説明

シリコンオイルを含む有機ゲルおよびその製造方法

【課題】金属塩などの第二成分(凝集剤)を添加する必要がなく、簡便な工程で得られ、安定な有機ゲルおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】特定構造のトリメシン酸誘導体からなる有機ゲル化剤(A)と、シリコンオイルを1〜99重量%含む溶媒(B)からなる有機ゲルおよびその製造方法、並びに該有機ゲルから製造される有機ファイバー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリコンオイルを含む有機ゲル及びその製造方法、並びに該有機ゲルから製造される有機ファイバーに関する。
【背景技術】
【0002】
ゲルとは、コロイド溶液中のコロイド粒子がある条件の下で凝結粒子となって網目組織を構成し、その中に液体を包み込み流動性を失った状態またはそのような状態にある物質をいう。ゲルは、その構成成分である溶媒が、水か有機溶媒かにより、ハイドロゲルと有機ゲルに分類される。
【0003】
有機ゲルは、構成成分として水より高沸点の有機溶媒を用いることにより、高温で使用可能なケモメカニカルシステム材料、衝撃・振動吸収材料、医薬品除放性付与材料、有機物の液体の回収剤、電解液の固体化などとして、ハイドロゲルでは達成困難な用途に用いることができる。有機ゲルの調製は、ハイドロゲルの調製に比して一般に困難であり、したがって調製例も少ない。例えばポリ(ベンジルグルタメート)とジオキサンから構成される有機ゲルの調製法が記載されているが、ゲル化には70℃、10〜20日といった高温と長時間を要している(非特許文献1参照。)。また、ニトロ基を有する芳香族ジカルボン酸から構成されるポリアミドと塩化鉄等の金属塩を用いる有機ゲル化剤が記載されているが、まずゲル化剤を溶媒に均一に溶解した後凝集剤としての金属塩を添加するといった二段の操作が必要であり、金属塩による着色、容器や器具の腐食といった問題も生じてくる(特許文献1参照。)。また、シクロヘキサン誘導体からなる有機ゲル化剤が記載されているが、最小ゲル化濃度が15g/L以上であり、ゲル化能としては十分なものとはいえない(特許文献2参照。)。また、トリメシン酸誘導体からなるゲル化剤が報告されているが、シリコンオイルを含有するゲルに関しては記述されていない(非特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平9−95611号公報
【特許文献2】特開2003−64047号公報
【非特許文献1】Macromolecule、23巻、3779頁(1990)
【非特許文献2】Chemical Letters 575頁(1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、金属塩などの第二成分(凝集剤)を添加する必要がなく、また水を併用することなく有機溶媒とともに軽く加熱した後室温に放置しておくだけで得られ、シリコンオイルを含有する安定な有機ゲルおよびその製造方法、および有機ゲルから製造される有機ファイバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するためにトリメシン酸誘導体とシリコンオイルからなる有機ゲルについて種々検討を行い、本発明を完成した。すなわち本発明は、
[1]式(1)で示される有機ゲル化剤(A)とシリコンオイルを1〜99重量%含む溶媒(B)からなる有機ゲル、
[2]有機ゲル化剤(A)が式(2)で示される化合物である[1]の有機ゲル、
[3]有機ゲル化剤(A)の量が、溶媒(B)100重量部に対して1〜20重量部である[1]の有機ゲル、
[4]溶媒(B)が、有機ゲル化剤(A)の作用によりゲル化する溶媒(C)を5〜95重量%含む[1]の有機ゲル、
[5]溶媒(B)が50〜99重量%のシリコンオイルを含む[1]の有機ゲル、
[6]溶媒(C)が炭化水素系溶媒、アルコール性溶媒及びエーテル系溶媒からなる群より選ばれる1種以上である[4]の有機ゲル、
[7]シリコンオイルを1〜99重量%含む溶媒(B)100重量部に、式(1)で示される有機ゲル化剤(A)1〜20重量部を加え、加熱溶解させた後、放冷させることを特徴とする有機ゲルの製造方法、及び
[8][1]の有機ゲルから製造される有機ファイバー
に関するものである。
【0006】
【化3】

