説明

シリコンオープンセルフォーム層が表面に形成された人工乳房インプラント及びその製造方法

本発明は、人工乳房インプラントの表面がシリコンオープンセル(Open cell又はOpen pore)フォーム層に形成又は改質された人工乳房インプラント及びその製造方法に関し、本発明に係る人工乳房インプラントは、インプラントの表面にシリコンで構成されたオープンセルフォーム層を形成することによって、インプラントを人体に挿入した後で発生し得る副作用である生体拒否反応、特に、カプセル拘縮(Capsular contracture)の発生を最小化し、生体適合性と安全性に優れた人工乳房インプラントを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工乳房インプラントの表面にシリコンオープンセル(Open cell又はOpen pore)フォーム層が形成又は改質された人工乳房インプラント及びその製造方法に関し、より詳細には、人工乳房インプラントの表面にシリコンで構成されたオープンセルフォーム層を形成することによって、インプラントを人体に挿入した後で発生し得る副作用である生体拒否反応、特に、カプセル拘縮(Capsular contracture)の発生を最小化し、生体適合性と安全性に優れた人工乳房インプラント及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、人工乳房インプラントは、疾病及び事故による乳房欠損に対する再建と美容及び奇形による成形を目的とし、立体的及び解剖学的には器官又は組織の代替を目的として使用される。
【0003】
人工乳房インプラントは、臓器移植が可能なシリコンで作られたバッグ(以下、「シェル」という)の内部に充填物として食塩水、ハイドロジェル、シリコンジェルが充填された形態の製品であって、形状によって丸い形態(Round type)と水玉形態(Anatomical type)の製品があり、表面状態によって滑らかな形態(Smooth type)と粗い形態(Texture type)の製品がある。これらをより詳細に説明すると、次のように要約することができる。
【0004】
食塩水人工乳房インプラント(Saline breast prosthesis)は、シリコン(ポリジメチルシロキサン又はポリジフェニルシロキサンなどのポリオルガノシロキサンで構成される)シェルの内部に食塩水が注入された形態、又は食塩水を注入可能な形態の人工乳房インプラントであって、構造的にシリコンシェルとバルブで構成されている。
【0005】
食塩水人工乳房インプラントは、滅菌された食塩水を充填物として用いるので、破裂後の充填物の体内流出に対する安全性を保障し、食塩水充填量の調節によって乳房の体積変化が可能であるという長所を有しているが、施術後の感触が他の人工乳房インプラントに比べて著しく低下し、外部に加えられる荷重(Stress)をほとんどシェルで直接受けるので、シェルの耐久性が弱いという短所を有している。
【0006】
ハイドロジェル人工乳房インプラント(Hydrogel―filled breast prosthesis)は、食塩水人工乳房インプラントの場合と同じシェルの内部に単糖類と多糖類で構成されたハイドロジェルが充填された形態のインプラントであって、破裂によって充填物が体内に流出するとき、充填物が人体に吸収されたり、充填物が人体から排泄されることが可能であるという原理で開発された製品である。
【0007】
しかし、ハイドロジェル人工乳房インプラントは、長期間の使用に対する安全性が立証されておらず、挿入後の時間経過に伴う体積変化が大きく、しわ発生可能性が大きく、シリコン人工乳房インプラントに比べて不自然な感じを与えるという短所を有している。現在、このようなハイドロジェル人工乳房インプラントは、2000年度を基準にして安全性の立証問題によって市場で完全に流通されていない。
【0008】
シリコンジェル人工乳房インプラント(Silicone gel―filled breast prosthesis)は、シェルの内部に適当な粘度のシリコンジェルが充填された形態であって、製品の耐久性及び感触が食塩水人工乳房インプラント及びその他のインプラントに比べて非常に優れている。このような有効性側面の長所により、市場での人工乳房インプラントの販売においてはシリコン人工乳房インプラントの販売が支配的である。
【0009】
シリコン人工乳房インプラントは、1世代型インプラント、2世代型インプラント及び3世代型インプラントの順に開発されてきた。以下では、これらについて詳細に説明する。
【0010】
