説明

シム、シムを用いた連結構造体及びシムを用いた室内照明灯

【課題】摩擦力を小さくすることなく小型化を図ることができるシム、シムを用いた連結構造体及びシムを用いた室内照明灯を提供する。
【解決手段】連結構造体は互いに相対回転可能な第1連結部材8及び第2連結部材7と、これらの連結部材の間に介在されると共に相対回転時に摩擦により負荷を与えるシム18とを備え、シムは、円板形状で外周面を摩擦面とする基盤部18aと、基盤部より大径の円板形状で外周面を摩擦面とすると共に段状に設けられる大径部18bと、大径部側から軸方向に突出した角柱形状の固定部18cとを有し、第1の連結部材は、基盤部が回転可能に嵌合する基盤部受け部15aと、大径部が回転可能に嵌合する大径部受け部15bとを備えた段状のシム受け孔15を有し、第2の連結部材は、固定部に回転不能に嵌合する固定部受け部21を有する。このため、摩擦面を内周面にする従来と比べてより小型化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに相対回転する連結部材の連結部に介在され、連結部材の相対回転時に摩擦により負荷を与えるシム及びシムを用いた連結構造体に関し、更に詳しくは、摩擦力を小さくすることなく連結構造体の小型化を図ることができるシム、シムを用いた連結構造体及びシムを用いた室内照明灯に関する。また、本シム及びシムを用いた連結構造体は、特に車両に用いる室内照明灯の他、空調装置の吹き出し口等に設けられるレジスタのフィン、並びにカーナビゲーションシステム等のカーソル表示やドアミラー及びサイドミラー等の向き方向等を指示する指示スティック等の、任意の1軸以上の連結構造体に対して用いることができる。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の空調装置の吹き出し口に設けられるレジスタはフィンを具備しており、そのフィンは回転する2軸の連結構造体により支持され、風向きを変えるために手動で向きを変更することができる。そして、フィンの向きが容易に回転して風向きが変わってしまわないように、連結構造体にはシムを利用し、フィンの向きを変える際にはある程度の手応えが発生するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
このシム100は、例えば図10に示すように、第1連結部材101の回転軸部102と第2連結部材103の軸受部104との間に介在されている。そして、シム100は、回転軸部102に嵌装される軸受孔105と、軸受部104に嵌装される固定突起106とを備えている。ここで、回転軸部102及び軸受孔105は円柱形状であり、第1連結部材101とシム100とは互いに回転可能に設けられている。一方、軸受部104と固定突起106とは例えば四角柱形状であり、第2連結部材103とシム100とは互いに回転不能に固定されている。
これにより、第1連結部材101と第2連結部材103に相対回転させる外力が作用したときは、第1連結部材101が第2連結部材103及びシム100に対して回転しようとし、回転軸部102の外周面と軸受孔105の内周面の摩擦で生じる抵抗力より外力が大きくなった時点で回転を始める。
【0003】
【特許文献1】特開2001−97035号公報
【0004】
しかし、前記従来のシム100では、摩擦面は軸受孔105の内周面であるので、摩擦面を大きくしようとするとシム100の外径は更に大きくなって連結構造体が大型化してしまい、摩擦面を大きくすることが困難であった。また、固定突起106がシム100の外周側にあり、且つ四角形であることも連結構造体の小型化の障害となっていた。更に、固定突起106を支持する台座107が必要であり、この台座107は2つの連結部材101,103の間に位置するので、これら2つの連結部材101,103の間に余計な隙間を作ってしまう。また、円柱面や球面にシム100を取り付ける場合は、シム100が四角形であるので比較的広い面積を平面にして取り付けなければならないため、連結構造体の小型化は困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記現状に鑑みてなされたものであり、摩擦力を小さくすることなく連結構造体の小型化を図ることができるシム、シムを用いた連結構造体及びシムを用いた室内照明灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
