説明

シュードモナス菌及び近縁細菌における極限酵素遺伝子の過剰表現

【課題】商業的に実行可能な工業規模の極限酵素発現系を提供する。
【解決手段】シュードモナス菌及び近縁細菌が宿主細胞として使用される極限酵素過剰発現系、それらを使用するための方法及びキット並びにそれらから発現される極限酵素。前記宿主細胞が培地上で発現を可能にする条件下で成長させた場合に、少なくとも1g/Lの総生産性で前記極限酵素を生成するように、前記コード配列を過剰発現できることを特徴とする組換え細菌宿主細胞。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシュードモナス菌及び近縁細菌における極限酵素遺伝子の過剰表現に関する。
【背景技術】
【0002】
酵素は、工業用及び家庭用プロセスにおいて生体触媒(biocatalyst)として長い間使用されており、最近では医療用にも使用されている。例えば酵素はコーンスターチの触媒液化(例えばアミラーゼ酵素による)のような従来の工業的な生物工学的プロセスにおいて、酵素による染み抜き(例えばサブチリシン及び他のプロテアーゼ酵素による)のような家庭用プロセスにおいて、更に、in vivoにおける血餅の溶解(例えばウロキナーゼ酵素による)のための触媒血栓溶解のような医療用として一般に使用されている。使用目的の条件下で増大した安定性(このような条件下における酵素活性の半減期によって典型的に説明される特徴)を示す酵素は、安定性がより低い酵素よりも望ましいことは広く認められている。また、酵素が使用条件下で最大の触媒活性、即ち、酵素の「最適条件」(酵素の触媒活性の可能最大レベルは種々の環境パラメーター、例えば温度、塩度、pHなどに伴って変化し得ることを反映するために複数形で示される)と称される特徴を示すことが望ましいことも広く認められている。これは酵素が使用目的の条件下で高安定性及び触媒最適条件の両方を示すのが最も望ましいことを意味する。
【0003】
酵素の使用目的はたくさん提案されているが、環境条件が高温若しくは低温、高pH若しくは低pH、高塩度、そしてよく見られる生物を支持する環境パラメーターから実質的に逸脱する他の条件が含まれる。このような「よく見られる」生物的条件には、例えば約20〜60℃の温度、約6.0〜7.5のpH及び約3.5%(w/v)より低い塩度がある。これらの提案された用途を実現しようとして、「極限酵素(extremozyme)」が提案されている。極限酵素は一般に、極限環境条件下において有意な触媒活性を示し、且つ一般的には、多くの場合このような極限条件下に対する高安定性及びこのような極限条件下における触媒最適条件を示す酵素であるとみなされている。
【0004】
極限酵素が特に有利である可能性がある、提案された用途の例としては、例えば非特許文献1の表2に列挙されたものが挙げられる。このような提案された用途は極限酵素を以下のことに使用することを検討している:
【0005】
1.分子生物学:例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)における超好熱性(hyperthermophilic)DNAポリメラーゼの使用;遺伝子操作における好極限性DNAリガーゼの使用;研究用の好極限性プロテアーゼ;
2.澱粉の加水分解及び加工:例えばオリゴ糖、マルトース、グルコースシロップ、高フルクトースシロップのような製品を製造するための、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、プルラナーゼ、アミロプルラナーゼ、シクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ、グルコースイソメラーゼ及びキシロースイソメラーゼの使用;
3.化学合成:例えばエタノールの製造;サーモリシンによるアスパルテームの製造;医薬活性成分の合成のためのキラル中間体の製造;高温において又は有機溶媒中において高安定性を有する他のプロテアーゼ、リパーゼ及びグリコシダーゼの使用;
4.セルロース及びガムの分解並びに加工:例えばキシラナーゼによる紙及びパルプの漂白;セルロースの加水分解のためのセロビオヒドロラーゼ、β−グルコシダーゼ及びβ−グルカナーゼ;油回収に使用される生物学的ガムを分解するための熱安定性セルラーゼ及びグルカナーゼ;
5.食品及び飼料の加工:例えばペクチナーゼ、セルラーゼ及びキチナーゼ;ラクトース加水分解用のガラクトシダーゼ;並びに高温加工時における動物飼料中のフィチン酸塩の脱ホスホリル化用フィターゼ;
6.薬物療法並びに診断装置及びキット:例えばペルオキシダーゼ、ホスファターゼ、オキシダーゼ、カルボキシラーゼ及びデヒドロゲナーゼ;
7.洗剤及び家庭用品:例えば好熱性プロテアーゼ、好アルカリ性プロテアーゼ;及びアルカリ性アミラーゼ;更に
8.他の工業的利用:例えば無機化合物のバイオマイニング及び生物浸出、バイオレメディエーション、放射性廃棄物の汚染除去、抗酸化系。
【0006】
極限酵素の供給源として認められる主なものは好極限性生物として知られる様々な群の生物である。好極限性生物は、極限の環境条件下で、例えば深海熱水噴出口、温泉、塩度の高い湖、露出砂漠表面、氷河及び流氷中又はその近くにおいて勢いよく成長することが判明している生物である。この群の生物の構成員としては以下の各カテゴリーの中の代表が挙げられる。即ち、例えば古細菌及び細菌を含む原核生物、真菌及び酵母を含む真核生物、地衣類、原生生物及び原生動物、藻類及び蘚類、緩歩類及び魚。この群の生物は環境の両極端下で自然に勢いよく成長するので、天然に存在する極限酵素の供給源としてとらえられている。従って、好極限性生物からの多数の極限酵素が単離及び試験され、提案された極限使用条件下で高安定性及び触媒最適条件といった望ましい有利な特性を有することがわかっている。しかし、業界は極限酵素の来るべき広い実用化を心待ちにしているが、これはまだ予定されていない。
【0007】
問題は、極限酵素が培養することができないか、あるいは販売に充分な量の極限酵素を高いコスト効率で単離できる商業的に有意な充分な規模で培養することが少なくとも困難すぎるということがわかっていることである。代わりに、好極限性生物から単離された極限酵素遺伝子を普通の発現宿主生物中に形質転換させ且つ前記生物中で発現させる遺伝子操作が試みられている。これらの発現宿主生物のうち最も重要なのは、E.coli及びBacillus subtilisである。しかし、これらの表現宿主は、商用量の非極限酵素タンパク質の生成においては非常に信頼性が高いことがわかっているが、これまでのところ、商用量の極限酵素に関しては生成の信頼性がないか、生成できない。従って、極限酵素の多数の潜在的用途にもかかわらず、よく見ても、それらの用途は、研究用の熱安定性DNAポリメラーゼのような、特化された小規模用途に限定され;商業的に実行可能な工業規模の極限酵素発現系がないため、有意な工業規模の使用はまた実現されていない。
【0008】
異種性極限酵素遺伝子の発現のこのような試みに関する多くの例が、E.coli宿主において、及び場合によってはBacillus宿主において報告されているが、発現レベルは一般に低く、即ち総細胞タンパク質の5%未満である。代表例としては以下のものが挙げられる。例えば、非特許文献2(E.coli中で10〜28mg/Lで、即ち、総細胞タンパク質(tcp)約1.4%で発現されるPyrococus furiosusアミロプルラナーゼ);非特許文献3(SDS−PAGEから推定して、E.coliにおいてtcp5%で発現されるThermococcus hydrothermalis α−アミラーゼ);非特許文献4(ここに示されたデータから計算して、E.coliにおいてtcp0.4%で発現されるPyrococcus woesei α−アミラーゼ;及び非特許文献5(E.coli中で発現される収量25〜40mg/Lの好塩性グルコースデヒドロゲナーゼ)。極限酵素の低発現に当てはまらない2つの事例が、E.coli中でそれぞれtcp50%及びtcp15%のレベルで発現される超好熱性デヒドロゲナーゼに関して報告されている。非特許文献6(E.coliにおいてtcp50%で発現されるHaloferax volcaniiジヒドロリポアミドデヒドロゲナーゼ);及び非特許文献7(E.coli中においてtcp15%で発現されるPyrococcus furiosusグルミン酸デヒドロゲナーゼ)を参照されたい。しかし、これらの例でさえ、以下の理由から、商業的に実行可能な工業規模の極限酵素発現系を提供することはできない。
【0009】
第一に、非特許文献6及び7によって報告された発現系において使用されたE.coli宿主細胞は、約2g/Lの最大細胞密度(乾燥細胞重量に換算して記載される最大バイオマス蓄積)を維持できる濃い培地上で成長する。このような低細胞密度においては、tcp(総細胞タンパク質)50%の発現レベルでも、工業規模の生産のためにははるかに低すぎる収率を生じる。例えば2g/Lの最大バイオマスの場合には、総細胞タンパク質含量は約1g/Lであり、従って、tcp50%の発現レベルにおいては、極限酵素はわずか約0.5g/Lのしか発現されないであろう。わずか約0.5g/Lの極限酵素の総生産性を提供する発現系は低すぎて、工業規模生産が可能であるとは考えられない。これは、提案された生産加工及び家庭用品への使用(これらのほとんどは大規模大量生産を前提としている)の大部分について市場供給を可能にするのに必要な大量の極限酵素という観点から考えた場合に特に際だつ。
【0010】
第二に、非特許文献6及び7のいずれかによって報告された最大規模の発酵は1リットル(1L)の発酵であるが、これは「工業規模」の発酵と見なすにははるかに低すぎる。一般に、工業規模の発酵と認識できる全ての発酵の最低限度は約10Lであるが、ほとんどの目的では、これでもまだ、小さい「播種規模(seed−scale)」発酵槽とみなされる。しかし、発現系の総生産性が充分に高いならば、5L又は10Lの発酵によって一部の小規模の商業的利用を実現できる。通常の「播種規模」発酵槽には20L及び40Lの発酵槽も含まれ;通常の「パイロット規模」発酵槽は容量で約50〜200Lの範囲、250L、500Lでさえあることができる。典型的な工業規模生産は、1,000L及びそれ以上の容量を有する発酵槽中で実施され、10,000L及び50,000Lの発酵槽でさえ、珍しくない。
【0011】
従って、1Lの発酵規模の発現系を工業規模の発酵にスケールアップすることは、些細なことではない。工業規模の酵素生産を実現するような方法でのスケールアップは、典型的には相当困難なことであり、非特許文献6及び7に報告されたような低生産性発現系から始める場合には特にそうである。これらの非特許文献は、それらが記載する発現系に関してそのようなスケールアップを試みる方法に関しても達成する方法に関しても何ら示唆も誘導もしていない。
【0012】
第三に、濃い培地、例えばLB培地などの使用は、ペプトン及び酵母抽出物のような高価な添加剤を必要とし、これが工業規模生産をコスト的にかなり不利にする真相である。実際に、極限酵素が既存の工業用酵素と置き換わる可能性のある、提案されたほとんどの用途では、このコスト面での不利点のため、極限酵素は高価すぎて、工業用として市場に供給できない。
【0013】
従って、バイオテクノロジー産業には依然として、商業的に実行可能な工業規模の極限酵素発現系がない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】M.W.W.Adams & R.M.Kelly,Finding and Using Hyperthermophilic Enzymes,TIBTECH 16:329〜332(1998)
【非特許文献2】G.Dong et al.,Appl.Envir.Microbiol.63(9):3569〜3576(Sep 1977)
【非特許文献3】E.Leveque et al.,FEMS Microbiol.Lett.186(1):67〜71(May 1,2000)
【非特許文献4】A.Linden et al.,J.Chromatog.B.Biomed.Sci.Appl.737(1〜2):253〜9(Jan 14,2000)
【非特許文献5】C Pire et al.,FEMS Microbiol.Lett.200(2):221〜27(Jun 25,2001)
【非特許文献6】H.Connaris et al.,Biotech.Bioeng.64(1):38〜45(Jul 5,1999)
【非特許文献7】J.Diruggiero & F.T.Robb,Appl.Environ.Microbiol.61(1):159〜164(Jan 1995)
【発明の概要】
【0015】
本発明は、好極限性生物に固有の極限酵素の、商業的規模での過剰発現のための新規手段を提供する。より具体的な側面において、本発明は、シュードモナス菌及び近縁細菌から選ばれた宿主細胞種における過剰発現によるこれらの極限酵素の商業規模生産を教示している。
【0016】
本発明に係るこれらの極限酵素発現系は、極限酵素を高レベルで、総細胞タンパク質5%超で、総細胞タンパク質30%超で、更に高レベルで過剰発現できる。本発明に係るこれらの極限酵素発現系は、乾燥重量バイオマスが20g/L超、また、80g/L超ですらある高細胞密度を得ることができ、また、これらの高細胞密度における高いレベルの極限酵素発現を維持し、それによって、高いレベルの極限酵素総生産性を実現できる。本発明に係るこれらの極限酵素発現系はまた、高レベルの総生産性を維持しながら、10リットル又はそれ以上の規模の工業規模の発酵が可能である。更に、本発明に係る極限酵素発現系は、炭素源補足無機塩培地のような単純で安価な培地上で成長させる場合に、これらの能力を持ち続ける。
【0017】
本発明はまた、以下のものを提供する:
内部に動作可能な(operative)発現ベクターを含むように遺伝子操作された組換え細菌宿主細胞であって、前記発現ベクターが、制御配列に動作可能なように連結された外来性極限酵素コード配列を含む核酸を含み;前記宿主細胞が、培地上で発現を可能にする条件下で成長させられる場合に、少なくとも1g/Lの総生産性で前記極限酵素を生成するように、前記コード配列を過剰発現でき;前記細菌宿主細胞がシュードモナス菌及び近縁細菌から選ばれることを特徴とする組換え細菌宿主細胞。
【0018】
組換え細菌宿主細胞及び制御配列に動作可能なように連結された外来性極限酵素コード配列を含む核酸を含む、前記宿主細胞中において有効な発現ベクターを含んでなる極限酵素過剰発現系であって、前記過剰発現系が、培地上で発現を可能にする条件下で成長させられる場合に、少なくとも1g/Lの総生産性で前記極限酵素を生成するように、前記コード配列を過剰発現でき;前記細菌宿主細胞がシュードモナス菌及び近縁細菌から選ばれることを特徴とする極限酵素過剰発現系。
【0019】
少なくとも1g/Lの総生産性で極限酵素を過剰発現する方法であって、(a)シュードモナス菌及び近縁細菌から選ばれる細菌宿主細胞、(b)制御配列に動作可能なように連結された外来性極限酵素コード配列を含む核酸を含む、前記宿主細胞中において動作可能な発現ベクター並びに(c)培地を用意し;前記発現ベクターを前記細菌宿主細胞に形質転換させて、組換え細菌宿主細胞を形成し;そして培地上で発現を可能にする条件下で組換え細菌宿主細胞を成長させる工程を含んでなる過剰発現方法。
