説明

シャワー装置の取付構造

【課題】既存のカウンターキャリアにシャワー装置を支持する機能を付加して、シャワー装置の取付強度を容易に且つ低コストで高めること。
【解決手段】バスルーム5の壁面6に、既存の浴室カウンターを片持ち状態で支持する複数個のカウンターキャリア7が設置されており、少なくとも1つのカウンターキャリア7に、既存の浴室カウンターに代えて、下端がバスルーム5の床面9にて支持される縦軸部11と該カウンターキャリア7の上面に載設される水平部12とを備えたシャワー取付部材13を固定し、該シャワー取付部材13に対してシャワー装置1を取り付けた構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスルームで使用するシャワー装置の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、バスルームの洗い場にハンドシャワーを設置し、ハンドシャワーを手に持って立位姿勢でシャワーを浴びているが、このようなシャワーでは、体の全体まで暖まりにくく、リラックスした気分が得られにくいという課題がある。
【0003】
また、風呂椅子に腰掛けた姿勢で、身体を包み込むようなシャワー入浴を行なうためのシャワーノズルを備えたシャワー装置が一般に知られているが、風呂椅子は高さが低すぎるため、特に高齢者にとっては必要以上に腰を前方に曲げなければならず、無理な姿勢で使用することになり利便性が悪いものであり、また、風呂椅子を設けることで、元々狭いバスルームがより狭くなるという課題もあった。
【0004】
そこで、従来から、バスルーム内に設置される浴室カウンターをシャワーを浴びる際に着座する着座部として利用できるようにしたシャワー装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ここで、バスルーム5内に設置される浴室カウンター10は、一般的に石鹸やシャンプーの置き台として使用されるものであって、人が着座することを考慮したものではなく、例えば図5に示すように、カウンターキャリア7は浴室カウンター10を片持ち状態で支持しているにすぎず、しかも浴室カウンター10の下方には入浴者の足を入れるスペースSが設けられており、このような安定性及び支持強度的に不安がある浴室カウンター10をそのままシャワー装置の着座部として使用することはできない。
【0006】
そこで、前記特許文献1に見られる従来例では、図6に示すように、既存のカウンターキャリアに代えて、取付強度の高い角パイプからなるL型金具8を取り付け、このL型金具8にシャワー装置1´の着座部となる浴室カウンター10を固定している。このL型金具8は壁面6とバスルーム5の洗い場16の床面9に対してそれぞれ固定されており、大きな荷重に耐え得る浴室カウンター10を得るようにしている。
【0007】
ところが、この従来例では、壁面6に設置される既存のカウンターキャリアまで交換する必要があり、取り替え工事に手間がかかるうえに、コストアップを招くという課題を有している。
【特許文献1】特開2001−137147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、既存のカウンターキャリアにシャワー装置を支持する機能を付加することができ、これにより、従来のようにカウンターキャリアを取り替える手間をなくすことができ、容易に且つ低コストで取付強度を高めることが可能なシャワー装置の取付構造を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために本発明は、湯水を噴出するシャワー噴霧ノズル3と、シャワーを浴びる際に着座する着座部2とを一体に備えたシャワー装置1をバスルーム5の壁面6に取り付ける構造であって、バスルーム5の壁面6には、既存の浴室カウンターを片持ち状態で支持する複数個のカウンターキャリア7が設置されており、少なくとも1つのカウンターキャリア7に、既存の浴室カウンターに代えて、下端がバスルーム5の床面9にて支持される縦軸部11と該カウンターキャリア7の上面に載設される水平部12とを備えたシャワー取付部材13を固定し、該シャワー取付部材13に対してシャワー装置1を取り付けてなることを特徴としている。
【0010】
このような構成とすることで、シャワー装置1の着座部2にかかる人体の荷重がカウンターキャリア7だけに集中せず、シャワー取付部材13の縦軸部11を介してバスルーム5の床面9で支持されるので、構造的にきわめて安全となる。そのうえ、既存のカウンターキャリア7を取り替えることなくそのまま使用できるので、カウンターキャリア7を取り替える手間をなくしてコストダウンを図ることができる。
【0011】
