説明

ショーケース

【課題】背面の扉内にダクトを構成することなく、簡素な構造にて陳列室内を効率的に冷却することを可能とするショーケースを提供する。
【解決手段】前面及び背面が開口する陳列室を備えたショーケース1において、陳列室9の背面開口13を開閉自在に閉塞する扉14と、陳列室9の下方に構成され、冷却器42及び送風機43が配設された冷却室21と、陳列室9の前面開口下縁に形成され、送風機の冷気吐出側の冷却室内に連通し、冷気を斜め奥上方に向けて吐出15Aする冷気吐出口44と、陳列室9の背面開口13下縁に形成され、送風機43の冷気吸込側の冷却室21内に連通する冷気吸込口45とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前面及び背面が開口する陳列室を備えたショーケースに関するものであって、特に、陳列室の背面開口は、扉によって開閉自在に閉塞されるショーケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のショーケースは、ショーケースの前面開口から陳列室内に陳列される商品を顧客自らが手にとって商品を選択することができるセルフ販売方式と、ショーケースの背面から販売員が陳列室内の商品を取り出して商品の販売を行う対面販売方式の両者を実現することができるものである。
【0003】
例えば特許文献1に示されるショーケースでは、基台の上面に商品陳列部を構成し、基台の下部に冷却装置を構成する圧縮機等を収納する機械室を形成すると共に、基台の上方には、商品陳列部を上方から覆う陳列室カバー部を設けている。また、基台の下部には、前記圧縮機等と冷却装置を構成する冷却器と冷気循環用の送風機を配設した冷却室を構成している。この陳列室カバー部は、商品陳列部の前面を覆う前壁と、商品陳列部の上面を覆う上部壁と、商品陳列部の後面を開閉自在に閉塞する後面扉と、商品陳列部の両側面を覆う側壁とから構成され、前壁を上方に回動させることで、前面開口のオープンショーケースとして使用することができる。
【0004】
商品陳列部は、冷却室において冷却器によって冷却された冷気を冷却器用送風機によって、基台の上面開口後縁から吐出し、対向する基台の上面開口前縁から吸い込む冷気循環を行うことにより、所定の温度に冷却される。
【0005】
しかしながら、係る構成では、基台の前壁が商品陳列部下部を覆ってしまうため、当該商品陳列部の下部に陳列される商品を前面から視認しがたく、陳列効果が低下してしまう問題がある。また、前壁を開放し、オープンショーケースとして使用した場合には、商品陳列部内に循環される冷気が外部に漏洩しやすく、十分に陳列部内を冷却することができないという問題がある。
【0006】
他方、従来より、開口して使用される陳列室の前面に冷気によるエアーカーテンを形成するオープンショーケースがある。当該オープンショーケースにおいて、上述した如き対面販売を実現するためには、後面開口に開閉自在な扉を設ける必要がある。
【特許文献1】特開2003−47543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した如き構成では、陳列室下方の冷却室背部から冷気を吹き上げ、陳列室天面を経て前面開口上縁から冷気を吐出し、前面開口にエアーカーテンを形成する必要がある。この場合、陳列室内に吐出された冷気流によって確実に前面開口にエアーカーテンを形成するためには、陳列室後面開口に設けられる扉の内部にダクトを形成する必要がある。
【0008】
しかしながら、扉の内部にダクトを形成した場合には、扉の構成が極めて複雑となり、コストの高騰や組立作業が煩雑となる問題を招くこととなる。
【0009】
そこで、本発明は従来の技術的課題を解決するためになされたものであり、背面の扉内にダクトを構成することなく、簡素な構造にて陳列室内を効率的に冷却することを可能とするショーケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のショーケースは、前面及び背面が開口する陳列室を備えたものであって、陳列室の背面開口を開閉自在に閉塞する扉と、陳列室の下方に構成され、冷却器及び送風機が配設された冷却室と、陳列室の前面開口下縁に形成され、送風機の冷気吐出側の冷却室内に連通し、冷気を斜め奥上方に向けて吐出する冷気吐出口と、陳列室の背面開口下縁に形成され、送風機の冷気吸込側の冷却室内に連通する冷気吸込口とを備えたものである。
【0011】
請求項2の発明のショーケースは、上記発明において、陳列室の前面開口下縁における冷気吐出口の前側に、奥上方向に向けて斜めに起立する風向板を設けたものである。
【0012】
