システム
サンプル、例えば、更なる分析に供されるべき体液サンプル、の中に存在する細胞から流体サンプル媒体を分離するためのマイクロ流体分離システム。このシステムは、マイクロ流体構造体と細胞凝集剤とを含んでもよい。マイクロ流体構造体は、サイズ排除により、凝集した細胞を流体サンプル媒体から分離することのできる1つ以上のマイクロ流体流路を含んでもよい。
【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、流体サンプルから粒子を分離するためのマイクロ流体分離システム、ならびに流体サンプル中の被験物の量および/または存在を検出するための、若しくは流体サンプルの特性を決定するためのアッセイシステムに関する。特に、本発明は、サンプルからの細胞の分離、例えば、全血サンプルからの赤血球の分離に関する。
【0002】
流体サンプル中に存在する被験物の存在および/または量を測定するための診断アッセイ装置は、治療時に、または家庭環境で使用するために開発されてきた。このような装置は、医療の専門職によって使用され、あるいは、自己管理のために患者が使用するなど、専門家ではない個人によっても同様に使用され得る。従って、このような装置は、使い易く、必要となる流体サンプルが少量であり、迅速に測定を行うように設計される。少量のサンプルが望ましいのは、例えば、ランセットまたはフィンガースティックを皮膚に適用することによって毛細血管の血液サンプルを得る時、患者から採取するのにあまり痛みを伴わないからである。典型的には、この装置は1ステップ装置であるので、使用者は更なるサンプル操作工程を行う必要なく、単に流体サンプルを装置に適用するだけで結果が得られる。このようなシステムは、典型的には持ち運び可能であり、最小限の移動部を有するか、または全く有さない。典型的には、流体サンプルを装置内で積極的に移動させる必要なく、毛管作用により装置内におよび/または装置を通ってサンプルを移動させるために、マイクロ流体流路または多孔性担体が使用される。
【0003】
流体サンプルに対して診断アッセイ測定を行う場合、アッセイに干渉するかもしれない構成成分をサンプルから除去することが望ましいか、または必要な場合がある。例えば、試験計画が血漿サンプルを必要とする場合、全血から赤血球を除去することが必要な場合がある。赤血球はまた、例えば特定波長の光を吸収することにより、アッセイ測定に干渉することもある。従来より、赤血球は、遠心分離によって、または赤血球を沈殿させることによって全血から除去される。しかしながら、このような方法は、典型的には100μlから1μl未満までの容量の流体サンプルに対する診断アッセイを迅速に行うという目的には不適切である。
【0004】
流体媒体からの粒子の分離は、適切な孔径を有する不織布などのフィルタを使用することによって行うことができる。しかしながら、このような装置の使用は、フィルタが閉塞し、結果として血漿ろ液の収量が低くなるという傾向があるため、全血から赤血球を分離する目的には不適切である。また、血漿回収のための時間が増大する。これは、毛管力のみに依存して流体サンプルの移送を行うマイクロ流体装置などの流動システムにおいては明らかに不利である。
【0005】
従って、少量のサンプルを高い収量レベルで迅速に分離する分離システムへの希求が存在する。
【発明の開示】
【0006】
本発明の第一の態様によれば、サンプル中に存在する細胞から流体サンプル媒体を分離するためのマイクロ流体分離システムが提供され、このシステムはマイクロ流体構造体と細胞凝集剤とを含んでなり、このマイクロ流体構造体は、凝集した細胞を流体サンプル媒体からサイズ排除(篩い分け)により分離する1つ以上のマイクロ流体流路を含むものである。
【0007】
凝集剤という用語は、細胞の凝集および/または凝集反応(agglutination)を引き起こし得るあらゆる薬剤、並びに赤血球などの細胞のロゼット形成を引き起こし得る薬剤および/または赤血球などの細胞における連銭形成を促進し得る薬剤を包含するものとする。
【0008】
凝集剤を備えることにより、サンプル中の細胞が凝集し、故に細胞からのサンプル媒体の分離を助ける。凝集剤は、マイクロ流体構造体に隣接して、またはそれから離れて備えられてもよい。凝集剤は、マイクロ流体システムの内側表面から流体サンプルへの凝集剤の放出を助ける試薬と混合されてもよい。複数の凝集剤が備えられてもよい。
【0009】
マイクロ流体構造体は、凝集した細胞がサンプル媒体から濾別されることを可能にする1つ以上のサイズ排除空間を有するサイズ排除要素とされてよい。サイズ排除空間により、マイクロ流体流路は流体サンプル媒体から凝集した細胞を分離することができる。排除用空間のサイズは、凝集した細胞をサンプル媒体から分離するか、または実質的に分離することができるあらゆる好適なサイズから選択してもよく、システムの寸法、凝集剤が流体サンプルと相互作用する時間、およびサンプル自身の性質に応じて決定される。排除用空間の好適なサイズは常套の実験により決定することができる。排除用空間の最適なサイズは、凝集体の分離効率に基づいて決定することができ、また、最も簡単には常套の実験により決定される。複数のサイズ排除空間を使用する場合、それらのサイズは同一であっても、異なっていてもよい。排除用空間の上限は、凝集体のサイズに応じて決定され、下限は分離の速度および効率によって決定される。
【0010】
マイクロ流体構造体は毛管路であることを特徴とされてよい。毛管路は、流体サンプル媒体から凝集した細胞を分離するための1つ以上のサイズ排除空間として特徴付けられる。
【0011】
マイクロ流体構造体の1つ以上のマイクロ流体流路の寸法は、サイズ排除空間に相当し得る。1つ以上のマイクロ流体流路の寸法は、サイズ排除空間を規定するために変化してもよい。1つ以上のマイクロ流体流路は、寸法の異なるまたは変化する他のマイクロ流体流路と流体連通していてもよい。
【0012】
マイクロ流体構造体は、少なくとも一つの第一のマイクロ流体流路を含んでもよく、この少なくとも一つの第一の流路は延長された側壁を有する基部を有し、この流路の深さ未満の深さを有する1つ以上の通路とその長手方向側部に沿って流体連通しており、この通路の深さはサイズ排除空間を規定する。
【0013】
サイズ排除空間を規定する通路の深さは、サンプル媒体が第一の流路から通路内へと通過することを可能とするものである。従って、サイズ排除により、凝集した細胞をサンプル媒体から分離することができる。
【0014】
前記または各通路は、更なるマイクロ流体流路と更なる流体連通をなしていてもよい。従って、そのまたは各通路は、第一の流路と更なる流路との間の接続領域として機能してもよく、この通路がサイズ排除空間を規定する。この通路は、サイズ排除空間を変化させるための1つ以上の段形成部を備えてもよい。そのまたは各段形成部は、サイズ排除空間を通路に付与してもよい。
【0015】
前記通路および/または更なる流路は、サンプル媒体回収領域と流体連通していてもよく、凝集した細胞から分離されたサンプル媒体は前記回収領域へと流動する。回収領域は、更なる導管であってもよいし、マイクロ流体構造体内のチャンバを構成してもよい。
【0016】
あるいは、毛管路は1つ以上のマイクロ流体流路を含んでもよく、このマイクロ流体流路には、所望のサイズ排除空間に相当する空隙を規定する1つ以上のマイクロ構造体が設けられる。マイクロ構造体は、凝集した細胞をサンプルから分離するように構成することができる。マイクロ構造体は、約1μm〜約50μmの範囲のサイズ排除空間を規定し得る。複数のマイクロ構造体群は、同一サイズまたは異なるサイズで設けられてもよく、互いに対していかなる特定の構成で配置されていてもよい。各群は、他の群と異なるサイズ排除空間を規定してもよい。マイクロ構造体の群は、サンプルがより大きいサイズ排除空間を規定する群を通って流動した後に、より小さいサイズ排除空間を有する1つ以上の群を通って流動するように順序付けされた構成であってもよく、ここでサンプル媒体は凝集した細胞から分離される。回収領域は、マイクロ構造体の下流に設けられてもよく、サンプル媒体はサイズ排除空間を通って流動して分離された後に回収領域へと流動する。
【0017】
マイクロ構造体は、溝付き表面の形状、ピラー形状、またはサイズ排除空間を規定するいかなる形状であってもよい。
【0018】
毛管路内のサイズ排除空間の寸法は、約50μm以下、約40μm以下、約30μm以下、約20μm以下、約15μm以下、約10μm以下、約5μm以下であってもよく、または約2μm以下であってもよい。
【0019】
毛管路は、蛇行路を規定してもよい。
【0020】
システムは、更に、マイクロ流体構造体と流体連通して該マイクロ流体構造体にサンプルを供給する導管を含んでもよい。供給導管はまた、凝集剤をマイクロ流体構造に供給してもよい。凝集剤は、導管の1つ以上の表面上、および/またはサイズ排除空間の上流にあるマイクロ流体構造体の毛管路の1つ以上の表面に備えられてもよい。
【0021】
導管のレイノルズ数は3000未満とすることができる。あるいは、導管のレイノルズ数は100未満であってもよい。導管は、好ましくは毛管である。レイノルズ数は、以下の式を用いて計算することができる。
【0022】
【数1】
【0023】
式中、Reはレイノルズ数であり、ρは流体密度であり、Vは流速であり、dは長さスケールであり、ηは動態密度である。レイノルズ数が2000以下であると、導管(マイクロ構造体またはマイクロ流路であると考えてもよい)は表面張力(毛管現象)のみによって消極的に充填される。
【0024】
サンプルは導管に適用されてもよい。サンプルは、導管と流体接続しているサンプル入口を介して適用されてもよい。
【0025】
好適な凝集剤の非限定的な例は、赤血球の凝集を引き起こすものであり、例えばデキストランなどである。あるいは、レクチンなどの凝集剤は、赤血球の凝集反応を引き起こす場合もある。更なる代替として、凝集剤は、赤血球に対する1つ以上の抗体を含んでもよい。あるいは、凝集剤は、赤血球のロゼット形成を促進してもよく、または赤血球における連銭形成を促進してもよい。
【0026】
マイクロ流体システムは、内部マイクロ構造体、タイムゲート、流体混合チャンバ、サンプル収集チャンバ、ウェル、流路、バッフル、狭窄部、サンプル適用口などの更なるマイクロ流体要素を含んでもよい。マイクロ流体要素は、規則的な、または不規則な形状のものであってもよく、同一平面内または異なる平面内にあってもよい。マイクロ流体流路は、その長さに沿って変化する毛管寸法を有するものであってもよく、異なるまたは変化する毛管寸法を有する他のマイクロ流体要素と流体連通していてもよい。
【0027】
サンプルがサイズ排除空間に到達する前に凝集剤と相互作用させられる時間は、例えば、システム内の何処に凝集剤が位置しているか、上流の流体導管の寸法、およびサンプルが流体導管に沿って移動する速度に影響される場合もある。必要である場合、凝集剤が十分に長い時間流体サンプルと相互作用することを保証する手段を設けてもよく、これは例えば、供給導管とサイズ排除空間との間を流体サンプルが通過する速度を低下させる役割を果たすチャンバまたはタイムゲートである。
【0028】
