説明

シェーバの切断部材を製造する方法

本発明は、シェーバ(1)の切断部材を製造する方法に関する。本方法は、板状の支持体(10)を提供するステップと、切断素子の基部(15,23)と支持体との間の残留接続部を除き、支持体から少なくとも1つの切断素子(9a,9b)を切り離すステップと、切断素子を支持体に対して曲げるステップとを含む。本発明によれば、切り離すステップ及び曲げるステップは、押抜き及び屈曲効果の組み合わせを有する工具(11)を使用して同時に遂行される。そのような工具を使用することによって、切離しの作用は、自由空間及び切断素子(9a,9b)と支持体(10)との間の材料の損失をもたらさない引裂きプロセスによって得られる。結果的に、支持体の強度は、そのような自由空間又は材料損失によって減少されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板形状の支持体を提供するステップと、切断素子の基部と支持体との間の残留接続部を除き、支持体から少なくとも1つの切断素子を切り離すステップと、切断素子を支持体に対して曲げるステップとを含む、シェーバ(髭剃り器)の切断部材を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭段落に述べられた種類の切断部材を製造する方法は、EP−A−1537963から既知である。既知の方法は、具体的には、電気回転シェーバの切断ユニットの内部切断部材を製造するために使用される。内部切断部材は、支持体と一体的に形成された多数の規則的に分配された切断素子を備える環状の金属板形状支持体を含む。各切断素子は、切断素子の基部と支持体との間の残留接続部を除き、支持体から切断素子を切り離し、切断素子を支持体に対して上向きに曲げるという連続的なステップによって、支持体から形成される。切断素子を切り離すステップは、一般的には、適切な切断ダイを用いて切断素子の周りから自由空間を切り取ることによって遂行される。切断素子を曲げる連続的ステップは、一般的には、別個の屈曲ダイを用いて切断素子の基部に近接して位置付けられる屈曲軸に沿って切断素子を曲げることによって遂行される。
【0003】
既知の方法の不利点は、切離しステップの間に切断素子の周りに切除される自由空間が、支持体の機械的強度を減少することである。支持体の所要強度を得るために、支持体の寸法は、自由空間によって引き起こされる材料の損失を補償するよう増大されなければならない。そのような支持体の寸法の増大は、特に、切断部材を収容するのに限定的な利用可能空間しか有さないシェーバ又は切断ユニットの場合には、必ずしも許容可能なわけではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知の方法の不利点を有さない冒頭段落に述べられた種類の切断部材を製造する方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、本発明に従った切断部材を製造する方法は、切り離すステップ及び曲げるステップが、押抜き及び屈曲効果の組み合わせを有する工具を使用して同時に遂行される点で特徴付けられる。押抜き及び屈曲効果の組み合わせを有する工具を使用することによって、切断素子は、引き裂かれて自由にされ、同時に、支持体から曲げられる。従って、切離しの作用は、切断素子と支持体との間に自由空間をもたらさない引裂きプロセスによって得られる。結果的に、支持体の強度は、切断素子と支持体との間の自由空間によって減少されないので、支持体の寸法は、支持体の所要の強度を維持するために増大される必要はない。本発明に従った方法の追加的な利点は、切断素子の基部と支持体との間の残留接続部に近接して、切断素子の側壁が、支持体と接触されたままであることである。結果的に、支持体は、支持体と支持体と接触する側壁の部分との間の摩擦力を介して、切断素子を支持する追加的な機械的支持をもたらす。これは切断素子の剛性及び安定性を増大する。
【0006】
この脈絡において、「切断素子と支持体との間の自由空間」という表現は、支持体と平行な方向に向けられる自由空間又は隙間を指すことを意図するので、支持体から切り離される支持素子の部分は、支持体に触れずに支持体の平面を通じて自由に曲げられ得る。本発明に従って製造される切断部材では、そのような自由空間は存在しないので、切断素子の前記部分は、もしそれが支持体の平面を通じて曲げられるならば支持体に触れる。
【0007】
本発明に従った方法の具体的な実施態様は、工具が、切断素子の切離し及び屈曲の同時ステップの間に、支持体に対する切断素子の所望の屈曲角と実質的に対応する支持体に対する傾斜角を有する押抜き表面を有する。この具体的な実施態様では、切離し及び屈曲の同時ステップは、切断素子の端部付近で開始し切断素子の基部に近接して終了する連続的な位置で起こる。これは切断素子を引裂き離し且つ曲げるのに必要な押抜き力を制限する。
