シリコン太陽電池
本発明はシリコン太陽電池に関する。太陽電池は、エミッタ層を備えたシリコン層と、化学的または電気化学的なエッチングによって多孔化された、エミッタ層内の少なくとも1つの領域とを有し、多孔化された領域の少なくとも一部は金属ケイ化物として形成されており、この金属ケイ化物の上に少なくとも1つの金属層が被着されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エミッタシリコン層を備えたシリコン太陽電池ならびにその種の太陽電池の製造方法に関する。
【0002】
シリコン太陽電池はnドープされたシリコン層およびpドープされたシリコン層を有する。太陽電池のエミッタとして機能する面に光子が衝突すると、2つの層の間で電荷の平衡化が行われるか、2つの層の間で電流の流れが生じ、これをコンタクトを介して案内することができる。その種の太陽電池の上面には通常の場合、金属からなり、かつ、複数のコンタクトフィンガを備えた帯状コンタクトが取り付けられており、これに対し、下面にはコンタクトとしての金属層がその全面に設けられている。帯状コンタクトおよび金属面は太陽電池の電気的な極を形成する。
【0003】
従来技術においては、銀ペーストがプリント法によって表面に塗布されることにより、帯状コンタクトおよび金属フィンガが形成される。従来技術の欠点は、銀ペーストから形成される電気的なリード線は、この銀ペーストが多孔性に形成されているため、比較的高い線路抵抗を有することである。さらに、銀ペーストから、この銀ペーストの下に配置されているシリコン層への伝達抵抗が比較的高く、また、基板との接着も比較的弱い。
【0004】
太陽電池を改良するための別のアプローチは効率を高めることを本質とする。例えば、エミッタ層の厚さを比較的薄くすることによって比較的高い効率を達成することができる。従来技術による太陽電池においては、エミッタ層の厚さは僅か数百ナノメートルである。さらに薄い放射層が使用される場合、確かに論理的には効率を高めることができるが、金属性の電気的なリード線がその種の薄いエミッタ層を貫通し、その結果、その種の太陽電池は電気的に短絡する可能性がある。
【0005】
したがって本発明の課題は、電気的な線路抵抗が比較的低い電気的なリード線を有し、シリコン層に対して比較的低い電気的な伝達抵抗を有し、かつ、良好に接着される、太陽電池を提供することである。さらにこのことは、太陽電池が電気的に短絡することなく、数百ナノメートルから約50ナノメートルの非常に薄いエミッタ層を備えた太陽電池において確実に達成されるべきである。この課題は、反射防止層が設けられている太陽電池においても達成されるべきである。さらに、本発明の課題は、太陽電池を簡単かつ廉価に製造できるようにすることである。
【0006】
太陽電池に関する課題は、請求項1に記載されている構成によって解決される。また、太陽電池を製造するための方法に関する課題は、請求項8に記載されている構成によって解決される。本発明の有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0007】
本発明によるシリコン太陽電池は、エミッタ層を備えたシリコン層と、化学的または電気化学的なエッチングによって多孔化された、エミッタ層内の少なくとも1つの領域とを有し、多孔化された領域の少なくとも一部は金属ケイ化物として形成されており、この金属ケイ化物の上には少なくとも1つの金属層が被着されている。
【0008】
シリコン上に直接的に被着されている金属は確かに比較的低い電気的な線路抵抗を有するが、被着されている金属が後続の処理ステップにおいてシリコンから簡単に剥離する可能性があるので、機械的な接着は依然として比較的悪いものである。しかしながら、本発明によれば、金属とシリコンから成る化合物が金属ケイ化物の形態で提供されることによって、金属とシリコンとの間の比較的低い電気的な伝達抵抗を達成することができる。
【0009】
本発明による太陽電池においては、金属ケイ化物は、化学的または電気化学的なエッチングによって多孔化された、エミッタ層内の領域に形成されている。このことは、エッチングによって凹凸の多い構造が生じ、この凹凸の多い構造を良好にメタライジングすることができ、かつ、金属とシリコンとの間の良好な接着が保証されるので有利である。さらには、金属ケイ化物は、エッチング後に多孔化されており、かつ、反応に好適な表面が設けられている領域においては、隣接する多孔化されていない領域よりも高速に形成されるので、形成される金属ケイ化物の大部分を多孔化された領域に限定することができる。したがって多孔化された領域によって、金属ケイ化物の高さを制限することができる。
【0010】
さらには、エッチングプロセスの時間を正確に制限することができるので、多孔化された領域の高さを簡単なやり方で非常に正確に、また低い高さに調整することができる。このことは、その種の太陽電池においては、金属ケイ化物がエミッタの高さ全体に沿って延在しているのではなく、エミッタ層の上面側から延びているが、エミッタ層全体の高さよりも低い高さを有する領域においてのみ延在していることを意味する。したがって、貫通するメタライジング、または、エミッタ層に隣接するシリコン層との短絡を阻止することができる。つまり、エッチングは非常に制御された多孔化を実現するので、数100ナノメートルから約50ナノメートルの厚さを有する非常に薄いエミッタ層において金属ケイ化物を有する領域を形成することができる。
【0011】
本発明によれば、金属ケイ化物の上に金属層が被着されている。金属層は金属ケイ化物層上に非常に良好に接着されており、それら2つの層間の低い電気的な伝達抵抗が達成される。金属層は金属ケイ化物と共に、太陽電池の電気的なリード線を形成する。有利には金属層がニッケル、銅または銀を含有し、殊に有利には、この金属層が化学的または電気化学的に被着されており、したがってプリントされたペーストほどの多孔性を有しておらず、したがって比較的低い線路抵抗を有する。
【0012】
有利には、シリコン層が高nドープされたシリコンを含有する層を有する。この種のシリコン層は僅かにドープされたシリコン層に比べて、エッチング剤が作用する際に種々の強さで腐食されることが観察された。高nドープされた層を、低ドープされた層よりも短時間でエッチングすることができる。この観察結果を本発明による太陽電池の製造にも有利に使用することができる。高nドープされたシリコン層は、エミッタにおけるエッチングの深さ、したがって多孔化された領域の高さ、もしくは、続いて形成される金属ケイ化物の高さを簡単なやり方で制限することができる。このことは、僅か数100ナノメートルから50ナノメートルまでの厚さを有するエミッタ層においても、太陽電池の電気的な短絡が生じることなく達成される。
【0013】
本発明の1つの実施形態によれば、エミッタ層に反射防止層が被着されている。これによって、入射する光の比較的僅かな割合しか太陽電池によって反射されないので、太陽電池のより高い効率を達成することができる。反射防止層は有利にはシリコン窒化物、シリコン酸化物またはスズ酸化物を含有し、スズ酸化物はシリコン窒化物およびシリコン酸化物に比べて導電性である。
【0014】
本発明の1つの実施形態によれば、反射防止層は多孔性のシリコンから形成されている。この層は太陽電池の表面全体にわたり形成されている。有利には、この層がエミッタの一部であり、また数100ナノメートルから50ナノメートルの厚さに制限されている。有利には、メタライジングを実施するために、その種の反射防止層を構造化することはもはや必要ない。多孔化を構造化せずに、かつ、マスク層を必要とすることなく実施することができる。したがって、フッ酸に対して耐性がなければならないマスク層は必要ない。多孔化の後に、構造化されるマスク層を被着することができるので、マスク層を有する領域とマスク層を有していない領域が生じる。マスク層を有していない領域においては、金属層を用いたコーティングを行うことができる。続いてエミッタ層および金属層の加熱が行われ、金属ケイ化物層が形成される。
【0015】
有利には、金属ケイ化物の金属と、金属ケイ化物の上に被着される金属層の金属は同一である。したがって比較的簡単な製造が実現される。
【0016】
本発明は、シリコン層を有するウェハから前述のシリコン太陽電池を製造するための方法に関し、この方法は以下のステップを有する:
−エッチング剤を用いて、エミッタ層として設けられているシリコン層、または、既に形成されているエミッタ層をエッチングし、少なくとも1つの領域において層を多孔化するステップ、
