説明

シリアルデータ送受信方法及びシリアルデータ送受信機器

【課題】 データ通信を行う機器が複数台接続されたシリアルバス上において、データ転送方式に見合ったデータ処理方法を事前に選択することによって、データ転送の高速化とCPUに対する負荷の低減を可能とするシリアルデータ送受信機器を提供する。
【解決手段】 PC等のイニシエータ機器100とHDD等のターゲット機器101とが接続されたシリアルバス3上において、イニシエータ機器100には、ターゲット機器の種類、データ転送能力、対応プロトコル等の送受信情報を取得し解析する機器情報解析手段105と、ターゲット機器105のデータ転送方法に対して有効であると判断されたデータ処理手法を選択するデータ制御方法選択手段106とを備えている。ターゲット機器105からのデータ転送の順番は、選択されたデータ処理手法で予想される順となり、データ転送を高速化しCPUに対する負荷を低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、送受信装置、特に、複数のデータ通信可能な機器がシリアルバスで繋がれた系(システム)において、一方的に又は互いにシリアルデータを転送するシリアルデータ送受信方法及びシリアルデータ送受信機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル信号処理技術の進展及びメディアの異なる機器間のデータ共有の必要性が高まるに従って、よく知られたIEEE1394シリアルバス搭載の機器が数多く商品化されている。IEEE1394シリアルバス上に接続された複数の機器は、バス上において各機器固有のノード番号を割り当てられており、相手のノード番号を指定することにより、指定された機器に対して所望のパケットを送信することができる。
【0003】
ここに、一般的なデータの流れのうち、図5及び図6に示す模式図を参照して、送信側のノードから受信側のノードへデータを書き込む、いわゆるライトトランザクションと呼ばれる動作について説明する。尚、トランザクションには2通りの方式が有り、一つはユニファイドトランザクションと呼ばれる方式であり、もう一つはスプリットトランザクションと呼ばれる方式である。
【0004】
まず、ユニファイドトランザクション方式について説明する。図5は、最も単純な前記IEEE1394シリアルバス上に2台のノードが接続された場合に、ユニファイドトランザクションにおけるライトトランザクション動作の一例を示す模式図である。図5において、200は送信側ノード、201は受信側ノード、202及び205は互いに異なるデータ送信パケット、203及び206はデータ受信完了通知信号、204はビジー状態通知信号である。
【0005】
ユニファイドトランザクションにおけるライトトランザクション動作において、まず、送信側ノード200は、データ送信パケット202を受信側ノード201へ送信する。受信側ノード201では、データ送信パケット202を受信可能であれば、データ受信完了通知信号203を送信側ノード200へ送信し、パケットの転送が完了する。一方、受信側ノード201で、次のデータ送信パケット205#1を受信不可能であれば、受信できなかったことを示すビジー状態通知信号204を送信側ノード200へ送信する。ビジー状態通知信号204を受信した送信側ノード200は、準備ができ次第、再度同一のデータ送信パケット205#2を送信し、受信側ノード201からデータ受信完了通知信号206を受信すれば、パケットの転送が完了する。ここで、送信側ノード200が、再度、ビジー状態通知信号204を受信すれば、再度同一のデータ送信パケット205#3(図示せず)を送信する。このようして、送信側ノード200は、受信側ノード201からデータ受信完了通知信号206を受信するまで、送信データパケット205の送信を繰り返すことで、所望のパケットの送信を行うことができる。
【0006】
次に、スプリットトランザクションを説明する。図6は、図5と同様、最も単純なIEEE1394シリアルバス上に2台のノードが接続された場合に、スプリットトランザクションを用いたライトトランザクション動作の一例を示す模式図である。図6において、301は送信側ノード、302は受信側ノード、303及び306は互いに異なるデータ送信パケット、308及び309は待ち状態通知信号、304及び307はデータ受信完了通知信号、305はビジー状態通知信号、310及び311はデータ受信完了パケットである。
