説明

シリカゲルならびにその製造方法

【課題】単分散性に優れたシリカゲルを歩留まり良く、かつ、簡便安価に製造する方法を提供すること。
【解決手段】本発明のシリカゲルの製造方法は、第1の流路にシリカゾルを供給する工程と、第2の流路に液体を供給する工程と、該第1の流路と該第2の流路とが合流する合流点で該シリカゾルと該液体とを層流状態で接触させる工程と、該液体を接触させた該シリカゾルをゲル化する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカゲルおよびその製造方法に関する。より詳細には、本発明は、単分散性に優れたシリカゲルおよびその製造方法に関する。
【0002】
シリカ粒子やシリカエアロゲルを作製する方法としてゾル−ゲル法が知られている。粒度分布が単分散状のシリカ粒子(単分散シリカ粒子)は、各種用途で有用であることから、様々な試みがなされている。例えば、ステーバー法により得られたシリカ粒子を核にしてシード重合することが提案されている(特許文献1参照)。しかし、この方法では、予め核となるシリカ粒子を形成して粒子径を大きくしているので、生産効率に問題がある。特に、大きな粒子径(例えば、数十μm〜数百μm)を有する単分散シリカ粒子を作製する場合、生産効率だけでなく、単分散性が劣るという問題がある。
【特許文献1】特開平10−203820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、単分散性に優れたシリカゲルを歩留まり良く、かつ、簡便安価に製造することにある。また、このシリカゲルを用いて、大きな粒子径を有する場合であっても、単分散性に優れたシリカ粒子やシリカエアロゲルを歩留まり良く、かつ、簡便安価に製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のシリカゲルの製造方法は、第1の流路にシリカゾルを供給する工程と、第2の流路に液体を供給する工程と、該第1の流路と該第2の流路とが合流する合流点で該シリカゾルと該液体とを層流状態で接触させる工程と、該液体を接触させた該シリカゾルをゲル化する工程とを含む。
【0005】
好ましい実施形態においては、上記第2の流路が上記第1の流路の出口を包囲するように形成されている。
【0006】
好ましい実施形態においては、上記第1の流路の出口の形状が実質的に円形である。
【0007】
好ましい実施形態においては、上記第1の流路の出口の内径が10〜300μmである。
【0008】
好ましい実施形態においては、上記第1の流路と上記シリカゾルとの接触角が45〜100°である。
【0009】
好ましい実施形態においては、上記層流のレイノルズ数が0.1〜1000である。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記シリカゾルの流速と上記液体の流速との比が1:0.3〜1:4である。
【0011】
好ましい実施形態においては、上記シリカゾルが水ガラスのpHを調整することにより調製される。
【0012】
好ましい実施形態においては、上記シリカゾルの固形分濃度が0.5〜20wt%である。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記液体の粘度が0.28〜500mPa・sである。
【0014】
好ましい実施形態においては、上記ゲル化が上記シリカゾルのpHを調整することにより行われる。
【0015】
本発明の別の局面においては、シリカゲルが提供される。本発明のシリカゲルは、上記製造方法により得られる。
【0016】
好ましい実施形態においては、CV値が20%以下である。
【0017】
本発明のさらに別の局面においては、シリカ粒子が提供される。本発明のシリカ粒子は、上記シリカゲルを乾燥および/または焼成して得られる。
【0018】
本発明のさらに別の局面においては、シリカエアロゲルが提供される。本発明のシリカエアロゲルは、上記シリカゲルとシリル化剤とを反応させて得られる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、単分散性に優れたシリカゲルを歩留まり良く、かつ、簡便安価に製造し得る。また、このシリカゲルを用いることにより、大きな粒子径を有する場合であっても、単分散性に優れた(例えば、CV値が20%以下)シリカ粒子やシリカエアロゲルを歩留まり良く、かつ、簡便安価に製造し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0021】
