説明

シリアル食品及びその製造方法

【課題】品質に優れたカテキン類高含有シリアル食品を製造する方法を提供する。
【解決手段】シリアル食品を成形後、固形分0.5質量%の水溶液としたときの濁度が30度(ホルマジン)以下であるカテキン類含有植物抽出物の精製物の水溶液を噴霧することを含む、カテキン類をシリアル食品乾物質量に対して0.1質量%以上含有するシリアル食品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテキン類を含有するシリアル食品とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カテキン類には、一般に広く知られている酸化防止剤としての機能の他に、α−アミラーゼ活性阻害作用、コレステロール吸収阻害作用等の生理作用があることが知られており(特許文献1、2参照)、近年、種々の食品に配合することが検討されている。当該カテキンは、食品に添加するものであることから、茶、ブドウ、リンゴ、大豆等の植物由来のものが広く用いられている。
【0003】
カテキン類を含有するシリアル食品として、抹茶を配合したシリアル食品が販売されている。抹茶を配合することで、カテキン類を含有せしめると同時に茶フレーバーを付与することができる。また、酸化防止機能を目的としてビタミンA及びEと共に粗カテキン製剤を微量配合したシリアルバーも知られている(特許文献3参照)。
カテキン類を酸化防止剤として使用する場合は、粗カテキン製剤であればシリアル食品に0.1〜0.2質量%添加することでその目的は達成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−156614号公報
【特許文献2】特開平3−133928号公報
【特許文献3】欧州特許出願公開第1844664A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カテキン類を含有する食品の摂取により、カテキン類の持つ生理効果を有効に発揮させるためには、目的とする生理効果に応じて、食品の摂食量との関係から有効量に達する程度の濃度でカテキン類を食品に含有させる必要がある。
シリアル食品にカテキン類を配合する方法としては、シリアル食品製造の際に、生地にカテキン類を練り込むことが考えられる。しかし、カテキン類の原料として茶葉を微粉化した固体粉末である抹茶を用いた場合、そのカテキン類含有量は約10質量%前後であるため、シリアル食品への抹茶の配合量は、所望するカテキン類の配合量の10倍量にもなる。また、カテキン類の原料として茶葉より抽出して乾燥した市販のカテキン製剤を用いる場合でも、カテキン製剤中のカテキン類の濃度は30〜40質量%程度にすぎず、所望するカテキン類の配合量に対して数倍量の製剤を配合しなければならない。
本発明者は、シリアル食品の製造における焙焼の過程で、生地にカテキン製剤を多量に練りこんでも、カテキン類が高温・高圧に曝されることにより、その含有量が減少してしまうことを見い出した。
【0006】
上記焙焼過程へのカテキン類の暴露を避けるために、成形したシリアル食品に対し、カテキン製剤の水溶液を噴霧することでシリアル食品にカテキン類を配合することを試みた。しかし、カテキン類の配合量を高めるために噴霧量を多くすると成形したシリアル食品がふやけてしまい形状が保てず、また乾燥後に凝集してしまった。したがって、シリアル食品中にカテキン類を高含有させるためには高濃度のカテキン製剤水溶液を少量噴霧する必要が生じた。しかし、高濃度のカテキン製剤水溶液を調製しようとしても、不溶分が存在する懸濁状態となってしまう。この懸濁液は粘度が高く、噴霧装置の目詰まりを引き起こした。
本発明の課題は、品質に優れたカテキン類高含有シリアル食品を製造する方法を提供することにある。また、本発明の課題は、そのような品質に優れたカテキン類高含有シリアル食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、カテキン類を含有する植物抽出物の特定の精製物を用いることで、カテキン類の含有濃度が十分に高いにもかかわらず、粘度が抑えられたカテキン水溶液を調製できることを見い出した。さらに、この水溶液を成形後のシリアル食品に配合することで、カテキン類を高含有し、品質に優れたシリアル食品が容易に得られることを見出した。
【0008】
本発明は、シリアル食品を成形後、固形分0.5質量%の水溶液としたときの濁度が30度(ホルマジン)以下であるカテキン類含有植物抽出物の精製物の水溶液を噴霧することを含む、カテキン類をシリアル食品乾物質量に対して0.1質量%以上含有するシリアル食品の製造方法に関する。
また、本発明は、固形分0.5質量%の水溶液としたときの濁度が30度(ホルマジン)以下であるカテキン類含有植物抽出物の精製物を配合して製造される、カテキン類をシリアル食品乾物質量に対して0.1質量%以上含有するシリアル食品に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カテキン類を高含有し、かつ品質の良いシリアル食品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明におけるシリアル食品とは、一般的に朝食シリアル(Ready to eat,Breakfast cereal)と称される食品であって、とうもろこし、米、玄米、小麦、大麦、ライ麦、燕麦、蕎麦、粟、稗等の穀類から得られる穀類原料を圧扁、成型、膨張、焙焼等により加工したシリアル粒を主原料とする食品であり、一般に牛乳等の液状食品を加えて、加熱し、又は加熱しないで食されることが多い。