(式中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜36の直鎖又は分岐状アルキル基を示し、mは1〜10の整数を示し、nは0〜10の整数を示す。)
【0007】
【化4】

【発明の効果】
【0008】
本発明のシリコンオイルを含有する有機ゲルおよび有機ファイバーは、高いシリコンオイル含有量であり、また高い安定性を有する。得られた有機ゲルは、高温で使用可能なケモメカニカルシステム材料、衝撃・振動吸収材料、薬品基材、薬品除放材料、電解液の固体化、シリコンオイルゲル、触媒や電子材料として使用される金属ファイバーのテンプレートなどとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
有機ゲル化剤(A)は式(1)に示される化合物である。式(1)において、Rは炭素数1〜20の直鎖又は分岐状アルキル基を示す。nは0〜10の整数を示す。炭素数1〜20の直鎖又は分岐状アルキル基としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコサデシル、ネオペンチル、2−エチルヘキシル、3,3−ジメチルブチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、3,7−ジメチルオクチル、3,7−ジメチルオクタン−3−イル、2−ヘキシルデシル、2−ヘプチルウンデシル、2−オクチルドデシル、3,7,11−トリメチルドデシル、3,7,11,15−テトラメチルヘキサデシル、3,5,5−トリメチルヘキシル、2,3,4−トリメチルペンタン−3−イル、2,3,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−3−イル、イソステアリル、シクロヘキシル等の基が挙げられる。特に、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、エイコサデシル、ネオペンチル及びシクロヘキシルから選ばれる基であることが好ましい。
【0010】
【化5】

(式中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜36の直鎖又は分岐状アルキル基を示し、mは1〜10の整数を示し、nは0〜10の整数を示す。)
【0011】
式(1)中、mは1〜10の整数を示し、nは0〜10の整数を示す。mは5〜10であることが好ましく、nは0〜3であることが好ましい。更に好ましくはnが0である。
【0012】
式(1)中、−{(CHO}R として、以下に示す官能基が例示される。しかしながら、これらに限定はされない。
【化6】

【0013】
有機ゲル化剤(A)としては、式(2)で示される化合物がより好ましい。
【化7】

【0014】
式(1)の化合物は、たとえば、トリメシン酸クロリドおよび炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキルアミンをベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、ジクロロメタン、酢酸エチル、ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどの溶媒中、トリエチルアミンやピリジン等の塩基存在下に反応させるか、トリメシン酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキルアミンを無溶媒で脱水縮合反応させることにより得ることができる。式(2)の化合物は、前記アルキルアミンとしてステアリルアミンを使用することで得られる。反応温度は室温から使用溶媒の沸点もしくは原料の融点までの温度を選ぶことができる。
【0015】
これらの反応は、室温中で行うことが出来る。ただし、通常溶媒の沸点またはその近くまで加温してもよい。また、無溶媒で脱水縮合する場合は通常150〜250℃で反応する。反応時間は30分〜10時間、好ましくは1〜5時間程度である。また、塩基性触媒や金属含有触媒を添加することにより反応時間が短縮されることがある。反応混合物から目的物を採取するには、たとえば、反応混合物を貧溶媒に加え晶析して得た析出物を濾過するか、反応混合物をそのまま、または減圧濃縮し、析出物を濾過するか、減圧濃縮物を一旦他の溶媒、例えばエステル類、アルコール類、ケトン類等に溶解した後冷却して析出物を濾過することにより得ることができる。得られた析出物は必要により乾燥してもよい。
【0016】
溶媒(B)は、シリコンオイルを1〜99重量%、好ましくは50〜99重量%含む。
シリコンオイルの一部又は全部は、下記一般式(3)で示される直鎖状オルガノポリシロキサンまたは一般式(4)で示される環状オルガノポリシロキサン及び一般式(5)で示される分岐状オルガノシロキサンである。
【化8】

