説明

シャワーヘッドのシャワー吐水部構造

【課題】ストレーナメッシュによるポタ漏れ防止の働きをより有効に働かせ、従来に増してポタ漏れを効果高く抑制することのできるシャワーヘッドのシャワー吐水部構造を提供することを目的とする。
【解決手段】シャワーヘッドのヘッド本体14と、散水板26と、散水板26の裏面に重なる状態に配置されたストレーナメッシュ38と、水流案内部材としての散水板アダプタ40と、を備えてなるシャワーヘッドのシャワー吐水部構造において、散水板アダプタ40には、壁51の内周端と外周端との間の径方向位置においてストレーナメッシュ38を散水板26に向けて押圧するリブ状のメッシュ押え72を設けておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はシャワーヘッドの先端部のシャワー吐水部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シャワーヘッドの先端部のシャワー吐水部構造として、従来、(イ)シャワーヘッドのヘッド本体と、(ロ)複数の散水孔を有してヘッド本体の先端に形成された開口に取り付けられ、ヘッド本体内の給水路を通じて送られてきた給水を複数の散水孔からシャワー吐水する散水板と、(ハ)中心部の筒状部及び筒状部から全周に亘り径方向に広がった壁とを有し、壁と上記散水板との間に水室形成する状態に散水板の裏側に配置され、筒状部の内側の水流通路からの水流を水室に拡がらせ、散水孔に案内する水流案内部材としての散水板アダプタと、を備えたものが公知である。
【0003】
このようなシャワー吐水部構造を有するシャワーヘッドにおいては、これをシャワーフックに掛止した状態で水栓のバルブを閉じて止水すると、シャワーヘッドの先端部のシャワー吐水部の内部に残った残水が、散水板下部に位置している散水孔からポタポタと滴り落ちる、所謂「ポタ漏れ」を生じることが従来から問題視されていた。
このように散水板の下部の散水孔から残水のポタ漏れが生じるのは、シャワー吐水部内部の残水の重みが特に散水板の下部の散水孔に加わることにより生じる。
この問題を解決するための一手段として、下記特許文献1には散水板の裏面に重なる状態にストレーナメッシュを配置した点が開示されている。
【0004】
ストレーナメッシュは異物除去用に微小な通水孔が分散形成されたもので、このストレーナメッシュではメッシュの網目にて形成される微小な通水孔に水の表面張力で水膜が形成され、従って止水状態の下でこの通水孔を通過する水に対して表面張力による抵抗が働く。
それ故このようなストレーナメッシュを散水板の裏面に重なる状態に配置しておくことで、残水が散水孔から滴り落ちるのをストレーナメッシュの抵抗作用により抑制することが期待できる。
【0005】
しかしながらこのストレーナメッシュは厚みの薄い、可撓性に富んだもので撓み易く、これに起因してストレーナメッシュの組付状態の如何によって、上記のポタ漏れを十分に防止できない場合のあることが本発明者の研究により判明した。
【0006】
尚、本発明に対する先行技術として下記特許文献2には「シャワーヘッドの散水構造」についての発明が示され、そこにおいて散水板の裏面にリブを立てて、そのリブにより散水板裏面の水流入空間を複数の分割空間に区画することで、止水後に散水板下部の散水孔だけでなく、これよりも上部の散水孔を含む多くの散水孔から均等に残水を流出させて、ポタ漏れを早く終了するようになした点が開示されている。
但しこの特許文献2に開示のものはストレーナメッシュを利用してポタ漏れ防止するものでなく、また構造上ストレーナメッシュによる作用にてポタ漏れ防止することのできない構造のもので、本発明とは別異のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−85132号公報
【特許文献2】特開2006−6618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上のような事情を背景とし、ストレーナメッシュによるポタ漏れ防止の働きをより有効に働かせ、従来に増してポタ漏れを効果高く抑制することのできるシャワーヘッドのシャワー吐水部構造を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