【0011】
本発明においてカテキン類とは、非重合体カテキン類を意味し、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレート(GCg)等の非エピ体カテキン類;及びエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート(EGCg)等のエピ体カテキン類をあわせての総称である。
【0012】
本発明に用いるカテキン類含有植物抽出物の精製物(以下、「カテキン精製物」という)は、カテキン類を含有する植物から得た抽出物をさらに精製したものである。この精製物は、前記カテキン類に加えて、その重合物や加水分解物、その他のフラボノイド類も含む、タンニンと称されるものを含有する。カテキン精製物中のタンニンの含有量は40質量%(以下、組成を表す「%」は特に断りのない限り質量%を意味する。)以上が好ましく、さらに40〜99%、特に45〜80%、殊更50〜70%であることが、シリアル中に生理作用発現に必要なカテキン類を、安定して含有させることができる点から好ましい。また、カテキン精製物中のカテキン類含有量は35%以上が好ましく、さらに40〜90%、特に45〜80%であることが、シリアル食品中に生理作用発現に必要な量のカテキン類を、安定して含有させることができる点から好ましい。
【0013】
本発明においては、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレートをあわせて、非重合カテキン類ガレート体と総称する。本発明のカテキン精製物は、エピガロカテキンガレート及び/又はその異性体と、エピカテキンガレート及び/又はその異性体を含有するものが好ましい。またカテキン類中のガレート体率とは、これら4種の総和質量の非重合体カテキン類8種の総和質量に対する百分率で表した数値である。また本発明のエピガロカテキンガレートの異性体とはガロカテキンガレートであり、エピカテキンガレートの異性体とはカテキンガレートである。
【0014】
本発明においては、シリアル食品中のカテキン類含有量は、シリアル食品乾物質量に対して0.1%以上であるが、好ましくは0.2〜10%、より好ましくは0.21〜5%、さらに0.25〜3%、特に0.25〜1.7%とすることが、生理効果の点から好ましい。シリアル食品乾物質量とは、シリアル食品を105℃に設定した定温乾燥器で2時間加熱し、デシケーター内で室温に戻るまで冷却した後のシリアル食品の質量を意味する。
【0015】
本発明においては、カテキン類量は、実施例記載の条件における高速液体クロマトグラフィーにより測定することができ、タンニン量は、実施例記載の条件における酒石酸鉄法により、標準液として没食子酸エチルを用い、没食子酸の換算量により測定することができる。
【0016】
本発明に用いるカテキン精製物は固体、粉末状又は液状であり、固形分0.5%濃度の水溶液(0.5%水溶液)としたときの濁度が30度(ホルマジン)以下、さらに25度以下、特に10度以下であることが、生理作用発現に必要な量のカテキン類を安定して含有するシリアル食品が、容易かつ安定して得られる点、水溶液を噴霧する際、その粘度が低くまた噴霧装置の目詰まりが生じ難く、噴霧性を良好とする点から好ましい。また、カテキン精製物は、固形分1.0質量%水溶液において、光路長10mmのセルを使用した場合の671.5nmにおける吸光度が0.3以下、さらに0.25以下、特に0.15以下であることが、生理作用発現に必要な量のカテキン類を安定して含有する高品質のシリアル食品が、安定して得られる点、水溶液を噴霧する際、その粘度が低く噴霧性を良好とする点から好ましい。
【0017】
前記カテキン精製物は、固形分40%の水溶液としたときの粘度は、温度20℃においてB型粘度計で200mPa・s以下であることが好ましく、さらに5〜160mPa・s、特に10〜60mPa・sであることが、生理作用発現に必要な量のカテキン類を安定して含有するシリアル食品が、安定して得られる点、水溶液を噴霧する際の噴霧性を良好とする点から好ましい。
【0018】
前記カテキン精製物は、(A)ミリセチン、(B)ケルセチン及び(C)ケンフェロールの含有量の和((A)+(B)+(C)の含有量)が0.000001〜5%、さらに0.00001〜3%、特に0.001〜1.75%、殊更0.01〜1.5%であるのが、水溶液を低粘度とし、噴霧性を高める点で好ましい。
【0019】
また、前記カテキン精製物は、(D)エピガロカテキンガレート及び(E)ガロカテキンガレートの含有量の和((D)+(E)の含有量)が15〜95%、さらに18〜40%、特に20〜35%であるのが、低粘度となるため噴霧性の点から好ましい。
【0020】