【0020】
(1)制御配列に動作可能なように連結された外来性極限酵素コード配列を含む核酸を含む発現ベクターを、シュードモナス菌及び近縁細菌から選ばれた細菌宿主細胞に形質転換させて、組換え細菌宿主細胞を形成し;(2)前記組換え細菌宿主細胞を培地上で発現を可能にする条件下で成長させ、そして場合によっては宿主細胞を細胞溶解させ且つそれから極限酵素を分離、単離又は精製することを含んでなる、少なくとも1g/Lの総生産性で極限酵素を過剰発現させる方法。
【0021】
組換え細菌宿主細胞から少なくとも1g/Lの総生産性で培地上で発現を可能にする条件下で極限酵素を過剰発現させる方法における、シュードモナス菌及び近縁細菌から選ばれた組み換え細菌宿主細胞の使用。
【0022】
シュードモナス菌及び近縁細菌から選ばれた、或る量(a quantity of)の細菌宿主細胞;前記宿主細胞中で有効であり且つ制御配列を含む、或る量の発現ベクター;動作可能なように制御配列にコード配列を連結させて、それによって発現ベクターを調製するように、外来性極限酵素コード配列を含む核酸を前記発現ベクターに挿入する指令;組換え細菌宿主細胞を形成するために、前記細菌宿主細胞に前記発現ベクターを続いて形質転換する指令;並びに培地上で発現を可能にする条件下で前記組換え細菌宿主細胞を成長させる指令;更に場合によっては、或る量の前記培地;更に場合によっては、前記制御配列が調節プロモーターを使用する場合には、調節プロモーターのための或る量のインデューサーを含んでなる、少なくとも1g/Lの総生産性で極限酵素を過剰発現するための商用キット。
【0023】
シュードモナス菌及び近縁細菌から選ばれた、或る量の細菌宿主細胞;前記細菌宿主細胞中で有効であり且つ制御配列と前記制御配列に動作可能なように連結された外来性極限酵素コード配列を含む、或る量の発現ベクター;組換え細菌宿主細胞を形成するために、前記細菌宿主細胞に前記発現ベクターを形質転換する指令;並びに培地上で発現を可能にする条件下で前記組換え細菌宿主細胞を成長させる指令;更に場合によっては、或る量の前記培地;更に場合によっては、前記制御配列が調節プロモーターを使用する場合には、調節プロモーターのための或る量のインデューサーを含んでなる、少なくとも1g/Lの総生産性で極限酵素を過剰発現するための商用キット。
【0024】
極限酵素が加水分解酵素である前記のいずれか。極限酵素がセルラーゼ若しくはアミラーゼ又はペプチダーゼである前記のいずれか。極限酵素がアミラーゼ又はセリンエンドペプチダーゼ若しくはアスパラギン酸エンドペプチダーゼである前記のいずれか。極限酵素がα−アミラーゼ又はピロリシン若しくはサーモプシンである前記のいずれか。前記のいずれかに従って発現させられた極限酵素。前記のいずれかに従って発現させられた極限酵素の、生体触媒プロセスにおける使用。
【0025】
宿主細胞がPseudomonas種である前記のいずれか。宿主細胞が螢光性Pseudomonas種である前記のいずれか。宿主細胞がPseudomonas fluorescensである前記のいずれか。
【0026】
前記発現ベクターがRSF1010又はその誘導体である前記のいずれか。異種性極限酵素プロモーターがPtacである前記のいずれか。
【0027】
極限酵素が宿主内の封入体中で発現され且つ封入体が可溶化される前記のいずれか。極限酵素がリフォールディング工程を用いてリフォールディングされる前記のいずれか。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の方法に従って極限酵素遺伝子を発現するのに有用なRSF1010に基づく発現ベクターのプラスミド地図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明はシュードモナス菌及び近縁細菌を宿主細胞と使用して極限酵素を過剰発現する極限酵素用の商業規模生産系を提供する。
【0030】
Pseudomonas ssp.はこれまで発現系として使用されてきた。例えば、以下を参照:米国特許第5,055,294号(Gilroy)及び米国特許第5,128,130号(Gilroyら);米国特許第5,281,532号(Rammlerら);米国特許第5,527,883号及び第5,840,554号(Thompsonら);米国特許第4,695,455号及び第4,861,595号(Barnesら);米国特許第4,755,465号(Grayら);並びに米国特許第5,169,760号(Wilcox)。しかし、これらの参考文献のいずれにも、本発明によって定義されるように、シュードモナス菌及び近縁細菌が商用量での極限酵素の過剰発現に特に有利であることは示唆されていない。
用語解説
【0031】
単数表現
本明細書中及び添付した「特許請求の範囲」において使用する単数形は、前後関係からそうでないことが明白でない限り、単数及び複数の両方の対象を含む。従って、例えば、「1個の宿主細胞」への言及は事実上、単一の宿主細胞のみを使用する実施態様及び複数のこのような宿主細胞を使用する実施態様の両方を規定する。
【0032】
中及び上(on)
増殖培地の使用による生物の成長に関して本明細書中で使用するように、生物は培地の「中(in)」又は「上(on)」で成長させると言うことができる。本発明の発現系において、培地は液体培地である。従って、これに関連して、この用語「中」及び「上」は、培地と接触している宿主細胞の成長及び一般には大量の培地内の宿主細胞の成長を示すのに互いに同義で使用するが、培地の表面における、表面中における又は表面上における若干の付随する細胞成長も考えられる。
【0033】
含んでなる(comprising)
本明細書中で使用する用語「含んでなる」は、その対象が、用語「含んでなる」に続いて列挙された要素とそのように列挙されていない他の全ての要素を含むことを意味する。この際、用語「含んでなる」は、広く且つ制限のない用語と解釈すべきであり;従って、列挙された要素を「含んでなる」対象についての、特許請求の範囲の請求項は、包括的に解釈すべきである、即ち、列挙された要素に限定されないものと解釈すべきである。従って、用語「含んでなる」は、例えば、「有する」、「含む」又は「包含する」のような用語と同義であると考えることができる。
【0034】
本明細書中に記載したように、発明は用語「含んでなる」及び「特徴とする」を用いて表現される。しかし、これらよりも狭い意味を有する単語及び句もまた、本発明をより狭く説明、定義又は特許請求する際に、これらの制限のない用語の代わりとして有用である。例えば、本明細書中で使用する句「のみからなる(consisting of)」は、対象が列挙した要素を含むが他の要素は含まないことを意味する。この際、句「のみからなる」は、狭く且つ閉鎖された用語として解釈すべきである。従って、用語「のみからなる」は、例えば、「のみを含む」又は「それだけを有する」と同義であると考えることができる。
【0035】
寄託機関
ACAM−Australian Collection of Antarctic
Microorganisms,Cooperative Research Centre for Antarctic And Southern Ocean Environment,University of Tasmania,GPO Box 252C,Hobart,Tasmania 7001,Australia。
【0036】
ATTC−American Type Culture Collection,10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110−2209,U.S.A.。
【0037】
NCIMB−National Collection of Industrial
and Marine Bacteria,National Collections of Industrial,Food and Marine Bacteria,23 Machar Drive,Aberdeen,AB24 3RY,Scotland。
【0038】
UQM−Culture Collection,Department of Microbiology,University of Queensland,St.Lucia,Queensland 4067,Australia。
【0039】
一般的材料&方法
特に断らない限り、分子生物学の分野で知られた標準的な方法、ベクター、制御配列要素及び他の表現系要素を、核酸操作、形質転換及び発現に用いる。このような標準的な方法、ベクター及び要素は、例えば以下に記載されている。Ausubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology(1995)(John Wiley & Sons);Sambrook,Fritsch,&Maniatis(eds.),Molecular Cloning(1989)(Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY);Berger & Kimmel,Methods in Enzymology 152:Guide to Molecular Cloning Techniques(1987)(Academic Press);及びBukhari et al.(eds.),DNA Insertion Elements,Plasmids and Episomes(1977)(Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY)。
【0040】
X−galは、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトシドを意味する。
【0041】
IPTGは、イソプロピルチオ−β−D−ガラクトシドを意味する。
【0042】
ORFは、オープンリーディングフレームを意味する。
【0043】
tcp及びtcp%
本明細書中で使用する用語「tcp」は「総細胞タンパク質」を意味し、培養液リットル当たりの発現細胞タンパク質のおおよその質量の尺度である。本明細書中で使用する用語「tcp%」は「総細胞タンパク質%」を意味し、細胞によって発現される所定のタンパク質の相対量を示す総細胞タンパク質の割合の尺度である。
【0044】
外来性(Exogenous)及び異種性(Heterologus)
用語「外来性」は所定の細胞又は分子「にとって外来の供給源から」を意味する。用語「異種性」は所定の細胞又は分子「とは異なる供給源から」を意味する。本明細書においては、当業界では一般的によく使用されるように、これら2つの用語は同義語として区別なく使用される。これらの用語は共に、所定の対象が細胞又は分子にとって外来であること、即ち自然状態では細胞中に見られない又は自然状態では分子と共に見られない若しくは分子に連結されていないことを示すのに用いる。
【0045】
好極限性(Extremophilic)
好極限性は、表Iに列挙したパラメーターの範囲に入る任意の条件と定義する。
【0046】
【表1】

【0047】
*−好乾性は、「水分ポテンシャル」として知られる無次元の量によって定義される:aw=[(溶液中の水の蒸気圧)/(純水の蒸気圧)][式中、「溶液」は、細胞内又は細胞外のいずれであっても、全ての水性培地又は水性環境を示す]。
【0048】
従って、好極限性生物は列挙したこれらのパラメーターの範囲に入る細胞外環境条件下で容易に生き延びるか力強く成長する生物と定義される。好極限性酵素、即ち極限酵素も同様に、表Iにおいて定義した条件に関連して定義され、これらは細胞内又は細胞外条件であることができる。
【0049】
場合によっては、好薬品性(chemophilic)[例えば、好金属性(metalophilic)]及び好放射性(radiophilic)条件もまた当業界では好極限性条件として認められるが、これらは化学物質(例えば具体的な金属又は有機化合物)の型及び放射線の型によって異なるため、「好極限性」のこの定義には一貫した定義は含まれない。
【0050】
酵素
本明細書中で使用する用語「酵素」は、以下のものを含む。
1.酸化還元酵素(IUBMB EC 1:例えばモノオキシゲナーゼ、シトクロム、ジオキシゲナーゼ、脱水素酵素、メタロレダクターゼ、フェレドキシン、チオレドキシンが挙げられる);
2.転移酵素(IUBMB EC2:例えばグリコシルトランスフェラーゼ、アルキルトランスフェラーゼ、アシルトランスフェラーゼ、カルボキシルトランスフェラーゼ、脂肪アシル合成酵素、キナーゼ、RNA及びDNAポリメラーゼ、逆転写酵素、核酸インテグラーゼが挙げられる);
3.加水分解酵素(IUBMB EC3:例えばグリコシラーゼ、グリコシダーゼ、グルコヒドロラーゼ、グルカナーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、ペプチダーゼ及びプロテアーゼ、ヌクレアーゼ、ホスファターゼ、リパーゼ、核酸リコンビナーゼが挙げられる);
4.リアーゼ(IUBMB EC4:例えば脱炭酸酵素、RUBISCO、アデニル酸シクラーゼが挙げられる);
5.イソメラーゼ(IUBMB EC5:例えばラセマーゼ、エピメラーゼ、ムターゼ、トポイソメラーゼ、ギラーゼ、フォルダーゼが挙げられる);及び
6.リガーゼ(IUBMB EC6:例えばカルボキシラーゼ、アシルシンテターゼ、ペプチドシンテターゼ、核酸リガーゼが挙げられる)。
【0051】
極限酵素(Extremozyme)
広範囲の極限酵素が当業界で知られている。例えば参考文献11〜20を参照されたい。本明細書中で使用する用語「極限酵素」は、表Iにおいて定義したような少なくとも1つの好極限性条件下で少なくとも1つの触媒特性の最適条件を示し且つ1)好極限性生物から得られる核酸又は2)好極限性生物から得られ、且つ更に突然変異誘発及び/又は以下に記載したような組換えによって改変させられた核酸によってコード化された酵素を意味する。好ましい実施態様において、好極限性生物は、好極限性Archaeon、好極限性細菌又は好極限性真核生物であろう。特に好ましい好極限性真核生物としては、好極限性真菌類及び好極限性酵母が挙げられる。特に好ましい実施態様において、生物は好極限性Archaeon又は好極限性細菌であろう。
【0052】
極限酵素をコード化する核酸が未変性であっても改変されていても、核酸のコード配列のコドンは、それが発現されることになっている宿主細胞のコドン使用頻度に従って最適化されることができる。最適条件が示される触媒特性は、例えば触媒活性自体若しくは酵素処理能力;Km、kcat、ki、kii若しくはVmaxのような計量;又は使用条件下若しくは提案される使用条件下における安定性(触媒半減期)であることができる。更に、本明細書中で本発明の極限酵素発現系に関連して使用する用語「極限酵素」はその発現のために選ばれた特定の宿主細胞にとって異種の極限酵素に制限される。
【0053】