【0008】
本発明に従った方法の具体的な実施態様は、切断素子の切離し及び屈曲の同時ステップの後に、切断素子の少なくとも一部を屈曲して最終的な屈曲位置に至らせる少なくとも1つの追加的なステップが続く点で特徴付けられる。この具体的な実施態様では、切離し及び屈曲の同時ステップによって切断素子が切り離され且つ初期屈曲位置に曲げられた後、切断素子又はその1つ又はそれよりも多くの特別な部分は、後続の少なくとも1つの追加的な屈曲ステップによって如何なる所望の最終屈曲位置にも曲げられ得る。
【0009】
本発明に従ったさらなる実施態様は、最終的な屈曲位置において、切断縁部を支持する切断素子の少なくとも端部が、支持体に対して90°よりも大きい角度に亘って曲げられる点で特徴付けられる。このさらなる実施態様において、切断素子の切断縁部は、切離し及び屈曲の同時ステップの間に支持体から先ず引き裂かれ離される切断素子の端部の(上方)縁部によって形成される。前記同時ステップの間に最終的に引き裂かれて離され且つ引裂きプロセスによって引き起こされるかなりの程度のばり返りを有する端部の(下方)縁部と対比すると、前記上方縁部は比較的ばり返りがない。このようにして、切断縁部は、後処理が不要であり或いは限定的な後処理が必要なだけである。
【0010】
本発明に従った方法の具体的な実施態様は、切断素子の切離し及び屈曲の同時ステップの前に、支持体と切断縁部を支持する切断素子の端部との間に自由空間が切り取られることによって特徴付けられる。この具体的な実施態様では、前記端部と支持体との間の自由空間を切り取るよう適切な切断ダイを使用して前記端部を先ず切り離すことによって、前記端部と基部との間の切断素子の残部のみが、支持体から引き裂かれ離される。結果的に、切断縁部の場所でのばり返りが防止されると同時に、自由空間による支持体の強度の減少は、切断素子の端部の周りの地域に限定される。
【0011】
本発明は、外部切断部材と、外部切断部材に対して移動可能な内部切断部材とを含む切断ユニットに関し、内部切断部材は、本発明に従った方法によって製造される。本発明は、本発明に従った少なくとも1つの切断素子を含むシェービングユニットにも関する。
【0012】
本発明は、本発明に従ったシェービング(髭剃り)ユニットを含むシェーバにも関する。
【0013】
本発明に従った切断部材を製造する方法の具体的実施態様は、図面を参照して以下に詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に従った3つの切断ユニットを支持する本発明に従ったシェービングユニットを含む本発明に従ったシェーバを示す斜視図である。
【図2】本発明に従った方法に従った製造される切断部材を示す斜視図である。
【図3】図2の切断部材を示す詳細図である。
【図4】本発明に従った方法における切離し及び屈曲の同時ステップを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明に従ったシェーバ1の実施例を示している。シェーバ1は、電気回転シェーバであり、基礎ハウジング2を含み、基礎ハウジング上には、本発明に従ったシェービングユニット3が取り付けられている。シェービングユニット3は、本発明に従った3つの切断ユニット4を支持している。各切断ユニット4は、外部切断部材5と、内部切断部材6とを含み、内部切断部材は図1では見えないが、図2に詳細に示されている。
【0016】
各外部切断部材5は、毛進入孔7を含み、毛進入孔を介して、毛が外部切断部材5内に入り込み得る。図示される実施例において、毛進入孔7は、2つの同心トラック8a,8b内に配置されている。この実施例において、内部切断部材6は、前記トラック8a,8bと協働するために規則的に分配された切断素子9a,9bの2つの同心の円形配列を有する。内部切断部材6は、図面中では見えないシェーバ1の駆動系に結合されている。動作中、内部切断部材6は、図2中の矢印Rの方向に外部切断部材5に対する回転運動に駆動されるので、毛進入孔7を介して外部切断部材5内に入り込む毛は、切断素子9a,9bとトラック8a,8bとの間の切断協働によって切断される。
【0017】