−エミッタ層を有するウェハ側の表面に構造化されたマスク層を形成し、マスク層を有する領域とマスク層を有していない領域を形成するステップ、
−マスク層を有していない領域において、第1の金属層を用いて多孔化されたエミッタ層をコーティングするステップ、
−金属ケイ化物層が形成されるまで、エミッタ層および第1の金属層を加熱するステップ、
−マスク層を除去するステップ。
【0017】
既に構造化されたマスク層を、例えばシルクスクリーン法を用いて被着させることができるか、または、面全体にマスク層を被着し、例えばレーザの使用によって事後的に構造化することができる。マスク層を有する領域およびマスク層を有していない領域が生じるように構造化が行われ、マスク層を有していない領域内では、エミッタ層が露出されるまで構造化が実施される。マスク層の下に別の層、例えば反射防止層が存在する場合、マスク層を有していない領域においては反射防止層も除去され、反射防止層の下に存在するエミッタ層が露出されるまで構造化が実施される。構造化によって狭い領域またはチャネルを形成することができ、その領域またはチャネルの底部または基底部、この実施形態においては露出されたエミッタ層をエッチング剤によって腐食させることができる。
【0018】
マスク層を有していない領域におけるエッチングもしくは露出されたエミッタ層のエッチングによって、層の表面における多孔性の構造を形成することができる。その種のエッチングおよび表面における多孔性の構造の形成を時間的に非常に限定的に行うことができるので、エミッタ層のエッチングによる腐食の深さは浅いものでしかない。これによって、エミッタ層が非常に薄い場合であっても、多孔化された領域はエミッタ層の下に設けられている層にまで到達しないことが保証され、これによって短絡を回避することができる。多孔化は殊に有利である。何故ならば、このように処理された表面は凹凸の多い構造を有し、この構造は被着すべき金属層を良好に収容し、機械的に固定することができるからである。さらに、金属層とシリコンエミッタ層との間の低い電気的な伝達抵抗が達成される。さらには、多孔化された材料のエッチングによって非常に反応が好適になるので、エミッタ層および金属層を加熱する際には、低い温度でも簡単に金属ケイ化物層が形成され、この金属ケイ化物層は良好に接着され、また低い電気抵抗を有する。多孔性の構造のみで、十分な固定および低い電気抵抗を達成することができる。
【0019】
しかしながら、前述の順序を変更することもできる。つまり、先ずエミッタ層がエッチング剤によってエッチングされ、それによりエミッタ層が多孔化されることも同様に考えられる。エッチングの腐食を1つの領域に限定することができるか、エミッタ層の表面全体において行うことができる。続いて、構造化されたマスク層が形成され、その結果、マスク層を有する領域およびマスク層を有していない領域が形成されるステップを実施することができる。続いて、マスク層を有していない領域における多孔化されたエミッタ層が第1の金属層でもってコーティングされ、エミッタ層および第1の金属層が加熱され、続いて、マスク層が除去される。したがって、マスク層を用いないエッチングが行われ、エッチング剤に対して耐性がなければならないマスク層は必要とされないので有利である。
【0020】
さらには、シリコン層のエッチングが行われ、このシリコン層はまだエミッタ層ではなく、ドーピングによる別の方法ステップにおいてようやくエミッタ層が形成される。したがってこの実施形態においては、ドーピングは上述のようにエッチングの前に行われるのではなく、エッチングの後に行われる。エミッタ層が形成されると、続いて上述のように、構造化されたマスク層が形成され、第1の金属層を用いたコーティングが行われ、続いて、金属ケイ化物が形成され、その後、マスク層が除去されるステップを行うことができる。
【0021】
マスク層が、金属ケイ化物を形成するための加熱の際に生じる温度に損傷無く耐えられない場合には、マスク層を加熱のステップの前に除去することができる。有利には、金属層を用いたコーティングは外部電流を要することなく行われるか、または、化学的もしくは電気化学的に行われる。このことは例えば、nドープされたエミッタシリコン層においては、多孔化されたシリコンと金属を含有する電解質との接触接続と、多孔化され、陰極に極性付けられたシリコン内および/またはシリコン上の金属の析出とによってコーティングが行われる。マスク層は、このマスク層のエッチングされていないチャネル内における、形成すべき金属層の横方向の拡張が行われるよう機能する。析出された金属は部分的に、多孔化された構造の深くまで到達し、さらには選択された処理パラメータ(電圧、電流強度、電界質濃度または時間)に応じて所定の高さにまで形成される。しかしながら、金属が多孔化された構造の深くに到達し、そこにおいて自由空間を充填するが、その後別の層は形成されないように、金属の析出を行うことも可能である。
【0022】
金属層の構造化によって狭いチャネルを形成することができるので、金属ケイ化物、また必要に応じてその上に形成される金属層は狭い線幅を有する。このことは、リード線を有する太陽電池を形成することができ、このリード線はその幅が狭いことに基づき、太陽電池の放射面が僅かにしか遮蔽されないので有利である。このようにして形成されたリード線は、リード線のために銀ペーストがプリント法で表面に被着される従来の方式よりも小さい遮蔽面を有する。その種の銀ペーストによって、金属フィンガまたはリード線のみを製造することができ、その幅はその高さよりも長いので、金属フィンガの十分に低い電気抵抗に関して、最小の高さを下回らない。しかしながらこのことは、100μmよりも大きい最小幅を意味しているので、太陽電池の最小面は金属フィンガによって覆われている。構造化されたマスク層によって、100μmよりも狭い線幅が形成されるので、太陽電池の寸法が等しい場合、より小さい面しか覆われず、太陽電池のより高い効率を達成することができる。
【0023】
直流めっきによる析出の場合、エミッタ層に光を作用させることにより金属を被着させることもできる。そのような場合には、シリコンウェハの裏面側が陰極コンタクトを有し、この場合、アノードは電界質内に設けられている。この場合、電池は阻止方向に極性付けられており、その一方で、エミッタ層への光の作用によって、より大きな光電流が流れ、この光電流によってエミッタ表面における直流めっきが行われる。このことは有利である。なぜならば、これによって、媒体内のエミッタ層の接触接続を行う必要がなくなり、また、コンタクト位置の外部磁界の影響に起因する、エミッタ層上の層厚変動またはコンタクトの直流めっきのようなその他の問題を回避することができるからである。光電流によって、エミッタ層の表面において、直流めっきによるコーティングが行われる場合には通常存在する高導電性の開始層がまだ存在しないという問題を回避することができる。
【0024】
nドープされたエミッタシリコン層では、シリコン層の陽極の極性付けを用いた電気化学的なエッチングによってシリコン層の多孔化を行うことができ、この場合、シリコン層がエッチング剤に浸漬される。このことは、コーティングの場合と同じ設備を選択することができるので有利である。もっとも、この場合には、極性が反転されている。シリコン層はエッチングの際に陽極に極性付けられるので、この層が多孔化される。後続のコーティングのために、シリコンウェハの修正また取り外しは必要とされず、また洗浄ステップなどの実施も必要とされず、これによって時間が節約される。電解質はエッチングの際に既に孔内に含まれており、コーティングのために孔内に浸透する必要はないので、湿潤の問題も存在しない。
【0025】
本願発明による方法においては、シリコンを陰極または陽極に極性付けるための電気的なコンタクトを電界質の外側で行うことができるので、コンタクトおよびリード線は電界質内の磁界にさらされず、一緒に直流めっきされない、または一緒にエッチングされない。
【0026】
有利には、エッチング剤は金属を含有する電解質であるので、エッチングおよびコーティングのために同一の電解質を使用することができる。エッチング剤はフッ酸、応力緩和剤、例えば界面活性剤、アルコールまたは酢酸および金属塩を有することができ、有利には、フッ酸25体積%、エタノール25体積%、ニッケル硫酸塩溶剤、または、80g/lから185g/lのニッケルを含むニッケル塩化物溶剤25体積%および水25体積%の組成を有する。
【0027】