極限酵素をコード化する核酸は、例えば当業界で一般に使用できる技術、例えば以下に記載された技術を用いて環境試料から直接得ることができる。米国特許第5,958,672号、第6,057,103号及び第6,280,926号(Short);米国特許第6,261,842号及びWO 01/81567(Handelsmanら);米国特許第6,090,593合(Fleming&Sayler);又はL.Diels et al.,Use of DNA probes and plasmid capture in a search for new interesting environmental genes,Sci. of the Total Environ.139〜140:471〜8(Nov 1,1993)を用いて環境試料から直接得ることができる。更に、以下の参考文献に記載された技術も使用できる。S.Jorgensen et al.,J.Biol.Chem.272(26):16335〜42(Jun 27,1997);EP577257B1(Laderman&Anfinsen);EP579360B1(Asadaら);EP648843A1(Taguchiら);WO 98/45417(Zeikusら);米国特許第6,100,073号(Deweer&Amory);及びG.Dong et al.,Appl.Environ.Microbiol.63(9):3577〜84(Sep 1997)。
【0054】
極限酵素コード化核酸は、得られた後、望ましい触媒特性における又はそのための改善を示す極限酵素を得るために、改変させて、発現させることができる。このような改変は、1ラウンド又はそれ以上の核酸の突然変異誘発及び/又は組換えの使用、それによる改変させられた核酸を含んでなるライブラリーの形成、それに続くライブラリーの発現及び得られた酵素のスクリーニングによって(又は所望ならば複数ラウンドを用いる場合には、ライブラリーの発現及び得られた酵素のスクリーニングと規則的又は断続的に交互に行うことによって)実施できる。選択される核酸の突然変異誘発及び組換え技術は、in vitro技術又はin vivo若しくはin cyto技術であることができ、また、ランダム技術(ランダム突然変異誘発、ランダム組換え)又は定方向技術(例えば、オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発、部位特異的組換え)であることができる。多くのこのような突然変異誘発及び組換え技術は当業界で一般に知られている。例えば米国特許第5,830,696号、第5,965,408号若しくは第6,171,820号(Short);米国特許第5,605,793号及び第5,811,238号(Stemmerら);及びWO 98/42832(Arnoldら)に記載された任意の技術を使用でき;更に、突然変異誘発は、Error−Prone PCR(Low−Fidelity PCRとも称する)という技術を用いて実施できる。
【0055】
好ましい一実施態様において、極限酵素は分類IUBMB EC1〜6の任意の中から選ばれる。好ましい一実施態様において、極限酵素は分類IUBMB EC2〜6の全ての中から選ばれる。好ましい一実施態様において、極限酵素は分類IUBMB EC2〜5の任意の中から選ばれる。好ましい一実施態様において、極限酵素は分類IUBMB EC2〜3のいずれかの中から選ばれる。好ましい一実施態様において、極限酵素はIUBMB EC3内の酵素、即ち任意の好極限性加水分解酵素の中から選ばれる。好ましい一実施態様において、極限酵素はIUBMB EC3.1〜3.8内の任意の酵素の中から選ばれる。好ましい一実施態様において、極限酵素はIUBMB EC3.1〜3.2内の任意の酵素の中から選ばれる。好ましい一実施態様において、極限酵素はIUBMB
EC3.2内の酵素、即ち任意の好極限性グリコシラーゼの中から選ばれる。好ましい一実施態様において、極限酵素はIUBMB EC3.2.1内の酵素、即ち任意の好極限性グリコシダーゼの中から選ばれる。好ましい一実施態様において、極限酵素はIUBMB EC3.2.1内の以下の任意の酵素の中から選ばれる。アミラーゼ、アミログルコシダーゼ及びグルコアミラーゼ;セルラーゼ、セロビオヒドラーゼ、エンドグルカナーゼ及びヘミセルラーゼ;並びにβ−グルコシダーゼ。好ましい一実施態様において、極限酵素はIUBMB EC3.2.1内の以下の任意の酵素の中から選ばれる。アミラーゼ及びセルラーゼ。好ましい一実施態様において、極限酵素はIUBMB EC3.2.1内のアミラーゼ、即ち任意の好極限性アミラーゼの中から選ばれる。好ましい一実施態様において、極限酵素はIUBMB EC3.2.1内のα−アミラーゼ(即ち、IUBMB EC3.2.1.1の酵素)、従って、任意の好極限性α−アミラーゼの中から選ばれる。
【0056】
好ましい一実施態様において、極限酵素はIUBMB EC3.4内の任意の酵素の中から選ばれる。好ましい一実施態様において、極限酵素はIUBMB EC3.4.21又は3.4.23内の酵素、即ち好極限性セリンペプチダーゼ及び好極限性アスパラギン酸エンドペプチダーゼの任意の中から選ばれる。好ましい実施態様において、極限酵素はIUBMB EC3.4.21及び3.4.23内の以下の酵素:ピロリシン及びサーモプシンの任意の中から選ばれる。
【0057】
好ましい一実施態様において極限酵素は以下のうち、超好熱性、好冷性、好酸性、好アルカリ性及び好塩性の少なくとも1つである。好ましい一実施態様において、極限酵素は以下超好熱性、好冷性、好酸性及び好アルカリ性のうち少なくとも1つである。好ましい一実施態様において、極限酵素は以下超好熱性、好酸性及び好アルカリ性のうち少なくとも1つである。好ましい一実施態様において、極限酵素は少なくとも超好熱性である。特に好ましいのは少なくとも超好熱性の極限酵素である。
【0058】
本発明の極限酵素発現系において、極限酵素をコード化する核酸は、制御配列及び場合によって他の要素に動作可能なように、連結されて、発現コンストラクト(「発現カセット」とも称する)を形成するであろう。そして、得られた発現コンストラクトが発現ベクター中に挿入されるか、あるいは発現カセットが、任意の他の一連の工程で発現カセットの要素をベクター中に挿入することによってベクター内で作成されることができる。次いで、発現ベクターが、本発明に従って細菌宿主細胞に形質転換され、続いて極限酵素が発現されるであろう。
【0059】
ベクター
非常に多数の細菌ベクターが当業界でグラム陰性Proteobacteria中におけるタンパク質の発現に有用であることが知られており、これらは本発明に従って極限酵素の発現に使用できる。このようなベクターとしては、例えばプラスミド、コスミド、及びファージ発現ベクターが挙げられる。有用なプラスミドベクターの例としては、発現プラスミドpMB9、pBR312、pBR322、pML122、RK2、RK6及びRSF1010が挙げられる。このような有用なベクターの他の例としては、例えば、以下に記載されたものが挙げられる。N Hayase,Appl. Envir. Microbiol.60(9):3336〜42(Sep 1994);AA Lushnikov et al.,Basic Life Sci.30:657〜62(1985);S Graupner&W Wackernagel,Biomolec.Eng.17(1):11〜16.(Oct 2000);HP Schweizer,Curr.Opin.Biotech.12(5):439〜45(Oct 2001);M Bagdasarian & KN Timmis,Curr.Topics Microbiol.Immunol.96:47〜67(1982);T Ishii et al.,FEMS Microbiol.Lett.116(3):307〜13(May
1、1994);IN Olekhnovich & YK Fomichev,Gene 140(1):63〜65(Mar 11,1994);M Tsuda & T
Nakazawa,Gene 136(1〜2):257〜62(Dec 22,1993);C Nieto et al.,Gene 87(1):145〜49(Mar
1、1990);JD Jones & N Gutterson,Gene 61(3):299〜306(1987);M Bagdasarian et al.,Gene 16(1〜3):237〜47(Dec 1981);HP Schweizer et al.,Genet.Eng.(NY)23:69〜81(2001);P Mukhopadhyay et al.,J.Bact.172(1):477〜80(Jan 1990);DO Wood et al.,J.Bact.145(3):1448〜51(Mar 1981);及びR Holtwick et al.,Microbiology 147(Pt 2):337〜44(Feb 2001)。
【0060】
有用なPseudomonas発現ベクターの別の例としては、表IIに列挙したものが挙げられる。
【0061】
【表2】

【0062】
発現プラスミド、RSF1010は、例えばF Heffron et al.(Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 72(9):3623〜27(Sep 1975))及びK Nagahari & K Sakaguchi(J.Bact.133(3):1527〜29(Mar 1978))によって記載されている。プラスミドRSF1010及びその誘導体は本発明において特に有用なベクターである。当業界で知られているRSF1010の代表的な有用誘導体としては、例えばpKT212、pKT214、pKT231及び関連プラスミド並びにpMYC1050及び関連プラスミド[例えば米国特許第5,527,883号及び第5,840,554号(Thompsonら)参照]、例えばpMYC1803が挙げられる。他の特に有用なベクターとしては、米国特許第4,680,264号(Puhlerら)に記載されているものが挙げられる。
【0063】
好ましい一実施態様においては、発現プラスミドを発現ベクターとして使用する。好ましい一実施態様においては、RSF1010又はその誘導体を発現ベクターとして使用する。好ましい一実施態様において、pMYC1050若しくはその誘導体又はpMYC1803若しくはその誘導体を発現ベクターとして使用する。
【0064】
制御配列(Control Sequence)
用語「制御配列」(又は制御シーケンス)は、本明細書中では、本発明に従って宿主細胞中で極限酵素を発現させるために必要な全ての要素及び、場合によっては、そのために有利な他の要素の組と定義する。各制御配列要素は、極限酵素をコード化する核酸に固有であっても外来性であってもよいし、宿主細胞に固有であっても外来性であってもよい。このような制御配列要素としては、プロモーター;転写エンハンサー;リボソーム結合部位(「シャイン・ダルガルノ配列」とも称される);翻訳エンハンサー(例えば米国特許第5,232,840号(Olins)参照);リーダーペプチド−コード化配列(例えばターゲティングペプチド又は分泌シグナルペプチド用の)、プロペプチドコード配列;転写開始シグナル及び停止シグナル並びに翻訳開始シグナル及び停止シグナル、ポリアデニル化シグナル;更に転写ターミネーターが挙げられるがこれらに限定されない。
【0065】
少なくとも、制御配列はプロモーター、リボソーム結合部位、転写開始シグナル及び停止シグナル、翻訳開始シグナル及び停止シグナル並びに転写ターミネーターを含むであろう。制御配列要素と、極限酵素をコード化する核酸のコード配列との及びベクターとの集合を容易にする(例えば連結反応、組換え又はPCRオーバーラップエクステンションによる)特異的配列(例えば制限部位)を導入するために、制御配列要素、ベクター及び極限酵素コード配列は、リンカー又はテイルに付着させるか、あるいはリンカー又はテイルを加えるために伸ばすことができる。本明細書中で使用する用語「動作可能なように連結された」とは、宿主細胞中で及び宿主細胞の作用によって、制御配列がコード配列の発現を誘導できるような、コード配列に対する配置でコード配列に共有結合されている全ての配置を意味する。
【0066】
プロモーター
プロモーターは、最適な宿主中で転写活性を示す任意の核酸配列であることができ、天然、突然変異、切断型又はハイブリッドプロモーターであることができる。天然プロモーターは、宿主細胞に固有であるか異種性であるポリペプチドコード化遺伝子から得ることができる。所望ならば、プロモーターを含む核酸を、付着されていることがわかっているリボソーム結合部位に、及び場合によっては、それによって制御されるコード配列の少なくとも一部に(天然の配置においてみられるように)連結させたままにすることができる。(この天然コード配列又はその部分は、保持されるならば、極限酵素コード配列に付着され、最終的には極限酵素−融合タンパク質の発現にいたるであろう。)
【0067】
本発明の宿主細胞の転写を誘導できることが当業界で知られている任意の多くのプロモーターは本発明で使用するために選択できる。例えばSambrook et al.(1989)(前述)を参照されたい。極限酵素が細胞内で発現される場合(即ち宿主細胞の細胞質を越えた点まで分泌されたり輸送されたりしない場合)に構成プロモーターを用いないのが好ましいのであれば、選択されるプロモーターは、構成プロモーター又は調節プロモーターであることができる。
【0068】
調節プロモーターが選択される場合には、正に調節されるプロモーター又は負に調節されるプロモーターのいずれかであることができる。正に調節されるプロモーターは、アクチベータータンパク質による転写活性化によって、誘発時にmRNAを転写し始めるように調節されるものである。負に調節されるプロモーターは、リプレッサータンパク質によって抑制されるものであり、抑制解除時にのみ、誘導時にmRNAの転写を可能にする。可逆的誘導性又は不可逆的誘導性の調節プロモーターを選択できる。
【0069】
正に調節されるプロモーターを使用する場合には、発現系はまた、宿主細胞中で発現される、好ましくは構成的に発現される、そのためのアクチベータータンパク質をコード化する遺伝子を含むか、含むように遺伝子操作されるであろう。アクチベータータンパク質をコード化する遺伝子は好ましくは、宿主細胞の染色体内に含まれるか、あるいは極限酵素をコード化する核酸を含むベクターと同一のベクター又は異なるベクター上に含まれることができる。多くのこのような正に調節されるプロモーター及び正に調節されるプロモーターとアクチベータータンパク質との組合せが当業界で知られている。例えば米国特許第5,670,350号、第5,686,283号及び第5,710,031号(Gaffneyら);米国特許第5,686,282号(Lamら);Albright et
al.,Annual Rev.Genet.23:311〜336(1989);Bourret et al.,Annual Rev.Biochem.60:401〜441(1991);並びにMekalanos,J.Bact.174:1〜7(1992)を参照されたい。
【0070】
正に調節されるプロモーターの例としては、例えばPseudomonas putidaのトルエン異化経路コード化プラスミドpWW0のメタオペロンからの「メタプロモーター」(Pm)(N Hugouvieux−Cotte−Patta et al.,J.Bact.172(12):6651〜60(Dec 1990)を参照);及び米国特許第5,028,530号に記載されるような、アクチベーター(araC遺伝子の生成物)と相互作用するL−アラビノースを加えることによって誘導できるaraBプロモーターが挙げられる。
