説明

シリコンウェーハの機械的強度測定装置および測定方法

【課題】ウェーハを試験片として切り出すことなく、ウェーハ自体の機械的強度を精度よく測定するために好適な装置および方法の提供。
【解決手段】所定の間隔を置いて平行に配置されたライン状凸曲面部を有する一対の支持部材と、該支持部材間の上方位置に、支持部材と平行に配置されたライン状凸曲面部を有する押圧部材とを具え、前記支持部材および前記押圧部材の少なくともシリコンウェーハと接触する前記凸曲面部の表面における算術平均粗さRaが0.4〜3.0μmの範囲であり、前記支持部材に載置したシリコンウェーハの真上から前記押圧部材をシリコンウェーハ面との平行状態を維持しながら降下させてシリコンウェーハを押圧し、押圧部材を包む方向にシリコンウェーハを曲げ変形させることによりシリコンウェーハの機械的強度を測定することを特徴とする、シリコンウェーハの機械的強度測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハの機械的強度測定装置および機械的強度測定方法に関し、特に、シリコンウェーハを試験片として切り出すことなく、シリコンウェーハ自体の機械的強度を精度よく測定するために好適な装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶インゴットをスライスしたシリコンウェーハ(以下、単に「ウェーハ」という)は、ラッピング、エッチング、ポリッシング、洗浄等、様々な工程を経ることによりポリッシュドウェーハに加工される。また、ポリッシュドウェーハは更に熱処理、酸化膜の形成等の工程を経ることにより、所望の製品(アニール・ウェーハ、エピタキシャル・ウェーハ、SOIウェーハ等)に形成される。
【0003】
上記工程では、ウェーハ端部に衝撃、応力等が負荷される場合が多いため、ウェーハ端部にはキズ、カケ等の欠陥が生じ易い。例えば、ラッピング時やポリッシング時にはウェーハ端部がホルダー内周面に当接するため、ウェーハ端部に衝撃が負荷される。また、ウェーハ搬送時にはロボットハンド等によりウェーハ端部を把持するため、ウェーハ端部に応力が負荷される。そのため、ウェーハ端部の強度が不足すると、上記衝撃、応力等に起因してウェーハ端部にキズ、カケ等の欠陥が発生し、更にはかかる欠陥を起点とした割れが生じ、破壊に至る。
【0004】
上記理由により、ウェーハ製造工程時に懸念されるウェーハ端部のキズ、カケ、割れ等を防止するためにはウェーハ端部が所望の強度を有することが必要である。また、上記キズ、カケ、割れ等の問題を未然に防止する上では、事前にウェーハ端部の強度を正確に評価することが極めて有効である。ウェーハ端部の強度を測定する技術としては、例えば特許文献1〜3にも開示されているように、種々の技術が提案されている。
【0005】
しかしながら、近年、製品の高性能化に伴いウェーハに施される熱処理条件が益々過酷になる中、ウェーハ端部のみならずウェーハ表面からの割れが問題視されるようになった。例えば、半導体デバイス製造工程において多用されるFLA処理(フラッシュランプアニール処理)やLSA処理(レーザスパイクアニール処理)では、加熱温度:約1000〜1300℃、処理時間:約0.001sの急速昇降温熱処理がウェーハ表面に施される。このような高温・短時間加熱が施されたウェーハには局所的に大きな熱歪みが生じるため、ウェーハ表面からの割れが発生し易い。加えて、ウェーハサイズはφ300mm、更にはφ450mmと大型化される傾向にあり、従来のウェーハに比べてウェーハ表面に応力が発生し易い形状となっている。
【0006】
そのため、ウェーハの品質を保証する上では、ウェーハ自体の強度も正確に評価する必要があるが、上記特許文献1〜3で提案された技術は、何れもウェーハ自体の強度を直接測定したものではない。
【0007】