而して請求項1のものは、(a)シャワーヘッドのヘッド本体と、(b)複数の散水孔を有して該ヘッド本体の先端に形成された開口に取り付けられ、該ヘッド本体内の給水路を通じて送られた給水を該複数の散水孔からシャワー吐水する散水板と、(c)異物除去用に微小な通水孔が分散形成され、前記散水板の裏面に重なる状態に配置された可撓性を有するストレーナメッシュと、(d)中心部の筒状部及び該筒状部から全周に亘り径方向に拡がった壁を有し、該筒状部の内側の水流通路に連通した水室を該壁と前記ストレーナメッシュとの間に形成する状態に、前記散水板及びメッシュの裏側に配置され、該水流通路からの水流を該水室に拡がらせ、該メッシュを介し前記散水孔に案内する水流案内部材としての散水板アダプタと、を備えて成るシャワーヘッドのシャワー吐水部構造において、前記散水板アダプタには、少なくとも前記壁の内周端と外周端との間の径方向位置において、前記ストレーナメッシュを前記散水板に向けて押圧するリブ状のメッシュ押えを設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項2のものは、請求項1において、前記リブ状のメッシュ押えが、前記壁から立ち下がる形態で、且つ少なくとも該壁の内周端から該壁の外周端に到るまで径方向に延びる形態で周方向に間隔を隔てて複数設けてあり、該複数のリブ状のメッシュ押えにより前記水室が、前記水流通路にそれぞれ連通し且つ周方向に独立した複数の小水室に区画されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3のものは、請求項2において、前記複数のリブ状のメッシュ押えが放射状に延びる形態で設けてあることを特徴とする。
【0012】
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記散水板の裏面が平面状に形成されていることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0013】
以上のように本発明は、異物除去用に微小な通水孔が分散形成されたストレーナメッシュを散水板の裏面に重なる状態に配置するとともに、水流案内部材としての散水板アダプタの少なくとも壁の内周端と外周端との間の径方向位置において、ストレーナメッシュを散水板に向けて押圧するリブ状のメッシュ押えを散水板アダプタに設けたものである。
【0014】
本発明者が、内部にストレーナメッシュを設けたシャワー吐水部構造においてポタ漏れの生じる現象を観察したところ、可撓性を有するストレーナメッシュが散水板裏面から浮き上がり離れる方向に撓み、変形した状態となることがあり、そうした場合にポタ漏れが起こり易いことを突き止めた。
【0015】
更にこの現象を詳しく調べたところ、ストレーナメッシュが散水板から部分的に若しくは全体的に離れることで、ストレーナメッシュと散水板との間に部分的に若しくは全体的に拡大空間が生じてその拡大空間が残水で埋まり、止水後においてその拡大空間内の残水が散水板下部の散水孔より流出することでポタ漏れを起すことが判明した。
【0016】
従ってポタ漏れを防止するためには、ストレーナメッシュの散水板裏面からの浮上り方向の変形を抑制して、ストレーナメッシュと散水板との間に拡大空間が生じるのを防止し若しくはこれを可及的に小さくすることが一義的に重要であるとの知見を得た。
このような拡大空間の発生を防止し若しくは可及的に小さくできれば、止水後にストレーナメッシュと散水板との間の空間(隙間)を埋めた残水が散水孔より流出することで起こるポタ漏れを抑制することができる。
また拡大空間の発生を防止してストレーナメッシュと散水板とを接触状態に維持し若しくはそれらの間の空間(隙間)を可及的に小さく維持できれば、ストレーナメッシュと散水板裏面との間に水膜生成し得て、その水膜による水の移動に対する抵抗作用によってポタ漏れを抑制することが期待できる。
【0017】
