説明

シリカ粒子分散液の製造方法

【課題】粗粉が少なく、且つ固形分濃度が高いシリカ粒子分散液の製造方法を提供すること。
【解決手段】シリカ粒子と溶媒とを含有するシリカ粒子分散液を準備する分散液準備工程と、シリカ粒子分散液を濃縮する一次濃縮工程と、一次濃縮工程後、シリカ粒子分散液に、疎水化処理剤を添加する添加工程と、添加工程後、シリカ粒子分散液を濃縮する二次濃縮工程と、を有するシリカ粒子分散液の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ粒子分散液の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリカ粒子分散液を濃縮する方法としては、例えば、特許文献1には、シリカ粒子分散液を、限外ろ過膜による濃縮する方法が提案されている。
また、特許文献2には、シリカ粒子分散液を、限外濾過と減圧蒸留とを併用して濃縮する方法が提案されている。
また、特許文献3には、シリカ粒子分散液を、加熱、減圧、限外濾過などにより、濃縮する際に、超音波を照射する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−91429号公報
【特許文献2】特開昭62−207723号公報
【特許文献3】特開平1−278413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、粗粉が少なく、固形分濃度が高いシリカ粒子分散液が得られるシリカ粒子分散液の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
シリカ粒子と溶媒とを含有するシリカ粒子分散液を準備する分散液準備工程と、
前記シリカ粒子分散液を濃縮する一次濃縮工程と、
前記一次濃縮工程後、前記シリカ粒子分散液に、疎水化処理剤を添加する添加工程と、
前記添加工程後、前記シリカ粒子分散液を濃縮する二次濃縮工程と、
を有するシリカ粒子分散液の製造方法。
【0006】
請求項2に係る発明は、
前記シリカ粒子分散液の粘度が20mPa・s以上1000mPa・s以下となるまで、前記一次濃縮工程を行った後、前記添加工程を行う請求項1に記載のシリカ粒子分散液の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、上記添加工程を有さない場合に比べ、粗粉が少なく、固形分濃度が高いシリカ粒子分散液が得られるシリカ粒子分散液の製造方法を提供できる。
請求項2に係る発明によれば、シリカ粒子分散液の粘度が上記範囲となるまで一次濃縮工程を行った後、添加工程を行わない場合に比べ、粗粉が少なく、固形分濃度が高いシリカ粒子分散液が得られるシリカ粒子分散液の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態に係るシリカ粒子分散液の製造方法は、シリカ粒子と溶媒とを含有するシリカ粒子分散液を準備する分散液準備工程と、シリカ粒子分散液を濃縮する濃縮工程と、を有する。
そして、濃縮工程は、シリカ粒子分散液を濃縮する一次濃縮工程と、一次濃縮工程後、シリカ粒子分散液に、疎水化処理剤を添加する添加工程と、添加工程後、シリカ粒子分散液を濃縮する二次濃縮工程と、を有している。
【0009】
ここで、従来、シリカ粒子分散液の濃縮処理(つまり、溶媒を除去して、シリカ粒子の固形分濃度を高める処理)を行うと、粗粉(粗大粒子)が発生し易くなる。これは、濃縮処理によりシリカ粒子分散液の固形分濃度が高くなるにつれ、シリカ粒子間の距離が近くなるため、粒子間凝集やシラノール基同士の縮合が生じるためと考えられる。
【0010】
これに対して、本実施形態に係るシリカ粒子分散液の製造方法では、シリカ粒子分散液を濃縮する一次濃縮工程と、一次濃縮工程後、シリカ粒子分散液に、疎水化処理剤を添加する添加工程と、添加工程後、シリカ粒子分散液を濃縮する二次濃縮工程と、経ることにより、つまり濃縮工程の過程において、シリカ粒子分散液に、疎水化処理剤を添加することにより、粗粉が少なく、固形分濃度が高いシリカ粒子分散液が得られる。
この理由は定かではないか、以下に示す理由によるものと考えられる。
【0011】
