説明

シリカ分散液及びインクジェット記録媒体用塗布液

【課題】高濃度かつ低粘度の気相法シリカ分散液を提供する。
【解決手段】アルミナドープシリカと、環状アンモニウム塩型カチオン性樹脂と、水溶性多価金属塩と、水性媒体とを含み、有機溶剤含有量を前記アルミナドープシリカに対して1質量%未満とし、かつ、前記アルミナドープシリカ含有量を全質量に対して25質量%以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリカ分散液及びインクジェット記録紙用塗布液に関するものであって、特に気相法シリカ分散液及び前記気相法シリカ分散液を含有するインクジェット記録媒体用塗布液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報技術産業の急速な発展に伴い、種々の情報処理システムが開発され、その情報処理システムに適した記録方法および記録装置も開発され、各々実用化されている。これらの記録方法の中でも、インクジェット記録方法は、多種の被記録媒体に記録可能なこと、ハード(装置)が比較的安価でコンパクトであること、静粛性に優れること等の利点から、オフィスは勿論、いわゆるホームユースにおいても広く用いられてきている。また、近年のインクジェットプリンターの高解像度化に伴い、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得ることも可能になってきており、このようなハード(装置)の進歩に伴って、インクジェット記録用の記録シートも各種開発されてきている。
【0003】
例えば、微細な無機微粒子と水溶性樹脂とを含有し、高い空隙率を有するインク受容層が支持体上に設けられたインクジェット記録媒体が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
これらの記録媒体、特に、無機微粒子としてアルミナドープシリカを用いた多孔質構造からなるインク受容層を設けたインクジェット記録媒体は、その構成によりインク吸収性に優れ、高解像度の画像を形成し得る高いインク受容性能を有し且つ高光沢を示すことができる。
【0004】
上記のようなインクジェット記録媒体の製造においては、インク受容層形成用の塗布液(以下、「インクジェット記録媒体用塗布液」と称する。)に用いる無機微粒子分散液中で上記無機微粒子が良好に分散されている必要がある。しかし、該無機微粒子は分散液中で凝集することがあり、分散液が増粘して、その結果塗布に支障をきたすことがあった。
【0005】
一方、無機微粒子分散液の濃度を上げることは、塗布液濃度の増加による塗布乾燥中の乾燥負荷の軽減に寄与し、塗布スピードを上げる基礎技術となり得る。しかし、分散液中の無機微粒子濃度が増加すると、一般に凝集しやすくなり分散が困難になる。また、たとえ分散ができても分散液の粘度が著しく上昇し、例えば支持体上に塗布液として塗布することが困難になる。特に、気相法シリカを無機微粒子として用いた高濃度分散液を調製することは困難であった。これに対して気相法シリカにアルミナを添加したアルミナドープシリカと有機溶剤とを用いることで比較的高濃度の気相法シリカ分散液を得る技術が特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2005−254656号公報
【特許文献2】特開2000−141867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
気相法シリカ分散液中のシリカ濃度の増加はその差がわずかであっても、生産性の向上に寄与しうる。また、気相法シリカ分散液を用いてインクジェット記録媒体用塗布液を調製する場合、前記分散液に水溶性樹脂を加えると前記塗布液の液粘度が著しく増加し、塗布が良好に行えなくなるという課題があった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高濃度の気相法シリカ分散液の提供と低粘度の気相法シリカ含有インクジェット記録媒体用塗布液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
(1)アルミナドープシリカと、環状アンモニウム塩型カチオン性樹脂と、水溶性多価金属塩と、水性媒体とを含有するシリカ分散液であって、有機溶剤含有量が前記アルミナドープシリカ質量に対して1質量%未満であり、かつ、前記アルミナドープシリカ含有量が全質量の25質量%以上であることを特徴とするシリカ分散液である。
(2)前記環状アンモニウム塩型カチオン性樹脂がポリジアリルアミン誘導体を含有することを特徴とする前記(1)に記載のシリカ分散液である。
(3)前記環状アンモニウム塩型カチオン性樹脂がポリジアリルジメチルアンモニウム塩であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のシリカ分散液である。
(4)前記環状アンモニウム塩型のカチオン性樹脂の重量平均分子量が2000〜100000の範囲であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のシリカ分散液である。
(5)前記水溶性多価金属塩がジルコニウムの水溶性塩であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のシリカ分散液である。
(6)水溶性樹脂と前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載のシリカ分散液とを含むことを特徴とするインクジェット記録媒体用塗布液である。
