説明

シリカ系汚れの付着防止剤及び付着防止方法

【課題】冷却水系などの水系でで発生するシリカ系汚れの付着を効果的に防 止することができるシリカ系汚れの付着防止剤及び付着防止方法を提供する 。
【解決手段】水系に、カルボキシル基を有するモノマー単位とスルホン酸基 を有するモノマー単位とN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単 位とを有する共重合体を含有するシリカ系汚れの付着防止剤であって、前記 共重合体におけるN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位の組 成比が5〜30モル%である共重合体を含むシリカ系汚れの付着防止剤を添 加する水系のシリカ系汚れの付着防止方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ系汚れの付着防止剤及び付着防止方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、冷却水系、ボイラ水系、膜処理装置、地熱発電所の還元井などで発生するシリカ系汚れの付着を効果的に防止することができるシリカ系汚れの付着防止剤及び付着防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却水系、ボイラ水系、膜処理、および地熱発電所の還元井などにおいて、水と接触する伝熱面、配管、膜面ではスケール障害が発生する。特に省資源、省エネルギーの立場から、冷却水系、ボイラ水系では、高濃縮運転をした場合、また、膜処理の場合には回収率を高くした場合、それぞれ溶解する塩類が濃縮され、難溶性の塩となって伝熱面や配管、膜面上でスケール化する。
【0003】
熱交換部に生成したスケールは伝熱阻害、配管への付着は流量低下、膜への付着はフラックス低下をそれぞれ引き起こし、また生成したスケールが剥離して系内を循環する結果、ポンプ、配管、熱交換部の閉塞や、閉塞に伴う配管、熱交換部でのスケール化の促進を引き起こす。また、地熱発電所の還元井でも同用の現象が起きる。
【0004】
生成するスケール種としては、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、リン酸亜鉛、水酸化亜鉛、塩基性炭酸亜鉛等があるが、近年、シリカ系汚れが問題視されつつある。シリカ系汚れは、Mg、Fe、Al、Zn等の金属水酸化物が関与し、熱交換器に付着して伝熱阻害を引き起こすだけでなく、配管などの非伝熱面にも付着する場合もある。
【0005】
従来より、シリカ系スケールの防止剤として、アクリル酸、マレイン酸などのカルボキシル基を有する低分子量ポリマー、低分子量のポリアクリルアミド、ホスホン酸、ポリリン酸塩などが知られている。例えば、高シリカ含有水用シリカ系スケール防止剤として、分子量200〜10,000のポリ(メタ)アクリルアミドを含むシリカ系スケール防止剤が提案されている(特許文献1)。また、シリカ系スケール及びカルシウム系スケールの付着防止に対して優れた効果を発揮するスケール防止剤として、N−ビニルホルムアミド単位又はN−ビニルアセトアミド単位を50モル%以上有する重合体及びリン化合物を含有するスケール防止剤が提案されている(特許文献2)。さらに、シリカ系スケールの防止効果に特に優れたスケール防止剤として、(ポリ)アルキレンポリアミン又はその誘導体とエチレン性不飽和化合物との反応物を含むスケール防止剤が提案されている(特許文献3)。
【0006】
これらの従来のホスホン酸やスケール防止用のポリマーは、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛などの主として熱交換器などの伝熱面に付着する高温スケールを対象としていた。また、従来のシリカ系スケール防止剤も、高温部に付着するマグネシウム含有量の多いシリカ系スケールを対象としていた。
【0007】
近年、アルミニウムが関与する低温のシリカ系汚れが問題にされるようになってきた。水源の水質悪化のために、工業用水の除濁に用いる凝集剤に由来するアルミニウムの濃度が高くなる傾向がある。アルミニウムの濃度が高い水を用いると、シリカとアルミニウムを含有したシリカ系汚れが付着することが新たに判明した。また、用水向けの膜処理において、膜の目詰まりを防ぐために前処理として凝集剤による除濁を行うと、かえってシリカ系汚れが膜に付着しやすくなることが分かった。低温のシリカ系汚れは、熱交換器に付着して伝熱阻害を引き起こすのみならず、配管などの非伝熱面にも付着する。例えば、冷却水系の場合、冷却水流量の低下により所定の冷却能力がとれなくなる障害や、冷却塔に付着したシリカ系汚れにより冷却効率が低下する障害や、冷却塔に付着したシリカ系汚れが剥離して熱交換器に詰まるなどの障害を引き起こす。これらの低温部に付着するシリカ系汚れに対して、従来から使用されている水溶性ポリマーなどは、ある程度の付着防止効果を有するが、満足し得る水準ではなかった。
【特許文献1】特開昭61−107997号公報(第1頁)
【特許文献2】特開平10−323696号公報(第2頁)
【特許文献3】特開平11−290891号公報(第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高濃縮運転される冷却水系、ボイラ水系、膜処理装置、および地熱発電所の還元井などで発生するシリカ系汚れの付着を効果的に防止することができるシリカ系汚れの付着防止剤及び付着防止方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、カルボキシル基を有するモノマー単位とスルホン酸基を有するモノマー単位とN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位とを有する共重合体を含有するシリカ系汚れの付着防止剤であって、前記共重合体におけるN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位の組成比が5〜30モル%である共重合体を水系に添加することにより、水系におけるシリカ系汚れの付着を効果的に防止し得ることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)カルボキシル基を有するモノマー単位とスルホン酸基を有するモノマー単位とN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位とを有する共重合体を含有するシリカ系汚れの付着防止剤であって、前記共重合体におけるN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位の組成比が5〜30モル%であることを特徴とするシリカ系汚れの付着防止剤、
(2)カルボキシル基を有するモノマー単位とスルホン酸基を有するモノマー単位とN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位とを有する共重合体を含有するシリカ系汚れの付着防止剤であって、前記共重合体におけるカルボキシル基を有するモノマー単位とスルホン酸基を有するモノマー単位とN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位の組成比が40〜90:5〜30:5〜30モル%であることを特徴とするシリカ系汚れの付着防止剤、
(3)N−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマーが、式1または式2であらわされる化合物である請求項1または2に記載のシリカ系汚れの付着防止剤、
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】

