説明

シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブ

【課題】本発明は、結晶径が従来のものと同程度かそれよりも小さいシリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のシリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブの製造方法では、(i)ケイ素源と、(ii)アルミニウム源と、(iii)リン源と、(iv)構造規定剤と、(v)アルミニウム源1モルに対して0.001〜0.1モルの無機又は有機のマグネシウム塩又はマンガン塩とを含む混合物を水熱処理することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコアルミノリン酸塩(SAPO)モレキュラーシーブは、種々の化学反応における触媒材料等として利用されている。その用途の一つとして、オキシジェネートからオレフィンへの変換のための触媒として使用することが知られている。このような触媒用途としてシリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブの中でも特にSAPO−34が重要な触媒として注目されている。
【0003】
SAPO−34は、CHA構造を有するシリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブの一種であり、メタノールをオレフィンに変換する反応において、高い低級オレフィン選択性を示すことが知られている。その反応において、結晶径の小さいSAPO−34ほど優れた触媒活性を示すことが報告されており(特許文献1)、触媒を微粒子化する研究が多くなされている。
【0004】
100nm以下の結晶径を有するSAPO−34の製造方法として、特許文献2には、水和ゲルにエタノールを添加して水熱合成することにより、100nm以下の立方体類似形態を有するSAPO−34を製造できることが開示されている。
【0005】
また、特許文献3及び4には、シリカ源を塩基性の有機テンプレート溶液に溶解させてから水熱合成することにより、結晶径が100nm以下のSAPO−34を製造できることが開示されている。
【0006】
また、非特許文献1には、水和ゲルを乾燥させてドライゲルにしてから水熱合成することにより、平均結晶径が75nmのSAPO−34を製造できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5126308号明細書
【特許文献2】特表2005−511669号公報
【特許文献3】米国特許第6773688号明細書
【特許文献4】米国特許第7052664号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Hiraota, Y.,et al. Materials Chemistry and Physics (2010) 123, 507-509
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、種々の方法により結晶径の小さいゼオライト、特にSAPO−34を得ることができるが、特許文献2の方法では有機溶媒を用いなければならないため、通常の水熱合成装置と比較して高い耐圧性の反応装置を使用する必要がある。また、特許文献3及び4や非特許文献1の方法では、溶解や乾燥といった原料の前処理が必要であるため、1ポットで製造することができないという問題点がある。
【0010】
そこで、本発明は、汎用の反応装置でより簡便な方法により、結晶径が従来のものと同程度かそれよりも小さいシリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ケイ素源、アルミニウム源、リン源及び構造規定剤からなる混合物に、少量のマグネシウム塩又はマンガン塩を加えて水熱合成することにより、立方体状の高結晶性シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブが得られることを見い出し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、以下の発明を包含する。
[1](i)ケイ素源と、(ii)アルミニウム源と、(iii)リン源と、(iv)構造規定剤と、(v)アルミニウム源1モルに対して0.001〜0.1モルの無機又は有機のマグネシウム塩又はマンガン塩とを含む混合物を水熱処理することを含む、シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブの製造方法。
[2]構造規定剤が第四級アンモニウム化合物である、[1]に記載の方法。
[3]シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブがCHA型である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]マグネシウム又はマンガンを除去する工程をさらに含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]実験式(SiAl)O