請求項3の発明のショーケースは、上記各発明において、陳列室の上方には前面が透明壁にて閉塞されると共に、背面開口が扉にて開閉自在に閉塞されて内部が冷却される第2の陳列室が構成されているものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、前面及び背面が開口する陳列室を備えたショーケースにおいて、陳列室の背面開口を開閉自在に閉塞する扉と、陳列室の下方に構成され、冷却器及び送風機が配設された冷却室と、陳列室の前面開口下縁に形成され、送風機の冷気吐出側の冷却室内に連通し、冷気を斜め奥上方に向けて吐出する冷気吐出口と、陳列室の背面開口下縁に形成され、送風機の冷気吸込側の冷却室内に連通する冷気吸込口とを備えたので、冷却室にて冷却された冷気が、陳列室の前面開口下縁の冷気吐出口から斜め奥上方に吐出され、陳列室内を循環した後、背面開口下縁の冷気吸込口から冷却室内に吸い込まれるという冷気循環を構成することが可能となる。
【0014】
従って、背面の扉内などに格別にダクトを構成する必要がなくなり、構造を簡素化することができる。そのため、コストの高騰を回避することができると共に、組立作業性の向上を図ることができる。
【0015】
また、冷気吐出口から吹き上げられる冷気によって陳列室の前面開口からの外気の侵入を阻害することが可能となり、エアーカーテンの効能も期待できる。特に、前面開口部に冷気吸込口を構成していないため、冷却室内に外気を吸い込み難い構成とすることができ、外気侵入による冷却能力の悪化も抑制することが可能となる。
【0016】
請求項2の発明によれば、上記発明において、陳列室の前面開口下縁における冷気吐出口の前側に、奥上方向に向けて斜めに起立する風向板を設けたので、冷気吐出口から吹き上げられる冷気の指向性を更に良好とすることができる。そのため、冷気を外部に逃がさずに陳列室の奥上方に向かわせることが可能となる。これにより、冷気循環を良好とすることができる。また、冷気が外部に漏洩し難くなると共に、外気を陳列室内に巻き込んでしまう不都合を減少することができる。従って、陳列室内の冷却効率をより一層向上させることができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、上記各発明において、陳列室の上方には前面が透明壁にて閉塞されると共に、背面開口が扉にて開閉自在に閉塞されて内部が冷却される第2の陳列室が構成されているので、第2の陳列室と、その下方に形成される陳列室の二室で、それぞれ別の形態の商品の陳列を実現することができる。
【0018】
即ち、前面が開口されている下の陳列室では、顧客が直接商品を手にとって選択と取り出しを自由に行うことを可能とする販売形式を実現することができると共に、前面が閉塞される上の陳列室(第2の陳列室)では、デリケートな商品を対面販売することを可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。図1は本発明を適用したショーケース1の透視正面図、図2はショーケース1の縦断側面図、図3はショーケース1の平面図、図4はショーケース1の機械室36部分の横断平面図を示している。ショーケース1は、例えば飲食店やスーパーマーケットなどに設置されて、ケーキ類や惣菜などの取扱いがデリケートな商品や、個別包装がなされているサンドイッチなどの惣菜などの冷蔵食品を陳列・貯蔵する冷蔵ショーケースであり、本発明が対象とするショーケースの一種類である。
【0020】
本実施例におけるショーケース1は、前面に開口した断面略コ字状の断熱壁2と、当該断熱壁2の両側面を構成する側板(側壁)6、6とから本体が構成されている。この断熱箱体2は前面に開口する鋼板製の外箱3と、この外箱3内に間隔を存して組み込まれた前面に開口する鋼板若しくは硬質合成樹脂製の内箱4と、これら外箱3及び内箱4間に発泡充填された発泡ポリウレタンからなる断熱材5とから構成されている。側板6は、例えば内部を透視可能とする強化ガラス又は強化プラスチック等の透明壁により構成されている。
【0021】
そして、内箱4内の例えば中央には、断熱壁2の前部から後部に渡って仕切壁7が形成されており、係る仕切壁7の上方には、上陳列室(第2の陳列室)8が形成され、仕切壁7の下方には、下陳列室(陳列室)9が形成されている。本実施例における仕切壁7は、強化ガラス又は強化プラスチック等により構成されており、当該仕切壁7の上面には、上陳列室8の底壁を構成する底板10が設けられている。本実施例における底板10は、例えば強化ガラス又は強化プラスチック等により構成される。
【0022】