1.互いに相対回転可能な第1連結部材と第2連結部材との間に介在されると共に、相対回転時に摩擦により負荷を与えるシムであって、円板形状であり且つ外周面を摩擦面とする基盤部と、前記基盤部より大径の円板形状であり、その外周面が摩擦面であり且つ前記基盤部に連続して段状に設けられる大径部と、前記大径部側から軸方向に突出した角柱形状の固定部と、を有することを特徴とするシム。
2.前記固定部の根元周囲には角柱形状の凹部からなる固定凹部が更に設けられる前記1.記載のシム。
3.互いに相対回転可能な第1連結部材及び第2連結部材と、これらの連結部材の間に介在されると共に相対回転時に摩擦により負荷を与えるシムと、を備える連結構造体であって、前記シムは、円板形状で外周面を摩擦面とする基盤部と、前記基盤部より大径の円板形状であり、その外周面が摩擦面であり且つ前記基盤部に連続して段状に設けられる大径部と、前記大径部側から軸方向に突出した角柱形状の固定部と、を有し、前記第1連結部材は、前記基盤部が回転可能に嵌合する基盤部受け部と、前記大径部が回転可能に嵌合する大径部受け部と、を備えた段状のシム受け孔を有し、前記第2連結部材は、前記固定部に回転不能に嵌合する固定部受け部を有することを特徴とする連結構造体。
4.前記シムの前記固定部の根元周囲には角柱形状の凹部からなる固定凹部が更に設けられると共に、前記第2連結部材の固定部受け部の先端が前記固定凹部に回転不能に嵌合することを特徴とする前記3.記載の連結構造体。
5.前記シム受け孔は、その深さが前記基盤部及び前記大径部の厚さの和である貫通孔である前記4.記載の連結構造体。
6.光源を具備する照射部と、前記光源の点灯制御の選択を行うスイッチと、前記照射部及び前記スイッチを支持するハウジングと、を備える室内照明灯であって、前記照射部は、少なくとも1軸の請求項3乃至5の記載の連結構造体を介して前記ハウジングによって支持されていることを特徴とする室内照明灯。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシム、シムを用いた連結構造体及びシムを用いた室内照明灯によれば、基盤部及び大径部の外周面を摩擦面として第1連結部材に回転可能に保持されるので、摩擦面を内周面にする従来と比べて摩擦面をより広く確保することができる。これにより、従来と同等の摩擦力を得るのであればシムの小型化を図ることができる。また、摩擦面を広く確保することができるため、その分だけ摩耗しにくく、経年による摩擦力の低下を抑えることができる。更に、摩擦面を広く確保することができるため、軸受のうちで1箇所に設ければよく、部品点数や工数を最低限に抑えることができる。
また、摩擦面が段状に形成されているので、第1連結部材が板状でシム受け孔が貫通孔であっても、貫通孔に対応する段差を設けることによってシムが脱落することを防止できる。更に、段状に形成されていることから、組み付け時には誤組付けを防止することができる。
しかも、基盤部及び大径部が円板形状なので、円柱面あるいは球面に取り付ける場合に、従来のような四角形のものに比べて取付けに必要な平面の面積を小さくすることができる。これにより、連結構造体の小型化を図ることができる。また、基盤部及び大径部がシム受け孔に嵌め込まれるので、2つの連結部材の間に余計な隙間を設ける必要がない。
【0008】
また、シムの固定部の根元周囲に固定凹部が更に設けられ、第2連結部材の固定部受け部の先端が固定凹部に回転不能に嵌合する場合は、シムと第2連結部材とは固定部の外周面と固定部受け部の内周面との嵌合に加え、固定凹部の内周面と固定部受け部の外周面との嵌合もあるので、これらシムと第2連結部材の固定力を高め、且つ破損しにくいものとすることができる。また、第2連結部材の固定部受け部の一部がシム内に埋設されるように嵌合するため、第2連結部材から固定部受け部を大きく突出することがなく、連結構造体を小型化することが容易とすることができる。