【0007】
スプリットトランザクションにおけるライトトランザクション動作において、まず、送信側ノード301は、データ送信パケット303を受信側ノード302へ送信する。受信側ノード302では、データ送信パケット303を受信可能であっても、待ち状態通知信号308を送信し、その後、データ受信完了パケット310を送信側ノード301へ送信し、前記パケットに対する応答として送信側ノード301はデータ受信完了通知信号304を送信し、パケットの転送が完了する。
【0008】
一方、受信側ノード302で、次のデータ送信パケット306#1を受信不可能であれば、受信できなかったことを示すビジー状態通知信号305を送信側ノード301へ送信する。ビジー状態通知信号305を受信した送信側ノード301は、準備ができ次第、再度同一のデータ送信パケット306#2を送信し、受信側ノード302から待ち状態通知信号309を受信すれば、前述のようにデータ受信完了パケット311を受信し、前記パケットに対するデータ受信完了通知信号307を送信する。また、データ送信パケット306#2に対する受信側ノード302の応答がビジー状態通知信号であった場合には、再度図示しないデータ送信パケット306#3を送信する。尚、パケットの再送信回数は規格や実装手法に依るので、ここでは言及しない。このようして、送信側ノード301は、受信側ノード302から待ち状態通知信号309とデータ受信完了パケット311を受信するまで、送信データパケット306の送信を繰り返すことで、所望のパケットの送信を行うことができる。
【0009】
また、前記IEEE1394の上位プロトコルとしては、SBP−2が良く知られている。SBP−2は、イニシエータ機器とターゲット機器との2者間においてデータの送受信を行うことを目的としているプロトコルである。
【0010】
ここで、SBP−2の動作について簡単に説明する。イニシエータ機器とターゲット機器間での遣り取りについては、イニシエータ機器側が図7に図示するOperation Request Block(以下、ORBと称す)と呼ばれる、SBP−2で規定されたManagement Function又はSCSIのコマンドをほぼそのままの形で含んだデータをあるアドレス空間に設置し、当該アドレス空間をターゲット機器に通知し、ターゲット機器が上記通知されたアドレス空間上のORBを取得することで行われる。ここで、ターゲット機器は、取得した前記ORB内のManagement Function又はSCSIコマンドに対応したデータ送受信や各種初期化等の動作を行い、ORB記載の要求コマンド通りの動作を終えた後、応答完了をイニシエータ機器に通知する形式で、動作は進行する。
【0011】
具体的な動作としては、まず、イニシエータ機器とターゲット機器が接続された場合、IEEE1394機器として、IEEE1212にて規定されている48bitで表される空間のうち、機器固有情報が書かれているConfiguration_ROMと呼ばれる1024バイトの空間の情報の中で必要なものを、少なくともイニシエータ側機器は取得する。イニシエータ機器は、取得した相手機器の情報から相手機器がプロトコルSBP−2を搭載したターゲット機器であることを認識した場合、LOGINコマンドを含んだORBを当該ターゲット機器に取得させ、必要に応じて数回のネゴシエーションを経て互いにターゲット機器とイニシエータ機器から構成されるSBP−2の機器として接続される。
【0012】
次に、イニシエータ機器からターゲット機器へのデータ送信は、所望のデータを自身のアドレス空間に配置し、ORBにWRITEコマンドとデータ長、及びデータを書き込みたいターゲット側機器の論理アドレスを書き込むことで行われる。ページテーブルを使用しないのであれば、前記自身のアドレス空間をORBにそのまま書き込む。また、ページテーブルを使用するのであれば、ページテーブルデータを配置したアドレス及びページテーブル数をORBに書き込み、ターゲット機器にORB取得を促すパケットを送信し、ターゲット機器に当該ORBを取得させ、イニシエータ機器はターゲット機器との間でページテーブルについてのデータ転送を行う。このとき、WRITEコマンド動作はターゲット機器よりイニシエータ機器へのREAD_REQUEST動作形式にて行われる。
【0013】