上陳列室8に対応する断熱壁2の背面には、後面開口11が形成されており、係る後面開口11は、内部を透視可能とする引き戸式のガラス扉12、12によって開閉自在に閉塞される。また、下陳列室9に対応する断熱壁2の背面にも、後面開口13が形成されており、係る後面開口13は、同じく内部を透視可能とする引き戸式のガラス扉14、14によって開閉自在に閉塞される。
【0023】
また、断熱壁2の前面開口15は、上陳列室8の前面及び上面に対応する位置に、陳列室カバー16が設けられている。この陳列室カバー16は、斜め前下方へ傾斜し、上陳列室8の前面を覆う前壁17と、当該前壁17の上方において、該前壁17に連続するように設けられ、断熱壁2の上壁2Cの前端から上陳列室8の上部を覆う上壁18とから構成されている。当該陳列室カバー16は内部を透視可能とする強化ガラス又は強化プラスチック等(透明壁)で成形されている。
【0024】
そして、陳列室カバー16、断熱壁2の上壁2C、仕切壁7及びガラス扉12にて囲繞される上陳列室8の上部には、上壁2Cと所定間隔を存して仕切板22が取り付けられており、当該仕切板22と上壁2Cとの間には、上冷却室23が形成されている。この上冷却室23内には、詳細は後述する如く上冷却ユニット(第2の冷却ユニット)30を構成する圧縮機(第2の圧縮機)31等と共に、所謂冷凍サイクルを構成する上冷却器(第2の冷却器)32と、上冷気循環用送風機(第2の冷気循環用送風機)33が配設される。
【0025】
そして、仕切板22にて構成される上冷却室23の前方には、照明灯反射板25が設けられており、当該照明灯反射板25の内側には、上陳列室8内を上方から照明するための蛍光灯(照明装置)26が取り付けられている。また、この上陳列室8内には、略水平状態に設置した棚装置24が架設されており、この棚装置24の上面には、商品を陳列可能としている。この棚装置24の下面前部にも、照明灯反射板27が設けられており、当該照明灯反射板27の内側にも、同様に棚装置24の下方に位置する上陳列室8内を上方から照明するための蛍光灯(照明装置)28が取り付けられている。
【0026】
尚、図2において、29は吐出口35付近の陳列室カバー16に結露が発生することを防止するための防露ヒータであり、本実施例では、電気ヒータにより構成される。
【0027】
一方、断熱壁2を構成する下壁2Aの前端には、所定の高さ、本実施例では、ガラス扉14が設けられる後面開口13の下縁高さと略同一の高さにまで起立して構成される前断熱壁2Bが形成されており、当該前断熱壁2Bは、仕切壁7の前端位置よりも所定寸法だけ前方に位置する。これにより、仕切壁7の下端から前断熱壁2Bの上端の間に相当する下陳列室9の前面は、前面開口15Aとされる。
【0028】
そして、下壁2Aの上方には、所定間隔を存してデッキパン20が配設されており、当該デッキパン20と下壁2Aとの間には、下陳列室9の下方に位置する下冷却室21が形成される。この下冷却室21内には、詳細は後述する如く下冷却ユニット(第1の冷却ユニット)40を構成する圧縮機(第1の圧縮機)41等と共に、所謂冷凍サイクルを構成する下冷却器(第1の冷却器)42と、下冷気循環用送風機(第1の冷気循環用送風機)43が配設される。
【0029】
そして、このデッキパン20と、前断熱壁2Bとの間には、下陳列室9の前面開口15A下縁に位置して冷気吐出口44が形成されていると共に、断熱壁2の後面との間には、下陳列室9の背面開口13下縁に位置して冷気吸込口45が形成されている。冷気吐出口44及び冷気吸込口45は、いずれも下冷却室21と連通して構成されている。そして、この冷気吐出口44には、該吐出口44から吐出される冷気を整流し、斜め奥上方に向けて吐出するための複数の整流板46が設けられている。更に、下陳列室9の前面開口15Aの下縁における冷気吐出口44の前側には、奥上方向に向けて斜めに起立する風向板47が設けられている。
【0030】
そして、仕切壁7にて構成される下陳列室9の上面後部には、照明灯反射板37が設けられており、当該照明灯反射板37の内側には、下陳列室9内を上方から照明するための蛍光灯(照明装置)38が取り付けられている。
【0031】
また、ショーケース1の背面には、上陳列室8と下陳列室9を区画形成する仕切壁7の後方に位置すると共に、後面開口11及び13の間に位置して後方に延出して形成される作業台19が配設されている。
【0032】
一方、断熱壁2の下壁2Aの下方には、機械室36が形成されている。この機械室36は、前後面及び両側面が機械室パネル50にて囲繞されることにより構成されると共に、当該後面を構成する機械室パネル50Aには、図示しない複数の外気吸込口が形成されている。また、側面を構成する機械室パネル50B、50Bには、本実施例では後部に位置して図示しない外気吐出口が形成されている。