更に、シム受け孔が基盤部及び大径部の厚さの和、つまりシムの厚さ分の貫通孔である場合は、シム受け孔を容易に形成及び/又は加工することができ、連結構造体が容易に作製することができる。また、第1連結部材及び第2連結部材の厚さをシム受け孔と同じ厚さまで薄く形成することができるため、連結構造体をより小型化することが容易とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のシムは、相対回転可能な第1連結部材と第2連結部材との間に介在されると共に、相対回転時に摩擦により負荷を与えるシムであり、例えば図1に示すように、円板形状であり且つ外周面を摩擦面とする基盤部18aと、基盤部18aより大径の円板形状であり、その外周面が摩擦面であり且つ基盤部18aに連続して段状に設けられる大径部18bと、大径部18b側から軸方向に突出した角柱形状の固定部18cと、を有することを特徴とする。
本シムの材質は、通常のシムとして用いられ、操作をしない限り第1連結部材と第2連結部材との位置関係を摩擦により維持することができ、耐摩耗性を備える材質であれば任意に選択することができ、例えばエラストマ、ゴム及び樹脂を例示することができる。また、エラストマとしては、ポリオレフィン系エラストマ及びポリエステル系エラストマ等を例示することができる。更にゴムとしてはSBR、IR、CR、EPDM等を例示することができる。また、樹脂としてはPBT、PETE及びPOM等を例示することができる。
また、基盤部18a及び大径部18bの直径の差は、本シムを配設したときに基盤部18a及び大径部18bから構成される段差から外れて脱落しない程度に必要であり、用途に応じて任意に選択される。
固定部18cは、第2連結部材の固定部受け部と回転不能に嵌合することができる形状が好ましく、任意の角柱形状を選択することができる。この角柱の平面形状は任意に選択することができ、正方形、長方形、六角形等の各角が等角度の角柱の他、十字形、星形等の各角が等角でない角柱等を例示することができる。また、基盤部18aの中心軸と、大径部18b及び固定部18cの中心軸とは、同一軸線上に位置するように配置されているのが好ましいとすることができる。また、同一軸線上に限らず、異なる軸線上に位置するように配してもよい。
本発明のシム及びシムを用いた連結構造体は、1軸又は2軸の範囲で、向きを手操作で変えることができ、操作後はその向きが変わることなく維持することができる任意の用途に対して用いることができる。この例として、図9に例示するレンズ3の向きを本連結構造体によって変えることによって照射方向を変えることができる室内照明灯1を挙げることができる。また、フィンの向きを本連結構造体によって変えることによって風の吹き付け方向を変えることができる空調装置の吹き出し口に設けられるレジスタを挙げることができる。更に、スティックの向きを本連結構造体によって変えることによってカーナビゲーションシステム等のカーソル表示位置を指示したり、ドアミラー及びサイドミラー等のミラーの向きを指示したりすることができる指示スティックを挙げることができる。
【0010】
本発明に係る室内照明灯は、光源を具備する照射部と、前記光源の点灯制御の選択を行うスイッチと、前記照射部及び前記スイッチを支持するハウジングと、を備えることを特徴とする。
前記「照射部」は、少なくとも1軸の回転軸を介してハウジングによって支持されることによって、照射方向を変えることができるものである限り、その大きさ、個数等は特に問わない。また、回転軸の数は、室内照明灯の用途に応じて任意の数を選択することができ、例えば1軸、及び2軸を挙げることができる。
このうち2軸とする場合は、面の範囲で向きを変えることができる。2つの回転軸は通常直交するように配設するが、それに限られず、互いになす角度は特に問わない。また、照射部は光源を備え、照射部の向きの変更により光源の向きも同時に変化する。
各回転軸は、1箇所又は対角線上の2箇所に連結構造体を設けることができる。更に、連結構造体の全て又は1箇所以上に本シムを用いた連結構造体を用いることができる。
また、照射部の露出部分の形状は任意に選択することができるが、通常露出部分の周縁形状が真円形であることが好ましい。美観に優れ、且つ照射部の向きを変えるときに支障が出ないためである。
前記「光源」は電気的に発光するものである限り、その種類、形状、大きさ、個数等は特に問わない。この光源は、例えば、LEDとすることができる。