更に、前記カテキン精製物は、(A)ミリセチン、(B)ケルセチン及び(C)ケンフェロールの含有量の和と、(D)エピガロカテキンガレート及び(E)ガロカテキンガレートの含有量の和との比((A)+(B)+(C)の含有量)/((D)+(E)の含有量)が0.0001〜0.1(質量比)であるのが、低粘度となるため噴霧性の点で好ましく、当該比がさらに0.001〜0.09、特に0.01〜0.09であるのが好ましい。なお、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の含有量は、カテキン精製物を加水分解後、実施例記載の条件における高速液体クロマトグラフィーで測定することができる。
【0021】
本発明により、固形分0.5%の水溶液としたときの濁度が30度(ホルマジン)以下であるカテキン類含有植物抽出物の精製物を配合して、カテキン類をシリアル食品乾物質量に対して0.1%以上含有するシリアル食品を製造することもできる。この場合、シリアル食品中の前記成分(A)、(B)及び(C)の含有量の和と、(D)及び(E)の含有量の和との比((A)+(B)+(C)の含有量)/((D)+(E)の含有量)が0.0001〜0.1(質量比)となることが、高品質なシリアル食品とすることから好ましい。当該比はさらに0.001〜0.09、特に0.01〜0.09であるのが好ましい。
【0022】
また、前記カテキン精製物は、(F)ルチンの含有量が0.0001〜2%、さらに0.001〜1.2%、特に0.01〜1%であるのが、低粘度となるため噴霧性の点から好ましい。なお、成分(F)の含有量は、実施例記載の条件における高速液体クロマトグラフィーで測定することができる。ルチンとは、フラボノール配糖体の一種であり、ケルセチンの3位の酸素原子にβ−ルチノース(6−O−α−L−ラムノシル−D−β−グルコース)が結合したものである。
【0023】
本発明におけるカテキン精製物は、カフェインの含有量が0.0001〜10%、さらに0.001〜7%、特に0.01〜5.5%であることが、カフェインに起因する頻尿、不眠等を低減する点から好ましい。カフェインの含有量は、実施例記載の条件における高速液体クロマトグラフィーで測定することができる。
【0024】
本発明に用いられるカテキン精製物は、カテキン類含有植物抽出物(以下、単に「植物抽出物」と記載する)を精製したものであればよく、当該植物としては茶、ブドウ、リンゴ、大豆等が挙げられ、茶としては緑茶、烏龍茶、紅茶、等が挙げられるが、このうち緑茶が特に好ましい。ここで、例えば緑茶から抽出したものを「緑茶抽出物」という。
【0025】
緑茶抽出物としては、緑茶葉から得られた抽出液が挙げられる。茶葉としては、より具体的には、Camellia属、例えばC.sinensis、C.assamica及びやぶきた種又はそれらの雑種等から得られる茶葉から製茶された茶葉が挙げられる。製茶された茶葉には、煎茶、番茶、玉露、てん茶、釜炒り茶等の緑茶類がある。また、超臨界状態の二酸化炭素接触処理を施した茶葉を用いてもよい。茶を抽出する方法については、攪拌抽出、カラム法、ドリップ抽出など従来の方法により行う。また抽出時の水にあらかじめアスコルビン酸ナトリウムなどの有機酸又は有機酸塩類を添加してもよい。また煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつつ、いわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する方法も併用してもよい。このようにして得られた抽出液は、そのままでも、乾燥、濃縮しても本発明に用いるカテキン精製物の調製に使用できる。茶抽出物の形態としては、液体、スラリー、半固体、固体の状態が挙げられる。
緑茶抽出物として、茶葉から抽出した抽出液以外に、緑茶抽出物の濃縮物を水又は有機溶媒に溶解又は希釈したものを用いてもよいし、茶葉から抽出した抽出液と緑茶抽出物の濃縮物の溶解又は希釈液とを併用してもよい。
ここで、緑茶抽出物の濃縮物とは、緑茶葉から熱水又は水溶性有機溶媒により抽出された抽出物を濃縮したものであり、例えば、特開昭59−219384号公報、特開平4−20589号公報、特開平5−260907号公報、特開平5−306279号公報等に記載されている方法により調製したものをいう。具体的には、市販の東京フードテクノ社製「ポリフェノン」、伊藤園社製「テアフラン」、太陽化学社製「サンフェノン」等の粗カテキン製剤を固体の緑茶抽出物の濃縮物として用いることもできる。
また、緑茶抽出物以外のカテキン含有植物抽出物は、通常の手段により抽出されたものが使用できる。
【0026】
本発明におけるカテキン精製物は、植物抽出物、例えば緑茶抽出物をそのまま、又は水若しくは有機溶媒水溶液に分散又は溶解した状態で、活性炭と、酸性白土及び/又は活性白土(以下、「酸性白土等」ともいう)、ろ過助剤等に接触させることにより製造することができる。
【0027】
植物抽出物を、活性炭、酸性白土等及び所望によりろ過助剤等と接触させる順序は特に限定されない。例えば、(1)植物抽出物を水又は有機溶媒水溶液に分散又は溶解させた後、これに活性炭、酸性白土等及び所望によりろ過助剤等を同時に加えて接触させる方法、(2)水又は有機溶媒水溶液に活性炭、酸性白土等及び所望によりろ過助剤等を分散させた後、これに植物抽出物を加えて接触させる方法、(3)植物抽出物と酸性白土等及び所望によりろ過助剤等とを水又は有機溶媒水溶液に溶解又は分散させて予め植物抽出物と酸性白土等及び所望によりろ過助剤等とを接触させた後、これに活性炭を加える方法、等が挙げられる。なお、(1)〜(3)の方法の中では(1)又は(3)の方法が好ましい。(1)〜(3)の方法においては、次の工程に移行する前にろ過工程を入れるのが好ましい。
