説明

シリコンウエーハの再生方法

【課題】半導体デバイスの製造工程等において、表面にCuが析出することがないシリコンウエーハの再生方法を提供する。
【解決手段】Cuに汚染されたシリコンウエーハの表面を研磨する研磨工程と、表面を研磨されたシリコンウエーハを洗浄する洗浄工程とを有するシリコンウエーハの再生方法において、洗浄工程を経たシリコンウエーハWを熱処理炉10内に配置し、熱処理炉10内に酸素又は酸素と水蒸気の混合気体を供給した後、15分〜520分の間、熱処理炉10内の温度を900℃〜1000℃に維持することにより、シリコンウエーハWの表面に熱酸化膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの製造工程等において使用されたシリコンウエーハの再生方法に関し、特にCuに汚染されたシリコンウエーハを再生する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程では、プライムシリコンウエーハとテスト(ダミー)シリコンウエーハの2つの異なる品質の単結晶シリコンウエーハが用いられている。プライムシリコンウエーハは、テストシリコンウエーハより品質基準が高く、実際の半導体製品を製造するために使用される。一方、テストシリコンウエーハは、製造工程の最適化やモニタリングに使用されている。
【0003】
テストシリコンウエーハには、半導体デバイスの製造工程で使用された使用済みのシリコンウエーハを再生して使用している。シリコンウエーハ(以下、単に「ウエーハ」と呼ぶこともある。)の再生方法は、大略、使用済みウエーハの表面に形成された被膜を除去する工程と、被膜除去されたウエーハの表面を鏡面研磨する工程と、鏡面研磨されたウエーハを洗浄する工程とからなる。再生されたウエーハは、半導体デバイスの製造には向かなくても、製造工程のモニタリング等には十分適しており、新品のテストウエーハの代わりに利用されている。
【0004】
ところで、近年、半導体デバイスの製造工程では、微細化の進行に伴い、配線材料として従来使用されていたAlに替えて、Alより電気伝導率の高いCuが使用されるようになってきている。しかし、Cuは、半導体デバイスの製造工程において湿式エッチングや洗浄に汎用的に使用されているHF水溶液に混入するとシリコンウエーハ表面に付着しやすいだけでなく、シリコン結晶内における拡散が非常に速く、シリコンウエーハの内部まで侵入したCuを従来の再生方法により除去することは困難である。このため、半導体業界では、Cuは汚染物質として特に警戒されている。
【0005】
そこで、特許文献1では、鏡面研磨工程を実施する前に、シリコンウエーハの少なくとも一方の面にダメージ負荷を与えるゲッタリングサイト形成処理を行ってから該シリコンウエーハに熱処理を施して、シリコンウエーハ内部の不純物を低減するシリコンウエーハの再生方法の発明が開示されている。結晶欠陥には重金属を捕捉する能力があることがわかっている。この作用を積極的に利用して素子領域を清浄化する方法をゲッタリングといい、意図的に形成されたゲッタリング層をゲッタリングサイトという。
【0006】
また、特許文献2では、皮膜除去工程と研磨工程の間に、シリコンウエーハを150〜300℃で20分間〜5時間加熱し、更にシリコンウエーハ表面部を除去する加熱・除去工程を含むシリコンウエーハの再生方法の発明が開示されている。この方法では、皮膜除去工程と研磨工程の間で所定の加熱を行うことにより、シリコンウエーハ内部に侵入したCuをシリコンウエーハの表面近傍まで移動させた後、その表面を化学的方法若しくは機械的方法で削り取ることにより、Cuを除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−93869号公報