【0071】
負に調節されるプロモーターを使用する場合には、発現系はまた、宿主細胞中において発現される、好ましくは構成的に発現される、そのためのリプレッサータンパク質をコード化する遺伝子を含むか、含むように遺伝子操作されるであろう。リプレッサータンパク質コード化遺伝子は、極限酵素をコード化する核酸を含むベクターと同一のベクター又は異なるベクター上に含まれることができる(あるいは、宿主細胞の染色体内に含まれることができる)。有用なリプレッサー及びそれらをコード化する遺伝子の例としては、米国特許第5,210,025号及び第5,356,796号(Keller)に記載されたものが挙げられる。
【0072】
多くの負に調節されるプロモーター及び負に調節されるプロモーターとリプレッサーとの組合せは当業界でよく知られている。好ましい負に調節されるプロモーターの例としては、E.coliトリプトファンプロモーター(Ptrp)、E.coliラクトースプロモーター(Plac)及びそれらの誘導体(例えば米国特許第4,551,433号(DeBoer)に記載されたtac、tacII、及びtrcプロモーター、Ptac、PtacII及びPtrc)、ファージT7プロモーター(PT7)、λファージプロモーター(例えば、λPL、λPR)並びにRhodobacter capsulatusからのrecAプロモーターが挙げられる。Plac、Ptac、PtacII、Ptrc及びPT7プロモーターの全てが、lacリプレッサー(lacI)によって抑制される。
【0073】
調節プロモーターを使用する場合には、宿主細胞の成長サイクルの適当な時期に、調節プロモーターを活性化又は抑制解除するためにインデューサーが加えられる。本発明の宿主細胞において有効な、多くの正に調節されるプロモーター−アクチベータータンパク質−インデューサーの組合せ及び多くの負に調節されるプロモーター−リプレッサータンパク質−インデューサーの組合せが当業界でよく知られている。例えばPmの場合には、ベンゾエートはインデューサーとして働き、Plac、Ptac、PtacII、Ptrc及びPT7の場合には、1つの好ましいインデューサーはIPTGである。表IIも参照されたい。極限酵素が宿主細胞において細胞内で発現される場合には、最大宿主細胞増殖、即ち、最大「細胞密度」の達成時に又はその直前に、調節プロモーター用のインデューサーを加えるのが好ましい。細胞増殖の対数期中間部近くでインデューサーを加えるのが特に好ましい。
【0074】
本発明の好ましい一実施態様においては、調節プロモーターを選択する。好ましい一実施態様においては、正に調節されるプロモーター、好ましくはPmを選択する。好ましい一実施態様においては、負に調節されるプロモーター、好ましくはPtacを選択する。好ましい一実施態様において、本発明に従って細胞内極限酵素発現系に使用するために、負に調節されるプロモーターをする。好ましい一実施態様において、負に調節されるプロモーターはPtacであり、前記調節プロモーターが使用されるプロモーター−リプレッサー−インデューサーの組合せがPtac−lacI−IPTGであろう。
【0075】
分泌タンパク質発現系は、構成プロモーター又は調節プロモーターを使用することができる。分泌タンパク質発現系において、極限酵素又は極限酵素−融合タンパク質が宿主細胞から分泌される。分泌タンパク質発現系のための調節プロモーターは、例えば、前述の調節プロモーターの全てから選ぶことができる。分泌タンパク質発現系のための構成プロモーターは、本発明の宿主細胞においてタンパク質発現に有効であると当業界において知られている多数の構成プロモーターの全ての中から選ぶことができる。特に有用な構成プロモーターは、トランスポゾンTn5から得られるネオマイシンホスホトランスフェラーゼIIプロモーター(PnptII)である。例えば、D W Bauer & A Collmer,Mol.Plant Microbe Interact. 10(3):369〜79(Apr 1997);及びC Casavant et al.,A novel genetic system to direct programmed,high−level gene expression in natural environments,Abstracts of the 99th American Society for Microbiology General Meeting(1999年5月30日〜6月3日,Chicago,IL,USAで開催)を参照されたい。分泌タンパク質発現系の好ましい一実施態様においては、構成プロモーターを使用し、分泌タンパク質発現系の好ましい一実施態様においては、極限酵素をコード化する核酸のためのプロモーターとしてPnptIIを用いる。
【0076】
他の要素及び方法
他の要素も、本発明に従って発現系内に包含させることができる。例えば、融合タンパク質として発現される極限酵素の同定、分離、精製又は単離を容易にするタグ配列は、極限酵素のコード配列に付着させられたコード配列によってコード化できる。本発明の好ましい実施態様において、タグ配列の使用が望ましい場合には、タグ配列はヘキサ−ヒスチジンペプチドであり、極限酵素コード配列は、ヘキサ−ヒスチジンコード化配列に融合させる。同様に、極限酵素は、極限酵素のコード配列にウィルスコートタンパク質コード配列の全て又は一部を付着させることによって、ウィスル構造タンパクの全体又は一部分との融合タンパク質、例えば、ウィルス(又はファージ)コートタンパク質として発現させることができる。
【0077】
更に、極限酵素の発現を確認するために、発現系に1つ又はそれ以上の標識遺伝子又はレポーター遺伝子を使用できる。多くのこのような有用な標識又はレポーター遺伝子が当業界で知られている。例えば米国特許第4,753,876号(Hemmingら)及びDL Day et al.,J.Bact.157(3):937〜39(Mar 1984)を参照されたい。好ましい実施態様において、標識遺伝子は抗生物質耐性付与標識遺伝子の中から選ぶ。好ましい一実施態様において、標識遺伝子はテトラサイクリン及びカナマイシン耐性遺伝子の中から選ぶ。好ましい一実施態様において、レポーター遺伝子は(1)螢光タンパク質(例えばGFP);(2)有色タンパク質;及び(3)螢光−若しくは着色−促進又は誘発タンパク質(例えばルミナーゼ及びβ−ガラクトシダーゼ遺伝子が挙げられる)をコード化するものの中から選ぶ。β−ガラクトシダーゼはX−galを加水分解して、青色誘導体を作る。
【0078】
方法、ベクター、翻訳及び転写要素並びに本発明において有用な他の要素のその他の例は、例えば以下に記載されている。米国特許第5,055,294号(Gilroy)及び米国特許第5,128,130号(Gilroyら);米国特許第5,281,532号(Rammlerら);米国特許第4,695,455号及び第4,861,595号(Barnesら);米国特許第4,755,465号(Grayら);並びに米国特許第5,169,760号(Wilcox)。
【0079】
宿主細胞
天然型又は改変型のいずれであっても、極限酵素をコード化する核酸は、シュードモナス菌及び近縁細菌から得られた細菌性宿主細胞中で、本発明に従って過剰発現されるであろう。本明細書中で使用する「シュードモナス菌及び近縁細菌」は、本明細書中で「グラム陰性Proteobacteria亜群1」と定義される群と同じ広がりを持っている。「グラム陰性Proteobacteria亜群1」は、より詳細には、R.E.Buchanan and N.E.Gibbons(eds.),Bergey’s Manual of Determinative Bacteriology,pp.217〜289(8th ed.、1974)(The Williams & Wilkins Co.,Baltimore,MD,USA)(以下、「Bergey(1974)」)によって、「グラム陰性好気性桿菌及び球菌(Gram−Negative Aerobic Rods and Cocci」と命名された分類学的「パート(Part)」の範囲に入ると記載された科及び/又は属に属するProteobacteriaの群と定義される。表Iは、分類学的「パート」中に列挙された生物の科及び属を示す。
【0080】
【表3】

【0081】
「グラム陰性Proteobacteria亜群1」は、その下に分類される全てのProteobacteria、及びその分類学的「パート」を形成するのに使用される基準に従ってその下に分類されるであろう全てのProteobacteriaを含む。結果として、「グラム陰性Proteobacteria亜群1」は、例えば、以下のものを除外することになる:全てのグラム陽性細菌;このBergey(1974)分類の19の「パート」のその他に分類されるEnterobacteriaceaeのようなグラム陰性細菌;その後、Archaeaの非細菌性の科であると認識されていた、このBergey(1974)「パート」の「科V. Halobacteriaceae」全体;及びその後、細菌の非Proteobacteriaの属と認識されていた属Thermus(このBergey(1974)の「パート」の範囲内にリスト)。
【0082】
またこの定義に従って、「グラム陰性Proteobacteria亜群1」は、その後、他のProteobacteria分類名を与えられていた、このBergey(1974)の「パート」において定義される属及び科に属する(及び以前にその種と称されていた)Proteobacteriaを更に含む。場合によっては、これらの改名の結果として、全く新しいProteobacteria属が作成された。例えば、属Acidovorax、Brevundimonas、Burkholderia、Hydrogenophaga、Oceanimonas、Ralstonia及びStenotrophomonasは、Bergey(1974)において定義された属Pseudomonasに属する(且つ以前はその種と称されていた)生物を再編成することによって作成された。同様に、例えば、属Sphingomonas(及びこれの系統に属する属Blastomonas)は、Bergey(1974)に定義された属Xanthomonasに属する(且つ以前はその種と称された)生物を再編成することによって作成された。同様に、例えば属Acidomonasは、Bergey(1974)に定義された属Acetobacterに属する(且つ以前はその種と称された)生物を再編成することによって作成された。このような後で分類し直された種もまた、本明細書で定義する「グラム陰性Proteobacteria亜群1」の範囲に包含させる。
【0083】
別の場合には、このBergey(1974)「パート」において定義される属及び科の範囲内に入るProteobacteriaの種は単純にProteobacteriaの他の存在する属の下に再分類された。例えば属Pseudomonasの場合には、Pseudomonas enalia(ATCC14393)、Pseudomonas nigrifaciens(ATCC19375)及びPseudomonas putrefaciens(ATCC8071)はそれぞれ、その後にAlteromonas haloplanktis、Alteromonas nigrifaciens及びAlteromonas putrefaciensとして再分類された。同様に、例えばPseudomonas acidovorans(ATCC15668)及びPseudomonas testosteroni(ATCC11996)はそれぞれ、その後にComamonas acidovorans及びComamonas testosteroniとして再分類され;Pseudomonas nigrifaciens(ATCC19375)及びPseudomonas piscicida(ATCC15057)はそれぞれ、その後にPseudoalteromonas nigrifaciens及びPseudoalteromonas piscicidaとして再分類された。このような後で分類し直されたProteobaciteriaの種もまた、本明細書で定義する「グラム陰性Proteobacteria亜群1」の範囲に包含させる。
【0084】
同様に、この定義によると、「グラム陰性Proteobacteria亜群1」は更に、それ以後発見されたProteobacteriaの種、又はこのBergey(1974)「パート」のProteobacteriaの科及び/若しくは属に属すると再分類されたProteobacteriaの種を包含する。Proteobacteriaの科に関しては、「グラム陰性Proteobacteria亜群1」はまた、以下の科のいずれかに属すると分類されたProteobacteriaを包含する:Pseudomonadaceae、Azotobacteraceae(現在、同義語、Pseudomonadaceaeの「Azotobacter群」と称されることが多い)、Rhizobiaceae及びMethylomonadaceae(現在、同義語、「Methylococcaceae」と称されることが多い)。従って、本明細書中で別の方法で記載した属の他に、「グラム陰性Proteobacteria亜群1」の範囲に入るProteobacteriaの属としては更に以下のものが挙げられる:1)属AzorhizophilusのAzotobacter群細菌;2)属Cellvibrio、Oligella及びTeredinibacterのPseudomonadaceae科細菌;3)属Chelatobacter、Ensifer、Liberibacter(「Candidatus Liberibacter」とも称する)及びSinorhizobiumのRhizobiaceae科細菌;並びに4)属Methylobacter、Methylocaldum、Methylomicrobium、Methylosarcina及びMethylosphaeraのMethylococcaceae科細菌。
【0085】
好ましい実施態様において、宿主細胞は「グラム陰性Proteobacteria亜群1」から選ばれる。
【0086】
好ましい実施態様において、宿主細胞は前に定義した「グラム陰性Proteobacteria亜群2」から選ばれる。「グラム陰性Proteobacteria亜群2」は、以下の属のProteobacteriaの群と定義される(括弧内にはカタログに載せられた、公的に入手可能な、それらの寄託菌株の総数を示し、特に断る場合を除いて全てATCCに寄託されている):Acidomonas(2);Acetobacter(93);Gluconobacter(37);Brevundimonas(23);Beijerinckia(13);Derxia(2);Brucella(4);Agrobacterium(79);Chelatobacter(2);Ensifer(3);Rhizobium(144);Sinorhizobium(24);Blastomonas(1)l;Sphingomonas(27);Alcaligenes(88);Bordetella(43);Burkholderia(73);Ralsonia(33);Acidovorax(20);Hydrogenophaga(9);Zoogloea(9);Methylobacter(2);Methylocaldum(NCIMBに1);Methylococcus(2);Methylomicrobium(2);Methylomonas(9);Methylosarcina(1);Methylosphaera;Azomonas(9);Azorhizophilus(5);Azotobacter(64);Cellvibrio(3);Oligella(5);Pseudomonas(1139);Francisella(4);Xanthomonas(229);Stenotrophomonas(50);及びOceanimonas(4)。