一方、特許文献4には、半導体材料の板状試料片の平面部に対して3点曲げまたは4点曲げ試験を行うことにより、半導体材料の強度を測定する技術が提案されている。しかしながら、特許文献4で提案された技術では、ウェーハ等の半導体材料から切り出した長方形の板状試料片を用いて曲げ試験を行うため、ウェーハ全体としての強度を正確に評価することができない。また、試料片を切り出す際、試料片に新たに導入され得るキズ等の欠陥が測定誤差につながり兼ねない。更に、試料片の切り出し作業も煩雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−287139号公報
【特許文献2】特開2000−249637号公報
【特許文献3】特開平6−201533号公報
【特許文献4】特開平9−229838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記現状に鑑みて開発されたもので、ウェーハを試験片として切り出すことなく、ウェーハ自体の機械的強度を精度よく測定するために好適な装置および方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ウェーハ全体としての強度を正確に把握する手段として、ウェーハから試験片を切り出すことなく、ディスク状のウェーハに対して3点曲げまたは4点曲げ試験を行うことにより、ウェーハ強度を測定する手段について鋭意検討した。その結果、通常為されている3点曲げおよび4点曲げ試験をディスク状ウェーハに適用しても、ウェーハ強度を正確に測定できないことが判明した。また、更に検討した結果、以下(a)〜(c)の知見を得た。
【0011】
(a)曲げ試験が具える一対の支持部材にウェーハを載置した状態で、押圧部材により上方からウェーハ表面に荷重を負荷すると、支持部材−ウェーハ間および押圧部材−ウェーハ間ですべりが生じ、測定誤差が生じる。
(b)前記支持部材および前記押圧部材の少なくともウェーハと接触する部分の表面を、所定の算術平均粗さとすることにより、上記すべりを抑制することができる。
(c)前記支持部材または前記押圧部材を、長手方向両端部が長手方向中心部を支点として上下方向に回動自在に構成することにより、押圧部材による押圧時に簡易に前記支持部材および前記押圧部材をウェーハ表面に対して常に平行状態の位置関係を維持することができる。
【0012】
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
(1)所定の間隔を置いて平行に配置されたライン状凸曲面部を有する一対の支持部材と、該支持部材間の上方位置に、支持部材と平行に配置されたライン状凸曲面部を有する押圧部材とを具え、前記支持部材および前記押圧部材の少なくともシリコンウェーハと接触する前記凸曲面部の表面における算術平均粗さRaが0.4μm以上3.0μm以下の範囲であり、前記支持部材に載置したシリコンウェーハの真上から前記押圧部材をシリコンウェーハ面との平行状態を維持しながら降下させてシリコンウェーハを押圧し、押圧部材を包む方向にシリコンウェーハを曲げ変形させることによりシリコンウェーハの機械的強度を測定することを特徴とする、シリコンウェーハの機械的強度測定装置。
【0013】
(2)前記押圧部材が、平行に配置された一対のライン状凸曲面部を有する押圧部材である、上記(1)に記載のシリコンウェーハの機械的強度測定装置。
【0014】
(3)前記支持部材のうちの何れか一方の支持部材は、長手方向両端部が長手方向中心部を支点として上下方向に回動自在に構成してなる、上記(1)または(2)に記載のシリコンウェーハの機械的強度測定装置。
【0015】
(4)前記押圧部材は、長手方向両端部が長手方向中心部を支点として上下方向に回動自在に構成してなる、上記(3)に記載のシリコンウェーハの機械的強度測定装置。
【0016】
