNAの可変領域はFd cDNA用のヒト特異性のプライマを用いて合成され、ヒトカッパ(κ)及びラムダ(λ)軽鎖はヒトκ及びλ鎖特異性のプライマを用いて合成された。軽鎖及び重鎖の可変領域は、Vκ cDNA及びVλ cDNA用のヒトκ及びλ鎖特異性のプライマと、V cDNA用のヒトIgM特異性のプライマとをそれぞれ用いてPCRによって増幅させた。ヒトIgMのscFvライブラリは、PCRプライマに導入される制限部位を用いて、可変領域のcDNAをscFvファージディスプレイベクタにクローンすることによって構成された。
【0108】
ヒトIgMのscFvライブラリはパニング手順を用いたファージディスプレイによって選択された。ヒトIgMのscFvファージライブラリは溶液中でビオチン化された異種抗原性組換え型NeuGcによってスクリーニングされ、結合剤はストレプトアビジン上に捕捉された。ファージの溶出は100mMのHCl(pH2.2)でなされ、その後すぐに、2MのTris溶液で中和された。ファージ溶出は大腸菌細胞中で増幅された。4回のバイオパニング後、可溶性のscFvのフラグメントが単離されたファージから生成された。選択されたscFvのフラグメントの結合特異性はELISAによって分析された。いくつかの糖類及び/又はNeuGc特異性のscFvのフラグメントのクローンが得られた。
【0109】
本明細書中で述べたように、ファージディスプレイ技術は診断及び治療用途でヒトIgM組換え型の抗糖類及び/又は抗NeuGc抗体を開発するための有効かつ実現可能なアプローチである。
【0110】
本発明の抗体フラグメントを得るためのある成功した選定戦略を述べてきたが、本発明の抗体フラグメントを与えることができる数多くの変形物は、当該技術分野の当業者に明らかであろう。scFvのフラグメント又はその誘導体のファージ又は微生物のディスプレイライブラリから直接的に、本発明のscFvのフラグメントを選択することは可能である。ファージ又は微生物細胞は、表面タンパク質とともに融合タンパク質として本発明のscFvのフラグメント又は他の抗体フラグメントを提供し、本発明の更なる態様を表わす。
【0111】
本発明の抗体及び抗体誘導体の微生物発現が、免疫診断アッセイ及び免疫療法で用いるのに好適な均一品質の高特異性の試薬の有効かつ経済的な生成のための手段を提供するが、代替的に、合成してこのような試薬又は少なくともその一部を生成することが可能である。従来の遺伝子工学技術を適用することによって、結合特性を実質的に変えることなく、例えば新しい配列が結合されるなど、本発明の初期に得られた抗体フラグメントを変えることができる。このような技術は、新規の糖類及びNeuGc結合型のハイブリッドタンパク質を生成するのに用いることができ、既に明細書中で規定したように糖類及びNeuGcに対する親和性及び特異性の双方を保持する。
【0112】
[NeuGc抗体を選択するための特異的な方法]
本発明は、抗体フラグメントのディスプレイライブラリが非還元性末端の単一末端であるNeuAcα複合体に対して結合せず、かつ非還元性末端の単一末端であるNeuGcα複合体に対し結合すると選択される場合の、ファージディスプレイ抗体ライブラリからの抗体フラグメントの選択に関する。好ましくは、選択のための複合体は固定化される。より好ましくは、前記NeuAcα非結合型の複合体は最初にファージライブラリから選択されて、次いでNeuGcα結合型クローンがライブラリから選択される。抗体ライブラリは様々な方法で構成でき、好適な実施形態においては、ライブラリはscFvライブラリであることが理解されよう。
【0113】
本発明はヒト抗体のライブラリから抗体フラグメントを選択する新規の有用な方法を明らかにし、好ましくは多数のヒトから得られるライブラリを形成し、より好ましくはそのライブラリは少なくとも約50のヒトから得られる。実施例に示されたライブラリは、約50の健常者の供血者の血液細胞から得られる。大多数のドナーのため、そのライブラリは単一末端のNeuGcα残基に対する事実上総ての最大限のヒト抗体を含むと考えられる。抗体ライブラリは複数の選択から同一のクローンを与え、その方法が再現可能であることを示す。
【0114】
実施例における選択は、IgM抗体のライブラリから行われた。本発明は好ましくは、抗NeuGc抗体の生成/発見のためのIgM抗体の選択に関する。「成熟」抗体のため、一般的にはIgMと他の抗体型の間には差異がある。IgM抗体は更に天然で10価であり、この選択方法は少価数の形態において抗体フラグメントを表示するファージを用いることによって、天然の少価数のNeuGcの認識を模倣するように設計された。本発明による抗体が、多価結合剤を有する多価クラスタ化された糖類又はNeuGc構造の天然型IgMとしての認識と、更にはFAb型試薬による一価エピトープの認識とに有用であることを本発明は示す。他の抗体型は一般的に二価であり、少価数の抗原の認識にはほとんど有用ではない。
【0115】
抗体フラグメントは、NeuAcα及びNeuGcαの多価複合体に対して選択される。正確な選択のために、双方の構造は好ましくは同一の担体構造に複合される。本発明は特に、クラスタ化された少価数のNeuGcのエピトープを認識できる抗体に関する。NeuGc認識型の抗体に関する過去の研究は、単分子の糖脂質構造に結合することについて記載され、単一のNeuGc残基又は、構造NeuGcα8NeuGcα3Galβ4GlcβCerのように、相互に非常に近い構造で2のNeuGc残基を含むことは注目すべきである。スクリーニングが非還元性末端の末端構造に対して行われた場合、この抗体が糖脂質よりも他の糖複合体からの更なるグリカン構造の認識に有用であることは更に理解すべきである。
【0116】
好適な多価複合体は約20未満の原子結合であるが、約6より大きい原子結合間の距離を有している。多価複合体は好ましくはフレキシブルなポリアミド構造、より好ましくはポリアクリルアミド構造を含む。フレキシブルは構造がメチレン構造を有するスペーサを含むことを示す。好ましくは、NeuAcα/NeuGcαは3の炭素のスペーサに結合され、メチレン基であることが好ましく、更にはポリアクリルアミドの主鎖に複合化される。多価のアクリルアミド複合体はBovin N、1998によって記載されるように化学的に合成でき、多価のアクリルアミド複合体は米国セントルイスのSigma社又はロシアのSyntesome社のような試薬購入先から商業上入手可能である。
【0117】
本発明は更に、本発明によるヒト抗体ライブラリからの選択によって発見される抗体に関する。
【0118】
[本発明による糖類及び/又はNeuGc抗体の新規の特異性の特徴]
本発明による抗体は、多価の単糖複合体で分析した場合、異種抗原性非還元性末端の単一末端であるNeuGcαに対する結合特異性を明らかにしたが、非還元性末端の単一末端であるNeuAcαを結合しなかった。特定の抗体がオリゴシアリン酸又はポリシアリン酸NeuGcα8NeuGcα3Galβ4GlcβCerなどの非末端位置にシアリン酸を認識するが、末端非還元性の末端残基としてではなく、例えば、Varkiとその仲間によるニワトリのポリクローナル抗体の生成のために用いられる抗原が、グリセロール構造に関して切断され、ひいては末端修飾及び/又は伸長されたNeuGc構造の認識を可能にすることは注目すべきである。本発明は非還元性末端のNeuGcαのために選択される優れた結合活性の抗体を明らかにした。有効な認識は、更なる修飾を要求しないが、他のNeuGc残基による担体構造又は伸長によって影響を受け、ひいてはエピトープは、担体に複合する末端単糖残基を含む単一末端のNeuGcαであるとされる。
【0119】
抗体は結合特異性を有し、特定の酸性糖類及び/又は非還元性末端NeuGcエピトープを含むヒト細胞の認識を可能にする。既に公表されたヒト抗体と対照的に、これは糖脂質上に末端非還元性の末端NeuGcを認識するが、ヒト細胞では認識しないもの、及び糖脂質上で末端非還元性の末端NeuGcを認識せず、明らかにタンパク質上で認識せず、ウシ胎仔血清中で成長したヒト細胞を結合したものである。
【0120】
更に、本発明は最初に、ファージディスプレイ、又は、NeuGc末端の単糖残基に結合するが、NeuAc末端の単糖残基に結合しない抗体中などで、ヒドロキシル基によって置換される1のプロトンのわずかで軽微な変更を用いて、単一末端の単糖を有効に認識可能な他のヒト抗体について述べる。高い単糖レベルの選択性は、完全なNeuGc残基を結合するように選択されるヒト又はその他のNeuGc抗体について記載されていなかった。固有の単糖選択性は更に、シアリン酸として複合される2の他のヒトの末端単糖残基を用いて、及び単一のエピマ配置の差異を用いて研究され、類似の選択的な抗体は産生しなかった。
【0121】