【0087】
「グラム陰性Proteobacteria亜群2」の代表的な宿主細胞種としては、以下の細菌が挙げられるが、これらに限定するものではない(括弧内にその代表的菌株のATCC寄託番号又は他の寄託番号を示す)。Acidomonas methanolica(ATCC43581);Acetobacter aceti(ATCC15973);Gluconobacter oxydans(ATCC19357);Brevundimonas diminuta(ATCC11568);Beijerinckia indica(ATCC9039及びATCC19361);Derxia gummosa(ATCC15994);;Brucella melitensis(ATCC23456)、Brucella abortus(ATCC23448);Agrobacterium tumefaciens(ATCC23308)、Agrobacterium radiobacter(ATCC 19358)、Agrobacterium rhizogenes(ATCC11325);Chelatobacter heintzii(ATCC29600);Ensifer adhaerens(ATCC33212);Rhizobium leguminosarum(ATCC10004);Sinorhizobium fredii(ATCC35423);Blastomonas natatoria(ATCC35951);Sphingomonas paucimobilis(ATCC29837);Alcaligenes
faecails(ATCC8750);Bordetella pertussis(ATCC9797);Burkholderia cepacia(ATCC25416);Ralstonia pickettii(ATCC27511);Acidovorax facilis(ATCC11228);Hydrogenophaga flava(ATCC33667);Zoogloea ramigera(ATCC19544);Methylobacter luteus(ATCC49878);Methylocaldum gracile(NCIMB11912);Methylococcus capsulatus(ATCC19069);Methylomicrobium agile(ATCC35068);Methylomonas methanica(ATCC35067);methylosarcina fibrata(ATCC700909);Methylosphaera hansonii(ACAM549);Azomonas agilis(ATCC7494);Azorhizophilus paspali(ATCC23833);Azotobacter chroococcum(ATCC9043);Cellvibrio mixtus(UQM2601);Oligella urethralis(ATCC17960);Pseudomonas aeruginosa(ATCC10145)、Pseudomonas
fluorescens(ATCC35858);Francisella tularensis(ATCC6223);Stenotrophomonas maltophilia(ATCC13637);Xanthomonas campestris(ATCC33913);及びOceanimonas doudoroffii(ATCC27123)。
【0088】
好ましい実施態様において、宿主細胞は「グラム陰性Proteobacteria亜群3」から選ばれる。「グラム陰性Proteobacteria亜群3」は以下の属のProteobacteriaの群と定義される:Brevundimonas;Agrobacterium;Rhizobium;Sinorhizobium;Blastomonas;Sphingomonas;Alcaligenes;Burkholderia;Ralstonia;Acidovorax;Hydrogenophaga;Methylobacter;Methylocaldum;Methylococcus;Methylomicrobium;Methylomonas;Methylosarcina;Methylosphaera;Azomonas;Azorhizophilus;Azotobacter;Cellvibrio;Oligella;Pseudomonas;Teredinibacter;Francisella;Stenotrophomonas;Xanthomonas;及びOceanimonas。
【0089】
好ましい実施態様において、宿主細胞は「グラム陰性Proteobacteria亜群4」から選ばれる。「グラム陰性Proteobacteria亜群4」は以下の属のProteobacteriaの群と定義される:Brevundimonas;Blastomonas;Sphingomonas;Burkholderia;Ralstonia;Acidovorax;Hydrogenophaga;Methylobacter;Methylocaldum;Methylococcus;Methylomicrobium;Methylomonas;Methylosarcina;Methylosphaera;Azomonas;Azorhiozophilus;Azotobacter;Cellvibrio;Oligella;Pseudomonas;Teredinibacter;Francisella;Stenotrophomonas;Xanthomonas;及びOceanimonas。
【0090】
好ましい実施態様において、宿主細胞は「グラム陰性Proteobacteria亜群5」から選ばれる。「グラム陰性Proteobacteria亜群5」は以下の属のProteobacteriaの群と定義される。Methylobacter;Methylocaldum;Methylococcus;Methylomicrobium;Methylomonas;Methylosarcina;Methylosphaera;Azomonas;Azorhizophilus;Azotobacter:Cellvibrio;Oligella;Pseudomonas;Teredinibacter;Francisella;Stenotrophomonas;Xanthomonas;及びOceanimonas。
【0091】
好ましい実施態様において、宿主細胞は「グラム陰性Proteobacteria亜群6」から選ばれる。「グラム陰性Proteobacteria亜群6」は、以下の属のProteobacteriaの群と定義される:Brevundimonas;Blastomonas;Sphingomonas;Burkholderia;Ralstonia;Acidovorax;Hydrogenophaga;Azomonas;Azorhizophilus;Azotobacter;Cellvibrio;Oligella;Pseudomonas;Teredinibacter;Stenotrophomonas;Xanthomonas;及びOceanimonas。
【0092】
好ましい実施態様において、宿主細胞は「グラム陰性Proteobacteria亜群7」から選ばれる。「グラム陰性Proteobacteria亜群7」は以下の属のProteobacteriaの群と定義される:Azomonas;Azorhizophilus;Azotobacter;Cellvibrio;Oligella;Pseudomonas;Teredinibacter;Stenotrophomonas;Xanthomonas;及びOceanimonas。
【0093】
好ましい実施態様において、宿主細胞は「グラム陰性Proteobacteria亜群8」から選ばれる。「グラム陰性Proteobacteria亜群8」は以下の属のProteobacteriaの群と定義される:Brevundimonas;Blastomonas;Sphingomonas;Burkholderia;Ralstonia;Acidovorax;Hydrogenophaga;Pseudomonas;Stenotrophomonas;Xanthomonas;及びOceanimonas。
【0094】
好ましい実施態様において、宿主細胞は「グラム陰性Proteobacteria亜群9」から選ばれる。「グラム陰性Proteobacteria亜群9」は以下の属のProteobacteriaの群と定義される。Brevundimonas;Burkholderia;Ralstonia;Acidovorax;Hydrogenophaga;Pseudomonas;Stenotrophomonas;及びOceanimonas。
【0095】
好ましい実施態様において、宿主細胞は「グラム陰性Proteobacteria亜群10」から選ばれる。「グラム陰性Proteobacteria亜群10」は、以下の属のProteobacteriaの群と定義される。Burkholderia;Ralstonia;Pseudomonas;Stenotrophomonas;及びXanthomonas。
【0096】
好ましい実施態様において、宿主細胞は「グラム陰性Proteobacteria亜群11」から選ばれる。「グラム陰性Proteobacteria亜群11」は以下の属のProteobacteriaの群と定義される。Pseudomonas;Stenotrophomonas;及びXanthomonas。
【0097】
好ましい実施態様において、宿主細胞は「グラム陰性Proteobacteria亜群12」から選ばれる。「グラム陰性Proteobacteria亜群12」は以下の属のProteobacteriaの群と定義される。Burkholderia;Ralstonia;Pseudomonas。
【0098】
好ましい実施態様において、宿主細胞は「グラム陰性Proteobacteria亜群13」から選ばれる。「グラム陰性Proteobacteria亜群13」は、以下の属のProteobacteriaの群と定義される。Burkholderia;Ralstonia;Pseudomonas;及びXanthomonas。
【0099】
好ましい実施態様において、宿主細胞は「グラム陰性Proteobacteria亜群14」から選ばれる。「グラム陰性Proteobacteria亜群14」は、以下の属のProteobacteriaの群と定義される。Pseudomonas;及びXanthomonas。
【0100】
好ましい実施態様において、宿主細胞は「グラム陰性Proteobacteria亜群15」から選ばれる。「グラム陰性Proteobacteria亜群15」は属PseudomonasのProteobacteriaの群と定義される。
【0101】
好ましい実施態様において、宿主細胞は「グラム陰性Proteobacteria亜群16」から選ばれる。「グラム陰性Proteobacteria亜群16」は、以下のPseudomonas種のProteobacteriaの群と定義される(括弧内には代表的菌株のATCC寄託番号又は他の寄託番号が示してある)。:Pseudomonas abietaniphila(ATCC700689);Peudomonas aeruginosa(ATCC10145);Pseudomonas alcaligenes(ATCC14909);Pseudomonas anguilliseptica(ATCC33660);Pseudomonas citronellolis(ATCC13674);Pseudomonas flavescens(ATCC51555);Pseudomonas mendocina(ATCC25411);Pseudomonas nitroreducens(ATCC33634);Peudomonas oleovorans(ATCC8062);Pseudomonas pseudoalcaligenes(ATCC17440);Pseudomonas resinovorans(ATCC14235);Pseudomonas straminea(ATCC33636);Pseudomonas agarici(ATCC25941);Pseudomonas alcaliphila;Pseudomonas alginovora;Pseudomonas andersonii;Pseudomonas asplenii(ATCC23835);Pseudomonas azelaica(ATCC27162);Pseudomonas beijerinckii(ATCC19372);Pseudomonas borealis;Pseudomonas boreopolis(ATCC33662);Pseudomonas brassicacearum;Pseudomonas butanovora(ATCC43655);Pseudomonas cellulosa(ATCC55703);Pseudomonas aurantiaca(ATCC33663);Pseudomonas chlororaphis(ATCC9446,ATCC13985,ATCC17418,ATCC17461);Pseudomonas fragi(ATCC4973);Pseudomonas lundensis(ATCC49968);Psuedomonas taetrolens(ATCC4683);Pseudomonas cissicola(ATCC33616);Pseudomonas coronafaciens;Pseudomonas diterpeniphila;Pseudomonas elongata(ATCC10144);Pseudomonas flectens(ATCC12775);Pseudomonas azotoformans;Pseudomonas brenneri;Pseudomonas cedrella;Pseudomonas corrugata(ATCC29736);Pseudomonas extremorientalis;Pseudomonas fluorescens(ATCC35858);Pseudomonas gessardii;Pseudomonas libanensis;Pseudomonas mandelii(ATCC700871);Pseudomonas marginalis(ATCC10844);Pseudomonas migulae;Pseudomonas mucidolens(ATCC4685);Pseudomonas orientalis;Pseudomonas rhodesiae;Pseudomonas synxantha(ATCC9890);Pseudomonas tolaasii(ATCC33618);Pseudomonas veronii(ATCC700474);Psuedomonas frederiksbergenis;Pseudomonas geniculata(ATCC19374);Pseudomonas