他の有利な組成ではエタノールが含まれず、フッ酸は25体積%より少なくても十分であり、また固溶限界までのニッケルアセテートが予定される。他の組成においては、ニッケルアセテートは固溶限界まで含有しながら、フッ酸の濃度を25体積%にすることができるので、多孔化の際に60mA/cm2までの比較的高い電流密度を達成することができる。フッ酸の濃度が5体積%から10体積%の場合、30mA/cm2までの電流密度で多孔化を行うことができる。ニッケル含有量が高いことによって、ニッケルを析出する際の高い電流密度が実現される。ニッケル濃度が比較的低い場合には、電解質の通電容量は相応に低くなる。
【0028】
別の有利な組成は以下の通りである:フッ酸5体積%から10体積%、固溶限界まで溶解されたニッケルアセテート150g/lから180g/l、応力緩和剤、例えば、陽極的にドデシル硫酸ナトリウム(C12H25NaO4S)を有する応力緩和剤、または、陰極的にセチルトリメチルアンモニウムブロミド(C19H42BrN)を有する緩和剤、または、非イオン性のp−t−オクチルフェノール誘導体、例えば製品名Triton(R)X−100を有する応力緩和剤。
【0029】
製造すべき太陽電池の一方の側のみが電界質に晒される場合、したがって一方の側を乾式に接触接続できる場合には、簡単な接触接続部を達成することができる。
【0030】
金属ケイ化物層を形成するために加熱を行うステップは、250℃から700℃の範囲、有利には250℃から400℃の範囲の温度で行われる。多孔化されたシリコンでは、250℃から400℃の低い温度範囲においてケイ化物を既に形成することができるので、シリコンに作用する熱的な負荷は比較的小さくて済む。これによって、金属ケイ化物を形成する際に、多孔化されたシリコンと多孔化されていないシリコンとの間の深みに関する選択性を達成することができる。多孔性のシリコンを有する金属ケイ化物を形成するためには低い温度で十分であるが、多孔化されていない領域を有する金属ケイ化物の形成は比較的高い温度を必要とするか、その温度において著しく低い速度で処理される。
【0031】
1つの実施形態によれば、金属ケイ化物層の形成後に、残存する第1の金属層が除去され、続いて新たに第1の金属層が析出される。これによって、反応層、例えば酸化物層が金属ケイ化物層の形成後に除去されるので、続いて被着される第1の金属層を確実に接着させることができる。
【0032】
有利には、金属ケイ化物層が形成される領域においては、続いて第2の金属層が形成される。したがって、全体として、線路抵抗を低減することができる。金属ケイ化物層がニッケルケイ化物である場合には、例えば、3つの別の金属層をニッケル、銅およびスズの順番で、またはニッケル、銅、銀の順番で設けることができる。金属ケイ化物が銀ケイ化物である場合、第2の金属層は銀を含有する。
【0033】
本発明による方法の別の実施形態によれば、多孔化されたシリコンへの第1の金属層の被着後に加熱はまだ実施されず、第1の金属層の上に第2の金属層が形成される。これによって、マスク層がウェハ上、殊に反射防止層上に残存させることができるので、反射防止層内の多孔化された個所において誤った析出が行われることはない。析出はマスク層のエッチングされた領域においてさらに行われ、これによって金属層の横方向の拡張部を確実に、エッチングされた領域の幅に制限することができる。この場合、加熱は金属層の完全な被着後およびマスク層の除去後に行われる。メタライジング部は良好に接着されて多孔性のシリコン上に存在するので、金属層が剥離されることなく、マスク層を剥離することができる。多孔化された基板を必要とすることなく金属をコーティングする場合、マスク層の除去後の金属ケイ化物の形成は不可能である。シリコンは多孔状の形態で存在するので、加熱の際には、接着が損なわれること無く、シリコンを含有する第1の金属層は確実に金属ケイ化物を形成する。
【0034】
有利には、マスク層は、シルクスクリーンによって塗布することができるレジストを有する。光構造化可能なレジストを使用する必要はない。むしろレジストは、後に金属化が行われるべき領域において自由な位置を取ることができる。
【0035】
有利には、レジストはフッ酸、アセトン、エタノール、硝酸、カリウム水酸化液またはカ性ソーダ液のようなアルカリ液に対して耐性がある。
【0036】
本発明を、縮尺通りに示していない図面を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1の実施形態による、シリコン太陽電池の出発材料としてのウェハの断面図を示す。
【図2】第2の方法ステップの実施後の第1の実施形態によるウェハの断面図を示す。
【図3】第3の方法ステップの実施後の第1の実施形態によるウェハの断面図を示す。
【図4】第4の方法ステップの実施後の第1の実施形態によるウェハの断面図を示す。
【図5】第5の方法ステップの実施後の第1の実施形態によるウェハの断面図を示す。
【図6】第6の方法ステップの実施後の第1の実施形態によるウェハの断面図を示す。
【図7】第7の方法ステップの実施後の第1の実施形態によるウェハの断面図を示す。
【図8】第5の方法ステップの実施後の第2の実施形態による、シリコン太陽電池の出発材料としてのウェハの断面図を示す。
【図9】第6の方法ステップの実施後の第2の実施形態によるウェハの断面図を示す。
【図10】第1の方法ステップの実施後の第3の実施形態によるウェハの断面図を示す。
【図11】第5の方法ステップの実施後の第3の実施形態によるウェハの断面図を示す。
【0038】
図1には、ウェハ20の断面図が示されており、このウェハはnドープされたシリコン層1およびpドープされたシリコン層2を有する。nドープされた層は例えば200ナノメートルの高さを有し、かつ、エミッタ層として機能する。他方、pドープされた層は支持体材料(バルク)として100マイクロメートルから200マイクロメートルの高さを有する。nドープされた層1の上には、例えばシリコン窒化物からなる反射防止層3が形成されており、この反射防止層3は例えば100ナノメートルの高さを有する。反射防止層3は必ずしも必要なものではないが、しかしながら、反射防止層3はnドープされたエミッタ層1へと入射する光の反射を低減するために使用されるので、設けられている場合には有利である。図1に示されている実施形態においては、ウェハ20においてエミッタ層1が設けられている側の表面にマスク層4が被着されている。この実施形態においては、反射防止層3が設けられているので、マスク層4はnドープされたシリコン層1上に直接的に設けられているのではなく、反射防止層3上に設けられている。マスク層4は少なくとも1つの自由空間5を有し、この自由空間5はマスク層4の下に位置する層、この実施形態においては反射防止層3にまで達している。マスク層の構造化によって自由空間を形成することができる。しかしながら、既に自由空間が設けられているマスク層を反射防止層に被着させることも可能である。
【0039】
ウェハが自由空間5に供給されるエッチング剤に晒されると、第2の方法ステップにおいて、自由空間5の底部において反射防止層が完全にエッチングされるまでエッチング剤は作用する(図2を参照されたい)。エッチング剤が比較的長く作用した結果、このエッチング剤は反射防止層3の下に位置する層、ここではnドープされたシリコン層1も腐食させる(図3を参照されたい)。この結果、nドープされたシリコン層1は多孔性の構造を有するようになる(参照番号7を参照されたい)。エッチング剤のnドープされたシリコン層1への作用時間が短い場合、シリコン層1の腐食によるエッチング深さを制限することができる。このことは、エッチングプロセスが電気化学的に行われ、かつ、nドープされた層1が高nドープされた領域と、その高nドープされた領域の下に位置する低nドープされた領域とを有する場合には、さらに支援される。高nドープされた領域は比較的高速にエッチング剤によって腐食され、他方、その下に配置されている領域は僅かにしか腐食されない。これによって、多孔性の構造がnドープされた層とpドープされた層との間の境界領域8にまでは到達しないことが達成されるので、電気的な短絡を回避することができる。多孔化の際に電流電圧曲線が記録される場合には、電圧の上昇によって、低nドープされた層への到達を簡単に識別することができる。
【0040】
多孔化の後に、さらなる方法ステップにおいては、第1の金属層9、例えばニッケルが多孔化された構造7に充填される。
【0041】