まず、疎水化処理剤を添加した場合、シリカ粒子表面には疎水化処理が施され、シリカ粒子の表面エネルギーが低下するものと考えられる。このシリカ粒子表面の低表面エネルギー化により、濃縮処理によりシリカ粒子分散液の固形分濃度が高くなり、シリカ粒子間の距離が近くなっても、粒子間凝集やシラノール基同士の縮合が生じ難くなるためと考えられる。
【0012】
以上から、本実施形態に係るシリカ粒子分散液の製造方法では、粗粉が少なく、固形分濃度が高いシリカ粒子分散液が得られると考えられる。
【0013】
また、本実施形態に係るシリカ粒子分散液の製造方法では、迅速な濃縮処理が実現される。
濃縮処理によりシリカ粒子分散液の固形分濃度が高くなると、粗粉の発生と共にゲル化も生じやすくなる。すると、シリカ粒子分散液の粘度が上昇し、濃縮処理速度の低下を招くことがある、特に、濃縮処理として加圧濾過や加熱蒸留を行った場合には、粘度が大きくなると、濾過又は蒸留の速度低下や濾過においてはケーキ層の蓄積から濾過が進まなくなる現象が顕著に生じやすく、濃縮処理速度の低下を招き易い。
これに対して、上記同様の理由から、本実施形態に係るシリカ粒子分散液の製造方法では、濃縮処理によるシリカ粒子分散液の粘度上昇を抑え易くなることから、迅速な濃縮処理が実現される。
【0014】
以下、各工程について詳細に説明する。
【0015】
−分散液準備工程−
分散液準備工程は、シリカ粒子と溶媒(例えばアルコール及び水を含む溶媒)とを含有するシリカ粒子分散液を準備する。
具体的には、本工程は、例えば、湿式(例えば、ゾルゲル法等)によりシリカ粒子分散液を作製して、これを準備する。特に、シリカ粒子分散液は、湿式としてゾルゲル法、具体的には、テトラアルコキシランを、アルコール及び水の溶媒にアルカリ溶媒を添加したアルカリ溶媒存在下で、反応(加水分解反応、縮合反応)を生じさせてシリカ粒子を生成し、シリカ粒子分散液を作製することがよい。
なお、シリカ粒子の形成は、球形状、異型状のいずれであってもよい。
【0016】
ゾルゲル法によるシリカ粒子の生成は、周知の方法により行えばよいが、例えば、以下に示す方法(以下、本シリカ粒子の製造方法と称して説明する)が挙げられる。
【0017】
本シリカ粒子の製造方法は、アルコールを含む溶媒中に、0.6mol/L以上0.85mol/L以下の濃度でアルカリ触媒が含まれるアルカリ触媒溶液を準備する工程(以下、「アルカリ触媒溶液準備工程」と称することがある)と、前記アルカリ触媒溶液中に、テトラアルコキシシランを供給すると共に、テトラアルコキシシランの1分間当たりに供給される総供給量の1mol当たりに対して0.1mol以上0.4mol以下でアルカリ触媒を供給する工程(以下、「粒子生成工程」と称することがある)と、を有する。
【0018】
つまり、本シリカ粒子の製造方法では、上記濃度のアルカリ触媒が含まれるアルコールの存在下に、原料であるテトラアルコキシシランと、別途、触媒であるアルカリ触媒と、をそれぞれ上記関係で供給しつつ、テトラアルコキシシランを反応させて、シラン粒子を生成する方法である。
本シリカ粒子の製造方法では、上記手法により、粗粉の発生が少なく、異型状のシリカ粒子が得られる。この理由は、定かではないが以下の理由によるものと考えられる。
【0019】
まず、アルコールを含む溶媒中に、アルカリ触媒が含まれるアルカリ触媒溶液を準備し、この溶液中にテトラアルコキシシランとアルカリ触媒とをそれぞれ供給すると、アルカリ触媒溶液中に供給されたテトラアルコキシシランが反応して、核粒子が生成されやすくなる。このとき、アルカリ触媒溶液中のアルカリ触媒濃度が上記範囲にあると、2次凝集物等の粗粉の生成を抑制しつつ、異型状の核粒子が生成すると考えられる。これは、アルカリ触媒は、触媒作用の他に、生成される核粒子の表面に配位し、核粒子の形状、分散安定性に寄与するが、その量が上記範囲内であると、アルカリ触媒が核粒子の表面を均一に覆わないため(つまりアルカリ触媒が核粒子の表面に偏在して付着するため)、核粒子の分散安定性は保持するものの、核粒子の表面張力及び化学的親和性に部分的な偏りが生じ、異型状の核粒子が生成されると考えられるためである。
