説明

シミュレータ

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、オペレータの動作に対応してディスプレイ等といった表現手段によって模擬動作を表現するシミュレータに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、上記のようなシミュレータとして、例えば特開平3−222971号公報に開示されたように、オペレータすなわちスキーヤーがスキー板を模したボードの上に乗って擬似的なスキー動作を行うようにしたスキーシミュレータが知られている。このスキーシミュレータでは、スキー板を模したボードを入力装置として用いて仮想スキーを行い、その様子をディスプレイに表示するようにしている。
【0003】周知の通り、スキーは2個のスキー板のそれそれにスキーヤーが片足を乗せた状態で行われるが、近年では、スノーボードと呼ばれる単一板の上にプレイヤが両足を乗せた状態で雪面を滑降する滑走方法も一般的になってきた。上記従来のスキーシミュレータは、そのようなスノーボードを用いた滑走を模擬する場合にも用いることができると考えられる。しかしながらこの従来のスキーシミュレータでは、スキーヤーを乗せるボードの動きが非常に単純であり、従って、スキーの臨場感に乏しかった。
【0004】スキーヤー等といったオペレータが乗るボードの動きに臨場感を持たせるための技術として、従来、例えば特公昭58−15796号公報によれば、船体を模したボードを左右に旋回させたり、ボード中央を中心としてボードの左右側辺を上下に傾斜移動させたりする技術が開示されている。また、実公平2−38777号公報には、オペレータを乗せたボードをその底面に設けたキャスターを中心として揺動させるようにした技術が開示されている。
【0005】しかしながらこれらの従来技術では、ボードがオペレータの動きに合わせて単純に旋回移動や揺動等をするだけであって、そのボードの運動時にボードからオペレータへ抵抗力を付与しようという考えは全く無い。従って、例えば雪面を滑走する動作を模擬しようとする際、その雪面からスキーヤーに抵抗力が加わるという感覚を模擬的に実現することができず、よって臨場感に富んだシミュレーションを実現できない。
【0006】また、これらの文献では、ボードの動きをディスプレイ等の表現手段による表現内容に反映させようという技術的思想が全くなく、従って、ボードの動きをディスプレイ等へどのようにして伝えれば良いのかということに関して何らの示唆も与えていない。
【0007】また、特開昭60−119969号公報や特開平4−150877号公報によれば、オペレータが乗ったサーフィンボードを油圧シリンダやモータ等といった駆動装置によって旋回移動や、傾斜移動させる技術が開示されている。しかしながらこれらの従来技術においては、ボードがオペレータからの働きかけによって動くのではなくて、単に、油圧シリンダ等の駆動装置の働きによって動くようになっており、よって、オペレータの動作に対応してボードを動かすという考えは何ら示されていない。
【0008】また、これらの文献にも、ボードの動きをディスプレイ等の表現手段による表現内容に反映させようという技術的思想が全くなく、従って、ボードの動きをディスプレイ等へどのようにして伝えれば良いのかということに関して何らの示唆も与えていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、人間がボード等の支持台に乗って行う動作行為を臨場感豊かに模擬できるシミュレータを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明に係るシミュレータは、オペレータの動作に対応して表現手段によって模擬動作を表現するシミュレータにおいて、第1軸線を中心として往復旋回移動可能であり且つ第1軸線と交わる方向に延びる第2軸線を中心として往復傾斜移動可能であって、オペレータを乗せるための支持台と、支持台を自然状態下で第1軸線に対して中立位置に保持すると共に、支持台がその中立位置から外れる方向へ旋回移動するときその支持台に抵抗力を加える第1抵抗力付与手段と、支持台を自然状態下で第2軸線に対して中立位置に保持すると共に、支持台がその中立位置から外れる方向へ傾斜移動するときその支持台に抵抗力を加える第2抵抗力付与手段と、支持台の第1軸線及び第2軸線のまわりの往復移動に応じて表現手段による模擬動作を制御する制御手段とを有し、前記第1抵抗力付与手段及び前記第2抵抗力付与手段の少なくとも1つは、支持台と一体に動く断面角形状の芯部材と、その芯部材を包囲する断面角形状のケーシング部材と、芯部材とケーシング部材との間の空間に配設された弾性部材とを有することを特徴とする。