1世代型シリコン人工乳房インプラントは、1960年代中盤から1970年代中盤まで販売された製品であって、1961年度にCroninとGerowによって初めて開発され、厚いシェル、滑らかな表面タイプ、高い粘度のシリコンジェルの使用に要約することができる。このインプラントは、ジェル流出(Gel bleed)及びカプセル拘縮(Capsular contracture)を誘発させたが、厚いシェルの使用によって破裂速度は低い方であった。
【0011】
2世代型シリコン人工乳房インプラントは、1970年代中盤から1980年代中盤まで販売された製品であって、より柔らかい感触のために薄いシェルと低い粘度のシリコンジェル充填物を含む。このインプラントは、1世代型インプラントに比べると、類似するジェル流出量、高い破裂率、低いカプセル拘縮発生率を有することを特徴とする。
【0012】
3世代型シリコン人工乳房インプラントは、1980年代中盤から現在まで販売されている製品であって、ジェル流出を遮断するためにジェル流出遮断層を含んでおり、2世代型インプラントに比べると、厚いシェル、高い粘度のシリコンジェルを含む形態である。また、カプセル拘縮を減少させるために粗い表面の製品(Texture type)が開発された。3世代型シリコン人工乳房のインプラントの場合、1世代型及び2世代型人工乳房インプラントに比べると、低い破裂率と低いカプセル拘縮発生率を示す。
【0013】
以上説明したように、人工乳房インプラントの安全性側面での開発及び進化過程は、破裂率とカプセル拘縮発生の減少に焦点が合わせられてきた。これは、人工乳房インプラントの副作用として最も大きな比重を占めているものが破裂とカプセル拘縮であることを勘案すると、極めて当然の結果と言える。
【0014】
前記破裂とカプセル拘縮という二つの副作用について説明すると、第一に、破裂の場合、薄いシェルを使用した2世代型インプラントの大量破裂により、これを販売したダウコーニング(Dow corning)社が破産した事件で有名になり、破裂されたシェルを通して人工乳房インプラントの充填物(シリコンゲル)が人体に流出し、これによってインプラントの形態変化及び機能喪失が発生し、結果的にインプラントの除去が行われる。
【0015】
第二に、カプセル拘縮の場合、インプラントを人体に挿入した後、インプラントの周囲にコラーゲン被膜が硬く積もる生物学的拒否反応であって、生物学的に自然な反応であるので、人工乳房インプラントの施術を受けた全ての患者に現われるが、その軽重には差がある。カプセル拘縮の場合も、拘縮現象が深刻に発生した患者に対するインプラントの除去が行われる。
【0016】
副作用によるインプラント摘出手術率を原因別に見ると、カプセル拘縮が人工乳房インプラントの多様な副作用のうち圧倒的に多い原因として知られており、これは、現在まで発表された多くの臨床論文でも立証されている。
【0017】
人工乳房インプラントの研究と進化が持続されながら、発生率と再手術率が非常に高い副作用であるカプセル拘縮に対して、その発生率及び再手術率の減少が可能なインプラントの開発が行われたが、結果的に3世代型人工乳房インプラントが登場し、カプセル拘縮の減少のためにインプラントの表面を粗く改質又は形成した粗い表面タイプの人工乳房インプラント(Texture type breast implant)が開発されて市場で流通された。
【0018】
このような粗い表面タイプの人工乳房インプラントは、インプラントの表面に沈着されるコラーゲン被膜が硬くなることを最小化し、カプセル拘縮の発生を最小化することができる。このような人工乳房インプラントの粗い表面形成のために、現在まで多くの技術が登場したが、製品化が可能な技術は、ウレタンフォーム使用形態、固体粒子使用形態、加工されたモールド使用形態、プレスモールド使用形態の4つの技術に分類可能である。
【0019】
このうち、USP3366975、USP3683424で言及した技術で開発されたウレタンフォームを人工乳房インプラントの表面に形成すると、カプセル拘縮の減少に最も効果が良いと知られているが、ウレタンの体内安全性に問題が発見されることによって、現在、この技術と製品は使用されていない。
【0020】
USP4889744、USP5545220、USP5964803では、人工乳房のシェルへの固体粒子の付着、又は付着後に溶解する技術を通して人工乳房インプラントの表面を粗く形成する技術に対して言及している。
【0021】
USP4965430では、人工乳房インプラントの製造に使用されるモールドに粗い表面を形成することによって、人工乳房インプラントの表面を粗く形成する技術に対して言及している。
【0022】
USP4960425、USP4955909、USP5022942、USP5236453では、モールド又はイオンビームを通して表面が粗く加工されたフィルムを人工乳房シェルにプレスモールドで付着し、人工乳房インプラントの表面を粗く形成する技術に対して言及している。