本発明はこのような知見に基づき、水流案内部材としての散水板アダプタにおける上記の壁の内周端と外周端との間の径方向位置において、ストレーナメッシュを散水板に向けて押圧するリブ状のメッシュ押えを設けたもので、このようにすることによりストレーナメッシュが散水板裏面から浮上る方向に変形するのを効果的に抑制でき、このことによってポタ漏れの現象を従来に増して効果高く抑制することが可能となる。
【0018】
尚、散水板アダプタの側に単なる突起を設けて、この突起によりストレーナメッシュを押圧するようになすことも考えられるが、このような単なる突起の場合、ストレーナメッシュを押えることができてもその押えが効くのは局部的、スポット的に限定され、十分な効果を得ることが難しい。
しかるに本発明ではメッシュ押えを突条形態即ちリブ状に設けているため、広い範囲に亘ってストレーナメッシュを押圧でき、ポタ漏れを有効に抑制することが可能である。
【0019】
次に請求項2は、上記リブ状のメッシュ押えを、散水板アダプタにおける上記の壁から立ち下がる形態で、且つ少なくとも壁の内周端から壁の外周端に到るまで径方向に延びる形態で、周方向に間隔を隔てて複数設け、それら複数のリブ状のメッシュ押えにてストレーナメッシュを押圧するようになすとともに、これら複数のメッシュ押えにより上記水室を周方向に独立した複数の小水室に区画するようにしたものである。
このようにすれば、ストレーナメッシュをより一層全体的に散水板に向けて押圧でき、散水板裏面からのストレーナメッシュの浮上り方向への変形を防止し得て、ストレーナメッシュの変形によるポタ漏れの発生を一層効果的に抑制することができる。
【0020】
加えてこの請求項2によれば、散水板アダプタの壁とメッシュとの間に形成される水室が周方向に独立した複数の小水室に区画されることによって、ポタ漏れの現象をより一層抑制することが可能となる。
【0021】
本発明者がポタ漏れの現象を詳しく調べる中で、ストレーナメッシュが変形することで散水板裏面との間に拡大空間を形成することの他、ストレーナメッシュの裏側の水室内の水がその重みによって水室の下部から、ストレーナメッシュの通水孔の表面張力による抵抗に打ち勝ってストレーナメッシュを通過し、ストレーナメッシュと散水板裏面との間の空間に押し出され供給されることが、ポタ漏れの要因になるとの知見を得た。
【0022】
水室が区画されておらずに単一の大きな空間を形成していると、水室内部の水の全体の重みが水室下部の水に加わって、その重みにより水室下部の水がストレーナメッシュを通過してストレーナメッシュと散水板との間の空間に押し出されてしまう。そしてこのことが引き続くポタ漏れの要因となってしまう。
また例え水室下部の水が排出されても、次にこれよりも上側の水室内の水が水室下部に到って、そこからストレーナメッシュと散水板裏面との間に押し出され、ストレーナメッシュと散水板との間の空間への水の供給が継続して行われてしまう。そしてこのことがポタ漏れがなかなか止まらないことの要因となる。
【0023】
しかるにこの請求項2では水室が周方向に複数の独立した小空間即ち小水室に区画されているため、水室内の水の全ての重みが最下部に位置する小水室に加わってしまうといったことがない。従って最下部の小水室内の水をストレーナメッシュと散水板との間の隙間に押し出そうとする力は弱く(供給する力は弱く)、このことによってポタ漏れを抑制できるのに加えて、例え最下部の小水室の水が押し出されたとしても、他の独立した小水室から最下部の小水室への水の流れ込みが抑制されるため、最下部の小水室を通じての、ストレーナメッシュと散水板との間の隙間への水の供給が抑制され、ポタ漏れが起きたとしても速やかにポタ漏れを停止させることができる。
【0024】
この場合において、上記複数のリブ状のメッシュ押えは放射状に延びる形態で設けておくことができる(請求項3)。
【0025】
本発明ではまた、請求項4に従って散水板の裏面を平面状に形成しておくことで、ストレーナメッシュを散水板裏面に全体的に密着状態に接触させ若しくは可及的に近く位置させることができ、ポタ漏れ防止を図ることができる。