(式1中、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基をあらわす。式2中、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキレン基をあらわす。)
(4)水系に、カルボキシル基を有するモノマー単位とスルホン酸基を有するモノマー単位とN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位とを有する共重合体を含有するシリカ系汚れの付着防止剤であって、前記共重合体におけるN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位の組成比が5〜30モル%である共重合体を添加することを特徴とするシリカ系汚れの付着防止方法、
(5)水系に、カルボキシル基を有するモノマー単位とスルホン酸基を有するモノマー単位とN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位とを有する共重合体を含有するシリカ系汚れの付着防止剤であって、前記共重合体におけるカルボキシル基を有するモノマー単位とスルホン酸基を有するモノマー単位とN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位の組成比が40〜90:5〜30:5〜30モル%である共重合体を添加することを特徴とするシリカ系汚れの付着防止方法、
(6)N−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマーが、式1または式2であらわされる化合物である請求項4または5に記載のシリカ系汚れの付着防止方法、
【0013】
【化1】

【0014】
【化2】

(式1中、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基をあらわす。式2中、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキレン基をあらわす。)
を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のシリカ系汚れの付着防止剤及び付着防止方法によれば、特に高濃縮運転されている水系の伝熱面だけでなく、非伝熱面におけるシリカ系の汚れの付着量を大幅に低減し、冷却水系、ボイラ水系、膜処理装置、地熱発電所の還元井など、シリカ系汚れが発生しやすい水系に障害を生ずることなく、安定して運転することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のシリカ系汚れの付着防止剤の第一の態様は、カルボキシル基を有するモノマー単位とスルホン酸基を有するモノマー単位とN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位とを有する共重合体を含有するシリカ系汚れの付着防止剤であって、前記共重合体におけるN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位の組成比が5〜30モル%、好ましくは5〜25モル%であるシリカ系汚れの付着防止剤である。N−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位の組成比が5〜30モル%の範囲を逸脱すると、水系、特に循環水系において、シリカ系汚れの付着を防止する効果が低減する恐れがある。
【0017】
本発明のシリカ系汚れの付着防止剤の第二の態様は、カルボキシル基を有するモノマー単位とスルホン酸基を有するモノマー単位とN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位とを有する共重合体を含有するシリカ系汚れの付着防止剤であって、前記共重合体におけるカルボキシル基を有するモノマー単位とスルホン酸基を有するモノマー単位とN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位の組成比が40〜90:5〜30:5〜30モル%、好ましくは50〜80:15〜25:5〜25モル%であるシリカ系汚れの付着防止剤である。
【0018】
本発明のシリカ系汚れの付着防止方法の第一の態様においては、水系に、カルボキシル基を有するモノマー単位とスルホン酸基を有するモノマー単位とN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位とを有する共重合体を含有するシリカ系汚れの付着防止剤であって、前記共重合体におけるN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位の組成比が5〜30モル%、好ましくは5〜25モル%である共重合体を添加する。
【0019】
本発明のシリカ系汚れの付着防止方法の第二の態様においては、水系に、カルボキシル基を有するモノマー単位とスルホン酸基を有するモノマー単位とN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位とを有する共重合体を含有するシリカ系汚れの付着防止剤であって、前記共重合体におけるカルボキシル基を有するモノマー単位とスルホン酸基を有するモノマー単位とN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位の組成比が40〜90:5〜30:5〜30モル%、好ましくは50〜80:15〜25:5〜25モル%である共重合体を添加する。
カルボキシル基を有するモノマー単位とスルホン酸基を有するモノマー単位とN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位の組成比が40〜90:5〜30:5〜30モル%範囲を逸脱すると、循環水系において、シリカ系汚れの付着を防止する効果が低減する恐れがある。
【0020】
本発明に用いるカルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、p−ビニル安息香酸、桂皮酸などや、それらの塩、それらの無水物などを挙げることができる。
【0021】
本発明に用いるスルホン酸基を有するモノマーとしては、例えば、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、メタクリル酸4−スルホブチル、アリルオキシベンゼンスルホン酸、メタリルオキシベンゼンスルホン酸などや、それらの塩などを挙げることができる。これらの中で、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を特に好適に用いることができる。
【0022】
本発明に用いるN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマーとしては、下記の式1または式2で表される化合物を用いることができる。
【0023】
【化1】