【0023】
前記各技術において、ウレタンフォームを人工乳房の表面に形成した技術を除いた残りの技術は、人工乳房の表面を粗く形成したものに過ぎなく、ウレタンフォーム人工乳房に比べると、カプセル拘縮の減少という側面で、その効用性が劣ることは事実である。
【0024】
その理由は、ウレタンフォームを人工乳房の表面に形成した技術を除いた残りの技術は、人工乳房の表面にフォーム層の形態でなく、粗い表面(Textured)の形態、正確には、粗い単一層(Texture mono―layer)を形成したので、インプラントの表面へのコラーゲン被膜の平衡沈着及び硬化の防止がウレタンインプラントに比べて劣るためである。
【0025】
以上説明したように、シリコン人工乳房インプラントの安全性側面での開発及び進化の過程は、破裂率の減少とカプセル拘縮発生の減少に焦点が合わせられてきたが、現在まで開発された技術は、技術的な側面で未だに完全ではなく、特に、副作用のうちカプセル拘縮の発生率が非常に高いので、それによるインプラントの摘出手術及び再手術が非常に頻繁に行われていることは事実であり、このような事実は臨床的にも裏付けられている。
【0026】
したがって、カプセル拘縮を減少させることができ、耐久性に優れた人工乳房インプラントの開発は、至急かつ完全に解決すべき問題として残っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
したがって、本発明は、前記のような問題を解決するためになされたもので、インプラントを人体に挿入した後で発生し得るカプセル拘縮の発生を最小化し、生体適合性と安全性に優れた人工乳房インプラントを提供することを課題とする。
【0028】
また、このようなカプセル拘縮の発生を最小化する人工乳房インプラントの提供において、耐久性に優れた人工乳房インプラントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
前記課題を解決するために、本発明の人工乳房インプラントは、均一な厚さのインプラントシェルの表面にシリコンオープンセル(Open cell又はOpen pore)フォーム層が形成又は改質された人工乳房インプラントであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る人工乳房インプラントは、インプラントの表面にシリコンオープンセルフォーム層を形成することによって、インプラントを体内に挿入した後で発生し得る副作用であるカプセル拘縮の発生を最小化することができる。また、厚さが均一なシリコンフォーム層を均一な厚さのシリコンシェル上に形成することによって、既存の粗い表面形態のシリコン人工乳房インプラントに比べて応力集中現象が発生することを防止し、耐久性により優れた人工乳房インプラントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】従来の粗い表面型シリコン人工乳房インプラントの断面構造図である。
【図2】従来の粗い表面型シリコン人工乳房インプラントの断面構造図である。
【図3】従来の粗い表面型シリコン人工乳房インプラントの断面構造図である。
【図4】従来の粗い表面型シリコン人工乳房インプラントの表面顕微鏡写真である。
【図5】従来の粗い表面型シリコン人工乳房インプラントの断面顕微鏡写真である。
【図6】従来のウレタンコーティング型シリコン人工乳房インプラントの表面電子顕微鏡写真である。
【図7】本発明に係るシリコンオープンセルフォームが形成されたシリコン人工乳房インプラントの断面構造図である。
【図8】本発明に係るシリコンオープンセルフォームが形成されたシリコン人工乳房インプラントの表面顕微鏡写真である。
【図9】本発明に係るシリコンオープンセルフォームが形成されたシリコン人工乳房インプラントの表面写真である。
【図10】本発明に係るシリコンオープンセルフォームが形成されたシリコン人工乳房インプラントの表面写真である。
【図11】本発明の一実施例に係るシリコンオープンセルフォームが形成されたシリコン人工乳房インプラントの製造方法を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の人工乳房インプラントは、インプラントの表面にシリコンオープンセルフォーム層が形成されており、このようなシリコンオープンセルフォーム層は、厚さが均一なシリコンシェル上に均一な厚さのシリコンオープンセルフォーム層に形成されていることを特徴とする。
【0033】
以下では、添付の図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0034】