マイクロ流体構造体要素の典型的な寸法は、0.1μm〜500μmの断面寸法(例えば、断面直径)を有するものであり、より典型的には1μm〜100μmの断面寸法を有するものである。好ましくは、断面寸法は、流体が毛管作用によりシステムの様々な要素に沿って、それらを通ってまたはそれらの中に移送されることが可能となるサイズであるように選択される。代替として、または更に、流体は動電ポンプ作用によるなど、外力によってシステムの1つ以上の要素を通って移送されてもよい。このような場合、断面寸法は毛管寸法を超えてもよい。
【0029】
システムを作製するための基材は、ポリカーボネートなどのいかなる好適な材料であってもよい。基材が疎水性である場合、当技術分野において既知の方法、例えば酸素プラズマ処理などにより、その表面を処理して親水性にしてもよい。親水性表面を付与することに加え、他の種類の試薬は、内側表面上に固定されるか、またはそれ以外の方法で備えられてもよい。
【0030】
システムは、例えば、構造体内のマイクロ流体流路の深さを規定する役割を果たす壁がその上に設けられる第一の平面基材層を提供し、次いでその壁の上側表面上に配置される第二の平面基材層を提供することによって作製することができる。接着剤などの好適な接着手段を使用して、様々な構造体を適宜接合することができる。構造体を作製する他の手段は、例えばスクリーン印刷、またはシステムの上側表面および下側表面としての役割を果たす上側積層表面および下側積層表面を有する多積層システム、並びにマイクロ流体構造体の要素を規定する役割を果たす構造を有する中間積層体の提供などである。
【0031】
分離されるべき流体サンプル媒体は、好ましくは全血である。従って、システムは、凝集した赤血球のサンプル媒体からの分離を可能にするものとすることができる。
【0032】
マイクロ流体分離システムは使い捨てであってもよい。
【0033】
本発明の第二の態様によれば、流体サンプルに対してアッセイを行うためのアッセイシステムであって、被験物検出区域と流体連通している第一の態様によるマイクロ流体分離システムを含んでなるアッセイシステムが提供される。
【0034】
このアッセイシステムは、分離システムのマイクロ流体構造体と流体接続している、流体サンプルを適用するためのサンプル入口を含んでもよい。検出区域は、マイクロ流体構造体の下流に設けられてもよく、流体サンプルは、分離後に、マイクロ流体構造体からこの検出区域内に流動し得る。目的の被験物に対して特異的または非特異的な試薬がアッセイシステム内に備えられてもよく、検出区域の内側表面上に備えられてもよい。アッセイシステムは、更に、アッセイシステム内での結合相互作用、またはシグナル生成および検出に干渉し得るサンプル由来の分子を中和または除去する役割を果たす干渉区域を含んでもよい。アッセイシステム内には、他の区域の1つ以上と流体連通する更に別の区域が設けられてもよく、これには洗浄区域、タイムゲート、事前混合区域、反応区域などが含まれる。
【0035】
アッセイは、目的の被験物の存在および/または量を判別することができるあらゆるものから選択され得る。アッセイは、特異的結合事象が特異的な結合対の間で起こる特異的結合アッセイなどの結合アッセイであってもよく、この結合対の一方は目的の被験物であり、他方は分子の特定の空間的配向または極性配向、例えば、エピトープ性部位または決定基部位を認識することができるあらゆる化合物または組成物から選択される。好適な結合対の例は、抗体と抗原、ビオチンとアビジン、炭水化物とレクチン、相補的なヌクレオチド配列、相補的なペプチド配列、エフェクタとレセプタ分子、酵素補因子と酵素、酵素阻害剤と酵素、ペプチド配列とこの配列またはタンパク質全体に特異的な抗体、ポリマー性の酸と塩基、染料とタンパク質結合剤、ペプチドと特異的タンパク質結合剤などである。結合パートナーが抗体である場合、この抗体はモノクローン性またはポリクローン性であってよく、またはその断片であってもよい。その断片としては、Fab、FvおよびF(ab’)2、Fab’などが挙げられる。アッセイは、被験物と酵素との間で起こる特異的反応を伴うものとしてもよく、好適な酵素は、FAD/FADH2、NAD/NADH2またはNADP/NADPH2系を用いるものである。
【0036】
特異的結合対の一方は、検出可能な標識を備えてもよい。「標識」とは、視覚的手段または器具を用いた手段によって検出可能なシグナルを生成することができるあらゆる物質を指す。好適な標識の例としては、酵素および基質、色原体、触媒、蛍光化合物、化学発光化合物、放射性標識、ならびに、金などの粒状コロイド金属粒子、またはポリウレタンなどの粒状の染色された有機物質が挙げられる。
【0037】
結合アッセイは、不均質であるか、または均質であるかのいずれであってもよい。
【0038】
アッセイが均質である場合、特異的結合パートナーに付される標識は、結合して特異的結合対が形成されると、ある検出可能な物理的変化または化学的変化を受け、結果として結合種を未結合種から区別可能とするものであることが望ましい。エネルギー移動を伴うか、または波長の変化を生じるこのような結合アッセイの例は、米国特許第5,705,622号および米国特許第6,215,560号に記載されている。
【0039】
目的のサンプル媒体は全血であってもよいが、白血球など、凝集剤によって凝集され得る粒状物質の分離が必要とされる場合、いかなるサンプル媒体から選択されてもよい。
【0040】
目的の被験物としては、これらに制限されるものではないが、トキシン、有機化合物、タンパク質、ペプチド、微生物、細菌、ウィルス、アミノ酸、核酸、炭水化物、ホルモン、ステロイド、ビタミン、乱用薬物、汚染物質、殺虫剤、および上述の物質のいずれかの代謝産物またはそれに対する抗体が挙げられる。その具体例は、トロポニンTおよびトロポニンI、CKMB、C反応性タンパク質(CRP)、ANPおよびBNPなどのナトリウム排出ペプチドならびにそれらのN末端断片を含む特異的心臓マーカーである。他の目的の被験物としては、ヒト絨毛膜ゴナドトロピン(hCG)、黄体ホルモン(LH)および卵胞刺激ホルモン(FSH)、並びに骨吸収のマーカーが挙げられる。
【0041】
アッセイは結合アッセイであってもよく、このアッセイは発光を有し、発光酸素チャネリング免疫アッセイであってもよい。このような免疫アッセイは以下のものを含み得る:
a.光で照射されると一重項酸素を生成することができるドナー粒子;
b.一重項酸素により活性化され、検出可能な光を放出する放出手段を含有するアクセプタ粒子;
c.前記ドナーおよびアクセプタ粒子が、被験物を認識し、それに結合するように適合されており、ドナー粒子およびアクセプタ粒子の両方が被験物に結合すると、生成された一重項酸素がアクセプタ粒子上の放出手段を活性化し、検出可能な光を放出し;および
d.アクセプタ粒子によって放出された光を検出する検出器。
【0042】
ドナー粒子およびアクセプタ粒子は、粒子表面上に存在する抗体を通して被験物を認識する。放出手段は、一重項酸素により活性化されて化学発光を生成することができる溶解染料を含む。化学発光は、アクセプタ粒子内の蛍光体を活性化し、発光を引き起こす。光は520nm〜620nmで放出され得る。一重項酸素は、波長680nmの光で照射されると放出され得る。ドナー粒子は溶解フタロシアニンを含んでもよく、このフタロシアニンは照射されると一重項酸素を生成する。
【0043】
アッセイシステムは、更に伝達システムを含んでもよい。伝達システムは、光学的、磁気的、電気化学的、放射線学的であってもよく、または検出すべき目的のシグナルに応じて、質量、周波数若しくはエネルギー状態の変化の測定を伴ってもよい。シグナルが光学的なものである場合、このシグナルはいかなる特定の検出可能な波長または波長域のものであってもよく、蛍光および化学発光シグナルが含まれる。
【0044】
あるいは、または更に、アッセイシステムは、凝固時間またはプロトロンビン時間などの流体サンプルの特定的な特性を測定するために使用され得る。
【0045】
検出区域は、マイクロ流体流路を含んでもよく、またはウェルを含んでもよい。検出手段は、検出区域の一体部分として設けられてもよい。また、励起手段もこの区域の一部として一体的に設けられてもよい。励起手段および検出手段の例は、それぞれ発光ダイオードおよび光検出器である。1つ以上の検出区域並びに1つ以上の励起および検出器手段がある場合もある。検出器手段および励起手段は、便利なサイズおよび形状となるように選択されてもよく、好ましくは、測定すべきシグナルの捕捉効率が最大となるように選択される。励起手段および検出器手段は、典型的には、検出区域付近の流体サンプルに対して外側の表面上に配置される。
【0046】
検出区域の基材は、目的に応じてあらゆる好適な材料または材料群から選択されてもよい。好適な基材の例は、ポリカーボネートなどのプラスチック類である。検出すべきシグナルが光学シグナルである場合の検出区域の領域では、基材は、光学シグナルを送出することができるもの、例えば光学的に透明である好適なプラスチック材料などから選択されてもよい。
【0047】
更に、またはあるいは、望ましくない波長の光を除去するために、プラスチック材料にフィルタを組み込んでもよい。更なる代替として、フィルタはアッセイ基材の表面上に存在してもよい。また、光学的に透明な基材は、その上に励起源または検出器が位置し得る収束レンズまたは発散レンズのいずれかであってもよい。こうして、光は所望されるように集束または発散され得る。また、基材は部分的に透明であるか、または表面の粗さを有していてもよく、従って、光の拡散源として機能し得る。
【0048】
アッセイシステムは、サンプルが干渉区域内に流動した後、アッセイ検出区域に流動するように構成されてもよい。干渉区域は、流体サンプルのpHに影響を与えるための、または例えば界面活性剤で可溶化することによって、若しくは脂質結合剤と選択的に結合させることによって脂質などの特定種を除去若しくは可溶化するための1つ以上の薬剤を含んでもよい。
【0049】
アッセイシステムは、全血であり得る体液中の被験物濃度を測定する場合もある。血漿は、アッセイシステムのマイクロ流体分離システムによって凝集した赤血球から分離されたものであってもよい。
【0050】
アッセイシステムは使い捨てであってもよく、アッセイ結果を表示することができるメーターと組み合わせて使用するように設計されてもよい。メーターは、ディスプレイと、電源と、適切な回路とを含み得る。また、メーターは、光源と、検出器とを含み得る。あるいは、アッセイシステムおよびメーターは、使い捨てシステムと完全に一体化されていてもよい。アッセイシステムは、ランセットなどの流体採取および収集システムと一体化されてもよく、これにより、収集場所からアッセイシステムへサンプルを移動させることを避けることができる。
【0051】
本発明の更なる態様によれば、流体サンプル中に存在する細胞から流体サンプル媒体を分離する方法であって、本発明の第一の態様によるマイクロ流体分離システムに流体サンプルを適用することを含んでなる方法が提供される。
【0052】
100μl以下のサンプルが適用されてもよい。
【0053】
この方法は、全血中の赤血球から血漿を分離するためのものであってもよい。
【0054】
サンプルは、細胞凝集剤と混合された後に、マイクロ流体分離システムのマイクロ流体構造体に添加されてもよい。
【0055】