【0011】このシミュレータによれば、オペレータが支持台を旋回移動及び傾斜移動させることにより、表現手段によって表現される模擬動作に積極的に働きかけることができる。旋回移動と傾斜移動とを組み合わせた複合移動によって模擬動作を制御するので精密な模擬動作を実現できる。また、第1抵抗力付与手段及び第2抵抗力付与手段の働きにより、地面等からの抵抗力を体験でき、従って、臨場感豊かな模擬動作を体験できる。
【0012】上記記載で第2軸線が第1軸線と交わる方向に延びるというのは、第2軸線が第1軸線に対して直角方向に延びる場合はもとより、直角以外の任意の角度方向に延びる場合も含むことを意味する。また、上記支持台の形状は特定の形状に限定されるものでなく、対象となる模擬動作に対応した適宜の形状とされる。例えば、スノーボードによる雪面の滑走を模擬する場合にはスノーボードを模した形状とされる。
【0013】上記第1軸線というのは支持台を往復旋回可能に支持する軸線のことであり、多くの場合は、シミュレータを設置する床面に対して垂直方向に延びる軸線である。
【0014】表現手段というのは、任意の模擬動作をオペレータに対して視覚的に認識できるようにするための手段であって、その表現方法は特定の方法に限定されない。例えば、映像的に表示するディスプレイや、現実的に表示する人形模型等を用いることができる。
【0015】第1抵抗力付与手段及び第2抵抗力付与手段は、請求の範囲に記載した動作を実現できる構造でありさえすれば任意の構造を採用できる。例えば、支持台と一体に動く断面角形状の芯部材と、その芯部材を包囲する断面角形状のケーシング部材と、芯部材とケーシング部材との間の空間に配設された弾性部材とを有する構造を採用できる。ここで、弾性部材というのは、圧縮されることによって反発力を生じる部材のことであり、例えば、ゴム、合成樹脂などによって形成できる。また、断面角形状というのは、断面三角形状、断面四角形状、あるいはそれ以上の角数の断面形状を含む意味である。
【0016】制御手段は、コンピュータを含んだ電気制御系によって構成できる。また、制御手段は、支持台の第1軸線まわりの旋回角度及び第2軸線まわりの傾斜角度を検出する必要がある。そのため支持台には、第1軸線のまわりの旋回角度を検出するための第1回転角度検出手段及び第2軸線のまわりの傾斜角度を検出するための第2回転角度検出手段が設けられる。これらの検出手段は、例えば、入力軸の回転角度に応じて抵抗値が変化する可変抵抗器を用いた角度検出器を用いることができる。
【0017】表現すべき模擬動作としてスノーボードを用いた滑走動作を考えると、オペレータの身体はディスプレイ等の表現手段に対して横方向を向き、頭部だけが表現手段の方向を向く。オペレータがこのような姿勢をとるときにもオペレータの安全を確保できるようにするためには、支持台のまわりの空間内に手摺り部材を設けることが望ましい。この手摺り部材は、例えば、支持台の上に横向きに乗ったオペレータと表現手段との間及びそのオペレータの前後両側において、棒部材をオペレータに対して横方向に延びるように配置することによって構成できる。
【0018】また、表現すべき模擬動作としてスノーボードを用いた滑走動作を考えるときには、オペレータの身体がディスプレイなどの表現手段に対して横方向を向かなければならない。従って、支持台上にオペレータの足を案内するための案内用突起を設けて、オペレータが支持台上に乗ったときには自動的にその身体が表現手段に対して横方向を向くように案内することが望ましい。このような案内用突起は、例えば、表現手段に向かう方向に関して足の長さに対応した間隔をおいて互いに平行に並べられた複数の突起によって構成できる。
【0019】