【特許文献2】特開2005−117022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、シリコンウエーハの内部に、酸化誘起積層欠陥OSF(Oxidation induced Stacking Fault)や酸素析出物BMD(Bulk Micro Defect)等の結晶欠陥が存在する場合、特許文献1、2などに記載されているシリコンウエーハの再生方法によっても、Cuをシリコンウエーハ内部から完全に除去することはできない。このため、再生ウエーハを半導体デバイスの製造工程に使用した際に、再生ウエーハの表面にCuが析出する場合がある。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、半導体デバイスの製造工程等において、表面にCuが析出することがないシリコンウエーハの再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、Cuに汚染されたシリコンウエーハの表面を研磨する研磨工程と、表面を研磨された該シリコンウエーハを洗浄する洗浄工程とを有するシリコンウエーハの再生方法において、前記洗浄工程を経た前記シリコンウエーハの表面に熱酸化膜を形成する熱酸化膜工程を有することを特徴としている。
【0011】
従来のシリコンウエーハの再生方法では、Cuに汚染されたシリコンウエーハ(シリコン基板)を熱処理してCuを外方拡散させた後、当該シリコンウエーハの表面を研磨、洗浄することによりシリコンウエーハからCuを除去しようとしていた。しかし、当該方法によってCuをシリコンウエーハから完全に除去することは困難であることから、本発明では、発想を転換し、シリコンウエーハからCuを除去するのではなく、シリコンウエーハ(シリコン基板)の表面にSiOからなる熱酸化膜を形成してCuを熱酸化膜内に封じ込めることとした。後述するように、シリコン基板上に析出したCuは熱酸化膜に捕捉され、熱酸化膜の上層部及びシリコン基板表層部のCuをほぼゼロとすることができる。
【0012】
また、本発明に係るシリコンウエーハの再生方法では、前記熱酸化膜の厚さを50nm〜1000nmとすることが好ましい。
熱酸化膜の厚さを50nm未満とした場合、Cuが熱酸化膜の表面から析出するおそれがある一方、熱酸化膜の厚さが1000nmを超えると、熱酸化膜の効果が飽和し、経済性や生産効率の点からも好ましくない。なお、熱酸化膜の厚さは100nm〜500nmとすることがより好ましい。
【0013】
また、本発明に係るシリコンウエーハの再生方法では、前記熱酸化膜工程において、前記洗浄工程を経た前記シリコンウエーハを熱処理炉内に配置し、前記熱処理炉内に酸素又は酸素と水蒸気の混合気体を供給した後、15分〜520分の間、該熱処理炉内の温度を900℃〜1000℃に維持することを好適とする。
熱処理炉内の温度を900℃未満とすると、成膜速度が遅くなり、生産性が著しく低下する一方、1000℃を超えると、熱処理炉の耐久性に悪影響を与える。
酸素雰囲気下とした熱処理炉内を900℃で15分間維持することにより、熱処理炉内のシリコンウエーハ(シリコン基板)表面に形成される熱酸化膜の厚さを50nmとすることができる。一方、酸素雰囲気下とした熱処理炉内を1000℃で520分間維持することにより、熱処理炉内のシリコンウエーハ(シリコン基板)表面に形成される熱酸化膜の厚さを1000nmとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るシリコンウエーハの再生方法では、洗浄工程を経たシリコンウエーハ(シリコン基板)の表面に熱酸化膜を形成するので、シリコン基板上に析出したCuは熱酸化膜に捕捉され、熱酸化膜の上層部及びシリコン基板表層部のCuをほぼゼロとすることができる。その結果、半導体デバイスの製造工程等において、表面にCuが析出することがないシリコンウエーハを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態に係るシリコンウエーハの再生方法の作業手順を示すフローチャート図である。
【図2】熱酸化膜処理に使用される熱処理炉の模式図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るシリコンウエーハの再生方法によって再生されたシリコンウエーハのCu濃度のグラフである。
【図4】同シリコンウエーハの再生方法によって再生されたシリコンウエーハのCu濃度のグラフである。
【図5】同シリコンウエーハの再生方法によって再生されたシリコンウエーハのCu濃度のグラフである。