本発明のシリカゲルの製造方法は、第1の流路にシリカゾルを供給する工程(工程1)と;第2の流路に液体を供給する工程(工程2)と;第1の流路と第2の流路とが合流する合流点でシリカゾルと液体とを層流状態で接触させる工程(工程3)と;液体を接触させたシリカゾルをゲル化する工程(工程4)とを含む。工程1、工程2および工程3は、任意の適切な装置を用いて行い得る。好ましくは、マイクロリアクターが用いられる。
【0022】
図1(a)は、本発明の好ましい実施形態による製造方法に用いられるマイクロリアクター10を上方から見た概略図であり、図1(b)は、そのA−A線による(すなわち、流路方向から見た)断面図である。図2はマイクロリアクター10の斜視図である。マイクロリアクター10は、シリカゾルが供給される第1の流路1と、液体が供給される第2の流路2と、第1の流路1と第2の流路2とが合流して形成される合流流路3とを備える。本実施形態では、第1の流路1の出口は第2の流路2に包囲されており、第1の流路1と第2の流路2とが3次元的に合流している。また、第1の流路1と第2の流路2とは、合流点(すなわち、合流流路3の上流端部)3aの上流側(図示例では右側)においては、隔壁4によって仕切られている。また、マイクロリアクター10は、第1の流路1への供給口1a、第2の流路2への供給口2a、2a´を備える。
【0023】
第1の流路の出口の形状は、任意の適切な形状に設計され得る。好ましくは、図示するように、実質的に円形である。このような構成とすることにより、真球に近いシリカゲル粒子が得られ得る。
【0024】
第1の流路の出口の内径は、例えば、所望のシリカゲル(シリカ粒子、シリカエアロゲル)の粒子径等に応じて、任意の適切な値に設定され得る。好ましくは10〜300μmであり、さらに好ましくは30〜200μm、特に好ましくは50〜150μmである。このような内径を備えることにより、シリカゾルと液体とが層流状態でより適切に合流し得る。また、液体と合流したシリカゾルの液柱が均一に分裂し得、より単分散性に優れたシリカゲル粒子が得られ得る。さらに、より真球に近いシリカゲル粒子が得られ得る。前記シリカゾル(内流)の分裂は、液体(外流)からの全方位からの均一なせん断力と、シリカゾルと液体との表面張力差によって非常に均一におこり得る。
【0025】
なお、本明細書において、流路の「内径」とは、流路方向から見た断面形状が実質的に円形の場合にはその内部の直径を、流路方向から見た断面形状が円形以外の場合には内部の径に対応する長さを意味するものとする。例えば、断面形状が実質的に正方形の場合には、その内部の対角線の長さを意味するものとする。
【0026】
図3(a)は、本発明の別の好ましい実施形態による製造方法に用いられるマイクロリアクター10´を上方から見た概略図であり、図3(b)は、そのB−B線による(すなわち、流路方向から見た)断面図である。これらの図に示すように、マイクロリアクター10’は、第1の流路1に挿通され、少なくとも第1の流路の出口の内径を調節し得る流路調節具20を備えていてもよい。流路調節具20は、第1の流路として機能し得る貫通路21が形成されている。このような流路調節具を備えることにより、第1の流路の内径を容易に調節し得る。貫通路の断面形状は、上述の所望の第1の流路の出口の形状に応じて、適宜設計され得る。流路調節具は、任意の適切な材料で形成され得る。好ましくは、流路調節具は、エポキシ樹脂、ステンレス、アルミナセラミックス、ニッケル、ガラス等で形成され得る。容易かつ正確に作製できるからである。
【0027】
上記第1の流路および/または上記貫通路の周壁は、任意の適切な表面処理が施され得る。好ましくは撥水処理である。後述のシリカゾルとの接触角を容易に調節し得、所望のシリカゲル粒子が得られ得るからである。さらには、耐久性が向上し得る。撥水処理に用いられる撥水剤としては、任意の適切な樹脂を含有する撥水剤が採用され得る。樹脂の具体例としては、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0028】
上記第2の流路の出口の形状は、任意の適切な形状に設計され得る。好ましくは、図示するように、実質的に円形である。さらに、上記第1の流路の出口を含む上記第2の流路の断面は、略同心円状であることが好ましい。上記層流状態が効率的に得られ得るからである。
【0029】
上記第1の流路の出口を含む上記第2の流路の断面の内径は、好ましくは、0.3〜3.0mm、さらに好ましくは0.6〜2.2mm、特に好ましく0.8〜1.6mmである。このような内径を備えることにより、シリカゾルと液体とが層流状態でより適切に合流し得、所望のシリカゲル粒子を得ることができる。
【0030】