そして、テトラアルコキシシランとアルカリ触媒との供給をそれぞれ続けていくと、テトラアルコキシシランの反応により、生成した核粒子が成長し、シリカ粒子が得られる。ここで、このテトラアルコキシシランとアルカリ触媒との供給を、その供給量を上記関係で維持しつつ行うことで、2次凝集物等の粗粉の生成を抑制しつつ、異型状の核粒子がその異型状を保ったまま粒子成長し、結果、異型状のシリカ粒子が生成されると考えられる。これは、このテトラアルコキシシランとアルカリ触媒との供給量を上記関係とすることで、核粒子の分散を保持しつつも、核粒子表面における張力と化学的親和性の部分的な偏りが保持されることから、異型状を保ちながらの核粒子の粒子成長が生じると考えられるためである。
【0020】
以上から、本シリカ粒子の製造方法では、粗粉の発生が少なく、異型状のシリカ粒子が得られると考えられる。
なお、異型状のシリカ粒子とは、例えば、平均円形度が0.5以上0.85以下のシリカ粒子である。
【0021】
また、本シリカ粒子の製造方法では、異型状の核粒子を生成させ、この異型状を保ったまま核粒子を成長させてシリカ粒子が生成されると考えられることから、機械的負荷に対する形状安定性が高く、また形状分布にバラツキが少ない異型状のシリカ粒子が得られると考えられる。
また、本シリカ粒子の製造方法では、生成した異型状の核粒子が異型状を保ったまま粒子成長され、シリカ粒子が得られると考えられることから、機械的付加に強く、壊れ難いシリカ粒子が得られると考えられる。
また、本シリカ粒子の製造方法では、アルカリ触媒溶液中に、テトラアルコキシシランとアルカリ触媒とをそれぞれ供給することで、テトラアルコキシシランの反応を生じさせることにより、粒子生成を行っていることから、従来のゾルゲル法により異型状のシリカ粒子を製造する場合に比べ、総使用アルカリ触媒量が少なくなり、その結果、アルカリ触媒の除去工程の省略も実現される。これは、特に、高純度が求められる製品にシリカ粒子を適用する場合に有利である。
【0022】
まず、アルカリ触媒溶液準備工程について説明する。
アルカリ触媒溶液準備工程は、アルコールを含む溶媒を準備し、これにアルカリ触媒を添加して、アルカリ触媒溶液を準備する。
【0023】
アルコールを含む溶媒は、アルコール単独の溶媒であってもよいし、必要に応じて水、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、セロソルブ類(例えばメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸セロソルブ等)、エーテル類(例えばジオキサン、テトラヒドロフラン等)等の他の溶媒との混合溶媒であってもよい。混合溶媒の場合、アルコールの他の溶媒に対する量は80質量%以上(望ましくは90質量%以上)であることがよい。
なお、アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール等の低級アルコールが挙げられる。
【0024】
一方、アルカリ触媒としては、テトラアルコキシシランの反応(加水分解反応、縮合反応)を促進させるための触媒であり、例えば、アンモニア、尿素、モノアミン、四級アンモニウム塩等の塩基性触媒が挙げられ、特にアンモニアが望ましい。
【0025】
アルカリ触媒の濃度(含有量)は、0.6mol/L以上0.85mol/Lであり、望ましくは0.63mol/L以上0.78mol/Lであり、より望ましくは0.66mol/L以上0.75mol/Lである。
アルカリ触媒の濃度が、0.6mol/Lより少ないと、生成した核粒子の成長過程の核粒子の分散性が不安定となり、2次凝集物等の粗粉が生成されたり、ゲル化状となったりして、粒度分布が悪化することがある。
一方、アルカリ触媒の濃度が、0.85mol/Lより多いと、生成した核粒子の安定性が過大となり、真球状の核粒子が生成され、異型状の核粒子が得られず、その結果、異型状のシリカ粒子が得られない。
なお、アルカリ触媒の濃度は、アルコール触媒溶液(アルカリ触媒+アルコールを含む溶媒)に対する濃度である。
【0026】
次に、粒子生成工程について説明する。
粒子生成工程は、アルカリ触媒溶液中に、テトラアルコキシシランと、アルカリ触媒と、をそれぞれ供給し、当該アルカリ触媒溶液中で、テトラアルコキシシランを反応(加水分解反応、縮合反応)させて、シリカ粒子を生成する工程である。