内部切断部材6は、本発明に従った方法によって製造される。本発明によれば、先ず、金属の板形状の支持体10が提供される。図2に示される実施例において、支持体10は、主要な角形状を有する。切断素子9a,9bは、切断素子の一方9bとの関係で図4中に概略的に示される切離し及び屈曲の同時ステップを用いて支持体10と共に一体的に形成される。前記同時ステップは、打抜き及び屈曲効果の組み合わせを有する工具11を使用して遂行される。前記同時ステップの間、支持体10は、打抜き機の第一支持表面12と第二支持表面との間に締め付けられ、第二支持表面は、図4では見えず、第一支持表面12と平行である。工具11は、押抜き表面13を有し、押抜き表面は、前記同時ステップの間、支持体10に対して傾斜角αを有する。前記同時ステップの間、工具11は、図4中に矢印Aによって表示されるような上向き方向に移動される。このようにして、工具11は、先ず、形成されるべき切断素子9bの端部14に衝突する。前記端部14は、引裂き作用によって支持体10から切り離され、同時に、傾斜角αと対応する支持体10に対する傾斜位置に上向きに曲げられる。上向き方向への工具11のさらなる移動の間、押抜き表面13は、引き裂かれて自由になり、図3中に見える切断素子9bの基部15まで、前記端部14から切断素子9bの連続部分を曲げる。その瞬間に、工具11の運動は停止されるので、前記基部付近に、残留接続部が、基部15と支持体10との間に維持される。この瞬間に、前記残留接続部を除き、完全な切断素子9bが支持体10から切り離され、支持体に対して上向きに曲げられ、傾斜角αと対応する支持体10に対する屈曲角に至る。切断素子9bの屈曲角の精度を向上し、切断素子9bの湾曲を防止するために、工具11の上向き端部位置では、切断素子9bが、工具11によって当接表面に対して押し付けられ、当接表面は、図面では見えず、同一の傾斜角αを有する。
【0018】
本発明に従った方法を用いるならば、切断素子9bは工具11によって支持体10から引き裂かれて自由にされるので、実質的に、材料は支持体10から並びに切断素子9bから切り取られない。従って、前記方法に従って製造される切断部材6は、支持体10と平行な方向に見られるとき、切断素子9bと支持体10との間に如何なる自由空間をも示さない。実質的に材料は支持体10から切り取られないので、支持体10の機械的強度は、本発明に従った方法によって実質的に減少されない。これは、製造プロセス中の材料の如何なる損失をも補償するために、支持体10の寸法が増大されないことを暗示している。図2及び3中に示される具体的な実施例では、この利点は他の方法から、即ち、切断素子9bの基部に切断素子9bの残余部分に対して増大された幅Wを提供することによって享受される。この実施例では、増大された幅Wが可能である。何故ならば、支持体10は、支持体10の湾曲した内側縁部の故に、切断素子9bの中央領域に近接してよりも基部15に近接して、多くの残された材料を有するからである。もし材料の損失が製造プロセスに起因するならば、基部15の幅の可能な増大はより少ない。増大された幅は、切断素子9bに増大された剛性及び安定性をもたらす。図3に見られ得るように、切断素子9bの剛性及び安定性は、切断素子9bの側壁が、基部15と支持体10との間の残留接続部に近接して、支持体10と接触するという事実によってさらに増大される。これは、支持体10と平行な方向に見られるとき、切断素子9bと支持体10との間に実質的に自由空間が存在しないという事実の直接的な結果でもある。前記接触の結果、支持体10と支持体10と接触する側壁16の部分との間には摩擦力が存在する。前記摩擦力は、切断素子9bの剛性及び安定性をさらに増大する。
【0019】
前記引裂きプロセスを用いて切断素子9bを切り離すプロセス中、切断素子9bの端部14の下方縁部17、即ち、切断素子9bの直ぐ前で上向き方向Aに対して反対方向に面する縁部が曲げられ(図3及び4を参照)、最終的に、支持体10から引き裂かれて自由にされる。その結果、前記下方縁部17は、引裂きプロセス中に支持体10から直ぐに引き裂かれて自由にされる端部14の上方縁部18と対比されるときに、引裂きプロセスによって引き起こされる相当な程度のばり返り(burr)を有する。もし図4に示されるような切離し及び屈曲の同時ステップ後の切断素子9bの位置が最終位置であるならば、前記下方縁部17は、切断部材6の回転方向(R)に見られるときに前縁を形成するので(図2を参照)、前記下方縁部17は、切断素子9bの切断縁部を形成する。これは、下方縁部17からばり返りを除去するために、相当な後処理努力を要求する。そのような後処理努力を防止し或いは限定するために、図4中に概略的に示されるような切断素子9bを切り離し及び屈曲する同時ステップの後には、切断素子9bの少なくとも一部を曲げて図2及び3に示されるような最終屈曲位置に至らせる、少なくとも1つの追加的ステップが続く。切断素子9bの具体的な実施例では、切断素子9bの中央部分19を曲げて基部15に対するさらなる傾斜位置に至らせるために、第一の追加的な屈曲ステップが遂行され、切断素子9bの端部14を曲げて中央部分19に対するさらなる傾斜位置に至らせるために、第二の追加的な屈曲ステップが遂行される。追加的な屈曲ステップは、一般的な屈曲ダイを使用して遂行される。図2及び3に示される切断素子9bの最終屈曲位置では、端部14は、支持体10に対して90°よりも大きい角度に亘って曲げられる。その結果は、切断部材6の回転方向Rに見られるときに、上方縁部18が前縁を形成するので、前記上方縁部18が切断素子9bの切断縁部を形成することである。上方縁部18は、ばり返りが比較的ないので、そのように曲げられる切断素子9bは、適切に鋭い切断縁部を有するために後処理を必要とせず或いは限定的な後処理だけを必要とする。
