説明

シフトレジスタ

【課題】入力の任意のパルス幅に比例したパルス波形をクロック同期でシフト動作させる。
【解決手段】表示装置の画素列駆動回路もしくは画素駆動制御回路、CCD/CMOSなどの固体撮像素子の走査駆動回路などに用いられるシフトレジスタであって、各レジスタを構成する全てのトランジスタT1〜T12が単一の極性を有する。各レジスタは、正極性および負極性のそれぞれの入力端子D,Dxを持ち、クロックCLKに同期して前記入力端子からの入力をそれぞれラッチする。ラッチした電圧信号Va,Vbをチャージポンプ回路T7,T8,C1〜C4で電源電圧を超える電圧に遷移させ、この遷移させた電圧信号を利用して出力段トランジスタT9,T11を電源電圧までスイッチしてクロックに同期した正極性および負極性のラッチ信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置の画素列駆動回路もしくは画素駆動制御回路、CCD/CMOSなどの固体撮像素子の走査駆動回路などに用いられるシフトレジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
図1に、従来のシフトレジスタを構成する基本的なレジスタ回路の構成例を、図2にそのシフトレジスタにおける各所の信号波形を示す。
【0003】
なお、この図1の構成のシフトレジスタが普及する前はレジスタ回路において、抵抗やデプレッション型のトランジスタをアクティブ負荷として使用したインバータ回路が使用されていたが、そのような構成は、消費電力・コスト・信頼性の面から、通常使用されないようになってきている。また、特許文献1に示されるように、エンハンスメント型のトランジスタで構成されたアクティブ負荷を使用する例もある。
【0004】
電源VDDと、負電源VSSの間には、トランジスタM1,M2の直列接続と、トランジスタM3,M4の直列接続、トランジスタM7,M8の直列接続と、トランジスタM9,M10の直列接続、が配置されている。また、出力段トランジスタM5,M6の直列接続がクロックCLK1と負電源VSSとの間に、出力段トランジスタM11,M12の直列接続がクロックCLK2と負電源VSSとの間に配置されている。なお、この例では、トランジスタM1〜M12は、すべてNMOSで構成されている。
【0005】
トランジスタM1,M4のゲートには入力Dが供給され、トランジスタM2,M6のゲートはトランジスタM3,M4の中間点(信号Va1)が接続され、トランジスタM1,M2の中間点(信号Vb1)はトランジスタM5のゲートに接続されている。また、トランジスタM3のゲートにはクロックCLK3が供給されている。
【0006】
トランジスタM7,M10のゲートには出力段のトランジスタM5,M6の中間点(出力信号Q1)が供給され、トランジスタM8,M12のゲートはトランジスタM9,M10の中間点(信号Va2)が接続され、トランジスタM7,M8の中間点(信号Vb2)はトランジスタM11のゲートに接続されている。また、トランジスタM9のゲートにはクロックCLK1が供給されている。そして、トランジスタM11,M12の中間点から信号Q2が出力される。
【0007】
出力段のプルアップ側のトランジスタM5のドレインはCLK1に接続されていて、このトランジスタがONになった時にこの接続されたCLKでトランジスタのゲート電位がブートストラップされて、出力(Q1)レベルが電源電圧VDD近辺まで引き上げられ、次段以降のレジスタの動作を確実なものとしている。
【0008】
以下に図1の回路の動作とブートストラップについて、図2を参照しながら説明する。ここで、Dおよびクロック(CLK1〜CLK3)のHiはVDD、LowはVSSである。DがHi(VDDレベル)の時M1,M4がオンとなる。M4がオンとなることでVa1はM4によりVSSにプルダウンされる。これにより、M2,M6のゲート電圧がVSSとなってM2,M6はオフとなる。Vb1はDの電位からM1のスレッショルド電圧分下がったVDD−Vthの電圧となる。M3はCLK3がHiとなるのでオンとなるがM4に比べてその電流駆動能力(トランジスタサイズ)が小さく設計されていてVa1をプルアップすることはない。CLK1がHiになると、トランジスタM5に係わる寄生容量Ct5(主にCgs,Cgdなどのゲート−ドレイン/ゲート−ソース間の寄生容量)を通してCLK1がVb1にΔVだけ飛び込む。このΔVはVb1のラインとVSS間の寄生容量Cl,Ct5およびCLK1の振幅Vclk1で以下のように定義できる。
【0009】
【数1】

【0010】
図2のCLK1がHiになったところで、Va1がVDD−VthからΔVだけ高くなる。寄生容量はレイアウト変更やプロセスの変更により左右されるため、確実な動作を望む場合はこれらの容量を寄生容量に左右されない実際の容量として設置する。このブートストラップにより、Q1は確実にCLK1のHi(VDDレベル)までプルアップされる。