【発明の実施の形態】図6は、本発明に係るシミュレータの一実施形態の全体的な外観を示している。このシミュレータは、表現手段としてのディスプレイ1を支持すると共に内部にそのディスプレイ1を制御するための制御装置2を内蔵した筐体3を有している。筐体3から延びる基台4上には操作部5が設けられ、その操作部5の下部から延び出るアーム部材6によって支持台7が片持ち状態で支持されている。操作部5の上面には、各種の選択ボタン10やコイン投入口20等を備えた操作パネル5aが設けられる。オペレータ8は、支持台7の上に乗ってその支持台7を矢印A−A’のように第1軸線L1を中心として左右に往復旋回移動させたり、同時に矢印B−B’のように第2軸線L2を中心として往復傾斜移動させることにより、ディスプレイ1上に映し出される模擬動作としての映像を制御する。本実施形態の場合、第1軸線L1は垂直軸線であり、第2軸線L2は水平軸線である。
【0020】本実施形態の場合、ディスプレイ1上にはスキー場の景色映像及びスノーボードを用いて雪面を滑走するプレイヤの映像が映し出されるものとする。また、支持台7は、スノーボードを模した形状に形成される。また、支持台7のまわりには4個の支柱9が固定されて上方へ延び、それらの支柱9により、オペレータ8とディスプレイ1との間及び支持台7上に横向きに乗ったオペレータ8の前後両側に手摺り部材11が支持されている。これらの手摺り部材11は、比較的剛性の高い棒部材によって形成される。オペレータ8は、これらの手摺り部材11につかまることにより、操作台7を激しく動かすことができる。
【0021】支持台7は、例えば図1、図2及び図3に示す構造を有している。図1は側面図、図2は平面図、そして図3は正面図を示している。図1において、操作部5の内部には、位置不動の機枠14に固定された軸受12,12によって第1軸線L1を中心として回転自在に、しかし上下移動不能に支持された回転軸13が配設され、その回転軸13にアーム部材6が固定されている。回転軸13の上端には、図2に示すように、その回転軸13と一体な断面正方形状の芯部材15と、その芯部材15を取り囲む断面正方形状で筒形状のケーシング部材16と、そしてケーシング部材16と芯部材15との間に形成される空間内に挿入された弾性部材としてのゴム17とによって構成された第1抵抗力付与装置18が設けられる。ケーシング部材16は機枠14に固定される。弾性部材は、ゴム17以外に、圧縮されたときに反力を生じる材料、例えば合成樹脂等によって形成できる。
【0022】図1において、アーム部材6の下端には、角筒形状のパイプ基台19が水平方向に延びる状態で強固に固定される。このパイプ基台19の上には軸受け部材21a及び21bが固定され、さらにそれらの軸受け部材によって2本の回転軸22a及び22bが第2軸線L2を中心として回転自在に支持される。これらの回転軸22a及び22bの外周面には、支持台7の底面に固着したブラケット23が固定される。この構成により、支持台7は、第1軸線L1を中心として水平面内の左右方向(図2の矢印A−A’方向)へ往復旋回移動可能であり、さらに第2軸線L2を中心として図3の矢印B−B’方向へ往復傾斜移動可能である。
【0023】図1において、操作部5に近い側の回転軸22aの右端に第2抵抗力付与装置28が設けられる。この第2抵抗力付与装置28も、第1抵抗力付与装置18と同様にして図5に示すように、回転軸22aと一体な断面正方形状の芯部材25と、その芯部材25を取り囲む断面正方形状で筒形状のケーシング部材26と、そしてケーシング部材26と芯部材25との間に形成される空間内に挿入された弾性部材としてのゴム27とを有している。ケーシング部材26はパイプ基台19の上面に固定される。
【0024】図2において第1抵抗力付与装置18は、支持台7に外力が加わらない自然状態のときに、各ゴム17が力学的に平衡となる状態にあり、このとき支持台7は中立位置に保持される。支持台7が矢印A方向又は矢印A’方向へ旋回移動すると支持台7を支持する回転軸13がそれと一体になって回転し、それと同時に芯部材15がそれと一体になって回転する。芯部材15が回転すると、各ゴム17がケーシング部材16に押しつけられて弾性変形して抵抗力を発生する。この抵抗力は、回転軸13の回転角度、従って支持台7の旋回角度の大きさに比例して変化する。
【0025】第2抵抗力付与装置28は、支持台7に外力が加わらない自然状態のときに、図5において、各ゴム27が力学的に平衡となる状態にあり、このとき支持台7は図3に実線で示す水平状態の中立位置に保持される。支持台7が矢印B方向又は矢印B’方向へ傾斜移動すると支持台7を支持する回転軸22aがそれと一体になって回転し、それと同時に芯部材25がそれと一体になって回転する。芯部材25が回転すると、各ゴム27がケーシング部材26に押しつけられて弾性変形して抵抗力を発生する。この抵抗力は、回転軸22aの回転角度、従って支持台7の傾斜角度の大きさに比例して変化する。