また、上記シャワー装置1には、着座部2の側方に隣接配置されるシャワーカウンター部14が一体に形成されており、該シャワーカウンター部14を上記シャワー取付部材13が固定されていない別のカウンターキャリア7に取り付けるのが好ましく、この場合、シャワー入浴時に着座部2の側方に設けたシャワーカウンター部14を使用できるので、シャワー装置1の機能アップを図ることができる。
【0012】
また、上記シャワー装置1とは別体の既存の浴室カウンター10をシャワー取付部材13が固定されていない別のカウンターキャリア7に取り付けると共に、該浴室カウンター10と上記シャワー取付部材13に取り付けられるシャワー装置1とを互いに連結するのが好ましく、この場合、シャワー入浴時に既存の浴室カウンター10をシャワーカウンターとしても有効に使用できるので、シャワー装置1の機能アップが図られると共に、シャワー入浴をしないときは、浴室カウンター10をシャンプーやリンス等の置き台として使用でき、利便性が向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、既存の浴室カウンターを片持ち状態で支持するカウンターキャリアに対して、既存の浴室カウンターに代えて、バスルームの床面にて支持される縦軸部と該カウンターキャリアの上面に載設される水平部とを備えたシャワー取付部材を固定し、このシャワー取付部材にシャワー装置を取り付けることにより、既存のカウンターキャリアがシャワー装置を支持する機能を持つようになり、この結果、堅牢で且つ安定した座り心地を有するシャワー装置の取り付け構造を容易に且つ低コストで実現できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0015】
本実施形態のバスルーム5は、図1に示すように、浴槽15と洗い場16とから構成されており、洗い場16の壁面6に沿わせてシャワー装置1が設置されている。
【0016】
洗い場16の壁面6には、既存の浴室カウンター10を片持ち状態で支持するための複数個のカウンターキャリア7が設置されている。図2(a)に示す例では3個のカウンターキャリア7a,7b,7bが横並びに設置されている。中央のカウンターキャリア7aは、水平板17と、水平板17の両側端部から下方に垂下する左右一対の垂直片18と、各垂直片18の後端に連設されて壁面6に固定具にて固定される左右一対の固定片19とが一体に形成されており、水平板17及び垂直片18にはビス穴20,21が設けられており、後述するシャワー取付部材13がビス連結により固定されることで、中央のカウンターキャリア7aがシャワー装置1を支持する機能を持つようになる。
【0017】
なお、左右のカウンターキャリア7b,7bは、幅狭の水平片17aと、水平片17aの一側端部から下方に垂下する垂直片18aと、垂直片18の後端に連設されて壁面6に固定具にて固定される固定片19aとが一体に形成されたものであり、これら左右のカウンターキャリア7b,7bには、シャワー取付部材13は固定されず、後述するシャワー装置1に一体化されたシャワーカウンター部14を取り付けたり、或いはシャワー装置1とは別体の浴室カウンター10を取り付けるために用いられる。
【0018】
上記中央のカウンターキャリア7aには、既存の浴室カウンターに代えて、図2(b)に示すように、シャワー取付部材13が固定される。このシャワー取付部材13は、下端がバスルーム5の床面9にて支持される左右一対の縦軸部11と、中央のカウンターキャリア7aの上面に載設される水平部12とが一体に形成されている。水平部12は、一対の縦軸部11の上端にそれぞれ連なる左右一対の横軸部12aと、横軸部12aの前端部同士を互いに連結する連結軸12bとで構成されている。また本例では中央のカウンターキャリア7aの前方への突出幅A(図2(b))よりも、水平部12の前方への突出幅B(>A)を長くすることで、シャワー装置1の着座部2を安定支持できるようにしている。さらに中央のカウンターキャリア7aに対するシャワー取付部材13の固定は例えばビス25による連結で行なわれる。
【0019】
上記シャワー取付部材13には、図1に示すように、シャワー装置1が取り付けられる。シャワー装置1は、入浴者が着座する着座部2と、背もたれ部4と、湯水を噴出するノズルアーム26とが一体に設けられている。このシャワー装置1のシャワー取付部材13への取り付けは、例えば着座部2をシャワー取付部材13の水平部12に対してビス連結することにより行なわれる。
【0020】
なお、着座部2の高さは、一般成人の膝から踵までの距離とほぼ同じ高さとされるのが望ましい。さらに着座部2を浴槽15上縁面とほぼ同じ高さで連なるようにするのが望ましい。また、着座部2の周縁部から下方に向けてスカート部60が垂設されており、このスカート部60によってシャワー取付部材13が覆い隠されている。
