説明

シュレッダーの制御装置

【課題】シュレッダーの稼働時間や負荷状況を簡単に把握でき、その状況に基づいた対応を適切にとることができるようにする。
【解決手段】モータ26によって細断機構を駆動して紙葉を切り刻むように構成されるシュレッダー1の制御装置であって、モータ26が駆動されている時間を計測するタイマ14と、書き換え可能な記憶手段としてのEEPROM15と、モータ26の駆動と停止を制御するとともに、モータ26の駆動が停止する毎にタイマ14の計測を停止させ、かつ、その間にタイマ14が計測した値をEEPROM15にモータ26の稼働累計時間として積算して記憶させる制御手段としてのCPU11とを設けたシュレッダーの制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータによって細断機構を駆動して不要な紙葉を切り刻むシュレッダーの制御装置に関し、特にメンテナンス等の時期を簡単に知りうるようにしたシュレッダーの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、モータによって細断機構を駆動して紙葉を切り刻むように構成されるシュレッダーは数多く知られている(例えば、特許文献1参照)。この種のシュレッダーは、細断機構における剪断刃等の各種部品が使用によって摩耗するので、定期的及び必要に応じて点検及び交換が必要になる。
【0003】
しかし、従来のシュレッダーでは、シュレッダーの使用(稼働)状況を記録するような手段は設けられていない。このため、使用者の経験に基づく判断や、設置されてからの時間の経過に応じて、サービスマンが定期点検に訪問し、必要な部品の交換等を、分解作業を伴わせて行っているのが現状である。
【特許文献1】実開昭61−121951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来のシュレッダーでは、シュレッダーの稼働状況を記録するような手段は設けられていなかった。そのため、使用者側の判断で点検サービスを要求したり、設置してからの時間の経過に応じて、サービスマンが定期点検に訪問し、必要な部品の交換等を、分解作業を伴って行っていた。
【0005】
しかし、シュレッダーの各種部品の摩耗量は、シュレッダーの稼働時間や、その間にモータや細断機構に加わった負荷等によっても大きく異なる。すなわち、稼働時間が少ない場合や、比較的負荷の掛からない紙葉を細断している場所では、部品の摩耗も少なく、頻繁な点検や部品交換も必要としないが、この稼働時間や負荷量はサービスを提供する側では正確に把握することはできない。このため、不必要な部品交換や点検作業を行ったり、反対に部品交換や定期点検の時期が遅れたりすることも考えられる。
【0006】
本発明は、上述のような従来の課題を解決するためになされたものであって、シュレッダーの稼働時間や負荷状況を簡単に把握でき、その状況に基づいた対応を適切にとることができるようにしたシュレッダーの制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)モータによって細断機構を駆動して紙葉を切り刻むように構成されるシュレッダーの制御装置において、前記モータが駆動されている時間を計測するタイマと、書き換え可能な記憶手段と、前記モータの回転と停止を制御するとともに、前記モータの回転が停止する毎に前記タイマの計測を停止させ、かつ、その間に前記タイマが計測した値を前記記憶手段に前記モータの稼働累計時間として積算して記憶させる制御手段とを備える。
【0008】
(2)上記(1)項において、モータの負荷電流を測定してモータの負荷係数を求め、タイマの計測値に前記負荷係数を乗じて、前記タイマの値を記憶手段に記憶する。
【0009】
(3)上記(1)または(2)項において、細断機構から発生する振動及び音の大きさから前記細断機構の負荷係数を求め、タイマの計測値に前記負荷係数を乗じて、前記タイマの値を記憶手段に記憶する。
【0010】
(4)上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、タイマと記憶手段と制御手段が、マイクロコンピュータを構成してなる。
【0011】
(5)上記(4)項において、マイクロコンピュータに、記憶手段に記憶された稼働時間情報を外部機器へ出力可能な通信手段を設ける。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によると、記憶手段に記憶された稼働時間情報を読み出すことにより、シュレッダーの累積稼働時間を容易に知り、この累積稼働時間に応じた定期点検作業や部品交換等の管理を適切に行うことができる。
【0013】
請求項2記載の発明によると、モータに与える負荷をからシュレッダーの負荷量を知り、この負荷量を加味してモータの稼働時間を記憶するので、単なる稼働時間だけでなしに、使用環境も加えた管理が可能になり、より適切な管理が行える。
【0014】
請求項3記載の発明によると、細断機構から発生する振動及び音の大きさから前記細断機構の負荷量を知り、この負荷量を加味してモータの稼働時間を記憶するので、単なる稼働時間だけでなしに、使用環境も加えた管理が可能にな、より適切な管理が行える。
【0015】
請求項4記載の発明によると、マイクロコンピュータの制御で、予め決められた手順にしたがって的確に制御することが可能になる。