【0026】図1において第1軸線L1を中心として回転する回転軸13の下端には、その回転軸13の回転角度に応じて抵抗値が変化する可変抵抗器を含む第1角度センサ29が設けられる。また、第2軸線L2を中心として回転する回転軸22aの先端には、その回転軸22aの回転角度に応じて抵抗値が変化する可変抵抗器を含む第2角度センサ31が設けられる。
【0027】支持台7の下部には、支持台7の第2軸線まわりの傾斜移動を禁止するためのロック装置32が配設される。このロック装置32は、抵抗力発生器33と、抵抗力調整部34と、そしてレバー35とを有している。抵抗力発生器33は、本体部分36と、その本体部分36に入出する出力ロッド37と、その出力ロッド37の先端に固定された押圧片38とを有している。
【0028】抵抗力発生器33の本体部分36は、図4に示すように、外管43、内管39及び可動子41を有する。内管39には複数のオリフィス42が設けられ、さらに出力ロッド37と一体なピストン45が内管39の内周面を滑り移動する。可動子41の左端部41aは外管43の後端部とネジ結合し、その左端部41aを回すことにより可動子41が矢印C方向へ進退移動する。内管39と外管43との間にはリング状の空間Sが形成され、その空間Sと内管39の内部とがオリフィス42によってつながっている。また、可動子41には空間Sに連通する流体通路44が設けられ、可動子41が矢印C方向へ移動するとき、通路44の開口面積が狭められたり、あるいは広められたりして、該部を流れる流体、例えば油の流量を調節する。
【0029】内管39の内部及び空間Sには流体、例えば油が充填されており、この流体の働きによって出力ロッド37に抵抗力が付与される。この抵抗力は、可動子41の通路44が完全に閉じられて流体の流量が完全に絞られたときに最大となり、他方、その通路44が完全に開いて流体の流量が最大流量に設定されたときに最小となる。抵抗力が最大値になったときには、出力ロッド37の左方向への進入移動が完全に阻止される状態、いわゆるロック状態になる。一方、抵抗力が最小値になったときには、出力ロッド37の左方向への自由な進入移動が許容される。
【0030】本実施形態では、可動子41の端部41aが角度0゜の基準位置に合わされたときに流体通路44が全開状態(出力ロッド37のロック解除状態)になり、端部41aが角度180゜まで回されたときに通路44が全閉状態(出力ロッド37のロック状態)になり、そして角度0゜から角度180゜までの間はその角度値に比例して出力ロッド37に対する抵抗力すなわちロック力の大きさが変化する。なお、出力ロッド37は自然状態において、圧縮バネ40によって押されて外管43から最も突出する状態にある。
【0031】図1において、出力ロッド37の先端に取り付けた押圧片38は、レバー35の下端に接触する。レバー35は、図2に示すように、パイプ基台19上に回転自在に配設された回転軸46の両端に1個づつ固着されている。つまり、レバー35は、基台19を境として支持台7の下方の左右両側に配設されている。図1において、支持台7が水平状態にあるとき、出力ロッド37がシリンダ本体部分36に対して最も突出して接触片35を押し上げ、これにより接触片35の先端が実線で示すように最も上方位置へ押し上げられて、支持台7の底面に接触する。他方、支持台7が第2回転中心軸線L2のまわりに傾斜移動すると、接触片35が破線で示すように押し下げられて回転し、このとき、出力ロッド37がシリンダ本体部分36の内部へ引っ込む。
【0032】出力ロッド37が最も突出してレバー35の先端が最上位置に置かれ、さらに抵抗力発生器33の内部流体通路44が全閉状態にセットされると、レバー35がその最上位置でロック状態となる。この状態になると、支持台7が水平状態を維持した状態でロック状態になり、この支持台7にオペレータが乗ったとしてもその支持台7は往復傾斜移動すなわち傾斜揺動しない。