図1、図2及び図3は、従来の粗い表面型シリコン人工乳房インプラントの断面構造図である。
【0035】
具体的に、図1は、突起20が形成されたシート10をプレスモールドを用いて人工乳房インプラントの表面に付着したり、イオンビームスラスター(Ion―beam thruster)を用いてインプラントの表面をエッチングする方法で製造した粗い表面型シリコン人工乳房インプラントを示し、表面の形態が、他の方法で製造した粗い表面型シリコン人工乳房インプラントの表面に比べて非常に単調な構造である。したがって、カプセル拘縮の減少を目的とする粗い表面型インプラントにおいて、その有効性側面で他の粗い表面型インプラントに比べて効果が少ないと言える。
【0036】
図2は、固体粒子を用いて表面をエッチングする方法で製造した粗い表面型シリコン人工乳房インプラントを示し、図1のインプラントの表面に比べて表面の構造が複雑であり、突起が稠密に形成された構造を示している。しかし、これも、表面の突起40がフォームの形態でない単一層に形成されているという限界を有しており、図面に示したように、突起40、50の形成によってシェルの厚さが不均一であるため応力集中が発生し、これによって、シェル、すなわち、インプラント自体の耐久性が低下する。
【0037】
図3は、固体粒子の付着又はエッチング加工されたモールドを使用して製造した粗い表面型シリコン人工乳房インプラントを示し、これも、表面が比較的単調な構造であり、表面a、bの厚さ偏差から分かるようにシェル10の厚さが非常に不均一であるので、応力集中によるインプラントの耐久性に問題を有している構造である。
【0038】
図4は、従来の粗い表面型シリコン人工乳房インプラントの表面顕微鏡写真であって、表面に単一層の規則的又は不規則的な突起が形成されていることを確認することができる。また、図5は、従来の粗い表面型シリコン人工乳房インプラントの断面顕微鏡写真であって、シェルの厚さが均一でなく、シェルの中間に破断点になり得るクラック部分が存在することを確認することができる。
【0039】
図6は、従来のウレタンコーティングフォーム型シリコン人工乳房インプラントの表面電子顕微鏡写真であって、セルが3次元の網状構造で複雑に形成されていることを確認することができる。
【0040】
このような従来の粗い表面型人工乳房インプラントは、上述したように、カプセル拘縮の減少を目的として使用するには効果的な形態でないか、耐久性が低下する形態であるか、又はウレタンコーティングインプラントのように安全性に問題があるものである。
【0041】
しかし、図7に示したように、本発明の人工乳房インプラントは、均一な厚さのシリコンシェル10上に均一な厚さのシリコンオープンセルフォーム層70を形成する構成を特徴とし、本発明の人工乳房インプラントの全ての構成物質は有機シロキサン高分子(Polyorganosiloxane)材質からなる。
【0042】
前記人工乳房インプラントに使用可能な有機シロキサン高分子(Polyorganosiloxane)は、人体に移植した後、安全性を確保できるインプラント等級のものであって、有機シロキサン高分子には、次のような材質を使用する。
【0043】
根本的に、有機シロキサン高分子は、主鎖がシランであり、シラン主鎖にメチル基のような有機基が付いた形態のものである。
【0044】
最も代表的なものとして、主鎖にメチル基が付いたポリジメチルシロキサンを例に挙げることができ、前記ポリジメチルシロキサンの単量体であるジメチルシロキサンのメチル基は、アルキル基、フェニル基、ビニル基などの有機基に置換可能である。
【0045】
例えば、前記ジメチルシロキサンは、メチルハイドロジェンシロキサン、メチルフェニルシロキサン、ジフェニルシロキサン、ジメチルビニルシロキサン、トリフルオロプロピルシロキサンなどに置換され、これら単量体の重合による高分子の生成及び使用が可能であり、また、前記単量体からなるオリゴマーを用いた共重合体の生成及び使用も可能である。
【0046】
図8は、本発明に係るシリコンオープンセルフォームが形成されたシリコン人工乳房インプラントの表面顕微鏡写真であって、図7の気孔(Open cell)50が3次元の網状構造をなしている。図9は、本発明に係るシリコンオープンセルフォームが形成されたシリコン人工乳房インプラントの表面写真であって、フォーム層を非常に薄い厚さ(平均高さ300μm)で形成した後の写真である。図10は、本発明に係るシリコンオープンセルフォームが形成されたシリコン人工乳房インプラントの表面写真であって、フォーム層を適当な厚さ(平均高さ1,500μm)で形成した後の写真である。
【0047】