この粒子生成工程では、テトラアルコキシシランの供給初期に、テトラアルコキシシランの反応により、核粒子が生成した後(核粒子生成段階)、この核粒子の成長を経て(核粒子成長段階)、シリカ粒子が生成する。
【0027】
アルカリ触媒溶液中に供給するテトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられるが、反応速度の制御性や得られるシリカ粒子の形状、粒径、粒度分布等の点から、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランがよい。
【0028】
テトラアルコキシシランの供給量は、例えば、アルカリ触媒溶液におけるアルコールのモル数に対して、0.001mol/(mol・min)以上0.01mol/(mol・min)以下がよく、望ましくは、0.002mol/(mol・min)以上0.009mol/(mol・min)以下であり、より望ましくは、0.003mol/(mol・min)以上0.008mol/(mol・min)以下である。
このテトラアルコキシシランの供給量を上記範囲とすることで、粗粉の発生が少なく、異型状のシリカ粒子が生成され易くなる。
なお、このテトラアルコキシシランの供給量は、アルカリ触媒溶液におけるアルコール1mol当たりに対する、1分間当たりにテトラアルコキシシランを供給するmol数を示している。
【0029】
一方、アルカリ触媒溶液中に供給するアルカリ触媒は、上記例示したものが挙げられる。この供給するアルカリ触媒は、アルカリ触媒溶液中に予め含まれるアルカリ触媒と同じ種類のものであってもよいし、異なる種類のものであってもよいが、同じ種類のものであることがよい。
【0030】
アルカリ触媒の供給量は、テトラアルコキシシランの1分間当たりに供給される総供給量の1mol当たりに対して0.1mol以上0.4mol以下とし、望ましくは0.14mol以上0.35mol以下であり、より望ましくは0.18mol以上0.3mol以下である。
アルカリ触媒の供給量が、0.1molより少ないと、生成した核粒子の成長過程の核粒子の分散性が不安定となり、2次凝集物等の粗粉が生成さたり、ゲル化状となったりして、粒度分布が悪化することがある。
一方、アルカリ触媒の供給量が、0.4molより多いと、生成した核粒子の安定性が過大となり、核粒子生成段階で異型状の核粒子が生成されても、その核粒子成長段階で核粒子が球状に成長し、異型状のシリカ粒子が得られない。
【0031】
ここで、粒子生成工程において、アルカリ触媒溶液中に、テトラアルコキシシランと、アルカリ触媒と、をそれぞれ供給するが、この供給方法は、連続的に供給する方式であってもよいし、間欠的に供給する方式であってもよい。
【0032】
また、粒子生成工程において、アルカリ触媒溶液中の温度(供給時の温度)は、例えば、5℃以上50℃以下であることがよく、望ましくは15℃以上40℃以下の範囲である。
【0033】
上記工程を経て、本シリカ粒子の製造方法では、シリカ粒子が得られる。
【0034】
以上説明したシリカ粒子を準備する工程において、例えば、シリカ粒子を湿式により得る場合、シリカ粒子が溶媒に分散された分散液(シリカ粒子分散液)の状態で得られる。
【0035】
−濃縮工程−
濃縮工程は、シリカ粒子分散液を濃縮する一次濃縮工程と、一次濃縮工程後、シリカ粒子分散液に、疎水化処理剤を添加する添加工程と、添加工程後、シリカ粒子分散液を濃縮する二次濃縮工程と、を経て行う。
具体的には、本工程は、例えば、
1)一次濃縮工程と二次濃縮工程とを連続して行う過程(つまり濃縮工程を停止せず、連続して行う過程)で、シリカ粒子分散液に、疎水化処理剤を添加する添加工程を行ってもよいし、
2)一次濃縮工程を行い、一旦停止した後、シリカ粒子分散液に、疎水化処理剤を添加する添加工程を行い、再び、二次濃縮工程を行ってもよい。
【0036】
まず、一次濃縮工程及び二次濃縮工程について説明する。
一次濃縮工程及び二次濃縮工程では、シリカ粒子分散液の溶媒を除去し、分散液中のシリカ粒子固形分濃度を高める処理を行う。