上記合流流路の内径は、好ましくは0.3〜3.0mm、さらに好ましくは0.4〜2.2mm、特に好ましくは0.6〜1.6mmである。このような内径を備えることにより、シリカゾルと液体とが層流状態でより適切に合流し得、所望のシリカゲル粒子を得ることができる。
【0031】
上記第1の流路1、第2の流路2および合流流路3の流路方向に沿った断面形状は、任意の適切な形状に設計され得る。例えば、図1〜3に示すように、第1の流路1の流路方向に沿った断面は実質的に直線状であり、第2の流路2の流路方向に沿った断面はテーパー状であり、合流流路3の流路方向に沿った断面は実質的に直線状である。別の実施形態においては、合流流路3の流路方向に沿った断面は実質的にテーパー状であり得る。さらに別の実施形態においては、第1の流路1の流路方向に沿った断面は実質的にテーパー状であり、かつ、第2の流路のテーパーよりも小さいテーパーであり得る。また、例えば、図1に示すように、供給口1aから第1の流路1へ向かう流路や、供給口2a(2a´)から第2の流路2へ向かう流路が、流路方向に沿って障害となる突起部や角部などを有さない形状であることも、気泡等の混入を避ける点で好ましい形態の1つである。
【0032】
第1の流路1の全長は、代表的には10〜40mmである。第2の流路2の全長は、代表的には10〜40mmである。合流流路3の全長は、代表的には10〜40mmである。マイクロリアクター10の流路の全長(第1の流路の入口〜合流流路の出口)は、代表的には20〜70mmである。
【0033】
マイクロリアクターにおいて、供給口の形状、数および位置は、目的に応じて適宜設計され得る。例えば、図1〜3に示すように、供給口1a、2a、2a´が全て側面に位置する形態であってもよいし、供給口1a、2a、2a´が全て上方に位置する形態であってもよい。本発明のマイクロリアクターは、図1〜3に示すように、第2の流路2への液体の供給口を複数個備えることが好ましい(図1〜3においては2aと2a´)。より好ましくは2〜5個、さらに好ましくは2〜3個である。このような構造とすることで、第2の流路2中における気泡の発生等を防止することが可能となるとともに、十分な層流を実現することが可能となる。
【0034】
マイクロリアクターは、第1の流路1中におけるシリカゾルの流量と第2の流路2中における液体の流量を可変するための流量制御手段を備えていてもよい。好ましくは、流量制御手段を出口側よりも供給口側に近いところ(上流側)に備える。流量制御手段としては、例えば、シリンジポンプ、ギアポンプなどが挙げられ、好ましくはシリンジポンプである。流量制御手段を備えることにより、第1のシリカゾルおよび/または液体の流量を可変し得る。その結果、得られるシリカゾルの粒子径を制御し得る。なお、流路制御手段と第1の流路および/または第2の流路との接続は、気泡等の混入を避け得る構成とすることが好ましい。
【0035】
マイクロリアクターは、どのような方法で作製しても良いが、容易且つ正確に作製できる等の点で、光造形法により作製することが好ましい。光造形法とは、3次元CADデータで設計された立体像を2次元のスライスデータに変換し、このデータに基づいて、レーザーで一層ずつ光硬化性樹脂を硬化させていき、3次元に積層造形していく方法である。より具体的には、3次元CADデータで設計された立体像を、幾層もの薄い断面体にスライスして2次元のスライスデータに変換し、この2次元のスライスデータに基づいてレーザーがタンク内の光硬化性樹脂の表面を走査して断面形状を描いていく。レーザーが当たった部分は硬化し、エレベーター上に一層分の断面体が形成される。その後、エレベーターが一層分ずつ下降して、連続的に幾層もの薄い断面体を積層し、3次元に積層造形していく。最後にエレベーターを引き上げることで、3次元に積層造形されたモデルを取り出し、後処理を施して完成させる。光造形法に用いることができる光造形装置としては、例えば、株式会社ディーメック製の光造形装置(例えば、SCS−1000HDなど)が挙げられる。光造形法に用いることができる光硬化性樹脂としては、例えば、株式会社ディーメック製の光硬化性樹脂(例えば、オキセタン系のSCR950など)が挙げられる。レーザーとしては、例えば、He−Cdレーザー(ピーク波長=325nm)が挙げられる。レーザーのスポットサイズは、例えば、φ10〜100μmが好ましく、φ30〜70μmがより好ましい。硬化させて得られる樹脂一層分の厚みは、例えば、10〜50μmが好ましく、20〜40μmがより好ましい。
【0036】
本発明の好ましい実施形態によるシリカゲルの製造方法は、上記第1の流路にシリカゾルを供給する工程と(工程1);上記第1の流路の出口を包囲するように形成された上記第2の流路に液体を供給する工程と(工程2);上記第1の流路と上記第2の流路とが合流する合流点でシリカゾルと液体とを層流状態で接触させる工程と(工程3);液体を接触させたシリカゾルをゲル化する工程(工程4)とを含む。