(式中、Mはマグネシウム又はマンガンであり、aは0.05〜0.17であり、bは0.45〜0.55であり、cは0.33〜0.45であり、dは0.002〜0.030であり、a+b+c+d=1である)により表され、平均一次粒子径が120nm以下であるシリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブ。
[6]Mがマグネシウムであり、平均一次粒子径が60nm以下である、[5]に記載のシリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブ。
[7]シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブがCHA型である、[5]又は[6]に記載のシリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブ。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、従来技術と比較してより簡便な方法で、結晶径の小さいシリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例2で得られたSAPO−34のTEM画像を示す。
【図2】実施例3で得られたSAPO−34のSEM画像を示す。
【図3】実施例4で得られたSAPO−34のTEM画像を示す。
【図4】マグネシウム塩もしくはマンガン塩又は他の金属塩を有するSAPO−34の結晶径を比較した図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のシリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブは、特に限定されず、例えば、SAPO−5、SAPO−11、SAPO−17、SAPO−18、SAPO−26、SAPO−31、SAPO−33、SAPO−34、SAPO−35、SAPO−41、SAPO−42、SAPO−43、SAPO−44、SAPO−47、SAPO−56等が挙げられる。このうち、CHA構造を有するSAPO−34、SAPO−44及びSAPO−47は本発明のシリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブの製造方法においてより好ましい。
【0015】
本発明のシリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブは、実験式(SiAl)Oにより表される無水ベースの化学組成を有する。ここで、Mはマグネシウム又はマンガンであり、aは0.05〜0.17であり、bは0.45〜0.55であり、cは0.33〜0.45である。また、dは0.001〜0.030、好ましくは0.003〜0.025、より好ましくは0.005〜0.02であり、特に、Mがマンガンの場合、dは0.008〜0.015が好ましい。また、a+b+c+d=1である。
【0016】
本発明のシリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブにおいて、Mがマグネシウムの場合、平均一次粒子径は30〜60nmであり、下限としては、好ましくは35nm以上、より好ましくは40nm以上であり、上限としては、好ましくは55nm以下、より好ましくは50nm以下である。結晶は通常約20〜80nmの範囲の大きさを有する。Mがマンガンの場合、平均一次粒子径は通常70〜120nmであり、下限としては、好ましくは75nm以上、より好ましくは80nm以上、さらに好ましくは85nm以上であり、上限としては、好ましくは110nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは90nm以下である。結晶は通常約70〜200nmの範囲を有する。平均一次粒子径は、SEM(走査型電子顕微鏡)又はTEM(透過電子顕微鏡)により異なる3視野から画像を取得し、その画像中で任意に選択した50〜100個の直方体状の結晶の一辺を測定して、それらの相加平均をとることにより算出することができる。この場合、平均一次粒子径が上記の値を満たせば、取得される画像はSEM又はTEMのいずれを用いてもよい。
【0017】
シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブを微粒子化する利点としては、例えば、外部比表面積が大きくなるため、ハイドロクラッキング、アルキレーション等の触媒に好適に利用できることが挙げられる。また、金属、金属酸化物等の担持用触媒担体や、各種ガス及び液等の吸着剤にも好適に利用できる。さらに一次粒子径の微小なゼオライトはイオン交換速度に優れていることから、イオン交換能によるゼオライトの機能付与を効率的に行うこともできる。
【0018】