本発明の更なる態様によれば、流体サンプル中の被験物を検出する方法であって、本発明の第二の態様によるアッセイシステムに流体サンプルを適用することを含んでなる方法が提供される。
【0056】
サンプルは、細胞凝集剤と混合された後に、マイクロ流体分離システムのマイクロ流体構造体に添加されてもよい。
【0057】
本発明の各態様の好ましい特徴は、互いの態様に関して必要な変更を加えたものである。
【0058】
以下、添付の図面を参照し、本発明を例示目的でのみ説明する。
【0059】
本発明は、細胞からサンプル媒体を分離するためのマイクロ流体分離システム、サンプル中の被験物を検出および測定するための、および/またはサンプル中の被験物を測定するためのアッセイシステムに関する。
【0060】
マイクロ流体分離システム1が、図1に図示されている。システム1は、マイクロ流体構造体2と、細胞凝集剤(図示せず)とを含む。マイクロ流体構造体2は毛管路であることを特徴とする。毛管路は流路3を含む。流路3の寸法はその長さに沿って変化する。特に領域4では、流路は細くなり、10μm未満の寸法を有するサイズ排除空間を提供する。このサイズ排除空間は、凝集剤によって凝集された細胞が、この領域4の更に下流へと流動するのを防ぐように設計されている。凝集剤は、流路3内のサイズ排除空間の上流に備えることができ、またはサンプルがマイクロ流体構造体2に適用される前に、サンプルに適用してもよい。あるいは、サイズ排除空間の上流にある流路の1つ以上の表面上に凝集剤を固定化することもできる。流路は領域5で広くなり、細胞を含まないサンプル媒体が流入できるサンプル回収領域を提供する。このシステムはまた、流路3の上側表面を規定する蓋(図示せず)を備える。サンプルは、毛管力により毛管路を通って流動する。この流動を助けるために、毛管路の表面は親水性コーティングで被覆されている。
【0061】
添付図面の図2はアッセイシステム10を示す。システム10は、マイクロ流体分離システム12と、アッセイ検出区域18とを含む。システム10はまた、干渉区域14と、前処理区域16と、サンプル適用領域20とを含む。アッセイシステム10は、このシステムに適用されるサンプル中の被験物を検出するのに使用される。100μl未満のサンプルを領域20に適用することができ、その後、このサンプルは導管24を下ってマイクロ流体分離システム12に向かって流動する。導管24はマイクロ流路であることができ、そのレイノルズ数は3000未満、または100未満(毛管の場合)であり得る。サンプルは毛管作用によって消極的に流動するか、または差圧の印加によってシステム10まで積極的に流動する。アッセイシステム10は、サンプルが一方向に移動するように構成される。
【0062】
マイクロ流体分離システム12は、毛管路をであることを特徴とするマイクロ流体構造体13を含む。この構造体は、サイズ排除により、サンプル中に存在する細胞からサンプル媒体を分離するように構成される。サンプルが構造体13を通過する前に、サンプルはシステムの細胞凝集剤と混合されて細胞凝集が生じる。細胞凝集剤は、サンプルを領域20に適用する前にサンプルに添加することができる。あるいは、細胞凝集剤は、領域20内、または導管24内に備えることができる。細胞凝集剤は、領域20または導管24の少なくとも1つの表面上に備えることができる。
【0063】
マイクロ流体構造体13は、図3cおよび図4bにおいて最も良く図示される。図から明らかなように、導管24は、多数の流路26を有する毛管路に分かれる。流路26のそれぞれは、その長手方向側部に沿って、通路28の形状をなす更なる流路のそれぞれと流体連通しており、この通路28の深さは、各流路26のそれよりも浅い。通路28の深さは、サイズ排除により、細胞の凝集体はそこを通り抜けられないが、サンプル媒体は通り抜けられるように構成される。従って、通路の深さが、サイズ排除空間を提供する。流路26および通路28は、蓋22(図3cを参照)によって規定される上側表面を有する。
【0064】
通路28は、浅瀬部分を規定する段形成部30を備えることができる。これは図3dに図示される。段形成部30を設けることにより、プレフィルタとして作用する最初の通路の深さが提供され、サイズ排除空間を規定する段形成部30は、凝集した細胞からサンプル媒体を分離する主要なフィルタとして機能する。段形成部30はピラー形状または隆起した表面の形状をなし得る。
【0065】
流路26の深さはほぼ100μmである。通路28の深さはほぼ20μmであり、段形成部30によって付与される深さはほぼ10μmである。
【0066】
通路28内に流動した細胞媒体は、マイクロ流体構造体13内にある毛管路の回収領域29に向かって運ばれる。
【0067】
別のマイクロ流体分離システム34が、図5および図6に図示されるアッセイシステム32内に設けられている。図5aはシステム32の斜視図である。システム32は、干渉区域36と、前処理区域38と、アッセイシステム40と、サンプル適用領域42とを含む。
【0068】
マイクロ流体分離システム34は、凝集剤と、毛管路であることを特徴とするマイクロ流体構造体とを有する。毛管路は、第二の流路50と流体連通している第一の流路48を含む。ピラー46の形状をなす多数のマイクロ構造体は、流路48および50の間に設けられる。ピラー46は多数の空隙44を規定する。空隙44は、サンプル媒体はそこを通って流動し得るが、凝集した細胞は通ることができないようにされた大きさとされたものである。この空隙がサイズ排除空間である。第二の流路50は、前処理区域38への出口54を備える。システム10の場合と同じく、蓋52が設けられる。
【0069】
凝集剤は第一の流路48内に備えられ、流路の1つ以上の表面上に固定化されてもよい。あるいは、凝集剤は、サンプルが分離システム34のマイクロ流体構造体の毛管路内に流動する前にサンプルと接触する。
【0070】
流路48は流路50よりも深い。実際、流路48は100μmの深さを有し、流路50は10μm〜20μmの深さを有する。ピラー46によって規定された空隙は、ほぼ10μmである。
【0071】
マイクロ流体システム10の場合と同じく、このシステムは、積極的に(例えば、差圧または動電ポンプ作用を用いて)、または消極的に(毛管作用および表面張力により)動作することができる。
【0072】
上述のマイクロ流体分離システム1、12、34は、全血中の赤血球から血漿を分離するのに使用することができる。この例において、適用後の全血サンプルは、分離システム1、12、34の各マイクロ流体構造体に向かって流動する。赤血球凝集剤は、システム1、12、34のマイクロ流体構造体の上流に備えられる。あるいは、凝集剤は、システム1、12、34のマイクロ流体構造体内に備えられ、1つ以上のサイズ排除空間の上流の1つ以上の表面上に固定化されてもよい。システム1、12、34のマイクロ流体構造体は、サイズ排除により、凝集した赤血球から血漿を分離するように構成される。これら構造体内に規定されたサイズ排除空間は、血漿がそこを通って流動することを可能とする。
【0073】
アッセイシステム10、32はまた、50μl以下のサンプル中の被験物を検出および測定するための均質なアッセイ/検出システム24、40を含む。アッセイシステムの例が図7aおよび図7bに図示される。このシステムは、ラテックス凝集反応および化学発光シグナルの組み合わせに基づく。この点において、被験物分子は2つのビーズを引き寄せ、化学反応のカスケードを生成して大幅にシグナルを増幅し、結果として、原理的には被験物のアトモル(attomolar)濃度が検出され得る。このシステムは、高効率な光捕捉検出チャンバ内で行われる高感度の均質な免疫アッセイを提供する。アッセイ構成要素によるサンプルのインキュベーションは、タイムゲート構造を通して達成される。
【0074】
図7aおよび図7bに図示されるアッセイは、発光酸素チャネリング免疫アッセイである。より詳細には、溶解したフタロシアニンを含有する光増感剤粒子(ドナー粒子)は、図7aに示されるように、波長680nmの光で照射されると一重項酸素を生成させる。生成した一重項酸素は、約4マイクロ秒という非常に短い半減期を有し、故に、急激に崩壊して粉砕状態になる。従って、一重項酸素は、崩壊して粉砕状態になる前に、粒子表面から数百ミクロンの距離までしか拡散することができない。しかしながら、一重項酸素は、図7bに示されるように、隣接する粒子対に入り込むのに十分なほど長く生存し得る。隣接する粒子対(アクセプタ粒子)は、溶解した染料を含有し、この溶解染料が受容された一重項酸素によって活性化され、化学発光を生じる。この化学発光は同一ビーズ内に含有された更なる蛍光体を活性化し、次いで520μm〜620μmの発光を引き起こす。試薬は、最適化された幾何学形状および低光吸収度を有するウェル内で凍結乾燥され、これにより最大励起および光捕捉効率が確保される。ドナーおよびアクセプタ粒子は、粒子表面上に存在する抗体を通して被験物を認識することができ、それにより、粒子は被験物によって引き寄せられる。
【0075】
アッセイの検出感度は、図8および図9に示す2つの方法で測定された。図8に示す384ウェルマイクロタイタープレートにおける第一の実験により、ユニビーズの総数とアッセイ出力シグナルとの間には線形挙動があることが証明された。ユニビーズは、アクセプタ粒子およびドナー粒子の両方を包含する予め結合された単一ビーズである。従って、一重項酸素の移動の量子効率は、粒子が近接しているので無視できる。この実験において、ビーズの総数は、100〜100000の間で変更した。
【0076】
図9において、最終的なチップ構成で使用されると思われる2μlまで容量を減らすと、濃度が低下するにつれ、シグナルは横這いになることが分かる。これは、ユニビーズの自動蛍光発光に起因する。確実に検出できる最小粒子数は、2μlのサンプルではおよそ400である。図10に示すアッセイを展開すると、25μlのアッセイ容量で384マイクロタイタープレートを使用するビオチン化−DIGアッセイから得られた標準曲線が得られた。
【0077】
高感度で均質なアッセイが、マイクロ流体システムを基にして首尾よく設計および製造された。このアッセイは、マイクロタイタープレートからチップフォーマットまで首尾よく移送されて、用量反応曲線を生成し、それにより2μlの血漿中に1.6x10−10モルの被験物が検出できた。
【0078】
アッセイシステムは、必ずしも発光酸素チャネリング免疫アッセイの形をとる必要はない。
【0079】
上述のように、アッセイシステム10、32はまた、検出区域18、40での結合相互作用、またはシグナル生成および検出に干渉し得る分子の固相抽出のための干渉区域14、36を含む。干渉区域14、36は、サンプルが細胞分離システム12、34に直面する前、またはサンプルがアッセイ検出区域25、41内に流動する前に設けられてもよい。区域14、36は、サンプル由来の分子を中和または除去するための多数の薬剤を含む。干渉区域14、36はタイムゲート化され、完全に処理されたサンプルだけがアッセイシステム18、40内に流動することを保証する。
【実施例】
【0080】
