説明

シュガーレスグミキャンディ

【課題】今までにない強い酸味をもち、食べ始めから食べ終わりまで酸味が持続して感じられ、且つ弾力のあるシュガーレスグミキャンディを提供すること。
【解決手段】固形分中に還元パラチノースを55〜75重量%及びゼラチンを8〜25重量%含み、全体の水分値が12〜16重量%であるシュガーレスグミキャンディであって、固形分中に有機酸を15〜30重量%含むことを特徴とするシュガーレスグミキャンディ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機酸を非常に多く含むシュガーレスグミキャンディに関する。
【背景技術】
【0002】
グミキャンディは、菓子の中でも世界中の幅広い人々に認知されており、噛み応えのある弾力性の食感と風味を楽しむ菓子として親しまれている。中でも、刺激や爽快感の得られる酸味の強いグミキャンディは人気があり、さらなる酸味のインパクトが求められている。また、有機酸の一つとして、クエン酸は、爽やかな酸味をもつばかりでなく、疲労回復や健康増進のためのサプリメントとしても広く用いられており、非常に幅広い分野で用いられている有機酸である。リンゴ酸や酒石酸等の有機酸に関しても、同様に健康補助の効果がうたわれており、嗜好面と健康面の両方の観点から、それらの有機酸を多く含むようなグミキャンディの開発が待たれている。
【0003】
しかし、通常のグミキャンディは、耐酸性が弱く、吸湿による耐久力にも乏しいため、グミキャンディ中に含まれる有機酸量はせいぜい5重量%程度に過ぎなかった。そのため、酸味の強いグミキャンディは実現していない。例えば、酸味を比較的強く感じられる市販のグミキャンディとしては、ノーベル製菓株式会社製「サワーズ(登録商標)」、カンロ株式会社製「ピュレグミ(登録商標)」、味覚糖株式会社製「シゲキックス(登録商標)」等が挙げられるが、いずれのグミキャンディもコーティングにより酸味を付与しており、グミキャンディ部分に強い酸味を有するものではない。そのため、食べ初めに強く感じられる酸味も、食べ終わるころにはグミキャンディ部分の甘み等により緩和されて、強い酸味を持続して感じることはない。また、前記のようにコーティングにより酸味を付与する場合においては、コーティング部分に含まれるクエン酸をはじめとする有機酸は、吸湿・べとつきの原因となり、少量の使用に限られていた。
【0004】
一方で、従来よりグミキャンディは、水飴、砂糖を基本の原材料として製造されてきたが、近年、消費者の低カロリー志向、低う蝕性志向が高まっていることを受け、グミキャンディにも低カロリーや低糖のものが求められている。一般の低カロリー食品では糖アルコールや還元水飴が使用されている場合が多いが、糖アルコールや還元水飴をベースとしたグミキャンディは、食感のコントロールが難しく、さらに経時的に離水がおこり、グミキャンディ表面がべたついてくるという問題があり、品質を安定させることが難しいことが知られている。これらの課題を解決する方法として、例えば、ソルビトール及び分岐オリゴ糖アルコールを用い、トレハロース、マルトース又は乳糖を添加して離水を抑えた、水飴、砂糖を含まないグミキャンディ(特許文献1)、糖アルコールの種類及び配合量等を厳密に調整し、有機酸の種類及び配合量を限定することによって得られる、ミント系フレーバーを用いた良好なテクスチャーを有する無糖グミゼリー(特許文献2)等が提案されている。また、糖アルコールを使用したゲルは、離水だけでなく再結晶化も問題になっている。その解決方法として、例えば、糖アルコールを単糖及び/又は2糖の小さな糖成分と、3糖以上の大きな糖成分とを特定の割合で混合することにより、離水や再結晶化の問題を解決する提案もなされている(特許文献3)。しかしながら、これらのグミキャンディにおける有機酸の含有量は、0.1〜5重量%であり、酸味の点では強いものとはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3630900号公報
【特許文献2】特許第3127322号公報