【0021】
また本例では、着座部2の両側方に隣接配置される左右一対のシャワーカウンター部14がシャワー装置1と一体に形成されており、各シャワーカウンター部14を上記シャワー取付部材13が固定されていない左右のカウンターキャリア7bに取り付けるようにしている。シャワーカウンター部14は、天板部14aと幕板部14bと底板部14cとが側面視コ字状に形成されており、例えば幕板部14bにカランを取り付け、シャワーカウンター部14の内部にカランに至るカラン配管や、シャワー装置1に至るシャワー配管を配管するようにしてもよい。このシャワーカウンター部14のカウンターキャリア7bへの取り付けは、例えばシャワーカウンター部14の天板部14aをカウンターキャリア7bの水平片17a(図2(a))に対してビス連結することにより行なわれる。
【0022】
上記着座部2の後端から上方に背もたれ部4が立設されている。本例の背もたれ部4は、例えば、図4に示すように、三面鏡30で構成されており、シャワー入浴をするときには、三面鏡30を閉じた状態(図4(b)(c)の状態)にして、扉の裏面を背もたれ部4として使用できるようになっている。
【0023】
背もたれ部4の上端部の左右両サイドには、左右一対のノズルアーム26が上下回動自在に枢支されている。各ノズルアーム26にはそれぞれ複数のシャワー噴霧ノズル3(図4(b),(c))が設けられている。各シャワー噴霧ノズル3は、図示省略した接続管を介して浴室外に設置した給湯器と連通しており、給湯器から湯水が供給できる構成となっている。また各シャワー噴霧ノズル3は、例えば、一般のシャワーノズルより穴径を小さくし、かつ湯水を旋回して噴出することにより霧状に噴霧できるようにしている。さらにシャワー噴霧ノズルは、入浴者の身体に最適な方向に噴出するため設置角度が調節可能な構成となっている。
【0024】
さらに背もたれ部4の両サイドにはシャワー噴霧ノズル3とは別のシャワーノズル27(図4)が設けられており、強めの水流を肩や腰に向かって噴出する打たせ湯気分のシャワー入浴ができるようにしている。
【0025】
しかして、上記シャワー装置1を洗い場16の壁面6に取り付けるにあたって、先ず、中央のカウンターキャリア7aに対してシャワー取付部材13を固定し、このシャワー取付部材13に対してシャワー装置1を取り付けるようにしたので、シャワー装置1の着座部2に着座した際にかかる人体の荷重がカウンターキャリア7aに集中せずに、シャワー取付部材13の縦軸部11を介して洗い場16の床面9にて受け止められるので、堅牢で且つ安定した座り心地を有するシャワー装置1の取り付け構造を実現できるものである。
【0026】
しかも既存のカウンターキャリア7aをそのまま使用できるので、従来のようにカウンターキャリア7を取り替える手間をなくすことができ、コストダウンを図ることができる。
【0027】
また、シャワー入浴時に、ノズルアーム26を任意の角度に調整することで、体形の異なる入浴者とシャワー噴霧ノズル3との位置関係が極端に広がったり、また狭くなったりすることがなくなり、快適で効率的なシャワー入浴ができるようになる。そのうえシャワーが身体を包み込み、万遍なく熱交換を行なうので温熱効果が短時間に得られると同時に、バスタブ入浴のような静水圧作用がないため入浴者の身体への負担を軽減できるものである。
【0028】
一方、シャワー入浴をしないときは、シャワー装置1の着座部2を浴室カウンター10として使用でき、しかも、ノズルアーム26を下ろした状態で三面鏡30を図4(c)のように開くことで、ノズルアーム26が三面鏡30の背後に隠されるようになり、デザイン的にもスマートになると共に、三面鏡30を開いてそのミラー面を浴室用鏡として使用できるようになる。
【0029】
さらに、着座部2を浴槽15上縁面とほぼ同じ高さで連なる高さにしているので、浴槽15から着座部2への乗り移り動作、及び、着座部2から浴槽15への移り動作をスムーズに行なうことができる。つまり、入浴者は着座部2で楽に着座したまま体を洗い、その姿勢のままで臀部をずらすことにより浴槽15への入浴ができるようになり、一方、浴槽15へ入浴したあと洗い場16側へ出る場合も、入浴者は浴槽15上縁面に腰掛けた状態から臀部をずらして着座部2に移動することができるので、安全性と利便性が格段に向上する。
【0030】