次に、ターゲット機器からイニシエータ機器へのデータ転送は、ORBにREADコマンドとデータ長、及び取得したいターゲット側機器のデータが配置されている論理アドレスを書き込むことで行われる。ページテーブルを使用しないのであれば、データを書き込んで欲しい自身のアドレス空間をORBに書き込む。また、ページテーブルを使用するのであれば、ページテーブルデータを配置したアドレス、及びページテーブル数をORBに書き込み、ターゲット機器にORB取得を促すパケットを送信し、ターゲット機器に当該ORBを取得させ、ターゲット機器はイニシエータ機器との間でページテーブルデータのデータ転送を行う。このとき、READコマンド動作は、ターゲット機器よりイニシエータ機器へのWRITE−REQUEST動作形式にて行われる。
【0014】
例えば、前述のIEEE1394シリアルバスを使用してPCとCD−ROMドライブを接続し、SBP−2プロトコルを用いてファイルデータをPCよりCD−ROMに書き込む場合、既に述べたようにイニシエータ機器であるPCに対してターゲット機器であるCD−ROMドライブが、READ_REQUESTパケットを発行することで書き込みが行われる。このとき、ターゲット機器としては自身のREAD_REQUESTによってデータを取得することになるが、READ_REQUEST発行のタイミングはタイムアウトが発生しない限り任意である。また、連続データの転送においても、ターゲット機器の都合によっては同一データを重複して要求することも可能である。また、同様にターゲット機器の都合によっては、連続データ転送において、データのアクセス順番を入れ替えたりすることも可能となっている。実際、前記現象は市販の多くの記録可能なHDD、CD及びDVDドライブ等に見られる現象である。
【0015】
このような現象が発生した場合、使用可能なメモリが少ない、或いはキャッシュフローが整備されていないイニシエータ機器によっては、データ転送要求が予想していた順番でないことがある。その結果、データ転送に応答するためにデータを内部でDMA転送等にて準備を行わなければならず、CPUの負荷増大及び転送速度の低下を招き、データ転送の効率を著しく下げてしまうという問題が生じる。この問題を未然に防ぐためには、イニシエータ機器側にデータキャッシュとして使用可能なメモリを充分に設置し、高速な内部DMA転送を確立させ、且つ動作に余裕を持たせたCPUの選択が必須となるが、コストと効果の面から勘案すると、こうした方策を採用することは難しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
そこで、データ通信を行う機器が複数台接続されたシリアルバス上において、データ転送の順番を受信側で予想される順番と同じとし、データ転送方式に見合ったデータ処理方法を採ることを可能にする点で解決すべき課題がある。
【0017】
この発明の目的は、データ通信を行う機器が複数台接続されたシリアルバス上において、データ転送の順番が異なることに起因した無駄を省いた処理方法を選択可能とし、そうしたデータ処理方法の選択によって、データ転送の高速化やCPUに対する負荷の低減も合わせて見込むことが可能なシリアルデータ送受信方法及びシリアルデータ送受信機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するため、本発明によるシリアルデータ送受信機器は、データ通信を行う機器が複数台接続されたシリアルバス上において、相手機器の種類、データ転送能力、対応プロトコル等の送受信情報を取得し解析する機器情報解析手段と、相手機器より受け取ったデータを処理するデータ処理手法を選択するデータ制御方法選択手段とを備え、送受信情報は相手機器のデータ転送方法についての情報を含んでおり、データ制御方法選択手段は、機器情報解析手段が取得し解析した送受信情報から得られた相手機器の前記データ転送方法に対して有効であると判断されたデータ処理手法を選択することを特徴としている。
【0019】
また、本発明によるシリアルデータ送受信方法は、シリアルバス上に接続される複数台のデータ通信を行う機器のうち相手側となる機器の種類、データ転送能力、対応プロトコル等からなる送受信情報に相手機器のデータ転送方法に関する情報を含めておき、受信する側の機器は送受信情報を取得・解析し、送受信情報に含まれるデータ転送方法に基づいて、相手機器より受け取ったデータに対して有効であると判断されたデータ処理手法を選択することを特徴としている。