人間の患者から採取した全血サンプル(45%ヘマトクリット)をEDTAチューブに流し込み、4μlの血液サンプルを、リン酸緩衝溶液(PBS)に5mgs/mlの濃度で溶解したレクチンPHA−E(Sigma)2μlと1:1の割合で混合した。次いで、このサンプルを室温で1分間インキュベートし、図2、図3および図4に関して先に述べたマイクロ流体分離システムへ適用する前に、赤血球を凝集させた。
【0081】
導管24は、200μm(幅)×100μm(高さ)の寸法を有する。システムは、ベース基材を射出成形して、装置並びにマイクロ流体要素の基部または下部を形成し、次いで一体形の射出成形基材をベース基材に超音波溶接してシステムの蓋または上側表面を形成することによって、ポリカーボネート基材から作製された。組み立てる前に、基材を酸素プラズマで処理して、表面を親水性にした。表面の親水性度を測定し、表面接触角度は20度であることが見出された。
【0082】
流体サンプル(4μl)をサンプル適用領域20に適用し、次いでマイクロ流体構造体13に向かって移動させた。凝集した細胞はマイクロ流体構造体を実質的に通過することができず、結果として、凝集した赤血球から血漿/バッファろ液が分離された。
【0083】
抽出された血漿/バッファの総量は、10分未満の時間では200nlであった。血漿分離効率は、利用可能な血漿の総量の11%として計算された。
【0084】
本発明の各態様の好ましい特徴は、互いの態様に関して必要な変更を加えたものである。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、本発明によるマイクロ流体分離システムを示す。
【図2】図2は、本発明によるマイクロ流体分離システムを組み込んだ本発明によるアッセイを示す。
【図3】図3は、図2のアッセイシステムを更に図示している。図3aはこのシステムの平面図である。図3bは図3aの線X−Xに沿って切り取った断面図である。図3cは図3bの領域Aの拡大図である。図3dは図3cの領域Bの拡大図である。
【図4】図4は、図2および図3のアッセイシステムにおけるマイクロ流体分離システムを更に図示している。図4aはこのシステムの斜視図である。図4bは領域Aの拡大図であり、このマイクロ構造を示している。
【図5】図5は、別のマイクロ流体分離システムが設けられた更なるアッセイシステムを図示している。図5aはこのアッセイシステムの斜視図である。図5bは領域Aの拡大図であり、この分離システムを示している。
【図6】図6は、図5の代替分離システムを更に図示するものである。図6aは図5のアッセイシステムの平面図である。図6bは図6aの線X−Xに沿って切り取った断面図である。図6cは図6bの領域Aの拡大図である。図6dは図6aの領域Bの拡大図であり、この分離システムを示している。
【図7】図7aおよび図7bは、アッセイシステムを示す。
【図8】図8は、アッセイシステムの感度を示す。
【図9】図9もまた、アッセイシステムの感度を示す。
【図10】図10は、アッセイシステムに関する標準曲線を示す。
【発明の背景】
【0001】
本発明は、流体サンプルから粒子を分離するためのマイクロ流体分離システム、ならびに流体サンプル中の被験物の量および/または存在を検出するための、若しくは流体サンプルの特性を決定するためのアッセイシステムに関する。特に、本発明は、サンプルからの細胞の分離、例えば、全血サンプルからの赤血球の分離に関する。
【0002】
流体サンプル中に存在する被験物の存在および/または量を測定するための診断アッセイ装置は、治療時に、または家庭環境で使用するために開発されてきた。このような装置は、医療の専門職によって使用され、あるいは、自己管理のために患者が使用するなど、専門家ではない個人によっても同様に使用され得る。従って、このような装置は、使い易く、必要となる流体サンプルが少量であり、迅速に測定を行うように設計される。少量のサンプルが望ましいのは、例えば、ランセットまたはフィンガースティックを皮膚に適用することによって毛細血管の血液サンプルを得る時、患者から採取するのにあまり痛みを伴わないからである。典型的には、この装置は1ステップ装置であるので、使用者は更なるサンプル操作工程を行う必要なく、単に流体サンプルを装置に適用するだけで結果が得られる。このようなシステムは、典型的には持ち運び可能であり、最小限の移動部を有するか、または全く有さない。典型的には、流体サンプルを装置内で積極的に移動させる必要なく、毛管作用により装置内におよび/または装置を通ってサンプルを移動させるために、マイクロ流体流路または多孔性担体が使用される。
【0003】
流体サンプルに対して診断アッセイ測定を行う場合、アッセイに干渉するかもしれない構成成分をサンプルから除去することが望ましいか、または必要な場合がある。例えば、試験計画が血漿サンプルを必要とする場合、全血から赤血球を除去することが必要な場合がある。赤血球はまた、例えば特定波長の光を吸収することにより、アッセイ測定に干渉することもある。従来より、赤血球は、遠心分離によって、または赤血球を沈殿させることによって全血から除去される。しかしながら、このような方法は、典型的には100μlから1μl未満までの容量の流体サンプルに対する診断アッセイを迅速に行うという目的には不適切である。
【0004】
流体媒体からの粒子の分離は、適切な孔径を有する不織布などのフィルタを使用することによって行うことができる。しかしながら、このような装置の使用は、フィルタが閉塞し、結果として血漿ろ液の収量が低くなるという傾向があるため、全血から赤血球を分離する目的には不適切である。また、血漿回収のための時間が増大する。これは、毛管力のみに依存して流体サンプルの移送を行うマイクロ流体装置などの流動システムにおいては明らかに不利である。
【0005】
従って、少量のサンプルを高い収量レベルで迅速に分離する分離システムへの希求が存在する。
【発明の開示】
【0006】
本発明の第一の態様によれば、サンプル中に存在する細胞から流体サンプル媒体を分離するためのマイクロ流体分離システムが提供され、このシステムはマイクロ流体構造体と細胞凝集剤とを含んでなり、このマイクロ流体構造体は、凝集した細胞を流体サンプル媒体からサイズ排除(篩い分け)により分離する1つ以上のマイクロ流体流路を含むものである。
【0007】
凝集剤という用語は、細胞の凝集および/または凝集反応(agglutination)を引き起こし得るあらゆる薬剤、並びに赤血球などの細胞のロゼット形成を引き起こし得る薬剤および/または赤血球などの細胞における連銭形成を促進し得る薬剤を包含するものとする。
【0008】
凝集剤を備えることにより、サンプル中の細胞が凝集し、故に細胞からのサンプル媒体の分離を助ける。凝集剤は、マイクロ流体構造体に隣接して、またはそれから離れて備えられてもよい。凝集剤は、マイクロ流体システムの内側表面から流体サンプルへの凝集剤の放出を助ける試薬と混合されてもよい。複数の凝集剤が備えられてもよい。
【0009】
マイクロ流体構造体は、凝集した細胞がサンプル媒体から濾別されることを可能にする1つ以上のサイズ排除空間を有するサイズ排除要素とされてよい。サイズ排除空間により、マイクロ流体流路は流体サンプル媒体から凝集した細胞を分離することができる。排除用空間のサイズは、凝集した細胞をサンプル媒体から分離するか、または実質的に分離することができるあらゆる好適なサイズから選択してもよく、システムの寸法、凝集剤が流体サンプルと相互作用する時間、およびサンプル自身の性質に応じて決定される。排除用空間の好適なサイズは常套の実験により決定することができる。排除用空間の最適なサイズは、凝集体の分離効率に基づいて決定することができ、また、最も簡単には常套の実験により決定される。複数のサイズ排除空間を使用する場合、それらのサイズは同一であっても、異なっていてもよい。排除用空間の上限は、凝集体のサイズに応じて決定され、下限は分離の速度および効率によって決定される。
【0010】
マイクロ流体構造体は毛管路であることを特徴とされてよい。毛管路は、流体サンプル媒体から凝集した細胞を分離するための1つ以上のサイズ排除空間として特徴付けられる。
【0011】
マイクロ流体構造体の1つ以上のマイクロ流体流路の寸法は、サイズ排除空間に相当し得る。1つ以上のマイクロ流体流路の寸法は、サイズ排除空間を規定するために変化してもよい。1つ以上のマイクロ流体流路は、寸法の異なるまたは変化する他のマイクロ流体流路と流体連通していてもよい。
【0012】
マイクロ流体構造体は、少なくとも一つの第一のマイクロ流体流路を含んでもよく、この少なくとも一つの第一の流路は延長された側壁を有する基部を有し、この流路の深さ未満の深さを有する1つ以上の通路とその長手方向側部に沿って流体連通しており、この通路の深さはサイズ排除空間を規定する。
【0013】
サイズ排除空間を規定する通路の深さは、サンプル媒体が第一の流路から通路内へと通過することを可能とするものである。従って、サイズ排除により、凝集した細胞をサンプル媒体から分離することができる。
【0014】
前記または各通路は、更なるマイクロ流体流路と更なる流体連通をなしていてもよい。従って、そのまたは各通路は、第一の流路と更なる流路との間の接続領域として機能してもよく、この通路がサイズ排除空間を規定する。この通路は、サイズ排除空間を変化させるための1つ以上の段形成部を備えてもよい。そのまたは各段形成部は、サイズ排除空間を通路に付与してもよい。
【0015】
前記通路および/または更なる流路は、サンプル媒体回収領域と流体連通していてもよく、凝集した細胞から分離されたサンプル媒体は前記回収領域へと流動する。回収領域は、更なる導管であってもよいし、マイクロ流体構造体内のチャンバを構成してもよい。
【0016】
あるいは、毛管路は1つ以上のマイクロ流体流路を含んでもよく、このマイクロ流体流路には、所望のサイズ排除空間に相当する空隙を規定する1つ以上のマイクロ構造体が設けられる。マイクロ構造体は、凝集した細胞をサンプルから分離するように構成することができる。マイクロ構造体は、約1μm〜約50μmの範囲のサイズ排除空間を規定し得る。複数のマイクロ構造体群は、同一サイズまたは異なるサイズで設けられてもよく、互いに対していかなる特定の構成で配置されていてもよい。各群は、他の群と異なるサイズ排除空間を規定してもよい。マイクロ構造体の群は、サンプルがより大きいサイズ排除空間を規定する群を通って流動した後に、より小さいサイズ排除空間を有する1つ以上の群を通って流動するように順序付けされた構成であってもよく、ここでサンプル媒体は凝集した細胞から分離される。回収領域は、マイクロ構造体の下流に設けられてもよく、サンプル媒体はサイズ排除空間を通って流動して分離された後に回収領域へと流動する。
【0017】
マイクロ構造体は、溝付き表面の形状、ピラー形状、またはサイズ排除空間を規定するいかなる形状であってもよい。
【0018】
毛管路内のサイズ排除空間の寸法は、約50μm以下、約40μm以下、約30μm以下、約20μm以下、約15μm以下、約10μm以下、約5μm以下であってもよく、または約2μm以下であってもよい。
【0019】
毛管路は、蛇行路を規定してもよい。
【0020】
システムは、更に、マイクロ流体構造体と流体連通して該マイクロ流体構造体にサンプルを供給する導管を含んでもよい。供給導管はまた、凝集剤をマイクロ流体構造に供給してもよい。凝集剤は、導管の1つ以上の表面上、および/またはサイズ排除空間の上流にあるマイクロ流体構造体の毛管路の1つ以上の表面に備えられてもよい。