(7)前記水溶性樹脂が、けん化度90%未満のポリビニルアルコールであることを特徴とする前記(6)に記載のインクジェット記録媒体用塗布液である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高濃度かつ低粘度の気相法シリカ分散液を提供することができる。また、低粘度の気相法シリカ含有インクジェット記録媒体用塗布液を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明のシリカ分散液及びインクジェット記録媒体用塗布液について詳細に説明する。
【0010】
(シリカ分散液)
本発明のシリカ分散液はアルミナドープシリカと、環状アンモニウム塩型カチオン性樹脂と、水溶性多価金属塩と、水性媒体とを含むシリカ分散液であって、分散液中の有機溶剤含有量が前記アルミナドープシリカ質量に対して1質量%未満であり、かつ、前記アルミナドープシリカ含有量が分散液の全質量に対して25質量%以上であることを特徴とする。
【0011】
−アルミナドープシリカ−
本発明に係るアルミナドープシリカは、アルミナがドープされた気相法シリカを意味する。ここで気相法シリカとは、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法等によって得られた無水シリカ微粒子を意味する。
【0012】
本発明に係るアルミナドープシリカとは、例えば、特開2000−118124号公報に記載される方法により製造される粒子であり、例えば、日本アエロジル社製のMOX170が市販されている。
【0013】
アルミナドープシリカを製造する方法としては、例えば、AlCl3を含む溶液中にシリカ粒子を入れて、その表面に溶液をコーティングし、その後、乾燥、焼成する方法(溶液法)や、アルミニウム及びケイ素の化合物をガス化し、その混合ガスを火炎中で反応させて混合酸化物を得る方法(火炎加水分解法)、またはガス化したケイ素化合物(典型的には、SiCl4などのハロゲン化物)をフレーム(火炎)中に送り、アルミニウム化合物、例えばAlCl3を含むエアロゾルと反応させた後ガスから分離する等の方法により得ることができる。
【0014】
本発明に係るアルミナドープシリカとしては、その平均一次粒子径が50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、特に15nm以下であることが好ましい。微粒子の平均一次粒子径が15nm以下であると、インク吸収特性を効果的に向上させることができ、また同時にインク受容層表面の光沢性をも高めることができる。また、前記微粒子の平均一次粒子径の下限は特に限定はないが、1nm以上であることが好ましい。
【0015】
アルミナドープシリカは水に分散させたときにマイナス帯電が気相法シリカよりも大きく、分散剤のカチオンポリマーを吸着させやすい傾向があることにより、アルミナがドープされていない一般の気相法シリカを用いる場合に比べて、より高濃度の気相法シリカ分散液を調製することができる。
【0016】
前記アルミナドープシリカのシリカ分散液中における含有量としては、分散液の全質量に対して25質量%以上である必要がある。これにより高濃度のインクジェット記録媒体用塗布液を調製することが可能となる。
【0017】
本発明のシリカ分散液において、アルミナドープシリカは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。また、アルミナドープシリカ以外の微粒子を併用してもよい。アルミナドープシリカ以外の微粒子としては、沈降法シリカ微粒子、気相法シリカ微粒子、コロイダルシリカ粒子、アルミナ微粒子、擬ベーマイト型水酸化アルミニウム微粒子及び有機微粒子から選ばれる少なくとも1種の微粒子を挙げることができる。
【0018】
−環状アンモニウム塩型カチオン性樹脂−
本発明のシリカ分散液は、環状アンモニウム塩型カチオン性樹脂の少なくとも1種を含有する。環状アンモニウム塩型カチオン性樹脂とは、環状構造を持つ、塩状態の第2級〜第3級アミノ基又は第4級アンモニウム塩基を有する高分子分散剤である。前記カチオン性樹脂は環状第2級〜第3級アミノ基又は環状第4級アンモニウム塩基を有する単量体(媒染モノマー)の単独重合体や、前記媒染モノマーと他のモノマー(以下、「非媒染モノマー」という。)との共重合体又は縮重合体として得られるものが挙げられる。また、これらのカチオン性樹脂は、水溶性ポリマー又は水分散性ラテックス粒子のいずれの形態でも使用できる。
【0019】
上記単量体(媒染モノマー)としては、例えば、ジアリルアミン、ジアリルメチルアミン、ジアリルエチルアミン及びそれらのメチルクロリド、エチルクロリド、メチルブロミド、エチルブロミド、ヨウ化メチル、ヨウ化エチルによる4級化物、並びにそれらのアニオンを置換したスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、酢酸塩及びアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
【0020】
具体的には、例えば、ジアリルアミン塩酸塩、ジアリルアミン酢酸塩、ジアリルアミン硫酸塩、ジアリルメチルアミン及びその塩(前記塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルジメチルアンモニウム塩(前記塩の対アニオンとしては、例えば、塩化物イオン、酢酸イオン、硫酸イオンなど)が挙げられる。尚、これらのジアリルアミン誘導体はアミンの形態では重合性が劣るので塩の形で重合し、必要に応じて脱塩することが一般的である。
【0021】
前記非媒染モノマーとは、第1級〜第3級アミノ基及びその塩、第4級アンモニウム塩基等の塩基性又はカチオン性部分を含まず、インクジェットインク中の染料と相互作用を示さない、又は相互作用が実質的に小さいモノマーをいう。