【0020】
上記のように構成されたシリアルデータ送受信方法及び機器によれば、シリアルバス上において接続された複数台の機器間では、送受信情報の中にデータ転送元の機器のデータ転送方式についての情報がデータ転送先の機器に事前に伝えられる。シリアルデータ送受信機器の場合は、データ転送先の機器に備わる機器情報解析手段は、相手機器の種類、データ転送能力、対応プロトコル等の送受信情報を取得し解析し、データ制御方法選択手段は、取得・解析された送受信情報から得られたデータ転送元である相手機器のデータ転送方法に対して有効であると判断されたデータ処理手法を選択する。シリアルデータ送受信方法の場合には、受信する側の機器は送受信情報を取得・解析し、送受信情報に含まれるデータ転送方法に基づいて、相手機器より受け取ったデータに対して有効であると判断されたデータ処理手法を選択する。送受信情報は、機器間を接続した際に交換される通信プロトコルの一部分を利用して行うことが可能である。
【0021】
ターゲット機器がイニシエータ機器から取得したページテーブルの順番を遵守してデータ通信を行うことが可能である場合、その事実をイニシエータ機器が知ることにより、以後、イニシエータ機器側では指定ページテーブル等の順番通りにアクセスがあると予測可能である。これは、WRITE動作、READ動作に関わらず、ターゲット機器がアクセスする未来のデータアドレスを絶対的に予測できるということと等価である。このように、予想していた順番でのデータ転送を行えるようになるので、キャッシュ動作を非常に有効に働かせることが可能となる。また、キャッシュが外れることも無いので、キャッシュフローも簡略化することが可能となり、CPUの負荷も軽減される。
【0022】
このシリアルデータ送受信機器において、前記シリアルバスをIEEE1394とすることができる。シリアルバスとして、映像データ等の高速通信が可能なIEEE1394を選択することが可能である。
【0023】
上記のシリアルデータ送受信機器において、送受信情報を、機器の接続の際に機器間で遣り取りされるシリアルデータに含ませることができる。機器をシリアルバスに接続する際に、送受信情報を機器間で遣り取りされるシリアルデータの中に含ませることで、機器の接続の際に、伝達された送受信情報に基づいてデータ転送方式等の準備が整う。
【0024】
送受信情報がシリアルデータに含められる上記のシリアルデータ送受信機器において、シリアルデータをカンパニーID及びVeder_dependent_informationを含むConfiguration_ROMとし、送受信情報を少なくともVeder_dependent_informationに記載することができる。Configuration_ROMは、カンパニーID及びVeder_dependent_information等の機器固有情報が記載されているデータ空間であり、この空間内のデータが機器の接続の際に機器間で遣り取りされる。このデータ空間の空きを利用して、また、空間内のカンパニーIDのようなデータとの組合せを利用してデータ転送方式を含む送受信情報が記載されるので、機器の接続の際に送受信情報が機器間で遣り取りされ、データ転送方式等の準備が整う。
【0025】
送受信情報がシリアルデータに含められる上記のシリアルデータ送受信機器において、シリアルデータをINQUIRYコマンドと当該INQUIRYコマンドに応答すべきINQUIRYデータを含むSCSIのコマンドセットとし、送受信情報を少なくともINQUIRYコマンド又はINQUIRYデータ内に含めることができる。コンピュータに周辺機器を接続する際に、インターフェイス規格としてSCSIが採用される場合、問い合わせのためのINQUIRYコマンドと当該INQUIRYコマンドに応答すべきINQUIRYデータ又はその拡張されたデータ中に、データ転送方式を含む送受信情報が記載又は他のコードと組み合わせて記載されるので、機器の接続の際に送受信情報が機器間で遣り取りされ、データ転送方式等の準備が整う。
【発明の効果】
【0026】