(5)所定の間隔を置いて平行に配置されたライン状凸曲面部を有し少なくともシリコンウェーハと接触する前記凸曲面部の表面における算術平均粗さRaが0.4μm以上3.0μm以下の範囲である一対の支持部材上にシリコンウェーハを載置し、前記支持部材間の上方位置に支持部材と平行に配置されたライン状凸曲面部を有し少なくともシリコンウェーハと接触する前記凸曲面部の表面における算術平均粗さRaが0.4μm以上3.0μm以下の範囲である押圧部材を、前記支持部材に載置したシリコンウェーハの真上からシリコンウェーハ面との平行状態を維持しながら降下させてシリコンウェーハを押圧し、押圧部材を包む方向にシリコンウェーハを曲げ変形させることによりシリコンウェーハの機械的強度を測定することを特徴とする、シリコンウェーハの機械的強度測定方法。
【0017】
(6)前記押圧部材が、平行に配置された一対のライン状凸曲面部を有する押圧部材である、上記(5)に記載のシリコンウェーハの機械的強度測定方法。
【0018】
(7)前記支持部材のうちの何れか一方の支持部材は、長手方向両端部が長手方向中心部を支点として上下方向に回動自在に構成してなる、上記(5)または(6)に記載のシリコンウェーハの機械的強度測定方法。
【0019】
(8)前記押圧部材は、長手方向両端部が長手方向中心部を支点として上下方向に回動自在に構成してなる、上記(7)に記載のシリコンウェーハの機械的強度測定方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、ウェーハ自体の機械的強度を正確に評価することができる。そのため、本発明は、ウェーハ製造工程、並びに、半導体デバイス製造工程において懸念されるウェーハ表面割れを未然に防止し、製品の品質向上を図る上で極めて有益である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のウェーハの機械的強度測定装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明のウェーハの機械的強度測定装置の他の例を示す概略図である。
【図3】本発明のウェーハの機械的強度測定装置の支持部材および押圧部材が、長手方向中心部を支点として長手方向両端部が上下方向に回動する様子を示す図である。
【図4】実施例2において、ウェーハ端部に圧疵が導入される位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、所定の間隔を置いて平行に配置されたライン状凸曲面部を有する一対の支持部材と、該支持部材間の上方位置に、支持部材と平行に配置されたライン状凸曲面部を有する押圧部材とを用い、前記支持部材および前記押圧部材の少なくともシリコンウェーハと接触する前記凸曲面部の表面における算術平均粗さRaを0.4μm以上3.0μm以下の範囲とし、前記支持部材に載置したシリコンウェーハの真上から前記押圧部材をシリコンウェーハ面との平行状態を維持しながら降下させてシリコンウェーハを押圧し、押圧部材を包む方向にシリコンウェーハを曲げ変形させることによりシリコンウェーハの機械的強度を測定することを特徴とする。
【0023】
図1は、本発明の一例であり、ウェーハの3点曲げ試験を行うことによりウェーハの機械的強度を測定する場合の概略図である。本発明では、所定の間隔を置いて平行に配置された一対の支持部材1a,1bにウェーハを載置した状態で、ウェーハの真上から押圧部材2を降下させてウェーハ中央部を押圧することにより試験荷重を負荷し、ウェーハが押圧部材2を包む方向へ曲げ変形させることにより、ウェーハの3点曲げ試験を行う。
【0024】
支持部材1a,1bおよび押圧部材2は互いに平行に配置される。また、支持部材1a,1bおよび押圧部材2はそれぞれライン状(棒状)の形状を有し、これらの長手方向の寸法はウェーハwの直径よりも長く設計されている。支持部材1a,1bの少なくとも一方は水平方向に移動可能に構成され、支持部材1a,1bの間隔がウェーハwの直径に応じて変更可能な構成とされている。なお、支持部材1a,1bおよび押圧部材2の長手方向の寸法をウェーハwの直径の約1.1〜1.6倍に設定し、支持部材1a,1bの間隔をウェーハwの直径の約0.5〜0.7倍に設定すると、試験荷重が安定するため好ましい。