上記非媒染モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル等のアラルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;酢酸アリル等のアリルエステル類;塩化ビニリデン、塩化ビニル等のハロゲン含有単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;エチレン、プロピレン等のオレフィン類、等が挙げられる。
【0022】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル部位の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートが好ましい。
上記非媒染モノマーも、1種単独でまたは2種以上を組合せて使用できる。
【0023】
前記カチオン性樹脂としては、アルミナドープシリカへの吸着しやすさの点から、ポリジアリルアミン誘導体であることが好ましく、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩(前記塩の対アニオンとしては、例えば、塩化物イオン、酢酸イオン、硫酸イオンなど)であることがより好ましく、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドであることがより好ましい。
【0024】
前記カチオン性樹脂の分子量としては、質量平均分子量が2000〜100000の範囲であることが好ましい。分子量が2000以上であることにより、インクジェット記録媒体用塗布液の液粘度安定性が向上し、塗布液粘度の著しい上昇を抑制することができる。一方、100000以下であることにより、前記シリカ分散液の粘度上昇を抑制することができ、更にインクジェット記録媒体用塗布液の液粘度安定性が向上し、塗布液粘度の著しい上昇を抑制することができる。
分子量が2000未満及び100000より大きい場合はインクジェット記録媒体用塗布液の粘度安定性が悪くなり、時間とともに塗布液粘度上昇を引き起こすことがある。
ここでシリカ分散液又はインクジェット記録媒体用塗布液の液粘度は、市販の粘度計(B型粘度計等)を用いて測定することができる。
【0025】
また、前記カチオン性樹脂の含有量としては、アルミナドープシリカ質量に対して0.5質量%〜10質量%の範囲であることが好ましく、1.0質量%〜5.0質量%の範囲であることがより好ましい。前記カチオン性樹脂の含有量が0.5質量%以上であることにより、シリカ分散液の粘度安定性が向上する。一方、10質量%以下であることにより、インクジェット記録媒体の空隙容量の低下を抑制することができる。
ここでインクジェット記録媒体の空隙容量は、市販の水銀ポロシメーター等を用いて測定することができる。
【0026】
−水溶性多価金属塩−
本発明のシリカ分散液は水溶性多価金属塩の少なくとも1種を含有する。これによりアルミナドープシリカの分散性を更に向上させることができる。
【0027】
水溶性多価金属塩としては、例えば、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、クロム、マグネシウム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。
具体的には、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガン二2水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)二水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、酢酸ジルコニル、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム八水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等が挙げられる。
【0028】
水溶性多価金属塩としては、アルミニウムの水溶性塩、ジルコニウムの水溶性塩及びチタンの水溶性塩より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0029】
アルミニウムの水溶性塩としては、例えば無機塩としては塩化アルミニウムまたはその水和物、硫酸アルミニウムまたはその水和物、アンモニウムミョウバン等を挙げることができる。さらに、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物がある。特に、塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が好ましい。
【0030】
塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物とは、主成分が下記の式1、2又は3で示され、例えば〔Al6(OH)153+、〔Al8(OH)204+、〔Al13(OH)345+、〔Al21(OH)603+、等のような塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
【0031】
〔Al2(OH)nCl6-nm 式1
〔Al(OH)3nAlCl3 式2
Aln(OH)mCl(3n-m)0<m<3n 式3
【0032】
ジルコニウムの水溶性塩としては、特に限定されず種々の化合物が使用できるが、例えば、酢酸ジルコニル、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム化合物等が挙げられる。特に酢酸ジルコニルが好ましい。
【0033】
チタンの水溶性塩としては、特に限定されず種々の化合物が使用できるが、例えば、塩化チタン、硫酸チタンが挙げられる。
【0034】
これらの化合物は、pHが不適当に低い物もあり、その場合は適宜pHを調節して用いることも可能である。本発明において、水溶性とは常温常圧下で水に1質量%以上溶解することを目安とする。
