説明

シャフト取付け用スペーサー

【課題】
ヘッドとシャフトの接合部の隙間によるホーゼル軸線とシャフト軸線のずれを抑えるために、ヘッドとシャフトの組合せにより個々に異なる接合部の隙間に対応でき、接着時のがたを抑えることができる汎用的なスペーサーを提供する。
【解決手段】
ホーゼル穴径よりも小さい基部と、基部と一体で構成され、かつ基部から一方向に延びるシャフト接着部より短い少なくとも3以上の脚部からなり、少なくとも前記脚部の厚みが0.09mm以下であることを特徴とするスペーサーである。本スペーサーの材料としては、ステンレス、アルミニウム、チタニウム等の金属材料や、ガラス繊維、炭素繊維等の繊維で補強された樹脂が利用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブのヘッドとシャフトの取付け時のがたを減少させて組立て精度と高めるとともに、接合強度を向上させることができるスペーサーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にゴルフクラブでは、ヘッドのホーゼル部に設けられたホーゼル穴にシャフトを挿入し接着して製造される。ホーゼル穴とシャフトは隙間嵌めであり、接着剤が硬化するまではがたがあるので、ロフト角やライ角等が設計値通りにならないという問題を有していた。接着時のがたを減らすために、紙片や金属小片をホーゼルとシャフトの間に挿入したり、シャフトの接着部に不織布を巻く方法が採られていた。
【0003】
また、シャフト接合部に用いるアダプターの提案はいくつかあり、例えば特開平9−66124には、炭素繊維やプラスチック樹脂、金属等からなる、パイプ状でその一端に複数のスリットを設けたアダプターが開示されている。実用新案登録第3129215号には、パイプ状で一端から他端に亘るスリットを設けたアダプターが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−66124
【特許文献2】登録実用新案第3129215号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、紙片や金属片を挿入する方法では、ヘッドとシャフトの組合せにより個々に異なる隙間に合わせて紙片や金属小片を挿入するという作業をしなければならず、また、ホーゼル軸とシャフト軸の中心がずれフェースプログレッション等が設計値通りにならないという問題を有していた。シャフトに不織布を巻く方法では、接着強度を得るために接着剤を不織布に含浸させるという手間がかかる上、不織布のせん断破壊によりヘッドからシャフトが外れる恐れがあった。
【0006】
また、特許文献1及び特許文献2に開示されたパイプ状のアダプターは、ホーゼル内壁とアダプター外壁、アダプター内壁とシャフト外壁の二箇所で接着されるので、接着強度を確保するためにはパイプ状アダプターの内外両壁面に接着の前処理を施す必要がある。また、パイプ自体の強度や剛性が必要なため、アダプターを薄くするには限界があるので、そもそも接着時のがたを抑えるスペーサーとして採用できるものではない。このため、ヘッドとシャフトの組合せにより個々に異なる隙間に対応でき、接着時のがたを抑えることができる汎用的なスペーサーの提供が望まれていた。
【0007】
本発明は、かかる問題点を解決し、ヘッドとシャフトの組合せにより個々に異なる隙間に対応してヘッドとシャフトの接着時のがたを抑え、しかも十分な接着強度が確保できるスペーサーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の目的を達成するための請求項1に係わるスペーサーは、ホーゼル穴径よりも小さい基部と、基部と一体で構成され、かつ基部から一方向に延びるシャフト接着部より短い少なくとも3以上の脚部からなり、少なくとも前記脚部の厚みが0.09mm以下であることを特徴とするスペーサーである。本スペーサーの材料としては、ステンレス、アルミニウム、チタニウム等の金属材料や、ガラス繊維、炭素繊維等の繊維で補強された樹脂が利用可能である。
【0009】
請求項2に係わる発明は、脚部の面積が接着面積の30%以下であることを特徴とするスペーサーである。本発明では、ヘッドとシャフトの結合はホーゼル内壁とシャフト外面の接着で得られるので、スペーサーの脚部面積は、十分な結合強度を得られるように接着面積の30%以下とすることが望ましい。なお接着面積とは、ホーゼル壁面とホーゼル穴に挿入されるシャフトが重なり合う面積をいう。脚部面積とはスペーサーの全表面積から基部の表面積を除いた値の半分をいう。
【0010】
請求項3に係わる発明は、脚部は、ヤング率が30乃至200×10N/mの材料で構成されることを特徴とする、請求項1または請求項2のスペーサーである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係わるシャフト取付け用スペーサーは、上述のような基部と脚部を備えるので、シャフト接着時のがたを抑え、ロフト角やライ角等の設計値からの乖離を小さくすることが出来る。また、スペーサーに隣接する接合部には、スペーサーの厚み分の接着剤層が確保できるので、ヘッドとシャフトは強固に接合される。さらに、ヘッドとシャフトの組合せによるクリアランスの個々の状態に拠らず、同じスペーサーで対応できるので接着作業が煩雑になることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図1から図4を用いて説明する。
本実施の形態におけるシャフト取付け用スペーサーは、図1に示すようにホーゼル穴径よりも小さい基部2と、前記基部2と一体で構成され、かつ前記基部2から一方向に延びるホーゼル穴深さより短い少なくとも3以上の脚部3から構成される。本スペーサー1を用いた接合部5概念図を図2に示す。本スペーサー1は、予め接着剤を塗布したホーゼル穴13に、脚部3が完全にホーゼル穴13に入らない位置まで基部2から挿入し、接着部6に接着剤を塗布したシャフト10をスペーサー1の脚部3の間を通しホーゼル穴13に押入るように使用する。このように使用すれば、シャフト10を挿入し易く、また図4に示すようにホーゼル穴13とシャフト10の接着部6の隙間がスペーサー1で埋められるので、がたを抑えることができる。