【0028】
接触処理の際には、pHを4〜6の範囲に調整して行うことが、非重合体カテキン類を効率よく抽出したカテキン精製物を得るために好ましい。pHを調整するために、クエン酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸等の有機酸を、有機酸と非重合体カテキン類の質量比率(有機酸/非重合体カテキン類)が0.01〜0.20の範囲で添加することができる。
【0029】
接触処理は、バッチ式、カラムによる連続処理等のいずれの方法で行ってもよく、例えば、植物抽出物と活性炭との接触方法は、活性炭カラムによる連続処理等の方法で行うことができる。一般には、粉末状の活性炭等を添加、撹拌し、不純物を選択的に吸着後、ろ過操作により不純物を除去したろ液を得る方法又は顆粒状の活性炭等を充填したカラムを用いて連続処理により不純物を吸着する方法等が採用される。
【0030】
植物抽出物の精製に使用する有機溶媒としては、水溶性有機溶媒が好ましく、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類が挙げられ、特に飲食品への使用を考慮すると、エタノールが好ましい。水としては、イオン交換水、水道水、天然水等が挙げられ、特に味の点からイオン交換水が好ましい。
有機溶媒と水との混合質量比(有機溶媒/水)は、好ましくは60/40〜97/3、さらに好ましくは60/40〜75/25、特に好ましくは85/15〜95/5とするのが、非重合体カテキン類の抽出効率、植物抽出物の精製効率等の点で好ましい。
植物抽出物と、水又は有機溶媒水溶液との割合は、水又は有機溶媒水溶液100質量部に対して、植物抽出物(乾燥質量換算)を10〜40質量部、さらに10〜30質量部、特に15〜30質量部添加して処理するのが、植物抽出物を効率よく処理できるので好ましい。
【0031】
接触処理には、10〜180分程度の熟成時間を設けることが好ましく、これらの処理は10〜60℃で行うことができ、特に10〜50℃、さらに10〜40℃で行うのが好ましい。
接触処理に用いる活性炭としては、一般に工業レベルで使用されているものであれば特に制限されず、例えば、ZN−50(北越炭素社製)、クラレコールGLC、クラレコールPK−D、クラレコールPW−D(クラレケミカル社製)、白鷲AW50、白鷲A、白鷲M、白鷲C(武田薬品工業社製)等の市販品(いずれも商品名)を用いることができる。
活性炭の細孔容積は0.01〜0.8mL/g、特に0.1〜0.8mL/gが好ましい。また、比表面積は800〜1600m/g、特に900〜1500m/gの範囲のものが好ましい。なお、これらの物性値は窒素吸着法に基づく値である。
活性炭は、水又は有機溶媒水溶液100質量部に対して0.5〜8質量部、特に0.5〜3質量部添加するのが、不純物の除去効率、ろ過工程におけるケーク抵抗が小さい点で好ましい。
【0032】
接触処理に用いる酸性白土又は活性白土は、ともに一般的な化学成分として、SiO、Al、Fe、CaO、MgO等を含有するものであるが、SiO/Al比がモル比で3〜12、特に4〜9であるものが好ましい。また、Feを2〜5%、CaOを0〜1.5%、MgOを1〜7%含有する組成のものが好ましい。
活性白土は天然に産出する酸性白土(モンモリロナイト系粘土)を硫酸等の鉱酸で処理したものであり、大きい比表面積と吸着能を有する多孔質構造をもった化合物である。酸性白土をさらに、酸処理することにより比表面積が変化し、脱色能の改良及び物性が変化することが知られている。
酸性白土又は活性白土の比表面積は、酸処理の程度等により異なるが、50〜350m/gであるのが好ましく、pH(5%サスペンジョン)は2.5〜8、特に3.6〜7のものが好ましい。例えば、酸性白土としては、ミズカエース#600(商品名、水澤化学社製)等の市販品を用いることができる。また、活性白土としては、例えば、ガレオンアースV2(商品名、水澤化学社製)等の市販品を用いることができる。
また、活性炭と、酸性白土等との割合は、質量比で活性炭1に対して1〜10が好ましく、活性炭:酸性白土及び/又は活性白土=1:1〜1:6であるのが好ましい。
酸性白土等は、水又は有機溶媒水溶液100質量部に対して2.5〜25質量部、特に2.5〜15質量部添加するのが好ましい。酸性白土等の添加量が少なすぎると、カフェイン除去効率が低下する傾向にあり、また多すぎるとろ過工程におけるケーク抵抗が大きくなる傾向にある。
接触処理に用いるろ過助剤としては、珪藻土など一般に工業レベルで使用されているものであれば特に制限されず、例えば、ソルカフロック(商品名、今津薬品工業製))、シリカ100F−A(商品名、中央シリカ製)等の市販品を用いることができる。
水又は有機溶媒水溶液から活性炭等を分離するときの温度は、−15〜78℃、さらに5〜40℃であるのが好ましい。この温度の範囲外であると、分離性が劣り、また溶液の性状に変化が見られるような場合がある。
分離方法は公知の技術が応用でき、例えば、いわゆるフィルター分離や遠心分離等の手法のほか、活性炭等の粒状物質が詰まったカラムを通すことでの分離等でもよい。
【0033】