【化9】

【化10】

(一般式(3)〜(5)において、Rは、水素原子、水酸基又は炭素原子数2〜30の一価の非置換又はフッ素置換アルキル基、アリール基、アミノ基置換アルキル基、アルコキシ基及び(CHSiO{(CHSiO}Si(CHCHCH−で示される基から選択される基である。cは0〜1000の整数、dは0〜1000の整数、c+dが1〜2000の整数、a、bはそれぞれ0〜3の整数、eおよびfはそれぞれ0〜8の整数で3≦e+f≦8、gは1〜4の整数、hは0〜500の整数である。)
これらの中で、一般式(4)で示される環状ポリシロキサンが純物質であるため品質の安定性の点で更に好ましく、特にデカメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンが好ましい。
【0017】
溶媒(B)は、有機ゲル化剤(A)の作用によりゲル化する有機溶媒(以下、「溶媒(C)」と称す)を含むことが好ましい。溶媒(C)として、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール性溶媒、ジクロロエタン、トリクロロエタン等のハロゲン系溶媒、ベンゼン、トルエン、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル等の芳香族系溶媒、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、流動パラフィン等の炭化水素系溶媒、ポリエチレングリコール等のエーテル系溶媒が挙げられるが、これらに限定はされない。中でも炭化水素系溶媒、アルコール性溶媒及びエーテル系溶媒からなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
これらの中で、有機ゲルの安全性の点からエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、流動パラフィン及びポリエチレングリコールが特に好ましい。溶媒(C)の添加量としては溶媒(B)中に1〜99重量%が好ましく、特に2〜50重量%が好ましいが制限はされない。
溶媒(B)には、本発明の効果を妨げない範囲で、溶媒(C)以外の種々の有機溶媒や水が含まれていてもよい。
【0018】
本発明の有機ゲルには下記の固形添加剤を任意の量を添加することが出来る。具体的には、天然高級アルコール、アミノ酸類、界面活性剤、乳化剤、油脂類、ロウ類、炭化水素、脂肪酸、エステル、糖類、ビタミン、高分子、殺菌・防腐剤、酸化防止剤、紫外線防腐剤、キレート剤、粉体及び色材等が挙げられるがこれらに限定されない。固形添加剤の添加量は、好ましくは有機ゲルに対し、0.1〜50重量%であり、更に好ましくは1〜10重量%である。
【0019】
天然高級アルコールとしては、例えば、イソステアリルアルコール、ヘキシルデカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。
アミノ酸類としては、例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸;L−アルギニン等の塩基性アミノ酸;グリシン、L−セリン、L−プロリン等の中性アミノ酸;システイン、L−メチオニン、シスチン等の含硫アミノ酸等が挙げられる。
【0020】
界面活性剤としては、例えば、陰イオン性(アニオン)界面活性剤、陽イオン性(カチオン)界面活性剤、両イオン性界面活性剤、非イオン性(ノニオン)界面活性剤等が挙げられる。
乳化剤としては、例えば、レシチン誘導体、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等が挙げられる。
【0021】
油脂類としては、例えば、植物油脂;牛脂、ミンク油、卵黄油、豚脂、馬脂等の動物油脂等が挙げられる。
ロウ類としては、例えば、カルナウバロウ、キャンデリラロウ等の植物性ロウ;蜜ロウ、サラシ蜜ロウ、鯨ロウ、セラックス、ラノリン等の動物性ロウ等が挙げられる。
炭化水素としては、例えば、パラフィン、α-オレフィンオリゴマ、スクワラン、セレシン、ポリエチレン末、ポリブテン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。
【0022】
脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、ラノリン脂肪酸、リノール酸、ウンデシレン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
エステルとしては、例えば、直鎖脂肪酸と低級アルコール、直鎖高級アルコール、分枝高級アルコールもしくは多価アルコールとのエステル;分枝脂肪酸と低級アルコール、直鎖高級アルコール、多価アルコールもしくは分枝高級アルコールとのエステル;ヒドロキシカルボン酸とアルコールとのエステル等が挙げられる。
【0023】
糖類としては、例えば、キシロース、リボース、アラビノース等の五単糖;グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース等の六単糖;ショ糖、麦芽糖、乳糖等の二糖類;ラフィノース等の三糖類;スタキオース等の四糖類;デンプン、グリコーゲン、セルロース、イヌリン等の単純多糖類(ホモ糖質);寒天、ペクチン、アルギン酸、マンナン、カラギナン等の複合多糖類(ヘテロ糖類)等が挙げられる。
【0024】
ビタミンとしては、例えば、ビタミンA群;ビタミンB1類、ビタミンB2類、ビタミンB6類、ビタミンB12類、ビオチン類等のビタミンB群;ビタミンC群;ビタミンD群;ビタミンE群;ビタミンK群;必須脂肪酸;フェルラ酸、オロット酸等のビタミン様作用因子等が挙げられる。
【0025】