【0033】
機械室36内には、上冷却ユニット30を構成する圧縮機31と、下冷却ユニット40を構成する圧縮機41と、これら両冷却ユニット30、40に共用される凝縮器39と、当該凝縮器39の近傍に位置して凝縮器用ファン48等が配設される。
【0034】
上冷却ユニット30を構成する冷媒回路(第2の冷媒回路)51は、図5に示すように圧縮機31と、凝縮器39と、減圧装置としての膨張弁52と、冷却器32とを配管により順次環状に接続して構成されると共に、当該回路51内には所定量の冷媒が封入されている。また、下冷却ユニット40を構成する冷媒回路(第1の冷媒回路)53は、圧縮機41と、凝縮器39と、減圧装置としての膨張弁54と、冷却器42とを配管により順次環状に接続して構成されると共に、当該回路53内には所定量の冷媒が封入されている。
【0035】
ここで、凝縮器39は、上冷却ユニット30の冷媒回路51と下冷却ユニット40の冷媒回路53のそれぞれの冷媒配管に独立して接続される冷媒通路(2パス)を有しており、一体に構成されている。そのため、当該凝縮器39の近傍に配設される凝縮器用ファン48は、上冷却ユニット30の凝縮器と下冷却ユニット40の凝縮器とを同時に空冷する。
【0036】
本実施例において、凝縮器39は、図4に示すように、機械室36の後部中央に配設されると共に、当該凝縮器39の前方に位置して各圧縮機31、41が左右に並設されている。そして、これら凝縮器39と圧縮機31、41間に位置して機械室36の後面を構成する機械室パネル50Aに形成された前記外気吸込口から機械室36内に外気を吸い込むための凝縮器用ファン48が設けられている。
【0037】
そして、この凝縮器39の両側方には、機械室36の両側面を構成する機械室パネル50Bに形成された前記外気吐出口に面して複数の防露用ファン55が配設されている。この防露用ファン55は、凝縮器用ファン48によってショーケース1後面から機械室36内に吸い込まれた空気を機械室36の側面を構成する機械室パネル50Bに形成された外気吐出口から外部に吐出する送風手段である。
【0038】
機械室36の両側面を構成する機械室パネル50Bの側面には、各外気吐出口に対応する位置に、該側面とは所定の間隔を存してダクト部材56が設けられている。このダクト部材56は、機械室パネル50B側を開口面とする断面略コ字状を呈しており、本実施例では、機械室36下部から上陳列室8の両側面6(具体的には、棚装置24の架設高さ)にまで延在して構成されている。これによって、上面に開口し、機械室パネル50Bに形成された外気吐出口を介して機械室36内と連通すると共に、下陳列室9の両側面6を通過して、上陳列室8の両側面6の外面に至る排気ダクト57が構成される。
【0039】
以上の構成により、本実施例のショーケース1の冷却運転について説明する。先ず初めに、上陳列室8を冷却する上冷却ユニット30の運転が開始されると、圧縮機31の運転により圧縮機31の吐出側の冷媒配管から吐出された高温高圧のガス冷媒は、凝縮器39に流入し、冷媒を凝縮液化する。この凝縮器39から流出した液化冷媒は、膨張弁52により減圧された後、上冷却器32に流入する。
【0040】
そして、上冷却器32に流入した冷媒は、蒸発し、周囲から熱を奪って冷却作用を発揮する。このとき、上冷気循環用送風機33が運転されることにより、上冷却器32で冷却された冷気は、上冷気循環用送風機33にて吐出口34から上陳列室8の前部(前壁17)に向けて吐出された後、該上陳列室8内を循環し、上陳列室8の上後部に形成された吸込口35から上冷却室23内に帰還する(図2では、冷気の流れを黒塗り矢印にて示す)。従って、上陳列室8内は、所定の温度にまで冷却され、上陳列室8内に陳列された商品を所定温度に冷却することができる。そして、上冷却器32から流出した冷媒は、圧縮機31に帰還する。
【0041】
一方、下陳列室9を冷却する下冷却ユニット40の運転が開始されると、圧縮機41の運転により圧縮機41の吐出側の冷媒配管から吐出された高温高圧のガス冷媒は、凝縮器39に流入し、冷媒を凝縮液化する。この凝縮器39から流出した液化冷媒は、膨張弁54により減圧された後、下冷却器42に流入する。
【0042】
そして、下冷却器42に流入した冷媒は、蒸発し、周囲から熱を奪って冷却作用を発揮する。このとき、下冷気循環用送風機43が運転されることにより、下冷却器42で冷却された冷気は、下陳列室9の前面開口15A下縁に形成される冷気吐出口44から下陳列室9の奥上方に向けて吐出される。下陳列室9内に吐出された冷気は、該陳列室9内を循環し、下陳列室9の後面開口13下縁に形成された冷気吸込口45から下冷却室21内に帰還する(図2では、冷気の流れを黒塗り矢印にて示す)。従って、下陳列室9内は、所定の温度にまで冷却され、下陳列室9内に陳列された商品を所定温度に冷却することができる。そして、下冷却器42から流出した冷媒は、圧縮機41に帰還する。