【0037】
上記シリカゾルは、水系ゾルであってもよく、有機溶剤系ゾルであってもよい。好ましくは、水系ゾルである。水系ゾルは、安定性に優れ、作製も容易であり、低コストで得ることができる。また、上述のように、マイクロリアクターは、代表的には、親油性の材料で形成される。したがって、水系ゾルを用いることにより、液体と接触させる際のシリカゾルの切れ(液滴発生)が優れ得る。その結果、より単分散性に優れたシリカゲル粒子が得られ得る。
【0038】
シリカゾルは、任意の適切な方法により調製され得る。例えば、ケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラス)等のケイ酸アルカリ金属塩のpHを調整することにより調製される。好ましくは、塩酸等の酸で中和することにより調製される。この場合、第1の流路に供給するシリカゾルのpHは、好ましくは1〜6、さらに好ましくは2〜5、特に好ましくは3〜5である。このようなpHに調整することにより、安定なシリカゾルが得られ、かつ、ゲル化を適切に行うことができる。なお、第1の流路に供給するシリカゾルをアルカリ性にpH調整することも可能であるが、酸性にpH調整することで、より単分散性に優れ、乾燥時に割れにくく、より真球に近いシリカゲル粒子が得られ得る。
【0039】
シリカゾルの別の調製方法としては、例えば、テトラアルキルオルソシリケートおよび/またはそのオリゴマーを、酸またはアルカリを触媒として加水分解した後、適宜pHを調整する方法が挙げられる。テトラアルキルオルソシリケートの具体例としては、テトラメチルオルソシリケート、テトラエチルオルソシリケート等が挙げられる。触媒の具体例としては、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸;酢酸などの有機酸;アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの無機塩基;トリエチルアミン、トリエタノールアミン、エタノールアミン、水酸化トリメチルアミンなどの有機塩基等が挙げられる。シリカゾルのさらに別の調製方法としては、例えば、水中にテトラクロロシランを投入して加水分解した後、適宜pHを調整する方法が挙げられる。
【0040】
シリカゾルの固形分濃度は、例えば、所望のシリカ粒子やシリカエアロゲルの粒子径、空隙率等に応じて、任意の適切な値に設定され得る。好ましくは0.5〜20wt%、さらに好ましくは1〜10wt%、特に好ましくは2〜6wt%である。適切にゲル化させ得るからである。0.5wt%より低濃度である場合、ゲル化が起こりにくい、ゲル構造の不均一化により乾燥時に割れる、真球状になりにくい等のおそれがある。一方、20wt%より高濃度である場合、ゾル作製時のpH調整が困難である、ゲル化の制御が困難である等のおそれがある。このような固形分濃度のシリカゾルを用いることにより、上記第1の流路へのシリカゾルの供給をスムーズに行い得る。
【0041】
シリカゾルの粘度は、好ましくは0.28〜500mPa・s、さらに好ましくは1〜100mPa・sである。このような粘度を有するシリカゾルを用いることにより、安定して送液することができる。
【0042】
シリカゾルと上記第1の流路との接触角は、好ましくは45〜100°であり、さらに好ましくは50〜100°であり、特に好ましくは60〜90°である。液体と合流したシリカゾルの液柱がより均一に分裂し得、より単分散性に優れたシリカゲル粒子が得られ得る。さらに、より真球に近いシリカゲル粒子が得られ得る。
【0043】
上記液体は、親油性であっても、親水性であってもよく、シリカゾルの性状に応じて適宜選択し得る。上記シリカゾルが水系ゾルである場合、好ましくは、液体は親油性(水と混和しない)である。この場合、液体としては、大豆油、コーン油、オリーブ油、ヤシ油、等の植物性油、灯油等の液状油;トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、クロロホルム等の有機溶媒を含み得る。これらの中でも、植物性油が好ましく用いられる。安価かつ安全性に優れるからである。
【0044】