【0035】
本発明における水溶性多価金属塩としては、インクジェット記録媒体用塗布液の粘度の点から、ジルコニウムの水溶性塩であることが好ましい。更に前記塗布液の粘度安定性の点から、弱酸性のジルコニウムの水溶性塩がより好ましく、酢酸ジルコニルが更に好ましい。
【0036】
尚、酢酸ジルコニルを用いる場合には、アルミナドープシリカの分散液中に予め酢酸ジルコニルを含有させておき、その後該分散液とバインダーとを混合することが塗布液の粘度安定性の観点で好ましく、アルミナドープシリカの分散処理前に、アルミナドープシリカを含む液中に酢酸ジルコニルを予め共存させて分散処理を行うことが、更に好ましい。
【0037】
本発明における水溶性多価金属塩の含有量は、アルミナドープシリカ質量に対して、0.5質量%〜10質量%が好ましく、より好ましくは1.0質量%〜5.0質量%である。含有量を0.5質量%以上とすることでシリカ分散液の粘度安定性が向上する。また、含有量を10質量%以下とすることでインクジェット記録媒体表面のひび割れが発生しにくくなる。
【0038】
本発明における水溶性多価金属塩は、1種単独で又は2種以上を組み合せて使用することができる。
【0039】
−水性媒体−
本発明のシリカ分散液は水性媒体を含む。前記水性媒体は主として水からなるが、その水としては蒸留水でもイオン交換水でもよい。また前記水性媒体には必要に応じて有機溶剤を含有させることができる。これによりシリカ分散液の液粘度安定性を向上させることができる。
【0040】
有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;シクロヘキサノール等の環状アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ類;酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル等のエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブエステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、トルエン等の一般的な有機溶剤が挙げられる。中でも、メタノール、エタノール等のアルコール類が取り扱い性の点で好ましい
【0041】
前記有機溶剤の含有量はアルミナドープシリカ質量に対して1質量%未満とする。1質量%未満とすることにより、分散作業の時の臭気を抑制することができ、作業性を向上させることができる。併せて、極性溶媒である水を用いた水系のシリカ分散液を高濃度にしつつ、低粘度に調製することができる。更に使用する有機溶剤の種類に因らず分散機に防爆設備を設置する必要がなくなる。
【0042】
−その他の添加剤−
また、本発明のシリカ分散液には、他の成分としてインクジェット記録媒体を構成するインク受容層成分に用いられる媒染剤、界面活性剤等の各種成分を含有することができる。
【0043】
本発明のシリカ分散液は、環状アンモニウム塩型カチオン性樹脂と、水溶性多価金属塩とを含む水性媒体中に、アルミナドープシリカを加えて調製することができる。これによりアルミナドープシリカの分散が容易に行なえると共に、低粘度で高濃度(アルミナドープシリカ濃度が25質量%以上)のシリカ分散液を得ることができる。
【0044】
前記シリカ分散液は、本発明に係る環状アンモニウム塩型カチオン性樹脂と、水溶性多価金属塩とを含む水性媒体中にアルミナドープシリカを加えて混合した後、この混合液を更に分散機を用いて細粒化することにより、微細化分散液として得ることができる。
前記分散機としては、高速回転分散機、媒体撹拌型分散機(ボールミル、サンドミルなど)、超音波分散機、コロイドミル分散機、高圧分散機等の従来から公知の各種分散機を用いることができる。形成されるダマ状微粒子の分散を効率的に行なう観点から、媒体撹拌型分散機、コロイドミル分散機又は高圧分散機が好ましい。
【0045】
(インクジェット記録媒体用塗布液)
本発明のインクジェット記録媒体用塗布液は、支持体上に付与されたインクを受容するインク受容層を有するインクジェット記録媒体の前記インク受容層を形成するための塗布液であり、水溶性樹脂と前記本発明のシリカ分散液とを含むことを特徴とするものである。
【0046】
−水溶性樹脂−
本発明における水溶性樹脂としては、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシ基を有する樹脂であるポリビニルアルコール系樹脂〔ポリビニルアルコール(PVA)、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等〕、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸ヒドラジド等〕等が挙げられる。
また、解離性基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。
【0047】
本発明における水溶性樹脂としては、インク吸収性の観点から、上記の水溶性樹脂の中でも、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、工一テル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシ基を有する樹脂、及びゼラチン類から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0048】
本発明における水溶性樹脂としては、前記塗布液によって形成されるインク受容層の透明性や塗布形成性の観点から、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。