【0011】
DがLowになるとM1/M4はオフとなり、その後の最初のCLK3のHiで、Va1はトランジスタM3により、VDDにプルアップされてHiとなり、M2/M6がオフからオンとなり、Vb1がVSSにプルダウンされ、Q1も同様にVSSにプルダウンされる。
【0012】
この例以降種々のものが提案されているがいずれも、
1)ブートストラップを利用した出力段
2)レジスタ内部の蓄積電荷の放電をCLKまたは後段のレジスタ出力で行う
構成となっており、簡易な回路構成で、かつ、確実な動作をするように工夫・改良されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2001−176288号公報
【特許文献2】米国特許第5,222,082号明細書
【特許文献3】特開平8−263027号公報
【特許文献4】特開2000−155550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ここで、入力Dが任意の幅を持つパルスの場合、入力DがHiとなる期間が限定され、図3に示すように出力はクロックで分断された2つのパルスとなり、これがシフトレジスタを伝播することになる。任意の幅を持つ入力Dをそのままクロック同期で伝播させたい目的のためには不都合である。また、これらをロジックの組み合わせ回路を用いて目的の波形を作成しようとしても、CLKタイミングやスキューなどにより目的とするパルスとならないなどの不具合が出ることが考えられる。また、この対策として出力段のCLKによるブートストラップ回路のプルアップ側トランジスタM5,M11のドレインを図4の右側のように電源に接続することが考えられる。この場合、出力のHiレベルが1段ごとにトランジスタのスレッショルド電圧分徐々に低下して(VDD−Vth)、レジスタを信号が駆動できなくなり、数段後にパルス伝播が途絶えてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明では、表示装置の画素列駆動回路もしくは画素駆動制御回路、CCD/CMOSなどの固体撮像素子の走査駆動回路などに用いられるシフトレジスタであって、各レジスタを構成する全てのトランジスタが単一の極性を有し、各レジスタは、正極性および負極性のそれぞれの入力端子を持ち、クロックに同期して前記入力端子からの入力をそれぞれラッチし、ラッチした電圧信号をチャージポンプ回路で電源電圧を超える電圧に遷移させ、この遷移させた電圧信号を利用して出力段トランジスタを電源電圧までスイッチしてクロックに同期した正極性および負極性のラッチ信号を出力する。
【0016】
また、各レジスタを構成するトランジスタがNMOSであることが好適である。
【0017】
また、各レジスタを構成するトランジスタがPMOSであることが好適である。
【0018】
また、各レジスタは、出力段トランジスタにおける、ゲート端子と、出力端子に接続される端子と、を除いた第三の端子が電源に接続されていることが好適である。
【0019】
また、前記チャージポンプ回路は、ラッチした内部電圧信号ラインをゲートに受け、一方の端子にクロックが供給され、他方の端子が容量を介しラッチした内部電圧信号ラインに接続されているトランジスタを有し、このトランジスタがオンの際にクロックの電圧変化がラッチした内部電圧信号ラインに及ぼす電圧変化を利用することが好適である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、PMOS構成またはNMOS構成のシフトレジスタにおいて、入力の任意のパルス幅に比例したパルス波形をクロック同期でシフト動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来のレジスタの構成を示す図である。
【図2】図1の構成の各所の信号波形の一例を示す図である。
【図3】図1の構成の各所の信号波形の一例を示す図である。
【図4】出力段の変形例を示す図である。
【図5】実施形態1のレジスタの構成を示す図である。
【図6】図5の構成の各所の信号波形の一例を示す図である。
【図7】実施形態1のレジスタを多段に設けた場合の構成を示す図である。
【図8】実施形態2のレジスタの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本実施形態においては、従来の回路の基本構成である、
1)ブートストラップを利用した出力段、
2)レジスタ内部の蓄積電荷の放電をCLKまたは後段のレジスタ出力で行う、
という2つの構成を使用しない回路構成とする。
【0023】
すなわち、
a)ブートストラップを利用しない出力段、
b)レジスタ内部の蓄積電荷の放電をCLKまたは後段のレジスタ出力で行なわない、
という構成をとっている。
【0024】
