説明

ショーケースの制御装置

【課題】冷却運転を行う場合にも多温度帯運転を行う場合においても、エネルギー損失を低減させて省エネルギー化を図ることができるショーケースの制御装置を提供すること。
【解決手段】収納室2全体の商品を冷却する冷却運転と、収納室2を複数に区画してそれぞれの域の商品を異なる温度帯に調整する加熱・冷却運転とを行うショーケースの制御装置において、加熱・冷却運転を行う場合には、収納室2の内部と外部との間で空気を循環させる送風ファン5の送風量、並びに送風ファン5により循環される空気を冷却するための圧縮機の周波数を前記冷却運転を行う場合よりもそれぞれ低減させるとともに、商品の冷却を行う域の設定温度を前記冷却運転を行う場合よりも設定温度を高くする制御手段20を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショーケースの制御装置に関し、より詳細には、収納室全体の商品を冷却する冷却運転と、前記収納室を複数に区画してそれぞれの域の商品を異なる温度帯に調整する多温度帯運転とを行うショーケースの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術としては、例えば特許文献1に記載のものが既に提供されている。この特許文献1に記載のものでは、収納室を2つに区画して一方の域の商品を加熱し、他方の域の商品を冷却する加熱・冷却運転を行う場合には、収納室全体の商品を冷却する冷却運転を行う場合よりも、収納室の内部と外部との間で空気を循環させる送風ファンの回転数を低減させて、漏れ冷気の低減化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−3021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、加熱・冷却運転を行う場合における冷却域と、冷却運転を行う場合の冷却域とでは、容積が異なり、冷却運転を行う場合の冷却域の方が大きい。そのため、送風ファンの回転数を低減させているだけでは、加熱・冷却運転を行う場合の冷却域が冷え過ぎてしまうことがあり、結果的に、エネルギー損失が大きいものになってしまう。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、冷却運転を行う場合にも多温度帯運転を行う場合においても、エネルギー損失を低減させて省エネルギー化を図ることができるショーケースの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るショーケースの制御装置は、収納室全体の商品を冷却する冷却運転と、前記収納室を複数に区画してそれぞれの域の商品を異なる温度帯に調整する多温度帯運転とを行うショーケースの制御装置において、前記多温度帯運転を行う場合には、前記収納室の内部と外部との間で空気を循環させる送風手段の送風量、並びに前記送風手段により循環される空気を冷却するための圧縮機の周波数を前記冷却運転を行う場合よりもそれぞれ低減させるとともに、商品の冷却を行う域の設定温度を前記冷却運転を行う場合よりも設定温度を高くする制御手段を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2に係るショーケースの制御装置は、上述した請求項1において、前記制御手段は、前記収納室の外部から内部に流れる空気の温度と、前記収納室の内部から外部に流れる空気の温度との差の絶対値が最小となる態様で前記送風手段の送風量を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のショーケースの制御装置によれば、制御手段が、多温度帯運転を行う場合には、収納室の内部と外部との間で空気を循環させる送風手段の送風量、並びに送風手段により循環される空気を冷却するための圧縮機の周波数を冷却運転を行う場合よりもそれぞれ低減させるとともに、商品の冷却を行う域の設定温度を冷却運転を行う場合よりも設定温度を高くするので、漏れ冷気を少なくすることができ、しかも圧縮機の駆動の発停回数が少なくなって間隔が長くなってしまうことを回避でき、エネルギー損失を抑制することができる。また設定温度を高くするので、多温度帯運転の際の冷却域が冷え過ぎてしまうことを防止することができ、これによってもエネルギー損失を抑制することができる。従って、冷却運転を行う場合にも多温度帯運転を行う場合においても、エネルギー損失を低減させて省エネルギー化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である制御装置が適用されたショーケースの内部構造を模式的に示す模式図である。
【図2】図2は、図1に示したショーケースの制御系を模式的に示すブロック図である。
【図3】図3は、制御手段が実行する運転切換制御処理の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るショーケースの制御装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態である制御装置が適用されたショーケースの内部構造を模式的に示す模式図である。ここで例示するショーケースは、ケース本体1を備えている。
【0012】
ケース本体1は、前面に開口(前面開口)1aが形成された略直方状の断熱筐体であり、その内部には収納室2が画成してあるとともに、空気循環手段3が設けてある。
【0013】
収納室2は、上記前面開口1aを臨む態様で画成された室であり、複数の商品載置棚4が上下方向に沿って複数段並べて配設してある。これら商品載置棚4は、それぞれ商品を載置するものであり、矩形状の板状体である。