液体は、任意成分を含み得る。任意成分としては、例えば、界面活性剤が挙げられる。界面活性剤を用いることにより、単分散のシリカゾル粒子がより得られ易く、液体中のシリカゾル粒子の安定性を向上させ得る。また、シリカゾルと液体の混合液を回収した後にバッチ式で後述のゲル化処理を行う場合、層流下でシリカゾルがゲル化するのを抑制し得る。界面活性剤の具体例としては、非イオン界面活性剤、イオン性界面活性剤等が挙げられる。好ましくは、非イオン性界面活性剤が用いられる。非イオン界面活性剤としては、ソルビタンアルキレート等のソルビトール誘導体;グリセリンアルキレート等のグリセリン誘導体;ポリエチレングリコールアルキレート等のポリエチレングリコール誘導体等が挙げられる。これらは、単独で、または、二種以上組み合わせて用いられる。これらの中でも、好ましくは、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステアレート、グリセロールモノステアレートまたはこれらの混合物が用いられる。上記液状油、有機溶媒の種類に応じて、任意の適切なHLBを有する界面活性剤が用いられ得る。具体的には、液体が大豆油等の植物性油を含む場合、界面活性剤のHLBは、好ましくは、3.0〜9.0である。
【0045】
液体の粘度は、例えば、所望のシリカゲルの粒子径等に応じて、任意の適切な値に設定され得る。好ましくは0.28〜500mPa・s、より好ましくは1〜500mPa・s、さらに好ましくは1〜200mPa・s、特に好ましくは2〜100mPa・sである。より安定な層流状態を形成し得るからである。
【0046】
液体と上記第2の流路との接触角は、好ましくは0〜40°であり、さらに好ましくは0〜30°であり、特に好ましくは0〜20°である。
【0047】
シリカゾルおよび/または液体は、予め、脱泡処理がなされていることが好ましい。気泡等の発生を抑制し得、より単分散性に優れたシリカゲル粒子が得られ得るからである。脱泡処理の具体例としては、減圧処理等が挙げられる。
【0048】
上述のマイクロリアクターを用いることにより、上記シリカゾルおよび上記液体は、マイクロリアクターの合流点および合流流路で層流を形成し得る。シリカゾルおよび液体を層流状態で接触させることにより、液/液界面に沿った形状を有するシリカゾル粒子を流路進行方向に安定的に生成させ得、二相系(液/液)で非常に安定な反応(例えば、ゲル化)が可能となる。また、第1の流路と該第2の流路を3次元的に合流させることで、シリカゾルと液体を層流状態でより均一に接触させ得、液体と合流したシリカゾルの液柱がより均一に分裂し得、より単分散性に優れたシリカゲル粒子が得られ得る。さらに、より真球に近いシリカゲル粒子が得られ得る。
【0049】
上記層流のレイノルズ数は、好ましくは0.1〜1000、より好ましくは0.1〜500、さらに好ましくは0.1〜200、特に好ましくは0.1〜100である。このような非常に小さいレイノルズ数であれば、シリカゾルと液体の流速比、流量比を調整することにより、合流後の液幅を制御することができる。その結果、所望のサイズを有するシリカゲル粒子を非常に正確に生成させ得る。また、レイノルズ数を前記範囲に制御することにより、マイクロリアクター内のシリカゾルおよび/または液体の流速を上昇させても、層流状態に乱れが生じ難く、生産性に優れ得る。
【0050】
上記シリカゾルは、好ましくは、上記第1の流路に連続的に(すなわち、実質的に整流で)供給される。上記液体は、好ましくは、上記第2の流路に連続的に供給される。シリカゾルおよび液体の上記流路への供給方法は、任意の適切な方法が採用され得る。
【0051】
上記シリカゾルの流速と上記液体の流速との比は、例えば、所望のシリカゲルの粒子径等に応じて、任意の適切な値に設定され得る。好ましくは1:0.3〜1:4、さらに好ましくは1:0.5〜1:2、特に好ましくは1:0.7〜1:1.5である。液体と合流したシリカゾルの液柱がより均一に分裂し得、より単分散性に優れたシリカゲル粒子が得られ得る。さらに、より真球に近いシリカゲル粒子が得られ得る。シリカゾルの流速は、好ましくは0.5〜50mm/秒、さらに好ましくは1〜30mm/秒、特に好ましくは2〜15mm/秒である。液体の流速は、好ましくは0.3〜150mm/秒、さらに好ましくは1〜100mm/秒、特に好ましくは2〜50mm/秒である。液体と合流して生成したシリカゾルの液滴の結合、分離等を防止し得るからである。その結果、より単分散性に優れたシリカゲル粒子が得られ得る。さらに、より真球に近いシリカゲル粒子が得られ得る。なお、本明細書において、「流速」とは、線速度をいう。
【0052】
好ましくは、シリカゾルの流量は液体の流量よりも小さい。シリカゾル粒子を安定的に生成し得るからである。さらに、液体の流量を大きくすることにより、合流流路において、生成したシリカゾル粒子に起因する流路壁の摩擦や閉塞を防止し得る。具体的には、シリカゾルの流量と液体の流量との比は、好ましくは1:2〜1:5000、さらに好ましくは1:10〜1:2500、特に好ましくは1:50〜1:2000である。シリカゾルの流量は、好ましくは0.2〜40μl/分、さらに好ましくは0.5〜20μl/分、特に好ましくは1〜10μl/分である。液体の流量は、好ましくは50〜10000μl/分、さらに好ましくは100〜5000μl/分、特に好ましくは200〜2500μl/分である。