本発明のシリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブの製造方法は、上記の物性を満たすものが得られる方法であれば特に限定されず、少なくともケイ素源、アルミニウム源、リン源及び構造規定剤と、無機又は有機のマグネシウム塩又はマンガン塩と、水とを含む混合物を、通常140〜220℃、好ましくは160〜200℃で、通常4〜72時間、好ましくは8〜64時間加熱して、静置下又は攪拌下で結晶化することにより製造することができる。
【0019】
ケイ素源としては、特に限定されず、例えば、コロイダルシリカ、fumedシリカ、シリカゾル、水ガラス、ケイ酸エチル、ケイ酸メチルが挙げられるが、コロイダルシリカが好ましい。
【0020】
アルミニウム源としては、特に限定されず、例えば、アルミニウムイソプロポキシド、擬ベーマイト、アルミニウムトリエトキシド等のアルミニウムアルコキシド、水酸化アルミニウム、アルミナゾル、アルミン酸ナトリウムが挙げられるが、アルミニウムイソプロポキシドが好ましい。
【0021】
リン源としては、特に限定されず、例えばリン酸が挙げられるが、リン酸アルミニウムを用いてもよい。
【0022】
本発明における構造規定剤は、モレキュラーシーブの構造を決定するために必要な化合物であり、テンプレート(鋳型)とも称される。構造規定剤としては、特に限定されず、例えば、アミン、第四級アンモニウム化合物等が挙げられる。
【0023】
上記アミンは、例えば、以下の式(1):
NR (1)
(式中、R、R及びRは、それぞれ水素原子、アルキル基又はアルキニル基を表すが、R、R及びRが同時に水素原子であることはない。但し、R及びRは、隣接する窒素原子と一緒になって置換基を有していてもよい、飽和又は不飽和の5員環乃至8員環を形成してもよい)で示される化合物である。式(1)中、R、R及びRは、少なくとも1つがアルキル基の場合、そのアルキル基の例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、その炭素数は通常1〜4程度である。R及びRが、隣接する窒素原子と一緒になって飽和又は不飽和の5員環乃至8員環を形成する場合、その環に、さらに、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含んでもよい。これらの5員環乃至8員環は、特に断りがない限り、芳香族基、アシル基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基(−NH)、ニトロ基、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基)等から選択される1以上の置換基で置換されていてもよい。具体的には、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等のアルキルアミン;モノアリルアミン、ジアリルアミン、トリアリルアミン等のアリルアミン;シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、アミノメチルシクロヘキサン、ピペリジン、モルホリン、ピリジン等が挙げられる。
【0024】
上記第四級アンモニウム化合物は、例えば、以下の式(2):
(2)
(式中、R、R、R及びRは、それぞれアルキル基、アラルキル基、アリール基又はアリル基を表す)で示される第四級アンモニウムを含む化合物である。例えば、その第四級アンモニウムの水酸化物、ハロゲン化物、硫酸塩又は硝酸塩を用いることができ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。式(2)中、R、R、R及びRは、少なくとも1つがアルキル基の場合、そのアルキル基の例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、その炭素数は通常1〜4程度である。R、R、R及びRの少なくとも1つがアラルキル基の場合、そのアラルキル基の例として、ベンジル基、トリルメチル基が挙げられ、その炭素数は通常7〜10程度である。また、R、R、R及びRの少なくとも1つがアリール基の場合、そのアリール基の例として、フェニル基、トリル基が挙げられ、その炭素数は通常6〜10程度である。具体的には、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリブチルベンジルアンモニウム、プロピルトリメチルアンモニウム、ジベンジルジメチルアンモニウム又はテトラアリルアンモニウムの水酸化物、ハロゲン化物、硫酸塩又は硝酸塩が挙げられるが、水酸化テトラエチルアンモニウムが好ましい。
【0025】
無機又は有機のマグネシウム塩又はマンガン塩としては、特に限定されず、例えばマグネシウム又はマンガンの硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、塩化物、臭化物等の無機酸塩又は酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩が挙げられるが、硝酸塩又は酢酸塩が好ましい。特に好ましいのは、硝酸マグネシウム又は酢酸マンガンである。
【0026】