【0024】
【化2】

(式1中、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基をあらわす。式2中、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキレン基をあらわす。)。
【0025】
アルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル基が例示できる。
【0026】
式1で表される線状化合物の具体例としては、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルプロピオンアミドなどをあげることができる。
【0027】
式2で表される環状化合物の具体例としては、N−ビニルピロリドンやN−ビニル―ε―カプロラクタムなどをあげることができる。
【0028】
本発明において、カルボキシル基を有するモノマー、スルホン酸基を有するモノマーおよびN−ビニルカルボン酸アミドを有するモノマーは、それぞれ1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらのモノマーを共重合して得られる共重合体の中で、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とN−ビニルカルボン酸アミドの三元共重合体は、シリカ系汚れを防止する効果が大きいので特に好適に用いることができる。
【0029】
本発明に用いるカルボキシル基を有するモノマーとスルホン酸基を有するモノマーとN−ビニルカルボン酸アミド基を有する共重合体の分子量に特に制限はないが、重量平均分子量として500〜500,000であることが好ましく、5,000〜100,000であることがより好ましい。共重合体の重量平均分子量が500未満であると、シリカ系汚れの付着防止効果が十分に発現しないおそれがある。共重合体の重量平均分子量が500,000を超えると、共重合体の水溶液の粘度が高くなって、作業性が低下するおそれがある。共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりポリエチレンオキシドを標準物質として求めることができる。
【0030】
本発明に用いるカルボキシル基を有するモノマーとスルホン酸基を有するモノマーとN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマーとの共重合体を製造する方法に特に制限はなく、例えば、塊状重合、溶液重合などを挙げることができる。カルボキシル基を有するモノマー、スルホン酸基を有するモノマーおよびN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー共重合体は、いずれも水溶性である場合が多いので、水を溶媒とする水溶液重合を好適に用いることができる。カルボキシル基を有するモノマーとスルホン酸基を有するモノマーとN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマーを水に溶解し、雰囲気を不活性ガスで置換し、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、過酸化水素、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス−N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)−2−ナトリウム、などの水溶性ラジカル重合開始剤を添加して加熱することにより、共重合体の水溶液を得ることができる。重合は水性媒体中に限らず、有機溶媒中でも可能であるが、水溶液重合によれば、重合条件の選定により共重合体の分子量と分子量分布を容易に制御することができ、得られた共重合体の水溶液は、そのままシリカ系汚れの付着防止剤として使用することができる。
【0031】