【0053】
上記液体を接触させたシリカゾル(シリカゾル粒子)のゲル化方法は、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、シリカゾルを加熱する方法、シリカゾルのpHを調整する方法、シリカゾルに硬化剤(例えば、錫化合物)を添加する方法等が挙げられる。加熱する方法を採用する場合、好ましくは、マイクロリアクター内(層流下)で加熱を行う。より安定した真球状態でゲル化させ得るからである。加熱温度は、好ましくは40〜95℃、さらに好ましくは60〜80℃である。加熱温度が40℃未満であると、ゲル化の進行が遅いおそれがある。一方、95℃を超えると、水の気化・沸騰により生成したゲルが破壊するおそれがある。pHを調整する方法は、具体的には、シリカゾルが酸性の場合はpHを上昇させ、シリカゾルがアルカリ性の場合はpHを降下させる。シリカゾルが酸性の場合、好ましくは、上記液体は塩基性化合物を含む。塩基性化合物としては、好ましくは、上記液体および水の両方に溶解する化合物である。当該塩基性化合物としては、好ましくは、有機アミン類が用いられる。液/液界面より塩基性化合物がシリカゾル粒子中に拡散してpHを上昇させることによって、シリカゾルの硬化反応を促進させ得る。有機アミン類としては、1級、2級および3級アミンのいずれも用いられ得る。
【0054】
上記シリカゲル粒子の粒子径は、所望のシリカ粒子やシリカエアロゲルの粒子径、空隙率等に応じて、任意の適切な値に制御され得る。粒子径の制御は、例えば、上記シリカゾルおよび液体の流速比、第1の流路の出口の内径、液体の粘度や表面張力、シリカゾルの固形分濃度等を適宜調整することにより行い得る。
【0055】
本発明のシリカ粒子は、上記シリカゲルに任意の適切な処理を施すことにより得られ得る。例えば、上記シリカゲルを乾燥および/または焼成する方法が挙げられる。
【0056】
本発明のシリカエアロゲルは、上記シリカゲルに任意の適切な処理を施すことにより得られ得る。例えば、上記シリカゲル(湿潤ゲル)とシリル化剤とを反応させて、乾燥する方法が挙げられる。具体的には、シリカゲルの細孔表面に存在するシラノール基(水酸基)とシリル化剤とを反応(細孔表面修飾)させ、シラノール基の反応性を消失させることによって、乾燥後に元のゲル骨格の形態に戻り(スプリングバック)、シリカエアロゲルが得られ得る。
【0057】
上記細孔表面修飾の方法の具体例としては、上記シリカゲル(水を含む湿潤ゲル)を水と混和する有機溶剤に投入して細孔内の水を有機溶剤に変換して、シリル化剤と反応させる方法が挙げられる。ここで、有機溶剤への変換を十分に行い、水分量をできるだけ少なくすることが好ましい。水が残存するとシリル化剤が失活し得、表面修飾を十分に行えないおそれがあるからである。また、シリル化剤と反応させる前に、有機溶剤をシリル化剤と反応しない非プロトン性溶剤に交換することが好ましい。
【0058】
上記有機溶剤としては、好ましくは、水と混和する有機溶媒が用いられる。具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、アセトン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。上記シリル化剤としては、例えば、トリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン等が挙げられる。シリル化剤は、予め、非プロトン性溶媒に0.1〜10wt%の濃度で溶解させて反応させることが好ましい。シリル化剤との反応温度は、好ましくは、室温から60℃程度である。反応時間は、好ましくは、10分から2日である。上記非プロトン性溶剤としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、ケロシン等が用いられる。
【0059】
シリル化剤との反応後に行う乾燥は、好ましくは、未反応のシリル化剤を溶剤交換等により取り除いた後に行う。乾燥条件は、例えば、大気圧下または減圧下で、室温〜300℃である。
【0060】
上述の方法により得られるシリカエアロゲルは、細孔表面が疎水化され得、疎水性であり得る。その結果、耐水性を有するとともに、吸湿による影響を受けにくく、低温領域で安定した特性を備え得る。なお、このシリカエアロゲルを熱処理(例えば、300℃以上)することにより、修飾剤である有機物が熱分解して気化し得、細孔表面が親水性のシリカエアロゲルが得られ得る。この親水性シリカエアロゲルは、高温領域での使用に適している。