本発明に好ましく用いられるポリビニルアルコール(PVA)のケン化度としては、インクジェット記録媒体のカール抑制、及び印画後の黒濃度向上の点から、90モル%未満であることが好ましい。また、ポリビニルアルコール(PVA)の重合度としては、充分な膜強度を得る観点から、1400〜5000が好ましく、2300〜4000がより好ましい。なお、重合度1400未満と重合度1400以上のポリビニルアルコールを併用して使用することもできる。
【0049】
本発明における水溶性樹脂の含有量としては、該含有量の過少による、膜強度の低下や乾燥時のひび割れを防止し、かつ、該含有量の過多によって、空隙が樹脂によって塞がれ易くなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、インクジェット記録媒体用塗布液中に含まれる全固形分質量に対して、5質量%〜40質量%が好ましく、10質量%〜30質量%がより好ましい。
【0050】
前記ポリビニルアルコールには、無変性のポリビニルアルコール(PVA)に加え、カチオン変性PVA、アニオン変性PVA、シラノール変性PVA及びその他ポリビニルアルコールの誘導体も含まれる。ポリビニルアルコールは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0051】
前記ポリビニルアルコール系樹脂はその構造単位に水酸基を有するが、この水酸基と前記アルミナドープシリカの表面シラノール基とが水素結合を形成するため、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖単位とした三次元網目構造を形成し易くなる。この三次元網目構造の形成によって、空隙率が高く充分な強度の多孔質構造のインク受容層を形成できると考えられる。上記のように、多孔質に構成されたインク受容層は、毛細管現象によって急速にインクを吸収でき、インク滲みのない真円性の良好なドットを形成することができる。
【0052】
なお、インクジェット記録媒体用塗布液は前記シリカ分散液及び前記水溶性樹脂で主に構成され、前記アルミナドープシリカおよび前記水溶性樹脂はそれぞれ単一素材でも複数素材の混合系でもよい。水溶性樹脂において、上記のポリビニルアルコール系樹脂と共にそのほかの前記水溶性樹脂を併用した混合系とする場合、水溶性樹脂の全質量に占めるポリビニルアルコール系樹脂の量は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。
【0053】
−アルミナドープシリカと水溶性樹脂との含有比−
アルミナドープシリカ(x)と水溶性樹脂(y)との含有比〔PB比(x/y)、水溶性樹脂1質量部に対するアルミナドープシリカの質量〕は、インクジェット記録媒体用塗布液によって形成されるインク受容層の膜構造にも大きな影響を与える。即ち、PB比が大きくなると、空隙率や細孔容積、表面積(単位質量当り)が大きくなる。具体的には、上記PB比(x/y)としては、該PB比が大き過ぎることに起因する、膜強度の低下や乾燥時のひび割れを防止し、且つ該PB比が小さ過ぎることによって、該空隙が樹脂によって塞がれ易くなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、1.5/1〜10/1が好ましい。
【0054】
インクジェットプリンターの搬送系を通過する場合、記録用媒体に応力が加わることがあるので、前記インク受容層は充分な膜強度を有していることが必要である。更にシート状に裁断加工する場合、前記インク受容層の割れ及び剥がれ等を防止する上でも、前記インク受容層には充分な膜強度が必要である。この様な観点より、上記PB比(x/y)としては6/1以下が好ましく、インクジェットプリンターで高速インク吸収性をも確保する観点からは、3/1以上であることが好ましい。
【0055】
−架橋剤−
本発明のインクジェット記録媒体用塗布液には、前記水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤を含有させることができる。
【0056】
架橋剤としては、インクジェット記録媒体用塗布液に含まれる水溶性樹脂との関係で好適なものを適宜選択すればよいが、中でも、架橋反応が迅速である点でホウ素化合物が好ましい。ホウ素化合物としては、例えば、硼砂、硼酸、硼酸塩(例えば、オルト硼酸塩、InBO3、ScBO3、YBO3、LaBO3、Mg3(BO32、Co3(BO32、二硼酸塩(例えば、Mg225、Co225)、メタ硼酸塩(例えば、LiBO2、Ca(BO22、NaBO2、KBO2)、四硼酸塩(例えば、Na247・10H2O)、五硼酸塩(例えば、KB58・4H2O、Ca2611・7H2O、CsB55)等を挙げることができる。中でも、速やかに架橋反応を起こすことができる点で、硼砂、硼酸、硼酸塩が好ましく、特に硼酸が好ましく、これを水溶性樹脂であるポリビニルアルコールと組合せて使用することが最も好ましい。
【0057】
本発明において、前記架橋剤は、前記水溶性樹脂1.0質量部に対して、0.05〜0.50質量部含有されることが好ましく、0.08〜0.30質量部含有されることがより好ましい。架橋剤の含有量が上記範囲内であると、水溶性樹脂を効果的に架橋してひび割れ等を防止することができる。
【0058】
前記水溶性樹脂としてゼラチンを用いる場合などには、ホウ素化合物以外の下記化合物も架橋剤として用いることができる。
例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−S−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N'−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;メラミン樹脂(例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン);エポキシ樹脂;