プロセスパラメータが相応に選択された場合、第1の金属層9をさらに形成することができるので、多孔性の構造7内のみでなく、多孔性の構造7の上にも第1の金属層9が設けられる(図4を参照されたい)。金属層9はマスク層4に設けられている自由空間5内に存在し、かつ、自由空間5の幅に相当する幅を有する。
【0042】
第1の実施形態においては、後続の方法ステップ(図5を参照されたい)において、マスク層4が除去される。続いて、少なくとも多孔化されたシリコン層が第1の金属層と共に加熱され、その結果、金属ケイ化物層10、例えばニッケルケイ化物が形成される(図6を参照されたい)。多孔性の構造7に基づき、金属9とシリコン1との間の良好な接着部が生じる。さらなる方法ステップ(図7を参照されたい)においては、第1の金属層9の上に第2の金属層11が被着され、これによって太陽電池30が形成される。
【0043】
マスク層が除去される、第1の実施形態における第5の方法ステップの代わりに、第2の実施形態においては、マスク層4がまだ残っている状態において、第1の金属層9の上に第2の金属層11を被着させることができる(図8を参照されたい)。これに続くさらなる方法ステップにおいては、少なくとも多孔化されたシリコン7が第1の金属層9と共に加熱されることにより、金属ケイ化物10が形成される(図9を参照されたい)。次にマスク層4が除去され、その結果、この第2の実施形態においても太陽電池30が形成される(図7を参照されたい)。金属ケイ化物を形成するための加熱の際に生じる温度にマスク層4が損傷無く耐えられない場合、マスク層は加熱のステップの前に除去される。
【0044】
図10は、第1の方法ステップの後のウェハの第3の実施形態を示す。ウェハはシリコン層を有し、このシリコン層は同時に反射防止層として機能することができる。第1の方法ステップにおいては、シリコン層1の表面全体がエッチングされ、その結果、層が多孔化される。続いて、既に構造化されているか、さらに構造化する必要があるマスク層4が被着される。したがって、マスク層を有していない領域が生じ、この領域を第1の金属層9および第2の金属素11でもってコーティングすることができる。続いて、シリコン層1および第1の金属層9が加熱され、その結果、金属ケイ化物7が形成される(図11を参照されたい)。マスク層4を除去した後に、2つの金属層9および11が表面上に残り、これによって本発明による太陽電池が形成される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、エミッタシリコン層を備えたシリコン太陽電池ならびにその種の太陽電池の製造方法に関する。
【0002】
シリコン太陽電池はnドープされたシリコン層およびpドープされたシリコン層を有する。太陽電池のエミッタとして機能する面に光子が衝突すると、2つの層の間で電荷の平衡化が行われるか、2つの層の間で電流の流れが生じ、これをコンタクトを介して案内することができる。その種の太陽電池の上面には通常の場合、金属からなり、かつ、複数のコンタクトフィンガを備えた帯状コンタクトが取り付けられており、これに対し、下面にはコンタクトとしての金属層がその全面に設けられている。帯状コンタクトおよび金属面は太陽電池の電気的な極を形成する。
【0003】
従来技術においては、銀ペーストがプリント法によって表面に塗布されることにより、帯状コンタクトおよび金属フィンガが形成される。従来技術の欠点は、銀ペーストから形成される電気的なリード線は、この銀ペーストが多孔性に形成されているため、比較的高い線路抵抗を有することである。さらに、銀ペーストから、この銀ペーストの下に配置されているシリコン層への伝達抵抗が比較的高く、また、基板との接着も比較的弱い。
【0004】
太陽電池を改良するための別のアプローチは効率を高めることを本質とする。例えば、エミッタ層の厚さを比較的薄くすることによって比較的高い効率を達成することができる。従来技術による太陽電池においては、エミッタ層の厚さは僅か数百ナノメートルである。さらに薄い放射層が使用される場合、確かに論理的には効率を高めることができるが、金属性の電気的なリード線がその種の薄いエミッタ層を貫通し、その結果、その種の太陽電池は電気的に短絡する可能性がある。
【0005】
したがって本発明の課題は、電気的な線路抵抗が比較的低い電気的なリード線を有し、シリコン層に対して比較的低い電気的な伝達抵抗を有し、かつ、良好に接着される、太陽電池を提供することである。さらにこのことは、太陽電池が電気的に短絡することなく、数百ナノメートルから約50ナノメートルの非常に薄いエミッタ層を備えた太陽電池において確実に達成されるべきである。この課題は、反射防止層が設けられている太陽電池においても達成されるべきである。さらに、本発明の課題は、太陽電池を簡単かつ廉価に製造できるようにすることである。
【0006】
太陽電池に関する課題は、請求項1に記載されている構成によって解決される。また、太陽電池を製造するための方法に関する課題は、請求項8に記載されている構成によって解決される。本発明の有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0007】
本発明によるシリコン太陽電池は、エミッタ層を備えたシリコン層と、化学的または電気化学的なエッチングによって多孔化された、エミッタ層内の少なくとも1つの領域とを有し、多孔化された領域の少なくとも一部は金属ケイ化物として形成されており、この金属ケイ化物の上には少なくとも1つの金属層が被着されている。
【0008】
シリコン上に直接的に被着されている金属は確かに比較的低い電気的な線路抵抗を有するが、被着されている金属が後続の処理ステップにおいてシリコンから簡単に剥離する可能性があるので、機械的な接着は依然として比較的悪いものである。しかしながら、本発明によれば、金属とシリコンから成る化合物が金属ケイ化物の形態で提供されることによって、金属とシリコンとの間の比較的低い電気的な伝達抵抗を達成することができる。
【0009】
本発明による太陽電池においては、金属ケイ化物は、化学的または電気化学的なエッチングによって多孔化された、エミッタ層内の領域に形成されている。このことは、エッチングによって凹凸の多い構造が生じ、この凹凸の多い構造を良好にメタライジングすることができ、かつ、金属とシリコンとの間の良好な接着が保証されるので有利である。さらには、金属ケイ化物は、エッチング後に多孔化されており、かつ、反応に好適な表面が設けられている領域においては、隣接する多孔化されていない領域よりも高速に形成されるので、形成される金属ケイ化物の大部分を多孔化された領域に限定することができる。したがって多孔化された領域によって、金属ケイ化物の高さを制限することができる。
【0010】
さらには、エッチングプロセスの時間を正確に制限することができるので、多孔化された領域の高さを簡単なやり方で非常に正確に、また低い高さに調整することができる。このことは、その種の太陽電池においては、金属ケイ化物がエミッタの高さ全体に沿って延在しているのではなく、エミッタ層の上面側から延びているが、エミッタ層全体の高さよりも低い高さを有する領域においてのみ延在していることを意味する。したがって、貫通するメタライジング、または、エミッタ層に隣接するシリコン層との短絡を阻止することができる。つまり、エッチングは非常に制御された多孔化を実現するので、数100ナノメートルから約50ナノメートルの厚さを有する非常に薄いエミッタ層において金属ケイ化物を有する領域を形成することができる。
【0011】
本発明によれば、金属ケイ化物の上に金属層が被着されている。金属層は金属ケイ化物層上に非常に良好に接着されており、それら2つの層間の低い電気的な伝達抵抗が達成される。金属層は金属ケイ化物と共に、太陽電池の電気的なリード線を形成する。有利には金属層がニッケル、銅または銀を含有し、殊に有利には、この金属層が化学的または電気化学的に被着されており、したがってプリントされたペーストほどの多孔性を有しておらず、したがって比較的低い線路抵抗を有する。
【0012】
有利には、シリコン層が高nドープされたシリコンを含有する層を有する。この種のシリコン層は僅かにドープされたシリコン層に比べて、エッチング剤が作用する際に種々の強さで腐食されることが観察された。高nドープされた層を、低ドープされた層よりも短時間でエッチングすることができる。この観察結果を本発明による太陽電池の製造にも有利に使用することができる。高nドープされたシリコン層は、エミッタにおけるエッチングの深さ、したがって多孔化された領域の高さ、もしくは、続いて形成される金属ケイ化物の高さを簡単なやり方で制限することができる。このことは、僅か数100ナノメートルから50ナノメートルまでの厚さを有するエミッタ層においても、太陽電池の電気的な短絡が生じることなく達成される。