【0061】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、各実施例で得られた粒子の粒子径およびCV値は、以下に示す方法で測定した。また、粘度および接触角は、以下に示す方法で測定した。
1.粒子径およびCV値
得られた粒子を顕微鏡(キーエンス製)で観察して測長した。
2.粘度
振動式粘度計(VISCOMATE VM−1G)により測定した。
3.接触角
接触角計(DM−500、協和科学製)により測定した。
【実施例1】
【0062】
(シリカゾルの調製)
6mol/lの塩酸5.0gに10wt%のケイ酸ナトリウム水溶液14.32gを加え、さらに水9.32gを加えてスターラーで十分に撹拌し、5wt%のシリカゾルAを調製した。一方、10w%のケイ酸ナトリウム水溶液2.0gに水を18g加えて希釈し、1wt%のケイ酸ナトリウム水溶液を調製した。シリカゾルAのpHは2であり、このシリカゾルA3.02gに、1wt%のケイ酸ナトリウム水溶液を0.16g添加することによりpHが3.8のシリカゾルを調製した。得られたシリカゾルは、粘度5.1mPa・s、第1の流路との接触角75°であった。
【0063】
(大豆油溶液の調製)
大豆油270gに、ソルビタンモノオレエート(Span80)30gを加えてスターラーで十分に撹拌し、大豆油溶液を調製した。得られた大豆油溶液は、粘度60mPa・s、第2の流路との接触角15°であった。
【0064】
(マイクロリアクターの作製)
図3に示すマイクロリアクターについて、光造形装置(株式会社ディーメック製、商品名:SCS−1000HD)を用い、3次元CADデータで設計された立体像を、幾層もの薄い断面体にスライスして2次元のスライスデータに変換した。タンク内に光硬化性樹脂(株式会社ディーメック製、商品名:SCR950)とエレベーターを入れ、この2次元のスライスデータに基づいてレーザー(He−Cdレーザー、ピーク波長=325nm)をタンク内の光硬化性樹脂の表面に走査させ、断面形状を描いていった。レーザーのスポットサイズはφ50μmであった。レーザーが当たった部分は硬化し、エレベーター上に一層分の断面体(樹脂一層分の厚み=30μm)が形成された。その後、エレベーターが一層分ずつ下降して、連続的に幾層もの薄い断面体を積層し、3次元に積層造形していった。最後にエレベーターを引き上げることで、3次元に積層造形されたモデルを取り出し、後処理を施して、図3に示すマイクロリアクターを完成させた。
第1の流路の流路調節具として、ポリイミド系樹脂を含有する撥水剤(商品名:カプトン、東レ製)で周壁を撥水処理したガラス管を、第1の流路に挿通させた。
得られたマイクロリアクターの第1流路の出口の内径は100μm、第1の流路の出口を含む第2の流路の断面の内径は2mmであった。また、第1の流路の全長は15mm、第2の流路の全長は15mmであった。
【0065】
(シリカゲルの調製)
上記で作製したマイクロリアクターを用い、第1の流路に上記で得られたシリカゾルを流し、第2の流路に上記で得られた大豆油溶液を流した。シリカゾルおよび大豆油溶液は、いずれもシリンジポンプを用いて連続的に流した。シリカゾルの流量を2.0μl/分(流速4.2mm/秒)とし、大豆油溶液の流量を1000μl/分(流速4.4mm/秒)として、流量比を1:500(流速比を1:1.05)とした。マイクロリアクターの合流点でシリカゾルと大豆油溶液とを接触させ、大豆油溶液のせん断力によりシリカゾルのエマルジョンを調製した。
マイクロリアクターを通過したエマルジョンを、55℃の上記大豆油溶液に添加し、55℃に加熱することによりシリカゲルを得た。このシリカゲルを、アセトンを用いて十分に洗浄した。得られたシリカゲルの粒子径は131μmであり、CV値は6.7%であった。
【実施例2】
【0066】
(シリカゲルの調製)
大豆油溶液の流量を1200μl/分(流速5.3mm/秒)として、流量比を1:600(流速比を1:1.24)としたこと以外は実施例1と同様にして、シリカゲルを得た。得られたシリカゲルの粒子径は103μmであり、CV値は8.7%であった。
【実施例3】
【0067】
(シリカ粒子の調製)
実施例1で得られたシリカゲルを2日間室温で乾燥させた後、150℃で2時間焼成し、シリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子の粒子径は96μmであり、CV値は7.3%であった。
【実施例4】
【0068】
(シリカエアロゲルの調製)