【0059】
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;米国特許明細書第3017280号、同第2983611号に記載のアジリジン系化合物;米国特許明細書第3100704号に記載のカルボキシイミド系化合物;グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N'−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;乳酸チタン、硫酸アルミ、クロム明ばん、カリ明ばん、酢酸ジルコニル、酢酸クロム等の金属含有化合物、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、オキサゾリン基を2個以上含有する低分子又はポリマー等である。上記の架橋剤は、1種単独でも、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0060】
架橋剤は、インク受容層を形成する際に、インク受容層塗布液中及び/又はインク受容層の隣接層を形成するための塗布液中に添加してもよく、あるいは予め架橋剤を含む塗布液を塗布した支持体上に、上記インク受容層塗布液を塗布する、又は架橋剤非含有のインク受容層塗布液を塗布し乾燥後に架橋剤溶液をオーバーコートする等してインク受容層に架橋剤を供給することができる。製造効率の観点からは、インク受容層塗布液又はこの隣接層形成用の塗布液中に架橋剤を添加し、インク受容層の形成と同時に架橋剤を供給するのが好ましい。特に、画像の印画濃度及び光沢感の向上の観点より、インク受容層塗布液に含有するのが好ましい。また、インク受容層塗布液中の架橋剤の濃度としては、0.05〜10質量%が好ましく、0.1〜7質量%がより好ましい。
【0061】
例えば、以下の様にして好適に架橋剤を付与することができる。ここでは、ホウ素化合物を例に説明する。即ち、インク受容層がインク受容層塗布液(第1塗液)を塗布した塗布層を架橋硬化させた層である場合、該架橋硬化は、(1)上記第1塗液を塗布して塗布層を形成すると同時、(2)上記第1塗液を塗布して形成される塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、の何れかの時に、pHが7.1以上の塩基性溶液(第2塗液)を上記塗布層に付与することにより行われる。架橋剤であるホウ素化合物は、上記の第1塗液又は第2塗液の何れかに含有させればよく、第1塗液及び第2塗液の両方に含有させてもよい。
【0062】
−他の成分−
本発明のインクジェット記録媒体用塗布液には、必要に応じて下記成分を含有させることができる。
即ち、インク色材の劣化を抑制する目的で、各種の紫外線吸収剤、酸化防止剤、一重項酸素クエンチャー等の褪色防止剤を含んでいてもよい。
紫外線吸収剤としては、桂皮酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾトリアゾリルフェノール誘導体等が挙げられる。例えば、α−シアノ−フェニル桂皮酸ブチル、o−ベンゾトリアゾールフェノール、o−ベンゾトリアゾール−p−クロロフェノール、o−ベンゾトリアゾール−2,4−ジ−t−ブチルフェノール、o−ベンゾトリアゾール−2,4−ジ−t−オクチルフェノール等が挙げられる。ヒンダートフェノール化合物も紫外線吸収剤として使用でき、具体的には少なくとも2位又は6位の内、1ヵ所以上が分岐アルキル基で置換されたフェノール誘導体が好ましい。
【0063】
また、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤等も使用できる。例えば、特開昭47−10537号公報、同58−111942号公報、同58−212844号公報、同59−19945号公報、同59−46646号公報、同59−109055号公報、同63−53544号公報、特公昭36−10466号公報、同42−26187号公報、同48−30492号公報、同48−31255号公報、同48−41572号公報、同48−54965号公報、同50−10726号公報、米国特許第2,719,086号明細書、同3,707,375号明細書、同3,754,919号明細書、同4,220,711号明細書等に記載されている。
【0064】
蛍光増白剤も紫外線吸収剤として使用でき、例えば、クマリン系蛍光増白剤等が挙げられる。具体的には、特公昭45−4699号公報、同54−5324号公報等に記載されている。
【0065】
酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許第223739号公報、同309401号公報、同309402号公報、同310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同60−107384号公報、同60−107383号公報、同60−125470号公報、同60−125471号公報、同60−125472号公報、同60−287485号公報、同60−287486号公報、同60−287487号公報、同60−287488号公報、同61−160287号公報、同61−185483号公報、同61−211079号公報、同62−146678号公報、同62−146680号公報、同62−146679号公報、同62−282885号公報、同62−262047号公報、同63−051174号公報、同63−89877号公報、同63−88380号公報、同66−88381号公報、同63−113536号公報;
【0066】