本発明のシリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブの製造方法において、上記混合物中、ケイ素源は、アルミニウム源1モルに対して通常0.01〜0.5モル、好ましくは0.1〜0.5モル加えることができる。また、リン源は、アルミニウム源1モルに対して通常0.6〜8モル、好ましくは1〜4モル加えることができる。また、構造規定剤は、アルミニウム源1モルに対して通常1〜8モル、好ましくは1〜4モル加えることができる。また、マグネシウム塩又はマンガン塩は、アルミニウム源1モルに対して0.001〜0.1、好ましくは0.005〜0.03モル加えることができる。さらに、水は、アルミニウム源1モルに対して通常10〜200モル、好ましくは15〜140モルに調整される。
【0027】
得られたシリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブは、そのままの状態で、あるいは金属元素をイオン交換等の一般的な方法により除去して使用することができる。また、担体により適宜修飾し、触媒、吸着剤、イオン交換体として利用することもできる。その際、結合剤等の添加剤を混合することもできる。結合剤としては、例えば、カオリナイト、セリサイト、タルク、雲母、モンモリロナイト、セピオライト、アタパルジャイトやスメクタイト等の粘土化合物類や、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、石英等が挙げられる。
【0028】
また、添加剤として、マトリックス剤を混合することもできる。マトリックス剤は、特に限定されず、例えば、希土類金属、チタニア、ジルコニア、マグネシア、トリア、ベリリア、石英又はシリカ等の金属酸化物、例えば、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−チタニア、シリカ−アルミナ、シリカ−アルミナ−トリア;モンモリロナイト及びカオリンの属から得られる天然泥が挙げられる。この天然泥には、例えば、ディキシー、マクナミー、ジョージア及びフロリダ泥として公知のカオリン及びサブベントナイトが含まれる。その他に、ハロイサイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、アナウキサイト等を使用することができる。上記マトリックス剤には、焼成及び/又は酸処理及び/又は化学処理等の公知の処理方法を適用することもできる。
【0029】
上記の通り製造したシリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブを用いてオレフィン混合物を製造するためには、特に限定されず、公知の方法が用いられる。供給原料は1以上のオキシジェネートが用いられ、より具体的には、少なくとも1つの酸素原子を含んだ1以上の有機化合物が用いられる。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のC1−20脂肪族アルコール、メチルエチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等の炭素数2〜10のエーテル、ホルムアルデヒド等の炭素数1〜4のアルデヒド、ジメチルケトン等の炭素数3〜8のケトン、炭酸ジメチル等の炭素数3〜9の炭酸エステル、酢酸等の炭素数1〜4のカルボン酸又はそれらの混合物が用いられる。上記脂肪族アルコールは、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜4個の炭素原子を有する。本発明の方法における供給原料として有用なアルコールは、低級直鎖及び分枝鎖脂肪族アルコール及びそれらの不飽和物である。
【0030】
本発明の一実施態様において、供給原料である上記1以上のオキシジェネートは、本発明のモレキュラーシーブを含有する触媒の存在下、炭素数2〜6、好ましくは炭素数2〜4のオレフィンに変換される。例えば、オレフィン単独又は1以上のオレフィンの混合物は、オキシジェネート、好ましくはアルコール、より好ましくはメタノールを含んだ供給原料から、好適なオレフィン、好ましくはエチレン及び/又はプロピレンに変換される。
【0031】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
[実施例1]SAPO−34の物性評価
結晶形態及び結晶径は、SEM(走査型電子顕微鏡)(JCM−5100、日本電子)又はTEM(透過電子顕微鏡)(H−9500、日立ハイテク)により得られた画像により評価した。結晶径は、画像中の直方体状の結晶において、その一辺を測定して結晶径とした。また、平均一次粒子径は、異なる3視野の画像中から、50〜100個のモレキュラーシーブを任意に選択して、相加平均をとることにより算出した。
【0033】
合成したSAPO−34のX線回折(XRD)の構造パターンを、米国特許4440871号明細書に示されている構造パターンと比較することにより、SAPO−34が生成していることを確認した。
【0034】
SAPO−34の元素分析は、誘導結合プラズマ(ICP)(ICPE−9000、島津製作所)により行った。
【0035】