【0016】
請求項5記載の発明によると、記憶手段に記憶された稼働時間情報を、通信手段を介して外部機器へ出力することによって、外部からでも容易に知ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態における制御装置を適用したシュレッダーの外観斜視図を示す。図1において、シュレッダー(1)は、筐体(2)の上面中央部分に文書投入口(3)を有し、上面前側部分に操作パネル(4)を設けている。また、筐体(2)の前面には、扉(5)を設けている。操作パネル(4)には、モータを緊急停止させるストップスイッチ(6)と、後述するモータを正方向に回転させる正転スイッチ(7)およびモータを逆方向に回転させる逆転スイッチ(8)と、運転状態をランプで発光表示する表示部(9)を設けている。
【0018】
図2は、シュレッダー(1)の制御系を示す機能ブロック図である。図2において、コントローラ(10)はマイクロコンピュータ(通称「マイコン」)である。このコントローラ(10)は、制御手段としてのCPU(11)に、読み書き可能な記憶手段であるRAM(12)、読み出し専用の記憶手段であるROM(13)、タイマ(14)、読み書き可能で、かつ電源がオフになってもデータを保持し続ける記憶手段としてのEEPROM(15)、通信手段であるシリアルポートSIO(16)、入出力ポートであるI/Oポート(17)(18)をそれぞれ接続させて構成している。
【0019】
コントローラ(10)のI/Oポート(17)には、文書投入口(3)に投入されて来る紙葉を検出する用紙センサ(19)と、操作パネル(4)に設けられたストップスイッチ(6),正転スイッチ(7)及び逆転スイッチ(8)をそれぞれ有するボタンスイッチ(20)と、用紙センサ(19)以外のその他センサ(21)の他に、モータの負荷電流を連続的に測定するモータ駆動電流検出センサ(22)と、文書投入口(3)から投入されて来る紙葉を細断する細断機構(図示せず)で発生する振動及び音の大きさを検出する振動・騒音検出センサ(23)が接続されている。
【0020】
コントローラ(10)のI/Oポート(18)には、操作パネル(4)に表示される各種のランプ(24)を点灯制御する表示ドライバー(25)と、細断機構を駆動するモータ(26)の回転を制御するモータドライバー(27)が接続されている。
【0021】
コントローラ(10)のシリアルポート(16)には、パソコンや携帯情報端末(PDA)等の端末(26)を接続するためのRS232C等でなる信号変換機(29)が接続されている。
【0022】
CPU(11)は、ROM(13)及びRAM(12)に予め格納されているプログラムの手順に従って動作するものであり、図3及び図4はそのプログラムの一例を示すフローチャートである。図3及び図4のフローチャートに基づき、図1及び図2に示すシュレッダー(1)の機能を説明する。
【0023】
まず、図示を省略したスイッチが投入されていると、通常は、コントローラ(10)がオートスタートに、待機状態になっている。待機状態において、紙葉が文書投入口(3)に投入されると、用紙センサ(19)が紙葉を検出し、この検出信号がCPU(11)に入力される(ステップS1)。用紙センサ(19)からの検出信号を受けたCPU(11)は、モータドライバー(27)とタイマ(14)にそれぞれ信号を送り、モータ(26)を正回転させるとともにタイマ(14)の計測をスタートさせる(ステップS2)。また他の各種センサ(21)からの信号の条件も満足していれば(ステップS3)、モータ(26)の駆動力で細断機構が動作し、紙葉の細断を開始する(ステップS4)。
【0024】
紙葉の細断が完了したことを用紙センサ(19)が検出すると(ステップS5)、CPU(11)はモータドライバー(27)を介してモータ(26)の回転を5秒後に停止させると共に、タイマ(14)による計測を停止させ、かつ、このタイマ(14)が計測した時間をEEPROM(15)にモータ(26)の稼働時間として、前回までの計測値に積算して記憶する(ステップS6)。また、ステップ(S6)からはステップ(S1)へ戻り、用紙センサ(S19)が再び紙葉を検出するのを待つ。用紙センサ(S19)が再び紙葉を検出すると同じ動作を繰り返す。
【0025】
なお、ステップ(S3)において、緊急時にストップスイッチ(6)をON(押下)して、そのONを検出したとき、及び他の各種センサ(21)がエラーを検出した場合は、ステップ(S3)からステップ(S7)に移行し、CPU(11)は表示ドライバー(25)を介してランプ(24)を点灯させてエラーを表示した後、直ちにモータドライバー(27)を介してモータ(26)の回転を停止させると同時にタイマ(14)による計測を停止させ、かつ、このタイマ(14)が計測した今回の時間をEEPROM(15)にモータ(26)の稼働時間として、前回までの計測値に積算して記憶する(ステップS8)。
【0026】
その後、作業者等がエラーを排除するのを待つ(ステップS9)。エラーが排除されると、各種センサ(21)におけるエラーを検出したセンサがオフされ(ステップS10)、エラー表示ランプ(24)も消灯する。続いて、作業者がスタート釦となる正転スイッチ(7)または逆転スイッチを押すと(ステップS10)、ステップ(S1)に移行して、同じ動作を繰り返す。
【0027】