【0021】
導管のレイノルズ数は3000未満とすることができる。あるいは、導管のレイノルズ数は100未満であってもよい。導管は、好ましくは毛管である。レイノルズ数は、以下の式を用いて計算することができる。
【0022】
【数1】
【0023】
式中、Reはレイノルズ数であり、ρは流体密度であり、Vは流速であり、dは長さスケールであり、ηは動態密度である。レイノルズ数が2000以下であると、導管(マイクロ構造体またはマイクロ流路であると考えてもよい)は表面張力(毛管現象)のみによって消極的に充填される。
【0024】
サンプルは導管に適用されてもよい。サンプルは、導管と流体接続しているサンプル入口を介して適用されてもよい。
【0025】
好適な凝集剤の非限定的な例は、赤血球の凝集を引き起こすものであり、例えばデキストランなどである。あるいは、レクチンなどの凝集剤は、赤血球の凝集反応を引き起こす場合もある。更なる代替として、凝集剤は、赤血球に対する1つ以上の抗体を含んでもよい。あるいは、凝集剤は、赤血球のロゼット形成を促進してもよく、または赤血球における連銭形成を促進してもよい。
【0026】
マイクロ流体システムは、内部マイクロ構造体、タイムゲート、流体混合チャンバ、サンプル収集チャンバ、ウェル、流路、バッフル、狭窄部、サンプル適用口などの更なるマイクロ流体要素を含んでもよい。マイクロ流体要素は、規則的な、または不規則な形状のものであってもよく、同一平面内または異なる平面内にあってもよい。マイクロ流体流路は、その長さに沿って変化する毛管寸法を有するものであってもよく、異なるまたは変化する毛管寸法を有する他のマイクロ流体要素と流体連通していてもよい。
【0027】
サンプルがサイズ排除空間に到達する前に凝集剤と相互作用させられる時間は、例えば、システム内の何処に凝集剤が位置しているか、上流の流体導管の寸法、およびサンプルが流体導管に沿って移動する速度に影響される場合もある。必要である場合、凝集剤が十分に長い時間流体サンプルと相互作用することを保証する手段を設けてもよく、これは例えば、供給導管とサイズ排除空間との間を流体サンプルが通過する速度を低下させる役割を果たすチャンバまたはタイムゲートである。
【0028】
マイクロ流体構造体要素の典型的な寸法は、0.1μm〜500μmの断面寸法(例えば、断面直径)を有するものであり、より典型的には1μm〜100μmの断面寸法を有するものである。好ましくは、断面寸法は、流体が毛管作用によりシステムの様々な要素に沿って、それらを通ってまたはそれらの中に移送されることが可能となるサイズであるように選択される。代替として、または更に、流体は動電ポンプ作用によるなど、外力によってシステムの1つ以上の要素を通って移送されてもよい。このような場合、断面寸法は毛管寸法を超えてもよい。
【0029】
システムを作製するための基材は、ポリカーボネートなどのいかなる好適な材料であってもよい。基材が疎水性である場合、当技術分野において既知の方法、例えば酸素プラズマ処理などにより、その表面を処理して親水性にしてもよい。親水性表面を付与することに加え、他の種類の試薬は、内側表面上に固定されるか、またはそれ以外の方法で備えられてもよい。
【0030】
システムは、例えば、構造体内のマイクロ流体流路の深さを規定する役割を果たす壁がその上に設けられる第一の平面基材層を提供し、次いでその壁の上側表面上に配置される第二の平面基材層を提供することによって作製することができる。接着剤などの好適な接着手段を使用して、様々な構造体を適宜接合することができる。構造体を作製する他の手段は、例えばスクリーン印刷、またはシステムの上側表面および下側表面としての役割を果たす上側積層表面および下側積層表面を有する多積層システム、並びにマイクロ流体構造体の要素を規定する役割を果たす構造を有する中間積層体の提供などである。
【0031】
分離されるべき流体サンプル媒体は、好ましくは全血である。従って、システムは、凝集した赤血球のサンプル媒体からの分離を可能にするものとすることができる。
【0032】
マイクロ流体分離システムは使い捨てであってもよい。
【0033】
本発明の第二の態様によれば、流体サンプルに対してアッセイを行うためのアッセイシステムであって、被験物検出区域と流体連通している第一の態様によるマイクロ流体分離システムを含んでなるアッセイシステムが提供される。
【0034】
このアッセイシステムは、分離システムのマイクロ流体構造体と流体接続している、流体サンプルを適用するためのサンプル入口を含んでもよい。検出区域は、マイクロ流体構造体の下流に設けられてもよく、流体サンプルは、分離後に、マイクロ流体構造体からこの検出区域内に流動し得る。目的の被験物に対して特異的または非特異的な試薬がアッセイシステム内に備えられてもよく、検出区域の内側表面上に備えられてもよい。アッセイシステムは、更に、アッセイシステム内での結合相互作用、またはシグナル生成および検出に干渉し得るサンプル由来の分子を中和または除去する役割を果たす干渉区域を含んでもよい。アッセイシステム内には、他の区域の1つ以上と流体連通する更に別の区域が設けられてもよく、これには洗浄区域、タイムゲート、事前混合区域、反応区域などが含まれる。
【0035】
アッセイは、目的の被験物の存在および/または量を判別することができるあらゆるものから選択され得る。アッセイは、特異的結合事象が特異的な結合対の間で起こる特異的結合アッセイなどの結合アッセイであってもよく、この結合対の一方は目的の被験物であり、他方は分子の特定の空間的配向または極性配向、例えば、エピトープ性部位または決定基部位を認識することができるあらゆる化合物または組成物から選択される。好適な結合対の例は、抗体と抗原、ビオチンとアビジン、炭水化物とレクチン、相補的なヌクレオチド配列、相補的なペプチド配列、エフェクタとレセプタ分子、酵素補因子と酵素、酵素阻害剤と酵素、ペプチド配列とこの配列またはタンパク質全体に特異的な抗体、ポリマー性の酸と塩基、染料とタンパク質結合剤、ペプチドと特異的タンパク質結合剤などである。結合パートナーが抗体である場合、この抗体はモノクローン性またはポリクローン性であってよく、またはその断片であってもよい。その断片としては、Fab、FvおよびF(ab’)2、Fab’などが挙げられる。アッセイは、被験物と酵素との間で起こる特異的反応を伴うものとしてもよく、好適な酵素は、FAD/FADH2、NAD/NADH2またはNADP/NADPH2系を用いるものである。
【0036】
特異的結合対の一方は、検出可能な標識を備えてもよい。「標識」とは、視覚的手段または器具を用いた手段によって検出可能なシグナルを生成することができるあらゆる物質を指す。好適な標識の例としては、酵素および基質、色原体、触媒、蛍光化合物、化学発光化合物、放射性標識、ならびに、金などの粒状コロイド金属粒子、またはポリウレタンなどの粒状の染色された有機物質が挙げられる。
【0037】
結合アッセイは、不均質であるか、または均質であるかのいずれであってもよい。
【0038】
アッセイが均質である場合、特異的結合パートナーに付される標識は、結合して特異的結合対が形成されると、ある検出可能な物理的変化または化学的変化を受け、結果として結合種を未結合種から区別可能とするものであることが望ましい。エネルギー移動を伴うか、または波長の変化を生じるこのような結合アッセイの例は、米国特許第5,705,622号および米国特許第6,215,560号に記載されている。
【0039】
目的のサンプル媒体は全血であってもよいが、白血球など、凝集剤によって凝集され得る粒状物質の分離が必要とされる場合、いかなるサンプル媒体から選択されてもよい。
【0040】
目的の被験物としては、これらに制限されるものではないが、トキシン、有機化合物、タンパク質、ペプチド、微生物、細菌、ウィルス、アミノ酸、核酸、炭水化物、ホルモン、ステロイド、ビタミン、乱用薬物、汚染物質、殺虫剤、および上述の物質のいずれかの代謝産物またはそれに対する抗体が挙げられる。その具体例は、トロポニンTおよびトロポニンI、CKMB、C反応性タンパク質(CRP)、ANPおよびBNPなどのナトリウム排出ペプチドならびにそれらのN末端断片を含む特異的心臓マーカーである。他の目的の被験物としては、ヒト絨毛膜ゴナドトロピン(hCG)、黄体ホルモン(LH)および卵胞刺激ホルモン(FSH)、並びに骨吸収のマーカーが挙げられる。
【0041】
アッセイは結合アッセイであってもよく、このアッセイは発光を有し、発光酸素チャネリング免疫アッセイであってもよい。このような免疫アッセイは以下のものを含み得る:
a.光で照射されると一重項酸素を生成することができるドナー粒子;
b.一重項酸素により活性化され、検出可能な光を放出する放出手段を含有するアクセプタ粒子;
c.前記ドナーおよびアクセプタ粒子が、被験物を認識し、それに結合するように適合されており、ドナー粒子およびアクセプタ粒子の両方が被験物に結合すると、生成された一重項酸素がアクセプタ粒子上の放出手段を活性化し、検出可能な光を放出し;および
d.アクセプタ粒子によって放出された光を検出する検出器。
【0042】
ドナー粒子およびアクセプタ粒子は、粒子表面上に存在する抗体を通して被験物を認識する。放出手段は、一重項酸素により活性化されて化学発光を生成することができる溶解染料を含む。化学発光は、アクセプタ粒子内の蛍光体を活性化し、発光を引き起こす。光は520nm〜620nmで放出され得る。一重項酸素は、波長680nmの光で照射されると放出され得る。ドナー粒子は溶解フタロシアニンを含んでもよく、このフタロシアニンは照射されると一重項酸素を生成する。
【0043】
アッセイシステムは、更に伝達システムを含んでもよい。伝達システムは、光学的、磁気的、電気化学的、放射線学的であってもよく、または検出すべき目的のシグナルに応じて、質量、周波数若しくはエネルギー状態の変化の測定を伴ってもよい。シグナルが光学的なものである場合、このシグナルはいかなる特定の検出可能な波長または波長域のものであってもよく、蛍光および化学発光シグナルが含まれる。
【0044】
あるいは、または更に、アッセイシステムは、凝固時間またはプロトロンビン時間などの流体サンプルの特定的な特性を測定するために使用され得る。
【0045】
検出区域は、マイクロ流体流路を含んでもよく、またはウェルを含んでもよい。検出手段は、検出区域の一体部分として設けられてもよい。また、励起手段もこの区域の一部として一体的に設けられてもよい。励起手段および検出手段の例は、それぞれ発光ダイオードおよび光検出器である。1つ以上の検出区域並びに1つ以上の励起および検出器手段がある場合もある。検出器手段および励起手段は、便利なサイズおよび形状となるように選択されてもよく、好ましくは、測定すべきシグナルの捕捉効率が最大となるように選択される。励起手段および検出器手段は、典型的には、検出区域付近の流体サンプルに対して外側の表面上に配置される。
【0046】
検出区域の基材は、目的に応じてあらゆる好適な材料または材料群から選択されてもよい。好適な基材の例は、ポリカーボネートなどのプラスチック類である。検出すべきシグナルが光学シグナルである場合の検出区域の領域では、基材は、光学シグナルを送出することができるもの、例えば光学的に透明である好適なプラスチック材料などから選択されてもよい。