植物抽出物は、さらに苦味を低減したい場合はタンナーゼ活性を有する酵素で処理することができる。呈味の点から合成吸着剤に吸着する前に酵素処理することが好ましい。その中でもタンナーゼが好ましい。例えば、アスペルギルス属、ペニシリウム属、リゾプス属のタンナーゼ生産菌を培養して得られるタンナーゼが挙げられる。このうちアスペルギルス オリーゼ由来のものが好ましい。
具体的には、タンナーゼ活性を有する酵素として市販品では、ペクチナーゼPLアマノ(天野エンザイム社製)、ヘミセルラーゼアマノ90(天野エンザイム社製)、タンナーゼKTFH(キッコーマン社製)等が利用できる。本発明で行うタンナーゼ活性を有する酵素処理、即ち酵素反応は、タンニンアシルヒドラーゼEC3.1.1.20などで行うことが好適である。市販品としては、商品名「タンナーゼ」キッコーマン(株)製及びタンナーゼ「三共」三共(株)製などが挙げられる。
【0034】
タンナーゼ活性を有する酵素は、500〜100,000U/gの酵素活性を有することが好ましく、500U/g以下であると工業的に限られた時間内で処理するためには多量の酵素が必要となり、100,000U/g以上であると酵素反応速度が速すぎる為、反応系を制御することが困難となる。ここで1Unitは30℃の水中においてタンニン酸に含まれるエステル結合を1マイクロモル加水分解する酵素量を示す。ここでタンナーゼ活性を有するとは、タンニンを分解する活性を有するものであり、本活性を有すれば任意の酵素が使用できる。
タンナーゼ活性を有する酵素で処理するときの非重合体カテキン類の濃度は、好ましくは0.1〜22%、さらに好ましくは0.1〜15%、特に好ましくは0.5〜10%、殊更好ましくは0.5〜3%である。
【0035】
植物抽出物中の非重合体カテキン類1gに対してタンナーゼ活性を有する酵素を、好ましくは1〜300Unit、さらに好ましくは3〜200Unit、特に好ましくは5〜150Unitになるように添加する。
酵素処理の温度は、最適な酵素活性が得られる0〜70℃が好ましく、さらに好ましくは0〜60℃、特に好ましくは5〜50℃である。
【0036】
酵素反応を終了させるには、酵素活性を失活させる。酵素失活の温度は70〜100℃が好ましく、また、その保持時間は10秒から20分が好ましい。失活温度が低すぎると酵素を短時間で充分に失活することが困難であるため反応が進行し、所望の非重合体カテキン類ガレート体率の範囲内で酵素反応を停止することができない。又、失活温度に到達してから保持時間が短すぎると酵素活性を充分に失活させることが困難であるため、酵素反応が進行する。また、保持時間が長すぎると非重合体カテキン類の非エピメリ化が起こる場合があり好ましくない。
酵素反応の失活方法は、バッチ式もしくはプレート型熱交換機のような連続式で加熱を行うことで停止することができる。又、タンナーゼ処理の失活終了後、遠心分離などの操作により植物抽出物を清浄化することができる。
【0037】
得られたカテキン精製物のシリアル食品への配合手段としては、穀粉原料と同時に配合しても良いが、カテキン類をシリアル食品の成形後に含有させることが、蒸煮や焙焼工程等の熱によるカテキン類含有量の低下を防止することができる点から好ましい。ここで、シリアル食品の成形は、穀類原料を蒸煮、冷却、圧扁、成形、膨張、乾燥及び焙焼する工程を含むが、カテキン精製物の配合は、上記の点から焙焼工程を終了した後がより好ましい。本発明においては、シリアル食品の成形後に含有させる方法として、カテキン精製物を水溶液とし、これを成形後のシリアル食品に噴霧する方法が定量性、安定性の点で好ましい。
【0038】
噴霧処理する方法は、カテキン精製物を水に分散又は溶解して、通常の噴霧装置を用いて成形後のシリアル食品表面に噴霧すればよい。例えば、コンベアベルト上に載ったシリアル食品へ噴霧するコンベアベルト方式、回転ドラム内を移動するシリアル食品に噴霧する回転ドラム方式等が挙げられる。ここで、カテキン精製物水溶液中の、カテキン類濃度は1〜50%、さらに5〜40%、特に9〜35%とするのが、シリアル食品の軟化及び凝集防止、噴霧後の乾燥の容易性、シリアル食品中へカテキンを高含有させる点で好ましい。
また、噴霧処理する際のカテキン水溶液の噴霧量は、シリアル食品100gに対して0.2〜10gが好ましく、さらに0.3〜6g、特に0.5〜5gとすることが、シリアル食品の軟化及び凝集防止、噴霧後の乾燥の容易性、シリアル食品中へカテキンを高含有させる点から好ましい。
【0039】
本発明におけるシリアル食品は、その形態は特に限定されず、例えば、フレークドシリアル、パフドシリアル、シュレッティドシリアル、エクストルードエクスパンドシリアル、グラノーラ及びグラノーラ様食品等が挙げられる。本発明のシリアル食品の製造法は、カテキン類を含有させる場合以外は、上記シリアル食品の形態に合わせた製造法に従って製造することができる。すなわち、シリアル食品を製造するには、穀類原料を常法により、蒸煮、冷却、圧扁、成形、膨張、乾燥及び焙焼等を行えばよい。
【0040】
シリアル食品の主原料は各種穀類であるが、その形態は穀粒と、穀粉の2つがある。穀粒はそのまま用いる場合と、穀粉と混合して用いる場合とがある。穀粒と穀粉を混合する場合、又は穀粉のみを用いる場合は、クッキングエクストルーダーでペレット状(エクストルードペレット)に成型する。
【0041】