【0033】図1において、抵抗力発生器33の後方位置に配設された抵抗力調整部34は、パイプ基台19の側部に固定したブラケット47によって回転自在に支持された回転軸48と、モータ49と、そしてモータ49の出力回転を回転軸48へ伝達するギヤ列51とを有している。図4において、回転軸48の先端にはドライバ54が取り付けられており、そのドライバ54が可動子41の左端部41aに嵌合する。また、図1において、回転軸48の適所には、回転角度位置を検出するためのマークを備えたホイール52が固定配置され、そのホイール52のマークを検出するために透過型又は反射型の光センサ53が設けられる。本実施形態では、図4に示した可動子41の端部41aが基準角度0゜(全開位置)にあるとき及び角度180゜(全閉位置)にあるときのそれそれに対応させてホイール52にマークが設けられる。
【0034】モータ49が作動して回転軸48が角度180゜の全閉位置から角度0゜の全開位置まで回転すると、レバー35従って支持台7はロック状態からロック解除状態へと状態変化する。この状態変化の際、抵抗力発生器33によって出力ロッド37に発生する抵抗力は、ロック状態を実現する最大力から、ほとんど抵抗力を示さない最小力へと徐々に且つ連続的に小さくなってゆく。従って、水平状態にロックされている支持台7の上にオペレータが乗り、その後、シミュレート動作を開始するために支持台7のロック状態を解除するとき、支持台7は瞬間的にロック状態を解除されるのではなくて徐々にそのロック状態が解除される。
【0035】図6において、筐体3の内部に設置された制御装置2は、コンピュータを含んだ電気回路によって構成されていて、例えば図7に示すように、ゲーム演算部61及び画像合成部62を有する。操作部63は、図1R>1の操作パネル5aに配置された各種選択ボタン10や、コイン投入口20から投入されたコインを検知するコインセンサや、支持台7の旋回角度を検知する第1角度センサ29や、支持台7の傾斜角度を検知する第2角度センサ31等を含む。
【0036】ゲーム演算部61は、マップ情報記憶部64、移動体情報記憶部65、ゲーム空間演算部66及び記憶部67を有する。マップ情報記憶部64は、ボード滑走コースに関する情報を分割マップ情報として記憶する。すなわち、コース情報が各地点の平面座標とその地点の高度座標として記憶されている。移動体情報記憶部65は、ボードプレイヤの現在位置を3次元座標で記憶する。ゲーム空間演算部66は、移動体情報記憶部65からボードプレイヤの現在位置を読み出し、さらに操作部63からの操作信号及びマップ情報記憶部64からの地形信号に基づいてボードプレイヤの移動位置を演算し、そして記憶部67に格納された自然条件の変化や、風の変化等に従ってボードプレイヤの移動位置を演算する。なお、移動体情報記憶部65内の記憶内容は、模擬動作を表示する手段としてディスプレイ1を用いた関係上、ゲーム空間演算部66の演算に基づいて1/60秒ごとに更新される。ゲーム空間演算部66は、支持台7の上に乗っているオペレータに対応するボードプレイヤの位置座標を演算することはもとより、ディスプレイ1上に映し出される他のボードプレイヤに関する位置座標も演算する。
【0037】画像合成部62は、3次元演算部68、画像描画部69及びオブジェクト画像情報記憶部71を有する。オブジェクト画像情報記憶部71は、コースの映像を作成するために必要な情報、例えば、ボードプレイヤなどの移動体の画像情報、雪面の地面、山、木、川、建物などの画像情報を記憶する。3次元演算部68は、ゲーム空間演算部66から出力されたデータ、すなわち移動体情報、分割マップ情報等に基づいて、対応する画像情報をオブジェクト画像情報記憶部71から読み出し、例えば図8に示すような3次元のゲーム空間を演算する。この図において、81はボードプレイヤ、82は旗門、83は建物、84はリフト、85は雪山、そして86は樹木を示している。
【0038】3次元演算部68は、また、視野外にあるデータを除去するクリッピング処理、スクリーン座標系への透視投影変換及びソーティング処理などの処理を行ってその処理後のデータを画像描画部69へ出力する。画像描画部69は、3次元演算部68の出力データをディスプレイ1で映像表示可能な映像データへ変換する。例えば、図8に示した3次元ゲーム空間は、図9に示すような映像としてディスプレイ1上に表示される。この映像は、ゲーム空間演算部66による演算処理に基づいて1/60秒ごとに更新され、オペレータにとっては連続して変化するスキー場の景色映像として認識される。
【0039】以下、上記構成より成るシミュレータに関してその動作を説明する。図1において、支持台7の上にオペレータが乗る前、その支持台7は、第1抵抗力付与装置18の働きによって旋回揺動範囲内の中立位置に保持され、さらに第2抵抗力付与装置28の働きによって傾斜揺動範囲内の中立位置すなわち水平状態に保持される。支持台7は、また、ロック装置32の働きによって水平状態に固定すなわちロックされる。