ファージディスプレイシステムが天然型ヒト抗体を生成することは理解されよう。これらは、動物抗体又はヒト化した動物抗体よりも、ヒトでの用途でより容易に認容可能にすべきであり、ヒトにおいて非天然な構造を含む。
【0122】
更に、本発明の抗体は多価高密度/クラスタ化されたNeuGcの複合体(上述の)を有効に認識し、好適な実施形態においては、ヒトIgMの認識を模倣する3ないし10価の形態といったクラスタ化された少価数形態で用いられるか、あるいは例えばドイツのOncoMAb(登録商標)社のVolmersらの、当該技術分野に既知の方法によってヒトIgM抗体として生成される。驚くべきことに、通常はFAb IgM抗体の親和性は非常に低いが、抗体は更に一価のFab型又は単鎖抗体として有効である。バックグラウンドにおける抗体のほとんどが、異なる特異性と通常は二価の構造のみを含む異なる型であることは注目すべきである。
【0123】
[核酸の分析]
本発明は更に、遺伝コードの総ての変異体を含む抗体配列に対応する核酸配列に関する。これらは当該技術分野の当業者に公知である。本発明は特に、抗体をコードするヒト天然型核酸配列に関する。本発明は更に、ヒト天然型核酸配列に対する相補的核酸配列に関する。本発明は更に、a)核酸配列の発現分析のための、b)核酸配列の発現を生じさせるための、核酸配列で結合及びハイブリダイズする類似する能力を有する核酸配列及び相補的核酸配列、ならびにその相同体の使用に関する。好適な核酸相同体の好適な群はペプチド核酸を含む。好適な核酸配列分析は核酸配列のクローニング及びシーケンシングと、ハイブリダイゼーション法による、及びRT−PCR法といったPCR法による分析を含む。
【0124】
本発明は特に、移植される物質が特異的な糖類及び/又はNeuGcを含むと考えるべき理由がある場合の、特異的な糖類及び/又はNeuGcに対しヒト免疫反応を分析する状況における、好ましくは移植に対する免疫反応の状況における、より好ましくは細胞移植又は異種移植の状況における核酸分析に関する。本発明は更に、食物中のNeuGcの量の栄養変化の状況における、ヒトでの本発明による核酸分析に関する。
【0125】
[細胞及び組織の分析]
特異的な糖類及び/又はヒトNeuGc結合型組換え型抗体、ならびにそのイムノアッセイでの有用性の開発及び性質決定は、以下の実施例に更に詳細に記載される。本発明は特に、細胞及び組織の分析に対する抗体の使用に関する。分析されるべき好適な細胞及び組織は、動物起源の細胞物質又はNeuGcを含む動物物質と接触状態にある物質を含む。本発明はこの抗体がブタ細胞又はタンパク質といった、動物細胞又は動物細胞/組織由来の物質での本発明の酸性グリカン及び/又はNeuGc構造の分析に有用かつ好適であることを明らかにした。
【0126】
[好適な抗体の特異性、配列、及び方法]
本発明は特に、末端非還元性の末端オリゴ糖配列である、
1)α3でシアリル化された1型のN−アセチルラクトサミン配列SAα3Galβ3GlcNAcであって、SAはNeu5Gc又はNeu5Acであり、前記配列は好ましくはNeu5Gcα3Galβ3GlcNAcであり、Neu5Gcでの1型のN−アセチルラクトサミンの認識が、特に異種抗原性(非ヒト)シアリン酸Neu5Gcを含みうる物質の認識の状況においては、抗体に対する非常に特有かつ有用な特性であると理解される、α3でシアリル化された1型のN−アセチルラクトサミン配列SAα3Galβ3GlcNAcと、
及び/又は、
2)SAがNeu5Gc又はNeu5Acであって、本発明が特に、シアリン酸がNeu5Gcである場合に、シアリルラクトサミンはN−グリカン構造に結合せず、強く又は実質的に排他的な認識となるエピトープに対する結合を明らかにし、抗体オリゴ糖結合に対しかなり特有の特徴があるが、その特異性が他の特異性よりももっとも好適な、α6でシアリル化された2型のN−アセチルラクトサミン配列SAα6Galβ4GlcNAcと、
及び/又は、
3)シアリル化された非還元性末端の末端Neu5Acα6GalNAc構造、好ましくはシアリルTn配列Neu5Acα6GalNAcαと、
及び/又は、末端非還元性の末端単糖残基である、
4)異種抗原性非還元性末端の単一末端であるNeuGcα−単糖残基と、
に結合するが、非還元性末端の単一末端であるNeuAcα−単糖残基に結合せず、好ましくは、
5)SAはNeu5Gc又はNeu5Acであり、nは0又は1である、SAα3Galβ4Glc(NAc)に従うオリゴ糖配列、
に結合しないヒトモノクローナル抗体に関する。
【0127】
オリゴ糖配列のいずれもヒト幹細胞又はその特異的なサブタイプの細胞培養条件依存型マーカとして特徴づけられたことは理解されよう。
【0128】
本発明は特に、好適なオリゴ糖結合特異性を組合わせる特異性を有する特有の抗体に関する。好適な実施形態においては、その特異性は少なくとも末端非還元性の末端オリゴ糖配列である、
1)α3でシアリル化された1型のN−アセチルラクトサミン配列SAα3Galβ3GlcNAcであって、SAはNeu5Gc又はNeu5Acであり、前記配列は好ましくはNeu5Gcα3Galβ3GlcNAcである、α3でシアリル化された1型のN−アセチルラクトサミン配列SAα3Galβ3GlcNAcと、
2)SAα6Gal(NAc)nであって、SAはシアリン酸、好ましくはNeu5Gc又はNeu5Acである、nは0又は1である、SAα6Gal(NAc)nと、
を含む。第2の群は類似するa6結合されるシアリン酸構造を表わし、それはα3のシアリン酸結合とともに特有の特異性である。
【0129】
オリゴ糖配列SAα6Gal(NAc)nに対する好適な結合は、
SAはNeu5Gc又はNeu5Acである、α6でシアリル化された2型のN−アセチルラクトサミン配列SAα6Galβ4GlcNAcと、
シアリル化された非還元性末端の末端Neu5Acα6GalNAc構造、好ましくはシアリルTn配列Neu5Acα6GalNAcαと、
を含む。
【0130】
その特異性は更に、ポリマ複合型シアリン酸残基と、実施例に示されるような、特にa3でシアリル化されたラクトースと2型のN−アセチルラクトサミンとを特に含む、非結合又は非常に低い結合活性のオリゴ糖配列とに対する特異性によって更に特徴づけられる。末端非還元性の末端単糖残基は更に、
1)異種抗原性非還元性末端の単一末端であるNeuGcα−単糖残基、
を含むが、前記抗体は還元性末端から高分子担体に連結される非還元性末端の単一末端であるNeuAcα−単糖残基に結合せず、抗体は好ましくは通常のシアリルラクトサミンのオリゴ糖配列である、
2)SAはNeu5Gc又はNeu5Acであり、nは0又は1である、SAα3Galβ4Glc(NAc)に従うオリゴ糖配列、
に結合しない。
【0131】
好適な実施形態においては、いくつかの主要な特異性の特徴が含まれ、好適な抗体はα3でシアリル化された1型のN−アセチルラクトサミン配列であるNeu5Gcα3α3Galβ3GlcNAc及びNeu5Acα3α3Galβ3GlcNAcの双方に結合し、抗体は末端非還元性の末端エピトープであるシアリルTn配列Neu5Acα6GalNAcαに結合し、抗体はNeu5Acα6Galβ4GlcNAcとNeu5Gcα6Galβ4GlcNAcとを含む、双方のα6でシアリル化された2型のN−アセチルラクトサミンに結合し、抗体はNeu5Gcα6Galβ4GlcNAcより高親和性を有する末端非還元性の末端エピトープNeu5Acα6Galβ4GlcNAcに結合し、及び/又は、Neu5Acα3α3Galβ3GlcNAcよりNeu5Gcα3Galβ3GlcNAcにより有効に結合し、及び/又は、Neu5Gcα6GalNAcαに結合しない。
【0132】
本発明は更にモノクローナル抗体に関し、抗体はα3でシアリル化された1型のN−アセチルラクトサミン配列SAα3Galβ3GlcNAcに結合し、SAはNeu5Gc又はNeu5Ac、より有効にはNeu5Gcα3Galβ3GlcNAcであることが好ましく、及び/又は、抗体はNeu5Gcα3Galβ3GlcNAc及びNeu5Acα3Galβ3GlcNAcの双方に結合する。
【0133】
本発明は更にモノクローナル抗体に関し、抗体は式SAα6Gal(NAc)nに従うα6でシアリル化された末端非還元性の末端エピトープに結合し、SAはシアリン酸、好ましくはNeu5Gc又はNeu5Acである。
【0134】
本発明は更にモノクローナル抗体に関し、抗体は末端非還元性の末端エピトープNeu5Acα6GalNAc、好ましくはシアリルTn配列Neu5Acα6GalNAcαに結合する。
【0135】
本発明は更にモノクローナル抗体に関し、抗体はNeu5Acα6Galβ4GlcNAcとNeu5Gcα6Galβ4GlcNAcとを含む双方のα6でシアリル化された2型のN−アセチルラクトサミンに結合する。