gingeri;Pseudomonas graminis;Pseudomonas grimontii;Pseudomonas halodenitrificans;Pseudomonas halophila;Pseudomonas hibiscicola(ATCC19867);Pseudomonas huttiensis(ATCC14670);Pseudomonas hydrogenovora;Peudomonas jessenii(ATCC700870);Pseudomonas kilonensis;Pseudomonas lanceolata(ATCC14669);Pseudomonas lini;Pseudomonas marginata(ATCC25417);Pseudomonas mephitica(ATCC33665);Pseudomonas denitrificans(ATCC19244);Pseudomonas pertucinogena(ATCC190);Pseudomonas pictorum(ATCC23328);Pseudomonas psychrophila;Pseudomonas fulva(ATCC31418);Pseudomonas monteilii(ATCC700476);Pseudomonas mosselii;Pseudomonas oryzihabitans(ATCC43272);Pseudomonas plecoglossicida(ATCC700383);Pseudomonas putida(ATCC12633);Pseudomonas reactans;Pseudomonas spinosa(ATCC14606);Pseudomonas balearica;Pseudomonas luteola(ATCC43273);Pseudomonas stutzeri(ATCC17588);Pseudomonas amygdali(ATCC33614);Pseudomonas avellanae(ATCC700331);Pseudomonas caricapapayae(ATCC33615);Pseudomonas cichorii(ATCC10857);Pseudomonas ficuserectae(ATCC35104);Pseudomonas fuscovaginae;Pseudomonas meliae(ATCC33050);Pseudomonas syringae(ATCC19310);Pseudomonas viridiflava(ATCC13223);Pseudomonas thermocarboxydovorans(ATCC35961);Pseudomonas thermotolerans;Pseudomonas thivervalensis;Pseudomonas vancouveresis(ATCC700688);Pseudomonas wisconsinensis;及びPseudomonas xiamenesis。
【0102】
好ましい実施態様において、宿主細胞は「グラム陰性Proteobacteria亜群17」から選ばれる。「グラム陰性Proteobacteria亜群17」は、例えば以下のPseudomonas種の属するものを含む、「螢光性シュードモナス菌」として当業界で知られるProteobacteriaの群と定義される。Pseudomonas azotoformans;Pseudomonas brenneri;Pseudomonas cedrella;Pseudomonas corrugata;Pseudomonas extremorientalis;Pseudomonas fluorescens;Pseudomonas gessardii;Pseudomonas libanensis;Pseudomonas mandelii;Pseudomonas marginalis;Pseudomonas migulae;Pseudomonas mucidolens;Pseudomonas orientalis;Pseudomonas rhodesiae;Pseudomonas synxantha;Pseudomonas tolaasii;及びPseudomonas veronii。
【0103】
好ましい実施態様において、宿主細胞は「グラム陰性Proteobacteria亜群18」から選ばれる。「グラム陰性Proteobacteria亜群18」は、例えば以下に属するものを含む種Pseudomonas fluorescensの全ての亜種、変種、菌株及び他のサブスペシャルユニットの群として定義される(括弧内に例示菌株のATCC寄託番号又は他の寄託番号を示す)。Pseudomonas fluorescensバイオタイプA(biovar 1又はbiovar Iとも称する)(ATCC13525);Pseudomonas fluorescens バイオタイプ B(biovar 2又はbiovar IIとも称する)(ATCC17816);Pseudomonas fluorescensバイオタイプC(biovar 3又はbiovar IIIとも称する)(ATCC17400);Pseudomonas fluorescensバイオタイプF(biovar 4又はbiovar IVとも称する)(ATCC12983);Pseudomonas fluorescensバイオタイプG(biovar 5又はbiovar Vとも称する)(ATCC17518);及びPseudomonas fluorescens subsp.cellulosa(NCIMB10462)。
【0104】
好ましい実施態様において、宿主細胞は「グラム陰性Protebacteria亜群19」から選ばれる。「グラム陰性Proteobacteria亜群19」は、Pseudomonas fluorescensバイオタイプAの全ての菌株の群と定義される。このバイオタイプの特に好ましい菌株はP.fluorescens菌株MB101(米国特許第5,169,760号(Wilcox)参照)及びその誘導体である。
【0105】
特に好ましい実施態様において、宿主細胞は「グラム陰性Proteobacteria亜群1」から選ばれる。特に好ましい実施態様において、宿主細胞は「グラム陰性Proteobacteria亜群2」から選ばれる。特に好ましい実施態様において、宿主細胞は「グラム陰性Proteobacteria亜群3」から選ばれる。特に好ましい実施態様において、宿主細胞は「グラム陰性Proteobacteria亜群5」から選ばれる。特に好ましい実施態様において、宿主細胞は「グラム陰性Proteobacteria亜群7」から選ばれる。特に好ましい実施態様において、宿主細胞は「グラム陰性Proteobacteria亜群12」から選ばれる。特に好ましい実施態様において、宿主細胞は「グラム陰性Proteobacteria亜群15」から選ばれる。特に好ましい実施態様において、宿主細胞は「グラム陰性Proteobacteria亜群17」から選ばれる。特に好ましい実施態様において、宿主細胞は「グラム陰性Proteobacteria亜群18」から選ばれる。特に好ましい実施態様において、宿主細胞は「グラム陰性Proteobacteria亜群19」から選ばれる。
【0106】
形質転換
ベクターによる宿主細胞の形質転換は、当業界で知られた任意の形質転換方法を用いて実施でき、細菌宿主細胞は、無傷の細胞又はプロトプラスト(即ち細胞質を含む)として形質転換されることができる。代表的な形質転換方法としては、ポレーション法、例えば、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合、細菌接合及び二価陽イオン処理、例えば、塩化カルシウム処理又はCaCl/Mg2+処理が挙げられる。
【0107】
発酵
本明細書中で使用する用語「発酵」は、文字通りの発酵を用いる実施態様と、他の非発酵性培養方式を用いる実施態様を共に包含する。発酵は任意の規模で実施できる。好ましい実施態様において、発酵培地は、濃厚培地、最少培地及び無機塩培地の中から選ぶことができ;濃厚培地は使用できるが、避けるのが好ましい。好ましい一実施態様においては、最少培地又は無機塩培地を選ぶ。好ましい一実施態様においては、最少培地を選ぶ。好ましい一実施態様においては、無機塩培地を選ぶ。無機塩培地が特に好ましい。
【0108】
無機塩培地は、無機塩及び例えばグルコース、スクロース又はグリセロールのような炭素源から成る。無機塩培地の例としては、例えば、M9培地、Pseudomonas培地(ATCC179)、Davis−Mingioli培地(BD Davis & ES Mingioli,J.Bact.60:17〜28(1950)参照)が挙げられる。無機塩培地の作成に使用する無機塩としては、燐酸カリウム、硫酸アンモニウム若しくは塩化アンモニウム、硫酸マグネシウム若しくは塩化マグネシウム及び微量無機物、例えば、塩化カルシウム、ホウ酸塩並びに鉄、銅、マンガン及び亜鉛の硫酸塩の中から選ばれるものが挙げられる。ペプトン、トリプトン、アミノ酸又は酵母抽出物のような有機窒素源は、無機塩培地には包含させない。代わりに、無機窒素源を用い、これは、例えばアンモニウム塩、アンモニア水及びアンモニアガスの中から選ばれることができる。好ましい無機塩培地は、炭素源としてグルコースを含む。無機塩培地と比較すると、最少培地も無機塩及び炭素源を含むが、例えば低レベルのアミノ酸、ビタミン類、ペプトン又は他の成分が更に補足される。これらは極微量で添加される。
【0109】
本発明に係る極限酵素発現系は、任意の発酵方式で培養されることができる。本発明においては、例えばバッチ、フェドバッチ、半連続及び連続発酵方式を使用できる。
【0110】
本発明に係る発現系は、任意の規模(即ち、容量)の発酵において極限酵素発現に有用である。従って、例えば、マイクロリットル規模、センチリットル規模、及びデシリットル規模の発酵容量も使用できるし、1リットル及びそれ以上の規模の発酵容量も使用できる。好ましい一実施態様において、発酵容量は1リットル又はそれ以上であろう。好ましい一実施態様において、発酵容量は5リットル又はそれ以上であろう。好ましい一実施態様において、発酵容量は10リットル又はそれ以上であろう。好ましい一施態様において、発酵容量は15リットル又はそれ以上であろう。好ましい一実施態様において、発酵容量は20リットル又はそれ以上であろう。好ましい一実施態様において、発酵容量は25リットル又はそれ以上であろう。好ましい一実施態様において、発酵容量は50リットル又はそれ以上であろう。好ましい一実施態様において、発酵容量は75リットル又はそれ以上であろう。好ましい一実施態様において、発酵容量は100リットル又はそれ以上であろう。好ましい一実施態様において、発酵容量は150リットル又はそれ以上であろう。好ましい一実施態様において、発酵容量は200リットル又はそれ以上であろう。好ましい一実施態様において、発酵容量は250リットル又はそれ以上であろう。好ましい一実施態様において、発酵容量は500リットル又はそれ以上であろう。好ましい一実施態様において、発酵容量は750リットル又はそれ以上であろう。好ましい一実施態様において、発酵容量は1,000リットル又はそれ以上であろう。好ましい一実施態様において、発酵容量は2,000リットル又はそれ以上であろう。好ましい一実施態様において、発酵容量は2,500リットル又はそれ以上であろう。好ましい一実施態様において、発酵容量は5,000リットル又はそれ以上であろう。好ましい一実施態様において、発酵容量は10,000リットル又はそれ以上であろう。好ましい一実施態様において、発酵容量は50,000リットル又はそれ以上であろう。好ましい一実施態様において、発酵容量は10リットル又はそれ以上であろう。
【0111】
本発明において、宿主細胞の成長、培養及び/又は発酵は、約4℃〜約55℃(約4℃と約55℃を含む)の温度範囲内で実施する。従って、例えば、本明細書中で本発明の宿主細胞に関して用いる用語「成長」(及び「成長する」、「成長している」)、「培養」(「培養する」)、並びに「発酵」(及び「発酵する」、「発酵している」)は、本質的及び必然的に、約4℃〜約55℃(約4と約55を含む)の温度範囲内における「成長」、「培養」及び「発酵」を意味する。更に、「成長」は、活性な細胞分裂及び/又は拡大の両生物学的状態並びに分裂していない且つ/又は拡大していない細胞が代謝的に持続される生物学的状態を示すのに用い、用語「成長」の後者の使用は、用語「維持」と同義である。
【0112】
更に、「発現を可能にする条件下で」の成長は、本発明の組換え細菌宿主細胞及び発現系に関して使用される場合には、本明細書中では以下のことを意味するものと定義する:(1)極限酵素コード配列に動作可能なように連結された制御配列中に使用されるプロモーターが構成プロモーターである場合には、組換え細菌宿主細胞自体の成長;及び(2)極限酵素コード配列に動作可能なように連結された制御配列中に使用されるプロモーターが調節プロモーターである場合には、(a)そのためのインデューサーの存在下における(即ち、それと接触している)組換え細菌宿主細胞の成長、及び(b)そのためのインデューサーの不存在下における組換え細菌宿主細胞の成長(それに続いて、このようなインデューサーが系に加えられ、それによって細胞とインデューサーとが接触させられる)を意味するものと定義する。
【0113】
生体触媒の調製
発現後、極限酵素は次に、当業界で知られた任意のタンパク質回収及び/又はタンパク質精製方法を用いて、分離、単離及び/又は精製することができる。例えば極限酵素が細胞内で発現される場合には、宿主細胞は、標準的な物理、化学又は酵素手段によって細胞溶解させることができ(例えば、P.Prave et al.(eds.),Fundamentals of Biotechnology(1987)(VCH Publishers,New York)(特にSection 8.3)を参照されたい)、それに続いて、精密濾過、限外濾過、ゲル濾過、ゲル精製(例えばPAGEによる)、アフィニティー精製、クロマトグラフィー(例えばLC、HPLC、FPLC)などによってタンパク質を分離できる。あるいは、これらのよく知られているタンパク質回収及びタンパク質精製法の、これらの酵素の特異的性質を利用する変法も使用できる。例えば他の細胞タンパク質及び材料を沈殿させながら極限酵素を再懸濁させる加熱によって、超好熱性酵素を細胞材料から容易に分離できることが報告されており;この方法は本発明において超好熱性酵素に関して使用するの特に好ましい。
【0114】
極限酵素が宿主細胞から分泌される場合、極限酵素は培地から直接、分離、単離及び/又は精製できる。極限酵素が宿主細胞中で不溶性封入体として又はその一部として発現される場合には、封入体は、機能酵素の回収ができるように可溶化されるであろう。例えば、宿主細胞は、それからこのような封入体を得るために細胞溶解させてから可溶化することもできるし;あるいは、一部の極限酵素封入体は、細胞溶解工程を用いずにin cytoで可溶化によって宿主細胞から直接抽出できる。いずれの実施態様においても、このような可溶化は発現された極限酵素のある程度のアンフォールディングを生じる可能性がある。可溶化が発現酵素のアンフォールディングを生じる場合には、可溶化工程の後にリフォールディング工程を行うのが好ましいであろう。
【0115】