尚、ストレーナメッシュを散水板裏面に可及的に近く位置させる場合において、それらの間に生じる隙間は0.4mm以下となしておくことが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態のシャワー吐水部構造をシャワーヘッドとともに示した図である。
【図2】同実施形態のシャワー吐水部構造を示した図である。
【図3】同実施形態のシャワー吐水部の構造を分解して示した斜視図である。
【図4】同実施形態における散水板アダプタの単品図である。
【図5】同実施形態におけるメッシュ押えの働きを説明するための説明図である。
【図6】同実施形態の効果を説明するために比較例として示した比較例図である。
【図7】本発明の他の実施形態の要部の図である。
【図8】本発明の更に他の実施形態の要部の図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10はシャワーヘッドで、通常の非使用時においてはシャワーフック12に掛止されて図1に示す状態で保持される。
14はシャワーヘッド10におけるヘッド本体で、グリップ部16を有しており、そのグリップ部16の内部に内管18が収められている.そしてこの内管18の内側に、シャワーヘッド10の先端部のシャワー吐水部20に向けて給水を行う給水路22が形成されている。
【0028】
ヘッド本体14は先端に円形の開口24を有しており、その開口24を閉じるようにして円形の散水板26がヘッド本体14にねじ結合され、組み付けられている。
詳しくは、図2に示しているようにヘッド本体14と散水板26とには、それぞれ短い筒状を成す外周壁部28と内周壁部30とが設けられ、そして外周壁部28の内周面に形成された雌ねじ部32に対して、内周壁部30の外周面に形成された雄ねじ部34がねじ込まれ、以って散水板26がヘッド本体14に対してねじ結合され、組み付けられている。ここで散水板26は裏面(図中上面)が凹凸のない平面状に形成されている。
【0029】
散水板26には、ほぼ全面に亘ってこれを貫通する散水孔36が分散形成されており、給水路22を通じて送られてきた給水がこれら散水孔36から外部にシャワー吐水される。
シャワー吐水部20の内部には、散水板26の裏面に接触状態で重なるようにしてストレーナメッシュ38が配置され、またこのストレーナメッシュ38の更に裏面側に、水流案内部材としての散水板アダプタ40が配置されている。
【0030】
ストレーナメッシュ38は、水流に含まれるゴミや砂等の異物をろ過し除去するための部材で、異物除去用に微小な通水孔が全面に亘って分散形成されている。
この実施形態において、ストレーナメッシュ38は線材を網状に組んで成るもので厚みが薄く可撓性に富んでいる。
このストレーナメッシュ38には、図3にも示すように外周部にフレーム部材(ここでは樹脂製)42が設けられており、このフレーム部材42によってメッシュ部44が形状保持されている。
【0031】
尚、ストレーナメッシュ38は後に詳述するようにこのフレーム部材42において、散水板アダプタ40により散水板26の外周部の固定部46に押し付けられ、そこに固定されている。
【0032】
水流案内部材としての上記の散水板アダプタ40は、図4に示しているように中心部に円筒形状をなす筒状部48を有しており、この筒状部48の内側に、給水路22からの水流を通過させる水流通路50を形成している。
ここで筒状部48の図中上端と下端とは円形の開口とされている。
【0033】
散水板アダプタ40はまた、筒状部48から全周に亘り径方向外方に拡がった板状の壁51を有しており、この壁51よりも外周側の位置において、上記ストレーナメッシュ38のフレーム部材42を散水板26の固定部46に押圧する円環状の押圧部52を、図中下向きに立ち下がる形状で有している。
一方図中上側には短い筒状(円筒状)を成して上向きに立ち上がる立上り部54を有している。
【0034】
押圧部52の図中下面には環状の溝56が設けられており、この溝56にフレーム部材42を嵌め入れる状態で、押圧部52がフレーム部材42の部分においてストレーナメッシュ44を散水板26の固定部46に押圧し、固定している。