【0136】
本発明は更にモノクローナル抗体に関し、抗体はNeu5Gcα6Galβ4GlcNAcより高親和性を有する末端非還元性の末端エピトープNeu5Acα6Galβ4GlcNAcに結合する。その親和性は好適な実施形態においては、本発明に記載のようなELISAアッセイによって測定される。
【0137】
本発明は更にモノクローナル抗体に関し、抗体は末端異種抗原性の非還元性末端の単一末端であるNeuGcα−単糖残基に結合するが、非還元性末端の単一末端であるNeuAcα−単糖残基に結合しない。
【0138】
本発明は更にモノクローナル抗体に関し、抗体はSAα3Galβ4Glc(NAc)に従うオリゴ糖配列に結合せず、SAはNeu5Gc又はNeu5Acであり、nは0又は1である。
【0139】
[好適なポリペプチド配列]
本発明は抗体に関し、本発明による好適なポリペプチド配列を有する。抗体は更に好ましくは、本発明による1又はそれ以上の結合特異性の特徴を有する。本発明はオリゴ糖配列の認識用の新規の有用な抗体を明らかにした。抗体はヒト抗体であり、ヒト免疫系によって有効に認識されないため、治療及び診断に対して特別な有用性を有する。
【0140】
[抗体CDR配列]
CDR配列は抗体ファミリに対する特性であり、類似の抗体は、抗体の全CDR配列のフラグメントに基づいて認識できることは理解されよう。本発明は更に、少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、類似、又は最も好ましくは同一の抗体配列に関する。類似の配列は特に、本発明による抗体と同一又は類似の特異性を有する新しい抗体を検索するか、あるいは例えば、変異誘発法によって本発明による抗体を最適化し、及び本発明による好適なオリゴ糖配列に対して得られた抗体をスクリーニングする方法に好適である。
【0141】
本発明は更に、好適な共通配列の3ないし10価のフラグメントを含む短い特徴的なエピトープに関する。
【0142】
[好適な短配列]
抗体ポリペプチドの好適な重鎖配列は、CDR1配列の共通配列である、
GFTFR、GFTFS、GITFR、若しくはGITFS、又はFTFR、FTFS、ITFR、若しくはITFSであるCDR1、
又は、
は好ましくはI又はFであり、XはR又はSであり、XはK、又はS、又はRであるXTFXY、
を有し、及び/又は、
好適な短い共通配列がYADSVK若しくはYYAD、YYADS、YYADSV、YADS又はYADSVであるCDR2配列、
を有する1.4群の抗体の重鎖配列を含む。2のチロシンを有する配列は特に、特徴的なペプチドとして好適である。
【0143】
更に好適なCDR1フラグメントは、TFRK、TFRKY、TFRKYA、TFRKYAM、TFRKYAMN、TFSS、TFSSY、TFSSYA、TFSSYAM、TFSSYAMS、TFSR、TFSRY、TFSRYS、TFSRYSM、TFSRYSMN、FRKY、FRKYA、FRKYAM、FRKYAMN、FSSY、FSSYA、FSSYAM、FSSYAMS、FSRY、FSRYS、FSRYSM、FSRYSMN、RKYA、RKYAM、RKYAMN、SSYA、SSYAM、SSYAMS、SRYS、SRYSM、及びSRYSMNを含む。短いフラグメント又はエピトープは特に、新しい抗体を検索又は最適化する方法に好ましい。これらの方法については、トリペプチドが最も好適であり、テトラ、ペンタ及びヘキサペプチド、ならびにそれより大きなものという順番で好適さが低減する。好適なトリペプチドはTFS及びTFR、ならびにFRK、FSS、及びFSR、ならびにRKY、SSY、及びSRYを含む。
【0144】
本発明は更に抗体に関し、本発明による結合特異性の特徴を有し、共通配列である、
TFXYXMXであって、Xは好ましくはI又はFであり、XはR又はSであり、XはK、又はS、又はRであり、XはA又はSであり、XはN又はSであるCDR1、
ISXSXYYADSVKGであって、Xは好ましくはA又はSであり、XはN、G、又はSであり、XはG又はSであり、XはS又はGであり、XはD、S、又はYであり、XはT又はIであるCDR2、及び選択的に、
DXであって、Xは好ましくはR又はMであり、XはP、K、又はNであり、XはK又はなしであり、XはG又はなしであり、XはG、A、又はなしであり、XはG又はAであり、XはM又はFであり、XはV、又はP、又はIであるCDR3、
を有する1.4群の抗体の重鎖CDR1及びCDR2配列、あるいは1.2.20型の抗体の重鎖CDRである、
CDR1:GTVNSYYWS、
CDR2:RVYSSGTTNLNPS、
CDR3:DYGTDY、
を含む。
【0145】
本発明は更に抗体に関し、抗体は共通配列である、
TLRSG又はTLRSGINVGXRIYであって、Xは好ましくはA又はTであり、XはY又はSであるCDR1、
KSXSDKQQGSであって、Xは好ましくはN又はDであるCDR2、及び選択的に、
MIWHXAXWVであって、Xは好ましくはS又はNであり、XはG又はRであり、XはW又はVであるCDR3、
を有する1.4群の抗体の軽鎖CDR1及びCDR2配列、あるいは
CDR1:GGDNL、GGDN、GDNL、又はGGDNLGGKSVH、
CDR2:DDRDRPS、
CDR3:QVWDSGSESVV、
の配列を有する1.2.20型の抗体を含む。
【0146】
好適な短い特徴的なエピトープは好適な共通配列、好ましくは、TLRS、TLRSG、TLRSGI、TLRSGIN、TLRSGINV、TLRSGINVG、LRS、LRSG、LRSGI、LRSGIN、LRSGINV、LRSGINVG、RSG、RSGI、RSGIN、RSGINV、RSGINVG、SGI、SGIN、SGINV、SGINVG、GIN、GINV、GINVG、INV、INVG、及びNVGを含む軽鎖CDR1の3ないし10価のペプチドフラグメントを含む。
【0147】
好適な抗体は1.4型の軽鎖CDR配列のうちの少なくとも1つを含み、好ましくはCDR1及びCDR2という少なくとも2つであることが好ましく、総ての配列CDR1ないし3を含むことが最も好ましい。
【0148】
新規の抗体は、軽鎖及び重鎖の配列、あるいは本発明による抗体の相同配列を組合わせることによって生成でき、好適な実施形態においては、抗体は1.4.11、1.4.24、1.4.30、又は1.2.20型の配列の群から選択される軽鎖CDR1ないしCDR3配列と、1.4.11、1.4.24、1.4.30、又は1.2.20型の配列の群から選択される重鎖CDR1ないしCDR3配列とを含むことは更に理解されよう。1.4群の抗体のより好適な配列は、例えば1.4.19−3型(F3)抗体として組合わされる。CDR1、CDR2、又はCDR3のうちのいずれかが異なる元の配列から得られうることは理解されよう。
【0149】
好適な抗体は1.4.24型抗体の軽鎖及び重鎖のCDR1ないしCDR3配列を、好適な実施形態においては1.4群の軽鎖配列を、好適な実施形態においては1.4.24型軽鎖配列を含む。1.4.24及び1.4.19(−3)型、より好ましくは1.4.24型の抗体はオリゴ糖配列に対する高親和性について好適である。このことは実施例でELISAアッセイによって示され、本発明は特に抗体特異性に関し、特異性は多価のオリゴ糖複合体、好ましくはポリアクリルアミド複合体を用いてELISAアッセイで比較される。
【0150】
[分析方法]
本発明は疾患関連型又は細胞結合型の抗体、好ましくはヒト抗体の分析方法に関し、本方法は、本発明によるシアリル化されたオリゴ糖及び単糖の配列に対する抗体の特異性を測定するステップと、好ましくは実施例に示したオリゴ糖配列を用いるステップと、好適な結合特異性で含まれる3のオリゴ糖配列、好ましくは好適なa3及びa6結合のシアリルオリゴ糖配列に対する特異性を好ましくは測定するステップを含む。好ましくは、抗体が本発明による配列若しくは配列フラグメント、又は相同配列、又は少なくとも1の類似又は相同のCDR1ないし3配列を有する場合に、特異性が測定される。
【0151】
本発明は更に、糖質エピトープ結合抗体を検出する方法を含む、抗体を検索し、あるいは特徴づけし、あるいは最適化する方法に関し、本方法は、
a)本発明に記載のように実質的に類似又は同一のCDR1又はCDR2配列、あるいは配列フラグメント、あるいは相同体を有する抗体配列を、利用可能な配列データから検索するステップと、
b)ステップa)で検索された抗体を、本発明による好適な糖類結合特異性で記載のような糖類配列を含むシアリル糖類のライブラリと接触させるステップと、
c)前記抗体が前記糖類配列のいずれかと結合するか、あるいは、好適な実施形態においては、本発明による抗体と同一の結合特異性を有するかどうかを検出するステップと、