【0043】
従って、下陳列室9の背面開口13に設けられるガラス扉14内などに格別にダクトを構成する必要が無くなり、構造を簡素化することができるようになる。そのため、コストの高騰を回避することができると共に、組立作業性の向上を図ることができる。
【0044】
また、下陳列室9の前面開口15A下縁に形成される冷気吐出口44から吹き上げられる冷気によって下陳列室9の前面開口15Aからの外気の侵入を阻害することが可能となり、エアーカーテンの効能も期待できる。更に、前面開口部に冷気吸込口を構成していないため、下冷却室21内に外気を吸い込み難い構成とすることができ、外気侵入による冷却能力の悪化も抑制することが可能となる。
【0045】
特に、本実施例におけるショーケース1では、下陳列室9の前面開口15A下縁に冷気吐出口44の前側に位置して奥上方向に向けて斜めに起立する風向板47を設けたので、冷気吐出口44から吹き上げられる冷気の指向性を更に良好とすることができる。そのため、冷気を外部に逃がさずに下陳列室9の奥上方に向かわせることが可能となる。これにより、冷気循環を良好とすることができる。また、冷気が外部に漏洩し難くなると共に、外気を下陳列室9内に巻き込んでしまう不都合を減少することができる。従って、下陳列室9内の冷却効率をより一層向上させることができる。
【0046】
また、下陳列室9の前面開口15A下縁に形成された冷気吐出口44から吐出された比重の重い冷気は、実際には、冷気吐出口44から斜め奥上方に吹き上げられた後、下陳列室9内の低い領域を通過して循環しようとする。そのため、図2に示すようなロードラインL以下の領域、例えば、下陳列室9のデッキパン20上に例えばサンドイッチ等の一面に陳列することで、陳列効果が向上されるような商品を陳列した場合に、良好に冷却することが可能となる。
【0047】
他方、凝縮器用ファン48が運転されることにより、機械室36の後面を構成する機械室パネル50Aに形成された外気吸込口からショーケース1後方の外気が機械室36内に吸引される(図2において白抜きの矢印にて示す)。機械室36内に吸引された空気は、当該機械室36内に配設される凝縮器39、各圧縮機31、41を空冷する。
【0048】
次に、凝縮器39等によって温められた空気(暖気)は、機械室36の両側部に設けられる各防露用ファン55によって、凝縮器用ファン48の吸引方向とは異なる方向、即ち、当該凝縮器用ファン48によってショーケース1後方から機械室36内へ吸引された空気を、機械室36の両側方に向けて吐出される。
【0049】
本実施例では、防露用ファン55に面して設けられる側面を構成する機械室パネル50Bには、外気吐出口が形成されていると共に、機械室36の外側両側面には、上述した如きダクト部材56によって外気吐出口と連通する排気ダクト57が形成されているため、防露用ファン55によって機械室36の両側方に吐出された暖気は、排気ダクト57内に吐出される。
【0050】
排気ダクト57内に吐出された暖気は、当該排気ダクト57内を上昇し、上端開口から外部に排出される(図1において白抜きの矢印にて示す)。これにより、機械室36の後面から機械室36内に吸引された空気を、ショーケース1の前面や背面に排出することなく、ショーケース1の両側面から効率的に排出することが可能となる。
【0051】
そのため、ショーケース1の前面に立つ顧客や、対面販売を行う場合においてショーケース1の後面に立つ販売員の足下に、暖気が排出されることによる不快感を解消することが可能となる。
【0052】
また、機械室36の両側部からショーケース1の側方に向けて吐出された暖気は、排気ダクト57内をショーケース1の側方に沿って上昇することとなり、透明壁にて構成された両側面6、6の外面を効果的に加熱することが可能となる。従って、これら側面6に結露が発生することを未然に回避することが可能となり、当該側面6が曇ってしまい各陳列室8、9内が透視しづらくなることによる陳列効果の低下を抑制することができる。
【0053】
更にまた、本実施例におけるダクト部材56は、下陳列室9の両側面を通過して上陳列室8の中途の高さ位置の側面6外面に至る位置まで構成されているため、各防露用ファン55によって加速された暖気を下陳列室9の上方に構成される上陳列室8の側方にまで円滑に吐出することが可能となる。これにより、排気ダクト57を通過する暖気によって、これら側面6の外面を円滑に加熱することができ、結露の発生を効果的に抑止することが可能となる。