[実施例2]マグネシウムを有するSAPO−34の製造
6.85gのLudox(登録商標)HS−30(水中30重量%、Aldrich、以下同様)、193.86gの水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)水溶液(水中35重量%、Aldrich、以下同様)をテフロンビーカーに加えた。この溶液に、24.11gのアルミニウムイソプロポキシド(純度98%以上、Aldrich、以下同様)を添加し、さらに、53.27gのリン酸(水中85重量%、Aldrich、以下同様)を添加した。均質な混合物に0.73gの硝酸マグネシウム6水和物(和光純薬)を加えた。モル比で以下の組成:
0.6SiO/Al/4P/8TEAOH/133HO/0.05Mg(NO
を有する混合物を得た。この混合物を、テフロン内筒を有するSUS316製オートクレーブに移し、180℃で64時間加熱処理した。オートクレーブから取り出した後、脱イオン水で洗浄し、100℃で12時間乾燥させ、粉末状の生成物を得た。XRDパターンにより、この生成物がSAPO−34であることを確認した。ICPにより生成物の各元素を定量したところ、Si0.124Al0.4660.393Mg0.017であった。
【0036】
TEM分析によって、立方体類似形態の結晶が得られたことを確認した。結晶辺は0.02〜0.08μmの範囲であり、平均一次粒子径は0.04μmであった(図1)。
【0037】
[実施例3]マンガンを有するSAPO−34の製造
6.85gのLudox HS−30、193.86gの水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液を含む溶液をテフロンビーカーにて調製した。この溶液に、24.11gのアルミニウムイソプロポキシドを添加し、さらに、53.27gのリン酸を添加した。均質な混合物に0.70gの酢酸マンガン4水和物(和光純薬)を加えた。モル比で以下の組成:
0.6SiO/Al/4P/8TEAOH/133HO/0.05Mn(CHCOO)
を有する混合物を得た。この混合物を、テフロン内筒を有するSUS316製オートクレーブに移し、180℃で64時間加熱処理した。オートクレーブから取り出した後、脱イオン水で洗浄し、100℃で12時間乾燥させ、粉末状の生成物を得た。XRDパターンにより、この生成物がSAPO−34であることを確認した。ICPにより生成物の各元素を定量したところ、Si0.123Al0.4740.392Mn0.011であった。
【0038】
SEM分析によって、立方体類似形態の結晶が得られたことを確認した。結晶辺は0.07〜0.2μmの範囲であり、平均一次粒子径は0.1μmであった(図2)。
【0039】
[実施例4]マグネシウムを有するSAPO−34の製造
0.22gの硝酸マグネシウム6水和物を加えた以外は実施例2と同じ操作を行い以下の組成:
0.6SiO/Al/4P/8TEAOH/133HO/0.015Mg(NO
を有する混合物を得た。この混合物を、テフロン内筒を有するSUS316製オートクレーブに移し、180℃で64時間加熱処理した。オートクレーブから取り出した後、脱イオン水で洗浄し、100℃で12時間乾燥させ、粉末状の生成物を得た。XRDパターンにより、この生成物がSAPO−34であることを確認した。ICPにより生成物の各元素を定量したところ、Si0.131Al0.4830.381Mg0.005であった。
【0040】
TEM分析によって、立方体類似形態の結晶が得られたことを確認した。結晶辺は0.02〜0.08μmの範囲であり、平均一次粒子径は0.05μmであった(図3)。
【0041】
[比較例1]SAPO−34の製造(マグネシウム又はマンガンを含まない)
6.85gのLudox HS−30、193.86gの水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液を含む溶液をテフロンビーカーにて調製した。この溶液に、24.11gのアルミニウムイソプロポキシドを添加し、さらに、53.27gのリン酸を添加した。モル比で以下の組成:
0.6SiO/Al/4P/8TEAOH/133H
を有する均質な混合物を得た。この混合物を、テフロン内筒を有するSUS316製オートクレーブに移し、180℃で64時間加熱処理した。オートクレーブから取り出した後、脱イオン水で洗浄し、100℃で12時間乾燥させ、粉末状の生成物を得た。XRDパターンにより、この生成物がSAPO−34であることを確認した。ICPにより生成物の各元素を定量したところ、Si0.123Al0.4790.398であった。
【0042】
SEM分析によって、立方体類似形態の結晶が得られたことを確認した。結晶辺は0.2〜0.8μmの範囲であり、平均一次粒子径は0.5μmであった。
【0043】
[比較例2]マグネシウム塩又はマンガン塩と他の金属塩との比較