【特許文献3】特開平8−9901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、今までにない強い酸味をもち、食べ始めから食べ終わりまで酸味が持続して感じられ、弾力があり、保存安定性に優れるシュガーレスグミキャンディを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、通常、還元パラチノースのみのグミキャンディは結晶化を起こしてしまうが、有機酸を多量に加えることにより還元パラチノースの結晶化が抑えられて、グミキャンディ特有の弾力が奏されること、さらに還元パラチノース以外の糖では多量の有機酸を用いると保形性を失うが、その問題も生じないという意外な現象を初めて見出すことで、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、固形分中に還元パラチノースを55〜75重量%及びゼラチンを8〜25重量%含み、全体の水分値が12〜16重量%であるシュガーレスグミキャンディであって、固形分中に有機酸を15〜30重量%含むことを特徴とするシュガーレスグミキャンディに関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、従来のコーティングにより酸味を付与したグミキャンディと比べても、非常に強い酸味をもち、食べ始めから食べ終わりまで酸味が持続して感じられ、弾力があり、保存安定性に優れるシュガーレスのグミキャンディを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明のシュガーレスグミキャンディに使用される還元パラチノースは、二糖類の糖アルコールであり、その実体はα−D−グルコピラノシル−1,6−マンニトール及びその異性体であるα−D−グルコピラノシル−1,6−ソルビトールの混合物である。還元パラチノースはスクロースを原料とし、スクロースを糖転移酵素によりイソマルツロース(パラチノース)とした後に、水素添加反応させることによって得られる。また、還元パラチノースとしては、三井製糖株式会社の商品名として「パラチニット」、あるいは「イソマルト」等の名称の市販品が挙げられる。
【0011】
本発明のシュガーレスグミキャンディ中における還元パラチノースの含有量は、全固形分中55〜75重量%である。還元パラチノースの含有量が55重量%未満になると、シュガーレスグミキャンディが軟らかくなりやすく、75重量%を超えると還元パラチノースの結晶化が起きてしまう。還元パラチノースの含有量は、60〜70重量%であることが好ましい。
本発明では、糖質として還元パラチノースを主成分にすることで、後述の有機酸を多量に配合した場合でも、弾力があり、長期保存した場合でも離水やべたつきを生じないという保存安定性に優れるシュガーレスグミキャンディとすることができる。
【0012】
本発明で使用するゼラチンとしては、コラーゲンを酸処理又はアルカリ処理後に精製されたゼラチンが挙げられ、例えば、豚皮、牛皮等の獣由来ゼラチンに加えて、水生生物(淡水・海水)由来のゼラチン等が挙げられるが、コラーゲンを酸処理又はアルカリ処理の工程を含めて精製したゼラチンであれば由来生物に関しては特に制限されない。
【0013】
本発明のシュガーレスグミキャンディ中におけるゼラチンの含有量は、全固形分中8〜25重量%である。ゼラチンの含有量が8重量%未満になると、シュガーレスグミキャンディが軟らかくなってしまい、25重量%を超えるとシュガーレスグミキャンディに弾力が出過ぎてしまう。ゼラチンの含有量は、8〜15重量%が好ましい。
【0014】
本発明のシュガーレスグミキャンディに使用される有機酸としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、アジピン酸、乳酸及び酢酸から成る群より選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0015】
本発明のシュガーレスグミキャンディは、固形分中に有機酸を15〜30重量%含有する点に一つの特徴がある。有機酸の含有量が15重量%未満になると、シュガーレスグミキャンディを食べたときに感じられる酸味が弱く、且つ前記還元パラチノースの結晶化も起こりやすい。有機酸の含有量が30重量%を超えると、有機酸による吸湿性が高くなりシュガーレスグミキャンディが軟らかくなりやすい。有機酸の含有量は、20〜25重量%が好ましい。本発明のシュガーレスグミキャンディでは、このように多量の有機酸を含有することで、今までにない強い酸味をもち、食べ始めから食べ終わりまで酸味が持続して感じることができる。