具体的には、一次濃縮工程及び二次濃縮工程は、例えば、1)濾過、遠心分離、蒸留などにより溶媒を除去して、濃縮を行う方法、2)流動層乾燥機、スプレードライヤーなどにより直接加熱して溶媒を除して、濃縮を行う方法等、公知の方法が採用される。
ここで、濃縮処理の温度は、特に限定されないが、望ましくは200℃以下である。200℃より高いとシリカ粒子表面に残存するシラノール基の縮合による一次粒子同士の結合や粗大粒子の発生が起こり易くなる。
【0037】
次に、添加工程について説明する。
添加工程では、一次濃縮工程後に、疎水化処理剤を添加する。
添加工程の開始時期は、一次濃縮工程によるシリカ粒子分散液の固形分濃度の上昇に伴う粗粉の発生が生じる前であることがよい。
つまり、添加工程は、シリカ粒子分散液の粘度が20mPa・s以上1000mPa・s以下(望ましくは100mPa・s以上1000mPa・s以下より望ましくは300mPa・s以上1000mPa・s以下)となるまで一次濃縮工程を行った後に行うことがよい。言い換えれば、一次濃縮工程は、シリカ粒子分散液の粘度が上記範囲となるまで行うことがよい。
これにより、祖粉が少なく、高固形分濃度のシリカ粒子分散液が得られ易くなる。
シリカ粒子分散液の粘度が低すぎると、シリカ粒子の固形分濃度が低い過ぎるため、添加する疎水化処理剤が希薄になり易く、過剰の添加量が必要となる易い。
一方、シリカ粒子分散液の粘度が高すぎると、シリカ粒子同士の凝集により、粗粉(粗大粒子)が発生し易くなる。
【0038】
なお、シリカ粒子分散液の粘度は、温度25℃の環境下で、ビスコテスタ[VT−04F](リオン株式会社製)により測定される値である。
【0039】
疎水化処理剤としては、例えば、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)を持つ公知の有機珪素化合物が挙げられ、具体例には、例えば、シラザン化合物(例えばメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシランなどのシラン化合物、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン等)等が挙げられる。疎水化処理剤は、1種で用いてもよいし、複数種用いてもよい。
これら疎水化処理剤の中も、トリメチルメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどのトリメチル基を有する有機珪素化合物が好適である。
【0040】
疎水化処理剤の添加量は、特に限定はされないが、例えば、シリカ粒子に対し、例えば、1質量%以上60質量%以下がよく、望ましくは5質量%以上40質量%以下、より望ましくは10質量%以上30質量%以下である。
【0041】
ここで、疎水化処理剤を添加すると、その反応によりシリカ粒子の疎水化処理が行われるが、その温度条件(反応下の温度条件)、例えば、30℃以上80℃以下がよく、望ましくは15℃以上65℃以下、より望ましくは30℃以上50℃以下である。
なお、疎水化処理剤を添加後、二次濃縮工程において、本温度条件を維持してもよいし、二次濃縮工程前に、別途、本温度条件として、疎水化処理を進行させてもよい。

【0042】
以上説明した濃縮工程を経て、シリカ粒子分散液が得られる。
ここで、得られるシリカ粒子分散液におけるシリカ粒子の固形分濃度は、例えば、60質量%以上80質量%以下がよい(望ましくは65質量%以上75質量%以下)。つまり、濃縮工程(二次濃縮工程)は、シリカ粒子の固形分濃度が上記範囲となるまで行うことがよい。
【0043】
また、得られるシリカ粒子分散液におけるシリカ粒子は、1μm以上の粗大粒子の割合が少ないほどよいが、20体積%以下、好ましく5体積%以下、より好ましくは1体積%以下であることがよい。1μm以上の粗大粒子の割合が20体積%を上回ると、解砕や篩分・分級が必要となるため生産性が悪くなる傾向となる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本実施形態をより具体的に詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。また、「部」は特に断りがない限り「質量部」を示す。
【0045】

[実施例1]