したがって、この制御装置では、モータ(26)が実際に駆動されている時間をタイマ(14)で計測し、この値をEEPROM(15)にモータ(26)の稼働時間として積算して記憶するので、EEPROM(15)にはモータ(26)の累積稼働時間が記憶されることになる。
【0028】
そして、EEPROM(15)に記憶されたモータ(26)の累積稼働時間のデータは、例えば図4に示すフローチャートで示すように、ある一定の周期で割り込み通信を起動させ、EEPROM(15)に記憶されているモータ(26)の累積稼働時間のデータ情報を、シリアルポート(16)に接続されている端末(28)に送る。端末(28)側では、この累積稼働時間のデータ情報からから実際の稼働状況に応じた保守点検の時期や部品交換等の管理を無駄なく適切に行うことができる。また、端末(28)側から必要に応じてコントローラ(10)に所定の通信手順に従ってアクセスし、EEPROM(15)に記憶されている稼働状況のデータ情報を読み出して見ることができる。
【0029】
なお、上記の実施形態において、次のようにして実施するようにしてもよい。(i)モータ(26)の駆動時に、モータ駆動電流検出センサ(22)でモータ(26)の電流と電圧を連続的に測定し、これをモータ(26)の負荷係数に置き換え、この負荷計数をタイマ(14)の計測値に乗じてモータ(26)の稼働時間を記憶するようにする。これによれば、モータ(26)に加わる負荷からシュレッダー(1)の負荷量を推測し、この負荷量を加味して、EEPROM(15)にモータの稼働時間を記憶するので、単なる稼働累計時間だけでなしに、使用環境も加えた管理が可能になる。
(ii)細断機構から発生する振動及び音の大きさ等を検出し、これらの情報を細断機構の負荷係数に置き換え、タイマの計測値にこの負荷係数を乗じてモータの稼働時間をEEPROM(15)に記憶するようにする。これによれば、細断機構から発生する振動及び音の大きさ等から、シュレッダー(1)のモータ(26)や各種機構部品に加わる負荷量を推測し、この負荷量を加味して、EEPROM(15)にモータ(26)の稼働時間を記憶するので、単なる稼働累計時間だけでなしに、使用環境も加えた管理が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態における制御装置を適用したシュレッダーの外観斜視図である。
【図2】同上シュレッダーの制御系を示す機能ブロック図である。
【図3】同上制御系で稼働時間データを記憶する手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】同上制御系で記憶している稼働時間データを外部に送る手順の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0031】
(1)シュレッダー
(2)筐体
(3)文書投入口
(4)操作パネル
(5)扉
(6)ストップスイッチ
(7)正転スイッチ
(8)逆転スイッチ
(9)表示部
(10)コントローラ
(11)CPU(制御手段)
(12)RAM
(13)ROM
(14)タイマ
(15)EEPROM(記憶手段)
(16)シリアルポート(SIO)
(17)I/Oポート
(18)I/Oポート
(19)用紙センサ
(20)ボタンスイッチ
(21)各種センサ
(22)モータ駆動電流検出センサ
(23)振動・騒音検出センサ
(24)ランプ
(25)表示ドライバー
(26)モータ
(27)モータドライバー
(28)端末
(29)信号変換機(RS232C)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータによって細断機構を駆動して紙葉を切り刻むように構成されるシュレッダーの制御装置において、
前記モータが駆動されている時間を計測するタイマと、
書き換え可能な記憶手段と、
前記モータの回転と停止を制御するとともに、前記モータの回転が停止する毎に前記タイマの計測を停止させ、かつ、その間に前記タイマが計測した値を前記記憶手段に前記モータの稼働累計時間として積算して記憶させる制御手段、
とを備えたことを特徴とするシュレッダーの制御装置。
【請求項2】
モータの負荷電流を測定してモータの負荷係数を求め、タイマの計測値に前記負荷係数を乗じて、前記タイマの値を記憶手段に記憶するようにした請求項1記載のシュレッダーの制御装置。
【請求項3】
細断機構から発生する振動及び音の大きさから前記細断機構の負荷係数を求め、タイマの計測値に前記負荷係数を乗じて、前記タイマの値を記憶手段に記憶するようにした請求項1または2に記載のシュレッダーの制御装置。
【請求項4】
タイマと記憶手段と制御手段が、マイクロコンピュータを構成してなる請求項1〜3のいずれかに記載のシュレッダーの制御装置。
【請求項5】
マイクロコンピュータに、記憶手段に記憶された稼働時間情報を外部機器へ出力可能な通信手段を設けてなる請求項4記載のシュレッダーの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−136264(P2007−136264A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329343(P2005−329343)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】