本発明に用いる原料の穀類としては、とうもろこし、米、玄米、小麦、大麦、ライ麦、燕麦(オーツ)、ハト麦、裸麦、蕎麦(ソバ)、粟(アワ)、黍(キビ)稗(ヒエ)、こうりゃん(マイロ)、アマランスが挙げられる。また、大豆、小豆、グリーンピース、そら豆、いんげん豆等の豆類をも包含する。
【0042】
本発明におけるシリアル食品の原料としては上記穀類等のみでもよいが、必要に応じて乳化剤、結着剤、糖類、天然又は人工甘味料、チョコレート、ココア、食塩、調味料、香辛料、油脂、着色料、乾燥野菜、乾燥果物、ナッツ類、ビタミン類、ミネラル添加剤、食物繊維、蛋白質などを添加することができる。これらの添加物の配合方法に特に制限はなく、生地に練りこんでもよいし、前記カテキン精製物の水溶液中に一緒に混合して配合してもよい。また、前記カテキン精製物の水溶液を噴霧した後に別途配合しても良い。
【0043】
乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等を挙げることができる。これらの乳化剤は製造の際に穀類の粒どうしが付着するのを防止する作用を有する。
また押出機による造粒時に摩擦が減り過度に壊れにくくなり、造粒後に造粒物どうしの付着が防止できる。
【0044】
結着剤としては、でんぷん、ガム類、増粘剤を用いることができ、これらは少量添加すればよい。
油脂としては、コーン油、ゴマ油、大豆油、小麦胚芽油、やし油、なたね油、ひまわり油、綿実油等が挙げられる。
糖類には、単糖類、二糖類、及び多糖類、例えばブドウ糖、果糖、乳糖、ショ糖、麦芽糖、キシロース、リボース、マンノース、ソルビトール、デキストリン、還元デキストリンなどが含まれ、これらは一種又は二種以上で使用される。又はハチミツ、メイプルシュガー、水あめなども同様に使用することができる。
天然又は人工甘味料には、例えばステビア、サッカリンのナトリウム塩又はカルシウム塩、シクラメート、アスパルテーム等も併用することができる。糖類はフレーク100部に対して10〜50部、好ましくは20〜40部の割合で使用される。この量は原料穀類の種類及び得ようとする最終製品の性質に応じて適宜増感せしめうるものである。
乾燥野菜としては、人参、ホウレンソウ等を使用することができる。
乾燥果物としては、リンゴ、レーズン、イチゴ、パパイヤ等が挙げられる。また、アーモンド、松の実、クルミ等のナッツ類、その他カカオマス、カカオバター等のカカオ類も用いることができる。
ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ナイアシン等のビタミン類;無機鉄、ヘム鉄、カルシウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、銅、セレン、マンガン、コバルト、ヨウ素、リン等のミネラル類;難消化性デキストリン、結晶セルロース、アップルファイバー、小麦ふすま、米糠、コーンブラン、木材繊維等の食物繊維が用いられる。また蛋白質としては、植物性蛋白質でも動物性蛋白質でもよいが、植物性蛋白質の中では特に大豆蛋白質、小麦蛋白質等の粉末が好ましく、動物性蛋白質の中では特に肉パウダー、ミルクカゼイン、卵白粉末が用いられる。
【実施例】
【0045】
<非重合体カテキン類の測定方法>
非重合体カテキン類の測定は、カテキン製剤(カテキン類含有植物抽出物又はその精製物)を蒸留水で希釈し、フィルター(孔径:0.8μm)でろ過後、島津製作所社製、高速液体クロマトグラフィー(型式SCL−10AVP)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフィー用パックドカラム L−カラムTM ODS(4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃で、A液及びB液を用いたグラジエント法によって行った。移動相A液は酢酸0.1mol/L含有の蒸留水溶液、B液酢酸0.1mol/L含有のアセトニトリル溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。
【0046】
<タンニンの測定方法>
タンニンの測定は酒石酸鉄法により、標準液として没食子酸エチルを用い、没食子酸の換算量として求めた。(参考文献:「緑茶ポリフェノール」飲食料品用機能性素材有効利用技術シリーズNo.10)。試料5mLを酒石酸鉄標準液5mLで発色させ、リン酸緩衝液で25mLに定溶し、540nmで吸光度を測定し、没食子酸エチルによる検量線からタンニンを求めた。
酒石酸鉄標準液の調製:硫酸第一鉄・7水和物100mgと酒石酸ナトリウム・カリウム500mgを蒸留水で100mLとした。
リン酸緩衝液の調製:1/15mol/Lリン酸水素二ナトリウム溶液と1/15mol/Lリン酸二水素ナトリウム溶液を混合しpH7.5に調整した。
【0047】
<ルチンの測定方法>
試料溶液をフィルター(0.45μm)でろ過し、高速液体クロマトグラフ(型式Waters2695、WATERS製)を用い、カラム(Shimpach VP ODS、150×4.6mmI.D.)を装着し、カラム温度40℃でグラジエント法により分析した。移動相A液はリン酸を0.05%含有する蒸留水溶液、B液はメタノール溶液とし、流速は1mL/分、試料注入量は10μL、UV検出器波長は368nmの条件で行った。なお、グラジエントの条件は、以下のとおりである。

時間(分)
A液濃度(体積%)
B液濃度(体積%)
0.0 95 5