(シリカ粒子分散液の作製)
金属製撹拌棒、滴下ノズル(テフロン(登録商標)製マイクロチューブポンプ)、及び、温度計を有した容積3Lのガラス製反応容器にメタノール600部、10%アンモニア水100部を入れ、攪拌混合して、アルカリ触媒溶液を得た。こときのアルカリ触媒溶液のアンモニア触媒量:NH量(NHmol/(アンモニア水+メタノール)L)は、0.68mol/Lであった。次に、アルカリ触媒溶液の温度を25℃に調整し、アルカリ触媒溶液を窒素置換した。その後、アルカリ触媒溶液を撹拌しながら、テトラメトキシシラン(TMOS)450部を15.0g/minの供給量で、触媒(NH)濃度が4.4%のアンモニア水270部を9.0g/minの供給量で、同時に滴下を開始し、30分かけて滴下を行い、シリカ粒子分散液1を得た。
得られたシリカ粒子分散液1の固形分濃度は10質量%であった。なお、固形分濃度は、シリカ粒子の固形分濃度を意味する。以下同様である
【0046】
(シリカ粒子分散液の濃縮)
まず、シリカ粒子分散液1:1200部をポンプにて加圧濾過器のチャンバー内に投入しながら、目的とするシリカ粒子分散液の固形分濃度及び粘度(表1記載)となるまで一次濃縮した後、ヘキサメチルジシラザン(和光純薬、以下HMDS)22部を添加し、処理温度30℃、処理時間30分で保持した後、引き続き、目的とするシリカ粒子の固形分濃度及び粘度(表1記載)となるまで二次濃縮を行った。
二次濃縮後、加圧濾過器のチャンバー内を大気圧まで開放し、濃縮したシリカ粒子分散液を取り出した。
このようにして、目的とするシリカ粒子の固形分濃度(表1記載)のシリカ粒子分散液を得た。
【0047】
[実施例2〜15]
表1に従って、一次濃縮及び二次濃縮を行う方法と、一次濃縮後のシリカ粒子分散液の固形分濃度及び粘度と、添加する表面処理剤の種類、添加量(シリカ粒子に対する添加量)及び処理温度と、二次濃縮後のシリカ粒子分散液の固形分濃度及び粘度と、の条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、濃縮したシリカ粒子分散液を得た。
【0048】
(比較例1)
シリカ粒子分散液1を固形分濃度が30質量%となるまで加熱減圧濃縮を行い、その後、28KHzの超音波を照射し、更に濃縮を行い、シリカゾルを得た。
なお、本比較例では、粗大粒子の割合は、1.0%程度だったが、固形分濃度が50質量%程度であった。
【0049】
(粗大粒子の割合−
−粗大粒子(粗大粒子)割合−
粗大粒子の割合は、LSコールターより測定し、1μm以上の粒子の割合として求めた。粗大粒子は少ないほど良いが、1μm以上の粗大粒子の割合が、20体積%以下、好ましく5体積%以下、より好ましくは1体積%以下であることが良い。
【0050】
【表1】

【0051】
上記結果から、本実施例は、比較例に比べ、粗大粒子の割合(つまり粗粉が少なく)、固形分濃度が高いシリカ粒子分散液が得られることがわかる。
特に、適切な粘度まで一次濃縮を行った後に、シリカ粒子分散液に疎水化処理剤を添加した実施例1〜6は、それ以外の実施例に比べ、粗大粒子の割合(つまり粗粉が少なく)、固形分濃度が高いシリカ粒子分散液が得られることもわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ粒子と溶媒とを含有するシリカ粒子分散液を準備する分散液準備工程と、
前記シリカ粒子分散液を濃縮する一次濃縮工程と、
前記一次濃縮工程後、前記シリカ粒子分散液に、疎水化処理剤又を添加する添加工程と、
前記添加工程後、前記シリカ粒子分散液を濃縮する二次濃縮工程と、
を有するシリカ粒子分散液の製造方法。
【請求項2】
前記シリカ粒子分散液の粘度が20mPa・s以上1000mPa・s以下となるまで、前記一次濃縮工程を行った後、前記添加工程を行う請求項1に記載のシリカ粒子分散液の製造方法。

【公開番号】特開2013−67546(P2013−67546A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209275(P2011−209275)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】