【0054】
本実施例におけるショーケース1は、上陳列室8には、陳列室カバー16(透明壁)にて閉塞されると共に、背面開口11は、扉12にて開閉自在に閉塞されると共に、下陳列室8には、前面が開口(前面開口15A)し、背面開口13は、扉14にて開閉自在に閉塞され、いずれの陳列室8、9も内部を冷却して用いられるものであるため、それぞれ別の形態の商品の陳列を実現することができる。
【0055】
即ち、前面が開口されている下陳列室9では、例えば、個別包装等がなされているサンドイッチ等の商品を陳列し、顧客が直接商品を手にとって選択と取り出しを自由に行うことを可能とする販売形式を実現することができると共に、前面が閉塞される上陳列室8では、デリケートな商品、例えば洋菓子等の商品を対面販売することを可能とすることができる。
【0056】
次に、図6を参照して本実施例のショーケース1の制御装置Cの電気回路について詳述する。制御装置Cは、下冷却ユニット40の電気回路(第1の電気回路)C1と、上冷却ユニット30の電気回路(第2の電気回路)C2とから構成されている。
【0057】
電気回路C2は、電源ACに接続される電源プラグ(第2の電源プラグ)61には、下冷却ユニット40の運転スイッチ63が補助リレー64と直列に接続され、該リレー64と並列にランプ65が接続されている。また、電源プラグ61には、蛍光灯スイッチ68が上陳列室8及び下陳列室9に配設される各蛍光灯26、28、38の安定器66と直列に接続され、該安定器66と並列にランプ67が接続されている。
【0058】
また、電源プラグ61には、上冷却ユニット30の圧縮機31の圧縮機モータ31MをON−OFFするマグネットスイッチ69の常開接点69A、始動コンデンサ70、運転コンデンサ71、圧縮機モータ始動リレー72、圧縮機モータ用オーバーロードリレー73が直列に接続されている。
【0059】
更に、電源プラグ61には、後述する補助リレー75のリレー接点75Aが直列に接続されており、当該リレー接点75Aの後段には、以下の回路が接続される。即ち、基板用トランス76から電源を得ている電子コントローラ77がマグネットスイッチ69と直列に接続されている。また、上冷気循環用送風機33のファンモータ33M、上陳列室8に設けられる各種電気ヒータ78がそれぞれ直列に接続されている。また、トランス79を介して防露ヒータ29が直列に接続されている。
【0060】
他方、電気回路C1は、電源ACに接続される電源プラグ(第1の電源プラグ)60には、上冷却ユニット30の運転スイッチ80が補助リレー75と直列に接続され、該リレー75と並列にランプ81が接続されている。また、電源プラグ60には、補助リレー75の常開接点75B及び電気回路C2に接続される補助リレー64の常開接点64Aが並列に接続されており、これらには、凝縮器用ファン48のファンモータ48M及び防露用ファン55のファンモータ55Mがそれぞれ接続されている。
【0061】
また、電源プラグ60には、下冷却ユニット40の圧縮機41の圧縮機モータ41MをON−OFFするマグネットスイッチ82の常開接点82A、始動コンデンサ83、運転コンデンサ84、圧縮機モータ始動リレー85、圧縮機モータ用オーバーロードリレー86が直列に接続されている。
【0062】
更に、電源プラグ60には、前記補助リレー64のリレー接点64Bが直列に接続されており、当該リレー接点64Bの後段には、以下の回路が接続される。即ち、基板用トランス87から電源を得ている電子コントローラ88がマグネットスイッチ82と直列に接続されている。また、下冷気循環用送風機43のファンモータ43M、下陳列室9に設けられる各種電気ヒータ89がそれぞれ直列に接続されている。
【0063】
上述した如き構成により、各電気回路C1、C2の電源プラグ60、61をそれぞれ例えばAC100V電源の給電用コンセントに接続し、これらに電源ACが印加されるものとすると、電気回路C1に接続される上冷却ユニット用の運転スイッチ80をONとすることで、補助リレー75に通電され、これによって、電気回路C2に設けられるリレー接点75A及び電気回路C1に設けられるリレー接点75Bが閉じる。
【0064】