【0025】
また、図2は、本発明の他の例であり、ウェーハの4点曲げ試験を行うことによりウェーハの機械的強度を測定する場合の概略図である。本発明では、所定の間隔を置いて平行に配置された一対の支持部材1a,1bにウェーハを載置した状態で、ウェーハの真上から所定の間隔を置いて平行に配置された一対の押圧部材2a,2bを降下させてウェーハ中央部を押圧することにより試験荷重を負荷し、ウェーハが押圧部材2a,2bを包む方向へ曲げ変形させることにより、ウェーハの4点曲げ試験を行う。
【0026】
支持部材1a,1bおよび押圧部材2a,2bは互いに平行に配置される。また、支持部材1a,1bおよび押圧部材2a,2bはそれぞれライン状(棒状)の形状を有し、これらの長手方向の寸法はウェーハwの直径よりも長く設計されている。支持部材1a,1bの少なくとも一方は水平方向に移動可能に構成され、支持部材1a,1bの間隔がウェーハwの直径に応じて変更可能な構成とされている。同様に、押圧部材2a,2bの少なくとも一方は水平方向に移動可能に構成され、押圧部材2a,2bの間隔がウェーハwの直径に応じて変更可能な構成とされている。なお、支持部材1a,1bおよび押圧部材2a,2bの長手方向の寸法をウェーハwの直径の約1.1〜1.6倍に設定し、支持部材1a,1bの間隔をウェーハwの直径の約0.5〜0.7倍、押圧部材2a,2bの間隔をウェーハwの直径の約0.1〜0.35倍に設定すると、試験荷重が安定するため好ましい。
【0027】
上記3点曲げ試験、4点曲げ試験の何れの場合においても、ライン状の支持部材1a,1bおよび押圧部材2,2a,2bは、例えば円形状、半円状の断面形状を有し、ウェーハ接触部分が凸曲面に形成されているが、本発明において特記すべき点は、上記ウェーハ接触部分の表面を算術平均粗さRa:0.4μm以上3.0μm以下の範囲に規定した点である。
【0028】
曲げ試験を行う上では、通常、高炭素クロム鋼やステンレス鋼製の支持部材および押圧部材を使用する。本発明者らは、これらの材料からなる部材を用いてディスク状ウェーハの曲げ試験を試みたが、ウェーハに試験荷重を負荷すると、ウェーハ表面の平滑度が高いため、支持部材−ウェーハ間および押圧部材−ウェーハ間ですべりが生じ、正確な強度測定が困難であるという新たな問題に直面した。そこで、本発明者らは上記すべりを抑制する手段として、支持部材表面および押圧部材表面のうちウェーハと接触する部分に所定の表面粗さを設ける手段を着想した。
【0029】
更に、本発明者らは、支持部材表面および押圧部材表面のうちウェーハと接触する部分について、支持部材−ウェーハ間および押圧部材−ウェーハ間でのすべりを抑制し得る表面粗さについて調査した。その結果、後述の実施例1で示すように、最もすべりが生じやすい鏡面研磨後のポリッシュドウェーハを用いた場合においても、支持部材および押圧部材のうちウェーハと接触する部分の表面における算術平均粗さRaが0.4μm以上であれば、支持部材−ウェーハ間および押圧部材−ウェーハ間でのすべりを抑制できることを確認した。
【0030】
以上の理由により、本発明では、支持部材および押圧部材の少なくともウェーハと接触する部分の表面における算術平均粗さRaを0.4μm以上に規定する。一方、支持部材および押圧部材の少なくともウェーハと接触する部分の表面が粗すぎると、ウェーハ強度測定中、支持部材および押圧部材がウェーハ表面にキズをつけてしまう。かかるキズはウェーハ強度低下の原因となるため、正確な測定結果を得るためには、支持部材および押圧部材の少なくともウェーハと接触する部分の表面の粗さを所定値以下に制限する必要がある。
【0031】
そこで、本発明では、支持部材および押圧部材の少なくともウェーハと接触する部分の表面における算術平均粗さRaを3.0μm以下、好ましくは1.6μm以下に規定することにより、支持部材および押圧部材との接触によるウェーハ表面キズを回避する。以上により、本発明によると、支持部材−ウェーハ間および押圧部材−ウェーハ間でのすべりを生じることなく、ウェーハの機械的強度を正確に評価することができる。