を含む。本発明は特に、好ましくは本発明によるELISAアッセイで、同一のオリゴ糖配列に結合するステップを含む、実質的に同一又は質的に同様の特異性を有する抗体の選択に関する。
【0152】
配列データは配列データベースから、あるいは当該技術分野で既知の抗体のシーケンシングにより入手可能である。
【0153】
[培養細胞又は外因性物質と接触状態にある細胞の分析]
[好適な細胞型及び分析方法]
本発明は特に、ヒト細胞の状態を分析し、外因性物質及び/細胞培養条件の、細胞に対する効果の分析のために、本発明による結合試薬、好ましくはモノクローナル抗体に細胞を接触させるステップを含むヒト幹細胞集団の状態を分析する方法に関する。
【0154】
この分析方法は、特に無傷細胞集団上のグリカン構造の細胞表面の発現に関する。細胞表面構造を分析することは有用であり、生体内での免疫応答及び/又は細胞、好ましくは幹細胞の細胞生物学に最も関連性があることは理解されよう。
【0155】
抗体によるヒト細胞、好ましくはヒト幹細胞のラベリングは、非ヒト外因性物質の存在下で細胞培養条件と関連し、及び/又はラベリングの欠如は、ヒト等価物質の存在下で細胞培養条件と関連する。外因性又は異種抗原性物質とも称される非ヒト物質は、細胞培養中に用いることができ、これらによる細胞の変化又は混入は、例えば細胞の免疫学的な適合性及び/又は細胞生物学的な標的特性の変化により、ヒト生体内での用途に対する細胞の適合性に影響を与えることは理解されよう。
【0156】
非ヒト外因性物質は好ましくは、前記非ヒト外因性物質中に非ヒト又は動物型のグリカン構造を含み、好適な非ヒト外因性物質は、動物血清タンパク質又は動物細胞タンパク質といった細胞培養で用いられる非ヒト動物タンパク質/ペプチド、好ましくはFCS(ウシ胎仔血清)又は動物細胞製剤(例えば、ブタ細胞製剤)といった、動物血清又はそのフラクトンのような動物血清タンパク質、又は非ヒトグリカン構造を生成する細胞培養から得られる組換え生成されたタンパク質である。ヒト等価物質はラベリングの欠如と関連し、好適な実施形態においては、ヒト血清タンパク質及び/又はヒトのグリコシレーションを含むように生成される組換型ヒトタンパク質といった、ヒト血清又は細胞/血液細胞由来のタンパク質のような、前記ヒト等価物質中のヒト型グリカン構造の存在(及び、好ましくは動物型グリカンの不存在)を意味する。
【0157】
本発明は分析方法に関し、無傷細胞の主要な下位個体群がラベリングされ、より好ましくは少なくとも15%、更により好ましくは少なくとも20%、更により好ましくは少なくとも25%、更により好ましくは少なくとも35%、更により好ましくは少なくとも45%、更により好ましくは少なくとも55%、更により好ましくは少なくとも65%、及び最も好ましくは少なくとも75%又は80m%の細胞がラベリングされる。
【0158】
本発明は、予想外に大部分の、本発明によるヒト細胞、好ましくはヒト幹細胞、最も好ましくはヒト間葉系幹細胞が新規の試薬によってラベリングされることを明らかにした。好適な幹細胞はヒト血液由来の間葉系幹細胞、より好ましくは臍帯血又は骨髄由来の間葉系幹細胞である。
【0159】
本発明は特に、本発明による分析方法に関し、本発明による新規の抗体が用いられる。
【0160】
分析すべき最も好適な細胞は、
i) 培養細胞と、
及び/又は、
ii) 血清のような外因性糖質物質、及び/又は、外因性の糖タンパク質及び/又は糖脂質と接触状態にあった細胞と、
及び/又は、
iii)本発明による抗体によって認識される特異的なオリゴ糖のうちの1又はそれ以上の発現を誘発する条件において成長させた細胞と、
を含む。
【0161】
発明者は既に、動物由来の低純度アルブミン製剤といった外因性糖質物質、又は磁力ソーティングシステムにおけるFc遮断薬といった細胞選別試薬の極めて短い曝露に基づいて、細胞のグリコシレーションの変化を明らかにすることに関与してきた。細胞培養条件は細胞表面上の特定のオリゴ糖配列の生合成用の前駆体物質(例えば、Neu5Gcといったシアリン酸、又は糖脂質)を提供することによって、及び/又は、細胞中のグリカン生合成の制御に影響を与えることによって、新規のグリカンの発現を誘発できることは更に知られる。
[無傷細胞]
【0162】
本発明は、抗体がFACS分析といったフローサイトメトリ及び/又は免疫組織化学によって観察可能な無傷細胞上で糖類配列を認識できることを明らかにした。本発明は特に、より特異的には抗体接触可能物質として、1又はそれ以上の糖類配列、より好ましくは無傷細胞上のオリゴ糖配列の分析に関連する。
【0163】
[細胞培養]
図9はFACS(蛍光活性化細胞選別)における1.4.24型抗体による、ヒト臍帯血間葉系幹細胞、ヒトCB−MSC細胞のラベリングを示す。細胞は外因性非ヒト物質の存在下で培養されており、非ヒト物質が「異物のない物質(xeno−free material)」又はより特異的にはヒト由来の物質によって置き換えられる場合にはラベリングは観察されなかった。データは抗体によってラベリングされた主要な無傷細胞集団を示し、ラベリングは細胞培養条件に依存する。
【0164】
ノイラミニダーゼ(シアリダーゼ)処理は、細胞に対するシアリン酸依存型結合を確認するのに用いられた。実施例は更に、外因性(非ヒト)物質と接触状態にある場合のヒト幹細胞の有効なラベリングと、動物細胞の有効なラベリングとを示す。
【0165】
好適な実施形態においては、本発明は外因性物質、より好ましくはこの抗体によって認識されるオリゴ糖配列のうちの1又はそれ以上の存在を含むか、あるいは誘発する物質による混入についての培養細胞の分析に関する。
【0166】
好適な実施形態においては、抗体は、好ましくは物質が本発明によるオリゴ糖配列のうちの1又はそれ以上を含む場合の、ブタ又はウシ由来の物質といった非ヒト動物物質の存在下で培養される細胞の分析に用いられる。
【0167】
分析すべき最も好適な細胞は培養細胞を含み、好適な細胞型は、特にNeuGc含有型の生物学的物質と接触状態にあった場合に、NeuGc(Neu5Gc)を取り込むと知られる細胞を含む。総ての細胞がNeuGcによって有効に混入されるわけではないことは更に知られる。発明者は同時係属中の出願において、特異的にシアリル化されたグリカン構造は、造血、間葉又は胚性幹細胞に取り込まれることを明らかにした。本発明は好適な実施形態においては特に、この抗体によって認識される特異的なオリゴ糖配列の状況におけるNeuGcを含む細胞の評価に関する。
【0168】
分析すべき好適な細胞型は、特にNeuGc含有型及び好適なシアリルオリゴ糖配列含有型、又は特異的なオリゴ糖配列の存在を誘発する物質と接触状態にあった場合に、ヒト細胞、より好ましくはヒト幹細胞、更により好ましくはヒト造血細胞、骨髄由来細胞、臍帯血細胞、間葉系幹細胞、及び胚性幹細胞、又は他の幹細胞等、ならびにこれらの細胞型のための同様かつ可能な支持細胞を含む。
【0169】
この抗体は様々な混入又は好適な細胞型上の混入誘発型オリゴ糖配列を認識するのに用いられうることは理解されよう。
【0170】
発明者は特に、多能性細胞からの有効なNeuGcの混入及び/又はNeu5Gc/シアリン酸含有型のオリゴ糖の混入の新しい可能性を発見し、好ましくはこれらは多能性細胞であり、胚性起源ではなく、より好ましくは細胞型は、造血細胞、骨髄由来細胞、臍帯血細胞、及び間葉系幹細胞を含み、それは優良な治療可能性の総てであり、それは胚性幹細胞を有するような奇形発癌型のリスクをほとんど有しない。総ての細胞がNeuGc又はシアリン酸のオリゴ糖含有型の複合糖質によって有効に混入されるわけではないことは更に周知である。
【0171】
[非特許文献]
・Bovin,N.V.(1998)Glycoconjugate J.15,431−446
・Furukawa,K.,Yamguchi,H.,Oettgen H.F.,Old L.J.,and Lloyd K.O.(1988)J.Biol.Chem.263,18507−12.
・Heiskanen,A.,Tero Satomaa,T.,Tiitinen,S.,Laitinen,A.,Mannelin,S.,Mikkola,M.,Olsson,C.,Miller−Podraza,H.,Blomqvist,M.,Olonen,A.,Lehenkari,P.,Tuuri,T.,Otonkoski,T.,Natunen,J.,Saarinen,J.&Laine,J.(2006)投稿中
・Kabat,E.A.,Wu,T.T.,Reid−Miller,M.,Perry,H.M.,and Gottesman,K.S.(1991)Sequences of proteins and immunological interest,4th Ed.,U.S.Dept.of Health and Human Services,Bethesda,MD.