また、照射部及び/又は光源にレンズを設け、光源から発せされる光束を調節することができる。このレンズは、光源からの光を用途に応じて範囲に拡散することができればよく、その大きさ、材質及び形状等を問わない。
【0011】
前記「スイッチ」は光源の点灯制御の選択を行うことができればよく、その形状や大きさ等は特に問わない。この「点灯制御の選択」は、任意に選択することができ、例えば、室内照明灯の常時点灯、常時消灯及びドアの開閉に連動する点灯からなる3つの状態を選択可能であってもよいし、室内照明灯の点灯及び消灯からなる2つの状態を選択可能であってもよい。更に、室内照明灯の点滅や照度の選択等を行うことができる。
【0012】
前記「ハウジング」は照射部及びスイッチを支持する限り、その形状や大きさ等は特に問わない。ハウジングの材質としては例えば、合成樹脂製、金属製等を挙げることができる。また、このハウジングは任意の平面形状を選択することができ、真円形、正多角形(例えば正三角形〜正十二角形等)及び楕円形等を例示することができる。これらのうち、真円形が特に好ましい。従来の室内照明灯と大きく異なる意匠を得ることができるためである。
【実施例】
【0013】
以下、図面を用いて本発明を具体的に説明する。本実施例は、本発明のシム及び連結構造体を用いた自動車等の乗用車用の室内照明灯である。
(1)実施形態の構成
本実施例の室内照明灯1は、図3〜図5に示すように、光源2及びレンズ3を有する照射部4と、光源2のオンオフ制御を行うリング式スイッチ5と、照射部4を支持するレンズホルダ7と、レンズホルダ7を支持する支持リング8と、支持リング8及びリング式スイッチ5を支持するハウジング6と、を備えている。これらハウジング6とリング式スイッチ5とレンズホルダ7と照射部4は同心円状に形成されている。
ハウジング6は円形で合成樹脂からなり、室内側に露出するアウターベゼル9と、その裏側に蓋のように取り付けられるアウタープレート10とを備えている。これらアウターベゼル9とアウタープレート10との中に他の部品が収容される。
照射部4は、光源2であるLEDを具備するLEDユニット11と、光源2からの光線の拡散を防止するLEDホルダー12と、レンズ3と、これらを一体化するLEDホールドプレート13と、を備えている。この照射部4はレンズホルダ7に固定されている。
【0014】
レンズホルダ7の内側には円環形状の支持リング8が設けられている。この支持リング8は、図2〜図5に示すように、外周側に突出した第1回転軸端14とこの第1回転軸端14の反対側に形成された貫通孔である第1シム受け孔15とからなる、第1連結構造体の第1連結部材を構成する。また、第1回転軸端14と90度ずれた位置に形成された第2軸受16と、この第2軸受16の反対側に形成された貫通孔である第2シム受け孔17とからなる、第2連結構造体の第1連結部材を構成する。第1シム受け孔15には第1シム18が、且つ第2シム受け孔17には第2シム19が、それぞれ回転可能に設けられている。
第1シム18はエラストマ製であり、図1に示すように、円板形状で外周面を摩擦面とする基盤部18aと、基盤部18aより大径の円板形状で外周面を摩擦面とすると共に基盤部に連続して中心軸が一致し且つ段状に設けられる大径部18bと、大径部18b側から軸方向に突出した角柱形状の固定部18cと、該固定部18cの根元周囲に形成された角柱形状の凹部からなる固定凹部18dと、を備えている。尚、第2シム19も同様の構造であるため、同じ符号a〜dを付した19a〜19dとして説明を省略する。
支持リング8の第1シム受け孔15は、第1シム18の基盤部18aが摩擦を生じながら回転可能に嵌合する基盤部受け部15aと、大径部18bが摩擦を生じながら回転可能に嵌合する大径部受け部15bとが設けられており、内周面が段状になっている。このように内周面が段状になっているので、第1シム18の脱落を防止することができる。尚、第2シム受け孔17も同様の構造であるので、同じ符号a〜bを付した17a〜bとして説明を省略する。
レンズホルダ7の内面側には、支持リング8の第1回転軸端14を受ける第1軸受20と、第1シム18の固定部18c及び固定凹部18dに回転不能に嵌合する第1固定部受け部21が形成され、第1連結構造体の第2連結部材を構成する。即ち、第1固定部受け部21は、内周面が固定部18cに嵌合すると共に外周面が固定凹部18dに嵌合して固定される。