【図6】従来方法によって再生されたシリコンウエーハのCu濃度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。なお、「シリコンウエーハ」と「シリコン基板」は通常、同義であるが、本明細書では、熱酸化膜が形成されたシリコン基板を「シリコンウエーハ」と呼ぶことがある。
【0017】
表面にCu膜を有するシリコンウエーハを例に採り、本発明の一実施の形態に係るシリコンウエーハの再生方法について説明する。図1に、その作業手順を示す。
(1)Cu膜を有するシリコンウエーハの場合、先ず、シリコンウエーハの表面からCu膜を除去する(ST1)。Cu膜を除去する方法は特に限定されないが、例えばCu膜を有するシリコンウエーハを、硫酸と過酸化水素水の混合液でエッチングすることによってCu膜を溶解除去することができる。
【0018】
(2)シリコンウエーハの表面からCu膜が除去されると、シリコンウエーハ内部に存在するCuを除去するため、シリコンウエーハに外方拡散処理(ST2)とエッチング処理(ST3)が実施される。
外方拡散処理は、シリコンウエーハを熱処理することにより、シリコンウエーハの内部に存在するCuを表層部に移動させる処理である。外方拡散処理によって表層部に集積したCuは、エッチング処理によって除去される。エッチング処理では、KOH、NaOHなどのアルカリエッチング液や、HFとHNOの混合液などの酸エッチング液を用いて、シリコンウエーハ表層部のCuを溶解除去する。
【0019】
(3)上記工程を経たシリコンウエーハは、研磨工程(ST4)において表面が鏡面研磨された後、洗浄工程(ST5)において洗浄される。
鏡面研磨方法は特に限定されないが、研磨材を供給しながら、回転する定盤に貼り付けた研磨クロスの上にシリコンウエーハを載置し、一定の荷重を与えて研磨を行うものである。研磨材としては、アルカリ溶液中にコロイダルシリカを分散させたものを使用することができる。また、洗浄方法も特に限定されないが、パーティクルや金属の除去を目的とした処理であり、洗浄液としてAPM(アンモニア+過酸化水素水)やHPM(塩酸+過酸化水素水)などが用いられる。
【0020】
(4)上記各工程は従来の再生方法と同様の工程であり、前述したように、上記工程を経たシリコンウエーハ(シリコン基板)の内部にはCuが存在している。そのため、シリコンウエーハ(シリコン基板)の表面にCuが析出するおそれがある。そこで、本発明では、更に熱酸化膜工程(ST6)を実施した後、出荷(ST7)する。以下、熱酸化膜工程について詳述する。
【0021】
熱酸化膜工程に使用する熱処理炉10を図2に示す。熱処理炉10は、洗浄工程(ST5)を経たシリコンウエーハW(シリコン基板)が収容される釣鐘状のプロセスチューブ12と、シリコンウエーハWが搭載され、プロセスチューブ12内に装填されるウエーハボート19と、プロセスチューブ12の外側に設置され、プロセスチューブ12を加熱するヒータ13と、プロセスチューブ12内に雰囲気ガスを供給する供給管14及びプロセスチューブ12内から雰囲気ガスを排出する排出管15とを備え、断熱性を有するケーシング11によって遮蔽されている。
【0022】
プロセスチューブ12は石英ガラス製とされ、その底面には、ウエーハボート19を挿入するための開口部が形成されている。プロセスチューブ12の天頂部は雰囲気ガスの供給口14aとされ、供給管14が接続されている。また、ウエーハボート19に雰囲気ガスが直接当たらないようにするため、整流板21が供給口14aに近接して設けられている。一方、プロセスチューブ12の下端部側面には、雰囲気ガスの排出口15aが設けられ、排出管15が接続されている。
【0023】
ウエーハボート19は、円柱状の保温筒16上に立設する複数本の支柱17と、これら複数本の支柱17の上端部を支持する支持部18とから構成されている。各支柱17は石英からなり、シリコンウエーハWをセットするための水平な溝(図示省略)が材軸方向に等間隔で形成されている。保温筒16は石英ガラスで形成され、熱処理に際し、プロセスチューブ12内の熱の散逸を防止する。保温筒16は昇降アーム20上に設置されており、昇降アーム20を介して保温筒16を昇降させることにより、ウエーハボート19をプロセスチューブ12内に装填することができる。
【0024】
次に、上記熱処理炉10を用いた熱酸化膜処理について説明する。