【0032】
なお、本発明において支持部材および押圧部材に算術平均粗さRa0.4μm以上3.0μm以下の表面を形成する手段は特に問わず、例えば、研削盤による研削加工や研磨剤を使用した表面研磨等、種々の手段が挙げられる。
【0033】
また、厚さ数百μm〜数mm程度のウェーハの3点曲げまたは4点曲げ試験を行う場合には、前記支持部材および前記押圧部材を互いに平行に設置する際、高度な平行度が要求される。しかしながら、前記支持部材および前記押圧部材を互いに平行に設置する作業は煩雑である上、高度な平行度をもって設置することは極めて困難である。
【0034】
上記問題を解決する上では、一対の支持部材のうちの何れか一方を、長手方向両端部が長手方向中心部を支点として上下方向に回動自在に構成された支持部材とすることが有効である。また、前記支持部材と同様に、長手方向両端部が長手方向中心部を支点として上下方向に回動自在に構成された押圧部材を用いることがより一層効果的である。
【0035】
例えば、図1において、支持部材1aは所定位置に固定する一方、支持部材1bおよび押圧部材2は、図3に示すように長手方向中心部cを支点として上下方向に回動自在に設置する。上記構成を有する支持部材1a,1bおよび押圧部材2を用いてウェーハwに3点曲げ試験を行う場合、次のようにして支持部材1a,1bおよび押圧部材2が、ウェーハ表面に対して常に平行状態の位置関係を維持することができる。
【0036】
支持部材1a,1bにウェーハwを載置すると、支持部材1aのみが所定位置に固定されているため、ウェーハwはその表面が支持部材1aの長手方向と平行になるように載置される。かかる状況のもと、押圧部材2を降下させてウェーハwに接触させると、支持部材1bおよび押圧部材2の長手方向両端部は、ウェーハwの表面に沿うような方向に回動する。以上のようにして押圧部材2からウェーハwに試験荷重が負荷される際には、支持部材1a,1bおよび押圧部材2が常に互いに平行状態を維持することができるのである。
【0037】
また、上記では図1に示す3点曲げ試験の場合に従い説明したが、図2に示す4点曲げ試験の場合には、例えば支持部材1aを所定位置に固定し、支持部材1bおよび押圧部材2a,2bを長手方向中心部を支点として上下方向に回動自在に設置すれば、上記と同様の作用により支持部材1a,1bおよび押圧部材2a,2bを互いに平行状態とすることができる。
【0038】
本発明において、支持部材、押圧部材の長手方向両端部が長手方向中心部を支点として上下方向に回動自在となるようにする手段は特に問わず、例えば、支持部材等の長手方向中心部に支持部材等を軸支するための貫通孔を設け、ピン等の支軸を支持部材等の貫通孔に挿嵌することにより、支軸を支点として支持部材等の長手方向両端部を上下方向に回動自在とするなど、種々の手段を採用することができる。
【0039】
なお、本発明のウェーハの機械的強度測定装置について、上記した以外の構成については通常の3点曲げまたは4点曲げ試験装置と同様の構成とすることができる。
【実施例】
【0040】
次に、本発明例および比較例により本発明の効果を説明するが、本発明例はあくまでも本発明を説明する例示に過ぎず、本発明を限定するものではない。
(実施例1)