・Moreno E.et al,Glycobiology(1998)8(7)695−705
【実施例】
【0172】
[ファージディスプレイ選択による組換え型のNeuGc特異性のscFvのフラグメント]
本実施例においては、ヒトIgMのscFvライブラリはNeuGc−単糖に対して親和性及び特異性を有するscFvのフラグメントを単離するように異種抗原性のNeuGcによって構成及び選択された。ヒトIgMのscFvファージライブラリの構成は、IgMのFab−κ及びFab−λライブラリを最初に構成することによって間接的に調製され、次いで特定のライブラリDNAが重鎖及び軽鎖の可変ドメインのPCR増幅に用いられた。
【0173】
[未処理のヒトIgMのscFvライブラリの構成]
50の健常供血者からのヘパリン化された血液サンプル(10ml)が貯蔵され、リンパ球はFicoll−Plaque(Pharmacia社)単離プロトコルを用いて製造者の指示に従い単離された。RNA全体はPromega社のRNAgents Total RNA Isolation kitを用いて製造者のプロトコルに従い、ヒトリンパ球貯蔵源から単離された。第一鎖のcDNA合成はPromega社のReverse Transcription system kitを用いて行われた。ヒトIgMのVH及びVL領域をコード化するcDNAは表3のPCRプライマを用いて、VentPol(Biolabs社)で増幅された。抗体フラグメントの最終的なPCR生成物は貯蔵され、好適な制限酵素で消化された。消化されたDNAフラグメントはVH領域ならびにVκ及びVλ領域をコード化し、ファージミドベクタに連結され、大腸菌のXL−1 Blue細胞に形質変換され、約10の別個のクローンのscFv−κ及びscFv−λライブラリを得た。
【0174】
ビオチン化されたパニング型(Ag+)及び欠乏型(Ag−)の双方の抗原は、ストレプトアビジン複合型磁気ビーズ(Dynal社)上へ製造者のプロトコルに従い結合された。Ag+は多価のNeu5Gcα−ポリアクリルアミド−ビオチンであり、Ag−は多価のNeu5Acα−ポリアクリルアミド−ビオチンであり、双方はロシアのSyntesome社/Lectinity社から入手された。複合体はビオチン分岐鎖を含む分岐型のポリアクリルアミド複合体に連結される3炭素数のアルキルスペーサを有する。
【0175】
[ヒトscFvライブラリの選択]
ヒトscFv−κ及びscFv−λライブラリはファージディスプレイ技術によって選択された(McCaffertyら、1990、Barbasら、1991)。NeuGc特異性のフラグメントの単離のために、未処理のヒトIgMのscFv−κ及びscFv−λライブラリは、多価のフォーマットでバクテリオファージの表面に呈示され、ライブラリは親和性のパニング手順を用いて貯蔵及びパニングされた。ビオチン化されたポリアクリルアミド複合型シアリン酸誘導体は、ストレプトアビジン複合型磁気ビーズ(Dynal社)に製造者のプロトコルに従って結合された。NeuAc複合体(Ag−)は欠乏型のために用いられ、NeuGc複合体(Ag+)はライブラリのパニング用に用いられた。
【0176】
最初に、ファージプールは、+4℃で16時間のスクリーニングステップで、バックグラウンドのコントロールとしても用いられる欠乏型のAg(Ag−)と結合する磁気ビーズと反応するのを可能にした。その後、ファージプールは取り除かれ、パニング型抗体(Ag+)又は欠乏型抗体(Ag−、バックグラウンド)のいずれかを含むビーズ上へ移植された。室温(RT)で2時間のインキュベーション後、ビーズは0.05%のTween20を含むPBS(10mMのリン酸ナトリウム、pH7.2、140mMのNaCl)で2回洗浄し、結合ファージは酸性バッファ(100mMのグリシン−HCl、pH2.2)で溶出され、直ぐに2MのTris溶液で中和された。次のパニングラウンドのために、溶出したファージプールは大腸菌のXL−1 Blue細胞を感染させることによって増幅された。抗体フラグメントのファージ上への多価の呈示のために、ハイパーファージ(hyperphage:Progen社)が総てのパニングラウンドで用いられた。4回のパニングが行われた。
【0177】
第2、第3及び第4のパニングラウンドでの可溶な一価のscFv−pIIIの融合物は大腸菌のXL−1 Blue細胞中に発現した。148の別個のクローンは予備的な性質決定のため1ml規模で成長させた。上清はAg+でコーティングされるウェルをグリカン特異性の結合剤を捕捉するように、及びAg−でコーティングされるウェルを非特異性の結合剤を認識するように用いて、ELISA上で分析された。12の最も有望なクローンが配列され、結果として6の異なるDNA配列が発見された。そのうちの5つが細胞結合アッセイでの更なる性質決定のために選択された。
【0178】
[特異的な糖類及び/又はNeuGc結合型抗体の性質決定]
5のモノクローナルの多価ファージの細胞結合は、NeuGc陽性のブタ腎尿細管細胞(LLC−PL1)の蛍光免疫染色によって研究された。細胞は2ないし4日間、95%の空気及び5%のCOの湿気のある環境下で、37℃で5%のウシ胎仔血清(FBS)と、100ユニット/mlのペニシリンと、100μg/mlのストレプトマイシンとを用いて補充されるM199細胞培養培地中で、コーティングされたガラスの8のチャンバスライド(Lab−TekII社、Nalge Nunc社、デンマーク)上に成長させた。細胞はPBSで5回すすがれ、RTで10ないし15分間、PBS中で4%のパラホルムアルデヒドで固定され、その後PBSで5分間、3回洗浄した。非特異性の結合部位はRTで30分間、PBS中で3%のHSA(ヒト血清アルブミン、FRC Blood Service社、フィンランド)で遮断された。
【0179】
ファージ抗体は1%のHSA−PBSで10pfu/mlまで希釈し、RTで60分間インキュベートし、その後PBSで10分間3回洗浄した。第2のマウス抗ファージ抗体(αM13、1:500、Amersham社)及び第3のFITCでラベリングされたヤギ抗マウス抗体(1:300、Sigma社)は、RTで60分間インキュベートされ、PBSで5ないし10分、3回洗浄され、DAPI染色を含むVectashield封入剤(Vector Laboratories社、英国)に封入された。非特異性のハイパーファージは負のコントロールとして用いられた。結合の特異性はファージ抗体でのインキュベーション前に、シアリダーゼ処理により細胞表面からシアリン酸を除去することによって試験された。細胞のシアリダーゼ処理後に細胞表面に特異的に結合するが、その結合活性を失う4のクローンが同定された(表1)。
【0180】
[グリカン結合特異性を有するヒトFabフラグメントのクローニング]
4のヒトIgMのscFvクローンは、IgG1サブタイプを用いたヒトFabフラグメントへの変換のために選択された(Holligerら、1993、Desplancqら、1994)。Fd領域及び軽鎖は表4のプライマを用いてPCRをオーバラップすることによって増幅させた。Fd領域及び軽鎖の得られたcDNAは細菌性発現ベクタである、pKKtacにクローンされ、次いで大腸菌RV308に形質変換された。1.2.20、1.4.11、1.4.24、及び1.4.30型として指定された可溶なFabフラグメントが生成された。
【0181】
抗体Fabフラグメントは、シアリル化された細胞及びNeuGc含有型細胞の免疫染色で試験された。シアリン酸に依存し、シアリダーゼ酵素により放出可能な陽性の染色は、抗体が動物細胞物質で特徴づけられる場合に観察された。表1参照。細胞はフルオレセインとDAPIフィルタとを有するZeiss Axioskop2及び蛍光顕微鏡(Carl Zeiss Vision社、ドイツ)で観察された。画像は400倍の拡大率を有するZeiss AxioCam MRcカメラ及びAxioVision Software3.1/4.0(Carl Zeiss社)で取り込まれた。染色の強度は−(陰性)又は+/++/+++(陽性)として類別された。
【0182】
抗体は更に、ウェスタンブロットアッセイで試験された。このアッセイは糖タンパク質に結合することを示した。
【0183】
[抗体配列の比較]
本発明による抗体配列は、標準的な方法によって他の入手可能な抗体配列と比較される。例えば、相同配列はBLASTプログラムによって検索され、例えばEntrezのネットページから入手可能である。表5は特異的な配列とともに、BLASTによるほぼ相同の短い配列を検索することによって見つけられうる配列の不作為な実施例を示す。
【0184】
配列の一部は数多くの抗体配列と相同又は同一であり、その配列の一部、特にCDR3配列は非常に固有であるように見える。本発明は、
1)N残基がその他の抗体中に見つからなかった、1.4.30型の軽鎖CDR2中のX−アミノ酸残基、
2)G残基がその他の抗体中に見つからなかった、1.4.30及び1.4.11型、及び希少なX1残基のNに更に隣接するRがある1.4.24型の軽鎖CDR3中のX−アミノ酸残基、
3)1.2.20型の重鎖CDR2であるRVYSSGTTNLNPSLKS上の希少なL残基、
といった希少又は特有の単一のアミノ酸残基の置換変異を明らかにした。
【0185】
CDR3配列は他の希少な特性を有する。重鎖CDR3は比較的短く、1.2.20及び1.4.24型は6のアミノ酸残基を有し、1.4.30型は7のアミノ酸残基を有し、9の残基を有する1.4.11型であっても比較的短い。重鎖CDR3は更に希少な配列を有すると思われ、例えば1.2.20型の重鎖CDR3はいずれの免疫グロブリンにも見られなかった。本発明は、保存され、かつ対応するより多くのCDR1及び2配列、ならびに共通配列を伴う固有で特有の特徴及びその組合せに関する。
【0186】
[1.4.24及び1.4.30型の抗体の特異性]
[実験手順]