同63−163351号公報、同63−203372号公報、同63−224989号公報、同63−251282号公報、同63−267594号公報、同63−182484号公報、特開平1−239282号公報、特開平2−262654号公報、同2−71262号公報、同3−121449号公報、同4−291685号公報、同4−291684号公報、同5−61166号公報、同5−119449号公報、同5−188687号公報、同5−188686号公報、同5−110490号公報、同5−1108437号公報、同5−170361号公報、特公昭48−43295号公報、同48−33212号公報、米国特許第4814262号、同第4980275号公報等に記載のものが挙げられる。
【0067】
具体的には、6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4,−テトラヒドロキノリン、シクロヘキサン酸ニッケル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2−メチル−4−メトキシ−ジフェニルアミン、1−メチル−2−フェニルインドール等が挙げられる。
【0068】
これら褪色性防止剤は、1種単独でも2種以上を併用してもよい。褪色性防止剤は、水溶性化、分散、エマルション化してもよく、マイクロカプセル中に含ませることもできる。褪色性防止剤の添加量としては、インク受容層塗布液の0.01〜10質量%が好ましい。
【0069】
−高沸点有機溶剤−
本発明のインクジェット記録媒体用塗布液は、カール防止用に高沸点有機溶剤を含有してもよい。高沸点有機溶剤としては、水溶性のものが好ましく、該水溶性の高沸点有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ポロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGMBE)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリンモノメチルエーテル、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコール(重量平均分子量が400以下)等のアルコール類が挙げられる。好ましくは、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGMBE)である。
【0070】
インクジェット記録媒体用塗布液中における高沸点有機溶剤の含有量としては、0.05〜1質量%が好ましく、特に好ましくは0.1〜0.6質量%である。
【0071】
−界面活性剤−
本発明のインクジェット記録媒体用塗布液においては、支持体に対して濡れ性を付与するために、界面活性剤を含有させることができる。界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性のうち任意の界面活性剤を用いることができる。このうち、微粒子の凝集を防止し、インクジェット記録後の画像の安定性に悪影響を与えないという観点からは、ノニオン系の界面活性剤を用いることが好ましい。ノニオン系の界面活性剤としては、HLB値として10以上のものが好ましく、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレン分岐デシルエーテルが好ましい。更にこれらの中でも、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテルが特に好ましい。これらの界面活性剤としては、例えば、第一工業製薬(株)から市販されているノイゲンXL40、同XL60、同XL80、同XL100、同XL140、同XL160などが挙げられる。
【0072】
本発明のインクジェット記録媒体用塗布液は、必要に応じて、更にpH調整剤、分散剤、消泡剤、帯電防止剤等を含んでいてもよい。
更に、表面の摩擦帯電や剥離帯電を抑制する目的で、電子導電性を持つ金属酸化物微粒子を、表面の摩擦特性を低減する目的で各種のマット剤を含んでいてもよい。
【0073】
(シリカ分散液の製造)
本発明のシリカ分散液を調製する場合には、例えば、以下の様にして調製できる。
即ち、平均一次粒子径15nm以下のアルミナドープシリカを、環状アンモニウム型カチオン樹脂と水溶性多価金属塩とを含み、有機溶剤含有量が前記シリカ質量に対して1質量%未満の水中に添加して(25質量%以上)、ディゾルバー、又は吸引分散機を用いて、例えば、回転数3000rpm(好ましくは500〜4000rpm)の高速回転の条件で20分間(好ましくは、10〜30分間)かけて予分散させて、その後、媒体攪拌型分散機、高圧ホモジナイザー等で微分散して調製することができる。
【0074】
分散に用いる分散機械としては、高速回転分散機、媒体撹拌型分散機(ボールミル、ビーズミル、サンドミルなど)、超音波分散機、コロイドミル分散機、高圧分散機等従来公知の各種の分散機を使用することができるが、発生するダマ状微粒子の分散を効率的に行なう為には、媒体撹拌型分散機やコロイドミル分散機又は高圧分散機(ホモジナイザー)が好ましい。
本発明に適用される分散機としては、主として、ビーズミル等の媒体撹拌型分散機が好適に用いられるが、微粒化の促進及び高印字濃度特性の点からは、高圧ホモジナイザー(例えば、(株)スギノマシン製のアルティマイザーなど)についても同様に使用される。
【0075】
(インクジェット記録媒体用塗布液の製造)
本発明のインクジェット記録媒体用塗布液を調製するには、例えば、以下のようにして調製できる。
即ち、上述のようにして調製したシリカ分散液に、ホウ素化合物(例えば、シリカの0.5〜20質量%)を加え、ポリビニルアルコール水溶液(例えば、シリカの1/3程度の質量のPVAとなる様に)を加え、ディゾルバーを用いて、例えば、回転数2000rpm(好ましくは1000〜3000rpm)の高速回転の条件で10分間(好ましくは、10〜30分間)かけて調製することができる。得られた塗布液は均一ゾルであり、これを下記の塗布方法で支持体上に塗布し形成することにより、三次元網目構造を有する多孔質構造のインク受容層を得ることができる。