【0016】
また、本発明のシュガーレスグミキャンディには、前記還元パラチノース、有機酸及びゼラチンの含有量が規定の範囲内であれば、シュガーレスグミキャンディの硬さやチューイング性を好ましい程度に調整しやすくすることを目的に、任意成分として他の糖類やゲル化剤も添加することができる。例えば、カラギーナン、寒天、ペクチン、ジェランガム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、トラガントガム、グアガム、カラヤガム、タマリンドシードガム、グルコマンナン等が挙げられる。また、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール等、還元パラチノース以外の糖アルコールや還元水飴に関しても、還元パラチノースの含有量が規定の範囲内であり、硬さやチューイング性を損なわない限り添加することができる。
【0017】
また、本発明のシュガーレスグミキャンディは、所望により、果汁、香料、着色料、食物繊維、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸、油脂、乳化剤、乳製品、高甘味度甘味料(アスパルテーム、グリチルリチン、サッカリン、ステビア、ズルチン、アリテーム、トリクロロシュークロース、ソーマチン、アセスルファムカリウム、スクラロース等)等の任意成分を含有してもよい。
【0018】
本発明のシュガーレスグミキャンディの水分値は、食感と密接に関係があり、本発明では、12〜16重量%になるように調整され、12〜14重量%であればより好ましい食感となる。前記水分値は、減圧乾燥法により測定することができる。
【0019】
本発明のシュガーレスグミキャンディは、一般的なグミキャンディの製法に準じて作ることができる。例えば、ゼラチンを水に膨潤させて60℃に保温しておく。別に、還元パラチノースを水に溶解して糖液を作製する。次いで、この糖液と、先に保温しておいたゼラチン溶液とを攪拌混合する。この混合の際、有機酸、必要に応じて他の糖類、ゲル化剤等の任意成分を加えてグミキャンディベースを調製する。次いで、モールド中に前記グミキャンディベースを充填し、水分値が12〜16重量%になるまで乾燥する。乾燥手段及び水分値の測定手段には、公知の手段・装置を使用すればよい。乾燥後、前記モールドから取り出すことでシュガーレスグミキャンディを得ることがきる。得られたシュガーレスグミキャンディは、オイリング、糖衣処理等の後処理を施してもよい。
【実施例】
【0020】
次に、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。なお、「部」は「重量部」及び「%」は「重量%」を示す。
【0021】
(実施例1)
還元パラチノース66部を加水して加温溶解し、これに別で250ブルームの豚皮由来の酸処理ゼラチン12部を水で膨潤させ60℃付近に保温しておいたものを混合し、クエン酸18部、リンゴ酸3部、レモン香料0.6部、黄色色素0.4部を加え混合溶解し、水分28%のグミキャンディベースを調製した。該グミキャンディベースを、単重1gになるようにコーンスターチ成形型に充填し、40℃の乾燥庫で水分13%まで乾燥させた。その後、コーンスターチ成形型から取り出し、オイリングをしてシュガーレスグミキャンディを得た。得られたグミキャンディは非常にすっぱく刺激的な酸味を有しており、食べ始めから食べ終わりまで酸味を感じることができる弾力に優れたグミキャンディであった。また、前記シュガーレスグミキャンディは、300日間常温で放置した場合でも、離水やべたつきを生じない、良好な保存安定性を示した。
なお、表1にシュガーレスグミキャンディの組成をまとめた(以下の例でも同じ)。
【0022】
(実施例2)