【0047】
更に、またはあるいは、望ましくない波長の光を除去するために、プラスチック材料にフィルタを組み込んでもよい。更なる代替として、フィルタはアッセイ基材の表面上に存在してもよい。また、光学的に透明な基材は、その上に励起源または検出器が位置し得る収束レンズまたは発散レンズのいずれかであってもよい。こうして、光は所望されるように集束または発散され得る。また、基材は部分的に透明であるか、または表面の粗さを有していてもよく、従って、光の拡散源として機能し得る。
【0048】
アッセイシステムは、サンプルが干渉区域内に流動した後、アッセイ検出区域に流動するように構成されてもよい。干渉区域は、流体サンプルのpHに影響を与えるための、または例えば界面活性剤で可溶化することによって、若しくは脂質結合剤と選択的に結合させることによって脂質などの特定種を除去若しくは可溶化するための1つ以上の薬剤を含んでもよい。
【0049】
アッセイシステムは、全血であり得る体液中の被験物濃度を測定する場合もある。血漿は、アッセイシステムのマイクロ流体分離システムによって凝集した赤血球から分離されたものであってもよい。
【0050】
アッセイシステムは使い捨てであってもよく、アッセイ結果を表示することができるメーターと組み合わせて使用するように設計されてもよい。メーターは、ディスプレイと、電源と、適切な回路とを含み得る。また、メーターは、光源と、検出器とを含み得る。あるいは、アッセイシステムおよびメーターは、使い捨てシステムと完全に一体化されていてもよい。アッセイシステムは、ランセットなどの流体採取および収集システムと一体化されてもよく、これにより、収集場所からアッセイシステムへサンプルを移動させることを避けることができる。
【0051】
本発明の更なる態様によれば、流体サンプル中に存在する細胞から流体サンプル媒体を分離する方法であって、本発明の第一の態様によるマイクロ流体分離システムに流体サンプルを適用することを含んでなる方法が提供される。
【0052】
100μl以下のサンプルが適用されてもよい。
【0053】
この方法は、全血中の赤血球から血漿を分離するためのものであってもよい。
【0054】
サンプルは、細胞凝集剤と混合された後に、マイクロ流体分離システムのマイクロ流体構造体に添加されてもよい。
【0055】
本発明の更なる態様によれば、流体サンプル中の被験物を検出する方法であって、本発明の第二の態様によるアッセイシステムに流体サンプルを適用することを含んでなる方法が提供される。
【0056】
サンプルは、細胞凝集剤と混合された後に、マイクロ流体分離システムのマイクロ流体構造体に添加されてもよい。
【0057】
本発明の各態様の好ましい特徴は、互いの態様に関して必要な変更を加えたものである。
【0058】
以下、添付の図面を参照し、本発明を例示目的でのみ説明する。
【0059】
本発明は、細胞からサンプル媒体を分離するためのマイクロ流体分離システム、サンプル中の被験物を検出および測定するための、および/またはサンプル中の被験物を測定するためのアッセイシステムに関する。
【0060】
マイクロ流体分離システム1が、図1に図示されている。システム1は、マイクロ流体構造体2と、細胞凝集剤(図示せず)とを含む。マイクロ流体構造体2は毛管路であることを特徴とする。毛管路は流路3を含む。流路3の寸法はその長さに沿って変化する。特に領域4では、流路は細くなり、10μm未満の寸法を有するサイズ排除空間を提供する。このサイズ排除空間は、凝集剤によって凝集された細胞が、この領域4の更に下流へと流動するのを防ぐように設計されている。凝集剤は、流路3内のサイズ排除空間の上流に備えることができ、またはサンプルがマイクロ流体構造体2に適用される前に、サンプルに適用してもよい。あるいは、サイズ排除空間の上流にある流路の1つ以上の表面上に凝集剤を固定化することもできる。流路は領域5で広くなり、細胞を含まないサンプル媒体が流入できるサンプル回収領域を提供する。このシステムはまた、流路3の上側表面を規定する蓋(図示せず)を備える。サンプルは、毛管力により毛管路を通って流動する。この流動を助けるために、毛管路の表面は親水性コーティングで被覆されている。
【0061】
添付図面の図2はアッセイシステム10を示す。システム10は、マイクロ流体分離システム12と、アッセイ検出区域18とを含む。システム10はまた、干渉区域14と、前処理区域16と、サンプル適用領域20とを含む。アッセイシステム10は、このシステムに適用されるサンプル中の被験物を検出するのに使用される。100μl未満のサンプルを領域20に適用することができ、その後、このサンプルは導管24を下ってマイクロ流体分離システム12に向かって流動する。導管24はマイクロ流路であることができ、そのレイノルズ数は3000未満、または100未満(毛管の場合)であり得る。サンプルは毛管作用によって消極的に流動するか、または差圧の印加によってシステム10まで積極的に流動する。アッセイシステム10は、サンプルが一方向に移動するように構成される。
【0062】
マイクロ流体分離システム12は、毛管路をであることを特徴とするマイクロ流体構造体13を含む。この構造体は、サイズ排除により、サンプル中に存在する細胞からサンプル媒体を分離するように構成される。サンプルが構造体13を通過する前に、サンプルはシステムの細胞凝集剤と混合されて細胞凝集が生じる。細胞凝集剤は、サンプルを領域20に適用する前にサンプルに添加することができる。あるいは、細胞凝集剤は、領域20内、または導管24内に備えることができる。細胞凝集剤は、領域20または導管24の少なくとも1つの表面上に備えることができる。
【0063】
マイクロ流体構造体13は、図3cおよび図4bにおいて最も良く図示される。図から明らかなように、導管24は、多数の流路26を有する毛管路に分かれる。流路26のそれぞれは、その長手方向側部に沿って、通路28の形状をなす更なる流路のそれぞれと流体連通しており、この通路28の深さは、各流路26のそれよりも浅い。通路28の深さは、サイズ排除により、細胞の凝集体はそこを通り抜けられないが、サンプル媒体は通り抜けられるように構成される。従って、通路の深さが、サイズ排除空間を提供する。流路26および通路28は、蓋22(図3cを参照)によって規定される上側表面を有する。
【0064】
通路28は、浅瀬部分を規定する段形成部30を備えることができる。これは図3dに図示される。段形成部30を設けることにより、プレフィルタとして作用する最初の通路の深さが提供され、サイズ排除空間を規定する段形成部30は、凝集した細胞からサンプル媒体を分離する主要なフィルタとして機能する。段形成部30はピラー形状または隆起した表面の形状をなし得る。
【0065】
流路26の深さはほぼ100μmである。通路28の深さはほぼ20μmであり、段形成部30によって付与される深さはほぼ10μmである。
【0066】
通路28内に流動した細胞媒体は、マイクロ流体構造体13内にある毛管路の回収領域29に向かって運ばれる。
【0067】
別のマイクロ流体分離システム34が、図5および図6に図示されるアッセイシステム32内に設けられている。図5aはシステム32の斜視図である。システム32は、干渉区域36と、前処理区域38と、アッセイシステム40と、サンプル適用領域42とを含む。
【0068】
マイクロ流体分離システム34は、凝集剤と、毛管路であることを特徴とするマイクロ流体構造体とを有する。毛管路は、第二の流路50と流体連通している第一の流路48を含む。ピラー46の形状をなす多数のマイクロ構造体は、流路48および50の間に設けられる。ピラー46は多数の空隙44を規定する。空隙44は、サンプル媒体はそこを通って流動し得るが、凝集した細胞は通ることができないようにされた大きさとされたものである。この空隙がサイズ排除空間である。第二の流路50は、前処理区域38への出口54を備える。システム10の場合と同じく、蓋52が設けられる。
【0069】
凝集剤は第一の流路48内に備えられ、流路の1つ以上の表面上に固定化されてもよい。あるいは、凝集剤は、サンプルが分離システム34のマイクロ流体構造体の毛管路内に流動する前にサンプルと接触する。
【0070】
流路48は流路50よりも深い。実際、流路48は100μmの深さを有し、流路50は10μm〜20μmの深さを有する。ピラー46によって規定された空隙は、ほぼ10μmである。
【0071】
マイクロ流体システム10の場合と同じく、このシステムは、積極的に(例えば、差圧または動電ポンプ作用を用いて)、または消極的に(毛管作用および表面張力により)動作することができる。
【0072】
上述のマイクロ流体分離システム1、12、34は、全血中の赤血球から血漿を分離するのに使用することができる。この例において、適用後の全血サンプルは、分離システム1、12、34の各マイクロ流体構造体に向かって流動する。赤血球凝集剤は、システム1、12、34のマイクロ流体構造体の上流に備えられる。あるいは、凝集剤は、システム1、12、34のマイクロ流体構造体内に備えられ、1つ以上のサイズ排除空間の上流の1つ以上の表面上に固定化されてもよい。システム1、12、34のマイクロ流体構造体は、サイズ排除により、凝集した赤血球から血漿を分離するように構成される。これら構造体内に規定されたサイズ排除空間は、血漿がそこを通って流動することを可能とする。
【0073】
アッセイシステム10、32はまた、50μl以下のサンプル中の被験物を検出および測定するための均質なアッセイ/検出システム24、40を含む。アッセイシステムの例が図7aおよび図7bに図示される。このシステムは、ラテックス凝集反応および化学発光シグナルの組み合わせに基づく。この点において、被験物分子は2つのビーズを引き寄せ、化学反応のカスケードを生成して大幅にシグナルを増幅し、結果として、原理的には被験物のアトモル(attomolar)濃度が検出され得る。このシステムは、高効率な光捕捉検出チャンバ内で行われる高感度の均質な免疫アッセイを提供する。アッセイ構成要素によるサンプルのインキュベーションは、タイムゲート構造を通して達成される。
【0074】
図7aおよび図7bに図示されるアッセイは、発光酸素チャネリング免疫アッセイである。より詳細には、溶解したフタロシアニンを含有する光増感剤粒子(ドナー粒子)は、図7aに示されるように、波長680nmの光で照射されると一重項酸素を生成させる。生成した一重項酸素は、約4マイクロ秒という非常に短い半減期を有し、故に、急激に崩壊して粉砕状態になる。従って、一重項酸素は、崩壊して粉砕状態になる前に、粒子表面から数百ミクロンの距離までしか拡散することができない。しかしながら、一重項酸素は、図7bに示されるように、隣接する粒子対に入り込むのに十分なほど長く生存し得る。隣接する粒子対(アクセプタ粒子)は、溶解した染料を含有し、この溶解染料が受容された一重項酸素によって活性化され、化学発光を生じる。この化学発光は同一ビーズ内に含有された更なる蛍光体を活性化し、次いで520μm〜620μmの発光を引き起こす。試薬は、最適化された幾何学形状および低光吸収度を有するウェル内で凍結乾燥され、これにより最大励起および光捕捉効率が確保される。ドナーおよびアクセプタ粒子は、粒子表面上に存在する抗体を通して被験物を認識することができ、それにより、粒子は被験物によって引き寄せられる。