20.0 80 20
40.0 30 70
41.0 0 100
46.0 0 100
47.0 95 5
60.0 95 5
【0048】
<フラボノール類の測定>
(1)試料の加水分解
試料溶液5mLにメルカプトエタノール200μL、2N塩酸500μLを添加した。
その後、ドライブロックバス(アズワン社製)にて120℃で40分間加熱し、冷却した。
(2)分析
加水分解後の試料溶液中に存在しているミリセチン、ケルセチン及びケンフェロールを、高速液体クロマトグラフィーにより定量した。なお、定量はグラジエント法により行ったが、その分析方法は上記「ルチンの測定」と同じである。
(3)フラボノール類の総量
上記分析により定量されたミリセチン量、ケルセチン量及びケンフェロール量の総和として求めた。
【0049】
<カフェインの測定方法>
下記の装置を使用した。
HPLC(日立製作所社製)
プロッター:D−2500,ディティクター:L−4200
ポンプ:L−7100,オートサンプラー:L−7200
カラム:lnertsil ODS−2、内径2.1mm×長さ250mm
【0050】
分析条件は下記の通りである。
サンプル注入量:10μL,流量:1.0mL/min
紫外線吸光光度計検出波長:280nm
溶離液A:0.1mol/L酢酸水溶液,溶離液B:0.1mol/L酢酸アセトニトリル溶液
濃度勾配条件(体積%)
時間(分) 溶離液A 溶離液B
0 97 3
5 97 3
37 80 20
43 80 20
43.5 0 100
48.5 0 100
49 97 3
62 97 3
【0051】
カフェインのリテンションタイムは27.2分であった。
ここで求めたエリア%から標準物質により質量%を求めた。
【0052】
<カテキン製剤水分率の測定方法>
カテキン製剤を2〜3g秤量し、105℃に設定した恒温槽に2時間入れた前後の質量差を水分量として、入れる前のカテキン製剤質量で水分量を割った値の百分率をカテキン製剤水分率とした。
【0053】
<固形分の測定方法>
試料約1gを秤量し、105℃で3時間以上乾燥させ、秤量し、下記式により算出した。
固形分=(乾燥後の質量/乾燥前の質量)×100
【0054】
<濁度の測定方法>
濁度の測定はJIS K0400−9−10(水質―濁度の測定)に従い行った。測定装置はヘーズ・透過率計(HM−150,積分球式,村上色彩技術研究所製)、吸収セル10mm、を用いた。ホルマジン標準液(400度)(関東化学社製)を希釈し[5〜100度(ホルマジン)]検量線を作成した。固形分0.5%水溶液に調整した試料の散乱光の強度(τd)と全透過光の強度(τt)を測定し、τd/τt×100を算出し、検量線から試料の積分球濁度[度(ホルマジン)]を求めた。
【0055】
<吸光度の測定方法>
日立分光光度計(U−3310)を用いて、サンプルの固形分1.0%水溶液試料の400〜900nmの吸光度を、光路長10mmのディスポセル(PMMA製)を使用して測定した。その時の671.5nmの値を吸光度(Abs)とした。
【0056】
<粘度の測定方法>
粘度測定はB型粘度計(20℃)を用い3回の平均値を測定値とした。測定サンプルは、予め回転式撹拌機にて数時間攪拌し、充分に溶解した。
【0057】
<カテキン製剤の調製>
カフェイン含有カテキン類組成物(ポリフェノンHG、商品名、東京フードテクノ社製)100gを常温、250rpm攪拌条件下の95%エタノール水溶液490.9g中に懸濁させ、活性炭(クラレコールGLC、商品名、クラレケミカル社製)20gと酸性白土(ミズカエース#600、商品名、水澤化学社製)100gを投入後、約10分間攪拌を続けた。そして40%エタノール水溶液409.1gを10分間かけて滴下したのち、室温のまま約30分間の攪拌処理を続けた。その後、2号濾紙で活性炭及び沈殿物をろ過したのち、0.2μmメンブランフィルターによって再ろ過を行った。最後にイオン交換水200gをろ過液に添加し、40℃、25Torrでエタノールを留去し、これを凍結乾燥し、淡黄色粉末状のカテキン製剤(i)を得た。
【0058】
また、カテキン製剤(v)は、POL−JK(淡緑色、三井農林社製)であり、カテキン製剤(vi)は、ポリフェノン70A(赤褐色、三井農林社製)である。
【0059】
カテキン製剤(ii)〜(iv)はカテキン製剤(i)と(v)をブレンドして調製したものである。成分分析値を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
カテキン製剤(i)、(ii)、(iii)、(vi)は、固形分0.5%水溶液の濁度が30度(ホルマジン)以下であり、特にカテキン製剤(i)は固形分0.5%水溶液の濁度が1度(ホルマジン)以下と非常に低い値を示した。一方、カテキン製剤(iv)及び(v)は、固形分0.5%水溶液の濁度が30度(ホルマジン)以上であった。
【0062】
<実施例> カテキン含有シリアル食品の製造と評価
上記カテキン製剤(i)〜(vi)をイオン交換水に溶解し、表2に示した固形分濃度となるようにカテキン製剤水溶液を調製した。これをポンプ式スプレー容器(ニッコー製,PET−S(100mL))へ充填した。シリアル食品は市販品のコーンフレーク(日清シスコ製)を用いた。コーンフレーク20.00gをチャック付きポリエチレン袋(ユニパックH−4,(株)生産日本社)に入れ、ポンプ式スプレー容器にてカテキン水溶液をコーンフレークが均一に濡れるように噴霧した。