このような本発明に係るインプラントの表面に形成されたシリコンオープンセルフォーム層は、インプラントを人体に挿入した後、インプラントの周囲に沈着されるコラーゲン被膜が硬く形成されることを防止することによってカプセル拘縮の発生を防止する。また、インプラントの周囲にコラーゲン被膜が積もる場合にも、インプラントに形成されたオープンセルフォーム層にコラーゲンが生着(In―growth)されるので、板状の硬いコラーゲン構造体でないスポンジのような構造体を形成する。
【0048】
したがって、他の人体組織と類似した程度の弾性を有するコラーゲン組織を形成するので、カプセル拘縮の発生を最小化することができる。併せて、インプラントを人体に挿入した後、インプラントへのコラーゲン生着によってインプラントが迅速に手術部位に固定され、患者の回復も早くなる。
【0049】
一方、本発明のシリコンオープンセルフォーム層が形成された人工乳房インプラントは、人工乳房シェルを獲得するために乳房形状のモールドをシリコン溶液に浸すシリコン溶液浸漬段階(S100)と、シリコン人工乳房シェルを獲得するために、乾燥装置を通してモールドに付着された人工乳房シェルを乾燥及び硬化させる乾燥及び硬化段階(S200)と、乾燥及び硬化が完了したシェルの表面にオープンセルフォーム層を形成するオープンセルフォーム層形成段階(S300)と、前記モールドに付着され、オープンセルフォーム層が形成された人工乳房シェルの下端部に穴を形成し、モールドから人工乳房シェルを着脱する人工乳房シェル獲得段階(S400)と、前記の形成された穴を塞ぐために、流出防止膜が含まれたシルリコン膜を穴に付着させるインプラント形成段階(S500)とを含んで構成される製造方法によって製造される。
【0050】
以下、本発明によるシリコンオープンセルフォーム層が表面に形成された人工乳房インプラント製造方法を実施例を通して詳細に説明する。
【0051】
まず、人工乳房シェルを獲得するために、乳房形状のモールドをシリコン溶液に浸す方法などを通して処理する(S100)。
【0052】
前記シリコン溶液に浸されたモールドを取り出して乾燥及び硬化させ、シリコン人工乳房シェルを獲得するが、例えば、オーブンなどの乾燥装置を通してモールドに付着された人工乳房シェルを乾燥及び硬化させる(S200)。
【0053】
前記乾燥及び硬化された人工乳房シェルにオープンセルフォーム層を形成する(S300)。
【0054】
オープンセルフォーム層を形成する段階を説明すると、乾燥及び硬化が完了したシェルが付いているモールドをシリコン溶液に浸し、シェルの表面にシリコン溶液膜を形成した後、シェルの表面のシリコン溶液膜の流動性がなくなる程度に適当なサイズの固体粒子(Solid particle)又は粉末(Solid powder)を撒き散らしたり噴射する方法でシェルの表面を処理する。
【0055】
このとき、固体粒子又は粉末は、シリコン溶液に何ら影響も受けないので溶解されなく、また、接触しているシリコンの物性にも影響を与えない性質の粒子又は粉末を用いるようになる。また、このような固体粒子又は粉末は、後で適当な溶媒によって溶解されて除去できるようにする。このとき、最も理想的な溶媒としては水を使用することができる。
【0056】
前記固体粒子又は粉末は、これを除去するために水を溶媒として使用する場合、塩化ナトリウム(Sodium chloride)、炭酸アンモニウム(Ammonium carbonate)、リン酸アンモニウム(Ammonium phosphate)、塩化アンモニウム(Ammonium chloride)などを使用することができ、理想的には、塩化ナトリウムを使用することができる。
【0057】
表面にシリコン溶液と固体粒子又は粉末が完全に付いているシェル、すなわち、シェルが付いているモールドを有機溶媒で噴霧又はデイッピング処理をする。このとき、使用可能な有機溶媒は、シリコン溶液と容易に混合できるもので、一般に、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族有機溶媒又はこれらの誘導体、理想的にはキシレンである。
【0058】
前記有機溶媒が処理されたシェルに固体粒子又は粉末を処理する。このとき、処理する固体粉末又は粒子は完全に乾燥させる。この過程で、シリコン溶液は、毛細管現象によって処理した固体粒子又は粉末を濡らすようになる。
【0059】
このとき、シリコン溶液の濃度と固体粒子又は粉末のサイズ、有機溶媒処理速度を調節及び反復し、所望の厚さのオープンセルフォーム層を形成することができる。また、毛羽除去装置を使用する方法などの後加工でオープンセルフォーム層の厚さを調節することができる。
【0060】
次に、オープンセルフォーム層が完成すると、乾燥及び硬化過程を経るが、硬化が完了すると、水などの溶媒を処理して固体粒子又は粉末を除去する。このとき、毛羽が起きない布地やブラッシュなどの道具で擦って除去することが可能である。