【0013】
本発明の1つの実施形態によれば、エミッタ層に反射防止層が被着されている。これによって、入射する光の比較的僅かな割合しか太陽電池によって反射されないので、太陽電池のより高い効率を達成することができる。反射防止層は有利にはシリコン窒化物、シリコン酸化物またはスズ酸化物を含有し、スズ酸化物はシリコン窒化物およびシリコン酸化物に比べて導電性である。
【0014】
本発明の1つの実施形態によれば、反射防止層は多孔性のシリコンから形成されている。この層は太陽電池の表面全体にわたり形成されている。有利には、この層がエミッタの一部であり、また数100ナノメートルから50ナノメートルの厚さに制限されている。有利には、メタライジングを実施するために、その種の反射防止層を構造化することはもはや必要ない。多孔化を構造化せずに、かつ、マスク層を必要とすることなく実施することができる。したがって、フッ酸に対して耐性がなければならないマスク層は必要ない。多孔化の後に、構造化されるマスク層を被着することができるので、マスク層を有する領域とマスク層を有していない領域が生じる。マスク層を有していない領域においては、金属層を用いたコーティングを行うことができる。続いてエミッタ層および金属層の加熱が行われ、金属ケイ化物層が形成される。
【0015】
有利には、金属ケイ化物の金属と、金属ケイ化物の上に被着される金属層の金属は同一である。したがって比較的簡単な製造が実現される。
【0016】
本発明は、シリコン層を有するウェハから前述のシリコン太陽電池を製造するための方法に関し、この方法は以下のステップを有する:
−エッチング剤を用いて、エミッタ層として設けられているシリコン層、または、既に形成されているエミッタ層をエッチングし、少なくとも1つの領域において層を多孔化するステップ、
−エミッタ層を有するウェハ側の表面に構造化されたマスク層を形成し、マスク層を有する領域とマスク層を有していない領域を形成するステップ、
−マスク層を有していない領域において、第1の金属層を用いて多孔化されたエミッタ層をコーティングするステップ、
−金属ケイ化物層が形成されるまで、エミッタ層および第1の金属層を加熱するステップ、
−マスク層を除去するステップ。
【0017】
既に構造化されたマスク層を、例えばシルクスクリーン法を用いて被着させることができるか、または、面全体にマスク層を被着し、例えばレーザの使用によって事後的に構造化することができる。マスク層を有する領域およびマスク層を有していない領域が生じるように構造化が行われ、マスク層を有していない領域内では、エミッタ層が露出されるまで構造化が実施される。マスク層の下に別の層、例えば反射防止層が存在する場合、マスク層を有していない領域においては反射防止層も除去され、反射防止層の下に存在するエミッタ層が露出されるまで構造化が実施される。構造化によって狭い領域またはチャネルを形成することができ、その領域またはチャネルの底部または基底部、この実施形態においては露出されたエミッタ層をエッチング剤によって腐食させることができる。
【0018】
マスク層を有していない領域におけるエッチングもしくは露出されたエミッタ層のエッチングによって、層の表面における多孔性の構造を形成することができる。その種のエッチングおよび表面における多孔性の構造の形成を時間的に非常に限定的に行うことができるので、エミッタ層のエッチングによる腐食の深さは浅いものでしかない。これによって、エミッタ層が非常に薄い場合であっても、多孔化された領域はエミッタ層の下に設けられている層にまで到達しないことが保証され、これによって短絡を回避することができる。多孔化は殊に有利である。何故ならば、このように処理された表面は凹凸の多い構造を有し、この構造は被着すべき金属層を良好に収容し、機械的に固定することができるからである。さらに、金属層とシリコンエミッタ層との間の低い電気的な伝達抵抗が達成される。さらには、多孔化された材料のエッチングによって非常に反応が好適になるので、エミッタ層および金属層を加熱する際には、低い温度でも簡単に金属ケイ化物層が形成され、この金属ケイ化物層は良好に接着され、また低い電気抵抗を有する。多孔性の構造のみで、十分な固定および低い電気抵抗を達成することができる。
【0019】
しかしながら、前述の順序を変更することもできる。つまり、先ずエミッタ層がエッチング剤によってエッチングされ、それによりエミッタ層が多孔化されることも同様に考えられる。エッチングの腐食を1つの領域に限定することができるか、エミッタ層の表面全体において行うことができる。続いて、構造化されたマスク層が形成され、その結果、マスク層を有する領域およびマスク層を有していない領域が形成されるステップを実施することができる。続いて、マスク層を有していない領域における多孔化されたエミッタ層が第1の金属層でもってコーティングされ、エミッタ層および第1の金属層が加熱され、続いて、マスク層が除去される。したがって、マスク層を用いないエッチングが行われ、エッチング剤に対して耐性がなければならないマスク層は必要とされないので有利である。
【0020】
さらには、シリコン層のエッチングが行われ、このシリコン層はまだエミッタ層ではなく、ドーピングによる別の方法ステップにおいてようやくエミッタ層が形成される。したがってこの実施形態においては、ドーピングは上述のようにエッチングの前に行われるのではなく、エッチングの後に行われる。エミッタ層が形成されると、続いて上述のように、構造化されたマスク層が形成され、第1の金属層を用いたコーティングが行われ、続いて、金属ケイ化物が形成され、その後、マスク層が除去されるステップを行うことができる。
【0021】
マスク層が、金属ケイ化物を形成するための加熱の際に生じる温度に損傷無く耐えられない場合には、マスク層を加熱のステップの前に除去することができる。有利には、金属層を用いたコーティングは外部電流を要することなく行われるか、または、化学的もしくは電気化学的に行われる。このことは例えば、nドープされたエミッタシリコン層においては、多孔化されたシリコンと金属を含有する電解質との接触接続と、多孔化され、陰極に極性付けられたシリコン内および/またはシリコン上の金属の析出とによってコーティングが行われる。マスク層は、このマスク層のエッチングされていないチャネル内における、形成すべき金属層の横方向の拡張が行われるよう機能する。析出された金属は部分的に、多孔化された構造の深くまで到達し、さらには選択された処理パラメータ(電圧、電流強度、電界質濃度または時間)に応じて所定の高さにまで形成される。しかしながら、金属が多孔化された構造の深くに到達し、そこにおいて自由空間を充填するが、その後別の層は形成されないように、金属の析出を行うことも可能である。
【0022】
金属層の構造化によって狭いチャネルを形成することができるので、金属ケイ化物、また必要に応じてその上に形成される金属層は狭い線幅を有する。このことは、リード線を有する太陽電池を形成することができ、このリード線はその幅が狭いことに基づき、太陽電池の放射面が僅かにしか遮蔽されないので有利である。このようにして形成されたリード線は、リード線のために銀ペーストがプリント法で表面に被着される従来の方式よりも小さい遮蔽面を有する。その種の銀ペーストによって、金属フィンガまたはリード線のみを製造することができ、その幅はその高さよりも長いので、金属フィンガの十分に低い電気抵抗に関して、最小の高さを下回らない。しかしながらこのことは、100μmよりも大きい最小幅を意味しているので、太陽電池の最小面は金属フィンガによって覆われている。構造化されたマスク層によって、100μmよりも狭い線幅が形成されるので、太陽電池の寸法が等しい場合、より小さい面しか覆われず、太陽電池のより高い効率を達成することができる。
【0023】
直流めっきによる析出の場合、エミッタ層に光を作用させることにより金属を被着させることもできる。そのような場合には、シリコンウェハの裏面側が陰極コンタクトを有し、この場合、アノードは電界質内に設けられている。この場合、電池は阻止方向に極性付けられており、その一方で、エミッタ層への光の作用によって、より大きな光電流が流れ、この光電流によってエミッタ表面における直流めっきが行われる。このことは有利である。なぜならば、これによって、媒体内のエミッタ層の接触接続を行う必要がなくなり、また、コンタクト位置の外部磁界の影響に起因する、エミッタ層上の層厚変動またはコンタクトの直流めっきのようなその他の問題を回避することができるからである。光電流によって、エミッタ層の表面において、直流めっきによるコーティングが行われる場合には通常存在する高導電性の開始層がまだ存在しないという問題を回避することができる。