本発明方法において、カルボキシル基とスルホン酸基とN−ビニルカルボン酸アミド基を有する共重合体を水系に添加する場所に特に制限はなく、シリカ系汚れが付着する箇所に添加することができ、あるいは、その箇所よりも前段の任意の箇所に添加することができる。例えば、冷却水系においては、熱交換器本体、循環水ピット、冷却塔の配管ラインなどの任意の箇所に添加することができ、あるいは、循環水系に補給する補給水にあらかじめ添加しておくこともできる。ボイラ水系においては、補給水や給水系に添加することができる。また、膜処理装置では、原水や濃縮水系に添加することができる。
【0032】
添加量には特に制限はなく、対象水系の水質に応じて適宜選択することができるが、通常は水系で、重合体として1〜200mg/l、好ましくは20〜100mg/lとなるように添加する。
【0033】
本発明方法を適用するとき、水質条件や、ボイラ、熱交換器、地熱発電所の還元井の運転条件などに特に制限はなく、通常の水質、ボイラ、熱交換器、地熱発電所の還元井運転条件などで運転することができる。また、膜処理装置においても、膜の種類として、精密濾過膜、限外濾過膜および逆浸透膜など、任意の膜に用いることができる。形状についても中空糸型、スパイラル型、および平膜型など、任意の形状の膜に用いることが出来る。
【0034】
本発明のシリカ系汚れの付着防止剤及び付着防止方法により効果的にシリカ系汚れの付着を防止し得る詳細な作用機構は不明であるが、カルボキシル基を有するモノマー単位とスルホン酸基を有するモノマー単位とN−ビニルカルボン酸アミド基を有する単位との共重合体が、金属水酸化物を核とするシリカの析出物に吸着し、析出物を水中に分散することによりシリカ系汚れの付着を防止すると推測される。
【0035】
本発明の汚れ防止剤は、必要に応じて、他のスケール防止剤と併用することができる。併用するスケール防止剤としては、例えば、ニトリロトリメチルホスホン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ホスホノブタントリカルボン酸、トリポリ燐酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、アクリル酸、マレイン酸、アクリル酸、スルホン酸のコポリマーなどを挙げることができる。
【0036】
本発明の汚れ防止剤は、必要に応じてさらに塩化亜鉛などの防食剤、ヒドラジン、2−メチルー5−クロローイソチアゾロン系化合物、次亜塩素酸とスルファミン酸混合物などの殺菌剤などと、同じ溶液に混合して添加することもでき、あるいは、別々にこれらの薬品を添加して使用することもできる。
【実施例】
【0037】
実施例1〜7
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
【0038】
なお、実施例及び比較例においては、図1に示す伝熱面積0.25mの熱交換器4を有する保有水量100Lの模擬冷却水系装置を使用して評価を行った。熱交換器の材質はSUS304、外径19mmのチューブを用いた。また、非伝熱チューブ3(材質SUS304,外径19mm)も系内に設けた。ここにシリカ濃度25mg/lの川崎市工業用水を補給水槽13から補給水として加え、循環ポンプ2を稼動して冷却水が非伝熱チューブ3、熱交換器4を経由して冷却塔14(上部に充填材を充填)に戻るように運転した。運転条件は循環水ピット1に備えられたレベルセンサー5と導電率計6により、濃縮倍数が5倍、7倍になるようにブロー配管7からのブロ−量を制御しながら30日間行った。この間、循環水の熱交換器入口温度は30℃、出口温度は40℃に保った。
【0039】
なお、伝熱面では、炭酸カルシウム系スケールが極めて析出しやすいので、析出を抑制するために、カルシウム系スケール防止剤としてヒドロキシジエチリデンホスホン酸を6mg/l(PO4として)となるように加えた。評価ポリマーは、固形分濃度として15mg/L(固形分として)になるように、またスライムコントロール剤として次亜塩素酸ナトリウムを0.5〜1.0mg/L(Cl2として)になるように1日1回薬注ポンプを用いて冷却水系に30日間運転した。
【0040】
その後、熱交換器チューブ、非伝熱チューブに付着した汚れの量を測定し、汚れ防止効果を評価した。
【0041】
評価ポリマーと得られた汚れ防止結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