【0061】
前記擦り過程でフォームの形成時に不可避に発生する微量のクローズセル(Close cell)は部分的に除去可能である。これは、フォームのセル壁(Cell wall)が非常に薄く作られるためであり、擦り工程で微量のクローズセルの内部に溶媒を通して溶解されずに残っている固体粒子又は粉末が非常に薄いセル壁を挟んで互いに摩擦し合いながらセル壁に穴を作るためである。
【0062】
このとき、擦り工程で除去されない固体粒子又は粉末は、高圧水蒸気の浸透及び洗浄過程を繰り返して完璧に除去することができる。これは、水蒸気の浸透を用いて除去されずに残留した固体粒子又は粉末成分を抽出除去方法を用いて除去し、シリコンが水蒸気を透過するという性質を用いたものである。すなわち、水蒸気に溶解された固体粒子又は粉末は、シリコン分子を通過して外部に抽出されるのに十分な小さいサイズに変化し、抽出及び洗浄過程の繰り返しを通して固体粒子又は粉末の完璧な除去が可能になる。
【0063】
このような水蒸気の処理には、蒸気を人工乳房シェルに直接処理する方法などの直接的水蒸気処理方法と、人工乳房シェルを容器に入れ、容器内の水を沸かす方法などの間接的水蒸気処理方法とがある。
【0064】
このような本発明のオープンセルフォーム層の形成方法は、硬化が完了したシェルの表面上にフォーム層を形成しながら固体粒子又は粉末と有機溶媒による毛細管作用原理によってフォーム層を形成するので、図7に示したように、均一なシェルの厚さを維持することができ、不均一なシェルの厚さによって発生する応力集中を防止するので、耐久性により優れたシェル及びインプラントを提供することができる。
【0065】
前記オープンセルフォーム層が形成された状態でモールドに付着されている人工乳房シェルの下端部に穴を形成し、モールドから人工乳房シェルを着脱して人工乳房シェルを獲得する(S400)。
【0066】
前記の形成された穴を塞ぐために、穴のサイズと類似したシリコン片を穴に付着させてインプラントを形成する(S500)。このとき、シリコン片の付着には、プレスモールディング圧着、接合材などの使用が可能であり、これは、人工乳房インプラントを製造する当業者であれば容易に理解できるので、これについての具体的な説明は省略する。
【0067】
また、同様に、前記製造方法で説明していない内容は、いずれも人工乳房インプラントを製造する当業者であれば容易に理解できるので、これについての具体的な説明は省略する。
【0068】
実施例1
【0069】
まず、メチルハイドロジェンシロキサンと白金触媒を少量含み、シリカフィラーの含量が20%程度である分子量50,000〜100,000程度のジメチルシロキサンと、末端基にジメチルビニル基を有するシロキサンとを含み、シリカフィラーの含量が20%程度である分子量50,000〜100,000のジメチルビニルシロキサンをメチルハイドロジェンシロキサンの当量比で充分に混合し、シリコン原料を準備した。
【0070】
前記シリコン原料にシリコンの濃度が35wt%になるようにキシレンを有機溶媒として添加して完全に混合することによって、シリコン希釈溶液を準備した。
【0071】
次に、人工乳房シェルの製造に使用される乳房形状のモールドを前記シリコン希釈溶液に浸す技法を通して処理及びコーティングした後、50℃のオーブンで有機溶媒を完全に揮発させて乾燥させ、前記シリコンコーティング被膜の乾燥が完了した人工乳房モールドを170℃の条件で3時間オーブンを用いて硬化させ、シリコンコーティング被膜を完全に硬化させた。
【0072】
前記シリコンコーティング被膜の硬化が完了した人工乳房モールドを常温で充分に冷却させた後、前記35wt%のシリコン希釈溶液に浸す技法を通して処理した。
【0073】
次に、シリコン希釈溶液がコーティングされた人工乳房モールドに完全に乾燥した平均粒子サイズが500μmである塩化ナトリウム(NaCl)を撒き散らす方法を使用して処理した後、前記シリコン希釈溶液と塩化ナトリウムが処理された人工乳房モールドをキシレンに浸す技法を通して処理した。
【0074】
前記キシレンに処理した人工乳房モールドに完全に乾燥した平均粒子サイズが500μmである塩化ナトリウム(NaCl)を撒き散らす方法を使用して処理した後、前記塩化ナトリウムが処理された人工乳房モールドをキシレンに浸す技法を通して処理した。
【0075】
前記キシレンに処理した人工乳房モールドに完全に乾燥した平均粒子サイズが200μmである塩化ナトリウム(NaCl)を撒き散らす方法を使用して処理した後、前記塩化ナトリウムが処理された人工乳房モールドをキシレンに浸す技法を通して処理した後、30℃のオーブンで有機溶媒を完全に揮発させて乾燥させた。
【0076】