洗浄工程(ST5)を経たシリコンウエーハW(シリコン基板)をウエーハボート19に必要数セットし、保温筒16を上昇させてウエーハボート19をプロセスチューブ12内に装填する。次いで、酸素又は酸素と水蒸気の混合気体からなる雰囲気ガスを供給管14よりプロセスチューブ12内に供給し、プロセスチューブ12内をドライ状態又はウェット状態の酸素雰囲気とする。そして、ヒータ13によりプロセスチューブ12を加熱してプロセスチューブ12内の温度を上昇させ、所定温度(900℃〜1000℃)に到達後、その状態を所定時間(15分〜520分間)維持する。これにより、シリコンウエーハW(シリコン基板)の表面にSiOからなる熱酸化膜が形成される。熱酸化膜の厚さは50nm〜1000nmである。
【0025】
以上、本発明の一実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、上記実施の形態では、Cu膜を有するシリコンウエーハの再生方法について説明したが、Cu膜の無いシリコンウエーハの場合は、Cu膜除去工程は不要となる。また、上記実施の形態では、外方拡散工程とそれに伴うエッチング工程を実施したが、本発明では、これらの工程は必須工程ではなく必要に応じて実施すればよい。
【実施例】
【0026】
本発明の一実施の形態に係るシリコンウエーハの再生方法によって再生されたシリコンウエーハ(実施例)と、従来の再生方法によって再生されたシリコンウエーハ(比較例)それぞれについてCu濃度の測定を行った。
Cu濃度の測定には、ICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析装置)を使用した。ICP−MSは、プラズマ(ICP)をイオン源として使用し、発生したイオンを質量分析部(MS)で検出する装置である。本試験では、シリコンウエーハの表面をHFとHの混合液又はHFとHNOの混合液を用いて溶解し、回収した試料のCu濃度をICP−MSを用いて測定した。
【0027】
実施例1、2のCu濃度を図3に、実施例3、4のCu濃度を図4に、実施例5、6のCu濃度を図5にそれぞれ示す。また、比較例1、2のCu濃度を表1に、比較例3のCu濃度を図6に示す。なお、図中の「ND」は「Not Detected(検出せず)」を表している。
【0028】
【表1】

【0029】
実施例1、2は、シリコン基板(バルク)中にCuを含んだ直径300mmのシリコンウエーハを、上述した再生法により再生したものである。熱酸化膜処理条件は950℃で20分間とし、熱酸化膜の厚さは100nmとした。また、Cu濃度の測定に当たっては、熱酸化膜の上層部(表面〜深さ30、40nmまで)及び熱酸化膜の下層部(深さ30、40nm〜100nmまで)はHFとHの混合液で溶解し、シリコン基板表層部(深さ1μm)はHFとHNOの混合液で溶解して試料とした。
実施例1、2とも熱酸化膜の上層部及びシリコン基板の表層部では、Cuは検出されず(300mmウエーハのCu検出下限は1.9×10atoms/cm2)、熱酸化膜の下層部において4.0〜5.5×10atoms/cm2のCuが検出された(図3参照)。このことから、シリコン基板中にCuが存在する場合、熱酸化膜処理を施すことにより、Cuは熱酸化膜の下層部で捕捉されることがわかる。因みに、実操業におけるウエーハ表面のCu許容濃度は1×1010atoms/cm2であり、実施例のウエーハ表面におけるCu濃度は全く支障のないレベルであることが確認できた。
【0030】
実施例3〜6は、シリコン基板中にCuを含んだ直径200mmのシリコンウエーハを、上述した再生法により再生したものである。実施例3、4の熱酸化膜処理条件は900℃で15分間とし、熱酸化膜の厚さは100nmとした。一方、実施例5、6の熱酸化膜処理条件は900℃で90分間とし、熱酸化膜の厚さは300nmとした。その後、実施例3、5については、N雰囲気下で950℃×9時間、実施例4、6については、N雰囲気下で950℃×27時間の熱処理を実施した。
Cu濃度の測定に当たっては、実施例3、4は実施例1、2と同様の方法により、実施例5、6については、熱酸化膜の上層部(表面〜深さ230、240nmまで)及び熱酸化膜の下層部(深さ230、240nm〜300nmまで)はHFとHの混合液で溶解し、シリコン基板表層部(深さ1μm)はHFとHNOの混合液で溶解して試料とした。