比較例1〜6
評価ポリマーのみを変更した以外は上記実施例と同様の操作を行って汚れ防止効果を評価した。
【0043】
評価ポリマーと得られた汚れ防止結果を表2に示す。
【0044】
【表2】

表1、2中、AAはアクリル酸、AMPSは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、IPSはイソプレンスルホン酸、VSはビニルスルホン酸、HAPSは3−アリロキシー2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、SSはスチレンスルホン酸、MAはマレイン酸を、それぞれ示す。
表1に見られるように、アクリル酸とスルホン酸基を有するモノマーとN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマーとの共重合体であって、N−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマーの組成比が30モル%以下である共重合体を水系に添加した実施例1〜7では、シリカ系汚れの付着量が少ない。
【0045】
これに対して、カルボキシル基のみを有し、スルホン酸基を有しない単独体合体又はカルボキシル基とN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマーからなる共重合体を水系に添加した比較例1、比較例6では、シリカ系汚れの付着量が多い。アクリル酸とスルホン酸基を有するモノマーとN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマーとの共重合体であっても、N−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマーの組成比が30モル%を超える共重合体を水系に添加した比較例5では、実施例に比べて、汚れの付着量が多い。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のシリカ系汚れの付着防止剤及び付着防止方法によれば、水系に、カルボキシル基を有するモノマー単位とスルホン酸基を有するモノマー単位とN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位とを有する共重合体を含有するシリカ系汚れの付着防止剤であって、前記共重合体におけるN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位の組成比が5〜30モル%である共重合体を添加することにより、水系のシリカ系汚れの付着を防止することができる。この汚れ防止方法によれば、冷却水系、ボイラ水系、膜処理装置、地熱発電所の還元井などにシリカ系汚れ付着障害を生ずることなく、安定して運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例及び比較例で使用した模擬冷却水系装置の工程系統図である。
【符号の説明】
【0048】
1 循環水ピット
2 循環ポンプ
3 非伝熱チューブ
4 熱交換器
5 レベルセンサー
6 導電率計
7 ブロー配管
8、9 薬注ポンプ
10 補給水ポンプ
11 評価ポリマー槽
12 次亜塩素酸ナトリウム槽
13 補給水槽
14 冷却塔




【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基を有するモノマー単位とスルホン酸基を有するモノマー単位とN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位とを有する共重合体を含有するシリカ系汚れの付着防止剤であって、前記共重合体におけるN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位の組成比が5〜30モル%であることを特徴とするシリカ系汚れの付着防止剤。
【請求項2】
カルボキシル基を有するモノマー単位とスルホン酸基を有するモノマー単位とN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位とを有する共重合体を含有するシリカ系汚れの付着防止剤であって、前記共重合体におけるカルボキシル基を有するモノマー単位とスルホン酸基を有するモノマー単位とN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位の組成比が40〜90:5〜30:5〜30モル%であることを特徴とするシリカ系汚れの付着防止剤。
【請求項3】
N−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマーが、式1または式2であらわされる化合物である請求項1または2に記載のシリカ系汚れの付着防止剤。
【化1】

【化2】

(式1中、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基をあらわす。式2中、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキレン基をあらわす。)。
【請求項4】
水系に、カルボキシル基を有するモノマー単位とスルホン酸基を有するモノマー単位とN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位とを有する共重合体を含有するシリカ系汚れの付着防止剤であって、前記共重合体におけるN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位の組成比が5〜30モル%である共重合体を添加することを特徴とするシリカ系汚れの付着防止方法。
【請求項5】
水系に、カルボキシル基を有するモノマー単位とスルホン酸基を有するモノマー単位とN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位とを有する共重合体を含有するシリカ系汚れの付着防止剤であって、前記共重合体におけるカルボキシル基を有するモノマー単位とスルホン酸基を有するモノマー単位とN−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマー単位の組成比が40〜90:5〜30:5〜30モル%である共重合体を添加することを特徴とするシリカ系汚れの付着防止方法。
【請求項6】
N−ビニルカルボン酸アミド基を有するモノマーが、式1または式2であらわされる化合物である請求項4または5に記載のシリカ系汚れの付着防止方法。
【化1】

【化2】

(式1中、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基をあらわす。式2中、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキレン基をあらわす。)


【図1】
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【公開番号】特開2008−36562(P2008−36562A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−216056(P2006−216056)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】