【0063】
カテキン製剤の水溶液の噴霧性を以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
(1)カテキン製剤水溶液の噴霧性
3:霧状に噴霧可能で噴霧性が良好である。
2:水滴が発生し、噴霧性がやや不良である。
1:不溶物の目詰り又は高粘度のために噴霧できない。
【0064】
続いて、上記噴霧後、コーンフレークをディスポーサブルアルミバット(アルミバット3号,アズワン社製)へ移して計量し、カテキン製剤水溶液の付着量を求め、カテキン製剤水溶液中のカテキン濃度よりコーンフレークに付着したカテキン類の量を求めた。噴霧後のコーンフレークはディスポーサブルアルミバットごと、予め110℃に余熱しておいたオーブンに15分間入れ加熱乾燥を行った。
【0065】
得られたシリアル食品の品質を以下の基準で評価した。また、評価後にシリアル食品を105℃に設定した定温乾燥器で2時間加熱し、デシケーター内で室温に戻るまで冷却した後のシリアル食品の質量を測定し、シリアル食品乾物質量に対するカテキン類の含有量を求めた。結果を表2に示す。
【0066】
(2)シリアル食品の品質
シリアル食品に水分が吸収されて軟化する(ふやける)とシリアル食品同士が付着し、乾燥後に凝集する傾向にある。凝集したものは乾燥中又は乾燥後に一部槐砕されて粉砕物が生じる。そこで、乾燥前に軟化せず、乾燥後に凝集せず、また粉砕物が生じていない状態が高品質なものであるとし、その観点から次の基準にて評価を行った。
(乾燥前の状態)
3:良好(軟化しない)
2:やや不良(多少軟化する)
1:不良(軟化する)
(乾燥後の凝集状態)
3:良好(シリアル食品同士の凝集なし)
2:やや不良(多少シリアル食品同士の凝集あり)
1:不良(シリアル食品同士の凝集あり)
(乾燥後の粉砕物の量)
3:良好(粉砕物が少ない)
2:やや不良(粉砕物がやや多い)
1:不良(粉砕物が多い)
【0067】
【表2】

【0068】
表2の結果から、カテキン製剤(i)を用いると、固形分40%と高濃度であっても噴霧性が良好であった。また、カテキン製剤(ii)〜(iv)を用いた場合には、固形分40%とすると噴霧性に劣る結果となったが、噴霧自体は可能であった。なお、カテキン製剤(v)を用いた固形分50%の水溶液では、粘度が高く噴霧機が目詰まりして噴霧不可能であった。
また、カテキン製剤(i)、(ii)、(iii)又は(vi)を用いると、これらの固形分40%もの高濃度の水溶液を噴霧してもコーンフレークが軟化しにくく、乾燥後でもシリアル食品同士の凝集が起り難く、また粉砕物の生成も少なかった。
一方、固形分0.5%水溶液の濁度が30度(ホルマジン)以上であるカテキン製剤(v)又は(iv)を固形分40%の水溶液として噴霧すると、コーンフレークの軟化が著しく、乾燥後にシリアル食品同士が凝集し、また粉砕物も多く生じた。
【0069】
上記の結果から、本発明で規定するカテキン精製物を配合することにより、カテキン類を高含有する高品質のシリアル食品を製造できることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリアル食品を成形後、固形分0.5質量%の水溶液としたときの濁度が30度(ホルマジン)以下であるカテキン類含有植物抽出物の精製物の水溶液を噴霧することを含む、カテキン類をシリアル食品乾物質量に対して0.1質量%以上含有するシリアル食品の製造方法。
【請求項2】
カテキン類含有植物抽出物の精製物の水溶液中のカテキン類濃度が1〜50質量%である、請求項1記載のシリアル食品の製造方法。
【請求項3】
カテキン類含有植物抽出物の精製物の水溶液の噴霧量が、シリアル食品100gに対して0.2〜10gである、請求項1又は2記載のシリアル食品の製造方法。
【請求項4】
カテキン類含有植物抽出物の精製物の固形分1.0質量%水溶液の、671.5nmにおける吸光度が0.3以下である請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項5】
カテキン類含有植物抽出物の精製物の固形分40質量%水溶液の20℃における粘度が200mPa・s以下である請求項1〜4のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項6】
固形分0.5質量%の水溶液としたときの濁度が30度(ホルマジン)以下であるカテキン類含有植物抽出物の精製物を配合して製造される、カテキン類をシリアル食品乾物質量に対して0.1質量%以上含有するシリアル食品。
【請求項7】
シリアル食品中の(A)ミリセチン、(B)ケルセチン及び(C)ケンフェロールの含有量の和と、(D)エピガロカテキンガレート及び(E)ガロカテキンガレートの含有量の和との比((A)+(B)+(C)の含有量)/((D)+(E)の含有量)が0.0001〜0.1(質量比)である請求項6記載のシリアル食品。

【公開番号】特開2012−65557(P2012−65557A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210900(P2010−210900)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】