前記乾燥が完了した人工乳房モールドを170℃の条件で3時間オーブンを用いて硬化させ、モールドに形成されたシリコンを完全に硬化させた後、前記人工乳房モールドに形成された硬化が完了した人工乳房シェルを常温の清浄水でブラッシュを用いて擦り処理し、塩化ナトリウムを除去した。
【0077】
次に、優れた外観と均一な表面の形成のために、毛羽除去装置を使用して前記人工乳房シェルの表面に形成されたシリコンフォームの高さを均一に加工した。このとき、この方法でフォーム層を所望の高さに後加工可能である。
【0078】
次に、異物の除去のために、IPAと清浄水を使用して前記人工乳房シェルを洗浄した後、前記人工乳房モールドでシルリコンシェルの下端部位に穴を形成し、モールドからシリコンシェルを着脱した後で獲得した。
【0079】
次に、完全に除去されていない塩化ナトリウムの除去のために、高圧蒸気滅菌器を用いて140℃の水と1.4気圧の蒸気の条件で約30時間人工乳房シェルを加熱した後、前記高圧蒸気処理をした人工乳房シェルを清浄水とIPAで交互に洗浄した。
【0080】
前記高圧蒸気処理と洗浄過程を5回繰り返して塩化ナトリウムが完全に除去されたオープンセルフォーム層が表面に形成されたシリコンシェルを獲得し、前記オープンセルフォーム層が表面に形成されたシリコンシェルの下端部位の穴をシリコン片とシリコン接合材を使用して接合・密封してインプラントシェルを形成した。前記インプラント形成が完了したシェルに充填装置を使用して充填物としてシリコンジェルを充填した後、これを硬化させることによってシリコン人工乳房インプラントを製造した。
【0081】
以上説明したように、本発明の好適な実施例を説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものでなく、添付の特許請求の範囲によって解釈されるべきである。また、当該発明の属した技術分野で通常の知識を有する者によって本発明の技術思想と添付の特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変更が可能であることは当然である。
【符号の説明】
【0082】
10…シリコンバッグ(シェル)
20、30、40…突起
50…気孔
60…シリコンオープンセルフォーム
70…シリコンオープンセルフォーム層



【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工乳房インプラントにおいて、前記人工乳房インプラントの表面にシリコンオープンセル(Open cell又はOpen pore)フォーム層が形成又は改質されたことを特徴とする、シリコンオープンセルフォーム層が表面に形成された人工乳房インプラント。
【請求項2】
前記オープンセルフォーム層は、均一又は不均一な厚さの3次元網状構造で形成されることを特徴とする、請求項1に記載のシリコンオープンセルフォーム層が表面に形成された人工乳房インプラント。
【請求項3】
人工乳房インプラント製造方法において、人工乳房シェルを獲得するために乳房形状のモールドをシリコン溶液に浸すシリコン溶液浸漬段階と、
シリコン人工乳房シェルを獲得するために、乾燥装置を通してモールドに付着された人工乳房シェルを乾燥及び硬化させる乾燥及び硬化段階と、
前記乾燥及び硬化が完了したシェルの表面にオープンセルフォーム層を形成するオープンセルフォーム層形成段階と、
前記モールドに付着され、オープンセルフォーム層が形成された人工乳房シェルの下端部に穴を形成し、モールドから人工乳房シェルを着脱する人工乳房シェル獲得段階と、
前記の形成された穴を塞ぐために、流出防止膜が含まれたシルリコン膜を穴に付着させるインプラント形成段階と、を含んで構成されることを特徴とする、シリコンオープンセルフォーム層が表面に形成された人工乳房インプラント製造方法。
【請求項4】
前記オープンセルフォーム層形成段階は、乾燥及び硬化が完了したシェルが付いているモールドをシリコン溶液に浸してから取り出し、シェルの表面に固体粒子又は粉末をシリコン溶液の流動性がなくなる程度に撒き散らしたり噴射した後、シェルの表面を有機溶媒に噴霧又は浸漬処理した後、再びシェルの表面に固体粒子又は粉末を撒いたり噴射処理することを特徴とする、請求項3に記載のシリコンオープンセルフォーム層が表面に形成された人工乳房インプラント製造方法。
【請求項5】
前記固体粒子又は粉末は、シリコン溶液に溶解されなく、シリコン溶液の物性にも影響を与えなく、溶媒によって溶解されて除去されることを特徴とする、請求項4に記載のシリコンオープンセルフォーム層が表面に形成された人工乳房インプラント製造方法。
【請求項6】