【0040】その後、図6に示すように、オペレータ8が支持台7の上に乗る。このとき、支持台7はロック状態にあるので、それに外力が加わっても揺動しない。その後、コイン投入口20にコインを投入し、さらに選択ボタン10を操作すると、シミュレータ動作、本実施形態の場合はスノーボードゲームが開始される。ゲームが開始されると、図1において、抵抗力調整装置34のモータ49が作動して回転軸48が角度180゜の全閉位置から角度0゜の全開位置へと回転する。これにより、抵抗力発生器33の本体部分36内の流体通路44(図4参照)が全閉位置から全開位置へ向かって徐々に開かれ、その結果、支持台7に対するロック力が最大値から最小値へと徐々に解除される。
【0041】ロック力が完全に解除されると、支持台7は、オペレータ8の操作に従って第2軸線L2を中心として自由に往復傾斜移動できる状態となる。このロック力の解除の際、ロック力は最大力から最小力へと瞬時に解除されるのでは無く、モータ49の回転軸48の回転に応じて徐々に小さくなっていくので、支持台7はゲームスタートと共にいきなり自由に傾斜移動できる状態になるのではなくて、徐々にその自由状態へと移行する。なお、本実施形態の場合は、第1軸線L1を中心とする支持台7の往復旋回移動に関してはロック装置を設けていないので、その旋回方向に関しては支持台7はロックされない。この旋回方向に関してもロック作業が必要な場合は、ロック装置32と同様なロック装置を回転軸13に対して付設する。
【0042】支持台7に関するロック状態が解除された後、スキー場を滑り降りるときの景色の移り変わりの様子を模した映像がディスプレイ1上に映し出され、オペレータ8はその景色の中をスノーボードに乗ってうまく滑り降りるように支持台7を両足によって操作する。具体的には、支持台7を第1軸線L1のまわりに旋回移動させたり、同時に第2軸線L2のまわりに傾斜移動させる。このとき、支持台7の旋回移動の角度及び傾斜移動の角度は第1角度センサ29及び第2角度センサ31によって検出されてゲーム空間演算部66(図7)へ送られる。ゲーム空間演算部66は、それらの角度情報に基づいて、ディスプレイ1に映し出される景色映像及びボードプレイヤ映像を制御する。このようにオペレータ8は、支持台7を旋回移動及び傾斜移動させることにより、ディスプレイ1によって表現される滑走画面、すなわち模擬動作に対して積極的に働きかけることができる。
【0043】支持台7が第1軸線L1のまわりに旋回移動して中立位置から角度的に外れると、図2において、第1抵抗力付与装置18内のゴム17が芯部材15によって圧縮されて抵抗力を発生し、この抵抗力が支持台7を通してオペレータ8に体感される。また、支持台7が第2軸線L2のまわりに傾斜移動して中立位置すなわち水平状態から角度的に外れると、図5において、第2抵抗力付与装置28内のゴム27が芯部材25によって圧縮されて抵抗力を発生し、この抵抗力が支持台7を通してオペレータ8に体感される。これらの抵抗力によりオペレータ8は、雪面を滑走するときの旋回滑走に対する抵抗力や、スノーボードを立ててエッジング操作を行ったときの抵抗力などを臨場感豊かに体感できる。
【0044】本実施形態では、ディスプレイ1上にスノーボードの滑走画面を模擬動作として映し出し、そして支持台7をスノーボードを模して使用するように設定した。従ってオペレータ8は、支持台7の上に横向き状態で乗りながら支持台7を操作する。また、オペレータは手摺り部材11を支点として支持台7を大きな角度幅で往復旋回移動及び往復傾斜移動させることができる。
【0045】疑似スノーボード操作を行う場合、オペレータ8は横向き状態で支持台7の上に乗らなくてはならない。仮にオペレータ8がディスプレイ1に真っ直ぐに向かい合う状態で支持台7上に乗ったのでは、正常なスノーボード操作はできない。このような問題を解消するため、図10に示すように、オペレータ8の左右の足裏8a及び8bを案内するための案内用突起72を支持台7の上に設けることが望ましい。これらの案内用突起72は、ディスプレイ1へ向かう方向(矢印D方向)に関して左右の足裏の長さに対応したそれぞれの間隔E1及びE2をおいて互いに平行に並べられているので、オペレータ8は必然的に横向きに乗らざるを得なくなり、ディスプレイ1に対して真っ直ぐに乗ってしまう状態を確実に回避できる。なお、E1及びE2は等しい値とすることもできるし、あるいは異なった値とすることもできる。