直径300mm、厚さ775±20μmの(100)ポリッシュドシリコンウェーハについて、図1に示すような3点曲げ試験を行うことによりウェーハの強度を測定した。なお、ウェーハの強度は、ウェーハ破壊時の試験荷重で評価するものとした。支持部材1a,1bおよび押圧部材2は、何れも円形断面形状の棒状部材であり、支持部材1a,1bの断面直径:30mm、押圧部材2の断面直径:20mm、支持部材1a,1bおよび押圧部材2の長さ:330mmとした。また、支持部材1a,1bおよび押圧部材2は、何れもSUJ2製の部材であり、シリコンウェーハと接触する部分には、表面研削加工により粗さを形成し、表面粗さを種々の値に変化した部材を用いて測定した。なお、支持部材1a,bの間隔は210mmとし、支持部材1aは長手方向両端部が回動しないように固定した。一方、支持部材1bおよび押圧部材2は、これらの長手方向中心部に貫通孔を設け、支軸(ピン)を上記貫通孔に挿嵌して軸支することにより、図3に示すように長手方向両端部を上下方向に回動可能な構成とした。測定結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1は支持部材1a,1bおよび押圧部材2がシリコンウェーハと接触する部分の表面粗さ(算術平均粗さ)とウェーハ破壊荷重(ウェーハ破壊時の試験荷重)との関係を示す。表1から明らかであるように、上記表面粗さ(算術平均粗さ)が0.4μm未満の場合、支持部材−ウェーハ間および押圧部材−ウェーハ間にすべりが生じることに起因し、400Nを超える試験荷重を負荷してもウェーハが破壊せず、ウェーハの機械的強度を正確に測定することができなかった。また、上記表面粗さ(算術平均粗さ)が3.0μmを超える場合、ウェーハ表面のうち支持部材および押圧部材に接触する部分にキズがついてしまい、測定されたウェーハ破壊荷重が215N未満と低めの値となった。一方、上記表面粗さ(算術平均粗さ)が0.4μm以上3.0μm以下の場合には、上記すべりやキズが抑制され、測定されたウェーハ破壊荷重が250〜310Nの値に収まった。特に、上記表面粗さ(算術平均粗さ)が0.4μm以上1.6μm以下の場合には、測定されたウェーハ破壊荷重が270〜310Nの値に収まり、測定値が安定していることが確認された。
【0043】
(実施例2)
直径300mm、厚さ775±20μmの(100) ポリッシュドシリコンウェーハであって、その表面中心部または図4に示す端部にビッカース硬度計を用いて種々のサイズの圧疵を導入したサンプルを、圧疵導入箇所・圧疵サイズ毎に10枚ずつ用意し、図1に示すような3点曲げ試験を行うことによりウェーハの強度を測定した。なお、ウェーハの強度は、ウェーハ破壊時の試験荷重で評価するものとした。支持部材1a,1bおよび押圧部材2は、何れも円形断面形状の棒状部材であり、支持部材1a,1bの断面直径:30mm、押圧部材2の断面直径:20mm、支持部材1a,1bおよび押圧部材2の長さ:330mmとした。また、支持部材1a,1bおよび押圧部材2は、何れもSUJ2製の部材であり、シリコンウェーハと接触する部分には、表面研削加工により表面に粗さを設け、その表面粗さ(算術平均粗さ)Raを0.4μmとした。なお、支持部材1a,bの間隔は210mmとし、支持部材1aは長手方向両端部が回動しないように固定した。一方、支持部材1bおよび押圧部材2は、これらの長手方向中心部に貫通孔を設け、支軸(ピン)を上記貫通孔に挿嵌して軸支することにより、図3に示すように長手方向両端部を上下方向に回動可能な構成とした。ウェーハ破壊荷重(ウェーハ破壊時の試験荷重)の平均値について、圧疵導入箇所・圧疵サイズ毎に求めた結果を表2および表3に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

【0046】
通常、ウェーハに導入された圧疵が大きいほどウェーハ破壊荷重(ウェーハ破壊時の試験荷重)が低下するが、表2および表3に示すように、圧疵導入箇所がウェーハ表面、ウェーハ端部の何れの場合においても、圧疵サイズが大きくなるほどウェーハ破壊荷重の測定値が低下する傾向が確認される。すなわち、本発明によると、支持部材、押圧部材の平行出し等の煩雑な作業を行うことなく、ウェーハの機械的強度を正確に評価することができる。
【0047】