この発明によるシリアルデータ送受信機器は、上記のように構成されているので、データ通信を行う機器が複数台接続されたシリアルバス上において、データ転送に関する機器の送受信情報をもう一方の機器に対してデータ転送前に伝えることにより、そのデータ転送方式に見合ったデータ処理方法を事前に選択することが可能となり、データ転送の順番が異なることに起因した無駄を省いた処理方法を選択することができ、データ転送を高速化することができる。更に、そうしたデータ処理方法の選択によって、データ転送の高速化やCPUに対する負荷の低減も合わせて見込むことができる。また、シリアルバス上において機器を接続する際に、データ転送方式に見合ったデータ処理方法の事前の伝達を、機器間で行われる既存の通信プロトコルの一部を利用して行うことができるので、データ処理方法の伝達のために別途の遣り取りする機会を設けることや、データ処理方法専用のためのデータを用意する必要がないので、データ転送方式に見合ったデータ処理方法を簡便に選択することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、添付した図面に基づいて、この発明によるシリアルデータ送受信機器の実施例を説明する。図1は本発明によるシリアルデータ送受信機器を用いたシステムの一例を示す概略図、図2は本発明によるシリアルデータ送受信機器の一例を示すブロック図、図3は基本的なConfiguration_ROMのテーブルの一例を示す図である。図4は図3に示すConfiguration_ROMのテーブル中のVendor_dependent_information領域の一例を示す説明図である。
【0028】
以下、図1を用いて本発明によるシリアルデータ送受信機器の一実施例を具体的に説明する。図1は、本発明によるシリアルデータ送受信機器がIEEE1394を用いて、SBP−2プロトコルを適用して接続したシリアルバスに繋げられた系(システム)の一例である。100はパーソナル・コンピュータのようなイニシエータ機器、101はHDDのようなターゲット機器である。これらSBP−2対応機器をIEEE1394で接続した場合、前述のIEEE1212にて規定された相手機器のConfiguration_ROMの空間上のデータはREAD_Transactionを用いて取得される。
【0029】
図2には、図1に示すシリアルデータ送受信機器の送受信に関するブロック図である。図2に示すように、シリアルデータ送受信機器としてのイニシエータ機器100は、データ通信を行う機器が複数台接続されたシリアルバス103上において、相手機器であるターゲット機器101のConfiguration_ROM110に記載されている機器の種類、データ転送能力、対応プロトコル等の送受信情報を取得し解析する機器情報解析手段105と、機器情報解析手段105が取得し解析した送受信情報から得られたターゲット機器101のデータ転送方法に対して有効であると判断されたデータ処理手法を選択するデータ制御方法選択手段106とを備えている。データ制御方法選択手段106で選択されたデータ処理手法はデータ処理手段107において指定され、データ処理手段107は、ターゲット機器101の例えばページテーブル111に保存されているパケット形式等データを予め予測する順序で受け取ることができ、選択されたデータ処理手法で処理し、メモリ108等に保存することができる。
【0030】
図3に一例として示すConfiguration_ROM110のテーブルの内容を簡単に説明する。“1394”とアスキーコードで書かれているデータは1394機器であることを表す。9バイト目から16バイトまでの8バイトは、IEEE1394対応機器が一台一台持つユニークなシリアル番号である。なお、上位3バイト“Node_vendor_id“は各メーカーを表すカンパニーIDと呼ばれている。”Irmc“や”“Cmcは、このノードが対応する機能等を表す。また、”Vendor_dependent_information“は、各社で自由に意味付けの可能な領域である。
【0031】
図3に示されているようなConfiguration_ROM110の取得が終わり、イニシエータ機器100が、接続相手がターゲット機器101であることを認識できた場合、前述のSBP−2機器としてのLOGIN動作が行われる。その後、イニシエータ機器100がターゲット機器101にアクセスするときに、各種コマンドが存在することは前述の通りである。このうち、INQUIRYコマンドの使用によって、ターゲット機器101のメーカー名や機種名をアスキーコードにて入手できる場合がある。