[イムノアッセイによって決定された1.4.24及び1.4.30型の抗体の特異性]
ポリアクリルアミド(PAA)−ビオチン複合型の多価の単糖又はグリカン(Lectinity社、ロシア、表6参照)は、4℃、o/nでTBSバッファ(20mMのTris−HCl、pH7.5、150mMのNaCl)で100ng/ウェルのストレプトアビジンのマイクロタイタープレート(Perkin Elmer社、フィンランド)上で固定化された。ウェルはTBSで4回洗浄され、非特異性結合部位は室温(RT)で60分間、1%の超高純度のBSA−TBS(Sigma社、A7638)で遮断された。1.4.24及び1.4.30型の抗体は0.1%の超高純度のBSA−TBSで3μg/mlに希釈され、RTで2時間インキュベートされた。更に、ウェルはTBSで4回洗浄され、第2の抗体である、ユーロピウムでラベリングされたヤギ抗ヒトλファージ(Southern Biotechnology)は0.1%の超高純度のBSA−TBSで1μg/mlに希釈され、RT、暗所で60分間インキュベートされた。ウェルは前述のように洗浄され、200μlのDELFIA Enhancement溶液(Perkin Elmer社、フィンランド)はウェルごとに添加され、その後プレートはRTで5分間震とうされた。ユーロピウムシグナルはVictorプレートリーダ(Perkin Elmer、フィンランド)で検出された。
【0187】
[結果及び考察]
[抗体の特異性]
1.4.24及び1.4.30型の双方の抗体は、天然に発生するNeuAc−単糖(GF308、図8)よりもNeuGc−単糖(GF309)に対する特異性が高い。しかしながら、双方の抗体がグルクロン酸α/β(それぞれ、GF341及びGF271)といった酸性単糖と交差反応する。更に抗NeuGc抗体は、NeuGc又はNeuAcのいずれかの単糖を保有する二単糖及び三単糖の可変性の認識を示す。シアリン酸(SA)がN−アセチルガラクトサミン(GalNAc)又はガラクトース(Gal)のいずれかとα2ないし6結合で連結される場合、NeuAcはNeuGc(GF345ないしGF348)の少なくとも4倍良く認識される。SAが1型のLacNAcにα2又は3結合される場合、NeuGc/Acの双方が抗体によって認識さて、NeuGcはわずかにNeuAcより良い(それぞれ、GF462及びGF461)。総ての他の抗体は、SAがα2又は3結合で連結される場合(GF459、GF460、GF463ないしGF468)、抗NeuGc抗体によってまったく認識されない。
【0188】
[ヒト幹細胞を用いたFabフラグメントの試験]
抗体Fabフラグメントは、記載のように(Leskelaら、2003)、生成されたシアリルグリカン混入型/修飾型のヒト骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)の免疫染色で試験された。動物物質(ウシ胎仔血清、FCS)での細胞培養条件によって、細胞がNeu5Gc及び特有のオリゴ糖で陽性になる。簡潔に言えば、整形外科手術中に得られる骨髄は、20mMのHEPES、10%のFCS、ペニシリン−ストレプトマイシン、及び2mMのL−グルタミンを追加したMinimum Essential alpha−Medium(α−MEM:Gibco社)中で培養された。2日間付着を許容した後に、細胞はPBSで洗浄され、同一培地中で2000ないし3000細胞数/cmの密度で継代培養された。免疫染色実験のために、MSCはコーティングされたガラスの8のチャンバスライド上で培養され、LLC−PK1細胞に対し上述したように、パラホルムアルデヒドで固定した。抗体Fabフラグメントは1%のHSA−PBS中で希釈され、RTで60分間インキュベートされ、その後PBSで10分間、3回洗浄した。FITCでラベリングされたヤギ抗ヒトλ抗体(1:1000、Southern Biotechnology社)はRTで60分間インキュベートされ、開始前にPBSで5ないし10分間、3回洗浄した。細胞はフルオレセインとDAPIフィルタとを有するZeiss Axioskop2及び蛍光顕微鏡(Carl Zeiss Vision社、ドイツ)で観察された。画像は400倍の拡大率を有するZeiss AxioCam MRcカメラ及びAxioVision Software3.1/4.0(Carl Zeiss社)で取り込まれた。染色の強度は−(陰性)又は+/++/+++(陽性)として類別された。結果は表7に示される。1.4.24及び1.4.30型の抗体は見つけられる場合、幹細胞を認識するのに特に有用である。
【0189】
[間葉系幹細胞の細胞培養条件に影響を与えるシアリン酸の分析]
[臍帯血間葉系幹細胞の生成]
ヒト条件の臍部の臍帯血ユニットは、母親にインフォームドコンセントを伝えた後に収集され、臍帯血は収集24時間以内に処理された。単核細胞(MNC)はFicoll−Paque Plus(GE Healthcare Biosciences社)の密度勾配遠心分離によって各ユニットから単離された。単核細胞の分画は、10細胞数/ウェルでフィブロネクチン(Sigma Aldrich社)でコーティングされた6ウェルプレート(Nunc社)上に平板培養された。非接着細胞のほとんどは培地が翌日に交換される際に除去された。細胞はBM MSCについて上述したように基本的に培養された。分析で用いられるCB MSCは継代数5ないし7であった。
【0190】
BM及びCBの双方のMSCはCD14、CD34、CD45、及びHLA−DRに対して陰性、ならびにCD13、CD29、CD44、CD90、CD105、及びHLA−ABCに対し陽性になるようにフローサイトメトリによって分析された。細胞は骨原生、脂肪生成及び軟骨形成系列に沿って分化できることが示された。
【0191】
細胞はウシ胎仔血清の存在下で培養された。FCSの存在下で培養される細胞は1.4.24型Fabフラグメントによって観察可能なシアリル−オリゴ糖エピトープを蓄積した。これらの一部は、結合がシアリン酸依存性であることを示すノイラミニダーゼ処理によって除去できた(最適化されない)。細胞が非動物性/特有のシアリン酸グリカン含有物質(特に、ヒト血清)の存在下で成長する場合、抗体は細胞を有効にラベリングしない。本発明は、動物性のシアリル物質の存在下での培養と関連づけられ、ヒト血清といった異物のないヒト物質での培養と関連づけられない場合の、幹細胞のラベリングと特異的なシアリン酸エピトープの呈示とに関する。
【0192】
[抗体変異体の例]
ファージディスプレイライブラリのスクリーニングは、F3とも称される1.4.19(−3)型である更なる抗体配列を明らかにした。抗体の配列は1.4.24型の重鎖及び1.4.19型の軽鎖である、図11a及び11bを含む。抗体の特異性及び活性は、重鎖が抗体特異性を決定するキー因子であることを示す1.24.4型と類似する。図10。データは更に、軽鎖が少なくとも(at elats)部分互換性であることを示す。好適な実施形態においては、本発明は4の他の抗体のいずれかを有する、1.4.24型の抗体の重鎖配列、好ましくは1.4群の配列、最も好ましくは1.4.24又は1.4.30(F3)型の軽鎖、あるいは、4の他の抗体のいずれかを有する、1.4.30型の抗体の重鎖配列、好ましくは1.4群の配列、最も好ましくは1.4.24又は1.4.30型の軽鎖を含む抗体に関する。
【0193】
表1は、選択されたNeuGc結合型抗体ファージのクローンのブタ腎尿細管細胞(LLC−PK1)への結合である。結合は免疫染色によって評価され、特異性は細胞のシアリダーゼ処理によって評価された。
【0194】
【表1】

【0195】
表2は類似のタンパク質配列、特に1.4.30型と類似性を有し、特異的な糖脂質又は他の糖質を結合することが示される可能性のある、特定のバックグラウンドの抗体である。
【0196】
【表2】

【0197】
表3はPCRプライマライブラリである。
【0198】
【表3】

【0199】
表4は、Fabフラグメントの増幅用のプライマである。
【0200】
【表4】

【0201】
表5は、抗体配列の類似性の検索及び比較である。
【0202】
【表5】

【0203】
表6は1.4.24及び1.4.30型の抗体の特異性の決定に用いられる、グリカンポリアクリルアミド(PAA)−ビオチン複合体及びそのコードである。
【0204】
【表6】

【0205】
表7は選択されたシアリル−オリゴ糖特異性の抗体Fabフラグメントのヒト間葉系幹細胞(MSC)への結合である。結合は免疫染色によって評価された。
【0206】
【表7】

【0207】
[非特許文献]
・Barbas III,C.F.,Kang,A.S.,Lerner,R.A., and Benkovic,S.J.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.88,7978−7982.
・Desplancq,D.,King,D.J.,Lawson,A.D.G.,and Mountain,A.(1994)Protein Eng.7,1027−1033.
・Holliger,P.,Prospero,T.,and Winter,G.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90,6444−6448.
・Kabat,E.A.,Wu,T.T.,Reid−Miller,M.,Perry,H.M.,and Gottesman,K.S.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,4th Ed.,U.S.Dept.of Health and Human Services,Bethesda,MD.
・McCafferty,J.,Griffiths,A.D.,Winter,G.,and Chiswell,F.J.(1990)Nature 348,552−554.