【0031】
実施例3〜6とも、N雰囲気下で熱処理を実施した場合でも、熱酸化膜の上層部及びシリコン基板の表層部においてCuは検出されず(200mmウエーハのCu検出下限は5.7×10atoms/cm2)、熱酸化膜の下層部においてのみ6.0〜14.8×10atoms/cm2のCuが検出された(図4、図5参照)。このことから、シリコンウエーハに熱酸化膜処理を施した場合、その後に熱処理を実施した場合でも、Cuは熱酸化膜の下層部に留まり熱酸化膜の上層部には析出しないので、実操業には全く支障のないことがわかる。
【0032】
比較例1、2は、シリコン基板中にCuを含んだ直径200mmのシリコンウエーハを、従来の再生法により再生したものである。比較例1のシリコン基板は結晶欠陥が無く、比較例2のシリコン基板は多数の結晶欠陥を有している。Cu濃度の測定に当たっては、シリコンウエーハ表面をHFとHの混合液で溶解して試料とした。
比較例1、2とも、洗浄後においてウエーハ表面のCuは検出されなかったが、N雰囲気下で熱処理(950℃×20分間)した場合、比較例2のウエーハ表面から1.1×1010atoms/cm2のCuが検出された(表1参照)。比較例2では、シリコン基板中の結晶欠陥に捕捉されていたCuが熱処理により表面に析出してくる。このことから、結晶欠陥があるシリコンウエーハの場合、従来の再生方法では、シリコンウエーハからCuを完全に除去できないことがわかる。
【0033】
比較例3も、比較例2と同様、シリコン基板中の結晶欠陥にCuを含んだ直径200mmのシリコンウエーハを、従来の再生法により再生したものである。再生前における比較例3のウエーハ表面におけるCu濃度は3.5×10atoms/cm2であったが、従来の再生方法を施すことにより、Cu濃度は検出可能レベル以下となった(図6参照)。しかし、N雰囲気下で1回目の熱処理(900℃×2分間)を施すことにより、比較例3のウエーハ表面において再びCuが検出され(Cu濃度:3.3×10atoms/cm2)、N雰囲気下で2回目の熱処理(900℃×180分間)を施すと、Cu濃度はさらに上昇した(Cu濃度:4.5×10atoms/cm2)。Cuを含有するシリコンウエーハを熱処理すると、ウエーハ表面のCu濃度が増加傾向となり、長時間の熱処理によって、実操業におけるウエーハ表面のCu許容濃度である1×1010atoms/cm2を超える可能性が十分に考えられる。
【符号の説明】
【0034】
10:熱処理炉、11:ケーシング、12:プロセスチューブ、13:ヒータ、14:供給管、14a:供給口、15:排出管、15a:排出口、16:保温筒、17:支柱、18:支持部、19:ウエーハボート、20:昇降アーム、21:整流板、W:シリコンウエーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cuに汚染されたシリコンウエーハの表面を研磨する研磨工程と、表面を研磨された該シリコンウエーハを洗浄する洗浄工程とを有するシリコンウエーハの再生方法において、
前記洗浄工程を経た前記シリコンウエーハの表面に熱酸化膜を形成する熱酸化膜工程を有することを特徴とするシリコンウエーハの再生方法。
【請求項2】
請求項1記載のシリコンウエーハの再生方法において、前記熱酸化膜の厚さを50nm〜1000nmとすることを特徴とするシリコンウエーハの再生方法。
【請求項3】
請求項2記載のシリコンウエーハの再生方法において、前記熱酸化膜工程では、前記洗浄工程を経た前記シリコンウエーハを熱処理炉内に配置し、前記熱処理炉内に酸素又は酸素と水蒸気の混合気体を供給した後、15分〜520分の間、該熱処理炉内の温度を900℃〜1000℃に維持することを特徴とするシリコンウエーハの再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−267921(P2010−267921A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120172(P2009−120172)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000253226)濱田重工株式会社 (17)