電気回路C2のリレー接点75Aが閉じることで、電子コントローラ77の制御に基づき、マグネットスイッチ69への通電制御が可能となり、マグネットスイッチ69に通電されると、上冷却ユニット30の圧縮機31の圧縮機モータ31MをON−OFFするマグネットスイッチ69の常開接点69Aが閉じ、これによって、圧縮機モータ31Mが運転される。また、電気回路C2のリレー接点75Aが閉じることで、上冷気循環用送風機33のファンモータ33Mに通電され、上冷気循環用送風機33が運転される。これと共に、上陳列室8に設けられる各種電気ヒータ78及び防露ヒータ29にも通電される。尚、これら上冷気循環用送風機33のファンモータ33M及び電気ヒータ78、防露ヒータ29は、上冷却ユニット用の運転スイッチ80がONされている限り、連続通電とされる。
【0065】
また、電気回路C2のリレー接点75Aが閉じると同時に、電気回路C1のリレー接点75Bも閉じる。これによって、凝縮器用ファン48のファンモータ48M及び防露用ファン55のファンモータ55Mに通電が行われ、上冷却ユニット用の運転スイッチ80がONされている限り、連続運転される。
【0066】
他方、上記と同様に各電気回路C1、C2の電源プラグ60、61が給電用コンセントに接続されている状態で、電気回路C2に接続される下冷却ユニット用の運転スイッチ63をONとすることで、補助リレー64に通電され、これによって、電気回路C1に設けられるリレー接点64A及び64Bが閉じる。
【0067】
リレー接点64Bが閉じることで、電子コントローラ88の制御に基づき、マグネットスイッチ82への通電制御が可能となり、マグネットスイッチ82に通電されると、下冷却ユニット40の圧縮機41の圧縮機モータ41MをON−OFFするマグネットスイッチ82の常開接点82Aが閉じ、これによって、圧縮機モータ41Mが運転される。また、リレー接点64Bが閉じることで、下冷気循環用送風機43のファンモータ43Mに通電され、下冷気循環用送風機43が運転される。これと共に、下陳列室8に設けられる各種電気ヒータ89にも通電される。尚、これら下冷気循環用送風機43のファンモータ43M及び電気ヒータ89は、下冷却ユニット用の運転スイッチ63がONされている限り、連続通電とされる。
【0068】
また、リレー接点64Bが閉じると同時に、リレー接点64Aも閉じる。これによって、凝縮器用ファン48のファンモータ48M及び防露用ファン55のファンモータ55Mに通電が行われ、下冷却ユニット用の運転スイッチ63がONされている限り、連続運転される。
【0069】
そして、少なくとも電気回路C2の電源プラグ61が給電用コンセントに接続されている状態で、電気回路C2に接続される蛍光灯スイッチ68をONとすることで、安定器66と、上陳列室8に設けられる蛍光灯26、28及び下陳列室9に設けられる蛍光灯38への給電が可能となり、各蛍光灯26、28、38を点灯することが可能となる。
【0070】
上述した如き構成により、一方の電気回路の電源プラグのみを給電用コンセントに接続した場合には、例えば、電源プラグ61のみを給電用コンセントに接続した場合には、下冷却ユニット40の運転スイッチ63をONとしても、電気回路C1の各機器には、電源が供給されていないため、電子コントローラ88、下冷却ユニット40の圧縮機モータ41M、下冷気循環用送風機43のファンモータ43M、下陳列室9に設けられる各種電気ヒータ89、凝縮器用ファン48のファンモータ48M及び防露用ファン55のファンモータ55Mに通電を行うことができない。また、当該電源プラグ61より電源供給が行われる各機器、即ち、上冷却ユニット30の圧縮機モータ31M、上冷気循環用送風機33のファンモータ33M、上陳列室8に設けられる各種電気ヒータ78及び防露ヒータ29は、電源回路C1に接続されている上冷却ユニット用の運転スイッチ80への給電が行われないため、通電することができない。
【0071】
但し、この場合には、蛍光灯26、28、38及び当該蛍光灯スイッチ68が同一の電気回路C2に設けられているため、電源プラグのみを給電用コンセントに接続した場合であっても、蛍光灯26、28、38を点灯することが可能となる。
【0072】
他方、電源プラグ60のみを給電用コンセントに接続した場合には、上冷却ユニット30の運転スイッチ80をONとしても、電気回路C2の各機器には、電源が供給されていないため、電子コントローラ77、上冷却ユニット30の圧縮機モータ31M、上冷気循環用送風機33のファンモータ33M、上陳列室8に設けられる各種電気ヒータ78及び防露ヒータ29に通電を行うことができない。また、当該電源プラグ60より電源供給が行われる各機器、即ち、下冷却ユニット40の圧縮機モータ41M、下冷気循環用送風機43のファンモータ43M、下陳列室9に設けられる各種電気ヒータ89は、電源回路C2に接続されている下冷却ユニット用の運転スイッチ63への給電が行われないため、通電することができない。
【0073】