分散に用いる分散機械としては、上述の分散機械を用いることができる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0077】
〔実施例1〜9、比較例1〜4〕
(シリカ分散液)
下記表1に示した種類と濃度の、(1)気相法シリカ微粒子と、(2)環状アンモニウム塩型カチオン性樹脂と、(3)水溶性多価金属塩と、(4)イオン交換水とを混合し、ビーズミル(例えば、KD−P((株)ジンマルエンタープライゼス製)を用いて分散させた後、分散液を45℃に加熱し20時間保持して、シリカ濃度が全分散液質量に対して25質量%であるシリカ分散液を調製した。
【0078】
下記表1において、MOX170はアルミナをドープした気相法シリカ、アエロジル90G及びアエロジル200はアルミナをドープしていない気相法シリカで、いずれも日本エアロジル(株)製である。また、シャロールDC902P、シャロールDC402Pは第一工業製薬(株)製の環状アンモニウム塩型カチオン性樹脂水溶液であり、PAS−H−1L、PAS−H−5L、PAS−H−10L、PAS−J−81L、PAS−J−81は日東紡績(株)製の環状アンモニウム塩型カチオン性樹脂水溶液である。また、ジルコゾールZA−30は第一稀元素化学工業(株)製の酢酸ジルコニル水溶液である。
【0079】
上記により得たシリカ分散液について、液粘度ηを以下のようにして測定した。測定結果を表1に示す。
粘度ηは、シリカ分散液の液温を30℃とした状態で、粘度計(B型粘度計、東機(株)製)を用いて測定した。
【0080】
(インクジェット記録媒体用塗布液)
上記により調製したシリカ分散液666.4質量部に、下記(5)水溶性樹脂溶解液483質量部と、(6)ホウ酸水溶液(7.5%)92.7質量部と、(7)エタノール水(エタノール含有量59%)125質量部とを30℃で加え、インクジェット記録媒体用塗布液を調製した。
【0081】
−(5)水溶性樹脂溶解液−
下記組成を混合後、95℃、180分間加熱し、30℃まで冷却して水溶性樹脂溶解液とした。
・イオン交換水 263.0質量部
・ポリビニルアルコール 20.3質量部
(「PVA235」、けん化度88%、重合度3500、(株)クラレ製)
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル 0.7質量部
(「エマルゲン109P」、界面活性剤、花王(株)製)
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル 6.0質量部
(「ブチセノール20P」、協和発酵(株)製)
【0082】
上記により得たインクジェット記録媒体用塗布液について、液粘度ηを、上記シリカ分散液の場合と同様にして測定した。測定結果を下記表1に示す。
【0083】
【表1】

【0084】
表1に示されるように、実施例のシリカ分散液は、アルミナドープシリカ含有量がシリカ分散液の全質量に対して25質量%であっても、液粘度が低く良好に分散できることがわかる。
また、実施例のインクジェット記録媒体用塗布液は、シリカ分散液と水溶性樹脂と混合しても液粘度の著しい上昇が抑制され、良好な塗布適性を有していることがわかる。
【0085】
本発明の、アルミナドープシリカと、環状アンモニウム塩型カチオン性樹脂と、水溶性多価金属塩と、水性媒体とを含むシリカ分散液であって、前記分散液中の有機溶剤含有量が前記アルミナドープシリカ質量に対して1質量%未満であるシリカ分散液によれば、気相法シリカを全分散液質量の25質量%と高濃度に含んでいても、分散性の良好な低粘度のシリカ分散液を提供することができる。
また、水溶性樹脂と本発明のシリカ分散液とを含むインクジェット記録媒体用塗布液によれば、水溶性樹脂とシリカ分散液を含んでいても液粘度の安定性が良好なインクジェット記録媒体用塗布液を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナドープシリカと、環状アンモニウム塩型カチオン性樹脂と、水溶性多価金属塩と、水性媒体とを含有するシリカ分散液であって、有機溶剤含有量が前記アルミナドープシリカ質量に対して1質量%未満であり、かつ、前記アルミナドープシリカ含有量が全質量に対して25質量%以上であることを特徴とするシリカ分散液。
【請求項2】
前記環状アンモニウム塩型カチオン性樹脂がポリジアリルアミン誘導体を含有することを特徴とする請求項1に記載のシリカ分散液。
【請求項3】
前記環状アンモニウム塩型カチオン性樹脂がポリジアリルジメチルアンモニウム塩を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のシリカ分散液。
【請求項4】
前記環状アンモニウム塩型カチオン性樹脂の質量平均分子量が2000〜100000の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリカ分散液。
【請求項5】
前記水溶性多価金属塩がジルコニウムの水溶性塩であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリカ分散液。
【請求項6】
水溶性樹脂と請求項1〜5のいずれか1項に記載のシリカ分散液とを含むことを特徴とするインクジェット記録媒体用塗布液。
【請求項7】
前記水溶性樹脂が、けん化度90%未満のポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録媒体用塗布液。

【公開番号】特開2007−268790(P2007−268790A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−95655(P2006−95655)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】