そして、レンズホルダ7と支持リング8とは、第1回転軸端14が第1軸受20に回転可能に支持されると共に、レンズホルダ7に固定された第1シム18が第1シム受け孔15に回転可能に支持されることにより第1連結構造体を構成し、第1回転軸22として回転可能かつシム18の作用で任意の角度で保持可能に組み付けられている(図3参照)。
また、アウタープレート10には、第2回転軸端23と、第2シム19の固定部19c及び固定凹部19dに回転不能に嵌合する第2固定部受け部24が形成され、第2連結構造体の第2連結部材である。即ち、第2固定部受け部24は、内周面が固定部19cに嵌合すると共に外周面が固定凹部19dに嵌合して固定される。
また、アウタープレート10には、支持柱10aが形成されている。更に、支持柱10aと支持リング8とは、第2回転軸端23が第2軸受16に回転可能に支持されると共に、アウタープレート10に固定された第2シム19が第2シム受け孔17に回転可能に支持されることにより第2連結構造体を構成し、第2回転軸25として回転可能かつシム19の作用で任意の角度で保持可能に組み付けられている(図4参照)。
ここで、レンズホルダ7と支持リング8とを連結する第1回転軸22と、支持リング8とアウタープレート10とを連結する第2回転軸25とのなす角度は90度としている(図6参照)。また、各回転軸での最大回転角度は56度としている(図7参照)。
【0015】
レンズホルダ7の外側にはリング式スイッチ5が設けられている。リング式スイッチ5は、円環状のスイッチノブ26と、スイッチの接点となる金属製のスイッチプレート27と、スイッチプレート27に付勢するスイッチスプリング28と、スイッチの回転時に節度感を出すためのピン29及びピンスプリング30と、を備えている。スイッチノブ26の周縁には等間隔、つまりスイッチノブ26を二分する位置に設けられた一対のフランジ31を備えている。このフランジ31はアウターベゼル9とアウタープレート10により形成される案内孔32に入って所定の回転角度内で案内され、スイッチノブ26の回転軸となる。
スイッチプレート27は、アウタープレート10に装着された基板33の接点パターンに接触する。ピン29はアウタープレート10に形成された3つの凹部34に移動可能に入り込んでいる。そして、スイッチノブ26を回転することにより、ピンスプリング30によって凹部34に付勢されたピン29が一方の凹部34から他方の凹部34に移動することでスイッチの状態が変化した感触を得ることができる。これと同時にスイッチプレート27が基板33に対して移動し、接点パターンの接続状態が変化する。本実施例では、照明の常時点灯、常時消灯及びドアの開閉に連動する点灯の3つの状態を選択可能なものとしている。
アウターベゼル9は、室内側に露出するフランジ39と、天井35の裏側に引っ掛かる爪36及び係合バネ37とを備えている。係合バネ37は爪36と反対側に配置されており、室内照明灯1の天井35への装着時には弾性変形して装着可能となり、装着後には天井35の裏面に引っ掛かって脱落を防止する構造となっている。アウタープレート10には基板33が取り付けられている。基板33とLEDユニット11とはワイヤハーネス38で接続されている。
【0016】
この室内照明灯1は、乗用車の前部座席上方の天井35であり、バックミラー周辺の位置に1個だけ設けられている。これにより、前部座席の乗員の手元から後部座席の後ろの荷室まで広い範囲を照射することができる。
【0017】
(2)実施形態の作用
次に、前記構成の室内照明灯1の組立て手順について説明する。
先ず、レンズ3にLEDホルダー12を装着し、そこにLEDユニット11を載せてLEDホールドプレート13で挟んで照射部4を組み立てる。LEDユニット11にワイヤハーネス38を接続する。この照射部4をレンズホルダ7に装着する。レンズホルダ7の第1固定部受け部21に第1シム18を嵌め込んで固定する。
そして、支持リング8の第1シム受け孔15を第1シム18に嵌合し、続いて第1回転軸端14を第1軸受20に嵌合することで、支持リング8をレンズホルダ7の内側に装着する。