マグネシウム塩及びマンガン塩の他に、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸バリウム、硝酸クロム(III)・九水和物、硝酸鉄(III)・九水和物についても、上記実施例と同様に、得られた結晶の平均一次粒子径を測定した(表1、図4)。結果より、マグネシウム塩及びマンガン塩を添加した場合では平均一次粒子径が0.1μm以下であったが、他の金属を添加した場合では、0.4μmを超える平均一次粒子径であったことがわかる。
【0044】
【表1】

【0045】
[実施例5]触媒性能評価
上記より得られた粉末状のSAPO−34を石英管に充填して、粉末1g当たり100ml/分の酸素含有気体流通下で、600℃、6時間保持して焼成することにより、反応用の固体酸触媒を得た。なお、SAPO−34細孔内に残存している構造安定剤は燃焼除去される。
【0046】
続いて、得られた固体酸触媒を16〜32メッシュの大きさに成型し、そのうち500mgを、常圧固定層流通反応器中の内径10mmの石英反応管に充填した。この反応器に、50体積%のエタノール及び50体積%の窒素からなる混合気体を、エタノールの重量空間速度が1.5h−1となるように蒸発器を通じて供給し、400℃、0.1MPaで4時間反応を行った。なお、重量空間速度WHSV(h−1)は、エタノールの流量(g/h)を触媒重量(g)で除して求められる。反応終了後、ガスクロマトグラフィーで生成物の分析を行った。反応開始4時間後のエチレン、プロピレン、ブテン、C−Cアルカン、C以上の炭化水素の収率(炭素モル%)を以下の表2に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
エタノールを原料としたとき、本試験の条件下では、エタノールは脱水反応によりエチレンに転化した後、他の炭化水素へ変換される。そこで、エチレン消費率を以下の式で計算する。
エチレン消費率%=(100%−エチレン収率%)
【0049】
表2から、実施例2より得られたSAPO−34では、エチレン消費率が32%、プロピレン収率が19%であり、実施例3より得られたSAPO−34では、エチレン消費率が30%、プロピレン収率が18%であった。一方、比較例1より得られたSAPO−34では、エチレン消費率が18%、プロピレン収率が14%であり、本発明の方法により得られたSAPO−34を用いた場合と比べエチレン消費率及びプロピレン収率は共に低かった。これらの結果から、マグネシウム塩又はマンガン塩を添加することによって結晶径が小さくなったSAPO−34では、エチレン消費率、即ち触媒活性が高くなり、プロピレン収率も高くなることが示された。触媒活性が高くなることによって、一定量の原料を処理するときの触媒量を減らすことができることから、触媒にかかるコストを低減できる。さらに、触媒量の低減により反応器を小さくできることから、設備費も低減することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ケイ素源と、(ii)アルミニウム源と、(iii)リン源と、(iv)構造規定剤と、(v)アルミニウム源1モルに対して0.001〜0.1モルの無機又は有機のマグネシウム塩又はマンガン塩とを含む混合物を水熱処理することを含む、シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブの製造方法。
【請求項2】
構造規定剤が第四級アンモニウム化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブがCHA型である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
マグネシウム又はマンガンを除去する工程をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
実験式(SiAl)O
(式中、Mはマグネシウム又はマンガンであり、aは0.05〜0.17であり、bは0.45〜0.55であり、cは0.33〜0.45であり、dは0.002〜0.030であり、a+b+c+d=1である)により表され、平均一次粒子径が120nm以下であるシリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブ。
【請求項6】
Mがマグネシウムであり、平均一次粒子径が60nm以下である、請求項5に記載のシリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブ。
【請求項7】
シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブがCHA型である、請求項5又は6に記載のシリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−43794(P2013−43794A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181612(P2011−181612)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、セルロース系バイオマスエタノールからプロピレンを製造するプロセス開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】