そして、構成a)を実現するために、
c)チャージポンプで内部保持電圧を高めてHi出力を確実にする、
という構成を採り、また、構成b)を実現するために、
d)Q出力およびその反対極性を持つQx出力の両極性出力とする、
という構成を採ることで確実にデータを伝播するシフトレジスタを構成する。
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0026】
「実施形態1」
実施形態1として、NMOSで構成したレジスタの回路図を図5に示す。ここで、D,Dx,CLK,CLKxのHiレベルをVDD、LowレベルをVSSとする。なお、CLK,CLKxのHiレベルはVDD+Vth以上が望ましい。
【0027】
トランジスタT1のドレインはVDD、ゲートはCLK、ソースはトランジスタT2のドレインに接続されている。トランジスタT2のゲートには入力Dが供給され、ソースはトランジスタT3のドレインに接続されている。トランジスタT3のソースは、VSSに接続されている。トランジスタT4のドレインはVDD、ゲートはCLK、ソースはトランジスタT5のドレインに接続されている。トランジスタT5のゲートには入力Dxが供給され、ソースはトランジスタT6のドレインに接続されている。トランジスタT6のソースは、VSSに接続されている。トランジスタT2とT3の中間点には、トランジスタT6のゲートが接続されるとともに、Vaラインが接続されている。トランジスタT5とT6の中間点には、トランジスタT3のゲートが接続されるとともに、Vbラインが接続されている。
【0028】
Vaラインは容量C1を介しVSSに接続され、Vbラインは容量C2を介しVSSに接続されている。
【0029】
また、Vaラインには、トランジスタT7のゲートが接続され、このトランジスタT7のドレインはCLKxに接続され、ソースは容量C3を介しVaラインに接続されている。Vbラインには、トランジスタT8のゲートが接続され、このトランジスタT8のドレインはCLKxに接続され、ソースは容量C4を介しVbラインに接続されている。
【0030】
また、Vaラインには、トランジスタT9のゲートが接続され、このトランジスタT9のドレインはVDDに接続され、ソースはトランジスタT10のドレインに接続されている。トランジスタT10のゲートは、Vbラインに接続され、ソースはVSSに接続されている。Vbラインには、トランジスタT11のゲートが接続され、このトランジスタT11のドレインはVDDに接続され、ソースはトランジスタT12のドレインに接続されている。トランジスタT12のゲートは、Vaラインに接続され、ソースはVSSに接続されている。
【0031】
そして、トランジスタT9とトランジスタT10の中間点が出力Qライン、トランジスタT11とトランジスタT12の中間点が出力Qxラインに接続されている。
【0032】
このような回路において、初段のトランジスタT1からトランジスタT6で構成されるクロック同期のラッチは、入力Dもしくは反転入力DxのどちらかのHi側でラッチ動作する。容量C1およびC2は明示的に挿入した場合を示しているが、回路の寄生容量を利用することも可能である。
【0033】
図6に示すように、クロックCLKと、CLKxは、互いに極性が反対のパルスであり、入力DとDxも互いに極性が反対の信号である。
【0034】
入力DがHi(入力DxがLow)の場合、T2がオンし、CLKがHiの際にT1がオンして、VaラインはHiとなり、入力DxがLowなのでT5がオフし、T6がオンするため、VbラインはLowとなる。
【0035】
ここで、入力DがHiの場合、T7およびC3はチャージポンプ回路として動作する。すなわち、入力DがHiの場合、CLKがHiではVaラインは入力DのHi電位(VDD)からT1のスレッショルド電圧Vth下がった電位で信号線としてはローインピーダンス状態となる。この時、CLKxはLowのためC3はVaラインにクランプされる。次に、CLKがLowになるとT1はオフし、Vaラインはハイインピーダンスとなる。一方、CLKxはHiとなるため、このHiがC3を介しVa電圧を持ち上げ、チャージポンプとして動作する。
【0036】
DがLowの場合、VaはLowレベルでかつローインピーダンスなためにT7はオフとなり、チャージポンプ回路は動作を停止する。トランジスタT8および容量C4は反転入力DxがHiの場合に、同様にチャージポンプ回路として動作する。
【0037】
従って、VaラインおよびVbラインは、その電圧がHiの場合、それぞれのチャージポンプ回路により、対応するCLKまたはCLKxがHiの期間においてVDD−VthよりΔVだけ高い電圧を維持する(VDD−Vth+ΔV)。ブートストラップのところで説明した時と同様にVaラインの上昇電圧をΔVx、Vbラインの上昇電圧をΔVyとすると、それぞれ次式で示される。
【0038】
【数2】

【0039】
【数3】