【0013】
例えば、シャフト10とホーゼル穴13のクリアランスが0.05mmから0.4mm程度である場合、シャフト10の接着長さを35mmとするとホーゼル穴中心線とシャフト10軸線は0.1度から0.7度のずれが生じ得る。がたが大きいと判断できるクリアランスは0.l5mm以上であり、この場合は0.25度のずれが生じ得る。しかし、脚部3の厚さが0.05mmの本発明のスペーサー1を使用すれば、ずれは0.1度から0.5度に抑えられる。また、図4に示すようにスペーサー1のない隙間には少なくともスペーサーの肉厚分の接着層7が確保されるので、ヘッド11とシャフト10の接着が強固にできる。
【0014】
本発明のスペーサー1は、ステンレス等の鉄系合金、アルミニウムやチタニウムまたはこれらの合金等の金属材料やガラス繊維や炭素繊維で補強された樹脂が使用できるが、ヤング率が30乃至200×10N/m、好ましくは40乃至200×10N/mの材料を使用することが望ましい。ヤング率が30×10N/mより低いとシャフト10の挿入時に脚部3が隙間にまき込まれるためであり、ヤング率が200×10N/mより高いと脚部3が隙間に沿って追従しなくなるためである。
【0015】
また、本発明のスペーサー1は、脚部3の面積が、接着面積の30%以下になるようにする。脚部3の面積を30%以下にすれば、ホーゼル穴13とシャフト10の接着で十分な接合強度を得ることができ、スペーサー1の表面に接着強度を上げる目的の前処理を施さずに使用できる。
本発明のスペーサー1に繊維で補強された樹脂を用いる場合は、使用時の形態になるように加熱加圧して成形する。このとき、基部2の肉厚を脚部3の肉厚よりも厚くするとスペーサー成形時の脱型が容易になる。また、スペーサー1に金属材料を用いる場合は、所定の肉厚の箔を打ち抜き、各々の脚部3と基部2が45°から90°になるように屈曲させて作成する。さらに、基部2から遠い脚部3の外端4付近を外方に向けて屈曲させておけばシャフト10の挿入が容易になる。
【0016】
なお、がたを減らすためにはすくなくとも3本の脚部3を等間隔に設ければ十分であるが、シャフト挿入時の脚部3のずれによる偏りを極力少なくするためには脚部3は4本以上設けることが望ましい。また、シャフト挿入時の脚部3の破損を防ぐためには脚部3の幅は1.5mm以上が望ましく、脚部3の面積を接着面積を30%以下に抑えるためには脚部は6本以下にすることが望ましい。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明の実施例について、図2〜図4を用いて説明する。本実施例では、基部2は直径8mmの円形とし脚部3は基部2の中心から90度間隔で4本になるように、厚さ0.05mmのステンレス箔を十字型に打ち抜きスペーサー1の平面形状を整えた。次に基部2と脚部3の角度が80度になるように4本の脚部3を基部2との接合部分で屈曲させた。4本の脚部3は幅を2mm、長さを26mmとした。
【0018】
本スペーサー1は、接着剤を塗布したホーゼル穴13に脚部3が完全にホーゼル穴13に入らない位置まで基部2から挿入する。本実施例では、ホーゼル穴13の深さは37±1mm、直径は8.9±0.05mmに設定されており、脚部3は10mmほどホーゼル穴13から外に出た位置で止まる。接着部6に接着剤を塗布したシャフト10を、スペーサー1の脚部3の間を通しホーゼル穴13にスペーサー1ごと押入れる。シャフト10の接着部の径は8.6±0.05mmであり長さは32.5mmであった。
【0019】
本実施例で用いたホーゼル穴径とシャフト外径では、ホーゼル中心軸とシャフト中心軸のずれは、最大0.7度となるが、本発明のスペーサー1を使用すれば0.5度に抑えることができた。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明のスペーサーは、ウッド、アイアン、パター等のゴルフクラブヘッドに広く利用でき、ヘッドとシャフトの組合せによらず同一のスペーサーを使用できるので、ゴルフクラブ組付け工程の自動化に応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のスペーサーである。
【図2】本発明の使用形態の説明図である
【図3】本発明の接合部の概念図である
【図4】本発明のスペーサーを用いた接合部である。
【図5】本発明のスペーサーの平面形態である。
【符号の説明】
【0022】
1 スペーサー、2 基部、3 脚部、4 外端、5 接合部、6 接着部、7 接着層、10 シャフト、11 ヘッド、12 ホーゼル、13 ホーゼル穴、L ホーゼル穴深さ、l 接着長さ、m 脚部長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホーゼル穴径よりも小さい基部と、
基部と一体で構成され、かつ基部から一方向に延びるシャフト接着部より短いすくなくとも3以上の脚部からなり、
少なくとも前記脚部の厚みが0.09mm以下であることを特徴とするゴルフクラブヘッドとシャフトの接合部分に用いるスペーサー。
【請求項2】
前記脚部の面積が、接着面積の30%以下であることを特徴とする、請求項1のスペーサー。
【請求項3】
前記脚部は、ヤング率が30乃至200×10N/mの材料で構成されることを特徴とする、請求項1または請求項2のスペーサー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−240641(P2009−240641A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92731(P2008−92731)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(302019599)ミズノ テクニクス株式会社 (47)
【Fターム(参考)】