【0035】
一方立上り部54の外周面には環状のOリング溝58が設けられ、そこに嵌められたOリング60を介して立上り部54が、散水板26の内周壁部30に対して水密且つ内嵌状態に嵌合され、散水板26に組み付けられている。
【0036】
尚、図2に示しているように上記筒状部48もまた、Oリング62を介してヘッド本体14の円筒形状の嵌合部64に水密且つ内嵌状態に嵌合されている。
この嵌合部64には、給水路22からの水を流入させる流入口66が設けられており、更にこの流入口66よりも下流側において嵌合部64の内部にはガイド部材68が設けられ、給水路22からの水が、流入口66を通じガイド部材68を経て散水板アダプタ40の筒状部48内側の水流通路50へと導かれる。
【0037】
散水板アダプタ40の上記の板状の壁51は、図2に示す組付状態で、外周側に進むに連れて散水板26に接近する形状の緩やかな傾斜をなすテーパ形状をなしている。そしてこの壁51と散水板26裏面側のストレーナメッシュ38との間に水室70が形成されている。
この散水板アダプタ40は、中心部の水流通路50からの水流を水室70に拡がらせ、ストレーナメッシュ38を介し散水板26の各散水孔36に案内する働きを有する。
【0038】
散水板アダプタ40には、更に上記の壁51の内面(図中下面)から立ち下がる形態で、壁51の内周端(ここでは厳密には筒状部48の内周端)から壁51の外周端(押圧部52の内周端)に到るまで径方向に延びるリブ状のメッシュ押え72が、周方向に一定間隔毎に放射状(筒状部48の軸線を中心とした放射状)に複数(ここでは周方向に22.5度毎に合計16個)設けられている。
ここで各メッシュ押え72は散水板アダプタ40に一体に構成されている。
【0039】
これらのリブ状のメッシュ押え72は、ストレーナメッシュ38を散水板26に向けて押圧する働きを有するもので、図中下面が筒状部48の軸線と直角方向の直線状の面とされ、且つ各メッシュ押え72の下面が全て押圧部52の図中下端と同じ位置で同一平面上に位置させられている。
【0040】
上記複数のリブ状のメッシュ押え72は、壁51とストレーナメッシュ38との間に形成される水室70を複数に区画する仕切りとしての働きも有しており、これら複数のリブ状のメッシュ押え72によって、水室70が周方向に互いに独立し、上記水流通路50にそれぞれ連通した複数の小水室70Aに区画されている。
これら放射状に延びるリブ状のメッシュ押え72によって互いに区画された各小水室70Aもまた、筒状部48の軸線を中心とした放射形状をなしている。
【0041】
散水板アダプタ40にはまた、壁51の図中上面側にも筒状部48の外周面から上記の立上り部54に到るまで径方向に延びる複数の補強用のリブ74が、周方向に一定間隔毎に放射状に設けられている。
ここで補強用のリブ74は、外周側の部分の図4(B)中上下方向の高さ即ち軸方向の高さが、立上り部54の高さと同じ高さとされており、また内周側の部分の高さがこれよりも高くされている。
【0042】
これらリブ74の内周側の高さの高い部分は位置決め部74Aをなすもので、図2に示しているようにこの位置決め部74Aがヘッド本体14に当接することで、ヘッド本体14に対する散水板アダプタ40の組付位置が規定される。
【0043】
この実施形態では、図2において散水板26をヘッド本体14にねじ込むことで、散水板26及びその裏側(図中上側)のストレーナメッシュ38,散水板アダプタ40等をヘッド本体14に組み付けることができる。
このとき散水板アダプタ40は、位置決部74Aをヘッド本体14に対して当接させ、また外周部の押圧部52にてストレーナメッシュ38の外周部を散水板26の固定部46に押圧し固定する。
またこのとき、散水板アダプタ40の複数のリブ状のメッシュ押え72が、筒状部48の内周端から壁51の外周端に到るまで、ストレーナメッシュ38を周方向の複数個所(16個所)で散水板26に向けて押圧し、これを散水板26の裏面に密着状態に接触させる。
【0044】