【0040】
ここで、ClaはVaラインのVSSとの間の寄生容量、同様にClbはVbラインのVSSとの間の寄生容量、VclkxはCLKxの電圧である。
【0041】
正極性側の出力QはプルアップトランジスタT9およびプルダウントランジスタT10で構成された出力段を持ち、トランジスタT9はHi出力、T10はLow出力を担う。トランジスタT9がHi出力を行う場合、そのゲート電圧VaはCLKxがLow区間はVDD−VthでCLKxがHi区間は前述したようにVDD−Vth+ΔVxとなる。容量C1,C3の容量値を適切に設定し、かつ、Vclkxが十分な電圧であれば、VDD−Vth+ΔVxは、VDDを超えた電圧となる。従って、CLKxがHi区間においてトランジスタT9は確実にオンして、出力QはVDDとなり、十分な電圧が次段に出力される。
【0042】
次段の入力段は逆相のCLKxでサンプルされるように構成するので、VDDレベルが入力として利用され、確実な信号伝播が行われる。入力負極性側の出力Qxも同様にプルアップトランジスタT11およびプルダウントランジスタT12で構成され正極性側と同様な動作を行う。
【0043】
図5のレジスタを多段接続した場合の構成を図7に示す。このように、1つの段の一対の出力(トランジスタTm9とTm10の中間点と、トランジスタTm11とTm12の中間点)Qm,Qmx(m=1,2,3,・・・)が次段のレジスタのトランジスタTn2,Tn5のゲートに入力される。
【0044】
「実施形態2」
実施形態2の構成を図8に示す。トランジスタT1,T2に代えて、トランジスタT21を採用し、トランジスタT4,T5に代えてトランジスタT22を採用している。
【0045】
トランジスタT21は、ドレインに入力Dが供給され、ソースがトランジスタT3のドレインに接続されており、ゲートにCLKが供給される。また、トランジスタT22は、ドレインに入力Dxが供給され、ソースがトランジスタT6のドレインに接続されており、ゲートにCLKが供給される。
【0046】
この構成によれば、CLKがHiのときに、トランジスタT21,T22がオンし、入力DがVaラインに供給され、入力DxがVbラインに供給され、動作タイミングは実施形態1の回路と同様になる。この実施形態2により、実施形態1に比べて簡素な構成となる。
【0047】
「その他」
上述の実施形態1,2においては、トランジスタとして、NMOSを利用したが、すべてのトランジスタにPMOSをしても、トランジスタのオンタイミングが反対となり、チャージポンプ動作もLow側になるだけであって、同様に動作する。
【符号の説明】
【0048】
T1〜T12 トランジスタ、C1〜C4 容量、Cla〜Clb 寄生容量。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレジスタからなるシフトレジスタであって、
各レジスタを構成する全てのトランジスタが単一の極性を有し、
各レジスタは、
正極性および負極性のそれぞれの入力端子を持ち、
クロックに同期して前記入力端子からの入力をそれぞれラッチし、
ラッチした電圧信号をチャージポンプ回路で電源電圧を超える電圧に遷移させ、
この遷移させた電圧信号を利用して出力段トランジスタを電源電圧までスイッチしてクロックに同期した正極性および負極性のラッチ信号を出力するシフトレジタ。
【請求項2】
請求項1に記載のシフトレジスタであって、
各レジスタを構成するトランジスタがNMOSであるシフトレジスタ。
【請求項3】
請求項1に記載のシフトレジスタであって、
各レジスタを構成するトランジスタがPMOSであるシフトレジスタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のシフトレジスタであって、
各レジスタは、
出力段トランジスタにおける、ゲート端子と、出力端子に接続される端子と、を除いた第三の端子が電源に接続されているシフトレジスタ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のシフトレジスタであって、
前記チャージポンプ回路は、ラッチした内部電圧信号ラインをゲートに受け、一方の端子にクロックが供給され、他方の端子が容量を介しラッチした内部電圧信号ラインに接続されているトランジスタを有し、このトランジスタがオンの際にクロックの電圧変化がラッチした内部電圧信号ラインに及ぼす電圧変化を利用するシフトレジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−34620(P2011−34620A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178628(P2009−178628)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】