【0046】以上、好ましい実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された技術的範囲内で種々に改変できる。例えば、本発明はスノーボード動作に限られず他の任意の動作を模擬対象とするシミュレータにも適用できる。第1抵抗力付与装置18及び第2抵抗力付与装置28は、請求の範囲に記載した動作を実現できる範囲内で上記実施形態に示した構成以外の任意の構成とすることができる。手摺り部材11は、オペレータ8とディスプレイ1との間だけに設けても良く、あるいは、ディスプレイ1に対して横方向を向くオペレータ8の前後両側だけに設けても良い。また、手摺り部材11の形状は、単なる直線状の棒部材に限られず、適宜に湾曲する棒部材を用いることもできる。
【0047】
【発明の効果】請求項1記載のシミュレータによれば、オペレータが支持台を旋回移動及び傾斜移動させることにより、ディスプレイなどの表現手段によって表現される模擬動作に積極的に働きかけることができる。旋回移動と傾斜移動とを組み合わせた複合移動によって模擬動作を制御するので精密な模擬動作を実現できる。また、第1抵抗力付与手段及び第2抵抗力付与手段の働きにより、地面等からの抵抗力を体験でき、従って、臨場感豊かな模擬動作を提供できる。さらに、第1抵抗力付与手段及び第2抵抗力付与手段を、非常に小型で簡単でしかも故障のない安定した構成によって実現できる。
【0048】請求項2記載のシミュレータによれば、第1軸線と第2軸線とがほぼ直交するので、スノーボード滑走の模擬動作やスキー滑走の模擬動作等を忠実に再現できる。
【0049】
【0050】請求項3記載のシミュレータによれば、現実に動作する物体を用いて表現手段を構成する場合に比べて、多種多様な模擬動作を表現できる。
【0051】請求項4記載のシミュレータによれば、スノーボードを用いた滑降動作を模擬できる。
【0052】請求項5記載のシミュレータによれば、簡単な検出機構によって支持台の細かな動きを正確に読み出すことができる。
【0053】請求項6記載のシミュレータによれば、オペレータが支持台上に横向きになって乗り、そして支持台を旋回移動方向及び傾斜移動方向に操作する場合でも、オペレータが手摺り部材につかまって、それを支点として身体を動かすことにより、支持台の動作量を大きくできる。
【0054】請求項7記載のシミュレータによれば、オペレータのまわりの広い範囲に手摺り部材が配置されるので、オペレータは支持台の上で種々の姿勢をとることが可能になる。
【0055】請求項8記載のシミュレータによれば、オペレータが支持台上で間違った姿勢をとることを防止できる。特に、請求項9記載のシミュレータによれば、スノーボード動作を模擬する場合のように、オペレータが支持台上で表現手段に対して横方向を向かなければならない場合に好都合である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るシミュレータの要部を示す側面図である。
【図2】図1に示す部分の平面図である。
【図3】図1に示す部分の正面図である。
【図4】図1に示す構造で用いられる要素、特にロック機構の主要部を示す側面断面図である。
【図5】図1に示す構造で用いられる要素、特に抵抗力付与機構の主要部を示す正面断面図である。
【図6】本発明に係るシミュレータの一実施形態の全体の外観を示す斜視図である。
【図7】図6に示すシミュレータに用いられる電気制御系の一例を示すブロック図である。
【図8】図6のシミュレータで表現される模擬動作の一例を3次元的に示す図である。
【図9】図8に示す3次元空間をディスプレイ上に2次元的に表示した状態を示す図である。
【図10】支持台の改変例を示す平面図である。
【符号の説明】
1 ディスプレイ(表現手段)
2 制御装置
3 筐体
6 アーム部材
7 支持台
8 オペレータ
11 手摺り部材
13 回転軸
14 機枠
15,25 芯部材
16,26 ケーシング部材
17,27 ゴム(弾性部材)
18 第1抵抗力付与装置
19 パイプ基台
21a,21b 軸受け部材
22a,22b 回転軸
23 ブラケット
28 第2抵抗力付与装置
29 第1角度センサ
31 第2角度センサ