高分子としては、例えば、アラビアゴム、トラガントガム、グァーガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、アイリスモス、クインスシード、ゼラチン、セラック、ロジン、カゼイン等の天然高分子化合物;カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エステルガム、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース等の半合成高分子化合物;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミド樹脂、シリコン油等の合成高分子化合物等が挙げられる。
【0026】
殺菌・防腐剤としては、例えば、酸類、フェノール類、ハロゲン化ビスフェノール類、アミド類、第4級アンモニウム塩類、銀塩類等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、オルトトリルビグアナイド、ジブチルヒドロキシトルエン、チオジプロピオン酸ジラウリル、天然ビタミンE、dl-α-トコフェロール、パラヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシアニソール、フィチン酸、没食子酸オクチル、没食子酸プロピル等が挙げられる。
紫外線防腐剤としては、例えば、有機系紫外線防腐剤、無機系紫外線防腐剤等が挙げられる。
キレート剤としては、例えばエデト酸、クエン酸、フィチン酸、リン酸、リンゴ酸、グルコン酸等が挙げられる。
【0027】
粉体及び色材としては、例えば、酸化鉄、群青、紺青、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、カオリン、マイカ、セリサイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸、合成マイカ、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、窒化ホウ素、麻セルロース末、小麦デンプン、シルク末、トウモロコシデンプン、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ウンデシレン酸亜鉛等の無機粉体;ポリエチレン末、ナイロン末、ポリアクリル酸アルキル、架橋ポリスチレン、メチルシロキサン網状重合体等の合成高分子粉体;アゾ系色素、ニトロ系色素、ニトロソ系色素、キサンテン系色素、キノリン系色素、アントラキノリン系色素、インジゴ系色素、トリフェニルメタン系色素等のタール色素等が挙げられる。
【0028】
本発明の式(1)で示される有機ゲル化剤(A)は有機溶媒の存在下に網目構造を形成する能力を有し、有機ゲル化剤として有用である。この網目構造は、高分子化合物や無機化合物のものとは異なり、水素結合などの非共有結合だけで保持される。単一分子から始まって、繊維状会合体の最終的には絡み合った網目構造へと自己集合する過程は熱可逆的である。式(1)で示される有機ゲル化剤(A)は、有機溶媒と混合し、加熱溶解し、放冷することにより有機ゲルとなる。本発明において有機ゲルを作る場合の有機ゲル化剤(A)の使用量は、有機溶媒の種類によって異なるが、溶媒(B)100重量部に対して 1〜20重量部、好ましくは2〜10重量部である。
【0029】
本発明の有機ゲルは、溶媒(B)に、有機ゲル化剤(A)を加え、加熱溶解させた後、放冷させることで製造することができる。ゲル化温度(加熱温度)は室温から溶媒の沸点の間で選択することができる。またゲル化時間は通常10分〜2時間程度であるが、特に限定されない。
【0030】
本発明では前記有機ゲルから有機ファイバーを製造することができる。
有機ファイバーは有機ゲルをヘキサン、ヘプタン等の貧溶媒に任意の時間浸漬した後、乾燥することにより容易に得られる。
【実施例】
【0031】
以下に実施例及び比較例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。
【0032】
<合成例>
ステアリルアミン4当量をジクロロメタンに溶かし、トリエチルアミン5当量を加えて冷却、トリメシン酸クロリド1当量のジクロロメタン溶液を滴下した。室温3時間反応後析出物をロ別し、水洗、乾燥して粗品を得た。これを酢酸エチルで再結晶して精製品を得た。収率は70%であった。構造はH−NMRで同定し、式(2)で示されるトリメシン酸誘導体であることを確認した。
H−NMR(d−DMSO):0.86 (−CH、9H)1.2−1.6 (−CH−、96H)、3.40(−CH−、6H)、6.85(−NHCO−、3H)、8.37(Ph−H、3H)
【0033】
<実施例1〜11、比較例1〜3>
合成例で得られたトリメシン酸誘導体について、各種溶媒(組成は表1参照)に対するゲル化能について調べた。まず試験管にトリメシン酸誘導体を入れ、溶媒を加えて加熱溶解した。得られた溶液を室温(25℃)で30分静置し、ゲル化の可否(ゲル状態)を調べた。すなわち蓋付試験管に化合物を精秤し、1mlの溶媒を加えて、80〜200℃に1分間加熱溶解後、25℃の恒温槽に静置した。30分後、試験管を傾けても溶液が染み出さず、軽く振っても形の崩れない状態をゲルと判断した。その結果を表1に示した。
【0034】
なお、表1中の略号は以下を示す。
DMTS:デカメチルシクロテトラシロキサン
(アルドリッチ社製)
PDMS:ポリジメチルシロキサン
(アルドリッチ社製、Mn:550、 25,000cSt)
TiO :酸化チタン
(日本アエロジル(株)社製 AEROXIDE TiO P25)
CB :カーボンブラック
(ケッチェンブラックインターナショナル社製 KB EC300J)
【0035】
【表1】