【0032】
次に、本発明によるシリアルデータ送受信機器の第一の実施例を説明する。第一の実施例においては、ターゲット機器101は、イニシエータ機器100とのデータ転送の際には、必ず取得したページテーブル111に記載の順番を遵守した転送を行うものとする。今、例えば、ターゲット機器101側に備わるConfiguration_ROM110のテーブル中の前述の”Vendor_dependent_information“と呼ばれる領域の中に、図4で示すように8bitの領域を設ける。当該8bitの値がすべて“1”であれば、前述した“ターゲット機器101はイニシエータ機器100とのデータ転送の際には、必ず取得したページテーブル111に記載の順番を遵守した転送を行う”機能を持っていることを表すとする。IEEE1394を用いてこれらの機器を接続した際には、上記したように、Configuration_ROM110データの取得フェイズが必ず発生するが、この取得フェイズにおいて、イニシエータ機器100側は、機器情報解析手段105による解析によってターゲット機器101が該機能を持つことを確認できた場合、データ制御方法選択手段106を用いて、不必要と思われるキャッシュ動作の抑制又はページテーブル111順のアクセスのみに対応したキャッシュ動作に切り替える。
【0033】
以上の動作の説明から明らかなように、イニシエータ機器100側では、ターゲット機器101側のConfiguration_ROM110のデータの取得によって、データ転送の際に発生するであろうターゲット機器101側の都合によるページテーブル111の順番を無視したデータ転送による負荷増加が無いことが、事前に予測可能となる。したがって、ターゲット機器101側のデータ転送に見合ったキャッシュ動作を行うことにより、キャッシュの非的中率が大幅に低下され、転送速度の改善が見込まれる。また、複雑なキャッシュ動作フローが必要なくなるため、CPU104の負荷も軽くなる。以上の手法は、IEEE1212で規定されたConfiguration_ROM110の空間を利用するものであるから、IEEE1394を用いたデータ処理機器全てに対して適応することが可能である。なお、ここで挙げた手法はあくまで例であり、例えば前記”Vendor_dependent_information“の中の8bitのみで判断した場合は、誤認識してしまうことが多分に考えられるので、該bitの拡張や、カンパニーIDとの組み合わせで判断する等の手法が必要である。
【0034】
次に、本発明によるシリアルデータ送受信機器の第二の実施例を説明する。第二の実施例においても第一の実施例と同様に、ターゲット機器101は、イニシエータ機器100とのデータ転送の際には、必ず取得したページテーブル111に記載の順番を遵守した転送を行うものとする。今、例えば第一の実施例とは異なり、ターゲット機器101側の前述したSBP−2のINQUIRYコマンドで応答すべきデータ領域の中に8bitの領域を設け、当該8ビットの値がすべて“1”であれば、前述した“ターゲット機器101はイニシエータ機器100とのデータ転送の際には、必ず取得したページテーブル111に記載の順番を遵守した転送を行う”という機能を持っていることを表すとする。SBP−2を用いてこれらの機器を接続した際に、イニシエータ機器100が発行するINQUIRYコマンドに対するターゲット機器101からのINQUIRYデータの取得フェイズにて、イニシエータ機器100側においては、機器情報解析手段105を用いてターゲット機器101が該機能を持つことを確認できた場合、データ制御方法選択手段106を用いて不必要と思われるキャッシュ動作の抑制又はページテーブル順のアクセスのみに対応したキャッシュ動作に切り替える。
【0035】
以上の動作により、イニシエータ機器100側では、データ転送の際に発生するであろうターゲット機器101側の都合によるページテーブル111の順番を無視したデータ転送に起因した負荷増加が無いことが、INQUIRYデータの取得により事前に予測可能となる。したがって、イニシエータ機器100側は、ターゲット機器101側のデータ転送に見合ったキャッシュ動作を行うことにより、キャッシュの非的中率が大幅に低下されて転送速度の改善が見込まれる。また、複雑なキャッシュ動作フローが必要なくなるので、CPUの負荷も軽くなる。以上の手法は、INQUIRYコマンドを利用するものであるから、SBP−2を用いたデータ処理機器に対して適応することが可能である。なお、ここで挙げた手法はあくまで例であり、例えば前記INQUIRYの中の8bitのみで判断した場合は、誤認識してしまうことが多分に考えられるので、該bitの拡張や、INQUIRYデータ中の他のコードとの組み合わせで判断する等の手法が必要である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明によるシリアルデータ送受信機器を用いた系の一例を示す概略図。