封入体中で発現された酵素及び他のタンパク質を可溶化及びリフォールディングするための種々の技術が当業界で知られている。例えば以下を参照されたい。E De Bernardez Clark,Protein refolding for industrial process,Curr.Opin.in Biotechnol.12(2):202〜7(Apr 1,2001);MM Carrio & A Villaverde,Protein aggregation as bacterial inclusion bodies is reversible,FEBS Lett.489(1):29〜33(Jan 26,2001);R Rudolph & H
Lilie, In vitro folding of inclusion body proteins,FASEB J.10:49〜56(1996);B Fischer et al.,Biotechnol.Bioeng.41:3〜13(1993)(E.coliにおいて発現された真核生物タンパク質のリフォールディング);G.Dong et al.,Appl.Envir.Microbiol.63(9):3569〜3576(Sep 1997)(好極限性アミラーゼ酵素のリフォールディング);A Yamagata et al.,Nucl.Acids Res.,29(22):4617〜24(Nov 15,2001)(異種性、好熱性RecJエキソヌクレアーゼを可溶化するための尿素変性と、それに続く、活性酵素を得るためのリフォールディング);並びにC Pire et al.,FEMS Microbiol.Lett.200(2):221〜27(Jun 25,2001)(E.coliにおいて発現された古細菌好塩性グルコールデヒドロゲナーゼのリフォールディング)。
【0116】
本発明に従って発現される極限酵素は、前述のような生体触媒法で使用できる。好ましい生体触媒法は、工業的生体触媒法である。分離、単離又は精製後、極限酵素は次に、例えば、遊離酵素又は固定化酵素バイオリアクター中で、例えば現在使用されている工業用酵素の代わりに、生体触媒反応を行うのに使用できる。あるいは、極限酵素は、宿主細胞中で発現後(あるいは発現されている間に)、in cytoで生体触媒反応に使用できる。例えば細胞は、例えばホールセルバイオリアクター中で(遊離細胞又は固定化細胞バイオリアクターのいずれであっても)生体触媒反応単位として使用でき;この形式では、極限酵素は細胞内若しくは細胞表面で発現されることができるか、又は細胞から分泌されるか若しくは他の方法で輸出されることができる。この方式を用いる好ましい実施態様において、極限酵素は細胞内又は細胞表面で発現させる。得られた酵素又はホールセルバイオリアクターはそれ自体が、バッチ、フェドバッチ、半連続又は連続バイオリアクターであることができる。
【0117】
発現レベル
本発明に係る発現系は、tcp5%又はそれ以上のレベルで極限酵素を発現する。好ましい一実施態様において、発現レベルはtcp8%又はそれ以上であろう。好ましい一実施態様において、発現レベルはtcp10%又はそれ以上であろう。好ましい一実施態様において、発現レベルはtcp15%又はそれ以上であろう。好ましい一実施態様において、発現レベルはtcp20%又はそれ以上であろう。好ましい一実施態様において、発現レベルはtcp25%又はそれ以上であろう。好ましい一実施態様において、発現レベルはtcp30%又はそれ以上であろう。好ましい一実施態様において、発現レベルはtcp40%又はそれ以上であろう。好ましい一実施態様において、発現レベルはtcp50%又はそれ以上であろう。
【0118】
好ましい一実施態様において、発現レベルはtcp35%又はそれ以下であろう。好ましい一実施態様において、発現レベルはtcp40%又はそれ以下であろう。好ましい一実施態様において、発現レベルはtcp45%又はそれ以下であろう。好ましい一実施態様において、発現レベルはtcp50%又はそれ以下であろう。好ましい一実施態様において、発現レベルはtcp60%又はそれ以下であろう。好ましい一実施態様において、発現レベルはtcp70%又はそれ以下であろう。好ましい一実施態様において、発現レベルはtcp80%又はそれ以下であろう。
【0119】
好ましい一実施態様において、発現レベルはtcp5〜80%であろう。好ましい一実施態様において、発現レベルはtcp8〜70%(8及び70を含む)であろう。好ましい一実施態様において、発現レベルはtcp10〜70%(10及び70を含む)であろう。好ましい一実施態様において、発現レベルはtcp15〜70%(15及び70を含む)であろう。特に好ましい一実施態様において、発現レベルはtcp20〜70%(20及び70を含む)であろう。
【0120】
細胞密度
本発明に係る発現系は、少なくとも約20g/L(無機塩培地上で成長させる場合でさえ)の細胞密度、即ち、最大細胞密度を実現し;同様に、本発明に係る発現系は、容量当たりのバイオマス(バイオマスは乾燥細胞重量として測定される)に換算して表す場合、少なくとも約70g/Lの細胞密度を実現する。
【0121】
好ましい一実施態様において、細胞密度は少なくとも20g/Lであろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は少なくとも25g/Lであろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は少なくとも30g/Lであろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は少なくとも35g/Lであろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は少なくとも40g/Lであろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は少なくとも45g/Lであろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は少なくとも50g/Lであろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は少なくとも60g/Lであろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は少なくとも70g/Lであろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は少なくとも80g/Lであろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は少なくとも90g/Lであろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は少なくとも100g/Lであろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は少なくとも110g/Lであろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は少なくとも120g/Lであろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は少なくとも130g/Lであろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は少なくとも140g/Lであろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は少なくとも150g/Lであろう。
【0122】
好ましい一実施態様において、細胞密度は150g/L又はそれ以下であろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は140g/L又はそれ以下であろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は130g/L又はそれ以下であろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は120g/L又はそれ以下であろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は110g/L又はそれ以下であろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は100g/L又はそれ以下であろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は90g/L又はそれ以下であろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は80g/L又はそれ以下であろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は75g/L又はそれ以下であろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は70g/L又はそれ以下であろう。
【0123】
好ましい一実施態様において、細胞密度は20〜150g/L(20と150を含む)であろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は20〜120g/L(20と120を含む)であろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は20〜80g/L(20と80を含む)であろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は25〜80g/L(25と80を含む)であろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は30〜80g/L(30と80を含む)であろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は35〜80g/L(35と80を含む)であろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は40〜80g/L(40と80を含む)であろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は45〜80g/L(45と80を含む)であろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は50〜80g/L(50と80を含む)であろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は50〜75g/L(50と75を含む)であろう。好ましい一実施態様において、細胞密度は50〜70g/L(50と70を含む)であろう。特に好ましい一実施態様において、細胞密度は少なくとも40g/Lであろう。特に好ましい一実施態様において、細胞密度は40〜80g/Lであろう。
【0124】
総生産性
本発明に係る発現系において、総生産性、即ち、極限酵素の総生産性は少なくとも1g/Lである。細胞密度及び発現レベルの因子はそれに応じて選ばれる。好ましい一実施態様において、総生産性は少なくとも2g/Lであろう。好ましい一実施態様において、総生産性は少なくとも3g/Lであろう。好ましい一実施態様において、総生産性は少なくとも4g/Lであろう。好ましい一実施態様において、総生産性は少なくとも5g/Lであろう。好ましい一実施態様において、総生産性は少なくとも6g/Lであろう。好ましい一実施態様において、総生産性は少なくとも7g/Lであろう。好ましい一実施態様において、総生産性は少なくとも8g/Lであろう。好ましい一実施態様において、総生産性は少なくとも9g/Lであろう。好ましい一実施態様において、総生産性は少なくとも10g/Lであろう。
【0125】
特に好ましい実施態様において、発現系は、無機塩培地中で成長させた場合(即ち、約4℃〜約55℃(約4℃と約55℃を含む)の温度範囲内で)には、少なくともtcp5%の極限酵素発現レベル及び少なくとも40g/Lの細胞密度を有するであろう。特に好ましい実施態様において、発現系は、少なくとも10Lの発酵規模で無機塩培地中で成長させた場合(即ち、約4℃〜約55℃(約4℃と約55℃を含む)の温度範囲内で)には、少なくともtcp5%の極限酵素発現レベル及び少なくとも40g/Lの細胞密度を有するであろう。
【実施例】
【0126】
実施例1
好極限性セルラーゼ
実施例1A−Thermotoga maritima及びPyrococcus furiosusセルラーゼを発現するPseudomonas fluorescens菌株の作成
方法
分子生物学の技術はAusubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology(1995)(John
Wiley & Sons);Sambrook,Fritsch,& Maniatis(eds.),Molecular Cloning(1989)(Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY)に記載された通りとした。
【0127】
発現カセット
親プラスミドpMYC1803は、テトラサイクリン耐性調節マーカー並びにRSF1010プラスミドからの複製及び動態化座位を保有するpTJS260の誘導体(米国特許第5,169,760号(Wilcox)参照)である。(pMYC1803は、本発明に係る極限酵素の発現において有用な多くの誘導体プラスミドの源である。ほとんどのこのような誘導体は、異なる外来性遺伝子のクローニングに都合の良い制限部位を導入するために、主としてORFの周囲がpMYC1803とは異なる。)
【0128】
遺伝子のコード配列のN−末端においてpMYC1803中のORFの翻訳開始部位と共にSpeI部位を導入し且つ遺伝子のコード配列のC−末端においてXhoI部位を導入するようにデザインされたプライマーを用いて、Thermotoga maritimaセルラーゼ遺伝子(0.94kb;314aa、38kDセルラーゼをコード化)及びPyrococcus furiosusエンドグルカナーゼ遺伝子(0.90kb;300aa、34kDエンドグルカナーゼをコード化)をPCR増幅させた。各PCR産物のSpeI−XhoI断片は独立して、対応する部位においてpMYC1803に挿入し、その結果、酵素遺伝子が、既に中に存在する外来性遺伝子と置き換わり、それによってそれらの発現がtacプロモーターから開始された。E.coli JM109中の得られた作成物、pMYC1954及びpDOW2408を、制限消化物及び定性的酵素アッセイによってスクリーニングし、次いで、正しい作成物のアルカリ細胞溶解ミニプレッププラスミドDNAを、P.fluorescens MB214中に電気穿孔処理した。
【0129】
宿主菌株Pseudomonas fluorescens MB214
MB214は、lacプロモーターの誘導体がラクトース又はIPTGによって調節されることができる宿主基礎環境を形成するためにlacIZYAオペロン(lacZプロモーター領域が除去された)を染色体に組み込むという手法によって誘導されたMB101(野生型原栄養体P.fluorescens菌株)の誘導体である。MB101はLac-であるが、MB214はLac+である。しかし、MB101は、プラスミド上のE.coli lacI遺伝子を菌株中に導入することによってLac+にすることができる。