以上のように本実施形態では、散水板アダプタ40に設けたリブ状のメッシュ押え72が、周方向の16個所で且つ壁51の内周端(厳密には筒状部48の内周端)から壁51の外周端に到るまで径方向の長い距離に亘ってストレーナメッシュ38を散水板26に向け押圧するため、散水板26の裏面に接触状態で重ねるように配置された可撓性を有するストレーナメッシュ38が、散水板26の裏面から離れ浮き上る方向に変形するのを効果的に抑制することができる。
【0045】
例えば図6の比較例図に示しているように散水板アダプタ40に突起90をメッシュ押えとして設け、これら突起90によってストレーナメッシュ38を押圧するようになした場合、それら突起90による押えが効くのは局部的、スポット的であり、図6(B)に示しているようにストレーナメッシュ38が撓み変形してしまうのを十分に抑制することは困難である。
【0046】
しかるに本実施形態ではメッシュ押え72が、径方向に延びるリブ状をなし且つ周方向の複数個所に放射状に設けられているため、図2の部分拡大図に示しているように、それらメッシュ押え72によってストレーナメッシュ38を全体的にほぼ均等に押えることができ、ストレーナメッシュ38が散水板26から離れ浮き上る方向に部分的に若しくは全体的に撓み、散水板26から離間してそれらの間に拡大空間を生じてしまうのを有効に防止することができる。
【0047】
従って止水後において、図6の比較例図に示しているようにストレーナメッシュ38が撓むことによって生じた拡大空間(ストレーナメッシュ38と散水板26との間の拡大空間)Kに残水が多く残って、その残水が散水板26の下部の散水孔36から流出することにより生ずるポタ漏れの現象を有効に抑制することができる。
【0048】
また本実施形態によれば、ストレーナメッシュ38の裏側に形成される水室70が、複数のリブ状のメッシュ押え72を仕切りとして図5に示しているように複数の小水室70Aに区画されているため、水室70が区画されていない単一の大きな空間である場合のように、水室70の下部に対して水室70内の水の全体の重みが加わるといったことがなく、図5(A)中最下部の小水室70Aに加わる水の重みが軽量である(最下部の小水室70Aに対して横方向にある小水室70A内の水の重みが加わらない。但し上方にある小水室70A内の水の重みは一部加わる)。
従って最下部の小水室70A内の水を、ストレーナメッシュ38の通水孔の表面張力に抗してストレーナメッシュ38と散水板26との間に押し出す力が弱く、またたとえ最下部の小水室70A内の水がストレーナメッシュ38と散水板26との間に流出したとしても、その後においてストレーナメッシュ38と散水板26との間への水室70側からの水の供給が長くは続かず、従ってポタ漏れを生じたとしても、そのポタ漏れを速やかに停止させることができる。
【0049】
またこの実施形態では、そもそもストレーナメッシュ38が散水板26裏面に対して接触状態に維持されるため、止水後にそれらの間の空間(隙間)に初期のポタ漏れの原因となる残水が多く残ってしまうといったことを防止できるのに加えて、ストレーナメッシュ38と散水板26との間に水膜を生成させることによって、ストレーナメッシュ38の通水孔や散水板26の散水孔36を通じての水の移動に対する水膜の抵抗作用でポタ漏れを抑制できる効果も期待できる。
【0050】
尚、制作上の誤差によって散水板26の裏面に凹凸が生じている場合、散水板26を吐水本体14に強くねじ込んで組み付けたときに、散水板26の突部とメッシュ押え72とがストレーナメッシュ38を局部的に強く挟み込み且つねじり方向に力を加えてしまうと、ストレーナメッシュ38が損傷を生じる恐れがある。
【0051】
これを避けるために、図7に示しているようにストレーナメッシュ38と散水板26の裏面との間に微小な隙間、例えば0.5mm程度の隙間をストレーナメッシュ38と散水板26の裏面との間に設定しておいても良い。
この場合においてもポタ漏れの現象を抑制することが可能である(0.5mm程度の隙間であればそこに十分に水膜が生成される)。
【0052】