【0075】
アッセイの検出感度は、図8および図9に示す2つの方法で測定された。図8に示す384ウェルマイクロタイタープレートにおける第一の実験により、ユニビーズの総数とアッセイ出力シグナルとの間には線形挙動があることが証明された。ユニビーズは、アクセプタ粒子およびドナー粒子の両方を包含する予め結合された単一ビーズである。従って、一重項酸素の移動の量子効率は、粒子が近接しているので無視できる。この実験において、ビーズの総数は、100〜100000の間で変更した。
【0076】
図9において、最終的なチップ構成で使用されると思われる2μlまで容量を減らすと、濃度が低下するにつれ、シグナルは横這いになることが分かる。これは、ユニビーズの自動蛍光発光に起因する。確実に検出できる最小粒子数は、2μlのサンプルではおよそ400である。図10に示すアッセイを展開すると、25μlのアッセイ容量で384マイクロタイタープレートを使用するビオチン化−DIGアッセイから得られた標準曲線が得られた。
【0077】
高感度で均質なアッセイが、マイクロ流体システムを基にして首尾よく設計および製造された。このアッセイは、マイクロタイタープレートからチップフォーマットまで首尾よく移送されて、用量反応曲線を生成し、それにより2μlの血漿中に1.6x10−10モルの被験物が検出できた。
【0078】
アッセイシステムは、必ずしも発光酸素チャネリング免疫アッセイの形をとる必要はない。
【0079】
上述のように、アッセイシステム10、32はまた、検出区域18、40での結合相互作用、またはシグナル生成および検出に干渉し得る分子の固相抽出のための干渉区域14、36を含む。干渉区域14、36は、サンプルが細胞分離システム12、34に直面する前、またはサンプルがアッセイ検出区域25、41内に流動する前に設けられてもよい。区域14、36は、サンプル由来の分子を中和または除去するための多数の薬剤を含む。干渉区域14、36はタイムゲート化され、完全に処理されたサンプルだけがアッセイシステム18、40内に流動することを保証する。
【実施例】
【0080】
人間の患者から採取した全血サンプル(45%ヘマトクリット)をEDTAチューブに流し込み、4μlの血液サンプルを、リン酸緩衝溶液(PBS)に5mgs/mlの濃度で溶解したレクチンPHA−E(Sigma)2μlと1:1の割合で混合した。次いで、このサンプルを室温で1分間インキュベートし、図2、図3および図4に関して先に述べたマイクロ流体分離システムへ適用する前に、赤血球を凝集させた。
【0081】
導管24は、200μm(幅)×100μm(高さ)の寸法を有する。システムは、ベース基材を射出成形して、装置並びにマイクロ流体要素の基部または下部を形成し、次いで一体形の射出成形基材をベース基材に超音波溶接してシステムの蓋または上側表面を形成することによって、ポリカーボネート基材から作製された。組み立てる前に、基材を酸素プラズマで処理して、表面を親水性にした。表面の親水性度を測定し、表面接触角度は20度であることが見出された。
【0082】
流体サンプル(4μl)をサンプル適用領域20に適用し、次いでマイクロ流体構造体13に向かって移動させた。凝集した細胞はマイクロ流体構造体を実質的に通過することができず、結果として、凝集した赤血球から血漿/バッファろ液が分離された。
【0083】
抽出された血漿/バッファの総量は、10分未満の時間では200nlであった。血漿分離効率は、利用可能な血漿の総量の11%として計算された。
【0084】
本発明の各態様の好ましい特徴は、互いの態様に関して必要な変更を加えたものである。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、本発明によるマイクロ流体分離システムを示す。
【図2】図2は、本発明によるマイクロ流体分離システムを組み込んだ本発明によるアッセイを示す。
【図3】図3は、図2のアッセイシステムを更に図示している。図3aはこのシステムの平面図である。図3bは図3aの線X−Xに沿って切り取った断面図である。図3cは図3bの領域Aの拡大図である。図3dは図3cの領域Bの拡大図である。
【図4】図4は、図2および図3のアッセイシステムにおけるマイクロ流体分離システムを更に図示している。図4aはこのシステムの斜視図である。図4bは領域Aの拡大図であり、このマイクロ構造を示している。
【図5】図5は、別のマイクロ流体分離システムが設けられた更なるアッセイシステムを図示している。図5aはこのアッセイシステムの斜視図である。図5bは領域Aの拡大図であり、この分離システムを示している。
【図6】図6は、図5の代替分離システムを更に図示するものである。図6aは図5のアッセイシステムの平面図である。図6bは図6aの線X−Xに沿って切り取った断面図である。図6cは図6bの領域Aの拡大図である。図6dは図6aの領域Bの拡大図であり、この分離システムを示している。
【図7】図7aおよび図7bは、アッセイシステムを示す。
【図8】図8は、アッセイシステムの感度を示す。
【図9】図9もまた、アッセイシステムの感度を示す。
【図10】図10は、アッセイシステムに関する標準曲線を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中に存在する細胞から流体サンプル媒体を分離するためのマイクロ流体分離システムであって、マイクロ流体構造体と細胞凝集剤とを含んでなり、前記マイクロ流体構造体が、凝集した細胞を流体サンプル媒体からサイズ排除により分離する1つ以上のマイクロ流体流路を含むものである、システム。
【請求項2】
前記凝集剤が、前記マイクロ流体構造体に隣接して、またはそこから離れて備えられてなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記マイクロ流体構造体が毛管路であることを特徴とする、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記マイクロ流体構造体が、1つ以上のサイズ排除空間を有するサイズ排除要素を含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記毛管路が、凝集した細胞を流体サンプル媒体から分離するための1つ以上のサイズ排除空間であることを特徴とする、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記1つ以上のマイクロ流体流路の寸法が、前記サイズ排除空間を規定するために変化する、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記マイクロ流体流路が、寸法の異なるまたは変化する他のマイクロ流体流路と流体連通していてもよい、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記マイクロ流体構造体の前記毛管路が少なくとも一つの第一のマイクロ流体流路を含み、前記少なくとも一つの第一の流路が延長された側壁を有する基部を有し、前記流路が前記流路の深さ未満の深さを有する1つ以上の通路と、その長手方向側部に沿って流体連通しており、前記通路の深さがサイズ排除空間を規定する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記または各通路が、更なるマイクロ流体流路と更なる流体連通をなしている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記通路が、前記サイズ排除空間を変化させるための1つ以上の段形成部を備える、請求項8または9に記載のシステム。
【請求項11】
前記通路および/または更なる流路がサンプル媒体回収領域と流体連通しており、凝集した細胞から分離された前記サンプル媒体が前記回収領域へと流動する、請求項9または10に記載のシステム。
【請求項12】
前記毛管路が1つ以上のマイクロ流体流路を含み、前記1つ以上のマイクロ流体流路には、所望のサイズ排除空間に相当する空隙を規定する1つ以上のマイクロ構造体が設けられる、請求項7に記載のシステム。
【請求項13】
複数のマイクロ構造体群が、同一サイズまたは異なるサイズで設けられており、互いに対していかなる特定の構成で配置されていてもよい、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
各群が、他の群と異なるサイズ排除空間を規定する、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記マイクロ構造体群が、前記サンプルがより大きなサイズ排除空間を規定する群を通って流動し、その後、より小さなサイズ排除空間を有する1つ以上の群を通って流動するように順序付けられた構成であり、ここで前記サンプル媒体が凝集した細胞から分離される、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
回収領域が前記マイクロ構造体の下流に設けられており、前記サンプル媒体が前記サイズ排除空間を通って流動し、分離された後に前記回収領域へと流動する、請求項12〜15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記毛管路内の前記サイズ排除空間の寸法が、約50μm以下、約40μm以下、約30μm以下、約20μm以下、約15μm以下、約10μm以下、約5μm以下、または約2μm以下である、請求項4〜16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記マイクロ流体構造体と流体連通して該マイクロ流体構造体に前記サンプルを供給する導管を更に含んでなる、請求項1〜17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記供給導管が、前記凝集剤をも前記マイクロ流体構造体に供給するものである、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記凝集剤が、前記導管の1つ以上の表面上、および/または前記サイズ排除空間の上流にある前記マイクロ流体構造体の前記毛管路の1つ以上の表面に備えられている、請求項18または19に記載のシステム。
【請求項21】
分離されるべき前記流体サンプル媒体が全血である、請求項1〜20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記凝集剤がデキストランまたはレクチンである、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
流体サンプルに対してアッセイを行うためのアッセイシステムであって、被験物検出区域と流体連通している請求項1〜22のいずれか一項に記載のマイクロ流体分離システムを含んでなる、アッセイシステム。
【請求項24】
前記分離システムの前記マイクロ流体構造体と流体接続している、流体サンプルを適用するためのサンプル入口を含んでなる、請求項23に記載のアッセイシステム。
【請求項25】