【0024】
nドープされたエミッタシリコン層では、シリコン層の陽極の極性付けを用いた電気化学的なエッチングによってシリコン層の多孔化を行うことができ、この場合、シリコン層がエッチング剤に浸漬される。このことは、コーティングの場合と同じ設備を選択することができるので有利である。もっとも、この場合には、極性が反転されている。シリコン層はエッチングの際に陽極に極性付けられるので、この層が多孔化される。後続のコーティングのために、シリコンウェハの修正また取り外しは必要とされず、また洗浄ステップなどの実施も必要とされず、これによって時間が節約される。電解質はエッチングの際に既に孔内に含まれており、コーティングのために孔内に浸透する必要はないので、湿潤の問題も存在しない。
【0025】
本願発明による方法においては、シリコンを陰極または陽極に極性付けるための電気的なコンタクトを電界質の外側で行うことができるので、コンタクトおよびリード線は電界質内の磁界にさらされず、一緒に直流めっきされない、または一緒にエッチングされない。
【0026】
有利には、エッチング剤は金属を含有する電解質であるので、エッチングおよびコーティングのために同一の電解質を使用することができる。エッチング剤はフッ酸、応力緩和剤、例えば界面活性剤、アルコールまたは酢酸および金属塩を有することができ、有利には、フッ酸25体積%、エタノール25体積%、ニッケル硫酸塩溶剤、または、80g/lから185g/lのニッケルを含むニッケル塩化物溶剤25体積%および水25体積%の組成を有する。
【0027】
他の有利な組成ではエタノールが含まれず、フッ酸は25体積%より少なくても十分であり、また固溶限界までのニッケルアセテートが予定される。他の組成においては、ニッケルアセテートは固溶限界まで含有しながら、フッ酸の濃度を25体積%にすることができるので、多孔化の際に60mA/cm2までの比較的高い電流密度を達成することができる。フッ酸の濃度が5体積%から10体積%の場合、30mA/cm2までの電流密度で多孔化を行うことができる。ニッケル含有量が高いことによって、ニッケルを析出する際の高い電流密度が実現される。ニッケル濃度が比較的低い場合には、電解質の通電容量は相応に低くなる。
【0028】
別の有利な組成は以下の通りである:フッ酸5体積%から10体積%、固溶限界まで溶解されたニッケルアセテート150g/lから180g/l、応力緩和剤、例えば、陽極的にドデシル硫酸ナトリウム(C12H25NaO4S)を有する応力緩和剤、または、陰極的にセチルトリメチルアンモニウムブロミド(C19H42BrN)を有する緩和剤、または、非イオン性のp−t−オクチルフェノール誘導体、例えば製品名Triton(R)X−100を有する応力緩和剤。
【0029】
製造すべき太陽電池の一方の側のみが電界質に晒される場合、したがって一方の側を乾式に接触接続できる場合には、簡単な接触接続部を達成することができる。
【0030】
金属ケイ化物層を形成するために加熱を行うステップは、250℃から700℃の範囲、有利には250℃から400℃の範囲の温度で行われる。多孔化されたシリコンでは、250℃から400℃の低い温度範囲においてケイ化物を既に形成することができるので、シリコンに作用する熱的な負荷は比較的小さくて済む。これによって、金属ケイ化物を形成する際に、多孔化されたシリコンと多孔化されていないシリコンとの間の深みに関する選択性を達成することができる。多孔性のシリコンを有する金属ケイ化物を形成するためには低い温度で十分であるが、多孔化されていない領域を有する金属ケイ化物の形成は比較的高い温度を必要とするか、その温度において著しく低い速度で処理される。
【0031】
1つの実施形態によれば、金属ケイ化物層の形成後に、残存する第1の金属層が除去され、続いて新たに第1の金属層が析出される。これによって、反応層、例えば酸化物層が金属ケイ化物層の形成後に除去されるので、続いて被着される第1の金属層を確実に接着させることができる。
【0032】
有利には、金属ケイ化物層が形成される領域においては、続いて第2の金属層が形成される。したがって、全体として、線路抵抗を低減することができる。金属ケイ化物層がニッケルケイ化物である場合には、例えば、3つの別の金属層をニッケル、銅およびスズの順番で、またはニッケル、銅、銀の順番で設けることができる。金属ケイ化物が銀ケイ化物である場合、第2の金属層は銀を含有する。
【0033】
本発明による方法の別の実施形態によれば、多孔化されたシリコンへの第1の金属層の被着後に加熱はまだ実施されず、第1の金属層の上に第2の金属層が形成される。これによって、マスク層がウェハ上、殊に反射防止層上に残存させることができるので、反射防止層内の多孔化された個所において誤った析出が行われることはない。析出はマスク層のエッチングされた領域においてさらに行われ、これによって金属層の横方向の拡張部を確実に、エッチングされた領域の幅に制限することができる。この場合、加熱は金属層の完全な被着後およびマスク層の除去後に行われる。メタライジング部は良好に接着されて多孔性のシリコン上に存在するので、金属層が剥離されることなく、マスク層を剥離することができる。多孔化された基板を必要とすることなく金属をコーティングする場合、マスク層の除去後の金属ケイ化物の形成は不可能である。シリコンは多孔状の形態で存在するので、加熱の際には、接着が損なわれること無く、シリコンを含有する第1の金属層は確実に金属ケイ化物を形成する。
【0034】
有利には、マスク層は、シルクスクリーンによって塗布することができるレジストを有する。光構造化可能なレジストを使用する必要はない。むしろレジストは、後に金属化が行われるべき領域において自由な位置を取ることができる。
【0035】
有利には、レジストはフッ酸、アセトン、エタノール、硝酸、カリウム水酸化液またはカ性ソーダ液のようなアルカリ液に対して耐性がある。
【0036】
本発明を、縮尺通りに示していない図面を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1の実施形態による、シリコン太陽電池の出発材料としてのウェハの断面図を示す。
【図2】第2の方法ステップの実施後の第1の実施形態によるウェハの断面図を示す。
【図3】第3の方法ステップの実施後の第1の実施形態によるウェハの断面図を示す。
【図4】第4の方法ステップの実施後の第1の実施形態によるウェハの断面図を示す。
【図5】第5の方法ステップの実施後の第1の実施形態によるウェハの断面図を示す。
【図6】第6の方法ステップの実施後の第1の実施形態によるウェハの断面図を示す。
【図7】第7の方法ステップの実施後の第1の実施形態によるウェハの断面図を示す。
【図8】第5の方法ステップの実施後の第2の実施形態による、シリコン太陽電池の出発材料としてのウェハの断面図を示す。
【図9】第6の方法ステップの実施後の第2の実施形態によるウェハの断面図を示す。
【図10】第1の方法ステップの実施後の第3の実施形態によるウェハの断面図を示す。
【図11】第5の方法ステップの実施後の第3の実施形態によるウェハの断面図を示す。
【0038】
図1には、ウェハ20の断面図が示されており、このウェハはnドープされたシリコン層1およびpドープされたシリコン層2を有する。nドープされた層は例えば200ナノメートルの高さを有し、かつ、エミッタ層として機能する。他方、pドープされた層は支持体材料(バルク)として100マイクロメートルから200マイクロメートルの高さを有する。nドープされた層1の上には、例えばシリコン窒化物からなる反射防止層3が形成されており、この反射防止層3は例えば100ナノメートルの高さを有する。反射防止層3は必ずしも必要なものではないが、しかしながら、反射防止層3はnドープされたエミッタ層1へと入射する光の反射を低減するために使用されるので、設けられている場合には有利である。図1に示されている実施形態においては、ウェハ20においてエミッタ層1が設けられている側の表面にマスク層4が被着されている。この実施形態においては、反射防止層3が設けられているので、マスク層4はnドープされたシリコン層1上に直接的に設けられているのではなく、反射防止層3上に設けられている。マスク層4は少なくとも1つの自由空間5を有し、この自由空間5はマスク層4の下に位置する層、この実施形態においては反射防止層3にまで達している。マスク層の構造化によって自由空間を形成することができる。しかしながら、既に自由空間が設けられているマスク層を反射防止層に被着させることも可能である。