【0020】
切断素子9aは、切断素子9bと関連して前述されたような類似の切離し及び屈曲の同時ステップによって形成される。切断素子9aを図2及び3に示されるようなそれらの最終的な屈曲位置に曲げるために、多数の追加的な屈曲ステップも遂行される。切断素子9bとの相違は、追加的な屈曲ステップの間、切断素子9bが部分的にではなく実質的に全体的に曲げられると同時に、それらの最終屈曲位置において、切断素子9aの端部20は、支持体10に対して90°よりも実質的に小さい角度に亘って曲げられる。これは、前記端部20の下方縁部21が切断素子9aの切断縁部を形成することを暗示している。これは、切断素子9aを同時の切離し及び屈曲するステップの前に、自由空間が適切な切断ダイを用いて支持体10と各切断素子9aの端部20との間に切断されるので可能である。図2及び3では、前記自由空間は、支持体10の円周縁部内の凹部22として並びに切断素子9aの端部20内の凹部24として見られる。端部20の周りに前記自由空間を切断することによって、前記端部20の縁部、具体的には、切断縁を形成する下方縁部21も、ばり返りがないままである。以下の切離し及び屈曲の同時ステップにおいて、端部20と基部23との間の切断素子9aの残余部分は、支持体10から引き裂かれて自由にされるので、これらの場所では、切断素子9aと支持体10との間に自由空間は生じない。結果的に、自由空間による支持体10の強度の減少は、端部20の直ぐ周りの地域に限定される。
【0021】
切断素子9b付近で支持体10内に設けられる穴25は、上記された意味内で自由空間を構成しないことが付記される。穴25は端部14を取り囲まず、端部14の端面に隣接するだけである。穴25は工具11によって遂行される引裂きプロセスの開始を容易化するために設けられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェーバの切断部材を製造する方法であって、
板形状の支持体を提供するステップと、
切断素子の基部と前記支持体との間の残留接続部を除き、前記支持体から少なくとも1つの切断素子を切り離すステップと、
前記切断素子を前記支持体に対して曲げるステップとを含み、
前記切り離すステップ及び前記曲げるステップは、押抜き及び屈曲効果の組み合わせを有する工具を使用して同時に遂行されることを特徴とする、
方法。
【請求項2】
前記工具は、前記切断素子の切離し及び屈曲の同時ステップの間に、前記支持体に対する前記切断素子の所望の屈曲角と実質的に対応する前記支持体に対する傾斜角を有する押抜き表面を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記切断素子の切離し及び屈曲の同時ステップの後に、前記切断素子の少なくとも一部を屈曲して最終的な屈曲位置に至らせる少なくとも1つの追加的なステップが続くことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記最終的な屈曲位置において、切断縁部を支持する前記切断素子の少なくとも端部が、前記支持体に対して90°よりも大きい角度に亘って曲げられることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記切断素子の切離し及び屈曲の同時ステップの前に、前記支持体と切断縁部を支持する前記切断素子の端部との間に自由空間が切り取られることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
外部切断部材と、該外部切断部材に対して移動可能な内部切断部材とを含み、該内部切断部材は、請求項1、2、3、4、又は、5に記載の方法によって製造される、切断ユニット。
【請求項7】
請求項6に記載の少なくとも1つの切断素子を含むシェービングユニット。
【請求項8】
請求項7に記載のシェービングユニットを含むシェーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−509016(P2010−509016A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536842(P2009−536842)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【国際出願番号】PCT/IB2007/054580
【国際公開番号】WO2008/059427
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】