【図2】本発明によるシリアルデータ送受信機器の一例を示すブロック図
【図3】基本的なConfiguration_ROMのテーブルの一例を示す図。
【図4】図3に示すConfiguration_ROMのテーブル中の領域の中に、設けられる8bitの領域を示す図。
【図5】送信側のノードから受信側のノードへデータを書き込むライトトランザクションと呼ばれる動作の一例を示す模式図。
【図6】送信側のノードから受信側のノードへデータを書き込むライトトランザクションと呼ばれる動作の別の例を示す模式図。
【図7】Operation Request Block(ORB)と呼ばれるデータの一例を示す図。
【符号の説明】
【0037】
100 イニシエータ機器
101 ターゲット機器
103 シリアルバス
105 機器情報解析手段
106 データ制御方法選択手段
107 データ処理手段
108 メモリ
110 Confihuration_ROM
111 ページテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ通信を行う機器が複数台接続されたシリアルバス上において、相手機器の種類、データ転送能力、対応プロトコル等の送受信情報を取得し解析する機器情報解析手段と、前記相手機器より受け取ったデータを処理するデータ処理手法を選択するデータ制御方法選択手段とを備え、前記送受信情報は前記相手機器のデータ転送方法についての情報を含んでおり、前記データ制御方法選択手段は、前記機器情報解析手段が取得し解析した前記送受信情報から得られた前記相手機器の前記データ転送方法に対して有効であると判断された前記データ処理手法を選択することを特徴とするシリアルデータ送受信機器。
【請求項2】
前記シリアルバスは、IEEE1394であることを特徴とするシリアルデータ送受信機器。
【請求項3】
前記送受信情報は、前記機器の接続の際に前記機器間で遣り取りされるシリアルデータに含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシリアルデータ送受信機器。
【請求項4】
前記シリアルデータは、カンパニーID及びVeder_dependent_informationを含むConfiguration_ROMであり、前記送受信情報は、少なくとも前記Veder_dependent_informationに記載されていることを特徴とする請求項3に記載のシリアルデータ送受信機器。
【請求項5】
前記シリアルデータは、INQUIRYコマンドと当該INQUIRYコマンドに応答すべきINQUIRYデータを含むSCSIのコマンドセットであり、前記送受信情報は、少なくとも前記INQUIRYコマンド又は前記INQUIRYデータ内に含まれていることを特徴とする請求項3に記載のシリアルデータ送受信機器。
【請求項6】
シリアルバス上に接続される複数台のデータ通信を行う機器のうち相手側となる前記機器の種類、データ転送能力、対応プロトコル等からなる送受信情報に前記相手機器のデータ転送方法に関する情報を含めておき、受信する側の前記機器は前記送受信情報を取得・解析し、前記送受信情報に含まれる前記データ転送方法に基づいて、前記相手機器より受け取ったデータに対して有効であると判断されたデータ処理手法を選択することを特徴とするシリアルデータ送受信方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−330968(P2006−330968A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151991(P2005−151991)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】