還元パラチノース56部を加水して加温溶解し、これに別で250ブルームの豚皮由来の酸処理ゼラチン24部を水で膨潤させ60℃付近に保温しておいたものを混合し、クエン酸10部、リンゴ酸9部、レモン香料0.6部、黄色色素0.4部を加え混合溶解し、水分28%のグミキャンディベースを調製した。該グミキャンディベースを、単重1gになるようにコーンスターチ成形型に充填し、40℃の乾燥庫で水分13%まで乾燥させた。その後、コーンスターチ成形型から取り出し、オイリングをしてシュガーレスグミキャンディを得た。得られたグミキャンディは非常にすっぱく刺激的な酸味を有しており、食べ始めから食べ終わりまで酸味を感じることができる弾力に優れたグミキャンディであった。
【0023】
(実施例3)
還元パラチノース56部を加水して加温溶解し、これに別で250ブルームの豚皮由来の酸処理ゼラチン15部を水で膨潤させ60℃付近に保温しておいたものを混合し、クエン酸19部、リンゴ酸9部、レモン香料0.6部、黄色色素0.4部を加え混合溶解し、水分28%のグミキャンディベースを調製した。該グミキャンディベースを、単重1gになるようにコーンスターチ成形型に充填し、40℃の乾燥庫で水分13%まで乾燥させた。その後、コーンスターチ成形型から取り出し、オイリングをしてシュガーレスグミキャンディを得た。得られたグミキャンディは非常にすっぱく刺激的な酸味を有しており、食べ始めから食べ終わりまで酸味を感じることができる弾力に優れたグミキャンディであった。
【0024】
(比較例1)
還元パラチノース75部を加水して加温溶解し、これに別で250ブルームの豚皮由来の酸処理ゼラチン12部を水で膨潤させ60℃付近に保温しておいたものを混合し、クエン酸7部、リンゴ酸5部、レモン香料0.6部、黄色色素0.4部を加え混合溶解し、水分28%のグミキャンディベースを調製した。該グミキャンディベースを、単重1gになるようにコーンスターチ成形型に充填し、40℃の乾燥庫で水分13%まで乾燥させた。その後、コーンスターチ成形型から取り出し、オイリングをしてシュガーレスグミキャンディを得た。得られたグミキャンディは結晶化が起こっており食感も悪く、酸味も弱いものであった。
【0025】
(比較例2)
砂糖66部を加水して加温溶解し、これに別で250ブルームの豚皮由来の酸処理ゼラチン12部を水で膨潤させ60℃付近に保温しておいたものを混合し、クエン酸18部、リンゴ酸3部、レモン香料0.6部、黄色色素0.4部を加え混合溶解し、水分28%のグミキャンディベースを調製した。該グミキャンディベースを、単重1gになるようにコーンスターチ成形型に充填し、40℃の乾燥庫で水分13%まで乾燥させた。その後、コーンスターチ成形型から取り出し、オイリングをしたが、得られたグミキャンディは非常に軟らかく形を保つのが困難なものであった。
【0026】
(比較例3)
キシリトール66部を加水して加温溶解し、これに別で250ブルームの豚皮由来の酸処理ゼラチン12部を水で膨潤させ60℃付近に保温しておいたものを混合し、クエン酸18部、リンゴ酸3部、レモン香料0.6部、黄色色素0.4部を加え混合溶解し、水分28%のグミキャンディベースを調製した。該グミキャンディベースを、単重1gになるようにコーンスターチ成形型に充填し、40℃の乾燥庫で水分13%まで乾燥させた。その後、コーンスターチ成形型から取り出し、オイリングをしてシュガーレスグミキャンディを得た。得られたグミキャンディは完全に結晶化して硬くなってしまい、グミキャンディのような弾力のある食感には程遠いものとなった。
【0027】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分中に還元パラチノースを55〜75重量%及びゼラチンを8〜25重量%含み、全体の水分値が12〜16重量%であるシュガーレスグミキャンディであって、固形分中に有機酸を15〜30重量%含むことを特徴とするシュガーレスグミキャンディ。

【公開番号】特開2011−244775(P2011−244775A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123404(P2010−123404)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(390020189)ユーハ味覚糖株式会社 (242)
【Fターム(参考)】