32 ロック装置
33 抵抗力発生器
34 抵抗力調整器
35 レバー
L1 第1軸線
L2 第2軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】 オペレータの動作に対応して表現手段によって模擬動作を表現するシミュレータにおいて、第1軸線を中心として往復旋回移動可能であり且つ第1軸線と交わる方向に延びる第2軸線を中心として往復傾斜移動可能であって、オペレータを乗せるための支持台と、支持台を自然状態下で第1軸線に対して中立位置に保持すると共に、支持台がその中立位置から外れる方向へ旋回移動するときその支持台に抵抗力を加える第1抵抗力付与手段と、支持台を自然状態下で第2軸線に対して中立位置に保持すると共に、支持台がその中立位置から外れる方向へ傾斜移動するときその支持台に抵抗力を加える第2抵抗力付与手段と、支持台の第1軸線及び第2軸線のまわりの往復移動に応じて表現手段による模擬動作を制御する制御手段とを有し、前記第1抵抗力付与手段及び前記第2抵抗力付与手段の少なくとも1つは、支持台と一体に動く断面角形状の芯部材と、その芯部材を包囲する断面角形状のケーシング部材と、芯部材とケーシング部材との間の空間に配設された弾性部材とを有することを特徴とするシミュレータ。
【請求項2】 請求項1記載のシミュレータにおいて、第2軸線は第1軸線に対して直角方向に延びることを特徴とするシミュレータ。

【請求項3】 請求項1又は請求項2
に記載のシミュレータにおいて、表現手段は仮想ゲーム空間を映像として表現するディスプレイであることを特徴とするシミュレータ。

【請求項4】 請求項1から請求項3
のうちの少なくともいずれか1つに記載のシミュレータにおいて、支持台は雪面滑降用の単一板であるスノーボードを模して形成され、表現手段はスキー場の景色を仮想ゲーム空間として映像表示することを特徴とするシミュレータ。

【請求項5】 請求項1から請求項4
のうちの少なくともいずれか1つに記載のシミュレータにおいて、制御手段は、支持台の第1軸線のまわりの旋回角度を検出するためにその第1軸線の軸線上に配設された第1回転角度検出手段と、支持台の第2軸線のまわりの傾斜角度を検出するためにその第2軸線の軸線上に配設された第2回転角度検出手段とを有することを特徴とするシミュレータ。

【請求項6】 請求項1から請求項5
のうちの少なくともいずれか1つに記載のシミュレータにおいて、支持台のまわりの空間内にオペレータを支えるための手摺り部材を設けたことを特徴とするシミュレータ。

【請求項7】 請求項6記載の
シミュレータにおいて、手摺り部材は、支持台上に横向きに乗ったオペレータと表現手段との間及びそのオペレータの前後両側においてオペレータに対して横方向に延びるように配置された棒部材であることを特徴とするシミュレータ。

【請求項8】 請求項1から請求項7
のうちの少なくともいずれか1つに記載のシミュレータにおいて、支持台上にオペレータの足を案内するための案内用突起を設けたことを特徴とするシミュレータ。

【請求項9】 請求項8記載の
シミュレータにおいて、案内用突起は、表現手段に向かう方向に関して足の長さに対応した間隔をおいて互いに平行に並べられた複数の突起によって構成されることを特徴とするシミュレータ。

【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図9】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図7】
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【特許番号】特許第3001038号(P3001038)
【登録日】平成11年11月12日(1999.11.12)
【発行日】平成12年1月17日(2000.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−336173
【出願日】平成7年11月30日(1995.11.30)
【公開番号】特開平9−149957
【公開日】平成9年6月10日(1997.6.10)
【審査請求日】平成10年3月13日(1998.3.13)
【出願人】(000134855)株式会社ナムコ (1,157)
【参考文献】
【文献】特開 平8−299517(JP,A)
【文献】特開 平8−131594(JP,A)