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト幹細胞集団の状態を分析するための方法であって、末端非還元性の末端オリゴ糖配列である、
1)α3でシアリル化された1型のN−アセチルラクトサミン配列SAα3Galβ3GlcNAcであって、SAがNeu5Gc又はNeu5Acであり、前記配列が好ましくはNeu5Gcα3Galβ3GlcNAcである、α3でシアリル化された1型のN−アセチルラクトサミン配列SAα3Galβ3GlcNAcと、
2)SAがシアリン酸、好ましくはNeu5Gc又はNeu5Acであり、nが0又は1である、SAα6Gal(NAc)nと、
に結合する結合試薬と細胞を接触させるステップを含み、好ましくは前記細胞に対する外因性物質及び/細胞培養条件の効果の分析のための方法であり、前記結合試薬がモノクローナル抗体であることを特徴とする方法。
【請求項2】
ヒトモノクローナル抗体であって、末端非還元性の末端オリゴ糖配列である、
1)α3でシアリル化された1型のN−アセチルラクトサミン配列SAα3Galβ3GlcNAcであって、SAがNeu5Gc又はNeu5Acであり、前記配列が好ましくはNeu5Gcα3Galβ3GlcNAcである、α3でシアリル化された1型のN−アセチルラクトサミン配列SAα3Galβ3GlcNAcと、
2)SAがシアリン酸、好ましくはNeu5Gc又はNeu5Acであり、nが0又は1である、SAα6Gal(NAc)nと、
に結合することを特徴とするヒトモノクローナル抗体。
【請求項3】
請求項2に記載のヒトモノクローナル抗体において、SAα6Gal(NAc)nが、SAがNeu5Gc又はNeu5Acである、α6でシアリル化された2型のN−アセチルラクトサミン配列SAα6Galβ4GlcNAcと、シアリル化された非還元性末端の末端Neu5Acα6GalNAc構造、好ましくはシアリルTn配列Neu5Acα6GalNAcαとを含むことを特徴とするヒトモノクローナル抗体。
【請求項4】
請求項2に記載のヒトモノクローナル抗体において、末端非還元性の末端単糖残基が、
1)異種抗原性非還元性末端の単一末端であるNeuGcα−単糖残基、
を更に含み、前記抗体が還元性末端から高分子担体に連結される非還元性末端の単一末端であるNeuAcα−単糖残基に結合せず、かつ、
2)SAがNeu5Gc又はNeu5Acであり、nが0又は1である、SAα3Galβ4Glc(NAc)に従うオリゴ糖配列、
に結合しないことを特徴とするヒトモノクローナル抗体。
【請求項5】
請求項2又は4に記載のモノクローナル抗体において、当該抗体がα3でシアリル化された1型のN−アセチルラクトサミン配列であるNeu5Gcα3α3Galβ3GlcNAc及びNeu5Acα3α3Galβ3GlcNAcの双方に結合し、前記抗体が末端非還元性の末端エピトープであるシアリルTn配列Neu5Acα6GalNAcαに結合し、前記抗体がNeu5Acα6Galβ4GlcNAcとNeu5Gcα6Galβ4GlcNAcとを含む、α6でシアリル化された2型のN−アセチルラクトサミンの双方に結合し、前記抗体がNeu5Gcα6Galβ4GlcNAcより高親和性を有する末端非還元性の末端エピトープNeu5Acα6Galβ4GlcNAcに結合し、及び/又は、Neu5Acα3α3Galβ3GlcNAcよりNeu5Gcα3Galβ3GlcNAcにより有効に結合し、及び/又は、Neu5Gcα6GalNAcαに結合しないことを特徴とするモノクローナル抗体。
【請求項6】
請求項2又は5に記載のモノクローナル抗体において、当該抗体が請求項2ないし4のいずれかに記載の結合特異性の特徴を有し、CDR1配列の共通配列である、
GFTFR、GFTFS、GITFR、若しくはGITFSであるCDR1、
又は、
TFXY、
であって、Xが好ましくはI又はFであり、XがR又はSであり、XがK、又はS、又はRであるCDR1、
を有する、あるいはCDR2配列の共通配列であるYADSVKを有する1.4群の抗体の重鎖配列を含むことを特徴とするモノクローナル抗体。
【請求項7】
請求項2に記載のモノクローナル抗体において、当該抗体が共通配列である、
TLRSG、又はTLRSGINVGXRIYであって、Xが好ましくはA又はTであり、XがY又はSであるCDR1、
KSXSDKQQGSであって、Xが好ましくはN又はDであるCDR2、及び選択的に、
MIWHXAXWVであって、Xが好ましくはS又はNであり、XがG又はRであり、XがW又はVであるCDR3、
を有する1.4群の抗体、あるいは、
CDR1:GGDNL又はGGDNLGGKSVH、
CDR2:DDRDRPS、
CDR3:QVWDSGSESVV、
の配列を有する1.2.20型の抗体の軽鎖CDR1及びCDR2配列を含むことを特徴とするモノクローナル抗体。
【請求項8】
請求項5に記載のモノクローナル抗体において、当該抗体が1.4型の軽鎖CDR配列を含むことを特徴とするモノクローナル抗体。
【請求項9】
請求項2又は5に記載のモノクローナル抗体において、前記抗体が請求項2ないし4のいずれかに記載の結合特異性の特徴を有し、共通配列である、
TFXYXMXであって、Xが好ましくはI又はFであり、XがR又はSであり、XがK、又はS、又はRであり、XがA又はSであり、XがN又はSであるCDR1、
ISXSXYYADSVKGであって、Xが好ましくはA又はSであり、XがN、G、又はSであり、XがG又はSであり、XがS又はGであり、XがD、S、又はYであり、XがT又はIであるCDR2、及び選択的に、
DXであって、Xが好ましくはR又はMであり、XがP、K、又はNであり、XがK又はなしであり、XがG又はなしであり、XがG、A、又はなしであり、XがG又はAであり、XがM又はFであり、XがV、又はP、又はIであるCDR3、
を有する1.4群の抗体の重鎖CDR1及びCDR2配列、あるいは、
CDR1:GTVNSYYWS、
CDR2:RVYSSGTTNLNPS、
CDR3:DYGTDY、
の1.2.20型の抗体の重鎖CDRを含むことを特徴とするモノクローナル抗体。
【請求項10】
請求項7に記載のモノクローナル抗体において、当該抗体が1.4.11、1.4.24、1.4.30又は1.2.20型の配列の群から選択される前記軽鎖CDR1ないしCDR3配列と、1.4.11、1.4.24、1.4.30、又は1.2.20型の配列の群から選択される前記重鎖CDR1ないしCDR3配列とを含むことを特徴とするモノクローナル抗体。
【請求項11】
請求項7に記載のモノクローナル抗体において、当該抗体が1.4.24型抗体の前記軽鎖及び重鎖のCDR1ないしCDR3配列を含むことを特徴とするモノクローナル抗体。
【請求項12】
疾患関連型、又は細胞結合型の抗体、好ましくはヒト抗体の分析方法であって、当該方法が、請求項2ないし4に規定されたようなシアリル化されたオリゴ糖及び単糖の配列に対する前記抗体の特異性を測定し、好ましくは請求項3に記載の3のオリゴ糖配列に対する特異性を測定するステップを含み、前記抗体が請求項4ないし7、9、又は10のいずれかに記載の配列を有することを特徴とする方法。
【請求項13】
糖質エピトープ結合抗体を検出する方法であって、当該方法が、
a)請求項6、7、及び9のいずれか1項に記載の実質的に類似又は同一のCDR1又はCDR2配列を有する抗体配列を、利用可能な配列データから検索するステップと、
b)ステップa)で検索された抗体を、請求項1ないし5のいずれかに記載の糖類配列を含むシアリル糖類のライブラリと接触させるステップと、
c)前記抗体が前記配列のいずれかと結合するか、あるいは、請求項13ないし20に記載の抗体と同一の結合特異性を有するかどうかを検出するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項2に記載のモノクローナル抗体において、当該抗体がα3でシアリル化された1型のN−アセチルラクトサミン配列SAα3Galβ3GlcNAcに結合し、SAがNeu5Gc又はNeu5Acであり、より有効にはNeu5Gcα3Galβ3GlcNAcであることが好ましく、及び/又は、前記抗体がNeu5Gcα3Galβ3GlcNAcとNeu5Acα3Galβ3GlcNAcとの双方に結合することを特徴とするモノクローナル抗体。
【請求項15】
請求項2に記載のモノクローナル抗体において、当該抗体が式SAα6Gal(NAc)nに従うα6でシアリル化された末端非還元性の末端エピトープに結合し、SAがシアリン酸、好ましくはNeu5Gc又はNeu5Acであることを特徴とするモノクローナル抗体。
【請求項16】
請求項2に記載のモノクローナル抗体において、当該抗体が末端非還元性の末端エピトープNeu5Acα6GalNAc、好ましくはシアリルTn配列Neu5Acα6GalNAcαに結合することを特徴とするモノクローナル抗体。
【請求項17】
請求項2に記載のモノクローナル抗体において、当該抗体がNeu5Acα6Galβ4GlcNAcと、Neu5Gcα6Galβ4GlcNAcとを含む、双方のα6でシアリル化された2型のN−アセチルラクトサミンに結合することを特徴とするモノクローナル抗体。
【請求項18】
請求項2に記載のモノクローナル抗体において、当該抗体がNeu5Gcα6Galβ4GlcNAcより高親和性を有する、末端非還元性の末端エピトープNeu5Acα6Galβ4GlcNAcに結合することを特徴とするモノクローナル抗体。
【請求項19】
請求項2に記載のモノクローナル抗体において、当該抗体が末端異種抗原性の非還元性末端の単一末端であるNeuGcα−単糖残基に結合するが、非還元性末端の単一末端であるNeuAcα−単糖残基に結合しないことを特徴とするモノクローナル抗体。
【請求項20】
請求項2に記載のモノクローナル抗体において、当該抗体がSAα3Galβ4Glc(NAc)に従うオリゴ糖配列に結合せず、SAがNeu5Gc又はNeu5Acであり、nが0又は1であることを特徴とするモノクローナル抗体。
【請求項21】
請求項2に記載のモノクローナル抗体において、当該抗体が(a)免疫グロブリン分子全体と、(b)scFvと、(c)キメラ抗体と、(d)Fabフラグメントと、(e)Fab’フラグメントと、(f)F(ab’)2と、(g)Fvと、(h)ジスルフィド結合されたFvとからなる群から選択されることを特徴とするモノクローナル抗体。