前記検出区域が前記マイクロ流体構造体の下流に設けられており、流体サンプルが、分離後に前記マイクロ流体構造体から前記検出区域内に流動する、請求項23または24に記載のアッセイシステム。
【請求項26】
目的の被験物に対して特異的または非特異的な試薬が、前記アッセイシステム内に設けられており、前記検出区域の内側表面上に設けられている、請求項25に記載のアッセイシステム。
【請求項27】
前記アッセイシステム内での結合相互作用、またはシグナル生成および検出に干渉し得る前記サンプル由来の分子を中和または除去する役割を果たす干渉区域を更に含んでなる、請求項26に記載のアッセイシステム。
【請求項28】
前記アッセイが結合アッセイである、請求項23〜27のいずれか一項に記載のアッセイシステム。
【請求項29】
前記結合アッセイが均質または不均質である、請求項28に記載のアッセイシステム。
【請求項30】
伝達システムを更に含んでなる、請求項23〜29のいずれか一項に記載のアッセイシステム。
【請求項31】
流体サンプル中に存在する細胞から流体サンプル媒体を分離する方法であって、請求項1〜22のいずれか一項に記載のマイクロ流体分離システムに流体サンプルを適用することを含んでなる、方法。
【請求項32】
前記サンプルが、前記マイクロ流体分離システムの前記マイクロ流体構造体に添加される前に、細胞凝集剤と混合される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
流体サンプル中の被験物を検出する方法であって、請求項23〜30のいずれか一項に記載のアッセイシステムに流体サンプルを適用することを含んでなる、方法。
【請求項34】
前記サンプルが、前記マイクロ流体分離システムの前記マイクロ流体構造体に添加される前に、細胞凝集剤と混合される、請求項33に記載の方法。
【請求項1】
サンプル中に存在する細胞から流体サンプル媒体を分離するためのマイクロ流体分離システムであって、マイクロ流体構造体と細胞凝集剤とを含んでなり、前記マイクロ流体構造体が、凝集した細胞を流体サンプル媒体からサイズ排除により分離する1つ以上のマイクロ流体流路を含むものである、システム。
【請求項2】
前記凝集剤が、前記マイクロ流体構造体に隣接して、またはそこから離れて備えられてなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記マイクロ流体構造体が毛管路であることを特徴とする、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記マイクロ流体構造体が、1つ以上のサイズ排除空間を有するサイズ排除要素を含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記毛管路が、凝集した細胞を流体サンプル媒体から分離するための1つ以上のサイズ排除空間であることを特徴とする、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記1つ以上のマイクロ流体流路の寸法が、前記サイズ排除空間を規定するために変化する、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記マイクロ流体流路が、寸法の異なるまたは変化する他のマイクロ流体流路と流体連通していてもよい、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記マイクロ流体構造体の前記毛管路が少なくとも一つの第一のマイクロ流体流路を含み、前記少なくとも一つの第一の流路が延長された側壁を有する基部を有し、前記流路が前記流路の深さ未満の深さを有する1つ以上の通路と、その長手方向側部に沿って流体連通しており、前記通路の深さがサイズ排除空間を規定する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記または各通路が、更なるマイクロ流体流路と更なる流体連通をなしている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記通路が、前記サイズ排除空間を変化させるための1つ以上の段形成部を備える、請求項8または9に記載のシステム。
【請求項11】
前記通路および/または更なる流路がサンプル媒体回収領域と流体連通しており、凝集した細胞から分離された前記サンプル媒体が前記回収領域へと流動する、請求項9または10に記載のシステム。
【請求項12】
前記毛管路が1つ以上のマイクロ流体流路を含み、前記1つ以上のマイクロ流体流路には、所望のサイズ排除空間に相当する空隙を規定する1つ以上のマイクロ構造体が設けられる、請求項7に記載のシステム。
【請求項13】
複数のマイクロ構造体群が、同一サイズまたは異なるサイズで設けられており、互いに対していかなる特定の構成で配置されていてもよい、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
各群が、他の群と異なるサイズ排除空間を規定する、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記マイクロ構造体群が、前記サンプルがより大きなサイズ排除空間を規定する群を通って流動し、その後、より小さなサイズ排除空間を有する1つ以上の群を通って流動するように順序付けられた構成であり、ここで前記サンプル媒体が凝集した細胞から分離される、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
回収領域が前記マイクロ構造体の下流に設けられており、前記サンプル媒体が前記サイズ排除空間を通って流動し、分離された後に前記回収領域へと流動する、請求項12〜15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記毛管路内の前記サイズ排除空間の寸法が、約50μm以下、約40μm以下、約30μm以下、約20μm以下、約15μm以下、約10μm以下、約5μm以下、または約2μm以下である、請求項4〜16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記マイクロ流体構造体と流体連通して該マイクロ流体構造体に前記サンプルを供給する導管を更に含んでなる、請求項1〜17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記供給導管が、前記凝集剤をも前記マイクロ流体構造体に供給するものである、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記凝集剤が、前記導管の1つ以上の表面上、および/または前記サイズ排除空間の上流にある前記マイクロ流体構造体の前記毛管路の1つ以上の表面に備えられている、請求項18または19に記載のシステム。
【請求項21】
分離されるべき前記流体サンプル媒体が全血である、請求項1〜20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記凝集剤がデキストランまたはレクチンである、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
流体サンプルに対してアッセイを行うためのアッセイシステムであって、被験物検出区域と流体連通している請求項1〜22のいずれか一項に記載のマイクロ流体分離システムを含んでなる、アッセイシステム。
【請求項24】
前記分離システムの前記マイクロ流体構造体と流体接続している、流体サンプルを適用するためのサンプル入口を含んでなる、請求項23に記載のアッセイシステム。
【請求項25】
前記検出区域が前記マイクロ流体構造体の下流に設けられており、流体サンプルが、分離後に前記マイクロ流体構造体から前記検出区域内に流動する、請求項23または24に記載のアッセイシステム。
【請求項26】
目的の被験物に対して特異的または非特異的な試薬が、前記アッセイシステム内に設けられており、前記検出区域の内側表面上に設けられている、請求項25に記載のアッセイシステム。
【請求項27】
前記アッセイシステム内での結合相互作用、またはシグナル生成および検出に干渉し得る前記サンプル由来の分子を中和または除去する役割を果たす干渉区域を更に含んでなる、請求項26に記載のアッセイシステム。
【請求項28】
前記アッセイが結合アッセイである、請求項23〜27のいずれか一項に記載のアッセイシステム。
【請求項29】
前記結合アッセイが均質または不均質である、請求項28に記載のアッセイシステム。
【請求項30】
伝達システムを更に含んでなる、請求項23〜29のいずれか一項に記載のアッセイシステム。
【請求項31】
流体サンプル中に存在する細胞から流体サンプル媒体を分離する方法であって、請求項1〜22のいずれか一項に記載のマイクロ流体分離システムに流体サンプルを適用することを含んでなる、方法。
【請求項32】
前記サンプルが、前記マイクロ流体分離システムの前記マイクロ流体構造体に添加される前に、細胞凝集剤と混合される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
流体サンプル中の被験物を検出する方法であって、請求項23〜30のいずれか一項に記載のアッセイシステムに流体サンプルを適用することを含んでなる、方法。
【請求項34】
前記サンプルが、前記マイクロ流体分離システムの前記マイクロ流体構造体に添加される前に、細胞凝集剤と混合される、請求項33に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2007−519896(P2007−519896A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544556(P2006−544556)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【国際出願番号】PCT/GB2004/005334
【国際公開番号】WO2005/058500
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(506172285)インバネス、メディカル、スウィッツァランド、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング (2)
【氏名又は名称原語表記】INVERNESS MEDICAL SWITZERLAND GMBH
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【国際出願番号】PCT/GB2004/005334
【国際公開番号】WO2005/058500
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(506172285)インバネス、メディカル、スウィッツァランド、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング (2)
【氏名又は名称原語表記】INVERNESS MEDICAL SWITZERLAND GMBH
【Fターム(参考)】
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