また本例では、シャワー装置1に、着座部2の側方に隣接配置されるシャワーカウンター部14が一体に形成されており、このシャワーカウンター部14を上記シャワー取付部材13が固定されていない左右のカウンターキャリア7bに取り付けているので、シャワー入浴時には着座部2の側方に隣接配置されるシャワーカウンター部14を使用できるので、シャワー装置1の機能アップを図ることができるものであり、またシャワー入浴をしないときは、シャワーカウンター部14をシャンプーやリンス等の置き台として使用でき、利便性が良くなる利点もある。
【0031】
図3は本発明の他の実施形態であり、シャワー取付部材13が固定されていない左右のカウンターキャリア7bに既存の浴室カウンター10を取り付けると共に、既存の浴室カウンター10と上記シャワー取付部材13に取り付けられるシャワー装置1とを互いに連結したものである。他の構成は図1、図2の実施形態と同様であり、対応する部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。本例では既存の浴室カウンター10を左右2つに分割し、各浴室カウンター10を左右のカウンターキャリア7bにそれぞれ取り付けている。そして、左右の浴室カウンター10の間に、中央のカウンターキャリア7aとこれに取り付けられるシャワー取付部材13とが配置されると共に、シャワー装置1の着座部2を左右の浴室カウンター10と面一状に連続して形成できるようにしている。なお浴室カウンター10は、天板部10aと幕板部10bと底板部10cとが側面視コ字状に形成されており、例えば幕板部10bにカランを取り付け、浴室カウンター10内部にカランに至るカラン配管や、シャワー装置1に至るシャワー配管を配管するようにしてもよい。しかして、シャワー入浴時には、既存の浴室カウンター10をシャワーカウンターとしても有効に使用できるようになるので、シャワー装置1の機能アップが図られる。またシャワー入浴をしないときは、浴室カウンター10をシャンプーやリンス等の置き台として使用でき、利便性が良くなる。
【0032】
前記各実施形態ではシャワー装置1の背もたれ部4として三面鏡30を利用したが、勿論これに限らず、三面鏡以外の背もたれを設けたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のシャワー装置の取付構造の一例を示す斜視図である。
【図2】(a)は同上の既存のカウンターキャリアの取り付け状態を説明する斜視図、(b)は中央のカウンターキャリアに対してシャワー取付部材を固定した状態の斜視図である。
【図3】(a)(b)は本発明の他の実施形態の斜視図である。
【図4】(a)〜(c)は同上の背もたれ部の一例を説明する斜視図である。
【図5】従来の浴室カウンターをカウンターキャリアで支持した構造を説明する斜視図である。
【図6】他の従来例を示し、(a)はL型金具を壁面と床面に固定した状態の説明図、(b)はL型金具にて支持された浴室カウンターをシャワー装置の着座部として使用する場合の説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1 シャワー装置
2 着座部
3 シャワー噴霧ノズル
5 バスルーム
6 壁面
7 カウンターキャリア
9 床面
10 既存の浴室カウンター
11 縦軸部
12 水平部
13 シャワー取付部材
14 シャワーカウンター部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を噴出するシャワー噴霧ノズルと、シャワーを浴びる際に着座する着座部とを一体に備えたシャワー装置をバスルームの壁面に取り付ける構造であって、バスルームの壁面には、既存の浴室カウンターを片持ち状態で支持する複数個のカウンターキャリアが設置されており、少なくとも1つのカウンターキャリアに、既存の浴室カウンターに代えて、下端がバスルームの床面にて支持される縦軸部と該カウンターキャリアの上面に載設される水平部とを備えたシャワー取付部材を固定し、該シャワー取付部材に対してシャワー装置を取り付けてなることを特徴とするシャワー装置の取付構造。
【請求項2】
上記シャワー装置には、着座部の側方に隣接配置されるシャワーカウンター部が一体に形成されており、該シャワーカウンター部を上記シャワー取付部材が固定されていない別のカウンターキャリアに取り付けたことを特徴とする請求項1記載のシャワー装置の取付構造。
【請求項3】
上記シャワー装置とは別体の既存の浴室カウンターをシャワー取付部材が固定されていない別のカウンターキャリアに取り付けると共に、該浴室カウンターと上記シャワー取付部材に取り付けられるシャワー装置とを互いに連結したことを特徴とする請求項1記載のシャワー装置の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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