【0014】
空気循環手段3は、空気通路4と送風ファン5とを備えて構成してある。空気通路4は、吸込口6から上方吹出口7に至る空気の通路である。ここに吸込口6は、収納室2の内部の空気を吸い込むための開口であり、収納室2の左右方向に沿って延設してある。この吸込口6は、収納室2の下側前方縁部、すなわちケース本体1の前面開口1a近傍の下部に配設してある。上方吹出口7は、収納室2の内部に空気を吹き出すための開口である。これら上方吹出口7は、収納室2の左右方向に延設してあって、収納室2の上側前方縁部、すなわちケース本体1の前面開口1a近傍の上部に前後に並設してある。
【0015】
このような空気通路4は、収納室2外であってその下方にある下方ダクト4aと、収納室2外であってその背面側にある背面ダクト4bと、収納室2外であってその上方にある上方ダクト4cとを互いに連通した態様で構成してある。
【0016】
送風ファン5は、後述する制御手段20により駆動が制御され、駆動することにより空気を循環させるものである。この送風ファン5は、背面ダクト4bの所定部位に配設してある。本実施の形態においては、送風ファン5は背面ダクト4bの所定部位に配設してあるが、本発明では、送風ファン5の配設位置は特に限定されるものではなく、後述する送風ファン5の機能を発揮することができる個所であればどこに配設しても構わない。
【0017】
このような空気循環手段3においては、送風ファン5が駆動することにより吸込口6を通じて収納室2の内部にある空気(内部空気)を吸い込み、吸い込んだ空気が空気通路4を通過する態様で上方吹出口7まで送出し、上方吹出口7を通じて送出した空気を収納室2の内部に吹き出すことにより、収納室2の内部と外部との間で空気を循環させるものである。
【0018】
上記空気通路4の背面ダクト4bには蒸発器8が設けてある。蒸発器8は、機械室9に配設された圧縮機10、凝縮器11及び膨張弁12とともに冷媒を循環させる冷媒循環手段を構成する。ここに圧縮機10は、冷媒を圧縮するものであり、後述する制御手段20により駆動が制御される。凝縮器11は、圧縮機10で圧縮された冷媒を凝縮させるものである。膨張弁12は、凝縮器11で凝縮された冷媒を断熱膨張させて低温低圧の状態にさせるものである
【0019】
蒸発器8は、送風ファン5が駆動することにより背面ダクト4bを下方から上方に向けて通過する空気と、膨張弁12で断熱膨張された冷媒とを熱交換させるもの、より詳細には、冷媒を蒸発させることにより背面ダクト4b(空気通路4)を通過する空気を冷却するものである。この蒸発器8で蒸発した冷媒は、再び圧縮機10に戻り圧縮されることになる。
【0020】
本実施の形態においては、上記商品載置棚4のうち上から3段目のものは、ダクト棚4aにしてある。このダクト棚4aは、自身の内部に通風路4a1が形成され、当該通路路の前端開口が棚吹出口4a2となっている。このダクト棚4aの後端部にはダンパ部材4a3が取り付けてある。このダンパ部材4a3は、前後方向に沿って伸縮自在となっており、図1に示すように後方に向けて伸長状態にある場合には、背面ダクト4bを途中で塞ぎ、蒸発器8で冷却された空気をダクト棚4aの通風路4a1に導入するものである。このようにダンパ部材4a3が背面ダクト4bを塞ぐ場合には、蒸発器8で冷却された空気は、ダクト棚4aの通風路4a1を通過し、棚吹出口4a2を通じて収納室2の内部に吹き出されることになる。
【0021】
図2は、図1に示したショーケースの制御系を模式的に示すブロック図である。この図2に示すように、ショーケースは、上記構成の他に、第1吹出口センサ31、第2吹出口センサ32、吸込口センサ33、入力手段40及び制御手段20を備えている。
【0022】
第1吹出口センサ31は、図1に示すように、上方吹出口7の近傍に配設してあり、上方吹出口7より吹き出される空気の温度を検出するものである。この第1吹出口センサ31で検出された温度は、温度信号として制御手段20に与えられる。
【0023】
第2吹出口センサ32は、図1に示すように、棚吹出口4a2の近傍に配設してあり、棚吹出口4a2より吹き出される空気の温度を検出するものである。この第2吹出口センサ32で検出された温度は、温度信号として制御手段20に与えられる。
【0024】
吸込口センサ33は、図1に示すように、吸込口6の近傍に配設してあり、吸込口6を通じて吸い込まれる空気の温度を検出するものである。この吸込口センサ33で検出された温度は、温度信号として制御手段20に与えられる。
【0025】
入力手段40は、例えばキーボード、マウス、スイッチ等であり、種々の情報を入力するためのものである。本実施の形態においては、冷却運転、あるいは加熱・冷却運転を行う旨の入力を行うためのものである。
【0026】
制御手段20は、予めメモリ25に格納したプログラムや初期データに従って送風ファン5等の動作を制御するもので、入力処理部21と、送風ファン駆動処理部22、温度設定処理部23及び圧縮機駆動処理部24を備えている。
【0027】
入力処理部21は、入力手段40を通じて入力されたデータや指令、各センサ31,32,33から与えられる温度信号を入力処理し、各部に与えるものである。送風ファン駆動処理部22は、送風ファン5の回転数を増減させて送風量を制御するものである。温度設定処理部23は、収納室2の運転状況により、設定温度を上昇、あるいは下降させる処理を行うものである。圧縮機駆動処理部24は、圧縮機10の周波数を調整して圧縮機10の駆動を制御するものである。
【0028】