【0130】
実施例1B−好極限性セルラーゼの発現
種培養体を以下のようにして作成した。P.fluorescens MB214形質転換体を、15mlのFalconチューブ中において、15μg/mLのテトラサイクリンHClが補足されたLuria−Bertani Broth(「LB」)2〜5mLに接種し、32℃、300rpmにおいて16〜20時間成長させた。種培養体1mL(lLB中)を、250mLのボトムバッフル付き振盪フラスコ中の、15μg/mLテトラサイクリンHClが補足されたTerrific Broth(TB)培地(表IV参照)50mL中に入れ、32℃、300rpmにおいて5時間インキュベートした。誘導は、IPTGを最終濃度0.5mMまで添加することによって行った。サンプルを、インキュベーションの16〜24時間後に採取した。
【0131】
【表4】

【0132】
振盪フラスコ規模の結果を表Vに示す。
【0133】
【表5】

【0134】
10リットル規模の結果を表VIに示す。
【0135】
【表6】

【0136】
セルラーゼは、振盪フラスコ及び高細胞密度発酵槽の培養物中のいずれにおいても8%を超えるtcpレベルで発現された。セルラーゼを分離し、活性を試験したところ、活性であることがわかった。
【0137】
実施例2
好極限性アミラーゼ
実施例1と同様にして、Thermococcus及びSulfolobus solfataricus源からのα−アミラーゼ遺伝子を、図1に示したような、テトラサイクリン耐性マーカーも保有するRSF1010に基づくベクター中にPtacプロモーターを含む制御配列に動作可能なように連結されるように、PCR増幅させ、pMYC1803上にクローン化させた。得られた作成物を、LacI+P.fluorescens MB101に形質転換させた。得られた組換え宿主細胞を10L発酵槽で無機塩培地(テトラサイクリンが補足され且つグルコース又はグリセロールが供給される)中において成長させることによって培養した。形質転換体をフェドバッチ発酵培養において、最終的には約20g/L〜70g/L超(乾燥細胞重量)の範囲内のバイオマスを生成する細胞密度まで成長させた。Ptacプロモーターの無償性インデューサー、IPTGを、発現を誘導するために加えた。その結果、アミラーゼが、tcp約5%〜約30%超の範囲内のレベルまで発現された(即ち、過剰発現された)。従って、総生産性は、約2g/L〜10g/L超の範囲であり、単一の10Lバッチから100g超の極限酵素の収量が得られた。宿主細胞の細胞溶解後、極限酵素を、精密濾過とそれに続く限外濾過によって精製した。得られた酵素を特徴付けし、更に澱粉液化活性に関して試験したところ、それらは活性で、超好熱性で且つ好酸性であることがわかった。
【0138】
実施例3
好極限性プロテアーゼ
Pyrococcus furiosus及びSulfolobus acidocaldariusプロテアーゼ遺伝子はそれぞれ、115℃及びpH6.5〜10.5において活性なセリンプロテアーゼであるピロリシン(IUBMB EC 3.4.21.−)、90℃及びpH2.0において最適に動作する酸プロテアーゼであるサーモプシン(IUBMB EC3.4.23.42)をコード化する。実施例1と同様にして、これらの遺伝子を、図1に示したような、テトラサイクリン耐性マーカーも保有するRSF1010に基づくベクター中にPtacプロモーターを含む制御配列に動作可能なように連結されるように、PCR増幅させ、pMYC1803上にクローン化させた。得られた作成物を、LacI+P.fluorescens MB214に形質転換させた。得られた組換え宿主細胞を10L発酵槽で無機塩培地(テトラサイクリンが補足され且つグルコース又はグリセロールが供給される)中において成長させることによって培養した。形質転換体をフェドバッチ発酵培養において、最終的には約20g/L〜70g/L超(乾燥細胞重量)の範囲内のバイオマスを生成する細胞密度まで成長させた。IPTGによる誘導後、プロテアーゼが、tcp約5%〜約30%超の範囲内のレベルまで発現された。従って、総生産性は、約1g/L〜10g/L超の範囲であり、単一の10Lバッチから100g超の極限酵素の収量が得られた。
【0139】
参考文献
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20.D.W.Hough & M.J.Danson,Extremozymes,Curr.Opin.Chem.Biol.3:39〜46(1999)。
【0140】
前述の好ましい実施態様は、本発明を単に代表するものであること、本明細書中で使用した用語はこれらの好ましい実施態様の説明のためにのみ使用すること、従って、前記説明のために選ばれた好ましい実施態様は本発明の範囲を限定することを目的としないことを理解されたい。本発明をこのように説明したが、他の実施態様、代替物、変形物、及び自明の改変はルーチン実験法しか用いなくても、本明細書に具体的に記載したそれらの好ましい実施態様、方法、プロトコール、ベクター、試薬、要素及び組合せの相当物として、当業者には明らかであろう。このような相当物は、本発明の範囲内であるとみなすべきであり、本発明の精神及び範囲から逸脱するとみなすべきでない。このような相当物は全て、添付した「特許請求の範囲」の範囲内に包含されるものとし、従って、本発明の真の範囲は、添付した「特許請求の範囲」によって定義され、相当物の原則又は現権限において適用可能な同様な原則下で解釈される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に動作可能な発現ベクターを含むように遺伝子操作された組換え細菌宿主細胞であって、
前記発現ベクターが制御配列に動作可能なように連結された外来性極限酵素コード配列を含む核酸を含み;前記宿主細胞が培地上で発現を可能にする条件下で成長させた場合に、少なくとも1g/Lの総生産性で前記極限酵素を生成するように、前記コード配列を過剰発現でき;前記細菌宿主細胞がシュードモナス菌及び近縁細菌から選ばれることを特徴とする組換え細菌宿主細胞。
【請求項2】
組換え細菌宿主細胞及び制御配列に動作可能なように連結された外来性極限酵素コード配列を含む核酸を含む、前記宿主細胞中において有効な発現ベクターを有する極限酵素過剰発現系であって
前記過剰発現系が、培地上で発現を可能にする条件下で成長させた場合に、少なくとも1g/Lの総生産性で前記極限酵素を生成するように、前記コード配列を過剰発現でき;前記細菌宿主細胞がシュードモナス菌及び近縁細菌から選ばれることを特徴とする極限酵素過剰発現系。
【請求項3】
少なくとも1g/Lの総生産性で極限酵素を過剰発現する方法であって、
(1)(a)シュードモナス菌及び近縁細菌から選ばれる細菌宿主細胞、
(b)制御配列に動作可能なように連結された外来性極限酵素コード配列を含む核酸を含む、前記宿主細胞中において動作可能な発現ベクター、並びに
(c)培地
を用意し;
(2)前記発現ベクターを前記細菌宿主細胞に形質転換させて、組換え細菌宿主細胞を形成し;そして
(3)培地上で発現を可能にする条件下で組換え細菌宿主細胞を成長させる
工程を含んでなる極限酸素の過剰発現方法。
【請求項4】
(1)制御配列に動作可能なように連結された外来性極限酵素コード配列を含む核酸を含む発現ベクターを、シュードモナス菌及び近縁細菌から選ばれた細菌宿主細胞に形質転換させて、組換え細菌宿主細胞を形成し;そして
(2)前記組換え細菌宿主細胞を培地上で発現を可能にする条件下で成長させる
ことを含んでなる、少なくとも1g/Lの総生産性で極限酵素を過剰発現させる方法。
【請求項5】
培地上で発現を可能にする条件下で組換え細菌宿主細胞から少なくとも1g/Lの総生産性で極限酵素を過剰発現させる方法における、シュードモナス菌及び近縁細菌から選ばれた組換え細菌宿主細胞の使用。
【請求項6】
(1)シュードモナス菌及び近縁細菌から選ばれた、或る量の細菌宿主細胞;
(2)前記宿主細胞中で動作可能であり且つ制御配列を含む、或る量の発現ベクター;
(3)制御配列にコード配列を動作可能なように連結させ、それによって発現ベクターが調製されるように、外来性極限酵素コード配列を含む核酸を前記発現ベクターに挿入する指令;
(4)組換え細菌宿主細胞を形成するために、続いて前記細菌宿主細胞に前記発現ベクターを形質転換する指令;並びに
(5)培地上で発現を可能にする条件下で前記組換え細菌宿主細胞を成長させる指令;更に
(6)場合によっては、或る量の前記培地;更に
(7)場合によっては、前記制御配列が調節プロモーターを使用する場合には、調節プロモーターのための或る量のインデューサー
を含んでなる、少なくとも1g/Lの総生産性で極限酵素を過剰発現するための商用キット。
【請求項7】
(1)シュードモナス菌及び近縁細菌から選ばれた、或る量の細菌宿主細胞;
(2)前記宿主細胞中で有効であり且つ制御配列と前記制御配列に動作可能なように連結された外来性極限酵素コード配列を含む、或る量の発現ベクター;
(3)組換え細菌宿主細胞を形成するために、前記細菌宿主細胞に前記発現ベクターを形質転換する指令;並びに
(4)培地上で発現を可能にする条件下で前記組換え細菌宿主細胞を成長させる指令;更に
(5)場合によっては、或る量の前記培地;更に
(6)場合によっては、前記制御配列が調節プロモーターを使用する場合には、調節プロモーターのための或る量のインデューサー
を含んでなる、少なくとも1g/Lの総生産性で極限酵素を過剰発現するための商用キット。
【請求項8】
前記極限酵素が分類IUBMB EC2〜6のいずれかの中から選ばれる請求項1〜7のいずれか1項に記載の極限酵素。
【請求項9】
分類IUBMB EC2〜5のいずれかの範囲内の好極限性酵素のいずれかから選ばれる請求項8に記載の極限酵素。
【請求項10】
分類IUBMB EC2〜3のいずれかの範囲内の好極限性酵素のいずれかから選ばれる請求項9に記載の極限酵素。
【請求項11】
分類IUBMB EC3の範囲内の好極限性酵素のいずれかから選ばれる請求項10に記載の極限酵素。
【請求項12】
IUBMB EC3.1〜3.8の範囲内の好極限性酵素のいずれかから選ばれる請求項11に記載の極限酵素。
【請求項13】
IUBMB EC3.1〜3.2又は3.4の範囲内の好極限性酵素のいずれかから選ばれる請求項12に記載の極限酵素。
【請求項14】
IUBMB EC3.2又は3.4の範囲内の好極限性酵素のいずれかから選ばれる請求項13に記載の極限酵素。
【請求項15】
IUBMB EC3.2.1、3.4.21又は3.4.23の範囲内の好極限性酵素のいずれかから選ばれる請求項14に記載の極限酵素。
【請求項16】
セルラーゼ、アミラーゼ、セリンエンドペプチダーゼ及びアスパラギン酸エンドペプチダーゼから選ばれる請求項15に記載の極限酵素。
【請求項17】
アミラーゼ、セリンエンドペプチダーゼ及びアスパラギン酸エンドペプチダーゼから選ばれる請求項16に記載の極限酵素。
【請求項18】
α−アミラーゼ、ピロリシン及びサーモプシンから選ばれる請求項17に記載の極限酵素。
【請求項19】
前記細菌宿主細胞がグラム陰性Proteobacteria亜群1から選ばれる請求項1〜7のいずれか1項に記載の細菌宿主細胞。
【請求項20】
前記細菌宿主細胞がグラム陰性Proteobacteria亜群2から選ばれる請求項1〜7のいずれか1項に記載の細菌宿主細胞。
【請求項21】
前記細菌宿主細胞がグラム陰性Proteobacteria亜群3から選ばれる請求項1〜7のいずれか1項に記載の細菌宿主細胞。
【請求項22】
前記細菌宿主細胞がグラム陰性Proteobacteria亜群5から選ばれる請求項1〜7のいずれか1項に記載の細菌宿主細胞。
【請求項23】
前記細菌宿主細胞がグラム陰性Proteobacteria亜群7から選ばれる請求項1〜7のいずれか1項に記載の細菌宿主細胞。
【請求項24】
前記細菌宿主細胞がグラム陰性Proteobacteria亜群12から選ばれる請求項1〜7のいずれか1項に記載の細菌宿主細胞。
【請求項25】
前記細菌宿主細胞がグラム陰性Proteobacteria亜群15から選ばれる請求項1〜7、16及び18のいずれか1項に記載の細菌宿主細胞。
【請求項26】
前記細菌宿主細胞がグラム陰性Proteobacteria亜群17から選ばれる請求項1〜7のいずれか1項に記載の細菌宿主細胞。
【請求項27】
前記細菌宿主細胞がグラム陰性Proteobacteria亜群18から選ばれる請求項1〜7、16及び18のいずれか1項に記載の細菌宿主細胞。
【請求項28】
前記発現ベクターがRSF1010及びその誘導体から選ばれる請求項1〜7のいずれか1項に記載の発現ベクター。
【請求項29】
前記制御配列が調節プロモーターを含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の制御配列。
【請求項30】
負の調節がされるプロモーターである請求項29に記載の調節プロモーター。
【請求項31】
tacである請求項30に記載の負に調節されるプロモーター。
【請求項32】
前記成長が、10リットル規模又はそれ以上で実施される請求項1〜7のいずれか1項に記載の成長。
【請求項33】
発現を可能にする条件下における前記成長が、動作可能なように極限酵素コード配列に連結された調節プロモーターを含む組換え細菌宿主細胞の、前記調節プロモーター用のインデューサーの不存在下における増殖と、その後の、系への前記調節プロモーター用のインデューサーの添加を含んでなる請求項1〜7のいずれか1項に記載の成長。
【請求項34】
前記培地が最少培地及び炭素源補足無機塩培地から選ばれる請求項1〜7のいずれか1項に記載の培地。
【請求項35】
炭素源補足無機塩培地である請求項34に記載の培地。
【請求項36】
更に、制限酵素を分離、単離又は精製することを含んでなる請求項3〜4のいずれか1項。
【請求項37】
請求項1〜7のいずれか1項に従って発現された極限酵素。
【請求項38】
請求項1〜7のいずれか1項に従って発現された制限酵素の生体触媒プロセスへの使用。
【請求項39】
前記極限酵素が、細菌宿主細胞内の封入体中で発現され且つ前記封入体がその後に可溶化される請求項1〜7のいずれか1項に記載の極限酵素。
【請求項40】
制限酵素のリフォールディングにリフォールディング工程を用いる請求項1〜7及び39のいずれか1項に記載の制限酵素。

【図1】
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【公開番号】特開2010−207225(P2010−207225A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−85532(P2010−85532)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【分割の表示】特願2003−568041(P2003−568041)の分割
【原出願日】平成15年2月13日(2003.2.13)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】