【請求項22】
請求項21に記載のモノクローナル抗体において、前記scFvのフラグメント又は前記FabフラグメントがIgMのサブクラスに属する抗体からのものであることを特徴とするモノクローナル抗体。
【請求項23】
請求項21に記載のモノクローナル抗体において、フラグメントがscFvのフラグメントであることを特徴とするモノクローナル抗体。
【請求項24】
単離されたDNA分子であって、請求項2に記載のモノクローナル抗体と、このDNAのフラグメントとをコード化し、前記抗体の少なくとも1の抗体鎖をコード化することを特徴とする、単離されたDNA分子。
【請求項25】
請求項24に記載の単離されたDNA分子において、前記抗体鎖がV及び/又はV領域のCDRであることを特徴とする、単離されたDNA分子。
【請求項26】
請求項24に記載の単離されたDNA分子がベクタにクローン化されることを特徴とする、単離されたDNA分子。
【請求項27】
請求項26に記載の単離されたDNA分子において、前記ベクタが請求項2に記載の抗体を発現できる発現ベクタであることを特徴とする、単離されたDNA分子。
【請求項28】
請求項24ないし27のいずれか1項に記載のDNAを含む宿主細胞。
【請求項29】
請求項28に記載の宿主細胞が、請求項2に記載のモノクローナル抗体又はそのフラグメント若しくは誘導体、あるいは前記抗体の少なくとも1の抗体鎖を発現できることを特徴とする宿主細胞。
【請求項30】
請求項29に記載の宿主細胞において、前記抗体鎖が請求項21ないし23のいずれか1項に記載のscFvのフラグメントであることを特徴とする宿主細胞。
【請求項31】
請求項2に記載のモノクローナル抗体を調製する方法であって、
少なくとも1の抗体鎖を発現できる請求項28に記載の宿主細胞を培養するステップと、
前記抗体を回復するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法が、
前記回復ステップ後に成分鎖を結合するステップと、
結合した成分鎖を第2の宿主細胞に導入するステップと、
前記結合した成分鎖を回復するステップと、
を更に含むことを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項31に記載の方法が、前記抗体をラベリングするステップを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項2に記載のモノクローナル抗体を調製する方法であって、
前記抗体又は抗体誘導体の少なくとも一部分を合成的に生成するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項35】
ファージ又は微生物細胞であって、請求項21ないし23のいずれか1項に記載の抗体フラグメントを表面タンパク質を有する融合タンパク質として呈示することを特徴とするファージ又は微生物細胞。
【請求項36】
請求項2に記載の抗体を選択する方法であって、請求項35に記載のファージ又は細胞を含む抗体フラグメントのディスプレイライブラリから前記抗体を選択するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法において、非還元性末端の単一末端であるNeuAcα複合体に結合しない第1の抗体が選択され、次いで、非還元性末端の単一末端であるNeuGcα複合体に結合する抗体が残りの抗体から選択されるように、前記抗体が抗体フラグメントのディスプレイライブラリから選択されることを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法において、前記複合体が固定化され、非結合型の前記NeuAcα複合体が最初にファージライブラリから選択され、次いでNeuGcα結合型クローンがライブラリから選択されることを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項37に記載の方法において、前記ライブラリが少なくとも約50の供血者から得られるヒト抗体のライブラリであることを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項37に記載の方法において、前記ライブラリがIgMライブラリであることを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項38に記載の方法において、前記抗体フラグメントがNeuAcα及びNeuGcαの多価複合体に対して選択されることを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項38に記載の方法において、前記多価複合体が2以上の末端シアリン酸残基を含み、シアリン酸残基間の距離が約20原子結合未満であるが、約6原子結合より大きいことを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項38に記載の方法において、前記多価複合体がフレキシブルなポリアミド構造、より好ましくはポリアクリルアミド構造を含むことを特徴とする方法。
【請求項44】
請求項27又は28に記載のプロセスによって得られうる抗体。
【請求項45】
サンプル中の酸性の糖類及び/又はNeuGcを検出する方法であって、
前記サンプルを得るステップと、
前記サンプルを請求項2ないし11又は14ないし20のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体と接触させることによって前記糖類を検出するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項45に記載の方法において、前記サンプルが細胞又は組織、好ましくはヒト細胞を含むことを特徴とする方法。
【請求項47】
試験キットであって、運搬及び保存用に好適な容器中に請求項2ないし11のいずれか1項に記載の抗体を含むことを特徴とする試験キット。
【請求項48】
免疫診断で用いるための請求項2ないし11のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体。
【請求項49】
免疫療法で用いるための請求項2ないし11のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体。
【請求項50】
ヒトモノクローナル抗体であって、末端非還元性の末端オリゴ糖配列である、
6)α3でシアリル化された1型のN−アセチルラクトサミン配列SAα3Galβ3GlcNAcであって、SAがNeu5Gc又はNeu5Acであり、前記配列が好ましくはNeu5Gcα3Galβ3GlcNAcである、α3でシアリル化された1型のN−アセチルラクトサミン配列SAα3Galβ3GlcNAcと、
及び/又は、
7)SAがNeu5Gc又はNeu5Acである、α6でシアリル化された2型のN−アセチルラクトサミン配列SAα6Galβ4GlcNAcと、
及び/又は、
8)シアリル化された非還元性末端の末端Neu5Acα6GalNAc構造、好ましくはシアリルTn配列Neu5Acα6GalNAcαと、
及び/又は、末端非還元性の末端単糖残基である、
9)異種抗原性非還元性末端の単一末端であるNeuGcα−単糖残基と、
に結合するが、非還元性末端の単一末端であるNeuAcα−単糖残基に結合せず、好ましくは、
10)SAがNeu5Gc又はNeu5Acであり、nが0又は1である、SAα3Galβ4Glc(NAc)に従うオリゴ糖配列、
に結合しないことを特徴とするヒトモノクローナル抗体。
【請求項51】
ヒト幹細胞集団の状態を分析するための方法であって、請求項1又は50に規定されたような結合試薬と細胞を接触させるステップを含み、前記細胞に対する外因性物質及び/細胞培養条件の効果の分析のための方法であり、前記結合試薬がモノクローナル抗体であることを特徴とする方法。
【請求項52】
請求項51に記載の方法において、グリカン構造の無傷細胞集団上での表面発現が分析されることを特徴とする方法。
【請求項53】
請求項52に記載の方法において、抗体によるラベリングが非ヒト外因性物質の存在下で細胞培養条件と関連し、及び/又は、前記ラベリングの欠如がヒト等価物質の存在下で細胞培養条件と関連することを特徴とする方法。
【請求項54】
請求項53に記載の方法において、前記ラベリングが前記非ヒト外因性物質中の非ヒト又は動物型のグリカン構造の存在と関連し、及び/又は、前記ラベリングの欠如が前記ヒト等価物質中のヒト型のグリカン構造の存在と関連することを特徴とする方法。
【請求項55】
請求項54に記載の方法において、前記ラベリングが動物血清タンパク質、好ましくはFCSの存在と関連し、及び/又は、ラベリングの欠如がヒト血清タンパク質の等価物の存在と関連することを特徴とする方法。
【請求項56】
請求項52ないし55のいずれかに記載の方法において、前記無傷細胞の主要な下位個体群がラベリングされ、より好ましくは少なくとも15%、更に好ましくは少なくとも75%の細胞がラベリングされることを特徴とする方法。
【請求項57】
請求項52ないし56のいずれかに記載の方法において、幹細胞はヒト血液由来の間葉系幹細胞であり、より好ましくは臍帯血又は骨髄由来の間葉系幹細胞であることを特徴とする方法。
【請求項58】
請求項51ないし57のいずれかに記載の方法において、請求項2ないし11、又は14ないし20、又は50のいずれかに記載の抗体が用いられることを特徴とする方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【公表番号】特表2011−504099(P2011−504099A)
【公表日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532633(P2010−532633)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【国際出願番号】PCT/FI2008/050643
【国際公開番号】WO2009/060129
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(509205250)
【出願人】(509339016)
【Fターム(参考)】