また押圧部52の溝56の溝深さをストレーナメッシュ38の外周部のフレーム部材42の厚みと同寸法としておいた場合、同じく製作誤差によって溝56の深さの方がフレーム部材42の厚みよりも深くなってしまうことも生じ得る。この場合押圧部52によってフレーム部材42を散水板26の外周部の固定部46に対して押圧できないことも生じ得る。
従って図7に示しているように設計上、溝56の深さをフレーム部材42の厚みよりも僅かに浅く設定しておいても良い。
【0053】
この場合隣合う小水室70Aと70Aとは、押圧部52特に溝56よりも内周側の部分で微小な隙間を介して繋がった状態となることもあるが、この隙間は微小であるため実質的に小水室70A間での水の移動は抑制される。
但しそのためには溝56の深さとフレーム部材42の厚みとの差を最大でも1.0mm以下となしておくのが良い。
またストレーナメッシュ38と散水板26の裏面との間の隙間についても最大で0.4mm以下となしておくのが良い。
【0054】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば本発明ではリブ状のメッシュ押えを上例以外の他の様々な形態で設けるといったことも可能である。
図8はその具体例を示したもので、図8(A)に示しているように、メッシュ押えを円弧状に延びるメッシュ押え92となすことも可能である。またメッシュ押えを放射状に延びるメッシュ押え72となす場合において、図8(B)に示すようにその数を上記実施形態よりも少なくすることも可能である。
また図8(C)に示しているように、メッシュ押えを格子状をなすように延びるメッシュ押え94として構成するといったことも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 シャワーヘッド
14 ヘッド本体
22 給水路
24 開口
26 散水板
36 散水孔
38 ストレーナメッシュ
40 散水板アダプタ
48 筒状部
50 水流通路
51 壁
70 水室
70A 小水室
72 メッシュ押え

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)シャワーヘッドのヘッド本体と、(b)複数の散水孔を有して該ヘッド本体の先端に形成された開口に取り付けられ、該ヘッド本体内の給水路を通じて送られた給水を該複数の散水孔からシャワー吐水する散水板と、(c)異物除去用に微小な通水孔が分散形成され、前記散水板の裏面に重なる状態に配置された可撓性を有するストレーナメッシュと、(d)中心部の筒状部及び該筒状部から全周に亘り径方向に拡がった壁を有し、該筒状部の内側の水流通路に連通した水室を該壁と前記ストレーナメッシュとの間に形成する状態に、前記散水板及びメッシュの裏側に配置され、該水流通路からの水流を該水室に拡がらせ、該メッシュを介し前記散水孔に案内する水流案内部材としての散水板アダプタと、を備えて成るシャワーヘッドのシャワー吐水部構造において
前記散水板アダプタには、少なくとも前記壁の内周端と外周端との間の径方向位置において、前記ストレーナメッシュを前記散水板に向けて押圧するリブ状のメッシュ押えを設けたことを特徴とするシャワーヘッドのシャワー吐水部構造。
【請求項2】
請求項1において、前記リブ状のメッシュ押えが、前記壁から立ち下がる形態で、且つ少なくとも該壁の内周端から該壁の外周端に到るまで径方向に延びる形態で周方向に間隔を隔てて複数設けてあり、該複数のリブ状のメッシュ押えにより前記水室が、前記水流通路にそれぞれ連通し且つ周方向に独立した複数の小水室に区画されていることを特徴とするシャワーヘッドのシャワー吐水部構造。
【請求項3】
請求項2において、前記複数のリブ状のメッシュ押えが放射状に延びる形態で設けてあることを特徴とするシャワーヘッドのシャワー吐水部構造。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記散水板の裏面が平面状に形成されていることを特徴とするシャワーヘッドのシャワー吐水部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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