前記固体粒子又は粉末としては、塩化ナトリウム、炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、塩化アンモニウムのうちいずれか一つを使用することを特徴とする、請求項5に記載のシリコンオープンセルフォーム層が表面に形成された人工乳房インプラント製造方法。
【請求項7】
前記溶媒は水であることを特徴とする、請求項5に記載のシリコンオープンセルフォーム層が表面に形成された人工乳房インプラント製造方法。
【請求項8】
前記有機溶媒は前記シリコン溶液と容易に混合されることを特徴とする、請求項4に記載のシリコンオープンセルフォーム層が表面に形成された人工乳房インプラント製造方法。
【請求項9】
前記有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン又はこれらの誘導体のうちいずれか一つを使用することを特徴とする、請求項8に記載のシリコンオープンセルフォーム層が表面に形成された人工乳房インプラント製造方法。
【請求項10】
前記有機溶媒はキシレンであることを特徴とする、請求項9に記載のシリコンオープンセルフォーム層が表面に形成された人工乳房インプラント製造方法。
【請求項11】
前記オープンセルフォーム層形成段階でシリコン溶液の濃度と固体粒子又は粉末のサイズ、有機溶媒処理速度を調節し、所望の厚さのオープンセルフォーム層を形成することを特徴とする、請求項4〜10のうちいずれか1項に記載のシリコンオープンセルフォーム層が表面に形成された人工乳房インプラント製造方法。
【請求項12】
前記オープンセルフォーム層形成段階を繰り返し、所望の厚さのオープンセルフォーム層を形成することを特徴とする、請求項4〜10のうちいずれか1項に記載のシリコンオープンセルフォーム層が表面に形成された人工乳房インプラント製造方法。
【請求項13】
前記オープンセルフォーム層形成段階で形成されたオープンセルフォーム層の厚さ調節や、優れた外観のために毛羽除去(後加工)段階をさらに含むことを特徴とする、請求項4〜10のうちいずれか1項に記載のシリコンオープンセルフォーム層が表面に形成された人工乳房インプラント製造方法。
【請求項14】
前記オープンセルフォーム層形成段階でオープンセルの形成のために処理した固体粒子又は粉末は、オープンセルが形成された人工乳房シェルに水蒸気を直接又は間接的に処理して除去することを特徴とする、請求項4〜10のうちいずれか1項に記載のシリコンオープンセルフォーム層が表面に形成された人工乳房インプラント製造方法。
【請求項15】
前記オープンセルフォーム層形成段階で形成されたオープンセルフォーム層を乾燥及び硬化させるための乾燥及び硬化段階をさらに含むことを特徴とする、請求項4〜10のうちいずれか1項に記載のシリコンオープンセルフォーム層が表面に形成された人工乳房インプラント製造方法。
【請求項16】
前記乾燥は、30℃オーブンで有機溶媒を完全に揮発させて乾燥させることによって行い、前記硬化は、乾燥が完了した人工乳房モールドを170℃の条件で3時間オーブンを用いて硬化させ、モールドに形成されたシリコン溶液を完全に硬化させることによって行うことを特徴とする、請求項15に記載のシリコンオープンセルフォーム層が表面に形成された人工乳房インプラント製造方法。
【請求項17】
前記乾燥及び硬化されたオープンセルフォーム層が形成された人工乳房シェルを擦り処理し、前記固体粒子又は粉末を除去する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項15に記載のシリコンオープンセルフォーム層が表面に形成された人工乳房インプラント製造方法。
【請求項18】
前記乾燥及び硬化されたオープンセルフォーム層が形成された人工乳房シェルを蒸気滅菌器を用いて140℃の水と1.4気圧の蒸気の条件で約30時間加熱、高圧蒸気処理し、前記固体粒子又は粉末を除去する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項15に記載のシリコンオープンセルフォーム層が表面に形成された人工乳房インプラント製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−509938(P2013−509938A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537791(P2012−537791)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【国際出願番号】PCT/KR2010/001826
【国際公開番号】WO2011/062329
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(512092195)
【Fターム(参考)】