更に、アウタープレート10の第2固定部受け部24に第2シム19を嵌め込んで固定する。そして、アウタープレート10の第2シム19を支持リング8の第2シム受け孔17に嵌合し、続いて第2回転軸端23を第2軸受16に嵌合することで、アウタープレート10を支持リング8に装着する。
一方、アウターベゼル9の内側にスイッチノブ26を装着する。この時、スイッチノブ26のフランジ31がアウターベゼル9の案内孔32に入るようにする。そして、スイッチプレート27とスイッチスプリング28を装着し、またピン29とピンスプリング30も装着する。
続いて、照射部4、レンズホルダ7及び支持リング8を組み付けたアウタープレート10をアウターベゼル9に取り付ける。更に、アウタープレート10の外側に基板33をネジ留めし、ワイヤハーネス38を接続する。
室内照明灯1を天井35に取り付ける際は、図8に示すように、アウターベゼル9の爪36を天井35の装着穴の縁に斜めに引っ掛け、それから反対側を持ち上げて係合バネ37を弾性変形させて天井35の裏に押し込むようにする。これにより、爪36と係合バネ37が天井35の裏に引っ掛かって脱落が防止される。
【0018】
次に、前記構成の室内照明灯1の動作について説明する。
使用者がスイッチノブ26を把持して回転させると、スイッチプレート27が移動して光源2のオンオフが切り替わる。また、使用者がレンズホルダ7を把持して光軸を変えるように外力を加えると、図9に示すように、レンズホルダ7がアウタープレート10に対して支持リング8の2つの回転軸22,25を介して適宜回転する。これにより、可動範囲内で任意の位置を照射することができるようになる。ここで、第1回転軸22においては、第1シム18が支持リング8の第1シム受け孔15との間で摩擦を生じながら回転するので、回転後に任意の角度に設定したまま保持することができる。同様に、第2回転軸25においては、第2シム19が支持リング8の第2シム受け孔17との間で摩擦を生じながら回転するので、回転後に任意の角度に設定したまま保持することができる。
【0019】
(3)実施形態の効果
本実施形態のシム18,19及びこれらを用いた連結構造体によると、固定凹部18d、19dが設けられているので、各固定部受け部21,24に対してより強固に回転止めを図ることができる。
また、本実施例の室内照明灯1によれば、レンズホルダ7の内側に2つの回転軸22,25を設けているので、照射部4の可動範囲を大きくし、且つ強固に回転止めを図ることができる。
更に、各シム18,19は、最外周が大径部18b、19bであり、且つ厚みが基板部18a、19aと大径部18b、19bとの分のみで済み、且つ基板部18a、19a及び大径部18b、19bからなる段差によって脱落しないように配設することができるため、支持リング8を薄くすることができ、室内照明灯を小さく作成することができる。
【0020】
尚、本発明においては、前記実施形態に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施形態とすることができる。即ち、前記実施形態では、各シム18,19に固定凹部18d、19dが設けられるようにしたが、これに限定されず、例えば、これら固定凹部18d、19dはなくてもよい。また、支持リング8にシム受け孔15a、17aを設け、2つの第1連結部材を備えたが、これに限らず、レンズホルダ7及び/又はアウタープレート10にシム受け孔を設けて第1連結部材を構成し、支持リング8に第2連結部材を構成してもよい。
また、前記実施形態では、各シム18,19はエラストマ製としたが、これに限定されず、例えば、PBT、PETE及びPOM等、耐摩耗性のある樹脂を適宜選択するようにしてもよい。
また、前記実施形態では、シム18,19を用いた連結構造体を自動車の室内照明灯1に適用したが、これに限定されず、例えば、空調装置のレジスタ等、回転部材を任意の角度で保持する構造の全般に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
回転部材を任意の角度で保持する機構に利用される。特に車両に用いる室内照明灯の他、空調装置の吹き出し口等に設けられるレジスタのフィン、カーナビゲーションシステム等のカーソルやドアミラー及びサイドミラー等の向き調整等を指示するスティック等の、任意の2軸の連結構造体に対して用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係るシムを示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は背面図である。