このように、電気回路C1と電気回路C2により構成される制御装置Cは、電源プラグ60、61の双方が電源に接続されている場合に限り、各冷却ユニットの圧縮機31、41の運転を許容するので、各電源プラグ60、61が受け持つ電源容量を制限しつつ、一方の電源プラグ60又は61を電源に接続し忘れてしまい、凝縮器用ファン48Mや防露用ファン55Mに給電ができない場合にまで、何れかの圧縮機31又は41が運転してしまう不都合を回避することが可能となる。
【0074】
これにより、凝縮器用ファン48Mが停止している場合にまで何れかの圧縮機が運転してしまい、当該圧縮機へ過負荷が生じ、当該冷却装置の損傷を招く不都合を未然に回避することが可能となる。従って、独立した冷媒回路51、53を備えた各冷却ユニット30、40を構成する各圧縮機31、41が別々の電源プラグ60、61から給電が行われる場合であっても、安全に冷却運転を実行することが可能となる。
【0075】
本実施例における構成によれば、各蛍光灯26、28、38に電源を供給するための電源プラグ61が電源に接続されている場合は、これら蛍光灯の点灯を許容するので、当該低温ショーケース1を冷却運転せずに使用する場合(非冷使用)に、各蛍光灯26、28、38に電源を供給するための電源プラグ61を電源に接続するのみで、各陳列室8、9内を照明することが可能となり、利便性の向上を図ることができる。
【0076】
尚、蛍光灯26等に給電するための回路は、本実施例では電気回路C2に設けているが、これに限定されるものではなく、電気回路C1に設けても同様の効果を得ることができる。
【0077】
但し、本実施例の如く、蛍光灯26等に給電するための回路を電気回路C2に設けることによって、凝縮器用ファン48のファンモータ48Mや防露用ファン55のファンモータ55Mが接続される電気回路C1と分けることが可能となり、各電源プラグ60及び61が受け持つ電気容量の均等化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】ショーケースの透視正面図である。
【図2】ショーケースの縦断側面図である。
【図3】ショーケースの平面図である。
【図4】ショーケースの機械室部分の横断平面図である。
【図5】ショーケースの冷媒回路図である。
【図6】ショーケースの制御装置の電気回路図である。
【符号の説明】
【0079】
1 ショーケース
2 断熱箱体(断熱壁)
6 側板
7 仕切壁
8 上陳列室(第2の陳列室)
9 下陳列室(陳列室)
10 底板
11、13 後面開口
12、14 ガラス扉
15 前面開口
16 陳列室カバー
17 前壁
18 上壁
20 デッキパン
21 下冷却室
22 仕切板
23 上冷却室
24 棚装置
30 上冷却ユニット(第2の冷却ユニット)
31 圧縮機(第2の圧縮機)
32 上冷却器(第2の冷却器)
33 上冷気循環用送風機(第2の冷気循環用送風機)
36 機械室
40 下冷却ユニット(第1の冷却ユニット)
41 圧縮機(第1の圧縮機)
42 下冷却器(第1の冷却器)
43 下冷気循環用送風機(第1の冷気循環用送風機)
44 冷気吐出口
45 冷気吸込口
46 整流板
47 風向板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面及び背面が開口する陳列室を備えたショーケースにおいて、
前記陳列室の背面開口を開閉自在に閉塞する扉と、
前記陳列室の下方に構成され、冷却器及び送風機が配設された冷却室と、
前記陳列室の前面開口下縁に形成され、前記送風機の冷気吐出側の前記冷却室内に連通し、冷気を斜め奥上方に向けて吐出する冷気吐出口と、
前記陳列室の背面開口下縁に形成され、前記送風機の冷気吸込側の前記冷却室内に連通する冷気吸込口とを備えたことを特徴とするショーケース。
【請求項2】
前記陳列室の前面開口下縁における前記冷気吐出口の前側に、奥上方向に向けて斜めに起立する風向板を設けたことを特徴とする請求項1に記載のショーケース。
【請求項3】
前記陳列室の上方には前面が透明壁にて閉塞されると共に、背面開口が扉にて開閉自在に閉塞されて内部が冷却される第2の陳列室が構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のショーケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−29409(P2008−29409A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203576(P2006−203576)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】