【0039】
ウェハが自由空間5に供給されるエッチング剤に晒されると、第2の方法ステップにおいて、自由空間5の底部において反射防止層が完全にエッチングされるまでエッチング剤は作用する(図2を参照されたい)。エッチング剤が比較的長く作用した結果、このエッチング剤は反射防止層3の下に位置する層、ここではnドープされたシリコン層1も腐食させる(図3を参照されたい)。この結果、nドープされたシリコン層1は多孔性の構造を有するようになる(参照番号7を参照されたい)。エッチング剤のnドープされたシリコン層1への作用時間が短い場合、シリコン層1の腐食によるエッチング深さを制限することができる。このことは、エッチングプロセスが電気化学的に行われ、かつ、nドープされた層1が高nドープされた領域と、その高nドープされた領域の下に位置する低nドープされた領域とを有する場合には、さらに支援される。高nドープされた領域は比較的高速にエッチング剤によって腐食され、他方、その下に配置されている領域は僅かにしか腐食されない。これによって、多孔性の構造がnドープされた層とpドープされた層との間の境界領域8にまでは到達しないことが達成されるので、電気的な短絡を回避することができる。多孔化の際に電流電圧曲線が記録される場合には、電圧の上昇によって、低nドープされた層への到達を簡単に識別することができる。
【0040】
多孔化の後に、さらなる方法ステップにおいては、第1の金属層9、例えばニッケルが多孔化された構造7に充填される。
【0041】
プロセスパラメータが相応に選択された場合、第1の金属層9をさらに形成することができるので、多孔性の構造7内のみでなく、多孔性の構造7の上にも第1の金属層9が設けられる(図4を参照されたい)。金属層9はマスク層4に設けられている自由空間5内に存在し、かつ、自由空間5の幅に相当する幅を有する。
【0042】
第1の実施形態においては、後続の方法ステップ(図5を参照されたい)において、マスク層4が除去される。続いて、少なくとも多孔化されたシリコン層が第1の金属層と共に加熱され、その結果、金属ケイ化物層10、例えばニッケルケイ化物が形成される(図6を参照されたい)。多孔性の構造7に基づき、金属9とシリコン1との間の良好な接着部が生じる。さらなる方法ステップ(図7を参照されたい)においては、第1の金属層9の上に第2の金属層11が被着され、これによって太陽電池30が形成される。
【0043】
マスク層が除去される、第1の実施形態における第5の方法ステップの代わりに、第2の実施形態においては、マスク層4がまだ残っている状態において、第1の金属層9の上に第2の金属層11を被着させることができる(図8を参照されたい)。これに続くさらなる方法ステップにおいては、少なくとも多孔化されたシリコン7が第1の金属層9と共に加熱されることにより、金属ケイ化物10が形成される(図9を参照されたい)。次にマスク層4が除去され、その結果、この第2の実施形態においても太陽電池30が形成される(図7を参照されたい)。金属ケイ化物を形成するための加熱の際に生じる温度にマスク層4が損傷無く耐えられない場合、マスク層は加熱のステップの前に除去される。
【0044】
図10は、第1の方法ステップの後のウェハの第3の実施形態を示す。ウェハはシリコン層を有し、このシリコン層は同時に反射防止層として機能することができる。第1の方法ステップにおいては、シリコン層1の表面全体がエッチングされ、その結果、層が多孔化される。続いて、既に構造化されているか、さらに構造化する必要があるマスク層4が被着される。したがって、マスク層を有していない領域が生じ、この領域を第1の金属層9および第2の金属素11でもってコーティングすることができる。続いて、シリコン層1および第1の金属層9が加熱され、その結果、金属ケイ化物7が形成される(図11を参照されたい)。マスク層4を除去した後に、2つの金属層9および11が表面上に残り、これによって本発明による太陽電池が形成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン太陽電池において、
エミッタ層を備えたシリコン層と、化学的または電気化学的なエッチングによって多孔化された、エミッタ層内の少なくとも1つの領域とを有し、
前記多孔化された領域の少なくとも一部は金属ケイ化物として形成されており、該金属ケイ化物の上に少なくとも1つの金属層が被着されていることを特徴とする、シリコン太陽電池。
【請求項2】
前記金属層はニッケルまたは銅または銀を含有する、請求項1記載の太陽電池。
【請求項3】
金属ケイ化物層は100ナノメートルよりも低い高さを有する、請求項1または2記載の太陽電池。
【請求項4】
前記金属ケイ化物の金属と、前記金属ケイ化物の上に被着される前記金属層の金属とは同一である、請求項1から3までのいずれか1項記載の太陽電池。
【請求項5】
シリコン層を有するウェハから、請求項1から4までのいずれか1項による太陽電池を製造する方法において、
エッチング剤を用いて、エミッタ層として設けられているシリコン層をエッチングするか、または、既に形成されているエミッタ層をエッチングし、少なくとも1つの領域において層を多孔化するステップと、
前記エミッタ層を有するウェハ側の表面に構造化されたマスク層を形成し、マスク層を有する領域およびマスク層を有していない領域を形成するステップと、
前記マスク層を有していない領域において、第1の金属層を用いて、多孔化された前記エミッタ層をコーティングするステップと、
金属ケイ化物層が形成されるまで、前記エミッタ層および前記第1の金属層を加熱するステップと、
前記マスク層を除去するステップと
を有することを特徴とする、太陽電池を製造する方法。
【請求項6】
前記方法は付加的に、
エミッタ層として設けられている前記シリコン層をドープし、エミッタ層を形成するステップを有する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記コーティングを、外部電流を要することなく実施するか、または、直流めっきにより実施する、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
nドープされたエミッタシリコン層においては、多孔化されたシリコンと金属を含有する電解質との接触接続と、多孔化され、陰極に極性付けられたシリコン内および/またはシリコン上の金属の析出とによって前記コーティングを実施する、請求項5から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
nドープされたエミッタシリコン層においては、前記シリコン層の陽極の極性付けを用いた電気化学的なエッチングによってシリコン層の多孔化を実施する、請求項5から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記電気化学的なエッチングにおいて、陽極に極性付けられた領域がエッチング剤に浸漬されるように、該エッチング剤を前記陽極に極性付けられた領域に適用する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
シリコンを陰極または陽極に極性付けるための電気的な接触接続を電解質の外側において行う、請求項8から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記エッチング剤は金属を含有する電解質である、請求項8から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記エッチング剤は、フッ酸、応力緩和剤、例えば界面活性剤、アルコールまたは酢酸、金属塩を有する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記エッチング剤は、5体積%から10体積%のフッ酸、150g/lから180g/lの固溶限界まで溶解されたニッケルアセテートおよびドデシル硫酸ナトリウムの形態の応力緩和剤を有する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
製造すべき太陽電池の一方の側のみを電解質に晒す、請求項5から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