実施例1で得られたシリカゲルをエタノールに入れ、ゲル細孔中の水をエタノールに交換した。この操作を2回繰り返した。次に、ヘキサン中に入れ、ゲル細孔中のエタノールをヘキサンに交換した。この操作も2回繰り返した。これに、トリメチルクロロシランのヘキサン溶液を加え、室温で15時間反応させた。その後、ヘキサンで洗浄し、室温で乾燥させ、最後に150℃で2時間乾燥させシリカエアロゲルを得た。得られたシリカエアロゲルの粒子径は、もとのシリカゲルの粒子径とほぼ同じの129μmであり、CV値は7.2%であった。
【0069】
実施例1〜4で得られた各粒子は、いずれも比較的大きな粒子径を有しているにもかかわらず、優れたCV値を示した。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のシリカ粒子は、例えば、液晶表示装置のスペーサー、半導体素子の封止材用等の機能性フィラーとして好適に用いられる。また、本発明のシリカエアロゲルは、例えば、断熱材、防音材、機能性フィラーとして好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】(a)は、本発明の好ましい実施形態による製造方法に用いられるマイクロリアクターを上方から見た概略図であり、(b)は、そのマイクロリアクターの流路方向から見た断面図である。
【図2】図1におけるマイクロリアクターの斜視図である。
【図3】(a)は、本発明の別の好ましい実施形態による製造方法に用いられるマイクロリアクター上方から見た概略図であり、(b)は、そのマイクロリアクターの流路方向から見た断面図である。
【図4】実施例1で得られたシリカゲル粒子の観察写真である。
【符号の説明】
【0072】
10 マイクロリアクター
20 流路調節具
1 第1の流路
2 第2の流路
3 合流流路
4 隔壁
1a 第1の流路への供給口
2a 第2の流路への供給口
2a´ 第2の流路への供給口
3a 合流点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の流路にシリカゾルを供給する工程と、
第2の流路に液体を供給する工程と、
該第1の流路と該第2の流路とが合流する合流点で該シリカゾルと該液体とを層流状態で接触させる工程と、
該液体を接触させた該シリカゾルをゲル化する工程とを含む、シリカゲルの製造方法。
【請求項2】
前記第2の流路が前記第1の流路の出口を包囲するように形成されている、請求項1に記載のシリカゲルの製造方法。
【請求項3】
前記第1の流路の出口の形状が実質的に円形である、請求項1または2に記載のシリカゲルの製造方法。
【請求項4】
前記第1の流路の出口の内径が10〜300μmである、請求項1から3のいずれかに記載のシリカゲルの製造方法。
【請求項5】
前記第1の流路と前記シリカゾルとの接触角が45〜100°である、請求項1から4のいずれかに記載のシリカゲルの製造方法。
【請求項6】
前記層流のレイノルズ数が0.1〜1000である、請求項1から5のいずれに記載のシリカゲルの製造方法。
【請求項7】
前記シリカゾルの流速と前記液体の流速との比が1:0.3〜1:4である、請求項1から6のいずれかに記載のシリカゲルの製造方法。
【請求項8】
前記シリカゾルが水ガラスのpHを調整することにより調製される、請求項1から7のいずれかに記載のシリカゲルの製造方法。
【請求項9】
前記シリカゾルの固形分濃度が0.5〜20wt%である、請求項1から8のいずれかに記載のシリカゲルの製造方法。
【請求項10】
前記液体の粘度が0.28〜500mPa・sである、請求項1から9のいずれかに記載のシリカゲルの製造方法。
【請求項11】
前記ゲル化が前記シリカゾルのpHを調整することにより行われる、請求項1から10のいずれかに記載のシリカゲルの製造方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の製造方法により得られる、シリカゲル。
【請求項13】
CV値が20%以下である、請求項12に記載のシリカゲル。
【請求項14】
請求項12または13に記載のシリカゲルを乾燥および/または焼成して得られる、シリカ粒子。
【請求項15】
請求項12または13に記載のシリカゲルとシリル化剤とを反応させて得られる、シリカエアロゲル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−286645(P2009−286645A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−138987(P2008−138987)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(591167430)株式会社KRI (211)
【Fターム(参考)】