【図2】本実施形態に係るシムと支持リングを示す分解組立図である。
【図3】室内照明灯を第1回転軸に沿って切断した状態を示す縦断面図である。
【図4】室内照明灯を第2回転軸に沿って切断した状態を示す縦断面図である。
【図5】室内照明灯の分解組立図である。
【図6】第2回転軸を示す斜視図である。
【図7】照射部を最大に回転させた状態を示す縦断面図である。
【図8】室内照明灯を天井に装着する作業途中の状態を示す縦断面図である。
【図9】照射部の回転のパターンを示す斜視図であり、(A)は中立位置にある場合、(B)は第1回転軸を中心に回転した場合、(C)は第2回転軸を中心に回転した場合を示す。
【図10】従来のシムを示す図であり、(A)は側面図、(B)は背面図である。
【符号の説明】
【0023】
1;室内照明灯、2;光源、3;レンズ、4;照射部、5;リング式スイッチ、6;ハウジング、7;レンズホルダ、8;支持リング、9;アウターベゼル、10;アウタープレート、10b、10c;支持柱、15;第1シム受け孔、15a;基盤部受け部、15b;大径部受け部、17;第2シム受け孔、17a;基盤部受け部、17b;大径部受け部、18;第1シム、18a;基盤部、18b;大径部、18c;固定部、18d;固定凹部、19;第2シム、19a;基盤部、19b;大径部、19c;固定部、19d;固定凹部、21;第1固定部受け部、24;第2固定部受け部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに相対回転可能な第1連結部材と第2連結部材との間に介在されると共に、相対回転時に摩擦により負荷を与えるシムであって、
円板形状であり且つ外周面を摩擦面とする基盤部と、
前記基盤部より大径の円板形状であり、その外周面が摩擦面であり且つ前記基盤部に連続して段状に設けられる大径部と、
前記大径部側から軸方向に突出した角柱形状の固定部と、を有することを特徴とするシム。
【請求項2】
前記固定部の根元周囲には角柱形状の凹部からなる固定凹部が更に設けられる請求項1記載のシム。
【請求項3】
互いに相対回転可能な第1連結部材及び第2連結部材と、これらの連結部材の間に介在されると共に相対回転時に摩擦により負荷を与えるシムと、を備える連結構造体であって、
前記シムは、円板形状で外周面を摩擦面とする基盤部と、
前記基盤部より大径の円板形状であり、その外周面が摩擦面であり且つ前記基盤部に連続して段状に設けられる大径部と、
前記大径部側から軸方向に突出した角柱形状の固定部と、を有し、
前記第1連結部材は、前記基盤部が回転可能に嵌合する基盤部受け部と、前記大径部が回転可能に嵌合する大径部受け部と、を備えた段状のシム受け孔を有し、
前記第2連結部材は、前記固定部に回転不能に嵌合する固定部受け部を有することを特徴とする連結構造体。
【請求項4】
前記シムの前記固定部の根元周囲には角柱形状の凹部からなる固定凹部が更に設けられると共に、前記第2連結部材の固定部受け部の先端が前記固定凹部に回転不能に嵌合することを特徴とする請求項3記載の連結構造体。
【請求項5】
前記シム受け孔は、その深さが前記基盤部及び前記大径部の厚さの和である貫通孔である請求項4記載の連結構造体。
【請求項6】
光源を具備する照射部と、前記光源の点灯制御の選択を行うスイッチと、前記照射部及び前記スイッチを支持するハウジングと、を備える室内照明灯であって、
前記照射部は、少なくとも1軸の請求項3乃至5の記載の連結構造体を介して前記ハウジングによって支持されていることを特徴とする室内照明灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−83793(P2009−83793A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259248(P2007−259248)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】