図3は、制御手段が実行する運転切換制御処理の処理内容を示すフローチャートである。以下、図3を適宜参照しながら制御手段20が実行する処理内容について説明する。尚、説明の便宜上、ショーケースは冷却運転を行っているものとして説明する。
【0029】
制御手段20は、入力手段40から与えられた加熱・冷却運転を行う旨の指令を入力処理部21を通じて入力処理した場合に(ステップS101:Yes)、送風ファン駆動処理部22を通じて送風ファン5の回転数を減少させて送風量を低減させ、温度設定処理部23を通じて設定温度を高く設定し、圧縮機駆動処理部24を通じて圧縮機10の周波数を低減させる(ステップS102,ステップS103,ステップS104)。その後に手順をリターンさせて今回の処理を終了させる。このように加熱・冷却運転の指令が与えられた場合、ショーケースにおいては、ダンパ部材4a3が後方に向けて伸長となり、背面ダクト4bを塞ぐ。これにより、吸込口6から吸い込まれた空気は、下方ダクト4aを通過してから背面ダクト4bに進入し、蒸発器8で冷却された後に、ダクト棚4aの通風路4a1を通過し、その後に棚吹出口4a2から吹き出される。一方、ダクト棚4aよりも上方の域においては、商品載置棚4に内蔵するヒータ(図示せず)を通電状態にすることにより、当該商品載置棚4に載置する商品を加熱することができる。
【0030】
このように加熱・冷却運転に切り換わる場合に、制御手段20が、送風ファン5の送風量、並びに圧縮機10の周波数を低減させるので、漏れ冷気を少なくすることができ、しかも圧縮機10の駆動の発停回数が少なくなって間隔が長くなってしまうことを回避でき、エネルギー損失を抑制することができる。更に、設定温度を高くするので、加熱・冷却運転の際の冷却域が冷え過ぎてしまうことを防止することができ、これによってもエネルギー損失を抑制することができる。従って、冷却運転を行う場合にも加熱・冷却運転を行う場合においても、エネルギー損失を低減させて省エネルギー化を図ることができる。
【0031】
本実施の形態においては、送風ファン5の送風量を低減させる場合において、次のように送風ファン5の送風量を制御することが好ましい。すなわち、制御手段20は、入力処理部21を通じて第2吹出口センサ32と吸込口センサ33とからそれぞれ温度信号を入力し、第2吹出口センサ32で検出された温度と、吸込口センサ33で検出された温度との差の絶対値が最小となる態様で送風ファン5の駆動量を制御することが好ましい。このような制御を行うことにより、漏れ冷気を最小にすることができ、エネルギー効率に優れたものにできる。
【0032】
尚、図3に基づく説明においては、冷却運転から加熱・冷却運転に切り換わる場合について説明したが、加熱・冷却運転から冷却運転に切り換わる場合には、制御手段20は、上述しものと逆の制御を行えばよい。すなわち、送風ファン駆動処理部22を通じて送風ファン5の回転数を増大させて送風量を多くさせ、温度設定処理部23を通じて設定温度を低く設定し、圧縮機駆動処理部24を通じて圧縮機10の周波数を増大させる。
【0033】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
【0034】
上述した実施の形態では、冷却運転から加熱・冷却運転に切り換わる場合に、送風ファンの送風量等を制御していたが、本発明においては、加熱・冷却運転に切り換わる場合に、送風ファンの送風量等については、外気温度やダクト棚の段数に応じて自動調整するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のように、本発明に係るショーケースの制御装置は、収納室全体の商品を冷却する冷却運転と、前記収納室を複数に区画してそれぞれの域の商品を異なる温度帯に調整する多温度帯運転とを行うのに有用である。
【符号の説明】
【0036】
1 ケース本体
2 収納室
3 空気循環手段
4 空気通路
4a ダクト棚
4a1 通風路
4a2 棚吹出口
4a3 ダンパ部材
5 送風ファン
6 吸込口
7 上方吹出口
8 蒸発器
9 機械室
10 圧縮機
11 凝縮器
12 膨張弁
20 制御手段
21 入力処理部
22 送風ファン駆動処理部
23 温度設定処理部
24 圧縮機駆動処理部
25 メモリ
31 第1吹出口センサ
32 第2吹出口センサ
33 吸込口センサ
40 入力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納室全体の商品を冷却する冷却運転と、前記収納室を複数に区画してそれぞれの域の商品を異なる温度帯に調整する多温度帯運転とを行うショーケースの制御装置において、
前記多温度帯運転を行う場合には、前記収納室の内部と外部との間で空気を循環させる送風手段の送風量、並びに前記送風手段により循環される空気を冷却するための圧縮機の周波数を前記冷却運転を行う場合よりもそれぞれ低減させるとともに、商品の冷却を行う域の設定温度を前記冷却運転を行う場合よりも設定温度を高くする制御手段を備えたことを特徴とするショーケースの制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記収納室の外部から内部に流れる空気の温度と、前記収納室の内部から外部に流れる空気の温度との差の絶対値が最小となる態様で前記送風手段の送風量を制御することを特徴とする請求項1に記載のショーケースの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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