金属ケイ化物層を形成するために前記加熱を行うステップを、250℃から700℃の範囲、有利には250℃から400℃の範囲の温度で実施する、請求項5から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記金属ケイ化物層の形成後に、残存する前記第1の金属層を除去し、続いて新たに第1の金属層を析出する、請求項5から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記金属ケイ化物層が形成される領域において、第2の金属層を形成する、請求項5から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記加熱を行うステップを実施する前に、前記第1の金属層の上に第2の金属層を形成する、請求項5から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記マスク層はシルクスクリーン法を用いて塗布されるレジストを有する、請求項5から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項1】
シリコン太陽電池において、
エミッタ層を備えたシリコン層と、化学的または電気化学的なエッチングによって多孔化された、エミッタ層内の少なくとも1つの領域とを有し、
前記多孔化された領域の少なくとも一部は金属ケイ化物として形成されており、該金属ケイ化物の上に少なくとも1つの金属層が被着されていることを特徴とする、シリコン太陽電池。
【請求項2】
前記金属層はニッケルまたは銅または銀を含有する、請求項1記載の太陽電池。
【請求項3】
金属ケイ化物層は100ナノメートルよりも低い高さを有する、請求項1または2記載の太陽電池。
【請求項4】
前記金属ケイ化物の金属と、前記金属ケイ化物の上に被着される前記金属層の金属とは同一である、請求項1から3までのいずれか1項記載の太陽電池。
【請求項5】
シリコン層を有するウェハから、請求項1から4までのいずれか1項による太陽電池を製造する方法において、
エッチング剤を用いて、エミッタ層として設けられているシリコン層をエッチングするか、または、既に形成されているエミッタ層をエッチングし、少なくとも1つの領域において層を多孔化するステップと、
前記エミッタ層を有するウェハ側の表面に構造化されたマスク層を形成し、マスク層を有する領域およびマスク層を有していない領域を形成するステップと、
前記マスク層を有していない領域において、第1の金属層を用いて、多孔化された前記エミッタ層をコーティングするステップと、
金属ケイ化物層が形成されるまで、前記エミッタ層および前記第1の金属層を加熱するステップと、
前記マスク層を除去するステップと
を有することを特徴とする、太陽電池を製造する方法。
【請求項6】
前記方法は付加的に、
エミッタ層として設けられている前記シリコン層をドープし、エミッタ層を形成するステップを有する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記コーティングを、外部電流を要することなく実施するか、または、直流めっきにより実施する、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
nドープされたエミッタシリコン層においては、多孔化されたシリコンと金属を含有する電解質との接触接続と、多孔化され、陰極に極性付けられたシリコン内および/またはシリコン上の金属の析出とによって前記コーティングを実施する、請求項5から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
nドープされたエミッタシリコン層においては、前記シリコン層の陽極の極性付けを用いた電気化学的なエッチングによってシリコン層の多孔化を実施する、請求項5から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記電気化学的なエッチングにおいて、陽極に極性付けられた領域がエッチング剤に浸漬されるように、該エッチング剤を前記陽極に極性付けられた領域に適用する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
シリコンを陰極または陽極に極性付けるための電気的な接触接続を電解質の外側において行う、請求項8から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記エッチング剤は金属を含有する電解質である、請求項8から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記エッチング剤は、フッ酸、応力緩和剤、例えば界面活性剤、アルコールまたは酢酸、金属塩を有する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記エッチング剤は、5体積%から10体積%のフッ酸、150g/lから180g/lの固溶限界まで溶解されたニッケルアセテートおよびドデシル硫酸ナトリウムの形態の応力緩和剤を有する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
製造すべき太陽電池の一方の側のみを電解質に晒す、請求項5から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
金属ケイ化物層を形成するために前記加熱を行うステップを、250℃から700℃の範囲、有利には250℃から400℃の範囲の温度で実施する、請求項5から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記金属ケイ化物層の形成後に、残存する前記第1の金属層を除去し、続いて新たに第1の金属層を析出する、請求項5から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記金属ケイ化物層が形成される領域において、第2の金属層を形成する、請求項5から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記加熱を行うステップを実施する前に、前記第1の金属層の上に第2の金属層を形成する、請求項5から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記マスク層はシルクスクリーン法を用いて塗布されるレジストを有する、請求項5から17までのいずれか1項記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−517690(P2012−517690A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548528(P2011−548528)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【国際出願番号】PCT/DE2010/000148
【国際公開番号】WO2010/088898
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(300081877)アトテツク・ドイチユラント・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (13)
【氏名又は名称原語表記】Atotech Deutschland GmbH
【住所又は居所原語表記】Erasmusstrasse 20, D−10553 Berlin, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【国際出願番号】PCT/DE2010/000148
【国際公開番号】WO2010/088898
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(300081877)アトテツク・ドイチユラント・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (13)
【氏名又は名称原語表記】Atotech Deutschland GmbH
【住所又は居所原語表記】Erasmusstrasse 20, D−10553 Berlin, Germany
【Fターム(参考)】
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