なお、上記実施例では、機械的強度の評価対象をポリッシュドウェーハとしたが、本発明はこれに限定されず、インゴットからスライスしたウェーハ、並びに、ラッピング後のウェーハ、エッチング後のウェーハ等、ポリッシュドウェーハに加工される前のウェーハにも適用可能である。また、ポリッシュドウェーハに熱処理、酸化膜の形成等を施すことにより得られるアニール・ウェーハ、エピタキシャル・ウェーハ、SOIウェーハ等にも適用可能である。更に、本発明においては機械的強度の評価対象となるウェーハの寸法も上記実施例に限定されず、例えば、直径150mm程度のものから450mm程度、更にはこれ以上の直径を有するウェーハにも適用可能であり、厚さ数百μm〜数mm程度、更にはこれ以上の厚さを有するウェーハにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
ウェーハを試験片として切り出すことなく、ウェーハ自体の機械的強度を精度よく測定することが可能となり、シリコンウェーハ並びに半導体デバイスの品質向上を図る上で極めて有用である。
【符号の説明】
【0049】
1a,1b … 支持部材
2,2a,2b … 押圧部材
w … ウェーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔を置いて平行に配置されたライン状凸曲面部を有する一対の支持部材と、該支持部材間の上方位置に、支持部材と平行に配置されたライン状凸曲面部を有する押圧部材とを具え、前記支持部材および前記押圧部材の少なくともシリコンウェーハと接触する前記凸曲面部の表面における算術平均粗さRaが0.4μm 以上3.0μm以下の範囲であり、前記支持部材に載置したシリコンウェーハの真上から前記押圧部材をシリコンウェーハ面との平行状態を維持しながら降下させてシリコンウェーハを押圧し、押圧部材を包む方向にシリコンウェーハを曲げ変形させることによりシリコンウェーハの機械的強度を測定することを特徴とする、シリコンウェーハの機械的強度測定装置。
【請求項2】
前記押圧部材が、平行に配置された一対のライン状凸曲面部を有する押圧部材である、請求項1に記載のシリコンウェーハの機械的強度測定装置。
【請求項3】
前記支持部材のうちの何れか一方の支持部材は、長手方向両端部が長手方向中心部を支点として上下方向に回動自在に構成してなる、請求項1または2に記載のシリコンウェーハの機械的強度測定装置。
【請求項4】
前記押圧部材は、長手方向両端部が長手方向中心部を支点として上下方向に回動自在に構成してなる、請求項3に記載のシリコンウェーハの機械的強度測定装置。
【請求項5】
所定の間隔を置いて平行に配置されたライン状凸曲面部を有し少なくともシリコンウェーハと接触する前記凸曲面部の表面における算術平均粗さRaが0.4μm 以上3.0μm以下の範囲である一対の支持部材上にシリコンウェーハを載置し、前記支持部材間の上方位置に支持部材と平行に配置されたライン状凸曲面部を有し少なくともシリコンウェーハと接触する前記凸曲面部の表面における算術平均粗さRaが0.4μm 以上3.0μm以下の範囲である押圧部材を、前記支持部材に載置したシリコンウェーハの真上からシリコンウェーハ面との平行状態を維持しながら降下させてシリコンウェーハを押圧し、押圧部材を包む方向にシリコンウェーハを曲げ変形させることによりシリコンウェーハの機械的強度を測定することを特徴とする、シリコンウェーハの機械的強度測定方法。
【請求項6】
前記押圧部材が、平行に配置された一対のライン状凸曲面部を有する押圧部材である、請求項5に記載のシリコンウェーハの機械的強度測定方法。
【請求項7】
前記支持部材のうちの何れか一方の支持部材は、長手方向両端部が長手方向中心部を支点として上下方向に回動自在に構成してなる、請求項5または6に記載のシリコンウェーハの機械的強度測定方法。
【請求項8】
前記押圧部材は、長手方向両端部が長手方向中心部を支点として上下方向に回動自在に構成してなる、請求項7に記載のシリコンウェーハの機械的強度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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