【0036】
実施例1〜11の有機ゲルは一ヶ月経過後も形状変化は認められず、安定であることが分かった。一方、比較例1〜3では、沈殿が析出し、ゲル化しなかった。
【0037】
<実施例12(有機ファイバーの製造)>
実施例2で生成した有機ゲルを2枚のスライドガラスの間にはさみ、一昼夜ヘキサンに浸漬した。スライドガラスを真空乾燥後、スライドガラス上に有機ファイバーを得た。有機ファイバーは日立ハイテクノロジー社製電子顕微鏡S−4800により2500倍で観察した。図1に示す。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の有機ファイバーの顕微鏡写真の一例

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示される有機ゲル化剤(A)とシリコンオイルを1〜99重量%含む溶媒(B)からなる有機ゲル。
【化1】

(式中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜36の直鎖又は分岐状アルキル基を示し、mは1〜10の整数を示し、nは0〜10の整数を示す。)
【請求項2】
有機ゲル化剤(A)が式(2)で示される化合物である請求項1記載の有機ゲル。
【化2】

【請求項3】
有機ゲル化剤(A)の量が、溶媒(B)100重量部に対して1〜20重量部である請求項1記載の有機ゲル。
【請求項4】
溶媒(B)が、有機ゲル化剤(A)の作用によりゲル化する溶媒(C)を5〜95重量%含む請求項1記載の有機ゲル。
【請求項5】
溶媒(B)が50〜99重量%のシリコンオイルを含む請求項1記載の有機ゲル。
【請求項6】
溶媒(C)が炭化水素系溶媒、アルコール性溶媒及びエーテル系溶媒からなる群より選ばれる1種以上である請求項4記載の有機ゲル。
【請求項7】
シリコンオイルを1〜99重量%含む溶媒(B)100重量部に、式(1)で示される有機ゲル化剤(A)1〜20重量部を加え、加熱溶解させた後、放冷させることを特徴とする有機ゲルの製造方法。
【請求項8】
請求項1記載の有機ゲルから製造される有機ファイバー。

【図1】
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【公開番号】特開2010−159311(P2010−159311A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122449(P2007−122449)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】